説明

接合方法、接合体および配線基板

【課題】2つの部材同士を、高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合可能であるとともに、2つの部材間に導電性を有する層を形成可能な接合方法、2つの部材同士を高い寸法精度で強固に接合してなり、2つの部材間に導電性を有する層を備えた接合体、およびかかる接合体を備えた信頼性の高い配線基板を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、2つの基材2の表面上に、それぞれ導電性成分を含むプラズマ重合膜3を形成する工程(第1の工程)と、プラズマ重合膜3の表面に紫外光を照射して、表面を活性化させるとともに、前記各プラズマ重合膜3に導電性を発現させる工程(第2の工程)と、活性化させた表面同士を密着させるように、2つの基材2同士を貼り合わせ、接合体1を得る工程(第3の工程)と、この接合体1を加熱しつつ加圧する工程とを有する。プラズマ重合膜3は、有機金属ポリマーを主材料として構成されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合体および配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
接着剤は、部材の材質によらず、接着性を示すことができる。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
例えば、FPCのようなフレキシブル配線基板は、2枚の樹脂製シートの間に、銅箔を挟み、これらを接着剤を用いて接着することにより構成されている。
【0003】
このように接着剤を用いて部材同士を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を数μm以上の厚さで接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤が硬化すると、部材同士がアンカー効果に基づいて接着される。
また、電極間を電気的に接合しつつ接着する場合には、Agペーストのような導電性ペーストが用いられる。
【0004】
ところが、部材の接着面に接着剤や導電性ペーストを塗布する際には、印刷法等の煩雑な方法を用いる必要がある。また、塗布された接着剤や導電性ペーストの厚さは、それらの粘度、気温、湿度、印刷装置の条件等の多くのパラメータの影響を受けるため、厳密に制御することは、極めて困難である。このため、接合体の寸法精度を十分に高めることができないという問題を抱えている。
【0005】
また、接着剤やAgペーストの硬化時間が非常に長くなるため、接着に長時間を要するという問題もある。さらに、接着剤は、多くの場合、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程を複雑化している。
また、Agペーストは、高温での熱処理を必要とするため、耐熱性の高い基材しか接着できないという問題もある。
【0006】
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の接合膜(中間層)が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接着剤のような接合膜を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
【0007】
反面、部材の材質に制約があるという問題がある。具体的には、一般に、固体接合は、同種材料同士の接合しか行うことができない。また、接合可能な材料は、シリコン系材料や一部の金属材料等に限られている。
さらに、固体接合を行う雰囲気が減圧雰囲気に限られる上、高温(700〜800℃程度)の熱処理を必要とする等、接合プロセスにおける問題もある。
このような問題を受け、2つの部材同士を、高い寸法精度で強固に、かつ効率よく接合する方法が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−82404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、2つの部材同士を、高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合可能であるとともに、2つの部材間に導電性を有する層を形成可能な接合方法、2つの部材同士を高い寸法精度で強固に接合してなり、2つの部材間に導電性を有する層を備えた接合体、およびかかる接合体を備えた信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、基材と、該基材上の少なくとも一部の領域に設けられた導電性成分を含むプラズマ重合膜を備える第1の被着体と、第2の被着体とを用意する第1の工程と、
前記プラズマ重合膜のうち、少なくとも一部の所定領域に対してエネルギーを付与して、前記プラズマ重合膜を活性化させるとともに、前記プラズマ重合膜に導電性を発現させる第2の工程と、
前記プラズマ重合膜と前記第2の被着体とを密着させるように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせ、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの部材同士を、高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合可能であるとともに、2つの部材間に導電性を有する層を形成することができる。
【0011】
本発明の接合方法では、前記第1の被着体は、前記基材と、該基材上の全部の領域に設けられた導電性成分を含むプラズマ重合膜とを備えており、
前記第2の工程において、前記プラズマ重合膜のうち、一部の所定領域に対してエネルギーを付与することにより、前記所定領域に位置する前記プラズマ重合膜を部分的に活性化させるとともに、前記所定領域に位置する前記プラズマ重合膜に部分的に導電性を発現させることが好ましい。
これにより、例えば、プラズマ重合膜の一部に配線を作り込むことができる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記第2の被着体のうち、前記第1の被着体のプラズマ重合膜と密着する面には、水酸基が存在しており、
前記第3の工程において、前記プラズマ重合膜と、前記第2の被着体の前記水酸基が存在する面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜に存在する水酸基と、第2の被着体に存在する水酸基との間に水素結合に基づく引力が発生し、プラズマ重合膜と第2の被着体との間が強固に接合される。
【0013】
本発明の接合方法では、前記第2の被着体の少なくとも前記プラズマ重合膜と密着する面は、酸化膜で覆われており、
前記第3の工程において、前記プラズマ重合膜と、前記第2の被着体の前記酸化膜で覆われた面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせることが好ましい。
酸化膜の表面には水酸基が結合しているので、この水酸基とプラズマ重合膜に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、プラズマ重合膜と第2の被着体との間が強固に接合される。
【0014】
本発明の接合方法は、基材上にそれぞれ導電性成分を含むプラズマ重合膜を備えた第1の被着体および第2の被着体を用意する第1の工程と、
前記第1の被着体および前記第2の被着体の各プラズマ重合膜の表面にそれぞれエネルギーを付与して、該各プラズマ重合膜の表面を活性化させるとともに、前記各プラズマ重合膜に導電性を発現させる第2の工程と、
該活性化させた各プラズマ重合膜の表面同士を密着させるように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせ、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材同士を、高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合することができ、かつ、2つの基材間に導電性を有する層を形成することができる。
【0015】
