説明

抗IL−2受容体抗体による呼吸器疾患の治療

本発明は呼吸器疾患を処置するための方法を提供する。特に、対象に抗体を含む治療有効量の医薬製剤を投与することを含む喘息の処置のための方法を提供し、ここでの前記抗体は、IL-2受容体と結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に抗体治療、詳細には抗IL-2受容体抗体、及びそれらの抗体治療によるT-細胞仲介呼吸器及びアレルギー性疾患、詳細には、Thl-及びTh2-細胞仲介アレルギー性疾患及び/又は徴候、及び最適には喘息の治療方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
T-細胞活性化及びサイトカイン分泌は、呼吸器及びアレルギー性疾患、最適には喘息を含む範囲において、重要な役割を果たす。喘息は間欠的、可逆的な気道閉塞、及び気道過敏反応性と関連する気道炎症により特徴付けられる複合性疾患である。その原因は未知であるが、リンパ球、マスト細胞、好酸球、及び好中球を含む気道炎症は、慢性持続性喘息を有する全ての患者の一般的な特徴である。主として活性化T細胞由来のサイトカインの合成及び放出は、気道における炎症過程を開始させ、そして持続させる(Drazen J. M. 等.,J Exp. Med. 183:1-5 (1996) )。CD4+/CD25+ T細胞により分泌される多様なサイトカインは、IL-3、IL-4、 IL-5、及び顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子を含み、慢性喘息性炎症に関与する(Kon O.M.等.,Ifzflamm. Res. 48: 516-23 (1999))。また活性化T細胞は、喘息における気道回復工程の開始及び調節の中核であり、気道繊維症(airway fibrosis)を導くようである。従って、治療戦略は、特に喘息患者において有益であり得る活性化T細胞を阻害することに関する。
【0003】
病理解剖研究及び気管支炎の生検標本からのデータは、喘息気道中で増加したT細胞の数の存在を確認する。15人の喘息患者の検死解剖研究では、喘息気道におけるT細胞の数は、10人の年齢が適合する非喘息個体の約2倍であったことが示された(Azzawi M. 等., Am. Rev. Respir. Dis. 145: 1477-82 (1992) )。これらの細胞はインターロイキン-2(IL-2)受容体(CD25)の発現、ヒト白血球抗原-DR、very late antigen-1及びIL-5mRNA発現によって示されるように、活性化される。末梢血重篤喘息患者の研究では、増加したCD4+/CD25+ T細胞の数の存在が実証された(Corrigan C. J.等., Lancet 1: 1129-32 (1988) )。また喘息患者からの気管支肺胞洗浄の研究では、増加した数の活性化CD25+ T細胞、並びに増加したレベルのIL-2及び可溶性IL-2受容体が実証された(Alexander A. G.等., J. Eur. Respir. 8:574-8 (1995); Park C. S.等., Chest. 106: 400-6 (1994); Walker C.等.,J. Allergy Clin. Immunol. 88: 935-42 (1991)).
【0004】
ダクリズマブは免疫抑制剤であり、組換DNA技術により生産したヒト化免疫グロブリンIgGlモノクローナル抗体である。ダクリズマブは、活性化リンパ球の表面上で発現するヒト高親和性IL-2受容体のαサブユニット(p55a、CD25、又はTacサブユニット)へ特異的に結合する。Tacサブユニットは外来抗原又はIL-2との相互作用の後のみに発現する。なぜならダクリズマブは、90%のヒト免疫グロブリン配列と10%だけのネズミ配列から構成され、その免疫原性は低いからである。ダクリズマブのアミノ酸配列及び核酸配列は、米国特許No.5,530,101及び5,693,761中に開示され、個々についてその全体が参照により本明細書に組入れられている。
【0005】
ダクリズマブは、米国食品医薬品局に、シクロスポリン及びステロイドに付随する免疫抑制を受けている患者における腎の同種移植拒絶を予防するために(アザチオプリン又はミコフェノール酸モフェチルの有無を問わず)認可された(ZENEPAX(商標),Package Insert, Roche Laboratories (2000) )。移植後6ヶ月での急性拒絶の症例は、プラセボと比較した2重盲検(それらの最初の死体腎の同種移植を受けた患者をコントロールした試験)において、ダクリズマブ5用量(1 mg/kg)を投与された患者の40%まで減少させた。そこにはダクリズマブの使用に関連した追加の毒性がなく、日和見感染又はリンパ腫のいずれの増加もなかった(Vincenti F. 等.,J. Med. N. Eyagl. 338: 161-5 (1998); Nashan B. 等., Transplantation 67:110-5(1999))。
【0006】
更にダクリズマブはシクロスポリン及び/又はステロイドと同時に免疫抑制を受けていた自己免疫性ブドウ膜炎の患者において評価された。患者は全身性免疫抑制剤をやめさせられて、最終的に4週間ごとにダクリズマブの注入を受けた。ダクリズマブで12ヶ月間処置した10人の患者のうちの8人おいて、視力を悪化させることなく、重篤な視界を脅かす眼球内の炎症性疾患の発現を予防することを示した。この治療は、良好な耐性であった(Nussenblatt R.B.等.,Proc.Nat'l.Acad Sci USA96:7462-6(1999))。
【0007】
フェーズI、中程度から重症の19人の乾癬患者におけるダクリズマブの多用量試験で当該薬剤は、その投与に関連する特異的な副作用もなく、良好な耐性を示した。患者はダクリズマブ(2mg/kg投与後、1mg/kg投与)を2,4,8,12及び16週間注入された。当該試験では、2週間ごとの投与で、治療の最初の4週間、末梢血及び末梢組織におけるCD25の安定した遮断を見せた。
【0008】
前処置により<36のPASIスコアを有する患者は、8週で30%において重症度の平均減少を示した(P=0.02)。可変の受容者の脱飽和(desaturation of receptors)は4週後に始まり、それは疾患改善における逆作用(reversal)と相関した。治療16週の間、IL-2受容体サブユニットの発現は44.8%減少した。絶対的なT-細胞数は、試験の過程の間に有意な変化を見せなかった。有意な有害事象は、本試験の間にはダクリズマブにより生み出されなかった(Krueger J. G.,等., J. Am. Acad. Dermatol. 43: 448-58 (2000))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
呼吸器疾患、特にT-細胞が仲介した疾患、例えば喘息、及び呼吸器疾患の治療のための有効な治療法がない疾患の有病率の観点では、本発明のゴールである、より有効な治療方法及び治療剤を提供することが高く所望される。慣用の非特異的免疫抑制治療に応答しない新規治療方法及び治療剤は、特により重篤な、難治性の喘息のタイプ、並びに他のT-細胞を仲介する呼吸器及びアレルギー性疾患のために必要とされる。本発明はT-細胞を仲介する呼吸器及びアレルギー性疾患、特に喘息等の呼吸器疾患の治療のための方法を包含し、Thl-及びTh2-細胞を仲介するアレルギー性疾患及び/又は徴候の範囲も含む。当該方法は、抗-IL-2受容体抗体を、及び好適にはヒト化抗体、ダクリズマブ、及びダクリズマブと同じIL-2受容体エピトープと結合する抗体を投与することも含む。本明細書で開示されたフェーズII臨床試験の結果により実証されるように、ダクリズマブは、現行の治療アプローチと比較して、中程度から重篤な喘息の治療に対して、より優れた臨床効果及び長期-持続の有益な結果を与える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、T-細胞を仲介する疾患、特にIL-2受容体を仲介した活性化により惹起される、又は悪化される呼吸器及び/又はアレルギー性疾患、例えばThl-又はTh2-細胞を仲介したアレルギー性疾患又は徴候の治療又は予防処置のための方法を提供する。呼吸器及び/又はアレルギー性疾患及び/又は兆候の治療的又は予防的処置のための方法は、IL-2受容体へ特異的に結合する抗体を含む医薬製剤の治療的又は予防的有効量をかかる治療を必要とする患者に投与することを含む。他の態様では、当該処置方法は、更に標的疾患のための併用薬を患者に投与することを含む。
【0011】
1つの好適な態様では、本発明の方法は喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、鼻ポリープ症、チャーグ・ストラウス症候群、副鼻腔炎、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)から成る群から選定される疾患に適用され得る。
【0012】
他の好適な態様では、本発明の処置方法は、当該疾患が喘息、アトピー性皮膚炎、過敏症、皮膚の掻痒(蕁麻疹)、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ症、副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、皮膚アレルギー、湿疹、花粉熱、アレルギー性胃腸炎、又はチャーグ・ストラウス症候群から成る群から選定されるTh2-細胞を仲介したアレルギー性疾患及び/又は兆候に適用され得る。
【0013】
他の態様では、本発明の処置方法は、当該疾患が間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺繊維症)、過敏性肺疾患、及び過敏性肺炎から成る群から選定されるThl-細胞を仲介した疾患及び/又は徴候に適用され得る。
【0014】
好適な態様では、当該処置方法は軽度、中等度、又は重篤な任意のタイプ(病因学、発症機序)の喘息を有す患者で実施される。特に好適な態様では、当該方法は慢性、持続性喘息を有する患者、又は中等度から重篤な喘息を有する患者で実施される。特に、当該方法はコルチコステロイドにより準最適に(suboptimally)制御された喘息を有す患者のために使用され得る。他の特異的な態様では、本発明の方法は、制限されずにアレルギー性喘息、気管支喘息、運動により誘導される喘息、職業的喘息、バクテリア感染により誘導される喘息、及び"喘鳴小児症候群(wheezy-infant syndrome)"を含む、アトピー性又は非アトピー性喘息を有す患者を処置するために実施され得る。
【0015】
一つの態様では、当該喘息を処置する方法は、併用喘息薬を患者に投与することを更に含む。好適な態様では、当該併用喘息薬は、吸入又は経口ステロイド、ロイコトリエン修飾剤、吸入又は経口β2-アゴニスト、及び吸入ipratropriumから成る群から選定され得る。1つの好適な態様では、当該併用喘息薬は、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、モメタゾン及びアセトニドから成る群から選定される吸入ステロイドである。
【0016】
好適な態様では、本発明の方法は、モノクローナル抗体を用いて実施され、そして特にキメラ、ヒト化又はヒト抗体を用いて実施される。本発明のいくつかの態様では、当該抗体はIL-2受容体の1つ以上の生物学的活性を中和する。
【0017】
特に好適な態様では、本発明の治療方法は、IL-2受容体と特異的に結合するダクリズマブ、又はダクリズマブと同じエピトープへ結合する抗体である抗体で実施される。他の態様では、当該処置方法は、アミノ酸配列において、ダクリズマブのアミノ酸配列と少なくとも60%同一のCDRsを含む抗体を用いて実施され得る。他の態様では、当該方法は、ダクリズマブのCDRsに対するアミノ酸配列において、抗IL2受容体抗体が少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%でさえ同一であるCDRsで実施され得る。好適な態様では、本発明の方法は、前記ヒトIL-2受容体の少なくとも108M-l、及びより好適には、少なくとも109M-1の結合親和性を有する抗体で実施される。
【0018】
好適な態様では、本発明の方法は、非経口、静脈内、筋肉内、又は皮下に投与される抗-IL2受容体抗体を含む医薬製剤で実施される。好適な態様では、当該製剤はダクリズマブを含む。好適な態様では、当該方法は約100 mg/mlのダクリズマブ、約20-60 mMのコハク酸塩緩衝剤(又は20-70 mMのヒスチジン緩衝剤)を含み、約5.5から約6.5、約0.01%−0.1%pH、ポリソルベート、及び等張性に寄与する等張化剤(例えば、約75-150 mMのNaCl、又は約1-100 mMのMgCl2)を有す液体である医薬製剤で実施される。
【0019】
他の態様では、本発明は約0.001mg/kgから10 mg/kg、及び好適には約0.5 mg/kgから4.0 mg/kgである治療有効量の医薬製剤で実施される。いくつかの態様では、当該治療有効量は約100 mgから200 mgの間で固定用量とされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義
本明細書で使用される"抗体"とは、特定の抗原と特異的に結合する、又は特定の抗原と免疫的に反応性である、免疫グロブリン分子を言い、そしてポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む。更に当該用語は、更に遺伝子操作された、又は免疫グロブリンの別の修飾形態、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロ接合抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディー、トリアボディー、及びテトラボディー)、及び抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、rIgG、及びscFvフラグメントを含む)を含む。用語"scFv"とは、単鎖Fv抗体を言い、ここでの慣習の2鎖抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、1つの鎖を形成するために結合している。典型的に、線形ペプチドは2鎖間に挿入され、適宜フォールディング及び活性結合サイトの形成を可能にする。更に本明細書において使用される用語"抗体"は、更に特異的抗原(例えば、異なるタイプのIL-2受容体と反応性のモノクローナル抗体のカクテル)との2つ以上の抗体反応性の混合を包含することを意図する。
【0021】
