説明

抗酸化作用を有する組成物

【課題】抗酸化作用を有する天然植物に由来する組成物を提供する。また独特な苦味や渋味を有する天然植物に由来しながらも、それをうまくマスキングすることによって良好な嗜好性を有する抗酸化作用を有する組成物、特に経口用の組成物を提供する。またホップに由来する強い苦味や渋味をマスキングする方法を提供する。
【解決手段】組成物の有効成分として、ミチヤナギ、ホップ、およびシソからなる群から選択される少なくとも2種の植物の加工物を用いる。また、ホップの苦みのマスキングには、ホップとミチヤナギとシソとを組み合わせて用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然植物に由来する、抗酸化作用を有する組成物に関する。特に本発明は、抗酸化作用を有する組成物であって、天然植物に由来する独特な苦味や渋味が抑制されてなり嗜好性に優れた食品組成物に関する。また本発明は天然植物に由来する抗酸化剤ならびにそれを含む食品、皮膚外用剤(化粧品を含む)または医薬部外品に関する。さらに本発明は、特にホップに由来する苦味や渋味をマスキングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老化の主な原因は加齢であるが、近年、環境条件の悪化や生活様式の変化、社会生活の複雑化に伴うストレスの増加などによりこの老化が促進される要因が増えている。その一方で、昨今の長寿化に伴い、老化の進行を抑制して若さを維持しながら健康に生活することを望む高齢者も増加している。
【0003】
老化とは、身体の様々な機能が低下することであるが、細胞レベルでは、細胞が何らかの傷害を受けることによって分裂増殖の回数が限界に達し、組織再生能力が低下する現象がみられる。ここで細胞を傷害する要因としては、例えば紫外線や放射線などの照射、薬物などによる傷害、あるいは生体内で発生する活性酸素による作用を挙げることができる。特に活性酸素は、酸素を利用してエネルギー代謝を行う生物では必然的に発生するものであり、この意味から、老化を遅延させて若さを維持し、また老化に伴う身体機能の衰えや障害を防止するための有効な対策として、生体内で発生する活性酸素の有害作用を抑制する方法を挙げることができる。
【0004】
この目的で、従来より各種の抗酸化剤が提案されている。例えば、抗酸化作用を有する成分としては、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類;アスタキサンチンやβ−カロチンなどのカルテノイド類;カテキンやケルセチンなどのポリフェノール類;クルクミンやフェルラ酸等のフェノール化合物(以上、例えば特許文献1参照);その他、各種の植物抽出物(例えば、アカメガシワ、カキノキ、クワ、セイヨウオトギリソウ、アスナロなど)(以上、特許文献2または3参照)が知られている。これらの特許文献には、ホップ、シソおよびミチヤナギの抽出物に抗酸化作用があることも記載されている。
【0005】
また、ホップは苦味や渋味を特徴とする植物であり、その苦味を利用した食品がビールである。しかし食品の種類によっては、その苦味や渋味をマスキングしたほうがよい場合もあり、かかるマスキング剤として、メントール、人工甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン酸、サッカリン、スクラロースなど)が提案されている(特許文献4)。しかし、他の植物成分を利用してホップ特有の苦味や渋味を相殺しマスキングしようとする提案はまだなされていない。
【特許文献1】特開2005−336167号公報
【特許文献2】特開2003−212770号公報
【特許文献3】特開2004−189663号公報
【特許文献4】特開2000−159691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗酸化作用を有する天然植物に由来する組成物を提供することを目的とする。特に本発明は、独特な苦味や渋味を有する天然植物に由来しながらも、それをうまくマスキングすることによって良好な嗜好性を有する抗酸化作用を備えた組成物、特に経口用の組成物を提供することを目的とする。また本発明は、天然植物に由来する抗酸化剤、並びに当該抗酸化剤を配合した食品、皮膚外用剤(化粧品を含む)および医薬部外品を提供することを目的とする。さらに本発明は、天然植物のなかでも特にホップに由来する強い苦味や渋味をマスキングする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討していたところ、ホップ、シソおよびミチヤナギの加工物を2種以上組み合わせることによって、これらが有する抗酸化能が相乗的に増強すること、特にホップまたは/およびシソの加工物にミチヤナギの加工物を組み合わせることによって、より高い増強効果が得られることを確認した。
【0008】
また本発明者は、ホップ加工物、特にホップ球果(毬花)の溶媒抽出物の苦味や渋味が、シソまたはミチヤナギを併用することでマスキングできること、特にホップ加工物にシソとミチヤナギ双方の加工物を併用することによって、苦味や渋味といった不快な味が完全にマスキングされ、またその一方で香味が発現して良好な嗜好性を有する組成物が得られることを確認した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を包含するものである。
【0010】
(I)組成物
I-1.ミチヤナギ、ホップ、およびシソからなる群から選択される少なくとも2種の植物の加工物を含有する組成物。
I-2.上記加工物が、2種以上の植物の組み合わせからなり、当該組み合わせがミチヤナギとホップ、またはミチヤナギとホップとシソからなるものである、I-1に記載する組成物。
I-3.上記加工物が、上記植物の溶媒抽出物またはその乾燥物である、I-1またはI-2に記載する組成物。
I-4.経口組成物である、I-1乃至I-3のいずれかに記載する組成物。
I-5.抗酸化能を有する組成物である、I-1乃至I-4のいずれかに記載する組成物。
【0011】
(II)抗酸化剤およびそれを含む製品
II-1.ミチヤナギ、ホップ、およびシソからなる群から選択される少なくとも1種の植物の加工物を有効成分とする抗酸化剤。
II-2.II-1に記載する抗酸化剤を含有する食品、皮膚外用剤(化粧品を含む)または医薬部外品。
【0012】
(III)ホップに由来する苦味および渋味を低減する方法
III-1.ホップの加工物と、ミチヤナギおよびシソの加工物とを併用することを特徴とする、ホップに由来する苦味および渋味を低減する方法。