本発明の接合方法では、前記第1の被着体および前記第2の被着体は、それぞれ、あらかじめ前記各基材上にプラズマによる下地処理を施した後、該下地処理を施した領域に前記プラズマ重合膜を形成してなるものであることが好ましい。
これにより、基材の接合面を清浄化および活性化し、接合面上にプラズマ重合膜を形成したとき、接合面とプラズマ重合膜との接合強度を高めることができる。
【0016】
本発明の接合方法では、前記第1の被着体が備える基材と、前記第2の被着体が備える基材とは、それぞれ剛性が異なっていることが好ましい。
これにより、2つの基材同士をより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記導電性成分を含むプラズマ重合膜は、有機金属ポリマーを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、導電性に特に優れた層を備え、剥離等を確実に防止し得る信頼性の高い配線等として用いることのできる接合体を得ることができる。
【0017】
本発明の接合方法では、前記有機金属ポリマーは、トリメチルガリウムまたはトリメチルアルミニウムの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接合体は、2つの基材同士が特に強固に接合され、かつ導電性の特に高いものとなる。
本発明の接合方法では、前記プラズマ重合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、2つの基材同士をより強固に接合することができ、かつ、プラズマ重合膜に十分な導電性が得られる。また、これにより、プラズマ重合膜にある程度の形状追従性が確保されるので、基材の接合面に存在する凹凸を吸収して、プラズマ重合膜の表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。
【0018】
本発明の接合方法では、前記第2の工程における前記エネルギーの付与は、前記プラズマ重合膜を加熱する方法により行われることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
本発明の接合方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、基材が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、プラズマ重合膜を確実に活性化し、プラズマ重合膜に接着性を発現させることができる。
【0019】
本発明の接合方法では、前記第2の工程における前記エネルギーの付与は、前記プラズマ重合膜に、エネルギー線を照射する方法により行われることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜の表面を効率よく活性化させることができる。また、プラズマ重合膜中の分子構造を必要以上に切断しないので、プラズマ重合膜の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0020】
本発明の接合方法では、前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外光であることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜の特性の著しい低下を防止しつつ、広い範囲をムラなく、より短時間に処理することができる。このため、プラズマ重合膜の表面の活性化をより効率よく行うことができる。
【0021】
本発明の接合方法では、前記第2の工程は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、活性化処理をより簡単に行うことができる。
本発明の接合方法では、前記第3の工程の後、前記接合体に熱処理を施す工程を有することが好ましい。
これにより、接合体における接合強度をより高めることができる。
【0022】
本発明の接合方法では、前記熱処理の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記第3の工程の後、前記接合体を加圧する工程を有することが好ましい。
これにより、2つのプラズマ重合膜の一体化がより進行して、接合体における接合強度をより高めることができる。
【0023】
本発明の接合方法では、前記接合体を加圧する際の圧力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、基材に損傷等を生じさせることなく、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記第2の工程の終了後、60分以内に、前記第3の工程を開始することが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜の表面を十分な活性状態に維持することができ、貼り合せたときに十分な接合強度を得ることができる。
【0024】
本発明の接合体は、2つの基材同士が、本発明の接合方法により接合されていることを特徴とする。
これにより、2つの基材同士を高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合してなり、かつ、2つの基材間に導電性を有する層を備えてなる接合体が得られる。
【0025】
本発明の接合体は、2つの基材と、
導電性を有するプラズマ重合膜とを有し、
前記2つの基材同士が、前記プラズマ重合膜を介して接合されていることを特徴とする。
これにより、2つの基材同士を高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合してなり、かつ、2つの基材間に導電性を有する接合膜を備えてなる接合体が得られる。
【0026】
本発明の接合体では、前記導電性を有するプラズマ重合膜は、前記2つの基材上にそれぞれあらかじめ形成された導電性成分を含むプラズマ重合膜に、それぞれエネルギーを付与することにより、前記導電性成分を含むプラズマ重合膜に導電性を発現させるとともに、該各プラズマ重合膜同士を接合してなるものであることが好ましい。
これにより、2つの基材同士を高い寸法精度で特に強固にかつ効率よく接合してなり、かつ、2つの基材間に導電性を有する接合膜を備えてなる接合体が得られる。
【0027】
本発明の接合体では、前記2つの基材間の接合強度は5MPa以上であることが好ましい。
これにより、接合体は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。
本発明の接合体では、当該接合体中の前記導電性が発現したプラズマ重合膜の抵抗率は、1×10−3Ω・cm以下であることが好ましい。
これにより、プラズマ重合膜を、損失の少ない配線として十分に利用することができる。
本発明の配線基板は、本発明の接合体を有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い配線基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の接合方法、接合体および配線基板を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<接合方法>
本発明の接合方法は、第1の基材21と第2の基材22とを、導電性成分を含むプラズマ重合膜3を用いて接合する方法であって、この導電性成分を含むプラズマ重合膜3にエネルギーを付与することにより、導電性成分を含むプラズマ重合膜3に導電性を発現させるとともに、2つの基材21、22を接合する方法である。
【0029】
本発明の接合方法によれば、2つの基材21、22を、高い寸法精度で強固に、かつ低温で効率よく接合することができる。また、この接合により得られた接合体1は、2つの基材間に導電性を有する層を備えたものとなる。
具体的には、プラズマ重合膜3を、あらかじめ、線状にパターニングして第1の基材21上に形成する。そして、線状にパターニングされたプラズマ重合膜3にエネルギーを付与することにより、プラズマ重合膜3は導電性を有するものとなり、配線として機能する。これにより、得られた接合体1は、例えば配線基板として利用することができる。
【0030】
また、導電性成分を含むプラズマ重合膜3のうち、一部の領域に対してエネルギーを付与することにより、プラズマ重合膜3の一部の領域に選択的に導電性を発現させることができる。これにより、例えばプラズマ重合膜3の一部に配線を作り込むことができる。
