説明

抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造法

【課題】抵抗素子の形成後に抵抗値を調整でき、高精度な抵抗値精度を保証し得る、抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】カーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法において、両面銅張り積層板に、貫通孔5,6,25,26または有底孔を形成する工程と、前記貫通孔または有底孔に貴金属めっきを施す工程と、前記貫通孔または有底孔にカーボンペーストを充填する工程と、前記貫通孔または有底孔に充填した前記カーボンペーストの上に貴金属めっき、導電化処理およびめっき処理を施して導電層を形成する工程と、前記カーボンペーストを充填した前記貫通孔の端部上の前記導電層に、開口18を形成する工程と、前記開口を介してトリミングし、前記カーボンペーストにより形成される抵抗の抵抗値を調整する工程とを含むことを特徴とする抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板の製造方法に関し、特にカーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化、薄型化の要求に伴い、電子部品およびこの電子部品を搭載するプリント配線板等に関しても、パターンの微細化・高密度化による小型化、厚みの薄い材料を用いることによる薄型化が要求されている。
【0003】
これに伴い、従来、表面実装していたチップ抵抗部品に代わり、カーボンペーストを印刷により形成し、その抵抗素子を内蔵したプリント配線板が開発されつつある。これにより、チップ抵抗部品の実装面積が減り、カーボンペーストを用いた抵抗素子の厚みもチップ抵抗部品に比べて薄くできることから、プリント配線板の小型化および薄型化が可能となる。
【0004】
しかしながら、特許文献1(段落0014参照)および特許文献2(2頁3欄29行ないし4欄3行参照)に記載の、カーボンペーストを用いて抵抗素子を形成したプリント配線板において、カーボンペーストの形成にスクリーン印刷法を用いる場合、印刷面の段差による印刷にじみ、印刷ダレおよび膜厚ばらつき等といった印刷性の問題発生を避けられないため、抵抗値のばらつきは誤差15%程度のものが発生している。
【0005】
加えて、上述したプリント配線板を多層化し抵抗素子を内蔵する際には、積層工程において加わる熱および圧力により更に抵抗値の変動が発生するために、内蔵後の抵抗値の精度を保つことが困難であった。
【0006】
また特許文献3(段落0022参照)においては、電極の表面処理をペースト印刷からめっきに置き換えることで印刷面の段差を低減できているが、積層工程における抵抗値の変動に対する工夫がなされていない。
【0007】
そこで、特許文献4(段落0016参照)に記載のカーボンペーストを用いた抵抗素子を形成したプリント配線板では、貫通孔および有底孔にカーボンペーストを充填することで抵抗素子を形成している。カーボンペーストを貫通孔およびビアホールに充填することで、特許文献1,2で挙げられた印刷性の問題による抵抗値のばらつきは低減できる。
【0008】
しかし、カーボンペーストと銅とは、相互の接触抵抗が高いために抵抗値が安定せず、抵抗値の精度を保証することができない。さらに、銅電極とカーボンペーストとを接触させた抵抗素子の場合、抵抗素子の形成後に空気中の水分や酸素の影響を受けて、電極材料である銅とカーボンペーストとの界面における接触抵抗が増加し、抵抗値が変動するという問題がある。
【0009】
加えて、伝送線路の終端抵抗やフィルタに用いる抵抗に対する要求精度は誤差1%以下であるために、抵抗値の精度向上にはレーザ加工等を用いた精密なトリミング技術が必須であるが、貫通孔およびビアホールにカーボンペーストを充填した抵抗素子は、形成後にレーザ加工等のトリミング技術を用いて抵抗値を調整することができない問題もある。
【0010】
図4は、特許文献4に記載されている、カーボンペーストを用いて抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法を示す断面工程図である。先ず図4(1)に示すように、ポリイミド等の絶縁ベース材21の両面に銅箔等の第1の導体層22、第2の導体層23を有する、所謂、両面銅張積層板24を用意し、所要位置にドリル加工もしくはレーザ加工を用いて貫通孔25,26を形成する。
【0011】
次に図4(2)に示すように、貫通孔25にスクリーン印刷法によりカーボンペースト27を塗布し、熱硬化させる。次いで、図4(3)に示すように、第1の導体層22、第2の導体層23、貫通孔26、カーボンペースト27に導電化処理を行い、めっき皮膜28を形成する。
【0012】
続いて、図4(4)に示すように、第1の導体層22、第2の導体層23ならびにめっき皮膜28に対し、フォトファブリケーション手法によるエッチング手法を用いて回路パターン29,30を形成することで、カーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板31を得る。
【特許文献1】特開平11−340633号公報
【特許文献2】特許第2547650号公報
【特許文献3】特開2006−222110号公報
【特許文献4】特開2002−185099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来、貫通孔および有底孔にカーボンペーストを充填して形成した抵抗素子を、その形成後にレーザ加工等のトリミング技術を用いて抵抗値を調整することができない。このため、カーボンペーストを充填する方式で正確な抵抗値を有する抵抗を製造することが難しい。
