説明

押出成形用複合ペレットの製造方法,及び前記方法で製造された押出成形用の複合ペレット

【課題】ペレット間に融着がなく,形状,寸法及び密度等のバラツキの無い押出成形用の複合ペレットを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と木粉を含む原料を押出機42により溶融混練して得た溶融材料を,前記押出機42の先端に取り付けたダイノズル43に設けたノズル孔43aを介してストランド状に押し出すと共に,前記溶融材料のストランドを所定の長さに毎に切断してペレットを形成する。この時,ダイノズル43に設けた各ノズル孔43a内における溶融材料の流速を表す線速度υdが,12〜50cm/secの範囲となるように,押出機42の押出量Q,各ノズル孔43aの直径D及び前記ノズル孔43aの数nを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,木粉を多量に含む熱可塑性樹脂を成形して得られる木質成形品の押出成形に使用する複合ペレットの製造方法,及び前記方法で製造された複合ペレットに関し,木質成形品の成形に必要な熱可塑性樹脂,木粉,及び必要に応じて添加されるその他の副資材を予め溶融混練して複合化すると共に造粒して得たペレットであって,前述した押出成形のうち特に押出発泡成形に使用するに適した押出成形用複合ペレットの製造方法,及び前記方法で製造された押出成形用の複合ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と木粉,及び必要に応じて添加されるその他の副資材を共に溶融混練して得た成形生地を所望の形状に押出成形して得られる木質成形品は,木材の風合いを持ちつつも,腐敗し難い等といった樹脂成形体としての特性をも併せ持つことから,例えば板材等として加工することにより屋外に設置されるウッドデッキ用の建築材料等として広く使用されている。
【0003】
このような木質成形品の製造において,熱可塑性樹脂や木粉,その他の副資材を,木質成形品を製造するための押出成形装置に設けられた押出機のシリンダ内に直接投入して押出成形を行おうとしても,木粉に含まれる木酸や水分によって押出機のシリンダ内で多量のガスが発生してしまい,適切に押出成形を行うことができない。
【0004】
また,仮にこのようなガスの発生が無かったとしても,熱可塑性樹脂や木粉,その他の副資材を均一な分散状態となる迄溶融,混練しようとすれば,使用する押出機として大型のものが必要となる。
【0005】
そのため,木質成形品を製造する際には,押出機に直接原料を投入することなく,事前に原料を前練りして複合化しておくと共に,複合化された原料を造粒してペレット化したもの(本発明において複数の原料が複合化されたペレットを「複合ペレット」という。)を製造しておき,このようにして得られた複合ペレットを木質成形品の押出成形の際の成形材料として使用することが一般的に行われている。
【0006】
このような複合ペレットを製造する方法の一例として,ヘンシェルミキサによる攪拌の際の発熱を利用して木粉の乾燥と木酸ガスの揮発を行うと共に各原料を溶融・混練して混練材料を得,この混練材料をクーリングミキサによって冷却しながら攪拌して所定粒径の造粒物とした後,カッタミルによって更に細かく破砕して木質成形品の押出成形に使用する複合ペレットをバッチ式で製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また別の方法としては,前述したようなバッチ式の製造方法では生産性が悪いことに鑑み,押出機により押し出された混練材料をダイに導入してシート状乃至はストランド(丸紐)状に押し出し,押し出されたシート状乃至はストランド状の混練材料を切断することによりチップ状乃至はペレット状の押出成形材料を製造する方法も提案されている。
【0008】
そして,このような押出機による押出成形材料の製造では,木粉に含まれる木酸や水分に基づき押出機のシリンダ内で多量のガスが発生することから,押出機のシリンダにベント孔を設け,このベント孔を介してシリンダ内で発生したガスを吸引する等して押出機による前練りを可能とすることが提案されている(特許文献2〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平 7−266313号公報
【特許文献2】特開平10−166355号公報
【特許文献3】特開2001−62901号公報
【特許文献4】特開2001−129870号公報
【特許文献5】特開2002−326219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように木質成形品の製造に際しては,前処理として原料を均質に溶融混練する前練りと,前練りされた溶融材料をペレット化する造粒が行われ,このようにして得られた複合ペレットが,木質成形品を製造する際の成形材料として使用されているが,これらの前練り工程や造粒工程において複合ペレットに与えられる特性乃至は性質は,この複合ペレットを使用して行われる成形加工における加工性や,最終的に得られる木質成形品の品質に大きく影響する。
【0011】
ここで,木質成形品の製造に使用する複合ペレットに要求される性質としては,個々のペレットの粒がそれぞれ分離・独立していること(ペレットの粒同士の融着がないこと)や,各ペレット相互間における形状や寸法,密度等の物性が均一であることが要求される他,ペレットが多数集合した状態,即ちペレットの集合体として成形材料として捉えた場合において,この成形材料(ペレットの集合体)が,所定の嵩密度となる(例えばペレットを積み上げた際にペレット間に適正な隙間が形成された状態となる)ように製造されている必要がある。
【0012】
そのために,このような複合ペレットの製造は,個々のペレットの形状,寸法,密度等が,予め設定された形状,寸法,密度等となるように正確に制御されている必要がある。
【0013】
そして,複合ペレットが上記要件のいずれか1つでも満たしていない場合,このような複合ペレットを使用して木質成形品の押出成形を行うと,複合ペレット,及び複合ペレットが溶融して得られる溶融材料の押出機内での安定した均一な流動を得ることが困難となり,得られた木質成形品の不良率が高くなる。
【0014】
特に,複合ペレットを発泡剤と共に押出機のシリンダ内に投入して押出発泡成形を行う場合には,溶融材料中に発泡ガスが均一に分散せず,発泡のコントロールが困難となり,発泡ガスの偏在により木質成形品の内部に空洞(ボイド)が形成される等して更に不良率が高まる。
【0015】
更に,本発明の発明者による試験の結果,上記条件を備えていない複合ペレットを使用して押出発泡成形を行った場合には,上記条件を備えた複合ペレットを使用して押出発泡成形を行った場合に比較して,発泡剤の添加による比重の低下が生じ難くなっており,木質成形品の軽量化が図り難いことが確認されている。そのため,上記要件を満たしていない複合ペレットを使用して押出発泡成形を行う場合には,多量の発泡剤の添加が必要となり製造コストが嵩む。
【0016】
このように木質成形品の製造に使用する複合ペレットには,前述したような要件が求められるのに対し,前掲の特許文献1のようにヘンシェルミキサやクーリングミキサ,及びカッタ等によって前練りと造粒とを行うことで複合ペレットを製造する場合には,個々の複合ペレットの形状,寸法等を正確に制御することができず,複合ペレット間の形状や寸法のバラツキが大きなものとなる。