本明細書において使用される用語"特異的に結合している"、"選択的に結合している"、"特異的反応性"、又は"特異的免疫反応性"とは、タンパク質及び他の生物学的分子の不均一集団中の抗体の存在を決定するために使用され得る結合反応を言う。言い換えれば、それは、抗体が実質的に一つの特異的な抗原以外の任意の抗原と交差反応しない場合の結合反応である。従って、例えば、特異的結合は、抗体が所望される抗原とバックグラウンド(即ち、非特異性/交差反応結合レベル)の2倍を超える、及びより典型的にはバックグラウンドの10から100倍を超える親和性で結合する場合に起こる。抗体の所望される抗原への特異的結合は、一般的に特異的抗原のために選定された抗体を要求する。例えば、特定のタンパク質、又はその多形変異体、対立遺伝子、オルソログ、保存的修飾された変異体、スプライス変異体に特異的に結合するために上昇したポリクローナル抗体は、他のタンパク質とではなく、選定されたタンパク質(例えば、IL-2受容体)と特異的に免疫反応性であるそれらの抗体のみを得るために選定され得る。この選定は他の分子と交差反応する抗体を減らすことにより達成され得る。多様なイムノアッセイフォーマットは、特定のタンパク質と特異的反応性である抗体を選定するために使用され得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、あるタンパク質と特異的反応性である抗体を選定するために日常的に用いられている(例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988) for a description of immunoassay formats and conditions that can be used to determine specific immunoreactivityを参照)。
【0022】
本明細書において使用される"IgGクラスの抗体"とは、IgGl、IgG2、IgG3、及びIgG4の抗体を言う。重鎖及び軽鎖中のアミノ酸残基の数はEUインデックスのものである(Kabat,等. ,"Sequences of Proteins of Immunological Interest",5th ed., National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991);本明細書において使用されるEU ナンバリングスキーム)。
【0023】
"エピトープ"又は"抗原決定基"とは抗体が結合する抗原上のサイトを言う。エピトープは連続的なアミノ酸又はタンパク質の3次フォールディングにより並列した非連続的なアミノ酸から形成される。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的に変性溶媒へ曝されても保持され、一方、3次フォールディングにより形成されるエピトープは、典型的に変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、特有の空間構造において、典型的に少なくとも3個、及びより通常には、少なくとも5又は6-10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間構造を決定する方法は、例えば、x-線結晶学、及び2次元核磁気共鳴を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照。一つの抗体の結合を減少又は排除するタンパク質の中のアミノ酸突然変異が、更に他の抗体の結合も減少又は排除するならば、及び/又は当該抗体がタンパク質への結合と競合するならば、2つの抗体はタンパク質の同一のエピトープへ結合する、即ち、一つの抗体のタンパク質への結合は、他の抗体の結合を減少又は排除すると言われている。
【0024】
本明細書で使用される"VH"又は"VH"とは、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を言い、抗体の抗原結合フラグメントの重鎖、例えば、Fv、scFv、又はFabを含む。"VL"又は"VL"への言及は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を言い、抗体の抗原結合フラグメントの軽鎖、例えば、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む。
【0025】
抗体軽鎖及び重鎖可変領域は、3つの高可変領域により中断される、4つの"フレームワーク"領域を含み、"相補性決定領域"又は"CDRsとも呼ばれる。フレームワーク領域及びCDRsの範囲は、通常の当業者に周知である(例えば、Kabat,等.,"Sequences of Proteins of Immunological Interest",5th ed. , National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)を参照)。多様な軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で相対的に保存されている。抗体のフレームワーク領域(構成軽鎖及び重鎖を組合せたフレームワーク領域)は、3次元空間中にCDRsを位置させ、且つ並列させるために働く。CDRsは抗原のエピトープへ結合するために主要な役割を担う。CDRsの個々の鎖は典型的にCDR1、CDR2、及びCDR3として言及され、N-末端から出発して順番に数えられ、そして更に典型的に鎖(ここでは特にCDRが位置した鎖)によって同定される。従って、VH CDR3は抗体の重鎖の可変ドメイン中に位置し、ここに見出され、一方VL CDR1は抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1であり、ここに見出される。
【0026】
本明細書で使用される用語"モノクローナル抗体"とは、制限されずにハイブリドーマ技術を通して産生させる抗体であり、単一クローン(任意の真核、原核、又はファージクローンを含む)から由来し、抗体を産生させることによる方法ではない抗体を言う。本発明により有用であるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体、及びファージディスプレイ技術、又はそれらの組合せの使用を含む多種多様な当業界において公知の技術を用いて調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当業界において公知の技術及び教示を含む、ハイブリドーマ技術(例えば、Harlow and Lane, "Antibodies:A Laboratory Manual, "Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1988);Hammerling等.,:"Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, "Elsevier, New York (1981), pp.563-681(それらの全ては本明細書中の参照により本明細書に組み入れられている))を用いて産生され得る。ファージ又は同様のベクターにおける組換抗体のライブラリーの選定による抗体の産生は、例えば、Huse等., Science 246:1275-1281 (1989);Ward 等., Nature 341:544-546 (1989);及びVaughan等., Nature Biotech. 14:309-314 (1996)を参照するか、或いは抗原又は抗原をコードするDNAを有する動物を免疫化することによる。
【0027】
用語"遺伝的に変化させた抗体"とは、親(即ち、変化させていない)抗体のアミノ配列から変化させたアミノ酸配列を有す抗体を言う。即ち、本発明の方法により有用である抗-IL2受容体抗体のアミノ酸配列は、天然抗体中で見出された配列に限定されず;抗体は、周知の組換DNA技術を用いて再設計され、所望される特徴を得ることをできる。たった一個又は数個のアミノ酸の変化から可能な変動範囲を完全にするために、例えば、可変領域又は不変領域を再設計する。部位特異的突然変異による不変領域における変化は、治療抗体の機能的特徴(例えば免疫原性、薬物動態的特徴(例えば、血清半減期)、補体結合、膜及び他のエフェクター官能基との相互作用等)を改良又は変化させるために作製することができる。一般的に、抗体可変領域に対する変化は、抗原結合特徴を改善するために作製ことができる。
【0028】
"実質的に同一の不変領域"とは、少なくとも約85-90%、及び好適には少なくとも95%のアミノ酸配列が天然物又は未変化抗体不変領域と同一である、抗体不変領域を言う。
【0029】
本明細書において使用される用語"キメラ抗体"とは、免疫グロブリン分子を言い、ここでの(a)不変領域、又はそれらの一部分は、変化、置換、又は交換されて、抗原結合サイト(可変領域)が異なる又は変化したクラスの不変領域、エフェクター官能基(function)及び/又は種(species)、或いは全体が異なる分子へ連鎖され、キメラ抗体へ新規の特質を与える(例えば、酵素、毒性、ホルモン、成長因子、薬物等);或いは(b)可変領域、又はそれらの一部分は、異なる又は変化させた抗原特異性を有する可変領域により変化、置換、又は交換される。キメラ抗体を産生するための方法は、通常の当業者に周知である。例えば、Morrison等.,Science 229:1202-1207 (1985);Oi 等., BioTechniques 4:214-221 (1986); Gillies等., J.Immunol. Methods 125:191-202 (1989);及び米国特許No.5,807,715;4,816,567;及び4,816,397を参照。それぞれその全体が本明細書中の参照により本明細書に組み入れられている。
【0030】
用語"ヒト化抗体"とは、ヒトフレームワークを含む免疫グロブリンを言い、非ヒト抗体由来の少なくとも1つ、及び好適には全CDRsを含む免疫グロブリンを言い、ここでの任意の不変領域の存在は、ヒト免疫グロブリン不変領域と実質的に同一であり、即ち、少なくとも約85-90%、及び好適には少なくとも95%同一である。従って、おそらくCDRsを除くヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、実質的に同一であり、1つ以上の天然ヒト免疫グロブリン配列の部分に対応する。従って、かかるヒト化抗体はキメラ抗体であり、ここでは実質的に非ヒト種からの対応の配列によって置換された原型のヒト可変ドメイン未満である。ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体からの対応の残基と置換して、変化させてよく、好適には抗体結合を改良させてよい。これらのフレームワーク置換は、当業界における周知の方法、例えばCDRとフレームワーク残基の相互作用をモデリングすることにより同定され、抗原結合及び配列比較のための重要なフレームワーク残基を同定し、特定の位置での異常なフレームワーク残基を同定することができる。例えば、Queen等、米国特許No:5,530,101;5,585,089;5,693,761;5,693,762;6,180,370を参照(それぞれそれらの全体が本明細書中の参照により本明細書に組み入れられている)。抗体は、例えば、CDR-移植(EP239,400;PCT公開WO 91/09967;米国特許No.5,225,539;5,530,101及び5,585,089)、ベニアリング又は再表面化(resurfacing)(EP 592,106;EP 519,596;Padlan, Mol. Immunol.,28:489-498 (1991);Studnicka 等.,Prot. Eng.7: 805-814(1994);Roguska等., Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973(1994)、及びチェーンシャッフリング(米国特許No.5,565,332)を含む当業界において公知の多様な技術(それらの全ては、その全体が本明細書中の参照によって本明細書に組み入れられている)を用いてヒト化され得る。
【0031】
用語"ヒト抗体"はヒト可変領域及び不変領域を含む抗体を意味する。ヒト抗体は本発明の方法に係るヒト患者の治療的処置のために所望され得る。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列から由来する抗体ライブラリーを用いる上記発表したファージディスプレイ法を含む当業界において公知の多様な方法によって作製又は得ることができる。米国特許No.4,444,887及び4,716,111;及びPCT公開WO98/46645;WO 98/50433;WO98/24893; WO98/16654;WO96/34096;WO96/33735;及びWO91/10741を参照。それぞれについて、その全体が本明細書中の参照によって本明細書に組み入れられている。更にヒト抗体はトランスジェニックマウスを用いて生産することができる。トランスジェニックマウスは機能的な内因性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができる。ヒト抗体を生産するためのこの技術の概要は、 Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol.13:65-93 (1995)を参照する。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生産するためのこの技術、並びにかかる抗体を生産するためのプロトコールの詳細な検討は、例えば、PCT公開WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;ヨーロッパ特許No.0598877;米国特許No.5,413,923;5,625,126;5,633,425;5,569,825;5,661,016;5,545,806;5,814,318;5,885,793;5,916,771;及び5,939,598を参照する。それらの全体は本明細書中の参照によって本明細書に組み入れられている。更に、Abgenix,Inc.(Fremont, CA)及びMedarex (Princeton, NJ)等の会社は上記と同様の技術を用いて選定した抗原に対するヒト抗体を提供することを約束できる。選定されたエピトープを認識する完全なヒト抗体は、更に"選択ガイド(guided selection)"として言及される技術を用いて産生され得る。本アプローチにおける選択された非-ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体、は同一エピトープを認識する完全なヒト抗体の選定を導くために使用される(Jespers 等.,Biotechnology 12: 899-903 (1988))。
【0032】
