説明

接合方法、接合体、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置

【課題】2つの被着体同士を、高い寸法精度で強固に、かつ低温で効率よく接合可能な接合方法、2つの被着体同士を高い寸法精度で強固に接合してなる接合体、かかる接合体を備えた信頼性の高い液滴吐出ヘッド、およびかかる液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、2つの基材2上に、それぞれプラズマ重合膜3を形成し、第1の被着体41および第2の被着体42を得る工程(第1の工程)と、各プラズマ重合膜3同士を密着させるように、2つの被着体41、42を重ね合わせて、仮接合体5を得る工程(第2の工程)と、仮接合体5中の各プラズマ重合膜3に対してエネルギーを付与することにより、各プラズマ重合膜3同士を接合して、接合体1を得る工程(第3の工程)とを有する。このうち、プラズマ重合膜3は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合体、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
接着剤は、部材の材質によらず、接着性を示すことができる。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
例えば、インクジェットプリンタが備える液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)は、樹脂材料、金属材料、シリコン系材料等の異種材料で構成された部品同士を、接着剤を用いて接着することにより組み立てられている。
このように接着剤を用いて部材同士を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤を硬化させることにより、部材同士を接着する。
【0003】
ところが、このような接着剤では、以下のような問題がある。
・接着強度が低い
・寸法精度が低い
・硬化時間が長いため、接着に長時間を要する
また、多くの場合、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程の高コスト化・複雑化を招いている。
【0004】
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
【0005】
しかしながら、固体接合には、以下のような問題がある。
・接合される部材の材質に制約がある
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
このような問題を受け、接合に供される部材の材質によらず、部材同士を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合する方法が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−82404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2つの被着体同士を、高い寸法精度で強固に、かつ低温で効率よく接合可能な接合方法、2つの被着体同士を高い寸法精度で強固に接合してなる接合体、かかる接合体を備えた信頼性の高い液滴吐出ヘッド、およびかかる液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、基材上にプラズマ重合膜を備える第1の被着体および第2の被着体を用意する第1の工程と、
前記各プラズマ重合膜同士を密着させるように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る第2の工程と、
前記プラズマ重合膜に対してエネルギーを付与することにより、前記各プラズマ重合膜同士を接合して、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、プラズマ重合膜同士の間に接着性が発現し、2つの被着体同士を、高い寸法精度で強固に、かつ低温で効率よく接合することができる。また、仮接合体の状態では、各プラズマ重合膜同士の間は接合されていないので、第1の被着体と第2の被着体とをずらし、これらの相対的な位置を容易に微調整することができる。
【0009】
本発明の接合方法では、前記各プラズマ重合膜は、それぞれポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜の撥水性と親水性の制御を容易に行うことができ、その結果、接着性の制御を容易に行うことができる。また、ポリオルガノシロキサンは、比較的柔軟性に富んでいるので、基材間に生じる熱膨張率差に伴う応力を緩和することができる。その結果、接合体の剥離を確実に防止することができる。さらに、耐久性に優れた接合体が得られる。
【0010】
本発明の接合方法では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れたプラズマ重合膜が得られる。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘性を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0011】
本発明の接合方法では、前記各プラズマ重合膜の平均厚さは、それぞれ1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、2つの被着体同士をより強固に接合することができる。また、これにより、プラズマ重合膜にある程度の形状追従性が確保されるので、基材の接合面に存在する凹凸を吸収して、プラズマ重合膜の表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。その結果、接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記仮接合体を加熱する方法、および、前記仮接合体に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0013】
本発明の接合方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、基材が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、プラズマ重合膜を確実に活性化し、プラズマ重合膜に接着性を発現させることができる。
本発明の接合方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、基材に損傷等を生じさせることなく、単に仮接合体を圧縮するのみで、プラズマ重合膜を確実に活性化し、プラズマ重合膜に接着性を発現させることができる。
【0014】
本発明の接合方法では、前記第1の被着体が備える基材および前記第2の被着体が備える基材のうちの少なくとも一方は、エネルギー線の透過性を有しており、
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記仮接合体の前記透過性を有する基材側から、前記エネルギー線を照射する方法により行われることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜を効率よく活性化させることができる。また、短時間で大きなエネルギーを付与することができる。したがって、プラズマ重合膜中の分子構造を必要以上に切断しないので、プラズマ重合膜の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0015】
本発明の接合方法では、前記第1の被着体が備える基材および前記第2の被着体が備える基材のうちの少なくとも一方は、透光性を有しており、
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記仮接合体の前記透光性を有する基材側から、紫外線を照射する方法により行われることが好ましい。
これにより、簡単な設備を用いて、プラズマ重合膜の広い範囲をムラなく、より短時間に活性化させることができる。
【0016】
本発明の接合方法では、前記紫外線の波長は、150〜300nmであることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜の特性が著しく低下するのを防止しつつ、プラズマ重合膜を活性化させることができる。
本発明の接合方法では、前記第3の工程は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
【0017】
本発明の接合方法では、前記第3の工程の後、前記接合体を加熱する工程を有することが好ましい。
これにより、各プラズマ重合膜の界面において、水酸基の脱水縮合がより進行する。その結果、接合体における接合強度をより高めることができる。
本発明の接合方法では、前記加熱温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
【0018】
本発明の接合方法では、前記第3の工程の後、前記接合体を加圧する工程を有することが好ましい。