【0014】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、抵抗素子の形成後に抵抗値を調整でき、高精度な抵抗値精度を保証し得る、抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的達成のため、本願では、次の発明を提供する。
【0016】
第1の発明は、
カーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法において、
両面銅張り積層板に、貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔に貴金属めっきを施す工程と、
前記貫通孔にカーボンペーストを充填する工程と、
前記貫通孔に充填した前記カーボンペーストの上に貴金属めっき、導電化処理およびめっき処理を施して導電層を形成する工程と、
前記カーボンペーストを充填した前記貫通孔の端部上の前記導電層に、開口を形成する工程と、
前記開口を介してトリミングし、前記カーボンペーストにより形成される抵抗の抵抗値を調整する工程と
を含むことを特徴とする抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法、
である。また、第2の発明は、
カーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法において、
両面銅張り積層板に、有底孔を形成する工程と、
前記有底孔に貴金属めっきを施す工程と、
前記有底孔にカーボンペーストを充填する工程と、
前記有底孔に充填した前記カーボンペーストの上に貴金属めっき、導電化処理およびめっき処理を施して導電層を形成する工程と、
前記有底孔の端部上の前記導電層に、開口を形成する工程と、
前記開口を介してトリミングし、前記カーボンペーストにより形成される抵抗の抵抗値を調整する工程と
を含むことを特徴とする抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0017】
これらの特徴により、本発明は次のような効果を奏する。
【0018】
第1の発明によれば、カーボンペーストを充填した貫通孔の蓋めっき部の少なくとも一方を開口することで、抵抗体の形成後にレーザ加工等のトリミング技術により抵抗値を調整することができる。このことから、抵抗値の要求精度が誤差1%以下である伝送線路の終端抵抗やフィルタに用いる抵抗素子にも適用することができる。
【0019】
第2の発明によれば、カーボンペーストを充填した有底孔の蓋めっき部を開口することで、抵抗体形成後にレーザ加工等のトリミング技術により抵抗値を調整することができる。このことから、抵抗値の要求精度が誤差1%以下である伝送線路の終端抵抗やフィルタに用いる抵抗素子にも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1A、図1Bないし図3を参照して本発明の実施例を説明する。
【0021】
(第1の実施例)
図1A、図1Bは、本発明の第1の実施例を示す断面工程図であって、先ず、図1A(1)に示すように、ポリイミド等の絶縁ベース材1の両面に銅箔等の第1の導体層2、第2の導体層3を有する、所謂、両面銅張積層板4を用意し、所要位置にドリル加工もしくはレーザ加工を用いて貫通孔5,6を形成する。
【0022】
ここでは、ポリイミド厚25μm、導体層厚12μmの銅張積層板を用い、貫通孔径はφ150μmとした。貫通孔の径は、プリント配線板のデザインによりφ50μmからφ150μmまでとり得る。また、貫通孔の形状を安定化させるために、UV−YAGレーザによるダイレクト加工により貫通孔を形成した。そして、貫通孔の代わりに、有底孔でも同様の効果を得ることができる。
【0023】
次に、図1A(2)に示すように、ドライフィルム7を張り合わせ、所定の場所にフォトファブリケーションを用いて開口8を形成する。この工程は、ラミネーター等により両面にドライフィルムを張り合わせることが好適である。またここでは、次工程の無電解銀めっきのアルカリ処理に対して耐性があるドライフィルムを用いた。
【0024】
次いで図1A(3)に示すように、ドライフィルム7から露出している導体層2,3に無電解銀メッキ9を行い、ドライフィルム7を除去する。ここでは、無電解銀めっきの代わりに、他の貴金属めっきを行っても同等の効果を得ることができる。
【0025】
続いて図1A(4)に示すように、カーボンペースト10をスクリーン印刷法により貫通孔5に充填し、熱硬化させる。ここでは、厚さ75μmのメタル版を用いてスクリーン印刷を行った。また、カーボンペーストは、アサヒ化研製TU−10k−8を用いた。熱硬化条件は、ボックス型乾燥炉を用い170℃、60分間である。
【0026】
カーボンペーストのシート抵抗値は、50Ωから1MΩ程度まで幅広く選択することができる。したがって、カーボンペーストを充填する穴径およびカーボンペーストのシート抵抗値を選択することにより、伝送線路の終端抵抗に必要な50Ωおよび75Ω、プルアップ抵抗、プルダウン抵抗に必要な10kΩないし100kΩ程度の抵抗を随意に製作することができる。
【0027】
次いで、図1A(5)に示すように、両面を研磨加工により平坦化し、その後、両面に導電化処理を行う。ここでは、寸法の安定性を考慮すると湿式研磨加工が好適である。
【0028】
続いて、図1B(6)に示すように、ドライフィルム11を張り合わせ、所定の場所にフォトファブリケーションを用いて開口12,13を形成する。この工程は、ラミネーター等により両面にドライフィルムを張り合わせることが好適である。ここでも、次工程の無電解銀めっきのアルカリ処理に対して耐性があるドライフィルムを用いた。
【0029】
またトリミングを行うために、カーボンペーストを充填した貫通孔上の銀めっきの開口径はφ75μmとした。
【0030】
この後、図1B(7)に示すように、ドライフィルム11から露出している導体層2,3およびカーボンペースト10に銀メッキ14を行い、ドライフィルム11を除去する。ここでは、銀めっきの代わりに他の貴金属めっきを行っても同等の効果を得ることができる。