用語"primatized 抗体"とはサル可変領域及びヒト不変領域を含む抗体を言う。primatized抗体を生産するための方法は当業界において公知である。例えば、米国特許No.5,658,570;5,681,722;及び5,693,780を参照する。それらの全体は本明細書中の参照によって本明細書に組み入れられている。
【0033】
用語"アミノ酸"とは、天然及び合成のアミノ酸、並びにアミノ酸アナログ及びアミノ酸様物質を言い、天然のアミノ酸と同様に機能する。アミノ酸は本明細書において、それらの一般的に公知の3文字の符号又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字の符号によって言及され得る。同様にヌクレオチドは、それらの一般的に受け入れられている1文字コードによって言及され得る。
【0034】
"天然のアミノ酸"とは、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸、並びに後に修飾されたそれらのアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンを言う。
【0035】
"アミノ酸アナログ"とは、天然アミノ酸と同一の基本的化学構造を有する化合物、例えば水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基(例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)へ結合した炭素を言う。かかるアナログは修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたアミド基を有してよいが、天然のアミノ酸と同一の基本化学構造を保持する。"アミノ酸様物質"とは一般の化学構造のアミノ酸とは異なる構造を有する化合物を言うが、天然アミノ酸と同様に機能する。
【0036】
用語"ポリペプチド"、"ペプチド"及び"タンパク質"は、ペプチド結合によって連鎖するアミノ酸残基のポリマーを言及するために本明細書において同義的に使用される。当該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応の天然アミノ酸の人工化学類似物質であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマー、修飾したアミノ酸残基を含むアミノ酸ポリマー、及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0037】
本明細書における用語、2つ以上のアミノ酸又はヌクレオチド配列の"同一"又はパーセント"同一性"とは、2つ以上の配列又はサブ配列を言い、後述するデフォルトパラメーターとのアルゴリズムとの比較をBLAST又はBLAST 2.0配列を用いて、又はマニュアルアライメント、及び目視検査により測定すると(例えば、www.ncbi.nlm.nih.govのNCBIのウェブサイトのBLASTの記載を参照)、同一であるか、同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定したパーセンテージを有す(即ち、比較ウィンドウ又は指定領域にかけて最大限に一致するように比較及び位置あわせをした場合、約60%同一性、好適には70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は特定した範囲より高い同一性を有す)。ひいてはかかる配列は"実質的に同一"と言われる。更にこの定義はテスト配列のコンプリメントに言及され、又は適用され得る。当該定義は更に欠失及び/又は挿入を有する配列、並びに置換を有する配列、並びに天然配列を含む(例えば、多形、又は対立遺伝子変異体、及び人工変異体)。配列同一性を測定するための周知のアルゴリズムはgaps等から成ることができる。
【0038】
好適には、同一性は、少なくとも約25個のアミノ酸又はヌクレオチドの長さにある領域にわたり存在し、又はより好適には50-100個のアミノ酸又はヌクレオチドの長さにある領域に渡り存在する。
【0039】
本明細書において使用される"保存的に修飾された変異体"とは、アミノ酸又は核酸配列中の変異体に適用され得る。アミノ酸配列に関して、保存的に修飾される変異体配列は、置換、欠失、又は挿入による配列(一つ又はパーセンテージのアミノ酸を付加又は削除した配列、或いは一つ又は小パーセンテージのアミノ酸を化学的に同様なアミノ酸と置換した配列)を含む。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当業界において周知である。典型的な一つのアミノ酸の他への保存的置換は、以下:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W); 7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)を含む(例えば、Thomas E. Creighton, "Proteins:Structures and Molecular Properties,"(ISBN071677030X, W. H. Freeman, 1992)を参照)。かかるアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体が追加され、そして多型変異体、種間のホモログ、及び本発明の対立遺伝子を排除しない。
【0040】
核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする配列(例えば、保存的に修飾された変異体アミノ酸は配列をコードする核酸配列)を言う。核酸配列の場合、本質的に同一、又は例えば天然に隣接する配列に関連したアミノ酸配列をコードしない。遺伝子コードの縮重のせいで、大部分のタンパク質をコードする多くの保存的修飾された変異体核酸配列が存在する。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、コドンにより特定されるアラニンを有する全ての位置で、当該コドンを、コードされたポリペプチドを変化させずに、発表された他に対応するコドンに変化させることができる。かかる核酸変異体は"サイレント変異"であり、保存的に修飾された変異の1つの種である。ポリペプチドをコードする本明細書における全ての核酸配列は、核酸のサイレント変異も発表する。核酸中のそれぞれのコドン(通常メチオニンのためのみのコドンであるAUG、及び通常トリプトファンのみのコドンであるTGGを除く)を特定の前後関係において認識するだろう当業者は、機能的に同一の分子を産生するために修飾することができる。従って、しばしばポリヌクレオチドをコードする核酸のサイレント変異は、実際のプローブ配列に関するものではなく、発現産物に関して発表された配列において潜在するものである。
【0041】
用語"単離した"、"精製した"、又は"生物学的に純粋"とは、実質的に又は本質的にそれらの天然状態において見出されるような正常に付随する化合物が存在しない原料を言う。純粋及び均質性は、典型的に分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィー等を用いて決定される。調製において存在する優性であるタンパク質又は核酸は、実質的に精製される。特に、単離した核酸はいくつかのオープンリーディングフレームから分離され、遺伝子を天然に隣接させ、且つ遺伝子によりコードされたタンパク質以外のタンパク質をコードする。いくつかの態様における用語"精製した"とは、電気泳動ゲル中に本質的に1つのバンドを生じさせる核酸又はタンパク質を意味する。好適には少なくとも85%の純度、より好適には少なくとも95%の純度、及び最適には少なくとも99%の純度である核酸又はタンパク質を意味する。他の態様における"純度"又は"精製"とは、精製される組成物から少なくとも1つの不純物を除去することを意味する。この意味において精製は均質である精製された化合物が、例えば100%の純度、であることを要求しない。
【0042】
本明細書において使用される"担体"とは、細胞又は哺乳動物に対して非毒性であり、採用される用量及び濃度でそれらへ曝される医薬的に許容され得る担体、賦形剤又は安定化剤を含む。しばしば生理学的に許容され得る担体は、水性pH緩衝化溶液である。生理学的に許容され得る担体の例は、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸、アスコルビン酸を含む抗酸化物質;低分子(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリジン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリシン;モノサッカライド、ジサッカライド、及びグルコース、マンノース、又はデキストランを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩を形成する、カウンターイオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)を含む。
【0043】
本明細書において使用される"治療有効量"とは、疾患及び/又はその徴候、及び/又は併発を緩和し、又は減弱させ、少なくとも部分的に阻止する薬物、薬理活性剤、医薬製剤又は治療に十分な組成物の量を言う。
【0044】
"処置"とは、治療的処置及び予防的又は防止的手段を言う。処置を必要とする対象には、既に当該疾患を有す対象、及び疾患を予防すべき対象を含む。
【0045】
"対象"又は"患者"とは、本明細書において同義で使用され、脊椎動物、好適には哺乳動物、より好適にはヒトを言う。
【0046】
本明細書において使用される用語"から由来する"とは、"から得られる"又は"より生産された"又は"からの系統を引く"を意味する。
【0047】
発明の説明
疾患の適応症
本発明は呼吸器疾患の処置又は予防を必要する対象において、かかる疾患を処置又は予防するための方法を提供する。当該治療方法は、IL-2のIL-2受容体への結合を特異的に阻害する、及び/又はIL-2-を仲介したリンパ球の活性化を特異的に阻害することを可能にする治療有効量の抗体を投与することを含む。好適な態様では、標的とされる呼吸器疾患は喘息である。本発明は病因又は発病の任意のタイプの軽度、中等度、又は重度の喘息の治療のために使用され得る。本明細書において開示されたデータによって実証されるように、当該方法は、特に慢性、持続性喘息、特にコルチコステロイドにより準最適に(sub optimally)制御された喘息を有す患者に対して有効である。更に本発明の方法は、アトピー性又は非アトピー性喘息(アレルギー性喘息、気管支喘息、運動により誘導される喘息、職業的喘息、バクテリア感染により誘導される喘息、"喘鳴小児症候群"(即ち、初期又は早期段階の喘鳴喘息として確認され得る、4又は5齢未満の対象において特に夜間観察される喘鳴の徴候)、及び他の非アレルギー性喘息を含む)の治療に採用され得る。
【0048】
喘息のための処置の効能は、当業界において周知の方法によって測定され得る。本発明の喘息治療のための方法は、1つ以上の以下に示す効能結果を生み出すことを見出した:肺機能上昇(肺活量測定)、喘息悪化の減少、朝のピーク呼気流量の増加、救済治療薬使用の減少、日中及び夜間の喘息徴候の減少、喘息の無い日の増加、喘息悪化に対する時間の増加、並びに1秒中の強制呼気の増加(FEV1)。
【0049】
当該処置方法は、併用喘息薬 (例えば吸入ステロイド)を患者へ投与することを更に含んでよい。好適には当該ステロイドは呼吸器疾患、例えば喘息の処置において使用される一つである。より好適には、当該ステロイドは、ベクロメタゾン, ブデソニド, フルニソリド, フルチカゾン、及びトリアムシノロンから成る群から1つ以上選定される。一つの態様では、当該ステロイドは抗-IL-2受容体抗体と同一の製剤であることができる。他の態様では、当該ステロイドは抗-IL-2受容体抗体の投与とは別に患者に投与される。他の1つの態様では、当該ステロイドは、抗IL-2受容体抗体が存在せずに投与される場合、呼吸器疾患、例えば喘息を処置又は予防するための治療に十分でない量が投与される。
【0050】
1つの態様では、当該ステロイドは患者に任意の副作用又は突発(flare)を引起すのに十分でない量を投与される。好適には、投与されるステロイドの量は、患者に任意の副作用又は突発を引起すのに十分でない量である可能な限り高い用量である。
【0051】
実証された抗-IL2受容体抗体、ダクリズマブの重篤な喘息患者における好酸球レベルを減じる効能に基づき、本発明の方法は、他の呼吸器又はアレルギー性疾患及び/又は徴候の治療のために有用であることが合理的に期待され得る。増加した好酸球レベルは、多くのT-細胞を仲介したアレルギー性疾患の優良な証明である。更にダクリズマブはサイトカインに関連したT-細胞の生産を減少させることが知られている。従ってこれらのT細胞を仲介した炎症性応答に関連した疾患又は徴候は、本発明の方法によるダクリズマブ(又は他の抗-IL2受容体抗体)により処置され得る。
【0052】
処置され得るT-細胞を仲介した呼吸器及び/又はアレルギー性疾患及び/又は徴候は、Thl-細胞及びTh2-細胞を仲介した疾患を含む。例えば、特定のTh2-細胞は、本発明の方法に係るダクリズマブで処置し得るアレルギー性疾患及び/又は徴候(制限されずに:喘息、アトピー性皮膚炎、過敏症、皮膚の掻痒(蕁麻疹)、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ症、副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、皮膚アレルギー、湿疹、花粉熱、アレルギー性胃腸炎、チャーグ・ストラウス症候群を含む)を仲介する。Thl-細胞を仲介した呼吸器疾患及び/又は徴候(制限されずに:間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺繊維症)、過敏性肺疾患、及び過敏性肺炎を含む)は、本発明のダクリズマブ処置方法で処置され得る。
【0053】
更に、間質性肺疾患(ILD)は、しばしば広範囲の全身性自己免疫性疾患(制限されずに:リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、花粉症、強皮症、サルコイドーシス、多発性筋炎症、又は皮膚筋炎を含む)に関与する。結果として、本発明の処置の抗-IL2受容体抗体方法は、それらの全身性自己免疫性疾患に関連した疾患及び/又は徴候の処置において、単独又は他の処置との組合せにおいて有用であり得る。
【0054】
