説明

振動制御装置及び振動制御方法

【課題】 フリクションの変化に対応し、適切な推力及び制御性を保持する振動制御装置及び振動制御方法を提供する。
【解決手段】 設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する振動制御手段2を有する振動制御部2と、荷重支持部10の加速度を検知する加速度検知手段4と、加速度検知手段4の検知結果により振動制御手段2を制御する制御部5とを備えた振動制御装置1において、制御部5は、振動制御手段2を任意の推力で駆動する駆動制御部51と、駆動制御部51の駆動により変位した荷重支持部10の加速度の最大値を取得し、駆動制御部51の駆動した駆動力と、加速度検知手段2の検知した最大値とからフリクションを含めた荷重支持部10の質量を計算する計算部52とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席、荷物等の搭載部、特に、例えば、車両、船や飛行機などの移動体等に設置される座席等の搭乗部に加わる振動を抑制、又は低減する振動制御装置及び振動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動加速度に応じて 座席下の直動型電動アクチュエータを動作制御して座席に加わる振動を抑制する座席用振動制御装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−180202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的なアクティブシートは、機械的な多くの連結を有しているため、フリクション(摩擦)が発生し、アクチュエータにより適切な推力を与えることができなかった。また、経年劣化等で機械的な連結のフリクションの変化が増加した場合等に、制御性が低下していた。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであって、フリクションの変化に対応し、適切な推力及び制御性を保持する振動制御装置及び振動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知結果により前記振動制御手段を制御する制御部とを備えた振動制御装置において、前記制御部は、前記振動制御手段を任意の推力で駆動する駆動制御部と、前記駆動制御部の駆動により変位した前記荷重支持部の加速度の最大値を取得し、前記駆動制御部の駆動した駆動力と、前記加速度検知手段の検知した最大値とからフリクションを含めた荷重支持部の質量を計算する計算部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、前記計算部は、前記フリクションを含めた前記荷重支持部の質量と前記設置部に対する前記荷重支持部の加速度とから前記振動制御手段の推力を計算することを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、設置部に対する荷重支持部の加速度を検知することにより振動制御手段を制御する振動制御方法において、前記振動制御手段を任意の推力で駆動するステップと、前記推力によって振動する前記荷重支持部の加速度を検知するステップと、前記加速度の最大値を取得するステップと、前記推力と前記加速度の最大値からフリクションを含めた荷重支持部の質量を計算するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記フリクションを含めた前記荷重支持部の質量と前記設置部に対する前記荷重支持部の加速度とから前記振動制御手段を制御するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知結果により前記振動制御手段を制御する制御部とを備えた振動制御装置において、前記制御部は、前記振動制御手段を任意の推力で駆動する駆動制御部と、前記駆動制御部の駆動により変位した前記荷重支持部の加速度の最大値を取得し、前記駆動制御部の駆動した駆動力と、前記加速度検知手段の検知した最大値とからフリクションを含めた荷重支持部の質量を計算する計算部とを備えたので、フリクションの変化に対応した荷重を取得することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、前記計算部は、前記フリクションを含めた前記荷重支持部の質量と前記設置部に対する前記荷重支持部の加速度とから前記振動制御手段の推力を計算するので、フリクションの変化に対応し、適切な推力及び制御性を保持し、快適な乗り心地を提供する。
【0011】
