説明

抗血栓性多層コーティングステントからの薬物放出

ステント表面に密着した多層コーティングを有するステントは、移植部位の再狭窄と血栓を防止することができる。ステントのコーティングは、二層から構成される。一次層は、一つまたはそれ以上の生物活性剤がその中に散在しているポリマーコーティングである。二次層は、血液凝固を阻害し、ステントと損傷部位の摩擦を減少させる親水性表面を提供する、疎水性ヘパリン化ポリマーで構成される。本発明の好ましい態様において、多層コーティングステントは、移植部位で再狭窄と血栓を防止するのに効果的である。これと同じ好ましい態様において、多層コーティングステントは、一次層からの生物活性剤の突発的放出を減らすことができ、比較的長期間にわたって有効量の生物活性剤の放出を持続することができる。また、ステント表面に多層コーティングを塗布する方法も、本発明の一部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植部位における局部治療を可能にする生物活性剤を保持するコーティングステント(stent)、及びステントコーティングの塗布方法に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、多層コーティングを有する抗再狭窄性および抗血栓性ステントであって、一次層または内層がポリマーおよび一つまたは複数の生物活性剤から形成され、二次層または外層が抗血栓性ヘパリン化ポリマーから形成されるステントに関する。また、本発明は、ステント表面に多層コーティングを塗布する方法、およびそのようなコーティングステントの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粥腫形成性動脈狭窄症(Atherogenic artierial narrowing)および血栓症は、米国および世界中の様々な保健機関によって主要な死因と特定されている、潜在的に致死性の2つの関連症状である。狭窄(stenosis)とは、脂肪、コレステロールまたは他の物質が沈積することによる血管の狭小化または収縮(constriction)を言う。重度の場合、狭窄は血管を完全に詰まらせる可能性がある。血栓症は、血管内または心臓の腔(cavity)内の血栓の形成または存在である。血栓は通常、血液因子、主に血小板およびフィブリン(fibrin)が凝集し、細胞成分を包括することにより形成される。血栓症も狭窄と同様に、形成した部位に血管閉塞を頻繁に生じさせる。
【0004】
狭窄によって収縮したか、または塞がった血管を浄化する一つの方法は、経皮経管血管形成術(PTCA)または風船冠状動脈血管形成術(balloon coronary angioplasty)である。この手法では、風船カテーテルを血管の収縮した部分に挿入し、膨脹させて障害物を取り除く。しかし、PTCA施術を受けた患者の約1/3は、施術後6ヵ月以内に、拡張された血管が再び狭くなる再狭窄を患う。再狭窄した動脈は再度血管形成術を受けなければならない。
【0005】
再狭窄は、血管形成術の代わりに、または血管形成術とともに、生じた動脈の領域にステントを挿入することからなる通常の方法によって阻止することができる。ステントは、金属またはプラスチックのチューブであり、中実(solid)の壁または網状の壁のいずれかを有しうる。使用されているステントの大部分は、金属製であり、自己拡張型または風船拡張可能型である。ステント挿入を受けるための決定は、動脈狭窄の一定の特徴に依存する。これらには、動脈の大きさおよび狭窄の位置が含まれる。ステントの機能は、血管形成によって最近広げられた動脈を補強することであり、または、血管形成術を用いなかった場合には、血管弾性収縮(elastic recoil)を防止するためにステントを用いる。ステントは、典型的にカテーテルを介して移植される。風船拡張可能型ステントの場合、まずステントを直径が小さくなるよう折りたたみ、風船カテーテル上に装着(slid)する。カテーテルを患者の血管を通じて病変部位または最近拡張した場所に到達させる。到達したら、ステントを拡張させその場所に固定させる。ステントは動脈に永久に存在し、動脈を開くことによって動脈を通る血流を円滑にし、症状(主に胸痛)を緩和する。
【0006】
ステントは、移植部位の再狭窄を防止するのに100%有効ではない。再狭窄は、ステント長を超えて発生し、かつ/またはステントの末端を過ぎて発生しうる。最近では、平滑筋細胞の増殖を阻害する薬物を充填したポリマー薄膜がコーティングされた、新しい型のステントが医師により利用されている。コーティングは、ステントを動脈内に挿入する前に、溶媒蒸発法などの当技術分野で周知の方法を用いてステントに塗布される。溶媒蒸発法は、溶媒中にポリマーおよび薬物を混合する段階を必要とする。ポリマー、薬物、および溶媒を含む溶液を、浸漬または噴霧によってステント表面に塗布することができる。ステントを次に乾燥工程に供すると、その間に溶媒が蒸発し、薬物が中に散在するポリマー材料がステント表面に薄膜を形成する。
【0007】
ポリマー材料からの薬物の放出機構は、ポリマー材料および組み込まれた薬物の性質に依存する。薬物はポリマーを通じて、ポリマー-流体界面(polymer-fiuid interface)、そして流体中へと拡散する。また、放出はポリマー材料の分解を通じて起こりうる。ポリマー材料の分解は加水分解を介して生じ、それによりポリマーが流体に侵食され、そのため薬物も同様に流体中へ放出される。
【0008】
コーティングステント使用時に重要なことは、コーティングからの薬物の放出速度である。治療的有効量の薬物が可能な限り長い期間持続的に放出されるのが望ましい。突発的放出(burst release)、すなわちステントの移植直後の高い放出速度は、望ましくなく、かつ根強い問題である。典型的に患者に有害ではないが、突発的放出は必要とする有効量の数倍を放出することにより薬物の限られた供給量を「浪費」し、放出期間を短縮させる。突発的放出を低減する試みにおいて、いくつかの技術が開発されている。例えば、米国特許6,258,121 B1(Yangら)は、放出速度が異なる二個のポリマーを混ぜ、それらを単一の層に組み込むことによって放出速度を変化させる技術を開示している。
【0009】
一般的にブタの腸に由来するヘパリンは、抗凝固能力を有していることで周知である。溶媒蒸発法を使用してヘパリンが充填された薄いポリマーコーティングをステント表面に塗布することは、当技術分野で公知である。例えば、米国特許5,837,313号(Dingら)は、ヘパリンコーティング組成物を調製する方法を開示している。
【0010】
このような状況を考慮すると、多層コーティングを有するステントであって、一つの層が生物活性剤が散在したポリマー材料の薄膜を含み、疎水性ヘパリン化ポリマーを含む二次層が一次層の上に配置されるステントを開発することは、当技術分野において有意な進歩になると思われる。また、本発明は、再狭窄と血栓症を共に阻害し、比較的長い期間にわたり多様な種類の広範囲な治療剤を移植部位に送達するのに有効でありうる。
【発明の開示】
【0011】
発明の簡単な概要
本発明は、生物活性剤の持続的な送達を通じて再狭窄と血栓症を防ぐための、一方が他方の上に配置された少なくとも二層を含む多層コーティングを有するステントを提供する。一次層は、生物活性剤が中に散在したポリマー材料を含み、二次層は、有効な抗凝固特性を有している疎水性ヘパリン化ポリマーを含む。また本発明は、ステント上にコーティングの複数の内層を塗布し、疎水性ヘパリン化ポリマーをコーティングの外層および最終層として塗布するためのいくつかの方法を提供する。
【0012】
一次層または下層は、ポリマー材料と生物活性剤を溶媒で混合し、均一な溶液を形成することにより調製される。ポリマー材料は広範囲な合成材料から選択可能であるが、具体的な例として、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)を使用する。生物活性剤は、所望の治療効果によって選択される。例えば、抗癌薬及び/または抗炎症薬を使用できる。さらなる例として、平滑筋細胞の増殖の阻害剤が望ましい場合、エキノマイシンまたはパクリタキセルを使用することができる。一旦調製されると、溶液を浸漬法または噴霧法を通じてステントに塗布する。乾燥中に溶媒は蒸発して、生物活性剤が充填されたポリマー材料の薄層がステント上にコーティングされる。本発明は、一つの内層、または一層につき一種の生物活性剤に限定されないことに注意すべきである。一種以上の別々の生物活性剤が各層に加えること、及び/または生物活性剤を充填した複数の内層を有することは、本発明の範囲内である。
【0013】
二次層または外層は、例えば浸漬工程を使用してステントの内層上に塗布される、抗血栓性ヘパリン化ポリマーである。抗血栓性ヘパリン化ポリマーコーティングは、ポリアクリル酸のような多機能性巨大分子とオクタデシルアミンのような疎水性材料をヘパリンと結合することにより調製される。そして、ステントを溶媒と混合した疎水性ヘパリン化ポリマーに浸漬する。乾燥させた後、溶媒が蒸発し、疎水性ヘパリン化ポリマーが一次層上に薄膜を形成する。
【0014】
コーティングステントは、ステント形態により適当な方法を使用して、冠状動脈のような病変のある血管内に挿入される。一旦その位置に入ると、ステント構造物が血管を拡張した状態に維持させる。生物活性剤が一次層から放出され、それにより平滑筋細胞の増殖阻害のような所望の治療効果を提供する。抗血栓性ヘパリン化ポリマーは、ステント周囲で血液凝固を防ぎ、血栓症および亜急性ステント血栓症を阻止できる。また、抗血栓性ヘパリン化ポリマーは、一次層からの生物活性剤の突発的放出を減少または防止することにより、薬物の放出を比較的長い期間持続可能にする。
【0015】
したがって、移植部位で再狭窄と血栓症を阻止できるステントを提供することが本発明の長所である。
【0016】
また、平滑筋細胞の増殖と血栓を阻害できる生物活性剤を送達するための多層コーティングを有するステントを提供することも本発明の長所である。
【0017】
抗血栓性ヘパリン化ポリマーを含む外層を有する多層コーティングを有するステントを提供することは、本発明のまた別の長所である。
【0018】
比較的長い期間広範囲な治療剤を送達し、内部層または複数の層からの生物活性剤の突発的放出を緩和させるための多層コーティングを有するステントを提供することは、本発明のまた別の長所である。
【0019】
ステント表面に多層コーティングを塗布する方法を提供することは、本発明のまた別の長所である。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の多層コーティングを有するステント、および多層コーティングを有するステントの使用法および調製法を開示して記載する前に、本発明は、その構成、製造工程、及び材料が多様であるためここで、本明細書に開示される特定の構成、製造工程及び材料に制限されないということを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は特定の態様を説明するためのものであり、制限することを意図されず、特許請求の範囲およびその等価物よってのみ本発明の範囲が規定される。