【0013】
(IV)ホップまたはシソの抗酸化能の増強方法
また、後述する実験例で示すように、本発明者の研究により、ホップまたはシソのいずれか少なくとも1種にミチヤナギを組み合わせて用いることによって、ホップまたはシソが有する抗酸化能が相乗的に増強されることが判明した。従って本発明はかかる知見に基づいて下記の方法を提供するものでもある。
IV-1.ホップまたはシソのいずれか少なくとも一方の加工物に、ミチヤナギの加工物を組み合わせて用いることを特徴とする、ホップまたはシソが有する抗酸化能を増強する方法。
IV-2.ホップの加工物100重量部に対してミチヤナギの加工物を1〜10000重量部、好ましくは1〜3000重量部、より好ましくは10〜2000重量部、さらに好ましくは20〜1500重量部、またはシソの加工物100重量部に対してミチヤナギの加工物を1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部の割合で組み合わせて用いる、IV-1記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
従来より、抗酸化作用を有する食品が、生活習慣病(高血圧症、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病など)や老化予防の目的のために広く利用されている。また従来より抗酸化作用を有する化粧料が、アンチエイジングを目的として提案されている。本発明の組成物は、前述するように、ホップ、シソまたはミチヤナギの加工物を2種以上組み合わることによって抗酸化活性が相乗的に増強され、強い抗酸化能を有するため、上記の目的、詳しくは生活習慣病や老化予防を目的とした食品組成物、またはアンチエイジングを目的とした化粧品を始めとする皮膚外用組成物(医薬部外品を含む)を提供することができる。
【0015】
特に本発明の組成物は、生薬として食経験のあるミチヤナギ、並びに食用素材として広く使用されているシソやホップを有効成分とするものであるため、安全性が高く、食品、化粧料等の皮膚外用剤またはそれらの素材として有効に用いることができる。
【0016】
また、本発明の組成物は、前述するように、強い抗酸化能を有するため、食品や化粧料等の皮膚外用剤(医薬部外品を含む)に添加して用いられる抗酸化剤として有用である。
【0017】
なお、ホップは、通常苦味や渋味が強く食品として摂取しにくい食品素材であるが、本発明で示すように、当該ホップにミチヤナギとシソとを組み合わせることによって、その苦味や渋味が顕著にマスキングされ、しかも良好な香味を有するようになる。本発明が提案するホップの苦味低減方法は、ホップ加工物を必須成分として配合する食品の味や嗜好性を改善するために有効であり、斯くして、本発明によれば、前述する本発明の組成物を呈味および嗜好性良好な食品として提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(1)組成物
本発明の組成物は、有効成分として、後述するミチヤナギ、ホップおよびシソから選択される2種以上の植物の加工物を含むことを特徴とする。
【0019】
(1-1) ミチヤナギ加工物
ミチヤナギ(Polygonum aviculare)は、タデ科ミチヤナギ属に属する植物である。当該ミチヤナギは、その開花時の全草を乾燥したものが漢方の分野では「扁蓄」または「扁竹」と称されて、利尿薬として黄疸や腎臓病などに、また民間では腹痛あるいは駆虫薬に使われていることからわかるように、長年にわたって食経験のある植物である。なお、ミチヤナギとして、同属のオオミチヤナギ(Polygonum aviculare var. vegetum)、オクミチヤナギ(P. aviculare var. platycarpum)、ヤンバルミチヤナギ(P. plebeium)、アキノミチヤナギ(P. polyneuron)、P. heterophyllumP. mandshuricumなどを用いることもできる。
【0020】
本発明においてその適用部位は特に制限されず、従来より生薬として使用されている部位、例えば全草、またはその一部(枝、葉、茎、花、果実、花穂、樹皮、種子、根および根茎など)を広く用いることができるが、好ましくは葉や枝、またはこれらを含む部位である。
【0021】
ミチヤナギのこれらの部位は、通常、乾燥後、本発明の形態や目的とする剤型に応じて種々の加工処理〔粉砕処理、抽出処理、濃縮処理、乾燥処理(スプレードライ処理、凍結乾燥処理を含む)、造粒処理など〕に供され、加工物として調製される(以下、本発明が対象とするミチヤナギの加工物を、単に「ミチヤナギ加工物」ともいう)。また、本発明においては予め発酵処理や酵素処理したものを使用することもできる。
【0022】
本発明が対象とするミチヤナギ加工物としては、例えば、粉砕加工物(粗粉末、細粉末のいずれを含む)、溶媒で抽出した抽出エキス、その乾燥物(乾燥抽出エキス)、さらにこれを粉末にした粉末乾燥抽出エキスなどを挙げることができる。好ましくは抽出エキス、またはその乾燥物(乾燥抽出エキスまたは粉末乾燥抽出エキス)である。
【0023】
なお、抽出エキスは、ミチヤナギの抽出対象部位を、そのまま或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、圧搾または煮沸処理したものを冷水、熱水若しくは有機溶媒、あるいは水と有機溶媒の混合液等の抽出溶媒で抽出することにより取得することができる。この抽出に使用される有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。上記抽出溶媒の中で、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール(より好ましくはエタノール)、あるいは水とこれらの低級アルコールとの混合液を挙げることができる。
【0024】
かかる抽出エキスの調製方法は、特に制限されるものではなく、常法に従って行うことができる。一例として、ミチヤナギの葉や枝を含む部位の乾燥粉砕物1重量部に対して2〜500重量部、好ましくは50〜200重量部の水を加え、室温〜100℃程度、好ましくは50〜80℃程度で撹拌しながら1〜300分程度、好ましくは30〜180分程度抽出を行った後、濾過により固形分を取り除く方法を挙げることができる。
【0025】