さらに、請求項3記載の発明によれば、設置部に対する荷重支持部の加速度を検知することにより振動制御手段を制御する振動制御方法において、前記振動制御手段を任意の推力で駆動するステップと、前記推力によって振動する前記荷重支持部の加速度を検知するステップと、前記加速度の最大値を取得するステップと、前記推力と前記加速度の最大値からフリクションを含めた荷重支持部の質量を計算するステップと、を有するので、フリクションの変化に対応した荷重を取得することができる。
【0012】
また、請求項4記載の発明によれば、前記フリクションを含めた前記荷重支持部の質量と前記設置部に対する前記荷重支持部の加速度とから前記振動制御手段を制御するステップを有するので、フリクションの変化に対応し、適切な推力及び制御性を保持し、快適な乗り心地を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、2は振動制御手段の一例としてのアクチュエータ、3は連結機構、4は加速度検知手段の一例としての加速度センサ、5は制御部、10は荷重支持部、Fは床面、Sは座席である。
【0014】
振動制御装置1は、連結機構3、加速度センサ4、アクチュエータ2、制御部5等からなり、加速度センサ4の検知結果からアクチュエータ2を制御部5により制御することで、連結機構3により床等の設置部Fに連結された座席S及び荷重支持部10を制振するものである。
【0015】
連結機構3は、座席Sを設置部Fに対して上下動可能に連結する機構であり、本実施形態では、第1連結手段3a、第2連結手段3b、座席側移動支持部3c及び床側移動支持部3d等を有し、第1連結手段3a及び第2連結手段3bでX字状のリンクを形成する。
【0016】
第1連結手段3aは、一端を座席Sに回動可能に連結され、他端を床側移動支持部3dにおいて略水平に移動可能に支持される。第2連結手段3bは、一端を床Fに回動可能に連結され、他端を座席側移動支持部3cにおいて略水平に移動可能に支持される。
【0017】
座席側移動支持部3c及び床側移動支持部3dは、それぞれ座席S及び床Fに設置され、略水平な長孔3e,3fを有し、該長孔3e,3f内を第1連結手段3a及び第2連結手段3bの他端が移動可能となるように支持されている。
【0018】
加速度センサ4は、座席S及び荷重支持部10の加速度を検知するセンサである。アクチュエータ2は、床Fに設置され、推力を出力し、床Fに対する座席Sの位置を変更するものである。制御部5は加速度センサ4の検知結果からアクチュエータ2の推力を制御するものである。
【0019】
図2は、このような構造の振動制御装置1のブロック図を示す。加速度センサ4からの入力信号を制御手段としての制御部5に入力し、計算部52で加速度に応じた推力を計算し、駆動制御部51でアクチュエータ2を制御することで、荷重にあわせてアクティブに振動を制御する。また、加速度センサ4や図示しない着座センサ、ボタン等の入力手段40により、着座を検知した際には、駆動制御部51で振動制御部20のアクチュエータ2を駆動し、アクチュエータ2の推力と、加速度センサ4の検知した加速度とから、後述するようにフリクション分を含めた質量を計算部52で計算する。なお、計算部52は、閾値や計算式等を記憶する機能を有しているが、これとは別に閾値や計算式等を記憶する記憶部等を備えてもよい。
【0020】
次に、フリクション測定制御について説明する。図3は、フリクション測定制御のフローチャートを示す。まず、ステップ1で、座席Sに着座したか検出する(ST1)。この検出は、加速度センサ4により検出してもよいが、着座センサやボタン等を別に設けて検出してもよい。
【0021】
次に、ステップ2で、駆動制御部51により、アクチュエータ2を任意の推力で駆動させる。(ST2)。続いて、ステップ3で、加速度センサ4で加速度を検出できたか判断する(ST3)。
【0022】
ステップ3において、加速度を検出できた場合、ステップ4で、加速度の最大値を取得する(ST4)。図4は、時間に対する加速度の変化を示す図である。加速度の最大値は、図4の矢印で示すピーク値から取得する。例えば、図3では、a=0.75m/s2である。
【0023】
ステップ3において、加速度を検出できなかった場合、ステップ4−2で、アクチュエータ2の推力出力を上げてステップ2に戻る(ST4−2)。
【0024】
次に、ステップ5で、計算部52により、フリクション分を含めた質量を求める(ST5)。アクチュエータ推力F、加速度a、フリクションμP、キャビン上質量Mには、次の式のような関係がある。
【0025】
F−μP=ma ・・・(1)
ただし、μ:摩擦係数、P:摩擦部垂直荷重、μP:フリクション
式(1)を変形すると、
F=Ma+μP
=(M+μP/a)a
MもμPも変化するものなので、m=M+μP/aとすると、
F=ma ・・・(2)
である。
【0026】
したがって、フリクションを含めた質量mは、ステップ2においてアクチュエータを駆動させた推力Fからステップ4において取得した加速度aを割った値となる。例えば、本実施形態では、F=6Nとし、最大加速度はa=0.75m/s2であるので、m=8kgとなる。