【0021】
本発明の背景を記述し、その実践に関する追加的な詳細を提供するために、本発明で言及された刊行物および他の引用文献が参照として本明細書に組み入れられる。本発明で論議される参考文献は、本出願の出願日以前の開示に対してのみ提供される。ここにあるいかなる文献も、本発明者らが以前の発明のためにそのような開示に先行する権利を有しないことの承認として解釈すべきでない。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「一つ(a)」、「一つ(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に規定されない限り、複数形態の意味を含む。従って、例えば「生物活性剤」という用語は、二種またはそれ以上の生物活性剤の混合物を含み、「阻害剤」という用語は一つまたはそれ以上の抑制剤を含み、「溶媒」という用語は二種またはそれ以上の溶媒の混合物を含む。
【0023】
本発明を記述して主張するに際して、以下の用語を下記に記載した定義に従い使用する。
【0024】
本明細書で使用される「ステント」とは、血管や通路に挿入され、管腔を開いた状態に維持し、外部圧力や狭縮による閉鎖を防止する、金属またはプラスチックチューブを意味する。
【0025】
本明細書で使用される「生物活性剤」は、生体内への治療的価値を有する薬物または他の物質であり、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症剤、再狭窄阻害剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質など、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0026】
例示的な抗癌薬物としては、アシビシン(acivicin)、アクラルビシン(aclarubicin)、アコダゾール(acodazole)、アクロナイシン(acronycine)、アドゼレシン(adozelesin)、アラノシン(alanosine)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アロプリノールナトリウム(allopurinol sodium)、アルトレタミン(altretamine)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、アモナフィド(amonafide)、アムプリゲン(ampligen)、アムサクリン(amsacrine)、アンドロゲン、アングイジン(anguidine)、アフィジコリングリシネート(aphidicolin glycinate)、アサリー(asaley)、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、バチルス・カルメット-グエリン(Bacillus calmette-guerin、BCG)、Bakerのアンチホル(Baker's Antifol)(可溶性)、β-2'-ジオキシチオグアノシン、ビサントレンhcl(bisantrene hcl)、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、BWA 773U82、BW 502U83×HCL、BW 7U85メシレート、セラセミド(ceracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン(carmustine)、クロランブシル(chlorambucil)、クロロキノキサリン-スルホンアミド(chloroquinoxaline-sulfonamide)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、クロモマイシンA3(chromomycin A3)、シスプラチン、クラドリビン(cladribine)、コルチコステロイド、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、CPT-11、クリスナトル(crisnatol)、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン(cytarabine)、シテムベナ(cytembena)、ダビスマレエート(dabis maleate)、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCL(daunorubicin HCL)、デアザウリジン、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、ジアンハイドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、ジアジクオン(diaziquone)、ジブロモズルシトール(dibromodulcitol)、ジデムニンB(didemnim B)、ジエチルジチオカルバメート(diethyldithiocarbamate)、ジグリコアルデヒド(diglycoaldehyde)、ジヒドロ-5-アザシチジン、ドキソルビシン、エキノマイシン(echinomycin)、エダトレキセート(edatrexate)、エデルホシン(edelfosine)、エフロルニチン(eflornithine)、エリオット溶液(Elliot's solution)、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、リン酸エストラムスチン(estramustine phosphate)、エストロゲン、エタニダゾール(etanidazole)、エチオホス(ethiofos)、エトポシド、ファドラゾール(fadrazole)、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(fenretinide)、フィルグラスチム(filgrastim)、フィナステライド(finasteride)、フラボン酢酸(flavone acetic acid)、フロクスウリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン(fludarabine phosphate)、5-フルオロウラシル、フルオソル(Fluosol)、フルタミド(flutamide)、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン(goserelin acetate)、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘキサメチレンビスアセタミド(hexamethylene bisacetamide)、ホモハリントニン(homoharringtonine)、硫酸ヒドラジン、4-ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL(idarubicin HCL)、イフォスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン-1αおよびβ、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-6、4-イポメアノール(4-ipomeanol)、イプロプラチン(iproplatin)、イソトレチノイン(isotretinoin)、ロイコボリンカルシウム(leucovorin calcium)、酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)、レバミソール(levamisole)、リポソーマルダウノルビシン(liposomal daunorubicin)、リポソーム被包性ドキソルビシン、ロムスチン(lomustine)、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、塩酸メクロレタミン(mechlorethamine hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、メノガリル(menogaril)、メルバロン(merbarone)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、メスナ(mesna)、バチルス・カルメット-グエリンのメタノール抽出残渣、メトトレキセート、N-メチルホルムアミド、ミフェプリストン(mifepristone)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトマイシン-C、ミトタン(mitotane)、塩酸ミトキサントロン(mitoxantrone hydrochloride)、単核細胞/大食細胞コロニー刺激因子、ナビロン(nabilone)、ナフォキシジン(nafoxidine)、ネオカルジノスタチン(neocarzinostatin)、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate)、オルマプラチン(ormaplatin)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ(pala)、ペントスタチン(pentostatin)、ピペラジンジオン、ピポブロマン(pipobroman)、ピラルビシン(pirarubicin)、ピリトレキシム(piritrexim)、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone hydrochloride)、PIXY-321、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)、プレドニムスチン(prednimustine)、プロカルバジン(procarbazine)、プロゲスチン、ピラゾフリン(pyrazofurin)、ラゾキサン(razoxane)、サルグラモスチム(sargramostim)、セムスチン(semustine)、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、スピロムスチン(spiromustine)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン、スロフェヌール(sulofenur)、スラミンナトリウム(suramin sodium)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソテール(taxotere)、テガフール(tegafur)、テニポシド(teniposide)、テレフタルアミジン(terephtalamidine)、テロキシロン(teroxirone)、チオグアニン、チオテパ(thiotepa)、チミジン(thymidine)注射、チアゾフリン(tiazofurin)、トポテカン(topotecan)、トレミフェン(toremifene)、トレチノイン(tretinoin)、塩酸トリフルオペラジン(trifluoperazine hydrochloride)、トリフルリジン(trifluridine)、トリメトレキセート(trimetrexate)、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード(uracil mustard)、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンゾリジン(vinzolidine)、Yoshi 864、ゾルビシン(zorubicin)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