かくして得られる抽出エキスは、ミチヤナギの可溶性成分が抽出溶媒に溶解した液状物である。これを乾燥して乾燥抽出エキスを得る方法としては、減圧蒸留等により抽出溶媒を除去する方法、または減圧乾燥や凍結乾燥等の乾燥処理を施して抽出溶媒を除去する方法、ドライスプレーや噴霧乾燥処理などを挙げることができる。
【0026】
また、ミチヤナギ加工物としては、例えば乾燥葉の形態のもの、または乾燥粉末葉の形態のものが、株式会社龍榮総研より市販されており、誰でも商業的に入手することができる。
【0027】
(1-2) ホップ加工物
ホップ(Humulus lupulus)は、アサ科カラハナソウ属に属する植物である。その球果(毬花ともいわれる)はビールの原料として使用されるとともに、健胃、静菌、睡眠、食欲増進、消化促進、および利尿作用などの薬理作用を有することから、古くから薬用植物として利用されている植物である。本発明においてその適用部位は特に制限されず、例えば全草、またはその一部(枝、葉、茎、花、果実、球果、樹皮、種子、根および根茎など)を広く用いることができるが、好ましくは球果(毬花)またはそれを含む部位である。
【0028】
ホップのこれらの部位は、前述するミチヤナギと同様に、通常、乾燥後、その形態や目的とする剤型に応じて種々の加工処理〔粉砕処理、造粒処理、抽出処理、濃縮処理、乾燥処理(スプレードライ処理、凍結乾燥処理を含む)など〕に供され、加工物として調製される(以下、本発明が対象とするホップの加工物を、単に「ホップ加工物」ともいう)。また、本発明においては予め発酵処理や酵素処理したものを使用することもできる。
【0029】
本発明が対象とするホップ加工物としては、例えば、粉砕加工物(粗粉末、細粉末のいずれを含む)、有機溶媒、水またはこれらの混合液などの溶媒で抽出した抽出エキス、その乾燥物(乾燥抽出エキス)、さらにこれを粉末にした粉末乾燥抽出エキスなどを挙げることができる。好ましくは抽出エキス、またはその乾燥物(乾燥抽出エキスまたは粉末乾燥抽出エキス)である。なお、抽出エキスの調製方法は、前述するミチヤナギの抽出エキスの調製方法に準じて行うことができる。
【0030】
一例として、ホップの球果を含む部位の乾燥粉砕物1重量部に対して2〜700重量部、好ましくは50〜300重量部の水を加え、室温〜100℃程度、好ましくは50〜80℃程度で撹拌しながら1〜300分程度、好ましくは10〜90分程度抽出を行った後、濾過により固形分を取り除く方法を挙げることができる。
【0031】
ホップ加工物としては、例えば乾燥葉の形態のもの、または乾燥粉末葉の形態のものが、アスク薬品株式会社、龍榮総研より市販されており、誰でも商業的に入手することができる。
【0032】
(1-3) シソ加工物
シソ(Perilla frutescens)は、シソ科シソ属に属する植物である。通常食用にするシソには、青シソ(P. frutescens var. crispa f. viridis)と赤シソ(P. frutescens var. crispa f. purpurea)の2種類がある。またこの他にちりめん紫蘇なども知られている。本発明ではこの別を問わず、いずれのシソをも使用することができるが、好ましくは、赤シソまたはちりめん紫蘇である。
【0033】
これらのシソの葉や穂は広く食用に使用されるとともに、漢方の分野でも、赤シソの葉は「蘇葉」(そよう)または「紫蘇葉」(しそよう)と称され、理気薬(気が停滞している状態を改善する薬物、精神を安定させる作用もある)として半夏厚朴湯や香蘇散に配合して使用されている。また成熟した果実は、「蘇子」(そし)と称され、咳、喘息、便秘などの治療にも使用されている。本発明においてその適用部位は特に制限されず、例えば全草、またはその一部(枝、葉、茎、花、穂、果実、種子、樹皮、根および根茎など)を広く用いることができるが、好ましくは葉またはそれを含む部位である。
【0034】
シソのこれらの部位は、前述するミチヤナギやホップと同様に、通常、乾燥後、その形態や目的とする剤型に応じて種々の加工処理〔粉砕処理、造粒処理、抽出処理、濃縮処理、乾燥処理(スプレードライ処理、凍結乾燥処理を含む)など〕に供され、加工物として調製される(以下、本発明が対象とするシソの加工物を、単に「シソ加工物」ともいう)。また、本発明においては予め発酵処理や酵素処理したものを使用することもできる。
【0035】
本発明が対象とするシソ加工物としては、例えば、粉砕加工物(粗粉末、細粉末のいずれを含む)、有機溶媒、水またはこれらの混合液などの溶媒で抽出した抽出エキス、その乾燥物(乾燥抽出エキス)、さらにこれを粉末にした粉末乾燥抽出エキスなどを挙げることができる。好ましくは抽出エキス、またはその乾燥物(乾燥抽出エキスまたは粉末乾燥抽出エキス)である。なお、抽出エキスの調製方法は、前述するミチヤナギの抽出エキスの調製方法に準じて行うことができる。
【0036】
一例として、シソの葉を含む部位の乾燥粉砕物1重量部に対して2〜500重量部、好ましくは50〜200重量部の水を加え、室温〜100℃程度、好ましくは50〜80℃程度で撹拌しながら1〜300分程度、好ましくは10〜90分程度抽出を行った後、濾過により固形分を取り除く方法を挙げることができる。
【0037】
シソ加工物としては、例えば乾燥葉の形態のもの、または乾燥粉末葉の形態のものが、株式会社龍榮総研、丸善製薬株式会社より市販されており、誰でも商業的に入手することができる。
【0038】
(1-4)本発明の組成物
本発明の組成物は、前述するホップ加工物、ミチヤナギ加工物またはシソ加工物のいずれか2種以上を組み合わせて含有するものであり、斯くしてより高い抗酸化能を発揮することを特徴とする(実験例参照)。この組み合わせは、特に制限されず、ミチヤナギ加工物とホップ加工物との組み合わせ、ミチヤナギ加工物とシソ加工物との組み合わせ、ホップ加工物とシソ加工物との組み合わせ、ミチヤナギ加工物とホップ加工物とシソ加工物との組み合わせのいずれでもよいが、より高い抗酸化活性が得られるという点で、好ましくはミチヤナギ加工物とホップ加工物またはミチヤナギ加工物とシソ加工物の組み合わせであり、より好ましくはミチヤナギ加工物とホップ加工物との組み合わせである。なお、抗酸化能に加えて、良好な呈味および良好な嗜好性が得られるという点で、好ましくはミチヤナギ加工物とシソ加工物との2種の組み合わせ、より好ましくはホップ化合物とミチヤナギ加工物とシソ加工物との3種の組み合わせを挙げることができる。
【0039】