【0017】
また,個々の複合ペレットの形状や寸法等が一定していないことから,複合ペレットの集合体としての成形材料の嵩密度を,予め設定した数値に制御することも困難となる。
【0018】
一方,押出機を用いて原料を溶融,混練して前練りを行った後,この押出機の先端に取り付けたダイノズルより溶融材料をストランド乃至はシート状に押し出すと共に,押し出された溶融材料のストランドやシートを所定の長さ毎に切断してペレットやチップを製造する特許文献2〜5に記載の方法では,ダイに設けられたノズル孔の寸法及び形状に対応した寸法及び形状の複合ペレットを得ることができれば,形状や寸法の統一された複合ペレットを得ることができる。
【0019】
しかし,このように押出機で溶融混練した溶融材料を,ダイノズルを介してストランド状に押し出すと,ダイノズルのノズル孔より押し出された溶融材料はバラス効果によってノズル孔を出た瞬間に膨張する。
【0020】
その結果,このような膨張によって隣接したノズル孔より押し出されたストランド同士が近付いて接触し易くなり,これを切断して得たペレットも複数個が融着した塊を形成し易い。
【0021】
また,このようにしてノズル孔を出たストランドが膨張する結果,これを切断して得られるペレットの太さや長さを,予め設定した太さや長さとすることが難しくなり,ペレットの集合体である成形材料の嵩密度についても,予め設定した所定の数値範囲とすることが困難となる。
【0022】
その結果,このようにして得られた複合ペレットを使用して木質成形品の成形を行う場合,押出機内での安定した均一な流動を得ることが困難となり,得られる木質成形品に不良率の発生が多くなり,特に押出発泡成形にあっては,発泡ガスを均一に分散させることができず,発泡のコントロールが困難となり,成形品の内部に空洞(ボイド)が形成され易くなる。
【0023】
そこで,本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,主原料として熱可塑性樹脂と木粉とを含む原料を押出機により溶融混練してダイノズルよりストランド状に押し出すと共に,このようにして押し出されたストランドを所定の長さでカットすることにより造粒する,押出成形用複合ペレットの製造方法において,得られたペレット間に融着がなく,且つ,各ペレット間で形状,寸法及び密度等のバラツキが無く,更に,バラス効果による膨張を抑制することで得られるペレットの直径をノズル孔の直径以下に制御することができ,その結果,成形材料の嵩密度を容易に制御することができる複合ペレットの製造方法を提供することにより,溶融生地の押出機内での安定した均一な流動が得やすく,木質成形品の不良率を低下させることができ,特に押出発泡成形にあっては,発泡ガスを均一に分散させて発泡のコントロールを容易とし,成形品の内部における空洞(ボイド)の発生を防止できる押出成形用の複合ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態における符号を付して記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0025】
上記課題を解決するために,本発明の押出成形用複合ペレットの製造方法は,熱可塑性樹脂と木粉を主成分とする木質成形品の押出成形に際して成形材料として使用する複合ペレットの製造方法において,
熱可塑性樹脂と木粉を含む原料を押出機42により溶融混練して得た溶融材料を,前記押出機42の先端に取り付けたダイノズル43に多数設けたノズル孔43aを介してストランド状に押し出すと共に,前記溶融材料のストランドを所定の長さ毎に切断してペレットを形成するに際し,
次式で規定する線速度(υd)が12〜50の範囲となるように,前記押出機42の押出量Q,各ノズル孔43aの直径D及び前記ノズル孔43aの数nを設定することを特徴とする(請求項1)。
υd = (Q×1000/3600)/〔(D/20)2π・ρm・n〕
ここで,
υd=線速度(cm/sec)
Q = 押出機の押出量(kg/Hr)
D = 各ノズル孔の直径(mm)
n = ノズル孔の数
ρm = 溶融樹脂の密度(g/cm3)
【0026】
上記複合ペレットの製造方法において,前記熱可塑性樹脂と前記木粉の配合比を,熱可塑性樹脂30〜70mass%に対し,木粉70〜30mass%とすることができる(請求項2)。
【0027】
更に,上記複合ペレットの製造方法において,前記溶融材料を170〜250℃,より好ましくは200〜230℃で前記ノズル孔43aに導入することが好ましい(請求項3)。
【0028】
また,前記溶融材料のストランドは,これを2〜5mmの長さに切断することが好ましい(請求項4)。
【0029】
更に,本発明の押出成形用の複合ペレットは,前述したいずれかの方法により製造された複合ペレットである(請求項5)。
【0030】
この複合ペレットは,これを単独で押出成形に使用するものとしても良いが,木質成形品を押出成形するための押出成形装置に設けた押出機のシリンダ内に,成形材料と発泡剤とを投入して行う押出発泡成形に際し,前記成形材料として本発明の複合ペレットを使用することができる(請求項6)。
【0031】
また,本発明の複合ペレットは,これを所定容積の容器内に非加圧状態で充填した際の嵩密度を0.60g/cm3以上とすることが好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0032】
以上説明した本発明の構成により,本発明の複合ペレットの製造方法,及び前記方法で製造された複合ペレットでは,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0033】
前述した線速度υdで溶融樹脂のストランドを押し出すことで,ダイノズル43のノズル孔43aを通過した溶融材料のストランドがバラス効果によって膨張することを抑制するができただけでなく,ストランドの直径を,ノズル孔43aの直径D以下とすることができた。
【0034】
このようにストランドに膨張が生じない結果,隣接するノズル孔43aより押し出されたストランド間の接触を回避でき,これにより各ペレット間に融着が生じることを好適に防止することができた。
【0035】
また,このようにして得られたストランドを所定長さで切断することにより,ノズル孔43aの直径以下で略一定の直径を有するペレットの製造が容易となり,個々のペレットサイズを小さくすることで,成形材料の嵩密度を所定の値,例えば0.68g/cm3以上に容易に高めることができ,更に,ストランドの膨張が抑制されて形状を一定させることができる結果,これを切断して得られる個々のペレットについても,サイズ,形状,及び密度等を容易に均一なものとすることができた。
【0036】
更に,このようにして個々のペレット間の融着が防止され,サイズ,形状,密度等が統一された複合ペレットが得られることにより,得られた複合ペレットを使用して例えばデッキ材等の木質成形品を押出成形することで,押出機内で溶融生地の安定した均一な流動が得られ,製造される木質成形品の不良率を減少させることができた。
【0037】
