説明

排気管の支持装置

【課題】サブフレームに車両上方に湾曲する湾曲部を形成し、この湾曲部の下方に車両前後方向に延びる排気管を配設する排気管の支持装置において、排気管からサブフレームに伝わる振動を低減するとともに、サブフレームの製造性を向上させることにある。
【解決手段】サブフレームの上部半体と下部半体との結合部位に夫々の外周壁を内外に嵌め込んで結合する嵌め込み結合部を形成し、この嵌め込み結合部の側方にマウント部材を配設し、マウント部材の枠部に上下一対のブラケットを取り付け、この上下一対のブラケットを嵌め込み結合部と近接するサブレームの上面部及び下面部に連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気管の支持装置に係り、特に排気管を車両の下部に配設した排気管の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気管の支持装置においては、上部半体と下部半体とを結合してなる中空状のサブフレームを車体の下部に配設し、エンジンに取り付けられる排気管を、サブフレームの下方を通して車両後方へ延出するとともに、マウント部材を介してサブフレームに支持している。
【0003】
従来、エキゾーストパイプ取付構造には、エキゾーストパイプをサポートで支持し、このサポートをフロントサブフレームに弾性体を介して取り付け、車体に伝わる振動騒音を低減するものがある。
【特許文献1】実開昭61−67024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、排気管の支持装置においては、排気管の動きを規制するために、マウント部材を排気管に固定されたステイが貫通する弾性体とこの弾性体を内部に配設した環状の枠部とで構成し、このマウント部材の枠部をサブフレームに連結している。このようなマウント部材は、枠部をサブフレームの上面部又は下面部の一方に取り付けることが一般的である。
しかし、サブフレームと排気管との干渉を防止するため、サブフレームに車両上方に湾曲する湾曲部が形成されている場合には、サブフレームの上面部又は下面部にマウント部材を取り付けるための平面座(フランジ等)を確保することが困難となり、サブフレームの製造性が悪化するという不都合があった。
また、上記の対策として、サブフレームの上面部又は下面部に別のブラケットを取り付け、このブラケットにマウント部材を取り付ければ、取付用の平面座を少なくできるが、この際、マウント部材がサブフレームの上面部又は下面部の一方に片持ち状に支持されているため、排気管からサブフレームに伝わる振動が増加するという問題があった。
さらに、サブフレームを構成する上部半体と下部半体とを、夫々に形成されるフランジ部を突合わせて結合する構造の場合、フランジ部を避けてサブフレームから離れた位置にマウント部材を配設することが必要となり、マウント部材をサブフレームに連結するブラケットの長さが長くなって、排気管からサブフレームに伝わる振動が増加する問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、排気管からサブフレームに伝わる振動を低減するとともに、サブフレームの製造性を向上させることができる排気管の支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上部半体と下部半体とを接合してなる中空構造のサブフレームを車両の下部に配設し、このサブフレームに車両上方に湾曲する湾曲部を形成し、この湾曲部の下方に車両前後方向に延びる排気管を配設し、この排気管にステイを取り付ける一方、このステイが貫通する弾性体とこの弾性体の外周を囲む環状の枠部とを備えたマウント部材を前記サブフレームに取り付け、前記マウント部材を介して前記排気管を前記サブフレームに弾性的に支持した排気管の支持装置において、前記上部半体と前記下部半体との結合部位に夫々の外周壁を内外に嵌め込んで結合する嵌め込み結合部を形成し、この嵌め込み結合部の側方に前記マウント部材を配設し、前記マウント部材の前記枠部に上下一対のブラケットを取り付け、この上下一対のブラケットを前記嵌め込み結合部と近接する前記サブレームの上面部及び下面部に連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の排気管の支持装置は、排気管からサブフレームに伝わる振動を低減するとともに、サブフレームの製造性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、排気管からサブフレームに伝わる振動を低減するとともに、サブフレームの製造性を向上させる目的を、サブフレームの上部半体と下部半体との結合部位に夫々の外周壁を内外に嵌め込んで結合する嵌め込み結合部を形成し、この嵌め込み結合部の側方にマウント部材を配設し、マウント部材の枠部に上下一対のブラケットを取り付け、この上下一対のブラケットを嵌め込み結合部と近接するサブレームの上面部及び下面部に連結して実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。