これにより、各プラズマ重合膜の表面同士がより近接し、脱水縮合や結合活性手の再結合が促進される。その結果、2つのプラズマ重合膜の一体化がより進行して、接合体における接合強度をより高めることができる。
本発明の接合方法では、前記接合体を加圧する際の圧力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、基材に損傷等を生じさせることなく、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
【0019】
本発明の接合方法では、前記第1の被着体または前記第2の被着体は、あらかじめ、前記基材上に前記プラズマ重合膜との密着性を高める表面処理を施した後、該表面処理を施した領域に前記プラズマ重合膜を形成してなるものであることが好ましい。
これにより、基材の接合面が清浄化および活性化され、接合面に対してプラズマ重合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、接合面上にプラズマ重合膜を形成したとき、接合面とプラズマ重合膜との接合強度を高めることができる。
【0020】
本発明の接合方法では、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、基材の接合面を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面とプラズマ重合膜との接合強度を特に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記第1の被着体が備える基材および前記第2の被着体が備える基材は、それぞれ剛性が異なっていることが好ましい。
これにより、2つの被着体同士をより強固に接合することができる。
【0021】
本発明の接合体は、2つの基材が、本発明の接合方法により接合されたことを特徴とする。
これにより、2つの被着体同士を高い寸法精度で強固に接合してなる接合体が得られる。
本発明の接合体では、前記2つの基材間の接合強度は5MPa以上であることが好ましい。
これにより、剥離を十分に防止し得る接合体が得られる。
本発明の液滴吐出ヘッドは、本発明の接合体を有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い液滴吐出装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の接合方法、接合体、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<接合方法>
本発明の接合方法は、第1の被着体41と第2の被着体42とを接合する方法である。これらの2つの被着体41、42は、それぞれ、基材2と、基材2上に設けられたプラズマ重合膜3とを有している。
本発明の接合方法によれば、このような第1の被着体41と第2の被着体42とを、高い寸法精度で強固に、かつ低温で効率よく接合することができる。
【0023】
ここでは、本発明の接合方法を説明するのに先立って、まず、前述のプラズマ重合膜3を作製するのに用いられるプラズマ重合装置について説明する。
図1は、本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、基材2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
【0024】
図1に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
【0025】
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は、板状をなしており、基材2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図1に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
【0026】
第1の電極130の基材2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図1に示すように、基材2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、基材2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基材2をプラズマ処理に供することができる。
【0027】
第2の電極140は、基材2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
【0028】
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図1に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
【0029】
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して基材2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0030】
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
【0031】
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による基材2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
【0032】
次に、本発明の接合方法の実施形態について、上記のプラズマ重合装置100を用いた場合を例に説明する。
図2および図3は、本発明の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかる接合方法は、2つの基材2の接合面21上に、それぞれプラズマ重合膜3を形成し、第1の被着体41と第2の被着体42とを得る工程(第1の工程)と、各プラズマ重合膜3同士を密着させるように、2つの被着体41、42を重ね合わせて、仮接合体を得る工程(第2の工程)と、仮接合体中の各プラズマ重合膜3に対してエネルギーを付与することにより、各プラズマ重合膜3同士を接合して、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0033】
[1]まず、基材2を2つ用意する。なお、図2(a)〜(c)では、2つの基材2のうちの1つを省略して示している。
このような基材2の構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Ta、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ガリウムヒ素(GaAs)、ガリウムリン(GaP)のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0034】
また、基材2は、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
なお、2つの基材2の構成材料は、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
また、2つの基材2の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。各基材2の熱膨張率がほぼ等しければ、2つの基材2同士を接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
【0035】
なお、後に詳述するが、各基材2の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、2つの基材2同士を接合する際の条件を最適化することにより、2つの基材2同士を高い寸法精度で強固に接合することができる。
また、2つの基材2は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材2同士をより強固に接合することができる。
また、2つの基材2のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料であるのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材2同士を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
【0036】
また、基材2の形状は、プラズマ重合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、本実施形態では、図2(a)に示すように、基材2が板状をなしている。これにより、基材2は撓み易くなり、2つの基材2を重ね合わせたときに、互いに形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材2を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体における接合強度が高くなる。
また、基材2が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、基材2の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0037】