ここでは、本発明の接合方法を説明するのに先立って、まず、前述の導電性成分を含むプラズマ重合膜を形成するのに用いられるプラズマ重合装置について説明する。
【0031】
図1は、本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、基材2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
【0032】
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図1に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
【0033】
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
【0034】
第1の電極130は、板状をなしており、基材2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図1に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
【0035】
第1の電極130の基材2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図1に示すように、基材2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、基材2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基材2をプラズマ処理に供することができる。
【0036】
第2の電極140は、基材2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
【0037】
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図1に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
【0038】
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して基材2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0039】
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
【0040】
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による基材2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
【0041】
≪第1実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第1実施形態について、上記のプラズマ重合装置100を用いた場合を例に説明する。
図2および図3は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0042】
本実施形態にかかる接合方法は、2つの基材2同士を、導電性成分を含むプラズマ重合膜3を用いて接合する方法であって、この導電性成分を含むプラズマ重合膜3にエネルギーを付与することにより、前記導電性成分を含むプラズマ重合膜3に導電性を発現させるとともに、2つの基材2同士を接合する方法である。かかる方法によれば、2つの基材2同士を、高い寸法精度で強固にかつ効率よく接合することができ、得られた接合体は、2つの基材2間に電導性を有する層を備えたものとなる。すなわち、この層は、例えば配線として機能するため、得られた接合体は、配線基板として利用することができる。
【0043】
本実施形態にかかる接合方法は、2つの基材2の表面上に、それぞれ導電性成分を含むプラズマ重合膜3を形成する工程(第1の工程)と、プラズマ重合膜3の表面にエネルギーを付与して、表面を活性化させるとともに、前記各プラズマ重合膜3に導電性を発現させる工程(第2の工程)と、活性化させた表面同士が接触するように、2つの基材2同士を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)と、接合体を加熱しつつ加圧する工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0044】
[1]まず、基材2を2つ用意する。なお、図2では、2つの基材2のうちの1つを省略して示している。
このような基材2の構成材料は、特に限定されないが、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Ta、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼のような金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)のような金属薄膜成膜材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質(アモルファス)シリコンのようなシリコン系半導体材料、ガリウムヒ素(GaAs)、ガリウムリン(GaP)のような化合物系半導体材料、グラファイトのような炭素系材料、ポリアセチレンのような導電性ポリマー材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。これらの材料は、いずれも導電性を有しているので、2つの基材2間の導通を図ることができる。
【0045】
なお、基材2の構成材料は、必ずしも導電性材料でなくてもよい。すなわち、基材2の構成材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等であってもよい。
【0046】
また、各基材2は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
また、2つの基材2の構成材料は、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
また、2つの基材2の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましいが、互いに異なっていてもよい。各基材2の熱膨張率がほぼ等しければ、2つの基材2同士を接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。また、後に詳述するが、各基材2の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、2つの基材2同士を貼り合わせる際の条件を最適化することにより、2つの基材2同士を高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0047】
また、2つの基材2は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材2同士をより強固に接合することができる。
また、2つの基材2のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料で構成されているのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材2同士を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
【0048】
また、各基材2の形状は、それぞれ、プラズマ重合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、本実施形態では、図2(a)に示すように、各基材2がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材2は撓み易くなり、2つの基材2を重ね合わせたときに、互いに形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材2を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