図1〜図4において、1は車両、2は車体、3はエンジン、4は左前車輪、5は右前車輪である。車両1の下部には、サブフレーム6が配設される。
このサブフレーム6は、車両前後方向Xに指向する左サイドメンバ7と、車両前後方向Xに指向する右サイドメンバ8と、車両左右方向Yに指向して左サイドメンバ7の前端と右サイドメンバ8の前端とに連結された前側クロスメンバ9と、車両左右方向Yに指向して左サイドメンバ7の後端と右サイドメンバ8の後端とに連結された後側クロスメンバ10とが一体的になって構成されている。
このサブフレーム6は、左前車体取付部11を貫通する左前取付ボルト12と、右前車体取付部13を貫通する右前取付ボルト14と、左後車体取付部15を貫通する左後取付ボルト16と、右後車体取付部17を貫通する右後取付ボルト18とにより、車体2の下部に連結される。
前記各車体取付部11、13、15、17においては、図4に示すように、例えば、右後車体取付部17を代表して説明すると、右後取付ボルト18には、支持部材としてのカラー19と弾性体からなるブッシュ20とが嵌装されている。
また、このサブフレーム6の右サイドメンバ8は、図4に示すように、上部半体21と下部半体22とを接合してなる中空構造であり、上面部23と下面部24とを備えている。
【0010】
図2に示すように、サブフレーム6の後側クロスメンバ10の略中間部位には、車両上方に湾曲する湾曲部25が所定の曲げ半径で形成される。この湾曲部25の下方には、車両前後方向に延びる排気管26が配設される。
この排気管26は、エンジン3に取り付けられ、エンジン3側の前側触媒コンバータ27とフレキシブルチューブ28間の第1排気管29と、フレキシブルチューブ28と後側触媒コンバータ30間で前記湾曲部25の下方に位置する第2排気管31と、後側触媒コンバータ30の車両後方に延びる第3排気管32とからなる。
【0011】
車両1には、排気管26の支持装置33が設けられる。
この支持装置33において、図2に示すように、排気管26の第2排気管31には、ステイ34の二股形状の先端部35A・35Bが挟むように固定される。
サブフレーム6には、図2〜図4に示すように、マウント部材36を取り付ける。このマウント部材36は、ステイ34が貫通する貫通孔37を備えた所定形状の弾性体38と、この弾性体38の外周を囲む環状の枠部39とから構成される。排気管26は、マウント部材36を介してサブフレーム6の右サイドメンバ8に弾性的に支持される。ステイ34は、弾性体38の略中央部位の貫通孔37に貫通して取り付けられる。
図4に示すように、サブフレーム6の右サイドメンバ8において、上部半体21と下部半体22との結合部位には、上部半体21の上側外周壁40と下部半体22の下側外周壁41とを内外に嵌め込んで結合する嵌め込み結合部42を形成する。この嵌め込み結合部42の左側方には、マウント部材36が配設される。
マウント部材36の枠部39には、図3、図4に示すように、上下一対の上側ブラケット43、下側ブラケット44の一端を夫々取り付ける。この上側ブラケット43、下側ブラケット44の各他端は、嵌め込み結合部42と近接するサブフレーム6の右サイドメンバ8の上面部23、下面部24に連結される。
また、図3、図4に示すように、後側触媒コンバータ30の上方には、湾曲した遮熱部材45が配設される。
【0012】
上記の構造において、サブフレーム6の上部半体21と下部半体22との結合部位に夫々の上側外周壁40と下側外周壁41とを内外に嵌め込んで結合する嵌め込み結合部42を形成し、この嵌め込み結合部42の側方にマウント部材36を配設することによって、マウント部材36を、サブフレーム6に近接した位置に配設できる。このため、マウント部材36をサブフレーム6に連結する上側ブラケット43、下側ブラケット44の長さを短くし、この上側ブラケット43、下側ブラケット44の振動を抑制できる。