特に,本発明の方法により製造された複合ペレットを,発泡剤と共に押出機内に投入して行う押出発泡成形に使用する成形材料として使用した場合には,発泡のコントロールが容易であり,発泡ガスを溶融生地中に均一に分散させることで発泡ガスの偏在により木質成形品中に空洞(ボイド)が生じることを好適に防止でき,製造不良が生じ易い木質発泡成形品についても不良率を低下させることができた。
【0038】
更に,本発明の方法で製造された複合ペレットを前述した押出発泡成形に使用する場合には,比較的少ない発泡剤の使用で,低比重,従って軽量化された木質発泡成形品を得ることができた。
【0039】
前述した本発明の効果は,前記熱可塑性樹脂と前記木粉の配合比を樹脂30〜70mass%に対し木粉70〜30mass%として,木粉を高含有率で充填した場合においても得ることができた。
【0040】
更に,前記溶融樹脂を170〜250℃より好ましくは200〜230℃で前記ノズル孔43aに導入した構成にあっては,ノズル孔43aより押し出されたストランドに膨張が生じることをより確実に抑制することができた。
【0041】
前記溶融樹脂のストランドを,2〜5mmの長さで切断するものとした場合には,ストランドのカット時に,隣接するストランド同士がより一層接触し難くなり,ストランドを切断して形成されるペレット間の融着も生じ難いものとなった。
【0042】
また,ストランドの切断長さ,従ってペレットの長さが長くなると,ペレットが長さ方向に折れ曲がる等して変形し易く成り,各ペレット間に形状の不均一が生じ易くなるが,前記長さで切断する場合,このような変形の発生を防止して,略統一された形状のペレットを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】複合ペレット製造装置の概略説明図。
【図2】ストランドの切断の様子を示した説明図。
【図3】線速度υdとストランドの発泡状態との関係を示した説明図であり,(A)は線速度υdが12cm/sec未満の場合,(B)は線速度υが50cm/secを越える場合,(C)は線速度υdが12〜50の範囲にある場合をそれぞれ示す。
【図4】実施例及び比較例の複合ペレットを使用した木質成形品(木質合成板)の製造試験に使用した押出成形装置の概略説明図。
【図5】複合ペレットの製造試験(試験例1,2)で使用した複合ペレット製造装置の概略説明図。
【図6】図4の押出成形機の押出機先端に取り付けた押出ダイの断面図であり,(A)は側面視,(B)は平面視,(C)は(B)のC−C矢視方向における断面をそれぞれ示す。
【図7】実施例1の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【図8】実施例2の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【図9】実施例3の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【図10】実施例6の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【図11】比較例1の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【図12】比較例2の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【図13】比較例3の複合ペレットの粒子構造を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら説明する。
【0045】
原料
木質成形品の押出成形に使用する本発明の複合ペレットは,熱可塑性樹脂と木粉とを主原料とし,これに必要に応じてタルク等の充填材,着色用の顔料,強化剤,パラフィンワックス,その他の副資材を添加して製造する。
【0046】
熱可塑性樹脂
本発明の複合ペレットの主原料の一つである熱可塑性樹脂としては,各種の熱可塑性樹脂を使用可能であるが,好ましくはポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂,及び前記ポリオレフィン樹脂を主成分とする樹脂(以下,ポリオレフィン樹脂及びポリオレフィン樹脂を主成分とする樹脂を総称して「ポリオレフィン系樹脂」という。)を好適に使用することができる。
【0047】
また,これらの熱可塑性樹脂は,そのうちの一種を単独で使用しても良く,又は複数種類を混合して使用することも可能であり,例えば複数種の熱可塑性樹脂が混在した状態で回収された廃棄プラスチック等を原料として使用することも可能であるが,本実施形態にあっては前述した熱可塑性樹脂のうち,ポリオレフィン系樹脂,より詳細にはポリプロピレン(PP)を使用している。
【0048】
ここで,ポリプロピレン(PP)の種類としては,ホモポリマー,ランダムコポリマー,ブロックコポリマーが挙げられるが,本発明においてはこれらのいずれのポリプロピレン共に使用可能であり,また,例えば容器リサイクル法(所謂「容リ法」)に従って回収されたポリプロピレンや,各種ポリプロピレンが混在したもの等,いずれであっても使用可能である。
【0049】
本発明で使用する熱可塑性樹脂は,好ましくはMI(メルトインデックス)が0.5〜10(g/10min)の範囲にあるものを使用することが好ましく,例えばMIの異なる複数の熱可塑性樹脂を混合して,上記数値範囲内となるMIの樹脂を得るものとしても良い。
【0050】
木粉
成形材料の主成分の他方である木粉は,一般に市販されている各種の木粉の他,例えば未使用の木材,使用済みの建築廃材,木材加工の際に発生したオガ屑等の廃材等をクラッシャ,カッタ,ミルを使用して破砕する等して得ても良い。
【0051】
使用する木材の品種は特に限定されず,複数の品種の木材が混在していても構造上は問題が無いが,最終的に得られる木質成形体の仕上がりを考慮すれば,ある程度色目の揃ったものを使用することが好ましい。
【0052】
使用する木粉は,粒径1,000μm以下のものであれば各種のものを使用することができ,好ましくは粒径150〜200μmのものを使用する。
【0053】
木粉は,熱可塑性樹脂との馴染みの向上や加熱混練時における水蒸気の発生防止等の観点から,他原料との配合前に乾燥されていることが好ましく,好ましくは含有水分量が1mass%以下に乾燥されているものを使用する。
【0054】
この木粉と,前述の熱可塑性樹脂との好ましい配合比は,木粉/熱可塑性樹脂で,30〜70mass%/70〜30mass%である。
【0055】
これらの構成及び図2,図3に示すダイノズル43のノズル孔43a内の中心部及び内壁とその近傍に生じる,溶融材料へのせん断力と,溶融材料の流速υdによる溶融材料の流速差により,アスペクト比(長さ/径)1.5以上の粒または繊維が80%以上を占める繊維の集合体に流動方向への配向が得られる。
【0056】
その他の原料
本発明の成形材料の原料としては,前述の木粉,熱可塑性樹脂の他,タルク等の充填材,着色用の顔料,強化剤,及びパラフィンワックス等を添加することができる。
【0057】
このうちのパラフィンワックスは,得られる成形材料の全体に対し1〜5mass%となるように添加する。1mass%より少ないと効果が得られず,5mass%より多くなるとパラフィンワックスが表面に浮き出てしまい,成形性が低下する。