これらの各植物加工物の配合比は、本発明の効果(抗酸化能の増強効果、苦味や渋味のマスキング効果)を損なわないものであれば特に制限されない。例えば、ミチヤナギ加工物を基準とすると、ミチヤナギ加工物100重量部に対してホップ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは1〜1000重量部、さらに好ましくは5〜1000重量部;シソ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0040】
またホップ加工物を基準とすると、ホップ加工物100重量部に対してミチヤナギ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜3000重量部、より好ましくは10〜2000重量部、さらに好ましくは20〜1500重量部;シソ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0041】
さらにシソ加工物を基準とすると、シソ加工物100重量部に対してミチヤナギ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部;ホップ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0042】
本発明の組成物は、その抗酸化作用が有効に利用できるものであればよく、特にその種類を問うものではない。好ましくは食品などの経口組成物、または化粧品などの皮膚外用組成物である。なお、かかる外用組成物には医薬部外品が含まれる。
【0043】
本発明の組成物が食品である場合、当該食品を摂取した場合に、生体内で抗酸化作用を発揮する有効量の上記各種の植物加工物(ミチヤナギ加工物、ホップ加工物およびシソ加工物を総称して「植物加工物」という)を含む必要がある。制限されないが、例えば、本発明の組成物がミチヤナギ加工物を他の植物加工物と組み合わせて含む場合、当該組成物の一日摂取量あたりに含まれるミチヤナギ加工物の量としては、0.1mg〜5000mg、好ましくは1mg〜1000mg、より好ましくは5mg〜500mg、さらに好ましくは5mg〜100mg(乾燥物相当量)を挙げることができる。また本発明の組成物がホップ加工物を他の植物加工物と組み合わせて含む場合、当該組成物の一日摂取量あたりに含まれるホップ加工物の量としては、0.01mg〜5000mg、好ましくは0.1mg〜500mg、より好ましくは0.5mg〜500mg、さらに好ましくは0.5〜80mg(乾燥物相当量)を挙げることができる。さらに、本発明の組成物がシソ加工物を他の植物加工物と組み合わせて含む場合、当該組成物の一日摂取量あたりに含まれるシソ加工物の量としては、0.01mg〜5000mg、好ましくは0.1mg〜500mg、より好ましくは0.5mg〜500mg、さらに好ましくは0.5〜80mg(乾燥物相当量)を挙げることができる。
【0044】
本発明の組成物は、上記の植物加工物そのものからなるものであってもよいし、それを有効成分として薬学上または食品衛生上許容される担体又は添加物等の他の成分を配合されているものであってもよい。かかる担体又は添加物の種類及び配合量は、本発明の効果を損なわないことを限度として、食品や皮膚外用剤(化粧料を含む)の剤型や商品形態、又は使用目的に応じて、適宜選択調整することができる。
【0045】
かかる本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記加工物に加えてさらに他の植物加工物、機能性成分、または薬効成分を配合することができる。なお、これらの成分は、1種単独で上記植物加工物と組み合わせて使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて上記加工物と併用することもできる。
【0046】
他の植物加工物としては、本発明で使用するミチヤナギ加工物等と同様に、抗酸化作用を有するアカメガシワ、カキノキ、クワ、セイヨウオトギリソウ、ツボクサ、サクヨウガレーガ、ヤーバサンタ、ローズヒップ、アスナロ、アセンヤク、イタドリ、イチヤクソウ、アンズ、ケイカンカ、ハクカユマトウ、シラカバ、セイヨウサンザシ、セイヨウノコギリソウ、タラヨウ、ドクダミ、トルメンチラ、バクモンドウ、ヒバ、ブドウ、ムクロジ、モッカ、レイシ、ローマカツミレ等の植物抽出物(特許文献2または3);ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼを阻害する作用を有する例えばブドウの種子、ひじき、モロヘイヤ、ひじき、ハマスゲ、豆,米および麦などの穀類、ミルラ、バジル、タイムなどのハーブ類、カカオエキス、コーヒーエキス、梅肉エキス、サンザシエキス、およびクロレラ等の植物抽出物;女性ホルモン様作用を有する大豆抽出物やブラックコホシュエキス;血圧降下作用および精神安定を有する米胚芽抽出エキスなどを挙げることができる。
【0047】
機能性成分としては、保湿剤、抗酸化剤、血糖降下剤、抗コレステロール剤、免疫賦活剤などを挙げることができる。
【0048】
ここで、保湿剤としては、ヒアルロン酸またはその塩、コンドロイチン硫酸またはその塩、グルコサミン、コラーゲン、セラミド、ベタインを挙げることができる。
【0049】
また抗酸化剤としては、制限されないが、乾燥酵母、グルタチオン、リポ酸、ケルセチン、カテキン、コエンザイムQ10、エンゾジノール、プロアントシアニジン類、アントシアニジン、アントシアニン、カロチン類、リコピン、フラボノイド、リザベラトロール、イソフラボン類、亜鉛、イチョウ葉、月桃葉、ハイビスカス、メラトニンを挙げることができる。なかでも、抗酸化剤として知られるグルタチオンを比較的多く含み、かつそれ以外のミネラルも多様に含んでいることから、乾燥酵母が好ましい。
【0050】
血糖降下剤としては、制限されないが、難消化性デキストリン、グアバ葉、小麦アルブミン、L-アラビノース、豆鼓エキス、桑葉、しょうが、サラシア、α-リノレン酸、アマチャヅル、オオムギ、オタネニンジン、キダチアロエ、セイヨウタンポポ、ダイダイ、チョウセンアザミ、ニンニク、ハトムギ、バナバ、ビルベリー、ブラックコホシュ、マコモ、コタラヒム、杜仲葉を挙げることができる。
【0051】
抗コレステロール剤としては、制限されないが、大豆タンパク質、リン脂質結合大豆ペプチド、キトサン、植物ステロールエステル、植物ステロール、植物スタノールエステル、難消化性デキストリン、アルギン酸ナトリウム、サイリウム種皮、アスタキサンチン、イノシトール、コエンザイムA、カルシウム、マグネシウム、カルニチン、シルクプロテイン、タウリン、メチオニン、α-リノレン酸、グアガム、コンドロイチン硫酸、アマチャヅル、アルファルファ、イチョウ、オオバコ、オオムギ、オタネニンジン、オーツ麦、オリーブ、ガジュツ、ギムネマ、キャッツクロー、クコ、クロレラ、スピルリナ、西洋サンザシ、大豆サポニン、唐辛子、ニンニク、ビルベリー、ベニバナ、ユッカ、ラフマ、アガリクス、冬虫夏虫、紅麹、レイシを挙げることができる。