次に、必要に応じて、基材2の接合面21にプラズマ重合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、接合面21が清浄化および活性化され、接合面21に対してプラズマ重合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面21上にプラズマ重合膜3を形成したとき、接合面21とプラズマ重合膜3との接合強度を高めることができる。
【0038】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す基材2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理を行うことにより、接合面21を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面21とプラズマ重合膜3との接合強度を特に高めることができる。
【0039】
また、基材2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、プラズマ重合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基材2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された基材2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された基材2を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、基材2の接合面21とプラズマ重合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、基材2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面21付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0040】
また、表面処理に代えて、基材2の接合面21に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、プラズマ重合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して基材2とプラズマ重合膜3とを接合することになり、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
【0041】
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、基材2とプラズマ重合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
なお、上記のような表面処理および中間層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
【0042】
[2]次に、図2(a)〜(c)に示すように、2つの基材2上(基材2の一方の面)に、それぞれプラズマ重合膜3を形成する(第1の工程)。
かかるプラズマ重合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合して得ることができる。
具体的には、まず、チャンバー101内に基材2を収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
【0043】
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図2(a)参照)。
混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
【0044】
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図2(b)に示すように、重合物が基材2上に付着・堆積する。これにより、基材2上にプラズマ重合膜3が形成される(図2(c)参照)。
【0045】
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリメチル亜鉛、トリエチル亜鉛のような有機金属系化合物、各種炭化水素系化合物、各種フッ素系化合物等が挙げられる。
【0046】
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわち、ポリオルガノシロキサン、有機金属ポリマー、炭化水素系ポリマー、フッ素系ポリマー等で構成されることとなる。
このうち、プラズマ重合膜3は、特に、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されているのが好ましい。ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、後述するエネルギー付与工程(第3の工程)を経ることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性が発現する。
【0047】
すなわち、撥水性を示すポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜3は、それ同士を接触させても、有機基によって接着が阻害されることとなり、極めて接着し難い。一方、親水性を示すポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜3は、それ同士を接触させると、特に容易に接着することができる。すなわち、撥水性と親水性の制御を容易に行えるという利点は、接着性の制御を容易に行えるという利点に繋がる。
【0048】
したがって、かかるプラズマ重合膜3は、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に接着性を示すものの、エネルギーを付与されないときには、非接着性を示し、意図しない接着を防止し得るものとなる。
また、ポリオルガノシロキサンは、比較的柔軟性に富んでいるので、例えば、2つの基材2の構成材料が異なる場合でも、各基材2間に生じる熱膨張率差に伴う応力を緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
【0049】
さらに、ポリオルガノシロキサンは、耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。具体的には、例えば、樹脂材料を浸食し易い有機系インクが用いられる工業用インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドを製造する際に、ポリオルガノシロキサンを主材料とするプラズマ重合膜3を用いることにより、その耐久性を向上させることができる。
【0050】
このようなポリオルガノシロキサンは、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するものである。このような構造を有することにより、ポリオルガノシロキサンは変形し難い強固な膜となる。このため、プラズマ重合膜3は特に優れた接着性を示すとともに、プラズマ重合膜3自体が寸法精度の高いものとなる。このため、最終的に、接合強度に優れ、かつ寸法精度の高い接合体1が得られる。
【0051】
なお、このようなポリオルガノシロキサンの結晶化度は、特に限定されないが、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、ポリオルガノシロキサンは、十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、上述したポリオルガノシロキサンが示す特性が顕在化し、プラズマ重合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
【0052】
また、プラズマ重合膜3がポリオルガノシロキサンで構成されている場合、プラズマ重合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率との合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、プラズマ重合膜3は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、プラズマ重合膜3自体が強固なものとなる。また、かかるプラズマ重合膜3は、各基材2に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、プラズマ重合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、プラズマ重合膜3の安定性が高くなり、各被着体41、42をより強固に接合することができるようになる。
【0053】
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするプラズマ重合膜は、接着性に特に優れることから、本発明の接合方法において、特に好適に用いられるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0054】