【0058】
また,タルクは,最終的に得られる木質合成板等の木質成形品の強度を向上するために添加するものであり,成形材料の全質量に対し,5〜25mass%添加することができ,この量に対してタルクの添加量が少ないと強度の向上が得られず,また,逆に添加量が多すぎると脆さが出てかえって強度が低下する。
【0059】
添加するタルクの粒径としては,比較的広範囲のものを使用することができ,好ましくは,平均粒径3〜50μm程度のものを使用する。
【0060】
顔料は,最終的に得られる木質合成板に着色を行うために添加するものであり,最終製品で得ようとする色に対応して,各種の顔料を各種の配合で添加することができる。
【0061】
一例としてブラウン系の着色を施すために酸化鉄系の顔料を使用した本実施形態にあっては,顔料を成形材料の全体に対し3mass%程度添加した。
【0062】
更に,添加材量として強化剤を添加することも可能であり,前述したように,主原料たる熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを使用した本実施形態にあっては,この強化剤としてマレイン酸変性ポリプロピレンを添加して,木粉と樹脂間の結合性を向上させている。
【0063】
この強化剤は,添加量が少なすぎると効果がない一方,多く入れれば入れる程効果は増大するもののコストが嵩むため,得られる成形材料の全体に対し一例として0.3〜2.0mass%程度の添加が好ましい。
【0064】
成形材料の製造
複合ペレット製造装置
複合ペレットの構成原料である木粉,熱可塑性樹脂,及び必要に応じて添加されるタルク等の充填剤,顔料,強化剤,パラフィンワックス等の副資材は,これらを押出機により均一な分散状態となるように溶融混練すると共に,溶融混練によって得た溶融材料を整粒して複合ペレットを製造する。
【0065】
このようにして製造された複合ペレットは,木質合成板等の木質成形品の押出成形を行う際の成形材料として使用するものである。
【0066】
このように原料を溶融混練すると共に造粒して行う複合ペレットの製造は,図1に示す複合ペレット製造装置40を使用して行うことができる。
【0067】
図1に示す複合ペレット製造装置40は,熱可塑性樹脂(PP),木粉,タルク,顔料,強化材,パラフィンワックス等の原料をロスインウエイト方式等によって定量供給する定量供給装置41と,前記定量供給装置41によって定量供給された原料を加熱しながら溶融混練して押し出すスクリュ式の押出機42を備え,この押出機42のシリンダ42a先端に多数の小孔(ノズル孔43a)が形成されたダイノズル43を取り付け,このダイノズル43のノズル孔43aを介して溶融材料のストランドを熱水中に押し出すと共に,このストランドを回転するカッタ44のカッタ刃44aで所定の長さ(一例として2〜5mm)毎に切断する,水中(アンダーウォーター)ホットカット法によって複合ペレットを製造するものである。
【0068】
本実施形態にあっては,図1及び図2に示すように円柱状のダイノズル43の端面の周縁部に複数のノズル孔43aを配列し,このダイノズル43の端面の中心を回転中心とするカッタ刃44aをダイノズル43の端面と摺接させるように所定の速度で回転させることで,所定の速度で押し出される溶融材料のストランドを略一定の長さにカットできるようにした。
【0069】
すなわち,この構成では,ストランドの押出速度(前述の線速度υdに対応)が一定の場合にはカッタ44の回転速度を変化させることにより,また,カッタ44の回転速度が一定である場合にはストランドの押出速度(前述の線速度υdに対応)の変化により,更には,ストランドの押出速度(前述の線速度υdに対応)とカッタ44の回転速度の双方を変化させることにより,得られるペレットの長さを変化させることができるものとなっている。
【0070】
この押出機42としては,既知の各種のものを使用することができ,一軸押出機を使用することもできるが,好ましくは二軸押出機を使用する。
【0071】
二軸押出機は,スクリュエレメント42cに形成されたネジ山とネジ溝とが互いに噛み合って回転する2本のスクリュ42bを有する押出機で,本実施形態にあっては,2本のスクリュ42bが同方向に回転し,材料にせん断力を与えることで発熱を促し樹脂を溶融させる作用を有するものを使用している。
【0072】
押出機42により溶融混練された溶融材料は,好ましくは前述のダイノズル43のノズル孔43aに,170℃〜250℃,好ましくは200℃〜230℃の温度で導入できるように,前記押出機42のシリンダ42aの温度を制御する。
【0073】
ここで,前記温度は,溶融材料の温度で,一方,図5に記載の温度は押出機のシリンダの設定温度であり溶融材料の温度とは異なる。溶融材料はシリンダ42aのヒーターから受ける熱以外にスクリュ42bから受ける外力によりせん断発熱を起こすため,溶融材料の温度はシリンダの設定温度より高くなる。
【0074】
以上のようにして得られた複合ペレットは,遠心分離機45によって脱水した後に回収され,木質成形品の押出成形に使用する成形材料としての複合ペレットが得られる。
【0075】
製造条件
以上のように構成された複合ペレット製造装置40において,ダイノズル43に設けた個々のノズル孔43a内を溶融樹脂が1秒間にどれだけの距離を移動するかを表した線速度υdが,12〜50cm/sec,より好ましくは16〜45cm/secの範囲となるように押出機の押出量(Q),各ノズル孔の直径(D)及び前記ノズル孔の数(n)を調整する。
ここで,
Q = 押出機の押出量(kg/Hr)
D = 各ノズル孔の直径(mm)
n = ノズルの孔の数
ρm = 溶融樹脂の密度(g/cm3)
とすると,
押出機の1秒間の押出量(g/sec)は,
Q×1000/3600
ノズル孔の幅方向の断面積(cm2)は,
(D/20)2π
よって,個数nのノズル孔の幅方向の断面積の総和は,
(D/20)2π・n
となる。
以上より,前述の線速度υdは,
υd(cm/sec) = (Q×1000/3600)/〔(D/20)2π・ρm・n〕
≒ 35.4Q/D2ρm・n
となる。
【0076】
一例として,複合ペレット製造装置40を構成する押出機42として,1時間当たりの押出量Qが400kg/Hrの押出機を採用したと仮定し,溶融材料の嵩密度ρmが,1.15(g/cm3)であったと仮定する。この場合において,ダイノズル43として各ノズル孔43aの直径Dが4.0mmのものを使用すると,
υd = (Q×1000/3600)/〔(D/20)2π・ρm・n〕≒ 35.4Q/D2ρm・nより,
υd=(35.4×400)/(42×1.15×n)=14160/18.4n
よって,12≦ υd ≦50のυdに14160/18.4nを代入すると,
12≦ 14160/18.4n ≦50
【0077】
従って,上記の条件では,ノズル孔43aの個数nを16個〜64個の範囲とすることにより,本願所定の線速度υdの条件を満たした複合ペレットの製造を行うことができることになる。
【0078】
線速度υdの変化が複合ペレットに及ぼす影響
ここで,ノズル孔43a内を通過する溶融材料の線速度υdが,本願所定の範囲である12〜50cm/secを下回る速度(υd<12)である場合,この溶融材料の流れによる木粉の配向作用は小さい。