【0052】
免疫賦活剤としては、アガリクス、ラクトフェリン、冬虫夏虫、アルギニン、トリプトファン、バリン、ロイシン、キチン、キトサン、アロエ、キダチアロエ、エキナセア、オウギ、キャッツクロー、クコ、スピルリナ、ハトムギ、紅花、マカ、マコモ、ラフマを挙げることができる。
【0053】
薬効成分としては、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ミネラル分(鉄、亜鉛、マグネシム、ヨードなど)、脂肪酸(EPA、DHAなど)を挙げることができる。ここでビタミンとしては、ビタミンA群に属するビタミン〔例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン及びそれらの薬理学的に許容される塩類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなど)など〕、ビタミンB群に属するビタミン〔例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトール、パンガミン酸及びそれらの薬理学的に許容されるこれらの塩類(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサールカルシウム、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなど)など〕、ビタミンC群に属するビタミン〔アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩類(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムなど)など〕、ビタミンD群に属するビタミン〔例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール及びそれらの薬理学的に許容される塩類など)など〕、ビタミンE群に属するビタミン〔例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩類(酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウムなど)など〕、その他のビタミン[例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン(ビタミンP)、エリオシトリン、ヘスペリジン及びそれらの薬理学的に許容される塩類(塩化カルニチンなど)など〕を挙げることができる。
【0054】
またアミノ酸としては、ロイシン、イソイロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、シスチンまたはこれらの薬理学的に許容される塩類(例えばアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、塩酸システインなど)、などを挙げることができる。好ましくは、バリン、ロイシンおよびイソロイシン等の分岐鎖アミノ酸、グルタチオン、システイン、グルタミン酸、グリシン、セリン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、メチオニン、スレオニン、リジン、シスチン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、プロリン、アミノエチルスルホン酸、コラーゲン、カルシウムである。
【0055】
本発明の組成物を食品として調製する場合、上記の配合物をそのまま経口組成物として使用してもよいし、また必要に応じて、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、散剤(粉末剤)、および顆粒剤(ドライシロップを含む)などの各種の固形製剤、または内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの、通常の剤型にすることができる。各成分の安定性から、好ましくは固形製剤の形態(剤型)である。
【0056】
製剤化は、医薬や食品(特にサプリメント)の分野で採用されている通常の製剤化手法を適用することができる。例えば、錠剤は、各成分を処方に従って添加配合し、粉砕、造粒、乾燥、整粒および混合を行い、得られた調製混合物を打錠することによって調製することができる。
【0057】
さらに、必要に応じて、製剤化のための添加物、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤などを配合することができ、また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にすることもできる。ペースト状の膠剤とすることもできる。
【0058】
かかる本発明の食品組成物の1日の目安摂取量は、対象者の年齢、性別、体重、症状に応じて、適宜設定調整することができるが、例えば、成人(体重60kg)を対象とする場合、通常10〜10000mgの量を挙げることができる。なお、かかる1日摂取量中には、各植物加工物が、ミチヤナギ加工物の場合は0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mg、より好ましくは5〜500mg(乾燥重量)となるように、またホップ加工物の場合は0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜1000mg、より好ましくは0.5〜500mg(乾燥重量)となるように、さらにシソ加工物の場合は0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜1000mg、より好ましくは0.5〜500mg(乾燥重量)となるように調整することが望ましい。なお、かかる摂取量を1日に1〜数回に分けて摂取することもできる。
【0059】
また本発明の組成物を化粧料などの外用組成物として調製する場合、上記の配合物をそのまま外用組成物として使用してもよいし、また必要に応じて、液状、乳液状、クリーム状、軟膏状などの各種の外用剤の剤型にすることができる。
【0060】
