説明

指針型表示器のモータ制御装置

【課題】機械式のアナログ式表示器に用いられ、指針を滑らかに移動させることによって見た目に違和感のない指針型表示器を実現するモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動制御部11は、所定時間毎に順次入力されるデータDaをデータ受信部10が複数受信すると、受信した複数のデータDaのうち少なくとも最初に受信したデータDaと最後に受信したデータDaから指針の回転量を算出するとともに、最初のデータDaを受信してから最後のデータDaを受信するまでの時間を指針の移動時間に設定する。またモータ駆動制御部11は、上記移動時間で上記回転量だけ指針を連続的に回転させる回転速度であって、上記移動時間の中間期間に比べて上記移動期間の開始期間及び終了期間が低速となる回転速度を算出し、指針が上記回転速度で回転するようにモータ駆動部12を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船速などを表示する指針型表示器に用いられるモータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力データに基づいて指針位置データを算出するとともに、表示画面において指針位置データに対応する位置に指針画像を表示させるアナログ式表示装置があった(例えば特許文献1参照)。このアナログ式表示装置は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部で変換されたデジタル信号を元に指針位置データを算出する制御部とを備え、画面上には制御部で算出した指針位置データに対応する位置に指針画像が表示されるようになっている。このアナログ式表示装置では、入力データに対して一次遅れ系または二次遅れ系の応答を示すように指針位置データを算出しているため、入力データが急激に変化した場合でも画面上に表示される指針画像を滑らかに動かすことができるが、この表示装置は指針画像を画面上に表示させたものであり、機械式のアナログ式表示装置(所謂、アナログメータ)ではなかった。
【0003】
一方、機械式のアナログ式表示装置として、自動車の車速などの計測量を数字によるデジタル表示と、指針によるアナログ表示とで表示するデジタル・アナログ表示装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。このデジタル・アナログ表示装置は、蛍光表示管やLCDなどで構成された3桁の7セグメントデバイスにより数字表示を行うデジタル表示器と、パルスモータにより指針を回動させることで目盛りを指示表示するアナログ表示器とを備えている。デジタル表示器は、計測データに応じて数字表示が更新され、アナログ表示器は、デジタル表示器と同じ計測データを演算処理することによって、デジタル表示器の数字表示に対応する目盛りを指示表示させており、アナログ表示器の指針の指示表示をデジタル表示器の数字表示に一致させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−271343号公報(段落[0011]−段落[0022]、及び、第1図−第2図)
【特許文献2】特開平6−129877号公報(段落[0012]−段落[0014]、段落[0037]−段落[0042]、及び、第1図−第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の前者の特許文献1に示したアナログ式表示装置は、入力データが急激に変化した場合でも画面上に表示される指針画像を滑らかに動かすことができるものではあるが、入力データが取り込まれる所定の周期をかけて指針画像を動かしたものではないので、指針画像が移動と停止を繰り返すような動きとなり、指針がスムーズに動いているように見えないという問題があった。
【0006】
また、後者の特許文献2に示したデジタル・アナログ表示装置では、表示更新時間毎に計測データが取り込まれ、この計測データに基づいて指針を回転させることになるが、指針を回転させる際には次の計測データは不明であるため指針をモータの最大速度で回転させた場合、次の計測データが取り込まれる前に目標指示位置に到達してしまう。その結果、指針が回転と停止を繰り返すような動きとなってしまい、指針がスムーズに動いているように見えないという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、機械式のアナログ式表示器に用いられ、指針を滑らかに移動させることによって見た目に違和感のない指針型表示器を実現するモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の指針型表示器のモータ制御装置は、指針を移動させるためのモータと、モータを駆動するモータ駆動部と、指針位置を決定するデータを所定時間毎に受信するデータ受信部と、データ受信部が受信したデータに基づいてモータ駆動部を制御するモータ駆動制御部とを備える。モータ駆動制御部は、所定時間毎に順次入力されるデータをデータ受信部が複数受信すると、受信した複数のデータのうち少なくとも最初に受信したデータと最後に受信したデータから指針の移動量を算出するとともに、最初のデータを受信してから最後のデータを受信するまでの時間を指針の移動時間に設定する。またモータ駆動制御部は、上記移動時間で上記移動量だけ指針を連続的に移動させる移動速度であって、上記移動時間の中間期間に比べて上記移動時間の開始期間及び終了期間が低速となる移動速度を算出し、指針が上記移動速度で移動するようにモータ駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0009】
機械式のアナログ式表示器に用いられ、指針を滑らかに移動させることによって見た目に違和感のない指針型表示器を実現するモータ制御装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のモータ制御装置のブロック図である。