【0027】
次に、本実施形態のフリクションを考慮した振動制御について説明する。図5は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ11で、加速度を加速度センサ4により検出する(ST11)。次に、ステップ12で、計算部52により、アクチュエータ3の推力を計算する(ST12)。推力計算は、例えば、加速度×フリクション×ゲイン×(−1)等の計算式やあらかじめ加速度に対応する推力の値を記憶しておくことにより実行する。ここで、計算式におけるゲインは制御の遅れ分、−1は向きの反転を表す。続いて、ステップ13で、駆動制御部51により、ステップ12において計算した推力をアクチュエータ3が出力するように制御する(ST13)。
【0028】
図6は、本発明の第2実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、10は荷重支持部、11は第1案内手段の一例としての第1スライダレール、12は第1移動手段の一例としての第1スライダ、13は荷重支持部材、20は振動制御部、21は振動制御手段の一例としてのアクチュエータ、30はカウンタバランス部、31は第2案内手段の一例としての第2スライダレール、32は第2移動手段の一例としての第2スライダ、33は天秤部、35は付勢手段の一例としてのスプリング、40は入力手段、41は加速度検知手段の一例としての加速度センサ、Sは搭載部の一例としての座席、Fは設置部の一例としての床面である。
【0029】
振動制御装置1は、荷重支持部10により床Fに設置され、振動制御部20で振動制御装置1上のキャビンや座席S等の荷重の振動を制御すると共に、カウンタバランス部30で荷重に対する力の釣り合いを設定するものである。本発明においては、第1案内手段としての第1スライダレール11と第1移動手段としての第1スライダ12をまとめて第1移動案内手段とする。同様に、第2案内手段としての第2スライダレール31と第2移動手段としての第2スライダ32もまとめて第2移動案内手段とする。
【0030】
荷重支持部10は、床Fに設置された第1スライダレール11、荷重支持部材13に設けた第1スライダ12及び座席Sを支持する荷重支持部材13等を有する。第1スライダレール11は、床Fに設置され、第1スライダ12及び荷重支持部材13を上下(鉛直)方向に案内(規制)する。第1スライダ12は、荷重支持部材13に設けられ、第1スライダレール11により上下(鉛直)方向に案内(規制)される。荷重支持部材13は、第1スライダレール11により上下(鉛直)方向に案内(規制)される第1スライダ12を有し、振動制御部20及びカウンタバランス部30に載置されている。座席Sは、荷重支持部材13の上方に設置される。
【0031】
振動制御部20は、アクチュエータ21等を有する。アクチュエータ21は、下部を床Fに設置、上部を荷重支持部材13に当接され、荷重支持部材13上を変位させる。
【0032】
カウンタバランス部30は、第2スライダレール31、第2スライダ32、天秤部33、スプリング35等を有する。第2スライダレール31は、荷重支持部材13に設置され、第2スライダ32を移動可能に案内する。第2スライダ32は、天秤部33の一端に結合されると共に、第2スライダレール31に案内され、荷重支持部材13に対して移動可能なものである。すなわち、荷重支持部13は、カウンタバランス部30と第2移動案内手段としての第2スライダと第2スライダレールを介して荷重支持部13とカウンタバランス部30は、相対移動可能に連結される。
【0033】
天秤部33は、一端33aを第2スライダ32に対して回動するように結合され、他端33b側をスプリング35の他端に回動可能に結合され、一端33aと他端33bの間を支点33cとして、シャシSに回動可能に結合される。
【0034】
スプリング35は、一端を床Fに結合され、他端を天秤部33の他端33bに結合されている。
【0035】
入力手段40は、加速度センサ41等を有する。加速度センサ41は、座席S上の加速度を検知するセンサである。
【0036】
第2実施形態のような振動制御装置1の構造とすることにより、アクチュエータ21の出力を低減することができ、小型のアクチュエータ21で実現できる効率的な振動制御装置1を提供することができる。
【0037】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0038】