製剤化は、化粧品などを含む皮膚外用剤の分野で採用されている通常の製剤化手法を適用することができる。さらに、必要に応じて、製剤化のための添加物、例えば、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、増粘剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤、顔料、香料などを配合することができ、また、保湿剤や美白剤そのほかの栄養成分を配合することもできる。
【0061】
かかる本発明の外用組成物に配合される各植物加工物の割合としては、ミチヤナギ加工物(乾燥物に換算)の場合は20〜90重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜90重量%となるように、またホップ加工物(乾燥物に換算)の場合は2〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%となるように、さらにシソ加工物(乾燥物に換算)の場合は2〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%となるように調整することが望ましい。
【0062】
(2)抗酸化剤およびそれを含む製品
本発明は、前述するミチヤナギ加工物、ホップ加工物およびシソ加工物からなる群から選択される加工物を2種以上組み合わせることによって抗酸化活性が相乗的に増強された組成物を、抗酸化剤として利用することを特徴とするものである。
【0063】
ここで抗酸化剤とは、食品、化粧品を含む皮膚外用組成物、医薬部外品などの各種製品の酸化を防止して製品の安定性を図る目的で、当該製品に添加して用いられる添加剤を意味する。
【0064】
ミチヤナギ加工物、ホップ加工物およびシソ加工物の組み合わせは、増強された抗酸化能を奏する限り特に制限されないが、より高い抗酸化活性が得られるという点で、好ましくはミチヤナギ加工物とホップ加工物またはミチヤナギ加工物とシソ加工物との組み合わせであり、より好ましくはミチヤナギ加工物とホップ加工物との組み合わせである。なお、抗酸化能に加えて、良好な呈味および良好な嗜好性が得られるという点で、好ましくはミチヤナギ加工物とシソ加工物との組み合わせ、より好ましくはホップ化合物とミチヤナギ加工物とシソ加工物との3種の組み合わせを挙げることができる。
【0065】
これらの各植物加工物の配合比は、本発明の効果(抗酸化能の増強効果)を損なわないものであれば特に制限されない。例えば、ミチヤナギ加工物を基準とすると、ミチヤナギ加工物100重量部に対してホップ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは1〜1000重量部、さらに好ましくは5〜1000重量部;シソ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0066】
またホップ加工物を基準とすると、ホップ加工物100重量部に対してミチヤナギ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜3000重量部、より好ましくは10〜2000重量部、さらに好ましくは20〜1500重量部;シソ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0067】
さらにシソ加工物を基準とすると、シソ加工物100重量部に対してミチヤナギ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部;ホップ加工物の併用割合として1〜10000重量部、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0068】
また本発明の抗酸化剤に含まれる各植物加工物の割合としては、ミチヤナギ加工物(乾燥物に換算)の場合は20〜90重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜90重量%となるように、またホップ加工物(乾燥物に換算)の場合は2〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%となるように、さらにシソ加工物(乾燥物に換算)の場合は2〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%となるように調整することが望ましい。
【0069】
かかる抗酸化剤は、上記の植物加工物からなるものであってもよいし、また必要に応じて、製剤化のための添加物、例えば、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、増粘剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤、顔料、香料などを含有することもできる。
【0070】
かかる本発明の抗酸化剤は、前述するように、食品、化粧品を含む皮膚外用組成物、医薬部外品などの各種製品の酸化を防止して製品の安定性を図る目的で、当該製品に添加して用いられる。この目的に適うものであれば、製品に対するその配合割合は特に制限されない。例えば、抗酸化剤が少なくともミチヤナギ加工物を含むものである場合、上記各種の製品100重量%あたりのミチヤナギ加工物(乾燥物に換算)の配合量が50重量%以下、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜20重量%となるような割合で;抗酸化剤が少なくともホップ加工物を含むものである場合、上記各種の製品100重量%あたりのホップ加工物(乾燥物に換算)の配合量が40重量%以下、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは1〜12重量%となるような割合で;また抗酸化剤が少なくともシソ加工物を含むものである場合、上記各種の製品100重量%あたりのシソ加工物(乾燥物に換算)の配合量が40重量%以下、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは1〜12重量%となるような割合を挙げることができる。
【0071】
(3)ホップに由来する苦みを低減する方法
また本発明は、ホップ、具体的には上述するホップ加工物に由来する苦味および渋味を低減する方法を提供する。当該方法は、上記ホップ加工物に、前述するミチヤナギ加工物およびシソ加工物を併用することによって実施することができる。
【0072】