【図2】(a)、(b)は同上を用いた指針型表示器の外観図である。
【図3】同上の動作を説明する説明図である。
【図4】同上の動作を説明する別の説明図である。
【図5】(a)、(b)は同上の動作を説明するさらに別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
モータ制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のモータ制御装置1は、例えば風向、風速、船速、水深又は船首方位などの情報を検出するセンサから入力される検出データに基づいて、指針によりアナログ表示する船舶用の指針型表示器に用いられる。尚、用途は船舶用に限定されるものではない。
【0012】
モータ制御装置1は、図1に示すように、出力軸(図示せず)に取り付けられた指針4(図2参照)を正転又は逆転させるモータ13と、モータ13を駆動するためのモータ駆動部12と、所定時間(以下、周期という。)毎にセンサ3から出力されるデータDaを受信するデータ受信部10と、データ受信部10が受信したデータDaに基づいてモータ駆動部12を制御するモータ駆動制御部11とを備えている。尚、本実施形態では、1周期を100ms(図4参照)に設定している。
【0013】
データ受信部10は、センサ3から出力されたデータDaをモータ駆動制御部11に取り込むためのインターフェース回路であって、本実施形態では、例えばCAN通信規格に準拠したNMEA2000インターフェースを用いている。ここにおいて、CAN通信規格とは、車両通信用の国際規格であって、同一の通信ラインで複数の電子制御ユニット間のデータ通信が行えるものであり、NMEA2000とは、このCAN通信規格に準拠した船舶電子機器のネットワーク規格である。したがって、このNMEA2000に対応したセンサであれば、本実施形態の指針型表示器に接続が可能である。
【0014】
モータ駆動制御部11は、例えばマイクロコンピュータなどで構成され、データ受信部10が複数(本実施形態では2個)のデータDaを受信する毎に、受信した2個のデータDaに基づいて指針4の回転量(移動量)を算出するとともに、1個目(最初)のデータDaを受信してから2個目(最後)のデータDaを受信するまでの時間を指針4の移動時間に設定し、さらにこの移動時間で上記回転量だけ指針4を回転させるための回転速度を算出し、これらの移動時間、回転量及び回転速度に応じてパルス信号を出力する。例えば、図4中の0msから100msの1周期では、現在の指針4の位置aのデータDaと、指針4の目標位置bのデータDaに基づいて上記回転量及び回転速度が算出される。尚、本実施形態では、移動時間は100msに設定されている。
【0015】
モータ駆動部12は、例えばドライバ回路であって、モータ駆動制御部11から出力されたパルス信号に応じて、例えばステッピングモータからなるモータ13にパルス電力を供給する。
【0016】
上述したデータ受信部10、モータ駆動制御部11、モータ駆動部12及びモータ13は、それぞれケース2内に収納される。このケース2は、図2(a)に示すように略矩形箱状に形成され、ケース2の前面側には、目盛り5を有しモータ13の出力軸に適宜の取付手段により取り付けられた指針4を回転させることでセンサ3からの検出データを指示表示する略円形のアナログ表示部20が設けられている。また、アナログ表示部20の下部には、複数(本実施形態では4個)の機能スイッチ6が設けられている。
【0017】
ここで、本実施形態のモータ制御装置1は、指針4の回転速度を、図3に示すように開始期間である時刻0msから時刻t5(0ms<t5<100ms)の区間において0からV1まで比例的に上昇させ(すなわち、低速始動)、中間期間である時刻t5から時刻t6(0ms<t5<t6<100ms)の区間において一定速度V1とし(すなわち、高速)、さらに終了期間である時刻t6から時刻100msの区間においてV1から0まで比例的に減少させている(すなわち、減速停止)。
【0018】
図4は、時刻0msから時刻100msの1周期における指針4の位置を示しており、実線Dは本実施形態を示し、一点鎖線Eは一定の回転速度で指針4を回転させた場合を示している。また、二点鎖線Fは、モータ13の最大回転速度を示している。一定の回転速度で指針4を回転させた場合には回転量が線形に増加しているのに対して、本実施形態のモータ制御装置1では、移動時間(本実施形態では100ms)の開始期間と終了期間の回転速度を低速にしているので、図4に示すように回転量が曲線的に変化し、開始期間においては慣性を有するモータ13のロータ部分に脱調を生じさせることがない。また、終了期間においては指針4の行き過ぎ(オーバーシュート)を防止できるので、指針4を常に正確に指示させることができ、したがって指針4の指示精度を向上させた指針型表示器のモータ制御装置1を提供することができる。また、移動時間の中間期間の回転速度を高速にすることによって、一定の回転速度で指針4を回転させる場合と同様に指針4を上記移動時間をかけて滑らかに回転させることができるので、見た目に違和感のない指針型表示器のモータ制御装置1を提供することができる。尚、本実施形態のモータ制御装置1では、移動時間の終了期間においてモータ13の回転速度を減速させており、減速端において指針4が停止するものであるが、この停止期間は従来例のものと比べると非常にわずかな期間である。
【0019】
次に、本実施形態の他の例について図5に基づいて説明する。図5(a)は2周期分の指針4の回転速度を示しており、0msから100msの1周期では、回転速度は、時刻0msから時刻t5(0ms<t5<100ms)の区間において0からV1まで比例的に上昇し、時刻t5から時刻t6(0ms<t5<t6<100ms)の区間において一定速度V1となり、さらに時刻t6から時刻100msの区間においてV1から0まで比例的に減少している。また、100msから200msの1周期では、回転速度は、時刻100msから時刻t7(100ms<t7<200ms)の区間において0からV2まで比例的に上昇し、時刻t7から時刻t8(100ms<t7<t8<200ms)の区間において一定速度V2となり、さらに時刻t8から時刻200msの区間においてV2から0まで比例的に減少している。而して、このように各周期毎に指針4の回転速度を算出した場合、図5(a)に示すように時刻100msの時点で指針4が一旦停止してしまう。