【0079】
また,このような低い流速でストランドの押出を行う場合には,ノズル孔43aを通過した後の溶融樹脂は,図3(A)に示すようにバラス効果によって膨張する。
【0080】
そのため,前述したように木粉の配向作用が小さいことと,バラス効果による体積膨張によって,ストランド内の木粉は図3(A)に矢印で示すようにランダムにバラバラな方向を向いており,所定の配向を持っていない。
【0081】
一方,溶融材料の流速を示すυdが,本願所定の範囲である12〜50cm/secを上回る速度である場合(υd>50)には,ノズル孔43a内を通過する際に溶融材料中の木粉は,溶融材料の流動方向に繊維長方向を向けた配向となる。
【0082】
また,ノズル孔43aを通過した溶融材料がバラス効果により膨張することが抑制される。
【0083】
しかし,このような速い流速で溶融材料のストランドを押し出す場合,図3(B)に示すようにノズル孔43aを通過した溶融材料は,ノズル孔43aの出口付近の僅かな変化,例えばダイノズルの製造時に不可避的に生じたノズル孔43a出口の僅かな傷や凹凸等の影響を受けてその流れが変化し,その結果,ストランドがカールやループを形成する等して押出後に暴れ,隣接乃至は比較的近い範囲に設けられたノズル孔43aを介して押し出されたストランドと接触して融着し易いものとなる。
【0084】
これに対し,ノズル孔43a内における溶融樹脂の流れる速度であるυdが,本願所定の範囲内(12≦υd≦50)にある場合には,図3(C)に示すように溶融材料中の木粉は溶融材料の流れ方向に配向すると共に,この速度ではノズル孔43aを通過した溶融材料がバラス効果によって膨張することを抑制でき,押し出されたストランドの直径が,ノズル孔43aの直径D以下の大きさとなる。
【0085】
しかも,本願所定のυdの範囲では,ノズル孔43aを通過したストランドが,ノズルダイ43の製造時にノズル孔43aの出口付近に不可避的に生じた僅かな傷や凹凸等に影響されて暴れることがなく,前述したように溶融樹脂の流動方向を長さ方向として配向された木粉によって,腰が強くなったストランドは,ノズル孔の延長方向に押し出され易いものとなっている。
【0086】
以上のように,線速度υdの相違により,υdが12〜50cm/secの数値範囲を下回る場合には,木粉の配向が揃っていないために,カット時の剪断力が均一に加わらずに,ストランドが変形することによると考えられる原因で不均一な形状のペレットとなり易いだけでなく,ストランドは膨張によって体積が増大して,隣接するストランドとの距離が狭まっていることから,カッティング時に隣接するストランドと融着し易く,その結果,複数個のペレットが融着して塊となる可能性がある。
【0087】
υdが12〜50cm/secの数値範囲を上回る図3(B)の例では,押し出されたストランド中において木粉は所定の配向を有するものの,前述したようにノズル孔より押し出されたストランドがカールする等して暴れるために,これをカッティングして形成されたペレットの形状にもバラツキが生じることがある。
【0088】
また,前述したようにノズル孔より押し出されたストランドが暴れることにより,隣接するストランド同士が融着し易く,その結果,カッティングによって得られたペレットも複数のペレットが塊状に融着することになる。
【0089】
これに対し,υdを本願所定の12〜50cm/secの範囲とした図3(C)に示す例では,木粉の配向によってストランドの腰が強くなることで,ノズル孔を出たストランドがバラス効果によって膨張することが抑制されており,また,木粉の配向が揃っていることにより,カッティングの際にストランドを綺麗に切断することができ,形状の揃ったペレットを得やすいものとなっている。
【0090】
しかも,この条件で押し出されたストランドは,膨張したり暴れたりしないことにより,隣接するノズル孔43aを介して押し出されたストランドと融着し難いものと考えられ,その結果,塊状となることなく,個々独立したペレットを容易に得ることができるものとなっている。
【0091】
木質成形体の製造
以上のようにして得られた複合ペレットは,一例として以下のようにして木質成形品の成形に使用する。
【0092】
複合ペレットの乾燥
以上のようにして得られた複合ペレットは,そのまま,又はこれを発泡剤と共に押出(発泡)成形を経て,所定形状の木質成形品に成形される。
【0093】
このような押出成形を行うに先立ち,製造された複合ペレットは,必要に応じて図4に示すように乾燥機47等を使用してこれを十分に乾燥させる。
【0094】
複合ペレットの乾燥は,含水率が0.2mass%以下となる迄乾燥させることが好ましい。乾燥方法は特に限定されないが,一例として本実施形態にあっては,120℃の温度の熱間乾燥機に2時間以上かけて,上記含水率に乾燥させた。
【0095】
発泡剤
前述したように,本発明の方法で得た複合ペレットを押出発泡成形に使用する場合,この複合ペレットを発泡剤と共に押出成形用の押出機に投入する。
【0096】
このような発泡成形に使用する発泡剤の種類としては,気体又は液体である揮発性発泡剤を含む,一般に揮発性発泡剤(ガス系)であるCO2,N2,フロン,プロパン等と分解性発泡剤とがあり,このうちのいずれの発泡剤を使用するものとしても良く,市販されている各種のものを使用することができる。本実施形態にあっては,分解性発泡剤を使用している。
【0097】
分解性発泡剤としては,無機化合物系,アゾ化合物系,スルホニルヒドラジド化合物系,ニトロソ化合物系,アジド化合物系等が存在するが,成形材料の主原料である熱可塑性樹脂に対し容易に分散乃至は溶解すると共に,得られる木質発泡成形品に不要な着色等を与えるものでなければいずれの発泡剤を使用しても良い。
【0098】
また,キャリア樹脂に発泡剤を高濃度に添加した,所謂「マスタバッチ」と呼ばれるペレット状の発泡剤も市販されており,このような発泡剤を使用しても良い。
【0099】
本実施形態にあっては,キャリア樹脂をPE,発泡剤を無機化合物系に属する重炭酸ナトリウムとしたマスタバッチを使用した。
【0100】
発泡剤は,使用する発泡剤のガス発生量,製造する発泡成形体の発泡度等に応じて必要な量を添加するが,一例として本実施形態における発泡剤(マスタバッチ)の好ましい添加量は,複合ペレットと発泡剤の合計を100mass%として0.3〜5mass%,より好ましくは0.5〜3mass%である。
【0101】
このようにして発泡剤が添加された複合ペレットは,その後,押出成形装置11に設けられたスクリュ式の押出機12に連続して導入され,これを加熱しながら溶融混練し,この押出機12より押し出された成形生地を,押出ダイ20に導入した後,この押出ダイ20に続く成形ダイ30に導入して所定の形状に成形すると共に冷却,固化することにより,所望形状の木質発泡成形体を得ることができる。
【0102】
押出成形装置
木質発泡成形体の製造に使用する押出成形装置としては,各種のものを使用することができるが,一例として本発明の複合ペレットを使用した押出成形に使用した押出成形装置11の構成例を,図に基づいて説明する。
【0103】