それは好酸球を仲介した疾患及び/又は徴候(制限されずに:肺好酸球増加症、好酸球増加・筋肉症候群、熱帯性好酸球増加症、好酸球増加症候群、及び制限されずに住血吸虫症を含む寄生虫感染症を含む)の範囲にある。多くのこれらの好酸球を仲介した疾患は、現在IL-5に基づく治療により処置される。T-細胞を仲介した疾患(例えば、喘息)における好酸球レベルを減弱させる効能に基づき、本発明の処置の抗-IL2受容体抗体方法は、それらの好酸球を仲介した疾患を処置する中で、単独で、又は他の処置との組合せにおいて更に有用であり得る。
【0055】
慢性閉塞性肺(又は気道)疾患(COPD)は、生理学的に気流障害として定義される症状であり、一般的に慢性気管支炎による気腫及び周囲の気道障害の混合によりもたらされる。COPD は世界で5番目の死因であり、そして有効な薬物と治療法の必要性は、極めて高い。COPDは慢性肺疾患のサブグループであり、喘息も含み、そして気道組織の慢性炎症及び/又は繊維症により特徴付けられる。多くの病態生理学的特徴は、特にこれらの疾患を共有するので、本発明の処置の抗-IL2受容体抗体方法は、COPDの処置のために有用であることが合理的に期待され得る。
【0056】
抗IL-2受容体抗体
本発明において使用するための抗IL-2受容体抗体は、任意のIL-2受容体のエピトープと結合する抗体を含む。好適には当該エピトープは、IL-2のαサブユニット(p55α、CD25、又はTacサブユニット)上で見出される。それらは天然の抗-IL-2受容体抗体(宿主動物によって生産させる抗体)及び組換抗-IL-2受容体抗体を含む。全ての種起源の抗IL-2受容体抗体を含む。限定的でない例示的な天然抗IL-2受容体抗体は、ヒト、トリ、ヤギ、及びヒト抗体を生産するために遺伝的に操作されたトランスジェニックげっ歯動物(その全体が参照により本明細書に組入れられた、例えば米国特許No. 6,300,129 B1(Lonberg等)、及び米国特許No.6,114,598 (Kucherlapati,等)を参照)を含むげっ歯動物(例えばラット、マウス、ハムスター及びウサギ)から由来する抗IL-2受容体抗体を含む。本発明において有用である抗体は、ファージディスプレイ法(その全体がそれぞれ本明細書の参照により組入れられた、例えば米国特許No.5,427,908 (Dower等)及び米国特許No.5,969,108(Bonnert等を参照)を用いて作製してもよい。ヒト患者における使用のために、当該抗体は特異的にヒトIL-2受容体に結合しなければならない。当該抗体はIL-2受容体に少なくとも107 M-1の結合親和性を有すべきであるが、好適には少なくとも108 M-1、より好適には少なくとも108 M-1、最適には109 M-1及び理想的には10l0 M-l 以上の結合親和性を有すべきである。抗体の親和性は、ファージディスプレイ法又は他の方法(本明細書においてその全体を参照により組入れた、例えばCo,等. ,米国特許No.5,714,350参照)を用いたin vitroにおける突然変異誘発より増加し得る。
【0057】
好適には、当該抗体は、IL-2受容体のαサブユニット(p55 α、CD25、又はTacサブユニット)に特異的に結合する。より好適には、IL-2受容体は、活性化リンパ球の表面上に発現するIL-2受容体である。好適には、当該リンパ球はT-細胞である。
【0058】
好適には、当該抗体は少なくとも1つを中和するが、最適には全てのIL-2の生物学的特質、例えば、IL-2を仲介したリンパ球の活性を中和するであろう。当該抗体は、一般的にIL-2受容体のIL-2への結合を阻害又は遮断するであろう。当該抗体は、活性化したT-細胞の増殖又は活性化を阻害し、或いは活性化したT-細胞のアポトーシスを誘導するだろう。
【0059】
好適には、当該抗体は特異的にFcγ受容体を結合せず、それにより当該抗体は実質的に大部分の患者又は全ての患者のT細胞中のマイトジェン応答を活性化しない。好適には当該抗体は、以下の免疫抑制剤として所望され得る特質を有す:抗体は、少なくともたいていの(例えば、少なくとも67%、75%、90%、又は95%)の患者において、有害サイトカイン放出の中でマイトジェン活性を誘導せずにT-細胞の免疫応答を抑制できる。
【0060】
抗IL-2受容体抗体のポリクローナル形態は、ヒトIL-2受容体で免疫化することにより非-ヒト宿主動物において生産され得る。当該モノクローナル抗体は、周知の免疫化及びハイブリドーマ方法論(例えば、Harlow and Lane, "Antibodies:A Laboratory Manual, "Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1988);Hammering等., in:"Monoclonal Antibodies and T- Cell Hybridomas, "Elsevier, New York (1981), pp.563-681) 参照)により生産することができる。例えば、IL-2受容体に抗体特異性をもたらすモノクローナル抗体の生産及び初期スクリーニングは、Uchiyama等.,J. Immunol.126(4),1393(1981)において発表されたように実施することができる。他の適切なモノクローナル抗体はGaulton 等により発表されたM7/20モノクローナル抗体であり(Clin. Immunol. and hnmunopath (1985))、それはモノクローナルラット抗-マウスκ、u、Ig抗体であり、IL-2受容体に特異的である(更にその全体を本明細書の参照により本明細書に組み入れた米国特許No.5,916,559を参照)。他の適切なモノクローナル抗体は、その全体を本明細書中の参照により本明細書に組み入れた米国特許No.4,845,198に開示されるハイブリドーマATCCHB-8555により生産される2A3モノクローナル抗体である。他の適切な抗-IL-2抗体は、米国特許Nos.4,411,993及び4,473,493に発表され、それぞれがその全体を本明細書中の参照により本明細書に組み入れられている。
【0061】
更に組換DNA技術を、本発明に有用である組換抗IL-2受容体抗体を生産するために使用し得る。かかる組換抗体の可変及び/又は不変領域アミノ酸配列は遺伝的に変化させる必要はないが、天然抗体中で見出された配列と同一であり得る。本発明に有用である組換抗IL-2受容体抗体は、原核及び真核発現系を含む任意の発現系により生産される抗体を含む。例示的な原核系はバクテリア系であり、それは典型的に核酸配列を外因的に誘導する発現を可能にする。説明的な真核発現系は、真核細胞(通常の当業者に周知である、例えば昆虫細胞、植物細胞及び特に哺乳動物細胞(例えばCHO細胞、及び骨髄腫細胞、例えばNSO及びSP2/0))に関与する真菌発現系、ウィルス発現系を含む。例えば、それぞれその全体が本明細書中の参照により本明細書に組み入れられた、Morrison 等., Science 229:1202-1207 (1985);Oi 等., BioTechniques 4:214-221(1986);Gillies等.,J. Immunol. Methods 125:191-202 (1989);及び米国特許No. 5,807,715;4,816,567;及び4,816,397を参照。当該抗体は化学合成によっても生産され得る。抗体は生産されるが、当該抗-IL-2受容体抗体は周知の方法、例えばろ過、クロマトグラフィー(例えば、プロテインA等によるアフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、及びゲルろ過)により精製され得る。典型的に、医薬製剤で使用するために最小限に許容され得る抗体の純度は、90%であり、好適には95%、より好適には98%、最適には99%以上である。
【0062】
或いは、組換え体構成の可変及び/又は不変領域配列は、遺伝的に変化させてよい。好適には、本発明において使用される遺伝的に変化させた抗IL-2受容体抗体は、キメラ又はヒト化抗体を含み、それはIL-2受容体に結合し、且つ中和する。例示的に好適なヒト化抗-IL-2受容体抗体はダクリズマブである。ダクリズマブのアミノ酸及び核酸配列は米国特許No.5,530,101及び5,693,761に開示され、それぞれその全体が本明細書中の参照により本明細書に組み入れられている。ダクリズマブ成熟軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を以下に示す:
【0063】
ダクリズマブ成熟κ軽鎖(SEQ ID NO:1)
【表1】

【0064】
成熟γ-1重鎖(SEQ ID NO:2)
【表2】

【0065】
ダクリズマブ(ZENAPAX(商標)として商業的に入手し得る)は、ヒト化モノクローナル抗体であり、特異的にヒト高親和性IL-2受容体のαサブユニット(p55 α、CD25、又はTac サブユニット)へ結合し、活性化リンパ球の表面で発現する。ZENAPAX(商標)はProtein Design Labs, Inc.(以後"PDL";Fremont, CA)によって作り出され、その後Roche Laboratories(Hoffmann-La Roche Inc., Nutley, NJ)により開発され販売されている。現行の臨床態様におけるダクリズマブはIgGlアイソタイプ抗体であるが、同様の治療特質を示すダクリズマブのIgG2M3アイソタイプバージョンも生産され得る。
【0066】
他の好適な抗体は、ダクリズマブと同一のIL-2受容体のエピトープと結合するものを含む。好適には、ダクリズマブと同一のIL-2受容体のエピトープと結合する抗体は、少なくともダクリズマブのアミノ酸配列と60%同一のアミノ酸配列を有する。他の好適な態様では、当該アミノ酸配列はダクリズマブのアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である。
【0067】
他の態様では、ダクリズマブと同一のIL-2受容体のエピトープと結合する抗体は、ダクリズマブのCDRアミノ酸配列と少なくとも60%同一のアミノ酸配列を有するCDRを有す。他の好適な態様では、CDRアミノ酸配列は、ダクリズマブのCDR配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一である。当該抗-IL-2受容体抗体は、任意の認識されるアイソタイプであってよいが、4つのIgGアイソタイプが好適であり、特にIgG2を有するものが好適である。
【0068】
更に本発明の方法は、IL-2受容体に結合し且つ中和する、或いはIL-2受容体のIL-2の結合を妨げるキメラ抗体を含むIL-2を遺伝的に変化させた抗-IL-2受容体抗体を用いて実施してもよい。好適には、当該キメラ抗体は、マウス又はラットから由来する可変領域、及びヒトから由来する不変領域を含むため、当該キメラ抗体は、ヒト対象に投与した場合、より長い半減期及びより少ない免疫原性を有す。当該キメラ抗体を作製する方法は、当業界において公知である。
【0069】
更に本発明は、上記完全な抗IL-2受容体の結合特異性を保持している抗-IL-2受容体抗体のフラグメントの使用を含む。実施例では、制限されずに本明細書で発表した抗体の重鎖、軽鎖、及び可変性領域、並びに抗体のFab及び(Fab')2を含む。
【0070】
更に本発明の方法は、上記抗体に対して修飾した(例えば、サイト指定した突然変異誘発による)が機能的に同等である(例えば、同程度のIL-2受容体結合親和性を示す)、抗-IL2受容体抗体を用いて実施され得る。例えば、当該抗体は改良した安定性(例えば、血清半減期)及び/又は治療効果を有すために修飾され得る。修飾した抗体の例は、アミノ酸残基の保存的置換、及び抗原結合実用性を有意に有害的に変化させない1つ以上のアミノ酸の欠失又は付加による抗体を含む。置換は1つ以上のアミノ酸残基を変化又は修飾させる範囲に定めることができ、治療実用性(例えば、特異的結合能)が維持される範囲に、完全に再設計することができる。1つの好適な態様では、ダクリズマブ(又は任意に他の抗-IL2受容体結合抗体)は、2003年10月15日にファイルされた米国特許出願no.10/687,118(本明細書の参照により本明細書中に組み入れられた)中に発表されたように、有意に血清半減期を拡張させるFcRn 結合領域中の突然変異に関するサイトにより産生され得る。更に本発明の抗体は、後翻訳的(例えばアセチル化、及びリン酸化)又は合成的(例えばラベル化基の結合)に修飾され得る。結合特異性を保持したこれらの修飾された抗体のフラグメントも使用することができる。
【0071】
医薬製剤又は組成物
本発明の抗体は、医薬組成物に製剤化され得る。従って、本発明は更に治療有効量の抗-IL2受容体抗体を投与するための方法及び組成物を提供する。正確な用量は治療目的に依存し、そして通常の当業者により周知技術を用いて確かめられる(例えば、Ansel 等.,"Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery,"(6th Ed. , Media, Pa.: Williams & Wilkins, 1995);"Pharmaceutical Dosage Forms" (Vols. 1-3, ISBN nos. 0824785762、082476918X、0824712692、0824716981) eds. Lieberman等. (New York: Marcel Dekker, Inc., 1992);Loyd V. Allen, Jr., "The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding," (American Pharmaceutical Association, 1999);及びGloria Pickar,"Dosage Calculations, " (Delmar Learning, 1999)を参照)。当業界において周知であるような、生理学的分解(degradation)のための調整、局所に対する全身送達、及び新規プロテアーゼ合成速度、並びに年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作用及び症状の重篤性を必要としてよく、そして通常の当業者により日常の実験により確かめられるであろう。
【0072】
本発明の医薬製剤又は組成物は、患者への投与に適した形態にある本発明の抗体を含む。好適な態様では、当該医薬組成物は、例えば医薬的に許容され得る塩として存在している水溶性の形態(酸及び塩基付加塩を含むことを意味する)にある。"医薬的に許容され得る酸付加塩"とは、遊離塩基の生物学的有効性を保持するそれらの塩類を言い、そしてそれらは、生物学的でない又は他の所望されない無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)、及び有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等)により形成される。"医薬的に許容され得る塩基付加塩"とは、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩等の無機塩基から由来するそれらを含む。特に好適には、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩である。医薬的に許容され得る有機非毒性塩基から由来する塩類は、天然で置換されたアミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンを含む第一、第二、及び第三アミン、置換されたアミンを含む。