例示的な抗炎症薬物としては、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム(piroxicam)、テノキシカム(tenoxicam)、トルメチン(tolmetin)、ケトロラク(ketorolac)、オキサプロジン(oxaprosin)、メフェナム酸、フェノプロフェン(fenprofen)、ナムブメトン(nambumetone)(レラフェン(relafen))、アセトアミノフェン(タイレノール(登録商標))、などの古典的な非ステロイド系抗炎症薬物(NSAIDS)、及びこれらの混合物;ニメスリド(nimesulide)、NS-398、フロスリド(flosulid)、L-745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC-57666、DuP-697、パレコキシブナトリウム(parecoxib sodium)、JTE-522、バルデコキシブ、SC-58125、エトリコキシブ(etoricoxib)、RS-57067、L-748780、L-761066、APHS、エトドラク(etodolac)、メロキシカム(meloxicam)、S-2474などのCOX-2阻害剤、及びこれらの混合物;ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン(meprednisone)、トリアムシノロン、パラメタゾン(paramethasone)、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン(desoxycorticosterone)などのグルココルチコイド、及びこれらの混合物;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される「ポリマー」は、反復されるモノマー単位またはプロトマーからなる巨大分子を意味する。
【0029】
本明細書で使用される「巨大分子」は、合成巨大分子、タンパク質、生体ポリマー、及び典型的に分子量が1000より大きい他の分子を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「抗血栓性ヘパリン化ポリマー」、「疎水性ヘパリン化ポリマー」及びこれと類似の用語は、本発明と共有される国際特許出願PCT/KR00/01255(WO 02/34312 A1)(その全体は参照として本明細書に組み入れられる)に記述された疎水性多成分ヘパリン結合体を意味する。この疎水性ヘパリン化ポリマーは、ヘパリン、巨大分子成分、及び疎水性成分を含む結合体を含む。
【0031】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、毒性はないが、所望の局所効果または全身効果を提供し、かつ任意の医学的治療に同伴する妥当な利益/危険性比(benefit/risk ratio)での性能を提供するのに充分な量を意味する。
【0032】
本発明は、多層コーティングを有する抗血栓性ステントに関する。例示的な態様において、一次層は平滑筋細胞増殖を防止するエキノマイシンのような生物活性剤が充填されたポリマー膜を含む。ポリマー膜を製造するために使用できる例示的なポリマーとしては、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PLLA-ポリ-グリコール酸(PGA)コポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ-(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバレレート)コポリマー(PHBV)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(商標))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリHEMA)、ポリ(エーテルウレタン尿素)、シリコン、アクリル、エポキシド、ポリエステル、ウレタン、パーレン(parlenes)、ポリホスファゼンポリマー、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリオレフィン、及びこれらの混合物を含む。二次層は、強力な抗凝固特性を有する疎水性ヘパリン化ポリマーを含む。また、疎水性ヘパリン化ポリマーの二次層は、一次層内に散在した生物活性剤の突発的放出を防止する効果を有し、その結果比較的長い期間生物活性剤が放出される。また、一次層が複数の生物活性剤を含むことができることも理解されるべきである。
【0033】
本発明のステントの形態および組成は、病んだ血管を補助できる任意の生体適合性材料を含みうる。一般的には、ステンレススチール、金、チタンで製造されるような金属製ステントを使用するのが好ましいが、プラスチックまたはその他の適切な材料を使用してもよい。好ましい態様において、Cordis社(マイアミ、フロリダ州)のPalmz-Schatzステントが使用される。ステントは、自己拡張型または風船拡張型である。コーティングはステント表面全体を実質的に覆うのが好ましいが、ステントの一部分のみを覆うコーティングを有することも本発明の範囲内である。また、有機的流体などと接触するいかなる基材、医療装置、またはその一部分がコーティングされうることも理解されたい。
【0034】
一次層の塗布は、溶媒蒸発法または他の公知の方法を通じて行われる。溶媒蒸発法は、ポリマー材料および生物活性剤をテトラヒドロフラン(THF)のような溶媒とを合わせる段階を必要とし、これは撹拌により混合され混合物を形成する。一次層のポリマー材料の例は、ポリウレタンを含み、生物活性剤の例は、エキノマイシンを含む。この混合物は、(1)溶液をステント表面に噴霧する;または(2)ステントを溶液に浸漬する、のいずれかによりステント表面に塗布される。混合物を塗布した後、ステントを乾燥工程に供し、その間に溶媒が蒸発してポリマー材料と生物活性剤がステント上に薄膜を形成する。また他の例示的な態様において、複数の生物活性剤を一次層に添加することができる。
【0035】
ステントコーティングの二次層は、抗血栓性ヘパリン化ポリマーを含む。抗血栓性ヘパリン化ポリマーは、有機溶媒でのみ溶解可能で水には溶解しない。抗血栓性ヘパリン化ポリマーは、ヘパリンを巨大分子及び疎水性材料に結合させることで製造される。
【0036】
例示的な巨大分子には、合成巨大分子、タンパク質、生体ポリマー、及びそれらの混合物が含まれる。例示的な合成巨大分子には、ポリジエン、ポリアルケン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリ-α-置換アクリル酸およびその誘導体、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルハライド、ポリスチレンおよびその誘導体、ポリオキシド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリイミン、ポリスルフィド、ポリリン酸、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxanes)、ポリヘテロ環、セルロースおよびその誘導体、多糖類及びそれらのコポリマーまたは誘導体が含まれる。本発明にしたがい使用できる例示的なタンパク質には、プロタミン、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーを含む。本発明に従い使用できる生体ポリマーは、多糖類、ゼラチン、コラーゲン、アルギネート、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、コンドロイチン、ペクチン、キトサン、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーが含まれる。
【0037】
例示的な態様において、抗血栓性ヘパリン化ポリマーは下記の工程により調製される。まず、巨大分子を、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド塩酸塩または4-p-アジドサリチルアミド-ブチルアミン(ASBA)を使用して活性化させる。次に、ヘパリン、組換えヘパリン、ヘパリン誘導体またはヘパリン類似物(好ましくは、分子量が1,000〜1,000,000ダルトン)を巨大分子に結合させる。ヒドロキシル基、アミン基、チオール基またはアジド基を使用することによりヘパリンと巨大分子間に共有結合が形成されるが、アミン基を使用するのが好ましい。最後に、ヘパリンが既に結合された巨大分子の官能基に疎水性材料を結合させる。官能基を有する任意の疎水性材料を使用可能であることが理解されるが、オクタデシルアミン、アルカノイックアミン(alkanoic amine)、胆汁酸、ステロール、またはアルカノイック酸を使用することが好ましい。
【0038】
疎水性ヘパリン化ポリマーを調製したら、溶媒蒸発法または他の適当な方法を使用して、一次層上に二次層を直接塗布する。疎水性ヘパリン化ポリマーは、シクロヘキサンのような溶媒と組み合わせ、疎水性ヘパリン化ポリマーが懸濁した水溶液を形成することにより塗布の準備がされる。そして、抗血栓性ヘパリン化ポリマーと溶媒の溶液は、浸漬工程を使用してステントに塗布される。溶媒は、乾燥工程中にステントから蒸発し、一次層上に疎水性ヘパリン化ポリマーの薄膜を残す。
【0039】