このように、床Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10の床Fに対する振動を制御するアクチュエータ21を有する振動制御部20と、荷重支持部10の加速度を検知する加速度センサ41と、加速度センサ41の検知結果によりアクチュエータ21を制御する制御部50とを備えた振動制御装置1において、制御部50は、アクチュエータ21を任意の推力で駆動する駆動制御部51と、駆動制御部51の駆動により変位した荷重支持部10の加速度の最大値を取得し、駆動制御部51の駆動した駆動力と、加速度センサ21の検知した最大値とからフリクションを含めた荷重支持部10の質量を計算する計算部52とを備えたので、フリクションの変化に対応した荷重を取得することができる。
【0039】
また、計算部52は、フリクションを含めた荷重支持部10の質量と床Fに対する荷重支持部10の加速度とからアクチュエータ21の推力を計算するので、フリクションの変化に対応し、適切な推力及び制御性を保持し、快適な乗り心地を提供する。
【0040】
さらに、床Fに対する荷重支持部10の加速度を検知することによりアクチュエータ21を制御する振動制御方法において、アクチュエータ21を任意の推力で駆動するステップ(ST2)と、推力によって振動する荷重支持部10の加速度を検知するステップ(ST4)と、加速度の最大値を取得するステップと、推力と加速度の最大値からフリクションを含めた荷重支持部10の質量を計算するステップ(ST5)と、を有するので、フリクションの変化に対応した荷重を取得することができる。
【0041】
また、フリクションを含めた荷重支持部10の質量と床Fに対する荷重支持部10の加速度とからアクチュエータ21を制御するステップ(ST13)を有するので、フリクションの変化に対応し、適切な推力及び制御性を保持し、快適な乗り心地を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図2】振動制御装置のシステム構成を示したブロック図である。
【図3】フリクション測定制御のフローチャートを示す図である。
【図4】時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図5】制振制御のフローチャートを示す図である。
【図6】第2実施形態の振動制御装置を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…振動制御装置、2…アクチュエータ、3…連結機構、4…加速度センサ、5…制御部、10…荷重支持部、11…第1スライダレール(第1案内手段)、12… 第1スライダ(第1移動手段)、13…荷重支持部材、20…振動制御部、21…制振用アクチュエータ(振動制御手段)、30…カウンタバランス部、31…第2スライダレール(第2案内手段)、32…第2スライダ(第2移動手段)、33…天秤部、35…スプリング(付勢手段)、40…検知手段、41…加速度センサ(加速度検知手段)、50…制御部、51…駆動制御部、52…計算部、F…床面(設置部)、S…座席(搭載部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知結果により前記振動制御手段を制御する制御部とを備えた振動制御装置において、
前記制御部は、前記振動制御手段を任意の推力で駆動する駆動制御部と、前記駆動制御部の駆動により変位した前記荷重支持部の加速度の最大値を取得し、前記駆動制御部の駆動した駆動力と、前記加速度検知手段の検知した最大値とからフリクションを含めた荷重支持部の質量を計算する計算部と
を備えたことを特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
前記計算部は、前記フリクションを含めた前記荷重支持部の質量と前記設置部に対する前記荷重支持部の加速度とから前記振動制御手段の推力を計算することを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項3】
設置部に対する荷重支持部の加速度を検知することにより振動制御手段を制御する振動制御方法において、前記振動制御手段を任意の推力で駆動するステップと、前記推力によって振動する前記荷重支持部の加速度を検知するステップと、前記加速度の最大値を取得するステップと、前記推力と前記加速度の最大値からフリクションを含めた荷重支持部の質量を計算するステップと、を有することを特徴とする振動制御方法。
【請求項4】
前記フリクションを含めた前記荷重支持部の質量と前記設置部に対する前記荷重支持部の加速度とから前記振動制御手段を制御するステップを有することを特徴とする請求項3に記載の振動制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−18676(P2009−18676A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182120(P2007−182120)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】