ここでホップ加工物、ミチヤナギ加工物およびシソ加工物としては、前述するものを制限なく挙げることができるが、好ましくはホップ加工物としてはホップの球果の溶媒抽出物、ミチヤナギ加工物としてはミチヤナギの葉枝の溶媒抽出物、およびシソ加工物としてはシソ葉の溶媒抽出物をそれぞれ例示することができる。
【0073】
これらの各植物加工物の配合比は、本発明の効果(ホップの苦味低減効果)を奏する限り特に制限されないが、通常、ホップ加工物100重量部に対して、ミチヤナギ加工物の併用割合として1〜3000重量部、好ましくは10〜2000重量部、より好ましくは20〜1500重量部;シソ加工物の併用割合として1〜2000重量部、好ましくは5〜1000重量部、より好ましくは10〜1000重量部を挙げることができる(乾燥重量換算)。
【0074】
斯くして、ホップ加工物が有する強い苦味ならびに渋味がマスキングされ、不快な味が改善されるとともに、香味が発現して、良好な嗜好性を有する組成物を調製することができる。本発明の方法は、ホップ加工物を素材として食品組成物を調製する場合に有効に利用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、調製例、実施例および実験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0076】
調製例1 ミチヤナギエキスの調製
ミチヤナギの葉と茎の混合物の乾燥粉末5gを、精製水500mLに加え、60〜70℃になるように加温しながら30分間攪拌抽出した。得られた抽出物を濾過して、抽出液約400mLを回収し、これをミチヤナギエキス(液状)とした。さらに、これをスプレードライヤーで乾燥させて粉末状のミチヤナギエキスを調製した。スプレードライヤーによる乾燥は、上記の抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0077】
調製例2 ホップエキスの調製
ホップの球果の乾燥粉末5gを、精製水500mLに加え、60〜70℃になるように加温しながら30分間攪拌抽出した。得られた抽出物を濾過して、抽出液約400mLを回収し、これをホップエキス(液状)とした。さらに、これをスプレードライヤーで乾燥させて粉末状のホップエキスを調製した。スプレードライヤーによる乾燥は、上記の抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0078】
調製例3 シソエキスの調製
赤シソの葉の乾燥粉末5gを、精製水500mLに加え、60〜70℃になるように加温しながら30分間攪拌抽出した。得られた抽出物を濾過して、抽出液約400mLを回収し、これをシソの葉エキス(液状)とした。さらに、これをスプレードライヤーで乾燥させて粉末状のシソの葉エキスを調製した。スプレードライヤーによる乾燥は、上記の抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0079】
調製例4 ミチヤナギとホップの混合エキスの調製
ミチヤナギの葉と茎の混合物の乾燥粉末2.5gとホップの球果の乾燥粉末2.5gを、精製水500mLに加え、60〜70℃になるように加温しながら30分間攪拌抽出した。得られた抽出物を濾過して、抽出液約400mLを回収し、これをミチヤナギとホップの混合エキス(液状)とした。さらに、これをスプレードライヤーで乾燥させて粉末状のミチヤナギとホップの混合エキスを調製した。スプレードライヤーによる乾燥は、上記の抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0080】
調製例5 ミチヤナギとシソの混合エキスの調製
ミチヤナギの葉と茎の混合物の乾燥粉末2.5g と赤シソの葉の乾燥粉末2.5g を、精製水500mLに加え、60〜70℃になるように加温しながら30分間攪拌抽出した。得られた抽出物を濾過して、抽出液約400mLを回収し、これをミチヤナギとシソの混合エキス(液状)とした。さらに、これをスプレードライヤーで乾燥させて粉末状のミチヤナギとシソの混合エキスを調製した。スプレードライヤーによる乾燥は、上記の抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0081】
調製例6 ミチヤナギとホップとシソの混合エキスの調製
ミチヤナギの葉と茎の混合物の乾燥粉末0.33gとホップの球果の乾燥粉末0.33gと赤シソの葉の乾燥粉末0.33gを、精製水500mLに加え、60〜70℃になるように加温しながら30分間攪拌抽出した。得られた抽出物を濾過して、抽出液約400mLを回収し、これをミチヤナギとホップとシソの混合エキス(液状)とした。さらに、これをスプレードライヤーで乾燥させて粉末状のミチヤナギとホップとシソの混合エキスを調製した。スプレードライヤーによる乾燥は、上記の抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0082】
実験例1
ミチヤナギエキス、ホップエキスおよびシソエキス、並びにこれらを混合したエキスについて、下記の方法に従って、(1)抗酸化作用、および(2)呈味を調べた。なお、これらの実験には、上記調製例1〜3で調製した各植物エキス(液状)を、表1に示す割合で使用した(実施例1〜4、比較例1〜3)。
【0083】
【表1】

【0084】
(1)抗酸化作用
<試験方法>
各被験試料(実施例1〜4、比較例1〜3)の抗酸化能の測定は、PAO抗酸化能測定キット(製造元:MED.DIA s.r.l., 製品コード:KPA-050、販売元:日研ザイル(株))を用いて、その取り扱い説明書の記載に従って行った。なお、当該試薬は、銅イオンの還元反応(Cu++→Cu)を利用して、被験試料の抗酸化能を短時間(約5分)で簡便に測定するものである。還元反応によって生成したCuは、試薬に含まれる発色剤(Bathocuproine)と複合体を形成し、480〜490nmにおいて吸光を示す。従って、この波長での吸光度を測定することによって被験試料の抗酸化能(還元能)を評価することができる。
【0085】
<操作>
(1)試験管に、試薬キットに装備されたサンプル希釈液を390μl分注し、これに被験試料10μl添加して攪拌する。
(2)これをマイクロプレートに200μl/ウエルの割合で分注し、490nmにおける吸光度を測定する。なお、ブランクとしてサンプル希釈液を用いる。
(3)試薬キットに装備されたCu++試薬を各ウエルに50μl分注し、軽くゆすって攪拌し、室温にて3分間インキュベートする。
(4)反応停止液を各ウエルに50μl分注し、軽くゆすって攪拌する。