抗血栓性ヘパリン化ポリマー層は、移植部位で血液凝固を阻害する。さらに二次層は、一次層からの生物活性剤の突発的放出を阻害または防止する。また、二次層は、一次層からの生物活性剤の放出期間を延長させ、それにより治療期間を延長させる働きもする。
【0040】
実施例
実施例1:浸漬コーティング法によるステント上の多層コーティングの調製法
ポリマー、生物活性剤及びTHFを合わせて完全に混合するまで撹拌し、一次層用のコーティング溶液を調製した。選択されたポリマーはポリウレタンであり、濃度は3重量%だった。生物活性剤はパクリタキセルであり、濃度は0〜20重量%だった。一次層を塗布する前にステント表面をメタノールで洗浄し、真空乾燥機で約30分間乾燥させることにより、ステント表面を調製かつ浄化した。乾燥後、洗浄したステントを一次コーティング溶液に完全に浸漬させ、THFで飽和したビーカー中で約5時間常温で乾燥させた。このような浸漬/乾燥工程を5回反復した。5回目の反復後にステントを真空乾燥機で約1時間常温で乾燥させた。
【0041】
二次コーティング溶液は、シクロヘキサン中に疎水性ヘパリン化ポリマーを0.1〜20重量%で混合して調製した。ステントをヘパリン化ポリマー溶液に浸漬し、室温で1時間乾燥させた後、室温で6時間真空乾燥機中で乾燥させた。ステント表面に塗布された二層のコーティングを図1に示した。
【0042】
実施例2:噴霧-コーティング法によるステント上の多層コーティングの調製法
一次層用のコーティング溶液およびステントは、実施例1で記述したとおりに調製した。調製した一次層溶液を約10分間、洗浄したステントに噴霧して、室温で乾燥させた。このような噴霧/乾燥工程を10回反復した後、ステントを真空乾燥機中で約1時間乾燥させた。二次層、疎水性ヘパリン化ポリマー溶液は、実施例1で記述したとおりに塗布した。ステント表面に塗布した二層のコーティングを図1に示した。
【0043】
実施例3:二種の生物活性剤を充填した多層コーティングステントの調製
THF中でポリウレタン、パクリタキセル、デキサメタゾンを合わせ、完全に混合するまで撹拌することにより、一次層コーティング溶液を調製した。生物活性剤の充填量は、各々0〜20重量%だった。ステントは、実施例1で記述した方法でとおりに洗浄した。調製した溶液を約10分間ステントに噴霧して、室温で乾燥させた。噴霧工程を10回反復した後にステントを真空下で1時間乾燥させた。二次層、疎水性ヘパリン化ポリマー溶液は、実施例1で記述したとおりに塗布した。
【0044】
実施例4:多層コーティングステントの形態
コーティングステントと未コーティングステントの表面を多様な倍率で走査電子顕微鏡下で調べた。コーティングステントの表面は、図2(a)に示されるように非常に粗い様相が観察された。一次層と二次層の両方を塗布した後にステント表面を観察した。両方の場合において、コーティングステントの表面は露出したステントに比べて比較的滑らかであることが観察された。このことは、一次層を塗布するために浸漬法を使用するか、または噴霧法を使用するかに関わらずあてはまる。これを各々図2(b)、2(c)、3(a)、3(b)に示す。
【0045】
実施例5:多層コーティングステントの血液適合性-全血液試験
3種のステンレススチールステント、ステントA、B、およびCがこの試験に提供された。ステントAは、露出したままにし、コーティングを塗布しなかった。ステントBは、パクリタキセルが充填されたポリウレタンの単層コーティングを有した。最後に、ステントCは、第二のステントと同様の一次層コーティングに加えて疎水性ヘパリン化ポリマーの上層を有した。三種のステントを全て新鮮なウサギ血液に約3分間浸漬した。ステントの除去後に、ステント表面での血栓の形成レベルを判定するためにステントを調べた。ステントAは、その表面上の血栓形成と血液凝固のレベルが比較的高いことが観察された。ステントBでは、第一のステントと比較した場合、血栓形成と血液凝固の量が減少することが観察された。ステントCは、第二のステントと比較した場合、血栓形成量の減少を示した。三種のステント全て、及び多様な血栓形成の程度の写真を図4に示した。
【0046】
実施例6:多層コーティングステントの血液適合性-血小板接着試験
新鮮なウサギの血液と3.8重量%のクエン酸ナトリウム溶液を9:1の濃度比率で混合した。血液を遠心分離機に置き、5℃、2,000rpmで10分間回転して血漿中にある血小板を分離した。血漿血小板濃度は、3x105/μlの濃度レベルが得られるまで、貧血小板血漿を添加し、4,000rpmで回転することにより操作した。三種のステンレススチールステントは、実施例5と同様に調製した。ステントを、調製された血漿中で37℃で約1時間インキュベートした。ステントの除去後、ステントをPBS溶液で3回洗浄した。そして、ステントを2.5%グルタルアルデヒド中で4時間インキュベートする段階からなる血小板固定工程に供した。血小板を完全に固定させた後に、ステントを50%、80%、および100%エタノール水溶液で洗浄した。二回目の洗浄後に、試料を6時間にわたり凍結乾燥させた。各々のステント表面に存在する血小板濃度を決定するために、ステントを走査電子顕微鏡下で調べた。図5(a)に示されるように、露出したステントでは、血小板が均一に形成されることが示された。図5(b)と図5(c)に示されるように、単一ポリウレタン層からなる第二のステントと多層コーティングからなる第三のステントでは、各々血小板吸着レベルが80%及び90%減少することが示された。
【0047】
実施例7:多層コーティングステントの炎症評価
表面コーティングの組成が異なる5種の多様な型のステンレススチール細片を調製した。下記の表1に示すように、細片型A、B、C、D及びEは全てコーティング処理されていないか、単一層コーティングを有するか、二重層コーティングを有した。この細片を、Sprague-Dawleyラットへの移植用に調製した。
【0048】
【表1】

【0049】
200〜300g重量のラットを無作為に選択した。まず、ラットをジエチルエーテルガスで麻酔して、手術台の上に固定した。メスによる切開部を介して各ラットの背側に5種類のステント細片の一つを挿入した。14日または30日後、細片を回収した。再びラットをジエチルエーテルで麻酔して、細片を挿入した直下の領域と共に再狭窄が起きていると思われる組織領域を除去し、細片を回収した。除去後、細片および組織をPBS緩衝溶液で洗浄した。次に組織を4%のホルムアルデヒド溶液で固定した。各細片を視覚的に検査し、他の細片と比較して発達した再狭窄があれば、そのレベルを判定した。
【0050】
14日経過後に、露出したステント型である細片型Aでは、重度の再狭窄を示した。一次コーティングとして塗布されたポリウレタンにパクリタキセルが充填された細片である細片型Bでは、著しい程度の再狭窄が観察された。他方で、疎水性ヘパリン化ポリマーの二次コーティングを有する細片である細片型Cでは、再狭窄がほとんど起きなかった。さらに、ポリウレタンの一次層に抗炎症薬のデキサメタゾンおよびパクリタキセルを充填した細片である細片型Dでは、標本は再狭窄をほとんど示さなかった。疎水性ヘパリン化ポリマーの二次層をさらに有する標本である細片型Eにおいても同様であった。この結果を図6(a)に示した。
【0051】
30日経過後には、コーティングされていない細片である細片型A、およびパクリタキセルが充填された単層を有する細片である細片型Bのどちらにおいても重度の再狭窄が観察された。パクリタキセルおよびデキサメタゾンが充填された細片型Dにおいても再狭窄が観察された。しかし、疎水性ヘパリン化ポリマーが外層に塗布された、細片型Cと細片型Eでは、再狭窄を観察できなかった。この結果を図6(b)に示した。
【0052】
実施例8:多層コーティング膜からのパクリタキセルの溶出
ステンレススチール試料の単層ポリウレタンコーティングから溶出するパクリタキセルの量を、多層コーティング試料と比較した。 二種の試料を個別に緩衝溶液中で、37℃でインキュベートした。溶出したパクリタキセルを、以下の段階を含む抽出方法によって、4、8、12、24、36、48、60、144、216時間目に測定した。まず、溶液を100ml緩衝溶液当りDCMを6mlを使用して約15秒間強く撹拌することにより抽出した。次に、DCM部分にある溶液を分離して窒素気体下で乾燥させた。最後に抽出されたパクリタキセルを1mlのアセトニトリルに溶解してHPLCで測定した。
【0053】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、多層コーティング膜からのパクリタキセルの溶出速度は、単一コーティング膜と比較して、突発的放出の減少および持続的な放出パターンを示した。
【0054】
実施例9:多層コーティングステントからのエキノマイシンの溶出
多層コーティングステントからのエキノマイシンの溶出を評価した。多層コーティングステントは、パクリタキセルではなくエキノマイシンが一次層に充填されたことを除き、実施例2の方法を使用して調製した。エキノマイシンの充填量は、3重量%であり、噴霧コーティング工程を10回反復した。二次層は、1重量%の疎水性ヘパリン化ポリマー溶液を用いた浸漬コーティングにより形成した。図8(a)及び図8(b)に示されるように、多層コーティング膜からのパクリタキセルの溶出速度は、単層コーティング膜と比較して、突発的放出の減少および持続的な放出パターンを示した。
【0055】
実施例10:多層コーティングステントからのデキサメタゾンの溶出
コーティングステントのポリウレタンの一次層にデキサメタゾンを5重量%で充填した。二次層を、実施例1で記述したように1重量%疎水性ヘパリン化ポリマー溶液への浸漬により塗布した。コーティングステントからデキサメタゾンの溶出速度を測定した。図8(a)及び図8(b)に示されるように、デキサメタゾンは突発的放出の減少を示し、溶出速度は実施例9のエキノマイシンのものより高かった。
【0056】
実施例11:多層コーティングステントの再狭窄評価-ステント調製及び動物選択
3個のステントで構成される5つの群をまず用意した。各群は、同一のコーティングを有しており(またはコーティングされていない)、かつ各群は、コーティング層の数、ならびに薬物組成物および/または濃度の両方が多様な異なるコーティングを有した。各群は下記のいずれか一つを有した:ポリマー対照群ステント、露出ステント、疎水性ヘパリン化ポリマーの外層および0.1重量%、1重量%または5重量%で充填されたエキノマイシンを有する三つの多層コーティングステント。15匹のブタを選択し、3匹ずつ含む群に無作為に分けた。ブタの平均体重は、23kgで、実験前にブタは同一条件で飼育され、脂肪が含まれていない実験飼料を与えた。また、ブタに飼料を通じてアスピリン300mg/日を投与した。
【0057】
実施例12:多層コーティングステントの再狭窄評価-実験方法