【0073】
医薬製剤又は組成物は、1つ以上の以下の:担体タンパク質(例えば、血清アルブミン);緩衝剤;充填物(例えば、微晶性セルロース、ラクトース、コーン及び他のスターチ);結合剤;甘味剤及び他の香味剤;着色剤;及びポリエチレングリコールを更に含み得る。
【0074】
医薬製剤は、投与方法に依存する多様な単位投与形態において投与され得る。例えば、経口投与に適する単位投与形態は、制限されずに、パウダー、錠剤、丸剤、カプセル剤及びロゼンジを含む。経口投与の際に、抗体を消化から保護するべきであることが認識される。典型的にこれは酸加水分解及び酵素加水分解に対して抵抗を与える組成物により分子を錯化することにより、或いは適宜抵抗担体、例えばリポソーム又は保護バリア中に分子をパッケージすることにより達成される。消化から作用薬を保護する方法は、当業界において周知である。
【0075】
投与製剤は、通常、医薬的に許容され得る担体、又は賦形剤中(好適には水性担体)に溶解した本発明の抗体を含む。多様な水性担体は、例えば、緩衝化生理食塩水等を使用することができる。これらの溶液は殺菌され、そして一般的には所望されないものを含有しない。これの組成物は、慣用的な、周知の殺菌技術により殺菌してよい。当該組成物は、適宜生理学的条件(例えば、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤等(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等))に要求されるような医薬的に許容され得る補助物質を含んでよい。これらの製剤中の活性剤の濃度は、選定された投与の特定の型及び患者のニーズによって広く変化させることができ、そして主に液量、粘性、体重等に基づき選定され得る(例えば"Remington's Pharmaceutical Science",(15th ed., Mack Publ. Co. , Easton PA, 1980):及びGoodman & Gillman,"The phrmacological Basis of Therapeutics",(Hardman等., eds., The Mc Graw-Hill Companies, Inc.,1996)を参照)。
【0076】
本明細書において提供される製剤は、処置される特定の適応症のために必要とされるような2つ以上の活性成分を更に含んでもよい。それらは好適には互いに不利に影響しない補足の活性を有す。かかる分子は、意図された目的のために有効である組合せた量で適切に存在する。
【0077】
上記医薬製剤の活性成分は、マイクロカプセル中、コロイド性薬物送達システム中(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)、マイクロエマルション中、又は徐放調製中に封入され得る。かかる技術は当業者に公知である(例えば"Remington's Pharmaceutical Science"(l5th ed. , Mack Publ. Co. , Easton PA, 1980)を参照)。
【0078】
本発明のIL-2受容体抗体を含む医薬製剤又は組成物は、治療的又は予防的処置のために投与され得る。治療適用において、当該組成物は疾患(例えば、喘息)で苦しんでいる患者に、治癒のための有効量、又は少なくとも部分的に疾患を阻む、又はさもなければその徴候及び/又は合併症を緩和するための量を投与される。これを達成するために十分な量は、"治療有効量"と定義される。使用されるべき治療有効量は、特定の呼吸器疾患適応症、医薬製剤のタイプ、疾患の重篤性、及び患者の一般的な健康状態に依存するであろう。単回又は複数回の医薬製剤の投与が患者に求められ、且つ耐性とされるような用量及び回数に依存して投与され得る。いずれにしても当該製剤は有効に患者を処置するために十分な量の活性成分を提供されるべきである。
【0079】
哺乳動物における疾患の発達を妨げる、又は遅延させることができる医薬製剤の量は"予防有効量"と言う。予防的処置のために要求される特定の用量は、当該哺乳動物の病状及び病歴、特に予防されるべき疾患の病状及び病歴、並びに他の要因(例えば、年齢、体重、性別、投与経路、有効性等)に依存するであろう。かかる予防処置は、例えば以前に当該疾患の再発を予防するための疾患を有した哺乳動物、又は疾患の発達に有意な可能性を有す疑いのある哺乳動物中において、用いることができる。
【0080】
製剤の用量及び投与
一般的に抗体の医薬製剤は、貯蔵のために、所望される純度の任意の生理学的に許容され得る担体、賦形剤、又は安定化剤を有する抗体を混合することにより、凍結乾燥又は水性溶液の形態で調製され得る。許容され得る担体、賦形剤又は安定化剤は、採用される用量及び濃度で受容者に対して非毒性であり、そして当業者に知られている緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;抗酸化物質、保存剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、炭水化物、キレート剤、糖、及び他の標準化成分を含む(上記"Remington's Pharmaceutical Science")。
【0081】
In vivo投与のために本明細書で発表されたダクリズマブ製剤は、通常2°から80℃で貯蔵される。当該製剤は、しばしば保存剤を含まず、そしてバイアル及び生理食塩水への希釈物から取り出して4、12又は24時間以内に使用されるべきである。当該製剤は、好適にはろ過の有無を問わず、静脈内又は皮下に投与される。一つの態様では、抗-IL2受容体抗体製剤は、2002年7月25日にファイルされた米国特許出願no.10/206,469に発表された方法(その全体が本明細書中の参照により本明細書に組み入れられている)により凍結乾燥され、安定の中で貯蔵され得る。
【0082】
好適には、ヒト化抗-IL-2受容体抗体、ダクリズマブは、5.0 mLのダクリズマブを5.0 mg/mLの濃度で、殺菌生理食塩水緩衝剤中に含む単回使用ガラスバイアル中に貯蔵される。しかしながら、1から10 mg/mL (例えば1、2、5又は10)、20から50 mg/mL (例えば、20、30、40又は50)、又は60から100 mg/mL (例えば、60、70、80、90又は100)の濃度は、本発明に更に包含される。貯蔵のための好適な製剤では、当該製剤は5 mg/mLの抗体、3.6 mg/mLのリン酸一ナトリウム一水和物(sodium phosphate monobasic monohydrate)、11mg/mLのリン酸二ナトリウム七水和物(sodium phosphate dibasic heptahydrate)、4.6 mg/mLの塩化ナトリウム、0.2 mg/mLのポリソルベート80を含む。当該製剤は、塩酸又は水酸化ナトリウムを更に含んでよく、当該製剤のpHを約6.9にする。
【0083】
1つの好適な態様では、ダクリズマブは、2002年11月8日にファイルされた米国特許出願no.10/291,528(2003年7月24日に刊行された米国公開no. 2003/0138417 Al)で発表された安定な液体製剤として調製され得、その全体は本明細書中の参照により本明細書に組み入れられた。この安定な液体製剤は、特にダクリズマブの皮下投与に有用であり、そして本発明の呼吸器疾患を処置するための方法において使用され得る。好適な態様では、ダクリズマブの当該安定な液体製剤は、約100 mg/mlのダクリズマブ、約20-60 mMのコハク酸緩衝剤(又は約20-70 mMのヒスチジン緩衝剤)を含み、約5.5から約6.5のpH、約0.01%-0.1%のポリソルベート、及び製剤の等張性に寄与する等張緩衝剤(例えば約75-150 mMのNaCI、又は約1-100 mMのMgCl2)を有する。
【0084】
医薬製剤に調製される治療抗体は、経口、直腸、経鼻、局所(経皮、エアロゾル、バッカル及び舌下を含む)、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内を含む)又は吸入治療によることを含む任意の適した経路により投与され得る。一つの態様では、当該製剤は、無針空気圧ショットを用いて投与してもよい。更に好適な経路は受容者の症状及び年齢により変化させてよいと理解されるだろう。好適には、当該医薬製剤は、非経口(例えばボーラス注射による静脈内)に送達され、前記製剤の治療有効量は体内吸収及び循環を経由して送達される。
【0085】
当該製剤の治療有効量は、特定の呼吸器疾患適応症(例えば、重篤な慢性喘息)の重篤度、患者の臨床病歴及び応答、並びに担当医師の裁量に依存する。当該製剤は患者に1回、又は一連の処置中に投与され得る。患者に投与され得る最初の候補薬の投与、及び適切な投与及び治療計画は、通常の当業者に周知の慣用技術を用いて本患者の進行をモニターすることにより確立される。
【0086】
単回投与形態を作るために担体材料と組合され得る活性成分の量は、処置される態様及び特に投与型に依存して変化するであろう。しかしながら、任意の特定の患者のための特定の投与レベルは多様な要因(採用される特定の製剤の活性、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、薬物組合せ、及び治療を行っている特定の疾患の重篤度を含む)に依存することが理解され、そして当業者によって決定され得るであろう。
【0087】
特に、喘息治療の例示的な有効量は、約0.001 mg/kg (即ち、体重1キログラム当りのミリグラム)から約100 mg/kg、好適には約0.001 mg/kgから約10 mg/kg、そしてより好適には約0.005mg/kgから約0.100 mg/kgである。好適な投与量レベルは、約0.001 mg/kg、約0.005 mg/kg、約0.0075 mg/kg、約0.010 mg/kg、約0.015 mg/kg、約0.020mg/kg、約0.030 mg/kg、約0.045 mg/kg、約0.050 mg/kg、約0.060 mg/kg、約0.070 mg/kg、約0.080mg/kg、及び約0.1 mg/kgを含む。好適な投与量は約0.5 mg/kg、1 mg/kg、2 mg/kg、3 mg/kg、4 mg/kg、又は5 mg/kg以下であってよい。好適な投与量は任意の2つの上記の投与量レベルの範囲にあってよい。
【0088】
更に抗IL2受容体抗体の"固定された投与量"製剤が調製され、そして患者に投与される。例えば、患者の体重に関わりなく、予め充填された100又は200 mg/mlのダクリズマブの1 mlのシリンジ製剤は全ての喘息患者に投与され得る。50から100 kgの体重の典型的成人患者集団へ与えられる、100 mgの固定投与量は1 mg/kgから2 mg/kgの間で送達される。固定された投与量製剤は、投与において可能な投与量誤差へ最小化され、そして投与が患者自身によりなされる場合の喘息処置に特に好適であり得る。
【0089】
一般的に、治療抗体のより高用量(例えば、患者あたり1日0.1までから約100 mg)を使用することができる(特に当該薬物が隔離された(secluded)サイトへ投与される場合、及び血流中ではなく、例えば体腔中、又は臓器の内腔中へ投与される場合)。
【0090】
実質的により高い投与量は局所投与において可能である。非経口で投与できる組成物を調製するための現実の方法は、公知であるか、又は当業者に明白であろう(上記、例えば、"Remington's Pharmaceutical Science"、及びGoodman and Gillman, "The Pharmacologial Basis ofTherapeutics"参照)。
【0091】
治療計画
処置中の進捗及び患者の身体症状に依存して、喘息の処置計画を著しく変化させることができる。典型的に、患者は本明細書に発表した任意に1つの抗体を含む医薬製剤を少なくとも単回投与量で投与される。これは引き続き任意の追加の投与量("メンテナンス投与量")が存在する場合、"初回投与量"又は"初回投与(initial administering)又は投与(administration)"或いは"ローディング投与量"と名付けられる。当該抗体薬物は、1回、又は1日、1週、2週、6週ごと、又は1月、2,3、又は6ヶ月ごとに、例えば1、2、3、又は4回の頻度で複数回投与することができる。1つの処置単位の処置間は、疾患の性質及び重篤度に応じて、少なくとも1又は2日、例えば1日から数日(2、3、4、5、又は6日)、数週間、数ヶ月又は数年、或いは無期限続くべきである。当該処置期間は、抗体の初回投与から抗体の最後の投与までの期間として計算される。当該患者は2、3、4以上の処置単位を受けてよい。投与頻度は、患者の改善進捗によって調整することができる。好適なローディング投与量は約2 mg/kgである。ローディング投与量に続く好適なメンテナンス投与量は、約1mg/kgである。好適な投与スケジュールにおいて、当該ローディング投与量は、30分かけて投与され、そしてそれぞれのメンテナンス投与量は15分かけて投与される。
【0092】
注入に関連した徴候を減少させるために、個々に投与される製剤として使用され得る抗IL-2受容体抗体を含む医薬製剤は、他の作用薬との併用(conjunction)において与えられる。典型的にこれらの作用薬は、メチルプレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、オンダンセトロン、アセトアミノフェン、及び同様の機能を有し且つ当業者に周知である多くの付加剤を含む。これらの他の作用薬は、任意の適した経路(経口、直腸、経鼻、局所、非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)、又は吸入治療による経路を含む)により投与することができる。
【0093】
これらの作用薬の投与量レベルは、当業界においても公知である(例えば患者ごとに1 mgから100 g)。例示的な投与量は、メチルプレドニゾロン、ハイドロコルチゾン及びオンダンセトロンのために10-50 mg、60-200 mg、又は200-500 mgを含み;そしてアセトアミノフェンのために100-500 mg、600-1000 mg、1-5 gを含む。単回又は複数回の追加の免疫調節剤を患者に、抗IL-2受容体抗体の医薬製剤の最初の投与又は/及びそれぞれの投与の前又は後、例えば少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、24、36時間、又は2、3、4、5、7、10、20、40、又は60日に投与することができる。