図4に示す押出成形装置11は,前述の工程によって得た本発明の複合ペレットと,発泡剤のマスタバッチとをそれぞれ定量ずつ供給する定量供給装置14を備えると共に,この定量供給装置14を介して供給された複合ペレットと発泡剤とを,共に溶融混練して押し出すスクリュ式の押出機12と,前記押出機12によって押し出された押出生地を導入する押出ダイ20,前記押出ダイ20を通過した成形生地を所定の形状に成形すると共に冷却して固化する成形ダイ30,及び成形ダイ30を通過して冷却固化された押出生地(木質発泡成形体)を引き取る引取機50を備えている。
【0104】
定量供給装置
前述の定量供給装置14は,前述のようにして得られた本発明の複合ペレットを定量ずつ押出機12に供給するフィーダ14aと,このフィーダ14aによって押出機12に向かって搬送される複合ペレットに本実施形態にあってはマスタバッチである発泡剤を定量ずつ合流させる発泡剤フィーダ14bが設けられており,前記各フィーダ14a,14bに設けたホッパ内にそれぞれ複合ペレットと発泡剤を投入しておくことで,このホッパの下部に設けられたモータMによる搬送スクリュ(図示せず)の回転によって,成形材料である複合ペレットと発泡剤とが所定の配合比で押出機12に供給できるようになっている。
【0105】
押出機
このようにして,複合ペレット及び発泡剤が投入される押出機12は,成形材料である複合ペレットと発泡剤との混合材料を加熱混練して溶融可塑化し,この溶融可塑化した成形生地を押し出すスクリュ15を備えるスクリュ式の押出機12である。なお,本実施形態においては押出成形装置11として2軸型のスクリュ型押出機12を適用した例について説明しているが,1軸型,多軸型,それらを組み合わせたスクリュ型押出機等の各種のスクリュ型押出機を使用しても良い。
【0106】
もっとも,前述したように二軸スクリュ押出機は,スクリュ15の噛み合い構造による強制的な押出力と独特な混練効果を持っており,原料の分散に非常に有利であると共に,回転数を小さくしても必要な押出力を確保することができるために,摩擦による材料の温度上昇を抑えることができることから,押出機12のシリンダ13外周に設けたヒータ(図示せず)等による材料温度の制御を行い易い等の利点があることから,好ましくは,押出成形装置11の押出機12として,二軸型のスクリュ押出機を使用する。
【0107】
図4に示す2軸型のスクリュ型押出機12は,シリンダ13と,該シリンダ13内に回転可能に設けられる一対のスクリュ15と,該スクリュ15を回転駆動させる減速機,モータ等からなる駆動源Mとを備え,シリンダ13の先端側(押出方向前方,図4中紙面右側)に押出ダイ20及び成形ダイ30が設けられている。
【0108】
シリンダ13は,押出方向先端が開放されて出口13aを形成しており,後端(押出方向後方,図4中紙面左側)が閉塞された筒状に形成されており,後端の上部にシリンダ13の内外を貫通する原料の投入口13bが設けられ,この投入口13bを介して前述の定量供給装置14による複合ペレットと発泡剤との混合材料の投入が行われる。
【0109】
シリンダ13の外周部には,バンドヒータ等の加熱手段(図示せず)がシリンダ13の全長に亘ってシリンダ13を巻回ないしは外環するように設けられており,この加熱手段によってシリンダ13の内部に供給された混合材料が加熱される。
【0110】
スクリュ15のそれぞれは,丸棒状の回転軸と,該回転軸の周囲に螺旋状に一体に設けられる,スクリュ15のネジ山部分を構成するスクリュエレメントとから構成されている。各スクリュ15の後端に設けた回転軸(図4中紙面左側)はシリンダ13の後端から後方に突出し,その突出している部分が駆動源であるモータMに連結され,駆動源により各スクリュ15に形成された傾斜したネジ山とネジ溝とが違いに噛み合った状態で逆回転する,先端側に向かって先細りの形状を成す二軸コニカルスクリュとして構成されている。
【0111】
駆動源Mの作動によってスクリュ15を回転駆動させることにより,定量供給装置14を介してシリンダ13内に供給された混合材料が加熱混練されながらスクリュ15のスクリュ部間の溝に沿ってスクリュ15の先端方向に圧送され,溶融可塑化状態の成形生地となって成形生地に対して加えられる押出力により,スクリュ15の先端側からシリンダ13外に押し出される。
【0112】
成形金型及び引取機
以上のようにして押出機12より押し出された成形生地は,押出ダイ20に導入されて所定の形状に賦形され,押出ダイ20を通過して押し出された成形生地は,成形ダイ30を通過する際に冷却固化されて木質成形品となり,この木質成形品が引取機50によって所定の引取速度で引き取られることにより長尺の木質成形品,図示の実施形態にあっては木質合成板が製造される。
【0113】
このようにして得られた木質成形品(木質合成板)は,長手方向に所定間隔毎に切断されて,ウッドデッキの床材等として使用される。
【実施例】
【0114】
以下に,本発明の製造方法に基づく複合ペレットの製造試験例と,この製造試験例によって得られた複合ペレットを使用した木質成形品(板材)の製造試験例をそれぞれ示す。
【0115】
1.複合ペレットの製造試験
1−1.試験例1
(1)試験の目的
複合ペレット製造装置に設けた押出機の押出量Q(kg/Hr),ノズル孔の直径D(mm),ノズル孔の数n(個)を変化させることにより線速度υd(cm/sec)を変化させ,得られた複合ペレットの形状や特性に表れる変化を確認する。
【0116】
(2)試験方法
(2−1)原料の組成
試験1で使用した原料の組成を下記の表1に示す。
【表1】

【0117】
上記において,溶融材料の密度(ρm) である1.15g/cm3という値は,次式によって求めた。
100/ρm = (40/ρPP)+(45/ρWP)+(10/ρta)+(5/ρot
ここで,
ρPPはポリプロピレン(PP)の比重
ρWPは木粉の真比重
ρtaはタルクの真比重
ρotはその他の物質の比重 である。
【0118】
なお,上記組成の材料が溶融状態にあるとき,木粉やタルクが持つ空孔にはPPやパラフィンワックス,強化剤等が含浸するものとなることから,ρmの算出に際し木粉及びタルクについては真比重を使用して計算した。
上記の例で使用した材料において,
ρPP=0.9,ρWP=1.3,ρta=2.7,ρot=1.17 である。
よって,
100/ρm = (40/0.9)+(45/1.3)+(10/2.7)+(5/1.17)≒ 87.04
ρm= 100/87.04 ≒ 1.15(g/cm3)
【0119】
(2−2)複合ペレット製造装置
装置の概要を,図5に示す。
【0120】
材料は,図5中に示す押出機のシリンダにおける導入部33より導入し,材料の導入位置の下流側におけるシリンダの設定温度をそれぞれ加熱部34において150から170℃,混練部35において170から200℃,定量給送部36において110から200度とした。
【0121】
押出機のシリンダ先端に設けられたダイノズルより押し出された溶融樹脂のストランドは,これに温水を噴霧し(温水シャワー),ホットカットし,得られたペレットを遠心分離にかけて脱水して回収した。
【0122】
シリンダの定量給送部36に設けられたベント孔を真空ポンプに連通して吸引し,付加的に大気開放した。
【0123】
(3)試験結果