各ブタにケタミン(ketamine)22mg/kgを注射して全身麻酔をし、手術準備を行った。次に、前頚部を正中線で切開し、頚動脈を露出させた。このとき、ブタの頚動脈にヘパリン(300U/kg)を投与した。頚動脈壁の小さい切開部を介して、8フレンチ(French)動脈ガイドワイヤーを頚動脈内に挿入した。次にガイドカテーテルを挿入し、左冠状動脈と右冠状動脈の内部に移動させた。冠状動脈血管撮影法を用いて右冠状動脈上の適当な部位を選択した。
【0058】
冠状動脈の直径より10〜20%広く膨脹できる風船が付いた風船カテーテルに適当なステントを付着させた。事前に選択された冠状動脈の部位に風船カテーテルを移動させ、風船を30秒間4〜12気圧で最大の大きさに膨脹させ故意に冠状動脈を損傷させた。風船が収縮した後、ステントはその部位に残った。ここで、血管損傷後の冠状動脈痙攣を防止するためにニトログリセリン200μgをガイドカテーテルを通じて冠状動脈に持続的に投与したことに注意すべきである。冠状動脈血管撮影法を実施して冠状動脈への損傷程度と血流の開通性(patency)を観察した。次に、動脈ガイドワイヤーを除去して頚動脈中の切り口を縫合した。
【0059】
28日後、ブタに再度麻酔をかけてガイドワイヤーを前記と同様に挿入した。ガイドワイヤーを通じてヘパリン(300U/kg)を再度動脈注射した。冠状動脈血管の開通性を確認後、致死量のペントサル(pentothal)と塩化カリウムをガイドカテーテルを通じて注射し、安楽死を誘起した。ブタの心臓を胸部から除去した。次いで心臓を潅流-固定(perfusion-fixation)工程に供した。ブタを屠殺する前にOEC(GE medical、米国)を使用した追跡冠状動脈血管撮影法(follow-up coronary angiography)を用いて血管の大きさを測定し、ステントを挿入した冠状動脈の狭小化の位置及び程度を判定するために、血管損傷前後の写真を評価した。
【0060】
実施例13:多層コーティングステントの再狭窄評価-組織学的分析
損傷した動脈部分を、損傷部分の周囲2cmの追加領域とともに心臓から除去した。Embedding System (Technovit 7100、Kulzer、ドイツ)を使用してステントを含む標本を固定した。標本をタングステン刃が装備されたミクロトームを使用して薄片に切断した。各切片はヘマトキシリン-エオジン及びエラスチカ・ワンギーソンで染色をした。
【0061】
各切片を顕微鏡で調べた。シュワルツ(Schwartz)尺度を用いて各切片を評価した。切片の定量分析と形態学的分析を実施した。特に管腔部位、内弾性板部位、外弾性板部位、内膜部位、内側部位、及びI/M比率を判定した。図9(a)〜図9(d)及び図10は、その結果およびI/M比を示している。結果は、一次層が1重量%エキノマイシンで充填された多層ステントが、他のステント及び特に露出ステントと比較して、28日目において新内膜組織体積レベルの有意な減少を示すことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ステントコーティングの一次層と二次層を示す、ステントの断片的部分の断面を示したものである。
【図2a】露出ステントの粗い表面を2000倍に拡大した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2b】浸漬コーティング法を使用して塗布された一次層コーティングを有するステントの滑らかな表面を2000倍に拡大したSEM写真である。
【図2c】浸漬コーティング法を使用して一次層及び二次層の両方が塗布された多層コーティングステントの滑らかな表面を2000倍に拡大したSEM写真である。
【図3a】噴霧コーティング法でコーティングしたステント表面を50倍に拡大したSEM写真である。
【図3b】図3aのステント表面を2000倍に拡大したSEM写真である。
【図4】全血液試験を経た後の3種類のステントの表面を示す。ステントA露出ステントであり、ステントBは一次層コーティングステントであり、ステントCは多層コーティングステントである。
【図5a】血小板吸着試験をした後の、露出ステント表面を3000倍に拡大したSEM写真である。
【図5b】血小板吸着試験をした後の、一次層コーティングステントの表面を3000倍に拡大したSEM写真である。
【図5c】血小板吸着試験をした後の、多層コーティングステントの表面を3000倍に拡大したSEM写真である。
【図6a】14日後の雄Sprague-Dawleyラット内の、別個にコーティングした5つの細片を示し、各々の細片は異なる炎症レベルを示す。
【図6b】30日後の雄Sprague-Dawleyラット内の、図6(a)と同様の別個にコーティングした5つの細片を示し、各々の細片は異なる炎症レベルを示す。
【図7a】一次層コーティングおよび多層コーティング層から9日間放出されたパクリタキセルの割合を示したものである。
【図7b】一次層コーティングおよび多層コーティング層から9日間単位面積当りに放出されたパクリタキセルの量を示したものである。
【図8a】多層コーティングから9日間放出されたエキノマイシンとデキサメタゾンの割合を示したものである。
【図8b】多層コーティングから9日間単位面積当りに放出されたエキノマイシンとデキサメタゾンの量を示したものである。
【図9a】露出ステントが移植されていた血管の断面を示したものである。
【図9b】一次層に0.1重量%のエキノマイシンが充填された多層コーティングステントが移植された血管の断面を示したものである。
【図9c】一次層に1重量%のエキノマイシンが充填された多層コーティングステントが移植された血管の断面を示したものである。
【図9d】一次層に5重量%のエキノマイシンが充填された多層コーティングステントが移植された血管の断面を示したものである。
【図10】内膜対中膜(内膜/中膜)の比較による、再狭窄の評価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント本体;及び
該ステント本体の少なくとも一部分に配置された少なくとも二層を含むコーティング
を含み、該少なくとも二層のうち少なくとも一層が、その中に散在させた生物活性剤を含む、製造物。
【請求項2】
ステント本体が表面を含み、コーティングが、ステント表面上に配置された一次層および一次層上に配置された二次層を含み、該一次層が生物活性剤が散在したポリマー膜を含み、二次層が抗血栓性ヘパリン化ポリマーを含む、請求項1記載の製造物。
【請求項3】
ポリマー膜が、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、PLLA-ポリ-グリコール酸(PGA)コポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ-(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバレレート)コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エーテルウレタン尿素)、シリコン、アクリル、エポキシド、ポリエステル、ウレタン、パーレン(parlenes)、ポリホスファゼンポリマー、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリオレフィン、及びこれらの混合物から選択される、請求項2記載の製造物。
【請求項4】
一次層に散在した生物活性剤が、抗癌薬、抗炎症薬、及びこれらの混合物から選択される、請求項2記載の製造物。
【請求項5】
抗癌薬が、アシビシン(acivicin)、アクラルビシン(aclarubicin)、アコダゾール(acodazole)、アクロナイシン(acronycine)、アドゼレシン(adozelesin)、アラノシン(alanosine)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アロプリノールナトリウム(allopurinol sodium)、アルトレタミン(altretamine)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、アモナフィド(amonafide)、アムプリゲン(ampligen)、アムサクリン(amsacrine)、アンドロゲン、アングイジン(anguidine)、アフィジコリングリシネート(aphidicolin glycinate)、アサリー(asaley)、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、バチルス・カルメット-グエリン(Bacillus calmette-guerin、BCG)、Bakerのアンチホル(Baker's Antifol)(可溶性)、β-2'-デオキシチオグアノシン、ビサントレンhcl(bisantrene hcl)、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、BWA 773U82、BW 502U83×HCL、BW 7U85メシレート、セラセミド(ceracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン(carmustine)、クロランブシル(chlorambucil)、クロロキノキサリン-スルホンアミド(chloroquinoxaline-sulfonamide)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、クロモマイシンA3(chromomycin A3)、シスプラチン、クラドリビン(cladribine)、コルチコステロイド、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、CPT-11、クリスナトル(crisnatol)、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン(cytarabine)、シテムベナ(cytembena)、ダビスマレエート(dabis maleate)、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCL(daunorubicin HCL)、デアザウリジン、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、ジアンハイドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、ジアジクオン(diaziquone)、ジブロモズルシトール(dibromodulcitol)、ジデムニンB(didemnim B)、ジエチルジチオカルバメート(diethyldithiocarbamate)、ジグリコアルデヒド(diglycoaldehyde)、ジヒドロ-5-アザシチジン、ドキソルビシン、エキノマイシン(echinomycin)、エダトレキセート(edatrexate)、エデルホシン(edelfosine)、エフロルニチン(eflornithine)、エリオット溶液(Elliot's