【0094】
1つの態様では、本発明の方法は、標的疾患適応症のための併用薬を投与することを更に含む。例えば、本発明の方法により使用され得る併用喘息薬(慢性及び急性のための)は、制限されずに:吸入及び経口ステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、モメタゾン及びアセトニド);全身性コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、及びデフラザコート);吸入又は経口β2アゴニスト(例えばサルメテロール、フォルモテロール、ビトルテロール、ピルブテロール、テルブタリン、バンブテロール及びアルブテロール);クロモリン及びネドクロミル;抗アレルギー性眼炎の 医薬(例えばデキサメタゾン);メチルキサンチン(例えばテオフィリン及びメピラミン-テオフィリンアセテート);ロイコトリエン修飾剤(例えば、ザフィルルカスト、ジロートン、モンテルカスト及びプランルカスト);抗コリン作動薬(例えば臭化イパトロピウム(ipatropium bromide));他の治療抗体(例えば、細胞間接着分子又はIgEに対する抗体);トロンボキサンA2シンテターゼ阻害剤;トロンボキサンプロスタノイド受容体アンタゴニスト;他のエイコサノイド修飾因子(例えば、アルプロスタジル対.PGE1、ジノプロストン対.PGE2、エポプロステノール対.プロスタサイクリン、及びPGI2アナログ(例えばPG12 ベラプロスト)、セラトロダスト、オザフレル、ホスホジエステラーゼ4アイソザイム阻害剤、トロンボキサンA2シンテターゼ阻害剤(例えばアゼラスチン);ダイテック(ditec)(低用量クロモグリク酸2ナトリウム及びフェノテロール);血小板活性化因子受容体アンタゴニスト;抗ヒスタミン;抗-トロンボキサンA2;抗ブラジキニン(例えばイカチバント);活性化好酸球及びT-細胞補充(recruitment)を阻害する作用薬(例えばケトプロフェン)、IL-13遮断剤(例えば可溶性IL-13受容体フラグメント)、IL-4遮断剤(例えば可溶性IL-4受容体フラグメント);結合してIL-13又はIL-4の活性を遮断するリガント、並びにキサンチン誘導体(例えば、ペントキシフォリン(pentoxifyolline))を含む。
【0095】
以下の実施例は説明の手段により提供され、且つ手段は制限されない。本明細書中の全ての引用文献の開示は、全ての目的のための参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【実施例1】
【0096】
フェーズII、無作為、二重盲検、プラセボコントール、並行−慢性、持続性喘息を有す患者におけるダクリズマブ群の試験
【0097】
本実施例はフェーズII、投与量-段階的増量、パイロット試験のデザイン、実行及び結果を発表し、慢性、持続性喘息患者を処置するためのダクリズマブを用いた方法の有効を実証する。
【0098】
A. 試験の概要
1.目的
当該試験の主要な目的は、ダクリズマブの慢性、持続性喘息を有す、コルチコステロイドを吸入して準最適に(sub-optimally)制御された成人患者への安全性、耐性、及び予備的活性を評価することである。
【0099】
2. 概略の試験デザイン
当該試験は、コルチコステロイドを吸入して準最適に(sub-optimally)制御された(一日>1200μgの吸入トリアムシノロンと等量)、慢性、持続性喘息を有す患者の治療における、無作為化、複数施設、二重盲検、プラセボコントロール、並行−ダクリズマブ群の試験であった。当該概略の試験デザインは、図1に示すスキームにより説明される。
【0100】
スクリーニング外来は、ベースラインで活性薬又はプラセボ(3:1)へ無作為化しながら処理期間5週まで続けた。試験外来は、スクリーニング(外来1)、処理期間(4外来まで)、処置期間1の間、2週ごと(日数0から84、6外来)、処置期間2を通して2週ごと(日数85から140ステロイド漸減、4外来)、及びその後フォローアップ段階の間、2から4週ごと(日数141から239、5外来)で存在した。全ての試験外来での、投与及び評価は、デザインされた試験日の±3日間で行われた。
【0101】
3.患者群の選定
試験の登録資格は、年齢が18から70歳であり、50%から80%の予測された1秒中の強制呼気肺活量(FEV1)であり、及び登録前は1日投与量>1200μgの吸入トリアムシノロンアセトニド(トリアムシノロン)又はその同等物を>3ヶ月間要求するにもかかわらず、β2-アゴニストによる>12%の回復度を示す非喫煙の喘息患者の男女である。無作為化するために、患者は吸入コルチコステロイドの要求、FEVl>90%のスクリーニング(絶対値)、及び処理の間にFEVI>50%を予測されることを実証する必要がある。詳細には、スクリーニング又は処理段階の間に実証されたアルブテロールMDIの2から4吸入による絶対的FEV1において≧12%及び200 mLの上昇が、無作為化のための患者を適格とするために必要とされた。サンプルサイズ120を無作為化した患者(90活性剤、30プラセボ)を用いた。
【0102】
表1に挙げた除外基準及び非除外基準の全てに合致した患者が、本試験に登録されるために検討された。
【0103】
表1:採用及び除外基準
採用基準
18から70歳の男性又は女性患者。
≧6ヶ月の喘息の病歴。
1日あたり≧1200μgの吸入トリアムシノロン、又は同等量の吸入コルチコステロイドを、登録前≧3ヶ月要求した慢性持続性喘息の病歴(後述の表2参照)。
登録時に予測されるFEVlが50%から80%。この値は試験前のベースラインに指定される。スクリーニング又は処理段階の間に実証されたアルブテロールMDIの2から4吸入による絶対的FEV1において≧12%及び200 MLの上昇が、無作為化のための患者を適格とするために必要とされた。
スクリーニング時で陰性の血清妊娠検査及び盲検試験の最初の投与前24時間以内で陰性尿妊娠検査を提供した妊娠している可能のある女性。男性と女性の両方が、試験期間中、及び治験薬の最終注入の後4ヶ月の間、2重バリア避妊の使用を文書で証明することが必要とされる。
インフォームドコンセントを提供した患者
除外基準
身長及び性別に対する典型体重の70%未満の体重。
試験登録の30日以内に任意の治験薬処置を受けた患者。
試験登録の90日以内に任意のネズミ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はIV IG による処置を受けた患者。
試験登録の60日以内にサイクロスポリン;メトトレキサート;又はトロレアンドマイシン/メチルプレドニゾロンによる処置を受けた患者。
試験登録前の8週中に>500 mLの血液を献血した患者。
≧10パックの年間喫煙暦又は試験登録の12ヶ月以内の喫煙がある患者。
試験登録前14日以内の上気道又は下気道感染症を有する患者。
試験参加の6週以内でワクチン接種された患者(インフルエンザワクチンを接種された患者は、ワクチン接種後2週間で参加が許可されるだろう)。
急性又は慢性副鼻腔炎の抗体処置を受けている患者。
肺(喘息以外)、心臓、肝臓、腎臓、中枢神経系、脈間、消化管、内分泌腺、又は代謝を含む任意の有意な臓器機能障害を有する患者。
クレアチニン≧1.6 mg/dL、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≧正常の上限の2.5xの患者。
試験登録の≦6ヶ月に心筋梗塞、うっ血性心不全、又は不整脈の病歴がある患者。
β遮断薬を受容している患者。
ヒト免疫不全ウィルスによる感染、又はB型肝炎抗原表面もしくは陽性C型肝炎血清学の存在を以前から証明する患者。
ヘモグロビン<11g/dL、血小板<100,000/mm3、又は好中球<1500細胞/mm3
試験登録30日以内に大きな外科手術を受けた患者。
試験登録の30日以内に経口又は非経口でコルチコステロイドを使用した患者。
試験登録の60日以内に喘息で入院した患者。
登録の6ヶ月以内にアレルゲン免疫療法を受けている患者、又はサブメンテナンスアレルゲン免疫療法を受けた患者、或いは登録2年以内にメンテナンスアレルゲン免疫療法を受けた患者。
妊娠している又は授乳中の女性。
ヘパリン対して過敏性である患者。
ダクリズマブ又は当該製剤中の任意の賦形剤に対して過敏性である患者。
静脈内に抗生物質投与を要求されている重篤な感染症、又は登録の60日以内の入院。
5年以内に既にあった悪性腫瘍、又は同時に発生している悪性腫瘍(非-メラノーマ皮膚癌、又はすでに十分に処置したin situ頸部癌腫を除く)。
試験プロトコールに従うことができない、又は従うために十分な能力がない患者。
試験登録6週以内で水痘(水疱瘡)、ヘルペス帯状疱疹(帯状疱疹)、又は他の重篤なウィルス性感染症を有する患者。
試験登録の21日以内に帯状疱疹に曝された患者。
【0104】
【表3】

【0105】
以下を有す患者を登録のために検討した:
a. 登録前>30日で経鼻コルチコステロイド、経鼻クロモリン、局所性抗アレルギー眼炎薬又はコルチコステロイドクリームもしくは軟膏の適切な投与にある患者。
b. テオフィリン、サルメテロール、経口アルブテロール、Advair (フルチカゾン及びサルメテロールの経口吸入)、クロモリン、ネドクロミル、又はロイコトリエン修飾剤による処置を受けた患者(こららの医薬は登録で中断しなければならない)。
c. 随時、即効型吸入又は噴霧β2-アゴニストを用いる患者。
【0106】
インフォームドコンセントにサインした患者をスクリーニングした。無作為のための基準に合致するこれらの患者を、2つの試験群(ダクリズマブ又はプラセボ)の一つに割り当てた。NRSセンターは割り当てた試験センターの薬剤師に患者の無作為化番号を伝えた。盲検化処置(ダクリズマブ又はプラセボ)の初日を日数0と指定した。
【0107】
4. 薬物の調製、調剤(Dosage)及び送達
本試験で使用されるダクリズマブは、商業的に入手可能な、FDAに認可されたダクリズマブの製剤であるZENEPAX(商標)として得た。プラセボは比較薬物である。ダクリズマブを5 mlの溶液中に25 mgのダクリズマブを含むようにバイアル中に供した。溶液は、それぞれミリリットルあたり5 mgのダクリズマブ及び3.6 mgのリン酸一ナトリウム一水和物(sodium phosphate monobasic monohydrate)、11mgのリン酸二ナトリウム七水和物(sodium phosphate dibasic heptahydrate)、4.6 mgの塩化ナトリウム、0.2 mg/mLのポリソルベート80を含み、そして塩酸又は水酸化ナトリウムを含んでよく、pH6.9へ調整した。保存料は付加しなかった。
【0108】
プラセボは、活性成分(ダクリズマブ)を差し引いた活性製剤において提供される全ての成分から成る。プラセボバイアルの充填サイズは5 mLであった。
【0109】
ローディング投与のために使用される投与量は2 mg/kgであり、そして引き続く投与のために使用される投与量は1 mg/kgであった。治験薬はミニバック中で50 mlの通常の生理食塩水で希釈された後に(0.9%)、静脈内に投与された。2 mg/kgのローディング投与は、30分かけて注入した。全ての引き続く1 mg/kgの投与は15分かけて注入した。全ての注入は、注入ポンプを用いて投与した。ダクリズマブは注射用ではなく、そして使用前に希釈されるべきである。
【0110】
患者は、最初の治験薬物注入(日数0)の完了後、少なくとも2時間、及び全ての引き続く注入後、少なくとも1時間の観察下にあった。
【0111】
ダクリズマブ及びプラセボを2から8℃の状態の冷蔵制御下で貯蔵した。当該製剤は保存剤を含まず、そしてバイアルから取り出し、24時間以内で使用した。一度、注入液を調製したら、4時間以内に静脈内に投与すべきである。当該調製物が迅速に使用されない場合は、2から8℃で、24時間冷蔵するか、又は室温で4時間まで保つべきである。それ以後の調製溶液は捨てるべきである。
【0112】
5. 投与間隔スケジュール、増量及びフォローアップ試験
本試験処置投与計画を、以下の表3に要約した。
【表4】

1. 全ての患者は、無作為化の前に吸入トリアムシノロン投与(日数0-83)を受け、更に盲検化処置を受けるであろう。
2. 全ての患者は、無作為化の前に2週間隔で、日数84で開始される、25%減少させたトリアムシノロン投与がなされ、更に盲検化処置がなされるであろう。
3. 日数0での2 mg/Kgのローディング投与は、30分かけて注入され、引き続き1 mg/Kg投与が、全ての他の投与日に15分かけて注入される。
Dac=ダクリズマブ、N/A=適用不能−治験薬の注入なし、Pbo=プラセボ
【0113】
当該試験は、日数28-1の処理(Run-in)期間を含む。処理段階の目的は、当該試験患者における吸入コルチコステロイドの要求を検証するためであった。処理期間の間、患者は図2で示されたスキームにより要約された工程で、吸入コルチコステロイド点滴を受けた。患者は同等の投与量の吸入トリアムシノロンへ切り替えられ、そして全ての他の併用喘息コントローラー治療薬を処理開始時に中止した。ロイコトリエン修飾剤を中止した患者は、処理エントリー後、2週間待たされて外来2Aで戻された。全ての他の患者は、全ての他の喘息コントローラー治療薬を中止した後、一週間だけ待たされて外来2Aで戻された。無作為化される患者は、処理の間に、吸入コルチコステロイドのFEVI>90%のスクリーニング(絶対値)、及びFEVI>50%が予測されることの要求を実証することが要求された。全身性コルチコステロイドを要求し、喘息悪化を有した患者は、無作為化されず、且つ当該試験から離脱した。
【0114】
投与間隔と増量スケジュール、及び関与した患者評価は、図.3に示す表に要約されている。当該スケジュールは2つの処置期間に分割された:(1)処置期間1(盲検処置、日数0から84):日数0での2 mg/kgのダクリズマブ又はプラセボのローディング投与は、30分かけて注入され、引き続き、日数14、28、42、56、及び70での1 mg/kgの投与は、15分かけて注入され;(2)処置期間2(盲検処置+ステロイド漸減、日数85から140):日数84、98、112、及び126での1 mg/kgのダクリズマブ又はプラセボは、15分かけて注入された。
【0115】
処置期間1の間に適格患者を無作為化し(3:1、活性剤:プラセボ)、ダクリズマブ又はプラセボ注入を、無作為化前のベースライン投与量の吸入トリアムシノロンを維持しながら、日数0、14、28、42、56、及び70で施した。ダクリズマブを受容する患者に、30分かけて注入されるローディング投与の2 mg/kgのダクリズマブは、日数0で投与され、引き続き1 mg/kgの投与が、後の処置日数において15分かけて注入されるだろう。患者は、最後の処理外来から7日以内に最初の盲検治験薬の投与を受けた。無作為化の後、患者は2週ごとに、評価及び投与をされた。