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
【0055】
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。
また、基材2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
【0056】
このような条件を適宜設定することにより、緻密なプラズマ重合膜3をムラなく形成することができる。
なお、本実施形態では、プラズマ重合装置を用いて、基材2上にプラズマ重合膜3を形成する手順について説明しているが、プラズマ重合膜3を備えた基材2(被着体)をあらかじめ用意しておき、その被着体を用いるようにしてもよい。
【0057】
また、第1の被着体41が備えるプラズマ重合膜3の構成材料と、第2の被着体42が備えるプラズマ重合膜3の構成材料とは、互いに異なる材料であってもよいが、好ましくは同種の材料とされる。これにより、各プラズマ重合膜3の間の親和性が向上する。その結果、後述する工程を経ることにより、各プラズマ重合膜3同士を強固に接合することができる。
【0058】
また、プラズマ重合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。プラズマ重合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、2つの基材2同士を接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、2つの基材2同士をより強固に接合することができる。
すなわち、プラズマ重合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、プラズマ重合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0059】
さらに、プラズマ重合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、プラズマ重合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、基材2の接合面21(プラズマ重合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するようにプラズマ重合膜3を被着させることができる。その結果、プラズマ重合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。これにより、プラズマ重合膜3と基材2との密着性をより高めることができ、最終的に得られる接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、プラズマ重合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、プラズマ重合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0060】
[3]次に、各プラズマ重合膜3の表面31同士が密着するように、2つの被着体41、42を重ね合わせる(図2(d)参照)。これにより、図3(e)に示す仮接合体5を得る(第2の工程)。
なお、この仮接合体5の状態では、各プラズマ重合膜3同士の間は接合されていない。このため、第1の被着体41と第2の被着体42をずらし、これらの相対的な位置を調整することができる。このようにすれば、2つの被着体41、42を重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができるので、位置の調整の作業性が向上し、最終的に得られる接合体1の面方向における寸法精度を高めることができる。
特に、プラズマ重合膜3がポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている場合、プラズマ重合膜3の表面31は、前述したように、十分な非接着性を示すことから、2つの被着体41、42は、その位置を自在に調整することができる。このため、2つの被着体41、42の位置を特に容易に微調整することができる。
【0061】
また、図2(d)では、仮接合体5を得るにあたって、各プラズマ重合膜3の表面31の全面が互いに覆われるように2つの被着体41、42を重ね合わせているが、これらの相対的な位置は、互いにずれていてもよい。すなわち、各プラズマ重合膜3の表面31が露出するように、第1の被着体41と第2の被着体42とを重ね合わせるようにしてもよい。
【0062】
[4]次に、得られた仮接合体5にエネルギーを付与する。これにより、仮接合体5において、各プラズマ重合膜3の分子結合の一部が切断され、活性化される(第3の工程)。
なお、この「活性化」とは、プラズマ重合膜3の表面31付近および内部の分子結合が切断されて、終端化されていない結合手(未結合手またはダングリングボンド)が生じた状態や、その切断された結合手に水酸基が結合した状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
【0063】
仮接合体にエネルギーが付与されると、プラズマ重合膜3の表面31付近および内部の分子結合が切断され、プラズマ重合膜3中から原子団(脱離基)が脱離する。これにより、この脱離基が結合していた結合手は、終端化されていない結合手(未結合手)となる。
また、周囲の雰囲気中に水分が含まれている場合、この水分が未結合手に作用することにより、未結合手が水酸基で終端化される。
【0064】
ここで、脱離基としては、例えば、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含む原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、プラズマ重合膜3に発現する接着性を高度に制御し得るものである。
【0065】
なお、離脱基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含むプラズマ重合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0066】
例えば、プラズマ重合膜3がポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている場合、主にメチル基等のアルキル基が脱離基として振る舞う。
以上のような現象に基づいて、プラズマ重合膜3が活性化され、各プラズマ重合膜3に接着性が発現する。そして、この接着性により、各プラズマ重合膜3同士が接合され、1層のプラズマ重合膜30となる(図3(f)参照)。これにより、接合体1が得られる。
【0067】
プラズマ重合膜3にエネルギーを付与する方法としては、プラズマ重合膜3を活性化し得る方法であれば、いかなる方法であってもよいが、(I)仮接合体5にエネルギー線を照射する方法、(II)仮接合体5を加熱する方法、(III)仮接合体5に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法等が挙げられる。これらの方法は、プラズマ重合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0068】
以下、(I)、(II)、(III)の各方法について詳述する。
(I)仮接合体5にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線のような電磁波、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができる。したがって、プラズマ重合膜3中の分子構造を必要以上に切断しないので、プラズマ重合膜3の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0069】
なお、このようにエネルギー線をプラズマ重合膜3に照射するためには、仮接合体5中の2つの基材2のうちの少なくとも一方が、このエネルギー線を透過させなければならない。
かかる観点から、仮接合体5にエネルギー線を照射してプラズマ重合膜3を活性化する場合、2つの基材2のうちの少なくとも一方は、エネルギー線に対する透過性を有するものとされる。
【0070】
例えば、エネルギー線として、紫外線やレーザー光のような光を用いる場合、2つの基材2の少なくとも一方は、透光性を有する材料、具体的には、透明なガラス系材料、樹脂系材料で構成されたものを用いればよい。
また、エネルギー線として、X線、γ線のような電磁波を用いる場合、2つの基材2の少なくとも一方は、シリコン系材料、ガラス系材料、樹脂系材料のような軽元素材料で構成されたものを用いればよい。
なお、仮接合体5にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線に対する透過性を有する基材2側から、エネルギー線を照射するのは言うまでもない。
【0071】