solution)、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、リン酸エストラムスチン(estramustine phosphate)、エストロゲン、エタニダゾール(etanidazole)、エチオホス(ethiofos)、エトポシド、ファドラゾール(fadrazole)、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(fenretinide)、フィルグラスチム(filgrastim)、フィナステライド(finasteride)、フラボン酢酸(flavone acetic acid)、フロクスウリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン(fludarabine phosphate)、5-フルオロウラシル、フルオソル(Fluosol)、フルタミド(flutamide)、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン(goserelin acetate)、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘキサメチレンビスアセタミド(hexamethylene bisacetamide)、ホモハリントニン(homoharringtonine)、硫酸ヒドラジン、4-ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL(idarubicin HCL)、イフォスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン-1αおよびβ、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-6、4-イポメアノール(4-ipomeanol)、イプロプラチン(iproplatin)、イソトレチノイン(isotretinoin)、ロイコボリンカルシウム(leucovorin calcium)、酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)、レバミソール(levamisole)、リポソーマルダウノルビシン(liposomal daunorubicin)、リポソーム被包性ドキソルビシン、ロムスチン(lomustine)、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、塩酸メクロレタミン(mechlorethamine hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、メノガリル(menogaril)、メルバロン(merbarone)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、メスナ(mesna)、バチルス・カルメット-グエリンのメタノール抽出残渣、メトトレキセート、N-メチルホルムアミド、ミフェプリストン(mifepristone)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトマイシン-C、ミトタン(mitotane)、塩酸ミトキサントロン(mitoxantrone hydrochloride)、単核細胞/大食細胞コロニー刺激因子、ナビロン(nabilone)、ナフォキシジン(nafoxidine)、ネオカルジノスタチン(neocarzinostatin)、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate)、オルマプラチン(ormaplatin)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ(pala)、ペントスタチン(pentostatin)、ピペラジンジオン、ピポブロマン(pipobroman)、ピラルビシン(pirarubicin)、ピリトレキシム(piritrexim)、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone hydrochloride)、PIXY-321、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)、プレドニムスチン(prednimustine)、プロカルバジン(procarbazine)、プロゲスチン、ピラゾフリン(pyrazofurin)、ラゾキサン(razoxane)、サルグラモスチム(sargramostim)、セムスチン(semustine)、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、スピロムスチン(spiromustine)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン、スロフェヌール(sulofenur)、スラミンナトリウム(suramin sodium)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソテール(taxotere)、テガフール(tegafur)、テニポシド(teniposide)、テレフタルアミジン(terephtalamidine)、テロキシロン(teroxirone)、チオグアニン、チオテパ(thiotepa)、チミジン(thymidine)注射、チアゾフリン(tiazofurin)、トポテカン(topotecan)、トレミフェン(toremifene)、トレチノイン(tretinoin)、塩酸トリフルオペラジン(trifluoperazine hydrochloride)、トリフルリジン(trifluridine)、トリメトレキセート(trimetrexate)、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード(uracil mustard)、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンゾリジン(vinzolidine)、Yoshi 864、ゾルビシン(zorubicin)、及びこれらの混合物から選択される、請求項4記載の製造物。
【請求項6】
抗炎症薬が、非ステロイド系抗炎症薬、COX-2阻害剤、グルココルチコイド、及びそれらの混合物から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
非ステロイド系抗炎症薬が、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム(piroxicam)、テノキシカム(tenoxicam)、トルメチン(tolmetin)、ケトロラク(ketorolac)、オキサプロジン(oxaprosin)、メフェナム酸、フェノプロフェン(fenprofen)、ナムブメトン(nambumetone)、アセトアミノフェン、及びこれらの混合物から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
COX-2阻害剤が、ニメスリド(nimesulide)、NS-398、フロスリド(flosulid)、L-745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC-57666、DuP-697、パレコキシブナトリウム(parecoxib sodium)、JTE-522、バルデコキシブ、SC-58125、エトリコキシブ(etoricoxib)、RS-57067、L-748780、L-761066、APHS、エトドラク(etodolac)、メロキシカム(meloxicam)、S-2474、及びこれらの混合物から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
グルココルチコイドが、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン(meprednisone)、トリアムシノロン、パラメタゾン(paramethasone)、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン(desoxycorticosterone)、及びこれらの混合物などから選択される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
一次層が、その中に散在させた第二の生物活性剤を含む、請求項2記載の製造物。
【請求項11】
抗血栓性ヘパリン化ポリマーが、巨大分子、疎水性物質、及び共有結合により互いに結合されたヘパリンを含む、請求項2記載の製造物。
【請求項12】
巨大分子が、合成巨大分子、タンパク質、生体ポリマー及びそれらの混合物から選択される、請求項11記載の製造物。
【請求項13】
合成巨大分子が、ポリジエン、ポリアルケン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリ-α-置換アクリル酸およびその誘導体、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルハライド、ポリスチレンおよびその誘導体、ポリオキシド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリイミン、ポリスルフィド、ポリリン酸、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxanes)、ポリヘテロ環、セルロースおよびその誘導体、ならびにそれらのコポリマーおよび誘導体から選択される、請求項12記載の製造物。
【請求項14】
タンパク質が、プロタミン、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーから選択される、請求項12記載の製造物。
【請求項15】
生体ポリマーが、ポリサッカライド、ゼラチン、コラーゲン、アルギネート、ヒアルン酸(hyalunic acid)、アルギン酸、カラギーナン、コンドロイチン、ペクチン、キトサン、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーから選択される、請求項12記載の製造物。
【請求項16】
疎水性物質が、複数の反応性官能基を有し、巨大分子と結合した後の水溶解度が100mg/ml未満である、請求項11記載の製造物。
【請求項17】
疎水性物質が、オクタデシルアミン、アルカノイックアミン(alkanoic amine)、胆汁酸、ステロール、アルカノイック酸、及びそれらの混合物から選択される、請求項11記載の製造物。