【0116】
処置期間2の間(即ち、処置期間1の後)、患者は、処置期間1を完了した投与量の25%を減じた吸入トリアムシノロン(TAA)投与を有し、2週間隔(日数84、98、及び112)で、吸入ステロイドが完全に排除されるまで(日数126)、ダクリズマブ 1 mg/kg又はプラセボ(日数84、98、112、及び126)の15分かけた注入を受けながら、投与された。患者は2週ごとに、評価及び投与をされた。
【0117】
本試験の指定された時点で処置を中断するために、以下の基準に合致している患者は、更なる治験薬の投与、及びフォローアップ段階へ入ることから離脱される:(1)処置期間1の間に全身ステロイドの救済を要求している、2回以上の喘息悪化を経験した患者; (2)処置期間2の間に全身ステロイドの救済を要求している、1回の喘息悪化を経験した患者;(3)任意の喘息悪化の間に1日に>60 mgのプレドニゾンを要求した患者;(4)喘息悪化の間に>14日のプレドニゾンによる処置を要求した患者;又は(5)喘息悪化のために一晩入院を要求された患者(即ち、>24時間の入院を必要とした患者)。
【0118】
フォローアップ段階では(日数140から238)、患者は、16週間、治験薬から外れること(off study drug)をモニターされ、日数140、154、168、182、210、及び238で評価された。
【0119】
試験施設での全ての個人は、処置に対し盲検化された。これらの個人は、治験責任医師、治験コーディネーター、患者、及び他の試験人員を含む。PDLメディカルモニター及びCRAもまた処置に対し盲検化されたままである。試験を導くことに関与しない指定されたPDL安全性モニターは、グレード2以上の事象(即ち、中等度、重度又は生命を脅かす)の全てについて、治験薬の投与が関与するか否かを、月ベースで検討した。この個人は、処置に対し非盲検であるだろう。
【0120】
6. コンプライアンス、安全性及び 薬力学測定
治験薬は、試験人員の監督の下で投与された。コンプライアンスは治験責任医師又は資格のある指名された盲検化治験薬をそれぞれ注入する投与者を有すことにより保証した。吸入トリアムシノロンの使用は、個々の患者に基づき試験人員により、及び患者に投与した全てのトリアムシノロンMDI容器を記録することにより判断された。
【0121】
当該試験の過程の間で形成された安全性の測定は、バイタルサイン、看護師/医師の観察、副作用の評価、及び安全性ラボラトリープロファイルを含む。
【0122】
薬力学は、全血中好酸球の測定を介して全ての試験患者に対し測定された。
【0123】
血清ダクリズマブ濃度は、当該試験を通して獲得され、そしてダクリズマブの制限された長期に渡る薬力学プロファイルを提供するために使用された。血清サンプルは、選定された施設で、治験薬投与前のみ、且つ投与後の様々な時点で、すべての患者から収集された(表3参照)。
【0124】
免疫原性は、血清サンプル中のダクリズマブに対する抗体(抗-Ab)の分析によって、個々の患者において評価された。
【0125】
7. 有効性測定
ダクリズマブを評価するために使用される第一の有効性パラメーターは、処置期間1(日数0から日数84)の間の、FEVl中のベースラインからのパーセント変化による評価として、肺機能(呼吸機能検査)であった。
【0126】
第二の有効性パラメーターは:(1)処置期間1(日数0から84)に喘息悪化を経験する患者の比率;(2)処置期間1(日数0から84)及び処置期間2(日数85から140)におけるAM PEFR及びPM PEFR中のパーセント変化;(3)救済治療薬(β2-アゴニストMDI)使用における変化、日中及び夜間の喘息徴候、処置期間1及び2中にIVRSに記録された喘息のない日;(4)処置期間1及び2の間に当該試験から脱落した患者の比率;(5)処置期間1及び2中の喘息悪化の時間;並びに(6)処置期間2及びフォローアップ中のFEV1のパーセント変化、を含む。
【0127】
肺活量測定
肺活量測定は、図3のスケジュールに沿って記録された。全ての肺活量測定は、American Thoracic Societyガイドラインに従って実行した。使用した予測値は、当該試験を通して一貫したものであった。肺活量値は、進行(race)のために調整しなかった。3回の強制の中で最もよいFEV1を記録した。肺活量は、強制肺活量(FVC)、FEVI、及びFEV1/FVCから成り、FVC (FEF 25-75)の半分の呼気流を強制した。肺活量測定の前に、即効型吸入β2-アゴニスト剤を6時間投与しなかった。個々の外来の肺活量測定は、患者の症例報告書に記録された。
【0128】
喘息悪化の治療
喘息悪化は、1つ以上の以下に関連した、咳、胸苦しさ、又は喘鳴の増加として定義した:(1)48時間のベースラインを越えた、24時間あたり≧8のパフの救済アルブテロール使用;(2)48時間の24時間あたり≧16パフの救済アルブテロール使用;(3)60分の救済処置にもかかわらず、参照レベルの<65%のピーク呼気流量(PEF);(4)60分の救済処置にもかかわらず(20分間ごとに、1時間まで、アルブテロールの2から4パフとして定義される)存在する徴候;及び/又は(5)全身性(経口又は注入可能)コルチコステロイドの要求。
【0129】
治験責任医師は、全身性ステロイド救済の必要性を評価した。更に上記の基準に従い、当該治験責任医師は、彼等の判断に従い、喘息悪化のために、全身性ステロイドを処方することもできた。全身性コルチコステロイドの任意の使用の理由は、患者の症例報告書(CRF)に記録された。
【0130】
患者は、喘息悪化(上記基準に従う)を経験した場合、試験センターへ電話することを助言された。経口コルチコステロイドによる処置を要求している悪化患者は、プレドニゾンを一気に1日あたり60 mgまで、14日間まで許容された。処置中断の基準に合致した患者は、いずれも更なる投与及びフォローアップ段階へ入ることを中止させられた。外来13は最終外来として与えられた。全身性ステロイド救済の使用を要求した喘息の悪化のみは、処置中止の決定のために使用された。
【0131】
処置期間1の間に全身性コルチコステロイド救済を要求する最初の喘息悪化を経験した患者は、無作為化前のベースラインから25%増加した吸入トリアムシノロンの投与を更に有し、そして処置期間1の最後まで当該投与を継続した。
【0132】
喘息徴候/治療薬ダイアリー記録
喘息の徴候、治療薬使用、及びピーク流量記録は、試験期間中、個々の患者の毎日のダイアリー記録(双方向性のボイス応答システムによる)を用いて評価した。IVRSはソースドキュメントを検討し;このタイプのダイアリーは、以前に喘息の臨床試験において使用するために有効とされた。
【0133】
日中の平均徴候スケールは、最小から最大の喘息徴候を示す、0から6の範囲のそれぞれの質問のための応答カテゴリーを用いる。夜間のダイアリースケールは、0(喘息徴候に気付かないことを示す)から3(一晩中気付いていることを示す)の範囲の応答カテゴリーを用いる。毎日の日中スケールスコアは、日中徴候スケールにおいて、全4つの質問の平均値として算出した。週の全ての全体のダイアリースコアは7日間の日中スケールスコアとして、少なくとも4つの平均値として算出した。夜間のダイアリースケールのための週の平均スコアは同様の方法において算出した。日中及び夜間スケールの週のスコアの減少は、喘息徴候の改善を示す。喘息スケールスコアにおけるベースラインからの変化は、前-処置の処理期間(日数-7から-1)の最終週から、処置期間1(日数77から84)の最終週の間、及び処置期間2(日数134から140)の最終週の間の平均スコアの差異として算出した。
【0134】
喘息がない日は、日中及び夜間のダイアリーの両方で徴候が無いことを示す日として定義される。この可変性を解析する方法は、ダイアリーエントリーが欠損した振り分けに依存する。欠測値が殆ど存在しない場合、喘息がない日の平均値の変化はが解析されるであろう。患者が喘息徴候を報告する中で患者に一貫性がある場合、その後、喘息が存在しない日を経験した患者の比率を、処置群と比較した。
【0135】
β2-アゴニストMDIの救済使用は、日中及び夜間の徴候ダイアリーに記録された。患者は、日中ダイアリーに記録している間に使用したMDIからのβ2-アゴニストの作動の数、及び夜間ダイアリーに記録する中での夜に眠ろうとした後に使用したβ2-アゴニストMDIの作動の数を記録することが指示された。β2-アゴニストMDIの使用の平均値は、ダイアリーを記録するそれぞれの週での1日及び夜間の使用を算出した。β2-アゴニスト救済治療薬の使用におけるベースラインからの変化は、前処置の処理期間の週から(日数-7からから-1)、処置期間1(日数77から84)の最終週、及び処置期間2(日数134から140)の最終週の間の平均1日スコア間の差異として算出した。
【0136】
ピーク呼気流量
スクリーニング外来の間、患者はミニ-ライトピークフローメーターの使用を指示された。患者は、最も良い3つのPEFRを測定され、眠ろうとする前の夜間での日中ダイアリー記録において、及び任意の治療薬を受ける前の朝に生じる夜間ダイアリー記録において記録された。1日ごとの夜間及び朝のピークフローの全ての平均値は、それぞれの週で算出した。夜間及び朝のピークフローのベースラインの変化は、前処置の処理期間の最終週から処置期間1(日数77から84)の最終週、及び処置期間2(日数134から140)の最終週の間の平均1日PEFR値の差異として算出した。
【0137】
8. 統計方法
個々の治療群のための説明的統計解析は、人口統計及びベースラインの変化のために実施した。継続的な変化、例えば、年齢、疾患持続時間、及び徴候スコアはt-検定又は等価非パラメーター検定(equivalent nonparametric tests)によって評価された。カテゴリ変数は必要に応じてchi-square 又はFisher's exact検定により評価した。
【0138】
予備的効果のエビデンス(予備的効果:ベースラインからのFEV1の変化、二次的効果:徴候スコア、β2-アゴニスト救済治療薬の使用、喘息悪化の数、及び1日のAM ピーク呼気流量の平均値)は、プラセボ対.ダクリズマブを記述的に示した。群内変化t-検定又はWilcoxon Signed Rank検定により評価した。群間統計的有意性はt-検定、又はWilcoxon-Mann-Whitney検定によって決定した。事象への時間の変化の評価はKaplan- Meier及びログランク法を採用した。
【0139】
B. 詳細な試験プロトコール
本フェーズII試験で使用される方法及びプロトコールのより詳細な説明は、2004年3月12日にファイルされた米国仮出願60/552,974で開示され、それらの個々の全ての対象を本明細書中の参照により本明細書に組み入れた。
【0140】
フェーズIIプロトコールの完全な記載は、Protein Design Lab プロトコール No. DAC-1003 ("A Phase II, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, parallel-Group Study of Daclizumab in Patients with Chronic, Persistent Asthma"), Daclizumab, dated March 27,2001;改定A:July 16,2001;改定B:August 24,2001;改定C:April 15,2002;改定D:July 8,2002;改定E:August 28,2002(本明細書中の参照によって本明細書に組み入れられた)の中で見出される。
【表5】

【0141】
C. 詳細な試験結果
1. 患者傾向及びベースライン特徴
表5-8はダクリズマブによる処置前の患者傾向、人口統計及びベースライン特徴を挙げた。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0142】
2. プロトコール-特定解析
表9-17は処置期間1(日数0−日数84)の間に得られた患者データのプロトコール−特定解析を挙げた。
【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0143】
表9-12(FEV1、予測されるFEV1%、FEV1/FVC、及びFEF(25-75%)に挙げた患者肺活量データのそれぞれ4つの異なるプロトコール−特定解析は、ベースラインから試験の日数84までの変化の平均値の好適なダクリズマブの有意な差異を示す。
【0144】
更に、試験の日数14から日数112の間に、一貫して上記のままである患者を処置したダクリズマブのベースラインFEV1の測定されたパーセント値(およそ2−5%)が、プラセボの値と一致することが観察された。
【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【0145】
表3-16に挙げた患者データのプロトコール-特定解析は、更にダクリズマブ処置の有用性を指示した。表13及び14の結果により示した通り、処置期間1の間において徴候(Sx)の有意な減少、及びダクリズマブ処置群のためのβ2-アゴニスト救済があった。更に、表16中の結果により示されるように、処置期間1にかけて、夕方のピーク流量(PMPEFR)におけるベースラインからの変化の平均値は、プラセボ処置患者と比較してダクリズマブ処置患者で有意に好適であった。
【0146】
統計的に有意なデータは、他の継続的な変化、AM PEFR、%日数Sx-無し及び%FEV1に関しては得られなかったが、それらの個々の変化に関するベースラインからの平均値の変化は、日数84でプラセボと比較してダクリズマブ処置患者が好適であった。
【0147】
ダクリズマブの好適な一般的な傾向は、喘息処置の効果を更に指示する。
【表18】

【0148】
表17中の結果により示されるように、測定された悪化事象は、ダクリズマブ処置患者群で実質的に低かった(8%対15%)。更に、ダクリズマブ処置患者における悪化に対する時間のカプラン-マイヤー曲線は、対応のプラセボ処置患者の曲線よりも有意に高いことを見出した(生き残り(survival)分布関数の観点において)。増加した生き残り分布関数値は、日数225までおよそ14日間の悪化時期を延長させたダクリズマブ処置患者のために観察された。
【0149】
同様に、ダクリズマブ-処置患者のために使用される全身性コルチコステロイドに対する時期のカプラン-マイヤー曲線は、対応のプラセボ処置患者の曲線よりも有意に高いことが見出された(生き残り(survival)分布関数の観点において)。この場合において、増加した生き残り(survival)分布関数は、日数250までおよそ42日間の悪化時期を延長させたダクリズマブ処置患者のために観察された。
【0150】
3. 薬力学的エンドポイント
表18は、薬理学的データ及びエンドポイントに基づき得られた結果を挙げる。更に、ダクリズマブ処置患者におけるベースラインの末梢好酸球レベルのパーセントが、日数0から84の間の全ての時点で(日数28、56及び84)実質的にプラセボ処置患者におけるレベルよりも低いままであることが観察された。