また、マウント部材36の枠部39に上下一対の上側ブラケット43、下側ブラケット44を取り付け、この上側ブラケット43、下側ブラケット44を嵌め込み結合部42に近接するサブレーム6の上面部23及び下面部24に連結したため、嵌め込み結合部42によって上側ブラケット43、下側ブラケット44が締結されるサブフレーム6の右サイドメンバ8の上面部23と下面部24との結合剛性を高め振動を抑制でき、排気管26からマウント部材36を介してサブフレーム6に伝わる振動を低減できる。
さらに、サブフレーム6の上面部23及び下面部24に、マウント部材36を取り付けるための大きな平面座(フランジ等)を確保することが不要となる。そのため、マウント部材36をサブフレーム6の右サイドメンバ8へ取り付けることができ、サブフレーム6の後側クロスメンバ10の略中間部位に形成された湾曲部25の曲げ半径を大きくしてサブフレーム6の製造性を向上させることができる。
【0013】
また、図4に示すように、サブフレーム6の内部に上部半体21と下部半体22とを連結する筒状部材46を、ブッシュ20を包囲するように、右後取付ボルト18に嵌装させて配設し、この筒状部材46と連結されたサブフレーム6の右サイドメンバ8の上面部23及び下面部24に上側ブラケット43、下側ブラケット44を連結した。
このような構造において、筒状部材46及びブッシュ20によって中空状のサブフレーム6の右サイドメンバ8の上面部23及び下面部24の振動を抑制し、排気管26からサブフレーム6に伝わる振動を低減できる。よって、排気管26からサブフレーム6への振動は、マウント部材36の弾性体38及び筒状部材46内のブッシュ20によって効率的に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明に係る排気管の支持構造を、各種車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両前部の底面図である。
【図2】支持装置の車両後方からの斜視図である。
【図3】支持装置の車両前方からの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線による支持装置の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 車両
2 車体
3 エンジン
6 サブフレーム
7 左サイドメンバ
8 右サイドメンバ
9 前側クロスメンバ
10 後側クロスメンバ
21 上部半体
22 上部半体
23 上面部
24 下面部
25 湾曲部
26 排気管
33 支持装置
34 ステイ
36 マウント部材
38 弾性体
39 枠部
40 上側外周壁
41 下側外周壁
42 嵌め込み結合部
43 上側ブラケット
44 下側ブラケット
46 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部半体と下部半体とを接合してなる中空構造のサブフレームを車両の下部に配設し、このサブフレームに車両上方に湾曲する湾曲部を形成し、この湾曲部の下方に車両前後方向に延びる排気管を配設し、この排気管にステイを取り付ける一方、このステイが貫通する弾性体とこの弾性体の外周を囲む環状の枠部とを備えたマウント部材を前記サブフレームに取り付け、前記マウント部材を介して前記排気管を前記サブフレームに弾性的に支持した排気管の支持装置において、前記上部半体と前記下部半体との結合部位に夫々の外周壁を内外に嵌め込んで結合する嵌め込み結合部を形成し、この嵌め込み結合部の側方に前記マウント部材を配設し、前記マウント部材の前記枠部に上下一対のブラケットを取り付け、この上下一対のブラケットを前記嵌め込み結合部と近接する前記サブレームの上面部及び下面部に連結したことを特徴とする排気管の支持装置。
【請求項2】
前記サブフレームの内部に前記上部半体と前記下部半体とを連結する筒状部材を配設し、この筒状部材と連結された前記サブフレームの上面部及び下面部に前記上下一対のブラケットを連結したことを特徴とする請求項1に記載の排気管の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13062(P2010−13062A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177118(P2008−177118)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】