また、これらの各エネルギー線の中でも、特に、図3(e)に示すように、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー密度が最適化されるため、プラズマ重合膜3の特性が著しく低下するのを防止しつつ、広い範囲をムラなく、より短時間に処理することができる。このため、プラズマ重合膜3の活性化をより効率よく行うことができる。また、紫外線には、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
【0072】
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、プラズマ重合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプとプラズマ重合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0073】
また、紫外線を照射する時間は、プラズマ重合膜3の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、特に限定されないが、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
【0074】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、プラズマ重合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による基材2の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
【0075】
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。これにより、プラズマ重合膜3に発現する接着性の程度を容易に制御することができる。
すなわち、付与するエネルギーを大きくすることにより、プラズマ重合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、付与するエネルギーを小さくすることにより、プラズマ重合膜3に発現する接着性を抑えることができる。これにより、最終的に得られる接合体1の接合強度を調整することができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
【0076】
また、このようなエネルギー線は、各プラズマ重合膜3の表面31同士の界面にエネルギーが集中するように、その焦点を合わせるようにして照射されるのが好ましい。このようにすれば、各プラズマ重合膜3の表面31付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、エネルギー線がプラズマ重合膜3中の分子構造を必要以上に切断するのを、より確実に防止することができる。その結果、プラズマ重合膜3の特性が著しく低下してしまうのを、より確実に避けることができる。
【0077】
(II)仮接合体5を加熱する場合、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、基材2が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、各プラズマ重合膜3を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、プラズマ重合膜3の表面31付近の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
【0078】
また、仮接合体5は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種加熱方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、仮接合体5中の2つの基材2のうちの少なくとも一方が、シリコン系材料のような光吸収性(赤外線吸収性)を有する材料で構成されているのが好ましい。このような材料で構成された基材2は、赤外線を吸収することにより効率よく発熱する。これにより、プラズマ重合膜3を効率よく加熱することができる。
【0079】
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、2つの基材2のうちの少なくとも一方が、金属系材料のような熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、このような材料で構成された基材2を介して、ヒータまたは火炎の熱エネルギーをプラズマ重合膜3に対して効率よく伝えることができる。その結果、プラズマ重合膜3を効率よく加熱することができる。
【0080】
なお、2つの基材2の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で仮接合体5を加熱するのが好ましいが、2つの基材2の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、2つの基材2の熱膨張率差にもよるが、25〜50℃程度の温度で接合を行うのが好ましく、25〜40℃程度の温度で接合を行うのがより好ましい。このような温度範囲であれば、2つの基材2の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
この場合、2つの基材2の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが強く推奨される。
【0081】
(III)仮接合体5に圧縮力を付与する場合、仮接合体5の2つの基材2同士が互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に仮接合体5を圧縮するのみで、プラズマ重合膜3に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができる。その結果、各プラズマ重合膜3を確実に活性化させることができる。
【0082】
なお、圧縮力が前記上限値を上回っても構わないが、各基材2の構成材料によっては、各基材2に損傷等が生じるおそれがある。
また、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
以上のような(I)、(II)、(III)の各方法により、プラズマ重合膜3にエネルギーを付与することができる。
【0083】
なお、プラズマ重合膜3に対するエネルギーの付与は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
【0084】
以上のようにしてエネルギーが付与されると、プラズマ重合膜3に接着性が発現するが、この接着性の発現は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の双方または一方に基づくものであると推測される。
(i)ここでは、一例として、エネルギーの付与により、各プラズマ重合膜3の表面31に水酸基が露出する場合を例に説明する。重なり合った状態の各プラズマ重合膜3の表面31にそれぞれ水酸基が露出すると、これらの水酸基は、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、2つの被着体41、42が接合されると推察される。
【0085】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って各プラズマ重合膜3から切断される。その結果、各プラズマ重合膜3同士の間では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とがより強固に接合され、1層のプラズマ重合膜30になると推察される。
【0086】
(ii)仮接合体5中のプラズマ重合膜3にエネルギーを付与すると、各プラズマ重合膜3の表面31や内部に未結合手(ダングリングボンド)が生じる。そして、重なり合った各プラズマ重合膜3にそれぞれ未結合手が生じると、隣接した未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にはネットワーク状の結合が形成される。これにより、各プラズマ重合膜3を構成するそれぞれの母材同士が直接接合して、各プラズマ重合膜3同士が一体化し、1層のプラズマ重合膜30になると推察される。
以上のような(i)または(ii)のメカニズムにより、図3(f)に示すような接合体1が得られる。
【0087】
このようにして得られた接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のように短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの被着体41、42が接合されている。このため、接合体1は、短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0088】
また、本発明の接合方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された基材をも、接合に供することができる。
また、プラズマ重合膜3を介して2つの基材2同士を接合しているため、従来の固体接合のような、基材の材質における制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、基材2の構成材料の選択の幅を広げることができる。