(5)490nmにおける吸光度を測定する。
(6)反応開始前の吸光度と反応終了後の吸光度の差(吸光度変化)を求め、標準物質(2mM尿酸)を用いて作成した検量線を利用して、尿酸相当濃度(μmol/L)を算出し、その値に2189を掛けてCu還元力を算出する(尿酸1mM=2189μmol/L Cu還元力)。
【0086】
<結果>
結果を表2と図1に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
なお、表2は各被験試料(実施例1〜4、比較例1〜3)について測定した抗酸化能(μmol/L)(測定値)を示すとともに、2種以上の植物エキスを混合して調製した被験試料(実施例1〜4)については、2種以上の混合による影響を評価するため、単品の被験試料(比較例1〜3)の抗酸化能(測定値)から算出した理論値に対する比(測定値/理論値)を算出した結果を併せて示す。
【0089】
この結果から、ホップ、シソおよびミチヤナギのエキスをそれぞれ2種類以上併用することによって、各植物エキスが単独で有する抗酸化能が相乗的に増強することがわかった。特に抗酸化能の増強効果は、(1)ホップとシソとの組み合わせ、(2)シソとミチヤナギとの組み合わせ、および(3)ホップとミチヤナギとの組み合わせの順で、高くなる傾向が得られた。
【0090】
(2)呈味評価試験
<試験方法>
モニター被験者15名に各被験試料(実施例1〜4、比較例1〜3:表1)を摂取してもらい、各呈味(甘味、酸味、苦味、渋味、塩味、うま味、香味)を評価してもらうとともに、それらの結果から総合評価をだしてもらった。各評価は、各自下記の5段階で評価してもらい、15名の平均点数を算出し、小数点第一位を四捨五入した。
【0091】
(i)各呈味について
5点:各呈味を感じる
4点: 〃 やや感じる
3点:どちらともいえない
2点: 〃 あまり感じない
1点: 〃 感じない。
【0092】
(ii)総合評価について
◎:好ましい
○:やや好ましい
△:どちらともいえない
▲:あまり好ましくない
×:好ましくない。
【0093】
<結果>
総合評価の結果を上記表2に併せて示す。また各被験試料(実施例1〜4、比較例1〜3)について検討した各呈味の評価とその総合評価を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
この結果からわかるように、ホップエキスが有する強い苦味と渋味は、ホップエキスにシソエキスもしくはミチヤナギエキスを組み合わせることによって、若干苦味と渋味が残るものの、抑制することができた(実施例1と2参照)。また、ホップエキスにシソエキスとミチヤナギエキスの両方を組み合わせると、ホップエキスが有する強い苦味と渋味に加えて、ミチヤナギエキスがやや有する酸味、苦味および渋味も完全に抑えられ、しかも良好な香味を有する植物エキスが得られた。
【0096】
このことから、ホップエキス、シソエキスおよびミチヤナギエキスの組み合わせからなる植物エキスは、高い抗酸化作用を有するとともに、酸味、苦味および渋味等といった不快な味がなく、良好な香味を有する嗜好性に優れた食用素材として提供できることがわかる。
【0097】
実験例2
上記の実験例1で最も強い抗酸化能を示したホップエキスとミチヤナギエキスの組み合わせ(混合エキス)について(表4参照)、実験例1と同じ方法によって抗酸化作用を調べた。結果を表4に併せて示す。
【0098】
【表4】

【0099】
この結果からわかるように、ホップエキス100重量部に対して、ミチヤナギエキスを少なくとも50〜700重量部の割合で併用した場合にも、抗酸化能の相乗的な増強効果が認められた。またこの増強効果は、ホップエキスに対するミチヤナギエキスの割合を増すごとに増大する傾向が認められた。
【0100】
実施例1
表5に記載する処方からなる組成物(処方例1〜25)を、慣用法に従って錠剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、粉砕、造粒、乾燥、整粒および混合を行い、それを定法に従って打錠して錠剤の形態に調製した。
【0101】
【表5】

【0102】
実施例2
表6に記載する処方からなる組成物(処方例26〜50)を、慣用法に従って顆粒剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、定法に従って混合、造粒、乾燥および整粒して顆粒剤の形態に調製した。
【0103】
【表6】

【0104】
実施例3
表7に記載する処方からなる組成物(処方例51〜75)を、慣用法に従って乳液として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、定法に従って混合して乳液の形態に調製した。
【0105】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施例1〜4および比較例1〜3の抗酸化活性(μmol/L)を測定比較した結果を示す(実験例)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミチヤナギ、ホップ、およびシソからなる群から選択される少なくとも2種の植物の加工物を含有する組成物。
【請求項2】
上記加工物が、2種以上の植物の組み合わせからなり、当該組み合わせがミチヤナギとホップ、またはミチヤナギとホップとシソからなるものである、請求項1に記載する組成物。
【請求項3】
上記加工物が、上記植物の溶媒抽出物またはその乾燥物である、請求項1または2に記載する組成物。
【請求項4】
経口組成物である、請求項1乃至3のいずれかに記載する組成物。
【請求項5】
ミチヤナギ、ホップ、およびシソからなる群から選択される少なくとも1種の植物の加工物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項6】
請求項5に記載する抗酸化剤を含有する食品、皮膚外用剤または医薬部外品。
【請求項7】
ホップの加工物と、ミチヤナギおよびシソの加工物とを併用することを特徴とする、ホップに由来する苦味および渋味を低減する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−231008(P2008−231008A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71518(P2007−71518)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】