【0031】
続いて、同図(8)に示すように、第1の導体層2、第2の導体層3、銀めっき14の上、ならびに孔6の壁面に対し導電化処理を行い、めっき皮膜15を形成する。
【0032】
次に、図1B(9)に示すように、第1の導体層2、第2の導体層3ならびにめっき皮膜15に対しフォトファブリケーション手法によるエッチング手法を用いて、回路パターン16,17およびカーボンペーストを充填した貫通孔の上の開口18を形成する。ここでは、開口径をφ25μmとした。ただし、貫通孔の上の銀めっきの開口径よりも大きな開口径を形成することも有り得る。
【0033】
そして、図1B(10)に示すように、レーザ加工等を用いたトリミング加工19を行うことにより、抵抗値を調整した抵抗素子内蔵のプリント配線板20を得る。抵抗値の精度を向上させるためには、トリミング加工中に開口している電極部にレーザが当たらないようにすることが重要である。基板のデザインによって、片面もしくは両面からプロービングすることでトリミング時の抵抗値を測定することができる。
【0034】
このように、カーボンペーストを充填した貫通孔もしくは有底孔の端部上のめっき部が開口されることから、抵抗体の形成後にレーザ加工等のトリミング技術により抵抗値を調整することができる。これは、カーボンペーストに接する銅面に全て貴金属めっきを形成することにより、空気中の水分や酸素の影響を受けて銅電極とカーボンペーストとの界面における接触抵抗が増加し、抵抗値が上昇する問題の発生を防止できるからである。
【0035】
(第2の実施例)
図2は、本発明の第2の実施例を示す断面図である。この第2の実施例は、第1の実施例における貫通孔5,6(図1A)に代えて、有底孔5A,6Aを用いたプリント配線板に本発明を適用した例である。
【0036】
この場合、有底孔5Aを用いた抵抗体を形成するには、カーボンペースト10を充填する際に、有底孔5Aの中にボイドが発生することを防ぐために、真空スクリーン印刷機(図示せず)を用いるとよい。
【0037】
(第3の実施例)
図3は、本発明の第3の実施例を示す断面図である。この第3の実施例も、第1の実施例における貫通孔5,6(図1A)に代えて、有底孔5A,6Aを用いたプリント配線板に本発明を適用した例である。
【0038】
この場合、有底孔5Aの底部にφ15μm程度の小貫通孔20を形成しておくと、通常のスクリーン印刷機を用いても、有底孔5A内にボイドを発生させずにカーボンペースト10を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】本発明の第1の実施例における前半工程を示す断面工程図。
【図1B】本発明の第1の実施例における後半工程を示す断面工程図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す断面工程図。
【図3】本発明の第3の実施例を示す断面工程図。
【図4】従来のカーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法を示す断面工程図。
【符号の説明】
【0040】
1 絶縁ベース材
2 第1の導体層
3 第2の導体層
4 両面銅張積層板
5,6 貫通孔
7 ドライフィルム
8 開口
9 無電解銀めっき
10 カーボンペースト
11 ドライフィルム
12,13 開口
14 銀めっき
15 めっき皮膜
16,17 回路パターン
18 開口
19 トリミング孔
20 小径貫通孔
21 絶縁ベース材
22 第1の導体層
23 第2の導体層
24 両面銅張積層板
25,26 貫通孔
27 カーボンペースト
28 めっき皮膜
29,30 回路パターン
31 従来工法によるカーボンペーストを用いた抵抗素子を形成したプリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法において、
両面銅張り積層板に、貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔に貴金属めっきを施す工程と、
前記貫通孔にカーボンペーストを充填する工程と、
前記貫通孔に充填した前記カーボンペーストの上に貴金属めっき、導電化処理およびめっき処理を施して導電層を形成する工程と、
前記カーボンペーストを充填した前記貫通孔の端部上の前記導電層に、開口を形成する工程と、
前記開口を介してトリミングし、前記カーボンペーストにより形成される抵抗の抵抗値を調整する工程と
を含むことを特徴とする抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
カーボンペーストを用いた抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法において、
両面銅張り積層板に、有底孔を形成する工程と、
前記有底孔に貴金属めっきを施す工程と、
前記有底孔にカーボンペーストを充填する工程と、
前記有底孔に充填した前記カーボンペーストの上に貴金属めっき、導電化処理およびめっき処理を施して導電層を形成する工程と、
前記有底孔の端部上の前記導電層に、開口を形成する工程と、
前記開口を介してトリミングし、前記カーボンペーストにより形成される抵抗の抵抗値を調整する工程と
を含むことを特徴とする抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の抵抗素子を内蔵するプリント配線板の製造方法において、
前記有底孔のビア底に、小径の貫通孔を形成したプリント配線板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−130748(P2008−130748A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312959(P2006−312959)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】