【0089】
さらに、従来の固体接合では、接合層を介した接合ではないため、2つの基材2の間で熱膨張率の大きな差がある場合、これらを接合したときに、その差に基づく大きな応力が接合界面に集中し、剥離等の不具合が生じるおそれがあったが、本発明によれば、プラズマ重合膜3を介することによって応力の集中が緩和され、接合体1における剥離を確実に防止することができる。
【0090】
また、プラズマ重合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、プラズマ重合膜3を接合層として用いることにより、従来の流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接合層(プラズマ重合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、プラズマ重合膜3を用いて得られた接合体1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0091】
このようにして得られた接合体1は、その基材2間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、後述のように、接合体1を用いて液滴吐出ヘッドを構成した場合、耐久性に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。また、本発明の接合方法によれば、2つの基材2同士が上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、以下の3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0092】
[5A]図3(g)に示すように、得られた接合体1を各基材2同士が近づく方向に加圧する。
これにより、各プラズマ重合膜3の表面同士がより近接する。その結果、例えば、前記工程[4]における脱水縮合や結合活性手の再結合が促進される。そして、2つのプラズマ重合膜3の一体化がより進行して、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加圧する際の圧力は、接合体1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して接合体1における接合強度を高めることができる。
【0093】
なお、この圧力は、基材2の構成材料や厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、基材2の構成材料や厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基材2の構成材料によっては、基材2に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を十分に図ることができる。
【0094】
[5B]図3(g)に示すように、得られた接合体1を加熱する。
これにより、例えば、各プラズマ重合膜3の界面において、水酸基の脱水縮合がより進行する。その結果、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。
【0095】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[5A]、[5B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図3(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
【0096】
[5C]得られた接合体1に紫外線(またはその他のエネルギー線)を照射する(図示せず)。
これにより、各プラズマ重合膜3同士の間に形成される化学結合を増加させ、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[4]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。また、本工程[5C]を行う場合、2つの基材2のうちの少なくとも一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基材2側から、紫外線を照射することにより、プラズマ重合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
【0097】
以上のような工程を行うことにより、2つのプラズマ重合膜3は、ほぼ完全に一体化して1層のプラズマ重合膜30となる。その結果、より接合強度を高めた接合体1’が得られる。
なお、これらの各工程[5A]、[5B]および[5C]は、それぞれ、前記工程[4]の終了後、時間的に連続して行うようにしてもよく、時間をおいてから行うようにしてもよい。
以上のような本実施形態にかかる接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
【0098】
このような接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光学変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
【0099】
<液滴吐出ヘッド>
ここでは、本発明の接合体をインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)に適用した場合の実施形態について説明する。
図4は、本発明の接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図、図5は、図4に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図、図6は、図4に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、図4は、通常使用される状態とは、上下逆に示されている。
【0100】
図4に示すインクジェット式記録ヘッド(本発明の液滴吐出ヘッド)10は、図6に示すようなインクジェットプリンタ(本発明の液滴吐出装置)9に搭載されている。
図6に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上部面に操作パネル97とが設けられている。
【0101】
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有している。
【0102】
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0103】
印刷装置94は、ヘッドユニット93と、ヘッドユニット93の駆動源となるキャリッジモータ941と、キャリッジモータ941の回転を受けて、ヘッドユニット93を往復動させる往復動機構942とを備えている。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔111を備えるインクジェット式記録ヘッド10(以下、単に「ヘッド10」と言う。)と、ヘッド10にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド10およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
【0104】
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸943と、キャリッジガイド軸943と平行に延在するタイミングベルト944とを有している。
【0105】
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド10から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0106】
給紙装置95は、その駆動源となる給紙モータ951と、給紙モータ951の作動により回転する給紙ローラ952とを有している。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
【0107】
制御部96は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置94や給紙装置95等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)14を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ931のインク残量、ヘッドユニット93の位置等を検出可能な各種センサ等が、それぞれ電気的に接続されている。
【0108】
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子14、印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
【0109】
以下、ヘッド10(本発明の液滴吐出ヘッド)について、図4および図5を参照しつつ詳述する。