【0020】
そこで、データ受信部10が3個のデータDaを受信する毎(すなわち、2周期の時間が経過する毎)に、受信した3個のデータDaのうち1個目(最初)と3個目(最後)のデータDaに基づいて指針4の回転速度を算出すると、図5(b)に示すように、時刻0msから時刻t9(0ms<t9<100ms)の区間において0からV2まで比例的に上昇し、時刻t9から時刻t10(0ms<t9<100ms<t10<200ms)の区間において一定速度V2となり、時刻t10から時刻200msの区間においてV2から0まで比例的に減少するように制御できる。したがって、図5(a)のように時刻100msの時点における指針4の停止がなくなるため、指針4をさらに滑らかに回転させることができる。尚、本実施形態では、最初と最後のデータDaを用いて指針4の回転速度を算出しているが、間に受信したデータDa(すなわち、2個目のデータDa)も含めた3個のデータDaに基づいて指針4の回転速度を算出してもよい。
【0021】
このように、本実施形態の指針型表示器では、データ受信部10が複数のデータDaを受信する毎に、受信した複数のデータDaに基づいて回転速度を求め、求めた回転速度で上記移動時間をかけて指針4を回転させているので、従来例のように指針4が回転と停止を繰り返すような動きにはならず、指針4を滑らかに回転させることができるため、見た目に違和感のない指針型表示器のモータ制御装置1を提供することができる。また、上記移動時間の開始期間及び終了期間の回転速度を、上記移動時間の中間期間に比べて低速にしており、開始期間においては慣性を有するモータ13のロータ部分に脱調を生じさせることがなく、また終了期間においては指針4の行き過ぎを防止できるので、指針4を常に正確に指示させることができ、したがって指針4の指示精度を向上させた指針型表示器のモータ制御装置1を提供することができる。
【0022】
尚、本実施形態では、モータ駆動制御部11が演算処理を行うタイミングを、データ受信部10がデータDaを受信するタイミングに同期させているが、演算処理を行うタイミングは本実施形態に限定されるものではなく、演算処理に用いる最後のデータDaを受信してから次のデータDaが受信されるまでに行えばよい。また、モータ駆動制御部11が演算処理に用いるデータDaの数は本実施形態のように2個又は3個に限定されるものではなく、4個以上であってもよい。
【0023】
さらに、本実施形態では、モータ13としてステッピングモータを用いた場合を例に説明したが、例えばクロスコイル式モータなどであってもよい。
【0024】
また、本実施形態では、機械式のアナログ表示部20のみを備えた指針型表示器(図2(a)参照)を例に説明したが、機械式のアナログ表示部を備えていればよく、図2(b)に示すように指針によるアナログ表示部20と数字によるデジタル表示部7の両方を備えた指針型表示器であってもよい。さらに、指針型表示器は回転式のものに限定されるものではなく、例えば指針を直線的に往復移動させるような指針型表示器であってもよい。
【0025】
また、本実施形態では、受信した複数のデータDaのうち、最初と最後のデータDaから指針4の移動量を算出するとともに、最初のデータDaを受信してから最後のデータDaを受信するまでの時間から指針4の移動時間を算出しているが、例えば極大値や極小値、変化量の最大値といった特徴的な値を複数のデータDaの中から抽出し、この抽出した値に基づいて指針4の移動量や移動時間を算出してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 データ受信部
11 モータ駆動制御部
12 モータ駆動部
Da データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を移動させるためのモータと、前記モータを駆動するモータ駆動部と、指針位置を決定するデータを所定時間毎に受信するデータ受信部と、前記データ受信部が受信した前記データに基づいて前記モータ駆動部を制御するモータ駆動制御部とを備え、
前記モータ駆動制御部は、所定時間毎に順次入力される前記データを前記データ受信部が複数受信すると、受信した複数の前記データのうち少なくとも最初に受信した前記データと最後に受信した前記データから前記指針の移動量を算出するとともに、最初の前記データを受信してから最後の前記データを受信するまでの時間を前記指針の移動時間に設定し、前記移動時間で前記移動量だけ前記指針を連続的に移動させる移動速度であって、前記移動時間の中間期間に比べて前記移動時間の開始期間及び終了期間が低速となる移動速度を算出し、前記指針が前記移動速度で移動するように前記モータ駆動部を制御することを特徴とする指針型表示器のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39865(P2012−39865A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210032(P2011−210032)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2007−236005(P2007−236005)の分割
【原出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(592070649)パナソニック電工SUNX竜野株式会社 (61)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】