各実施例(実施例1〜4)及び比較例(比較例1〜3)における押出量Q,ダイノズルのノズル孔の直径D及び数nの各条件,及びこれらの条件に基づく線速度υdの変化,及び,前記線速度υdの変化に伴い製造された複合ペレットに生じた形状や特性の変化を表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
なお,上記の表2において,ペレットの嵩密度は,得られたペレットを容量1リットルのメスシリンダー内に非加圧状態に充填し,このメスシリンダー内に充填されたペレットの総質量(g)を求め,「総質量(g)/1000(cm3)」として嵩密度を算出した。
【0126】
1−2.試験例2
(1)試験の目的
使用するダイノズルのノズル孔の直径Dと孔数nを一定とし,押出量Q(kg/Hr)を変化させることにより線速度υd(cm/sec)を変化させ,線速度υdが本願発明の数値範囲における下限値付近にあるときの複合ペレットの形状及び性質の変化を確認する。
【0127】
(2)試験方法
(2−1)原料の組成
実験に使用した原料の組成を下記の表3に示す。
【0128】
【表3】

【0129】
スクリュによってシリンダ内で溶融,混練された溶融生地は,このギヤポンプによって更に加圧されて2方弁を介してダイノズルに導入することができ,押出量を一定にするように構成されている。
【0130】
(2−2)複合ペレット製造装置
本試験例において使用した複合ペレット製造装置は,図5に示すものと同じく二軸押出機である。
【0131】
この二軸押出機のシリンダの先端のダイノズルへ導入された溶融生地はノズル孔を通過してストランドとして押し出し,押し出した溶融材料のストランドを,アンダーウォータカットした。
【0132】
押出機におけるシリンダの設定温度は,図5に示すようにシリンダを長手方向に4区分した。各セクションにおける各設定温度は,試験例1のとおりである。
【0133】
押出機のシリンダに対する原料の導入は,木粉を含む原料(樹脂,タルク,顔料及びパラフィンワックス)をシリンダの導入部33より行う。
【0134】
また,定量給送部36に設けたベント孔を,真空ポンプに連通して真空吸引し,付加的に大気開放した。
【0135】
(3)試験結果
上記試験例2に基づく各実施例(実施例5,6)における押出量Qと線速度υdの各条件,及びこれらの条件で得られた複合ペレットの形状と特性を観察した結果を下記の表4に示す。
【0136】
【表4】

【0137】
なお,上記の表4において,ペレットの嵩密度の測定は,実験例1と同様の方法により行った。
【0138】
1−3.試験例1,2に基づく評価
以上の試験結果から,本願所定の線速度υd(cm/sec)の範囲で得られた複合ペレット(実施例1〜4)は,個々のペレットの形状が均一で,且つ,ペレット相互に融着の発生もなく,嵩密度も比較的高いものが得られた〔実施例1〜3につき図7,図8,図9参照〕。
【0139】
しかも,個々のペレットの直径が,ダイノズルに設けたノズル孔の直径Dよりも小さくなっており,また,得られたペレットの内部に空洞(ボイド)の発生も確認できなかった。
【0140】
一方,本願所定の線速度υdを下回る線速度(υd<12)によって得られた複合ペレット(比較例1,2)は,ペレット相互に融着が生じており,2〜15個程のペレットが融着してできた塊が多数発生していた(図11,図12参照)。
【0141】
また,本願所定の線速度υdを下回る線速度(υd<12)で得られた複合ペレットでは,得られた複合ペレットの直径は,ダイノズルに設けたノズル孔の直径Dよりも大きなものとなっており,このような複合ペレットにおいては内部に空洞(ボイド)が生じているものも多く,嵩密度も低いものとなっていた。
【0142】
なお,線速度υdが低くなるにつれて得られるペレットの直径が大きく成る傾向にあることは,試験例1,2の結果より明らかである。
【0143】
そして,試験例2の結果より,線速度υdが12cm/secである実施例5において,ノズル孔の直径4.0mmに対しペレットの直径が3.90mmと僅かに小さくなっており,線速度υdを12cm/sec未満とした場合,ノズル孔の直径とペレットの直径との大小関係が逆転することが予測されることから,バラス効果によるストランドの膨張を抑制し得る線速度υdが,12cm/secを下限とすることが確認できる。
【0144】
なお,本願所定の線速度を上回る線速度(υd>50)によるペレットの製造(比較例3)では,ダイノズルより押し出されたストランドが膨張することを防止でき,ダイノズルに設けたノズル孔の直径よりも小さな直径を有するペレットが得られるものの,ペレット間には融着の発生が確認された。
【0145】
また,本願所定の線速度で製造されたペレットに比較して,これを上回る線速度で得られた複合ペレットは,嵩密度の低いものとなっていることが確認された(表2参照)。
【0146】
2.木質合成板の製造試験
2−1.試験の目的
本願所定の線速度υdの範囲内で得られた複合ペレット(前掲の実施例2,4)と,本願所定の線速度υdを下回る線速度で得られた複合ペレット(前掲の比較例1,2)を使用して,発泡木質合成板を製造し,複合ペレットの相違が,最終製品である木質成形品(発泡木質合成板)の性能に如何なる影響を及ぼすかを確認する。
【0147】
2−2.試験方法(押出発泡成形条件)
押出成形装置を使用して,前掲の実施例2,4及び比較例1,2で得た複合ペレットを使用して押出発泡成形を行った。
【0148】
いずれの例においても,発泡剤として永和化成(株)「ポリスレン EE405F」(キャリア樹脂であるPEに重炭酸ナトリウムを添加したマスタバッチ)を使用した。
【0149】
使用した押出成形装置の構造の概略は図4を参照して説明した押出成形装置と同じであり,この押出成形装置11の押出機12として,シンシナティ・エクストルージョン(Cincinnati Extrusion)社製の異方向回転コニカル2軸スクリュ押出機「T−58」を採用した。
【0150】
押出機12に対する投入に先立ち,実施例2,4及び比較例1,2で得られた複合ペレットを熱間乾燥機により120℃で2時間以上乾燥し,含水率を0.2%以下に乾燥させた後,前述の発泡剤と共に押出機に投入した。
【0151】
押出温度(押出機12〜押出ダイ20の設定温度)を175〜190℃とし,成型ダイ30を20℃の水冷ジャケットとした。
【0152】
また,成形の際,押出機12のシリンダ13に設けられている脱気孔ベントを介した真空引きを行わず,脱気孔ベントを大気開放した状態とした。
【0153】
押出機12のシリンダ13先端には,ブレーカプレート22を備えたアダプタ16を介して図6(A)〜(C)に示す押出ダイ20を取り付けた。この押出ダイ20は,押出機のシリンダ出口と一致する形状の入口20aから,木質発泡成形板の断面サイズに対応した形状の出口20b(145mm×25mm)に向かって幅方向における断面形状を徐々に変化させる流路21が形成されていると共に,この流路21内に,該流路内を流れる溶融生地の流れに対して抵抗を与える,図6に示す形状の抵抗体26を配置した。
【0154】
そして,この押出ダイ20の出口20bに連通して前述の水冷ジャケットを備えた前述の成型ダイ30を設け,押出ダイ20より押し出された溶融生地を,成型ダイ30において冷却して幅145mm,厚み25mmの板状に形成された木質発泡成型体を長さ方向に連続して成形した。
【0155】
2−3.試験結果
上記方法で行った木質発泡成形板の製造試験結果を,下記の表5に示す。