ヘッド10は、ノズル板11と、インク室基板12と、振動板13と、振動板13に接合された圧電素子(振動源)14とを備えるヘッド本体17と、このヘッド本体17を収納する基体16とを有している。なお、このヘッド10は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成する。
【0110】
ノズル板11は、例えば、SiO、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物系材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料等で構成されている。
このノズル板11には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔111が形成されている。これらのノズル孔111間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設定される。
【0111】
ノズル板11には、インク室基板12が固着(固定)されている。
このインク室基板12は、ノズル板11、側壁(隔壁)122および後述する振動板13により、複数のインク室(キャビティ、圧力室)121と、インクカートリッジ931から供給されるインクを貯留するリザーバ室123と、リザーバ室123から各インク室121に、それぞれインクを供給する供給口124とが区画形成されている。
【0112】
各インク室121は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成され、各ノズル孔111に対応して配設されている。各インク室121は、後述する振動板13の振動により容積可変であり、この容積変化により、インクを吐出するよう構成されている。
インク室基板12を得るための母材としては、例えば、シリコン単結晶基板、各種ガラス基板、各種樹脂基板等を用いることができる。これらの基板は、いずれも汎用的な基板であるので、これらの基板を用いることにより、ヘッド10の製造コストを低減することができる。
【0113】
一方、インク室基板12のノズル板11と反対側には、振動板13が接合され、さらに振動板13のインク室基板12と反対側には、複数の圧電素子14が設けられている。
また、振動板13の所定位置には、振動板13の厚さ方向に貫通して連通孔131が形成されている。この連通孔131を介して、前述したインクカートリッジ931からリザーバ室123に、インクが供給可能となっている。
【0114】
各圧電素子14は、それぞれ、下部電極142と上部電極141との間に圧電体層143を介挿してなり、各インク室121のほぼ中央部に対応して配設されている。各圧電素子14は、圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。
各圧電素子14は、それぞれ、振動源として機能し、振動板13は、圧電素子14の振動により振動し、インク室121の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
基体16は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で構成されており、この基体16にノズル板11が固定、支持されている。すなわち、基体16が備える凹部161に、ヘッド本体17を収納した状態で、凹部161の外周部に形成された段差162によりノズル板11の縁部を支持する。
【0115】
以上のような、ノズル板11とインク室基板12との接合、インク室基板12と振動板13との接合、およびノズル板11と基体16との接合のうち、少なくとも1箇所に本発明の接合方法が用いられている。
換言すれば、ノズル板11とインク室基板12との接合体、インク室基板12と振動板13との接合体、およびノズル板11と基体16との接合体のうち、少なくとも1箇所に本発明の接合体が適用されている。
【0116】
このようなヘッド10は、上記の接合界面にプラズマ重合膜が介挿されて接合されている。このため、接合界面の接合強度および耐薬品性が高くなっており、これにより、各インク室121に貯留されたインクに対する耐久性および液密性が高くなっている。その結果、ヘッド10は、信頼性の高いものとなる。
また、非常に低温で信頼性の高い接合ができるため、線膨張係数の異なる材料でも大面積のヘッドができる点でも有利である。
【0117】
このようなヘッド10は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体層143に変形が生じない。このため、振動板13にも変形が生じず、インク室121には容積変化が生じない。したがって、ノズル孔111からインク滴は吐出されない。
【0118】
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に一定電圧が印加された状態では、圧電体層143に変形が生じる。これにより、振動板13が大きくたわみ、インク室121の容積変化が生じる。このとき、インク室121内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔111からインク滴が吐出される。
【0119】
1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極142と上部電極141との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子14は、ほぼ元の形状に戻り、インク室121の容積が増大する。なお、このとき、インクには、インクカートリッジ931からノズル孔111へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル孔111からインク室121へ入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ931(リザーバ室123)からインク室121へ供給される。
このようにして、ヘッド10において、印刷させたい位置の圧電素子14に、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
【0120】
なお、ヘッド10は、圧電素子14の代わりに電気熱変換素子を有していてもよい。つまり、ヘッド10は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出する構成(いわゆる、「バブルジェット方式」(「バブルジェット」は登録商標))のものであってもよい。
かかる構成のヘッド10において、ノズル板11には、撥液性を付与することを目的に形成された被膜114が設けられている。これにより、ノズル孔111からインク滴が吐出される際に、このノズル孔111の周辺にインク滴が残存するのを確実に防止することができる。その結果、ノズル孔111から吐出されたインク滴を目的とする領域に確実に着弾させることができる。
【0121】
以上、本発明の接合方法、接合体、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記実施形態では、2つの被着体(第1の被着体および第2の被着体)を接合する方法について説明したが、3つ以上の被着体を接合する場合に、本発明の接合方法を適用してもよい。
【実施例】
【0122】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接合体の製造
(実施例1)
まず、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板と、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板とを用意した。
【0123】
次いで、これらの各基板を図1に示すプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜を成膜した。これにより、第1の被着体および第2の被着体を得た。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0124】
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :50sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:100sccm
・高周波電力の出力 :100W
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :15分
・基板温度 :20℃
続いて、プラズマ重合膜を形成したシリコン基板(第1の被着体)と、プラズマ重合膜を形成したガラス基板(第2の被着体)とを、各プラズマ重合膜同士が密着するように重ね合わせた。これにより、仮接合体を得た。
【0125】
次に、得られた仮接合体に以下に示す条件で紫外線を照射した。これにより、仮接合体中のプラズマ重合膜同士を接合し、接合体を得た。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例2)
加熱の温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0126】
(実施例3)
第2の被着体の基材の構成材料を表1に示す材料に変更するとともに、紫外線を照射する方法に代えて、以下に示す条件で仮接合体を加熱するようにした以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