【表19】

【0151】
4. 後-Hoc解析
結果は、更に二分化した値のlog odds率:% 悪化、減少したSx>=25%、及び増加したFEV1>=10%の観点から得られた。全ての3つの変化は、好適にはダクリズマブ処置患者でおよそ1のlog odds率を示した。個々のデータは統計的に有意でなかったが、この一般的な傾向は(好適にはダクリズブ)は、喘息処置のためのそれらの有効性を更に支持する。
【0152】
5. 薬物動態(PK)
フェーズII試験において測定された主なPKパラメーターを表19に挙げる。
【表20】

【0153】
32人の患者がPKモデリングを評価された。結果は低いクリアランス、低量の分布、及びおよそ20日の長期の排泄半減期を示す。分布の初期の低い容量は、循環外の初期薬物分布がないことを示す血漿容量へ終結する。薬物蓄積がないことは、ローディング投与の後に観察された。
【0154】
一つの臨床施設(6人の患者を含む)では、薬物が投与された時に同一の場所から血液を採取した。これは投与後5分間でサンプル値に偏った高い濃度をもたらし、そしてCmax、V1及びVss値の算出に有意な影響を有す。この施設からの6人の全ての患者はV1、Vss及び最初の投与のCmax値に関して統計から除外された。
【0155】
群平均値のモデル化された曲線(即ち、シミュレートした群平均PKプロファイルの半-logスケールプロット)は、観察された平均PK値と密接な相互関係を示した。日数126での最終投与の後、観察されたPK値は、日数210よりダクリズマブの血清濃度がおよそ1.5μg/mL減少した。この減少は、およそ日数214で1μg/mL血清濃度への減少するモデル化曲線と密接な相互関係を示した。
【0156】
6. 免疫原性
血清サンプルを、ブリッジングELISAを用いて抗-ダクリズマブ抗体のためにスクリーニングした。スクリーニングからの陽性サンプルは、その後、更に確認アッセイで評価した。抗-ダクリズマブ抗体を検査された113人の患者のうち、10人の患者はスクリーニングアッセイで陽性に選別された。そのうちの6人はダクリズマブ-特異的確認アッセイにおいて、陽性が確認された。ダクリズマブを受容した患者の4.7%(4/86)は、検出可能な抗体が確認された。
【0157】
7.結論
上記フェーズII試験の結果は、吸入コルチコステロイドで準最適に制御されたダクリズマブが慢性、持続性喘息を有す成人患者の処置において有効であることが実証された。詳細には、肺機能の改善を見せた患者(呼吸機能検査)は、処置期間1(日数0から日数84)中のFEVlのベースラインからの変化をパーセントで評価された。他の肺機能測定は、それらの結果と一致した。群内及び群間のベースラインからの統計的に有意な変化は、1日の徴候スコア(β2-アゴニスト救済の使用、及び夜間のピーク呼気流量において明らかにされた。プラセボ群で見られた有意な群内変化は無かった。
【0158】
更に、ダクリズマブを受容している患者は、経口コルチコステロイドを要求する喘息悪化への時間において統計学的に有意な増加を実証した。更に、末梢好酸球数はダクリズマブ処置群において有意に減少し、そして全ての臨床薬力学的エンドポイントを介する明確且つ不変のシグナルがあった。
【0159】
更に、ダクリズマブによる処置は、概して良好な耐性であった。全ての有害事象の頻度及び重篤度はダクリズマブとプラセボ群の間で異ならなかった。
【実施例2】
【0160】
処置期間2における吸入ステロイド漸減を含むフェーズII試験データの結果
本実施例は、実施例1で発表したフェーズII試験の日数140までに得られたデータに基づく有効性結果を発表した(Protein Design Lab Protocol No. DAC-1003)。簡潔には、日数85で開始する(即ち、処置期間2の開始)患者は、処置期間1を完了した投与量の25%を減じた吸入トリアムシノロン(TAA)投与を有し、2週間隔(日数84、98、及び112)で、吸入ステロイドが完全に排除されるまで(日数126)、ダクリズマブ 1 mg/kg又はプラセボ(日数84、98、112、及び126)の15分かけた注入を受けながら、投与された。実施例1に発表されたように(更に要約した図3を参照)、患者は2週間ごとに、投与、評価、及び有効性測定をされた。
【0161】
結果
ダクリズマブの患者は、プラセボ群の患者と比較して全身性ステロイド救済を要求する悪化への時間を延長させることを実証した(p=0.024)。更に、20週間のステロイド不変及びステロイド漸減段階のダクリズマブ群での、プラセボ群と比較した悪化率は減少した(11.6%対.28.6%、p=0.09)。ダクリズマブの患者は、週20に対しベースラインからの減少した末梢好酸球数を実証した(-30±20/mm3 対.プラセボ+60±30/mm3、p=0.004)。最初の56日間、上昇したベースラインの血清好酸球カチオン性タンパク質(sECP)を有すダクリズマブ処置患者は、sECPにおいて、プラセボと比較して、ベースラインからの有意な減少を有す(p<0.01)。末梢好酸球は、特に少なくとも1つの喘息悪化を有すダクリズマブ処置患者での増加と比較して、喘息悪化を有さなかったダクリズマブ患者において有意に減少した(p=0.032)。
【実施例3】
【0162】
重篤な喘息患者サブセットの解析
実施例1で発表された喘息治療に有効であるダクリズマブのフェーズII試験では、重篤な喘息を有する患者のサブセットにおける有効性を統計学的に解析した。本解析で使用したデータを有す患者は、"Proceedings of the ATS workshop on refractory asthma:current understanding, recommendations, and unanswered questions, "American Thoracic Society, "Am J Respir Crit Care Med. 162 (6):2341-51 (2000)中で定義される"難治性喘息"を有す患者である。当該定義されたパラメーターは:TAA投与量>200 mcg/日、毎日又はほぼ毎日使用する即効性β-アゴニストを要求する喘息徴候、そしてFEV1<80%を予測されるものである。フェーズII試験からの33人の患者は難治性喘息の当該定義に合致した。当該難治性喘息サブセットの12週の有効性結果は、以下の表20に提示される。これらの結果は、上記実施例1において提示した全ての喘息患者群との結果と比較して、重篤な喘息患者におけるより大きな有効性(対プラセボ)を示すことの結論付けを支持する。
【表21】

【0163】
喘息悪化データは、重篤喘息患者に関しても解析された。表21で提示した処置期間1(日数0−日数84)の結果は、ダクリズマブ処置重篤喘息患者(対プラセボ)における悪化に関してより低い発生率を示す。
【表22】

【0164】
本発明は現在好適な態様に関して発表したが、本発明の精神から離れずに多様な修飾がなされ得ることが理解されるべきである。全ての刊行物、特許、特許出願、及びウェブサイトは、個々の特許、特許出願、又はウェブサイトが本明細書中の参照により組み入れられ、詳細にそれぞれが提示されるように、同一範囲を本明細書中の参照により本明細書に組み入れた。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は実施例1で発表した中程度から重篤の慢性、持続性喘息を有す患者でのダクリズマブのフェーズIIの試験概要を描く。
【0166】
【図2】図2は実施例1で発表した中程度から重篤の慢性、持続性喘息を有す患者でのダクリズマブ のフェーズIIの処理段階の間に吸入したコルチコステロイド点滴の概要を描く。
【0167】
【図3−1】図3−1は実施例1で発表したフェーズIIの患者評価のスケジュールを挙げた表を描く。
【0168】
【図3−2】図3−2は実施例1で発表したフェーズIIの患者評価のスケジュールを挙げた表を描く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾患の治療を必要とする患者において当該疾患を治療するための方法であって、当該患者に、特異的にIL-2受容体に結合する抗体を含む治療有効量の医薬製剤を投与することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記呼吸器疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、鼻ポリープ症、チャーグ・ストラウス症候群、副鼻腔炎及びCOPDから成る群から選定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト化抗体がダクリズマブである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体がダクリズマブと同一のエピトープと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、ダクリズマブのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬製剤が、非経口、静脈内、筋肉内、又は皮下に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬製剤が、約100 mg/mlのダクリズマブ、約5.5から約6.5のpH、約0.01%から0.1%のポリソルベート、及び等張性に寄与する等張緩衝剤を有する、約20-60 mMのコハク酸塩緩衝剤を含んで成る液剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療有効量が、約0.001mg/kgから10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療有効量が、約0.5 mg/kgから4.0 mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記治療有効量が、約100 mgから200 mgに固定された投与量である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
喘息患者を処置する方法であって:前記患者にIL-2受容体に特異的に結合する抗体を含む治療有効量の医薬製剤を投与することを含んで成る方法。
【請求項13】
前記喘息が慢性、持続性喘息である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記喘息が中等度から重度の喘息である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、モメタゾン、及びアセトニドから成る群から選定される1つ以上の作用薬を前記患者へ投与することを更に含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、前記ヒトIL-2受容体に少なくとも108M-1の結合親和性を有す、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、前記ヒトIL-2受容体に少なくとも109M-1の結合親和性を有す、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体がヒト抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト化抗体がダクリズマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、ダクリズマブと同一のエピトープと結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、ダクリズマブのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、ダクリズマブのCDR領域のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するCDR領域を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬製剤が、非経口、静脈内、筋肉内、又は皮下で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬製剤が約100 mg/mlのダクリズマブ、約5.5から約6.5のpH、約0.01%から0.1%のポリソルベート、及び等張性に寄与する等張緩衝剤を有する、約20-60 mMのコハク酸塩緩衝剤を含む液剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記治療有効量が、約0.001 mg/kgから10 mg/kgである、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
前記治療有効量が、約0.5 mg/kgから4.0 mg/kgである、請求項12に記載の方法。
【請求項30】
前記治療有効量が、約100 mgから200 mgで固定された投与量である、請求項12に記載の方法。
【請求項31】
Th2-細胞を仲介したアレルギー性疾患の処置を必要とする患者における当該疾患を処置する方法であって、前記患者にIL-2受容体に特異的に結合する抗体を含む治療有効量の医薬製剤を投与することを含んで成る方法。
【請求項32】
前記疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、鼻ポリープ症、チャーグ・ストラウス症候群、及び副鼻腔炎から成る群から選定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト化抗体がダクリズマブである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体が、ダクリズマブと同一のエピトープと結合する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体が、ダクリズマブのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【公表番号】特表2007−506681(P2007−506681A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527166(P2006−527166)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/031640
【国際公開番号】WO2005/030252
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(500533422)ピーディーエル バイオファーマ,インコーポレイティド (18)
【Fターム(参考)】