【0156】
【表5】

【0157】
なお,上記の表5において,「金型圧力の変化幅(MPa)」は,図6(A)に符号Pで示した位置において押出ダイ内の圧力変化を測定し,その最低値及び最大値を示したものである。
【0158】
また,上記の表5において,発泡剤の添加量とは複合ペレットと発泡剤(マスタバッチ)とを合わせた総質量100mass%に対する発泡剤(マスタバッチ)の質量比(mass%)を示す。
【0159】
2−4.試験結果の考察
(1)金型圧力の変化幅
実施例2,4で得たペレットを使用して押出発泡成形を行った例では,比較例1,2で得たペレットを使用して押出発泡成形を行った場合に比較し,押出ダイ内における圧力の変化幅が小さくなっていることが確認された。
【0160】
このことから,本願所定の条件で製造されたペレットにあっては,形状やサイズ,物性等が均一なものとなっている結果,押出成形に使用した場合に押出生地の安定した流れが得られ,これにより押出ダイ内の圧力の安定として表れているものと考えられる。
【0161】
特に,本試験例では,複合ペレットのみならず,発泡剤を添加した押出発泡成形を行っていることから,本発明の方法で得られた成形材料を使用する場合には,押出生地内における発泡ガスの均一な分散が得られ,その結果,押出ダイ内における圧力が安定して変化幅が減少しているものと考えられる。
【0162】
また,このような発泡ガスの均一な分散が生じていることは,得られた成形品(板材)に,発泡ガスの部分的な集中を示す空洞(ボイド)が形成されていないことからも確認することができる。
【0163】
従って,本願所定の条件で製造した複合ペレットを使用する場合,押出成形加工時における成形加工性が比較例1,2の成形材料を使用した場合に比較して大幅に改善されていることが判る。
【0164】
(2)発泡剤の添加量
また,実施例2,4の複合ペレットを使用して押出発泡成形を行った例では,密度0.82〜0.85g/cm3の発泡成形品(板材)を,0.8mass%の発泡剤の添加によって安定して得ることができた。
【0165】
これに対し,比較例1,2の複合ペレットを使用して押出発泡成形を行った例では,発泡剤の添加量を0.8mass%とした場合の製品の密度は,比較例1で1.0g/cm3,比較例2で0.9g/cm3であり,実施例2,4のペレットを使用して製造した発泡成形品(板材)に比較して遙かに高い。
【0166】
また,比較例1,2のペレットを使用して押出発泡成形を行った例では,発泡剤の添加量を1.5mass%まで増量した場合でも,製品の密度の最低値は,比較例1のペレットを使用した例で0.88g/cm3,比較例2のペレットを使用した例で0.86g/cm3であり,実施例2,4のペレットを使用した場合における製品の密度の最大値である0.85g/cm3にも達していない。
【0167】
このことから,本願所定の条件で得られた複合ペレットを使用する場合,発泡による製品の軽量化という効果を,比較的少ない発泡剤の添加量において得ることができることが判る。
【0168】
(3)総評
以上のように,本願発明で規定する条件で製造された複合ペレットを使用して押出成形,特に押出発泡成形を行う場合には,製品の成形加工性が向上するだけでなく,密度が小さく軽量でありながら,空洞(ボイド)の発生が無い等,得られる製品の性質についても向上させることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0169】
11 押出成形装置
12 (スクリュ式)押出機
13 シリンダ
13a 出口(シリンダ13の)
13b 投入口(シリンダ13の)
14 定量供給装置
14a フィーダ(複合ペレット用)
14b 発泡剤フィーダ
15 スクリュ(押出機12の)
16 アダプタ
20 押出ダイ
20a 入口(押出ダイ20の)
20b 出口(押出ダイ20の)
21 流路(押出ダイ20の)
22 ブレーカプレート
26 抵抗体
30 成形ダイ
33 導入部
34 加熱部
35 混練部
36 定量給送部
40 複合ペレット製造装置
41 定量供給装置
42 押出機
42a シリンダ
42b スクリュ
42c スクリュエレメント
43 ダイノズル
43a ノズル孔
44 カッタ
44a カッタ刃
45 遠心分離機
47 乾燥機
50 引取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と木粉を主成分とする木質成形品の押出成形に際して成形材料として使用する複合ペレットの製造方法において,
熱可塑性樹脂と木粉を含む原料を押出機により溶融混練して得た溶融材料を,前記押出機の先端に取り付けたダイノズルに多数設けたノズル孔を介してストランド状に押し出すと共に,前記溶融材料のストランドを所定の長さ毎に切断してペレットを形成するに際し,
次式で規定する線速度(υd)が12〜50の範囲となるように,前記押出機の押出量(Q),各ノズル孔の直径(D)及び前記ノズル孔の数(n)を設定することを特徴とする押出成形用複合ペレットの製造方法。
υd = (Q×1000/3600)/〔(D/20)2π・ρm・n〕
ここで,
υd=線速度(cm/sec)
Q = 押出機の押出量(kg/Hr)
D = 各ノズル孔の直径(mm)
n = ノズル孔の数
ρm = 溶融樹脂の密度(g/cm3)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂と前記木粉の配合比を,熱可塑性樹脂30〜70mass%に対し,木粉70〜30mass%としたことを特徴とする請求項1記載の押出成形用複合ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記溶融材料を170〜250℃で前記ノズル孔に導入することを特徴とする請求項1又は2記載の押出成形用複合ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記溶融材料のストランドを,2〜5mmの長さに切断することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の押出成形用複合ペレットの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の方法により製造された押出成形用の複合ペレット。
【請求項6】
木質成形品を押出成形するための押出成形装置に設けた押出機のシリンダ内に,成形材料と発泡剤とを投入して行う押出発泡成形に際し,前記成形材料として使用される請求項5記載の押出成形用の複合ペレット。
【請求項7】
所定容積の容器内に非加圧状態で充填した際の嵩密度が0.60g/cm3以上である請求項5又は6記載の押出成形用の複合ペレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−230419(P2011−230419A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104279(P2010−104279)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(506007046)WPCコーポレーション株式会社 (8)
【Fターム(参考)】