【請求項18】
ヘパリンが組換えヘパリン、ヘパリン誘導体、及びヘパリン類似体から選択される、請求項16記載のコーティングステント。
【請求項19】
ステントおよびその上に配置されたコーティングを含む製造物であって、コーティングが一次層および二次層を含み、一次層が生物活性剤が中に散在するポリマー膜を含み、二次層が抗血栓性ヘパリン化ポリマーを含む製造物の調製方法であって、
洗浄剤でステントを洗浄する段階、
ポリマーおよび生物活性剤を溶媒と組み合わせることにより、ポリマーと生物活性剤の混合物を形成させ、その混合物をステントに塗布することにより、一次層を調製する段階、
疎水性ヘパリン化ポリマーを溶液と組み合わせ、疎水性ヘパリン化ポリマーおよび溶媒溶液にステントを液浸して二次層を塗布し、その後ステントを乾燥させることにより二次層を調製する段階
を含む方法。
【請求項20】
ポリマーと生物活性剤の混合物に、第二の生物活性剤を添加する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
一次層のコーティングを塗布する段階が、ポリマーと生物活性剤の混合物中にステントを浸漬する段階を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
一次層のコーティングを塗布する段階が、ポリマーと生物活性剤の混合物をステント上に噴霧する段階を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
一次層上に二次層を塗布する段階を含む、ステント上の薄膜ポリマー層に散在した生物活性剤の突発的放出を防止するための方法であって、該二次層が疎水性ヘパリン化ポリマーで構成される、方法。
【請求項24】
ステント本体、及び
ステント本体の少なくとも一部分上に配置されたコーティングであって、抗血栓性ヘパリン化ポリマーを含むコーティング
を含む、抗血栓性コーティングステント。
【請求項25】
有機液体と接触する表面を有する医療装置における血栓症を阻害する方法であって、医療装置の表面を抗血栓性ヘパリン化ポリマー層でコーティングする段階を含む方法。
【請求項26】
疎水性ヘパリン化ポリマー層下に配置され、生物活性剤が中に散在したポリマーを含む最下層コーティングを塗布する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
多層コーティング層を有する抗血栓性ステントであって、
生物活性剤が中に散在した内部層を有する多層コーティングが上に配置されたステント本体、および
一次層からの生物活性剤の突発的放出を防止する部材を含む、抗血栓性ステント。
【請求項28】
表面を有するステント本体、及び
ステント本体の少なくとも一部分上に配置された少なくとも二層を含むコーティング
を含み、該少なくとも二層のうち少なくとも一層が、中に散在した生物活性剤を含み、該少なくとも二層のうち少なくとも一層が、抗血栓性ヘパリン化ポリマーを含む、製造物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント本体および少なくとも2層のコーティングを含む製造物であって、ステント本体が表面を含み、コーティングが、ステント表面上に配置された一次層および一次層上に配置された二次層を含み、該一次層が生物活性剤が散在したポリマー膜を含み、二次層が、巨大分子および疎水性材料と共に共有結合により結合したヘパリンを含む、製造物。
【請求項2】
ポリマー膜が、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、PLLA-ポリ-グリコール酸(PGA)コポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ-(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバレレート)コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エーテルウレタン尿素)、シリコン、アクリル、エポキシド、ポリエステル、ウレタン、パーレン(parlenes)、ポリホスファゼンポリマー、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリオレフィン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1記載の製造物。
【請求項3】
一次層に散在した生物活性剤が、抗癌薬、抗炎症薬、及びこれらの混合物から選択される、請求項1記載の製造物。
【請求項4】
抗癌薬が、アシビシン(acivicin)、アクラルビシン(aclarubicin)、アコダゾール(acodazole)、アクロナイシン(acronycine)、アドゼレシン(adozelesin)、アラノシン(alanosine)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アロプリノールナトリウム(allopurinol sodium)、アルトレタミン(altretamine)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、アモナフィド(amonafide)、アムプリゲン(ampligen)、アムサクリン(amsacrine)、アンドロゲン、アングイジン(anguidine)、アフィジコリングリシネート(aphidicolin glycinate)、アサリー(asaley)、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、バチルス・カルメット-グエリン(Bacillus calmette-guerin、BCG)、Bakerのアンチホル(Baker's Antifol)(可溶性)、β-2'-デオキシチオグアノシン、ビサントレンhcl(bisantrene hcl)、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、BWA 773U82、BW 502U83×HCL、BW 7U85メシレート、セラセミド(ceracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン(carmustine)、クロランブシル(chlorambucil)、クロロキノキサリン-スルホンアミド(chloroquinoxaline-sulfonamide)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、クロモマイシンA3(chromomycin A3)、シスプラチン、クラドリビン(cladribine)、コルチコステロイド、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、CPT-11、クリスナトル(crisnatol)、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン(cytarabine)、シテムベナ(cytembena)、ダビスマレエート(dabis maleate)、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCL(daunorubicin HCL)、デアザウリジン、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、ジアンハイドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、ジアジクオン(diaziquone)、ジブロモズルシトール(dibromodulcitol)、ジデムニンB(didemnim B)、ジエチルジチオカルバメート(diethyldithiocarbamate)、ジグリコアルデヒド(diglycoaldehyde)、ジヒドロ-5-アザシチジン、ドキソルビシン、エキノマイシン(echinomycin)、エダトレキセート(edatrexate)、エデルホシン(edelfosine)、エフロルニチン(eflornithine)、エリオット溶液(Elliot's solution)、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、リン酸エストラムスチン(estramustine phosphate)、エストロゲン、エタニダゾール(etanidazole)、エチオホス(ethiofos)、エトポシド、ファドラゾール(fadrazole)、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(fenretinide)、フィルグラスチム(filgrastim)、フィナステライド(finasteride)、フラボン酢酸(flavone acetic acid)、フロクスウリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン(fludarabine phosphate)、5-フルオロウラシル、フルオソル(Fluosol)、フルタミド(flutamide)、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン(goserelin acetate)、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘキサメチレンビスアセタミド(hexamethylene bisacetamide)、ホモハリントニン(homoharringtonine)、硫酸ヒドラジン、4-ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL(idarubicin HCL)、イフォスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン-1αおよびβ、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-6、4-イポメアノール(4-ipomeanol)、イプロプラチン(iproplatin)、イソトレチノイン(isotretinoin)、ロイコボリンカルシウム(leucovorin calcium)、酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)、レバミソール(levamisole)、リポソーマルダウノルビシン(liposomal daunorubicin)、リポソーム被包性ドキソルビシン、ロムスチン(lomustine)、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、塩酸メクロレタミン(mechlorethamine hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、メノガリル(menogaril)、メルバロン(merbarone)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、メスナ(mesna)、バチルス・カルメット-グエリンのメタノール抽出残渣、メトトレキセート、N-メチルホルムアミド、ミフェプリストン(mifepristone)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトマイシン-C、ミトタン(mitotane)、塩酸ミトキサントロン(mitoxantrone hydrochloride)、単核細胞/大食細胞コロニー刺激因子、ナビロン(nabilone)、ナフォキシジン(nafoxidine)、ネオカルジノスタチン(neocarzinostatin)、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate)、オルマプラチン(ormaplatin)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ(pala)、ペントスタチン(pentostatin)、ピペラジンジオン、ピポブロマン(pipobroman)、ピラルビシン(pirarubicin)、ピリトレキシム(piritrexim)、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone hydrochloride)、PIXY-321、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)、プレドニムスチン(prednimustine)、プロカルバジン(procarbazine)、プロゲスチン、ピラゾフリン(pyrazofurin)、ラゾキサン(razoxane)、サルグラモスチム(sargramostim)、セムスチン(semustine)、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、スピロムスチン(spiromustine)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン、スロフェヌール(sulofenur)、スラミンナトリウム(suramin sodium)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソテール(taxotere)、テガフール(tegafur)、テニポシド(teniposide)、テレフタルアミジン(terephtalamidine)、テロキシロン(teroxirone)、チオグアニン、チオテパ(thiotepa)、チミジン(thymidine)注射、チアゾフリン(tiazofurin)、トポテカン(topotecan)、トレミフェン(toremifene)、トレチノイン(tretinoin)、塩酸トリフルオペラジン(trifluoperazine hydrochloride)、トリフルリジン(trifluridine)、トリメトレキセート(trimetrexate)、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード(uracil mustard)、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンゾリジン(vinzolidine)、Yoshi 864、ゾルビシン(zorubicin)、及びこれらの混合物から選択される、請求項3記載の製造物。
【請求項5】
抗炎症薬が、非ステロイド系抗炎症薬、COX-2阻害剤、グルココルチコイド、及びそれらの混合物から選択される、請求項3記載の製造物
【請求項6】
非ステロイド系抗炎症薬が、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム(piroxicam)、テノキシカム(tenoxicam)、トルメチン(tolmetin)、ケトロラク(ketorolac)、オキサプロジン(oxaprosin)、メフェナム酸、フェノプロフェン(fenoprofen)、ナムブメトン(nambumetone)、アセトアミノフェン、及びこれらの混合物から選択される、請求項5記載の製造物
【請求項7】
COX-2阻害剤が、ニメスリド(nimesulide)、NS-398、フロスリド(flosulid)、L-745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC-57666、DuP-697、パレコキシブナトリウム(parecoxib sodium)、JTE-522、バルデコキシブ、SC-58125、エトリコキシブ(etoricoxib)、RS-57067、L-748780、L-761066、APHS、エトドラク(etodolac)、メロキシカム(meloxicam)、S-2474、及びこれらの混合物から選択される、請求項5記載の製造物
【請求項8】
グルココルチコイドが、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン(meprednisone)、トリアムシノロン、パラメタゾン(paramethasone)、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン(desoxycorticosterone)、及びこれらの混合物などから選択される、請求項5記載の製造物
【請求項9】
一次層が、その中に散在させた第二の生物活性剤を含む、請求項1記載の製造物。
【請求項10】
巨大分子が、合成巨大分子、タンパク質、生体ポリマー及びそれらの混合物から選択される、請求項1記載の製造物。
【請求項11】
合成巨大分子が、ポリジエン、ポリアルケン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリ-α-置換アクリル酸およびその誘導体、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルハライド、ポリスチレンおよびその誘導体、ポリオキシド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリイミン、ポリスルフィド、ポリリン酸、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxanes)、ポリヘテロ環、セルロースおよびその誘導体、ならびにそれらのコポリマーおよび誘導体から選択される、請求項10記載の製造物。
【請求項12】
タンパク質が、プロタミン、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーから選択される、請求項10記載の製造物。
【請求項13】
生体ポリマーが、ポリサッカライド、ゼラチン、コラーゲン、アルギネート、ヒアルン酸(hyalunic acid)、アルギン酸、カラギーナン、コンドロイチン、ペクチン、キトサン、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーから選択される、請求項10記載の製造物。
【請求項14】
疎水性物質が、複数の反応性官能基を有し、巨大分子と結合した後の水溶解度が100mg/ml未満である、請求項1記載の製造物。
【請求項15】
疎水性物質が、オクタデシルアミン、アルカノイックアミン(alkanoic amine)、胆汁酸、ステロール、アルカノイック酸、及びそれらの混合物から選択される、請求項1記載の製造物。
【請求項16】
ヘパリンが組換えヘパリン、ヘパリン誘導体、及びヘパリン類似体から選択される、請求項14記載の製造物
【請求項17】
ステントおよびその上に配置されたコーティングを含む製造物であって、コーティングが一次層および二次層を含み、一次層が生物活性剤が中に散在するポリマー膜を含み、二次層が、巨大分子および疎水性材料と共に共有結合により結合したヘパリンを含む、製造物の調製方法であって、
洗浄剤でステントを洗浄する段階、
ポリマーおよび生物活性剤を溶媒と組み合わせることにより、ポリマーと生物活性剤の混合物を形成させ、その混合物をステントに塗布することにより、一次層を調製する段階、
ヘパリンを溶媒と組み合わせ、ヘパリンおよび溶媒溶液にステントを液浸して二次層を塗布し、その後ステントを乾燥させることにより二次層を調製する段階
を含む方法。
【請求項18】
ポリマーと生物活性剤の混合物に、第二の生物活性剤を添加する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
一次層のコーティングを塗布する段階が、ポリマーと生物活性剤の混合物中にステントを浸漬する段階を含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
一次層のコーティングを塗布する段階が、ポリマーと生物活性剤の混合物をステント上に噴霧する段階を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
一次層上に二次層を塗布する段階を含む、ステント上の薄膜ポリマー層に散在した生物活性剤の突発的放出を防止するための方法であって、該二次層が、巨大分子および疎水性材料と共に共有結合により結合したヘパリンで構成される、方法。
【請求項22】
医療装置の表面をコーティングすることによって、有機液体と接触する表面を有する医療装置における血栓症を阻害する方法であって、コーティングが少なくとも2層を含み、生物活性剤を有するポリマー層が、巨大分子および疎水性材料と共に共有結合により結合したヘパリンの層の下に配置される、方法
【請求項23】
多層コーティング層を有する抗血栓性ステントであって、
生物活性剤が中に散在した内部層を有する多層コーティングが上に配置されたステント本体、および
一次層からの生物活性剤の突発的放出を防止する部材を含む、抗血栓性ステント。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−500987(P2006−500987A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539605(P2004−539605)
【出願日】平成15年1月11日(2003.1.11)
【国際出願番号】PCT/KR2003/000058
【国際公開番号】WO2004/028406
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(503400581)メディプレックス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】