<加熱条件>
・熱源 :ヒータ
・加熱温度 :80℃
・加熱時間 :5分
・加熱雰囲気:大気(空気)
【0127】
(実施例4〜5、12)
各基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料に変更した以外は、前記実施例3と同様にして接合体を得た。
(実施例6〜11)
各基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0128】
(実施例13〜15)
原料ガスを表1に示す組成のガスに変更し、プラズマ重合膜の組成を変更した以外は、それぞれ前記実施例1、3、4と同様にして接合体を得た。
(比較例1〜3)
各基材間をエポキシ系接着剤で接着した以外は、それぞれ前記実施例1、3、4と同様にして、接合体を得た。
【0129】
2.接合体の評価
2.1 接合強度(割裂強度)の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各基材を引き剥がしたとき、剥がれる直前の強度を測定することにより行った。そして、接合強度を以下の基準にしたがって評価した。
【0130】
<接合強度の評価基準>
◎:10MPa(100kgf/cm)以上
○: 5MPa( 50kgf/cm)以上、10MPa(100kgf/cm)未満
△: 1MPa( 10kgf/cm)以上、 5MPa( 50kgf/cm)未満
×: 1MPa( 10kgf/cm)未満
【0131】
2.2 寸法精度の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ厚さ方向の寸法精度を測定した。
寸法精度の測定は、正方形の接合体の各角部の厚さを測定し、4箇所の厚さの最大値と最小値の差を算出することにより行った。そして、この差を以下の基準にしたがって評価した。
<寸法精度の評価基準>
○:10μm未満
×:10μm以上
【0132】
2.3 耐薬品性の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体を、80℃に維持したインクジェットプリンタ用インク(エプソン社製、HQ4)に、以下の条件で3週間浸漬した。その後、各基材を引き剥がし、接合界面にインクが浸入していないかを確認した。そして、その結果を以下の基準にしたがって評価した。
【0133】
<耐薬品性の評価基準>
◎:全く浸入していない
○:角部にわずかに浸入している
△:縁部に沿って浸入している
×:内側に浸入している
以上、2.1〜2.3の各評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
表1から明らかなように、各実施例で得られた接合体は、接合強度、寸法精度および耐薬品性のいずれの項目においても優れた特性を示した。
一方、各比較例で得られた接合体は、寸法精度および耐薬品性が十分でなく、特に寸法精度においてはその傾向が顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図である。
【図5】図4に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図である。
【図6】図4に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0137】
1、1’……接合体 2……基材 21……接合面 3、30……プラズマ重合膜 31……表面 41……第1の被着体 42……第2の被着体 5……仮接合体 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 10……インクジェット式記録ヘッド 11……ノズル板 111……ノズル孔 114……被膜 12……インク室基板 121……インク室 122……側壁 123……リザーバ室 124……供給口 13……振動板 131……連通孔 14……圧電素子 140……第2の電極 141……上部電極 142……下部電極 143……圧電体層 16……基体 161……凹部 162……段差 17……ヘッド本体 9……インクジェットプリンタ 92……装置本体 921……トレイ 922……排紙口 93……ヘッドユニット 931……インクカートリッジ 932……キャリッジ 94……印刷装置 941……キャリッジモータ 942……往復動機構 943……キャリッジガイド軸 944……タイミングベルト 95……給紙装置 951……給紙モータ 952……給紙ローラ 952a……従動ローラ 952b……駆動ローラ 96……制御部 97……操作パネル P……記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にプラズマ重合膜を備える第1の被着体および第2の被着体を用意する第1の工程と、
前記各プラズマ重合膜同士を密着させるように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを重ね合わせて、仮接合体を得る第2の工程と、
前記プラズマ重合膜に対してエネルギーを付与することにより、前記各プラズマ重合膜同士を接合して、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記各プラズマ重合膜は、それぞれポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記各プラズマ重合膜の平均厚さは、それぞれ1〜1000nmである請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記仮接合体を加熱する方法、および、前記仮接合体に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項5または6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記第1の被着体が備える基材および前記第2の被着体が備える基材のうちの少なくとも一方は、エネルギー線の透過性を有しており、
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記仮接合体の前記透過性を有する基材側から、前記エネルギー線を照射する方法により行われる請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記第1の被着体が備える基材および前記第2の被着体が備える基材のうちの少なくとも一方は、透光性を有しており、
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記仮接合体の前記透光性を有する基材側から、紫外線を照射する方法により行われる請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記紫外線の波長は、150〜300nmである請求項9に記載の接合方法。
【請求項11】
前記第3の工程は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
前記第3の工程の後、前記接合体を加熱する工程を有する請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
前記加熱温度は、25〜100℃である請求項12に記載の接合方法。
【請求項14】
前記第3の工程の後、前記接合体を加圧する工程を有する請求項1ないし13のいずれかに記載の接合方法。
【請求項15】
前記接合体を加圧する際の圧力は、0.2〜10MPaである請求項14に記載の接合方法。
【請求項16】
前記第1の被着体または前記第2の被着体は、あらかじめ、前記基材上に前記プラズマ重合膜との密着性を高める表面処理を施した後、該表面処理を施した領域に前記プラズマ重合膜を形成してなるものである請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
【請求項17】
前記表面処理は、プラズマ処理である請求項16に記載の接合方法。
【請求項18】
前記第1の被着体が備える基材および前記第2の被着体が備える基材は、それぞれ剛性が異なっている請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
【請求項19】
2つの基材が、請求項1ないし18のいずれかに記載の接合方法により接合されたことを特徴とする接合体。
【請求項20】
前記2つの基材間の接合強度は5MPa以上である請求項19に記載の接合体。
【請求項21】
請求項19または20に記載の接合体を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項22】
請求項21に記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−28920(P2009−28920A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192701(P2007−192701)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】