また、各基材2が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材2の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0049】
次に、必要に応じて、基材2の接合面23に下地処理(表面処理)を施す。これにより、接合面23を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面23上にプラズマ重合膜3を形成したとき、接合面23とプラズマ重合膜3との接合強度を高めることができる。
この下地処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外光照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
【0050】
なお、下地処理を施す基材2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理を行うことにより、接合面23を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面23とプラズマ重合膜3との接合強度を特に高めることができる。
【0051】
また、基材2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、プラズマ重合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基材2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された基材2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた基材2を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、基材2とプラズマ重合膜3との接合強度を高めることができる。
【0052】
なお、この場合、基材2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面23付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、表面処理に代えて、基材2の接合面23に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、プラズマ重合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して基材2とプラズマ重合膜3とを接合することになり、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
【0053】
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、基材2とプラズマ重合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
【0054】
[2]次に、図2(a)〜(c)に示すように、2つの基材2上(基材2の一方の面)に、それぞれ導電性成分を含むプラズマ重合膜3を形成する(第1の工程)。これにより、基材2上に導電性成分を含むプラズマ重合膜3を備える2つの被着体(第1の被着体41および第2の被着体42)を得る。
かかるプラズマ重合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合して得ることができる。
具体的には、まず、チャンバー101内に基材2を収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
【0055】
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図2(a)参照)。
混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
【0056】
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図2(b)に示すように、重合物が基材2上に付着・堆積する。これにより、基材2上にプラズマ重合膜3が形成される(図2(c)参照)。
【0057】
原料ガスとしては、例えば、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリメチル亜鉛、トリエチル亜鉛のような有機金属化合物、アセチレン、チオフェン等のπ電子系有機化合物等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわち、有機金属ポリマーやπ電子系有機ポリマー等で構成されることとなる。これらの重合物は、いずれも、構成成分として導電性成分(金属元素、π電子系有機化合物等)を含んでいる。
【0058】
このうち、プラズマ重合膜3は、特に、有機金属ポリマーを主材料として構成されているのが好ましい。有機金属ポリマーは、活性化処理を経ることにより、優れた導電性が発現するとともに、2つの基材2同士をより強固に接合することができる。したがって、有機金属ポリマーで構成されたプラズマ重合膜3は、後述する活性化処理を経ることにより、剥離等を確実に防止し得る信頼性の高い配線等として用いることが可能な接合体1を構成し得るものとなる。
【0059】
また、有機金属ポリマーの中でも、特に、トリメチルガリウムまたはトリメチルアルミニウムの重合物を主成分とするものが好ましい。これらの成分は、有機金属ポリマーの中でも、2つの基材2同士を特に強固に接合するとともに、活性化処理を経ることにより、優れた導電性を発現し得るものである。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
【0060】
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
【0061】
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。
【0062】
また、基材2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
このような条件を適宜設定することにより、緻密なプラズマ重合膜3をムラなく形成することができる。
なお、本実施形態では、プラズマ重合装置を用いて、基材2上にプラズマ重合膜を形成する手順について説明しているが、プラズマ重合膜を備えた基材(被着体)をあらかじめ用意しておき、その被着体を用いるようにしてもよい。
【0063】
また、プラズマ重合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。プラズマ重合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、2つの基材2同士を接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができ、かつ、活性化処理を経ることにより、プラズマ重合膜3に十分な導電性が得られる。
すなわち、プラズマ重合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、プラズマ重合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0064】
さらに、プラズマ重合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、プラズマ重合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、基材2の接合面(プラズマ重合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するようにプラズマ重合膜3を被着させることができる。その結果、プラズマ重合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、プラズマ重合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、プラズマ重合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0065】
[3]次に、得られたプラズマ重合膜3の表面31に、それぞれエネルギーを付与する。これにより、表面31付近の分子結合の一部が切断され、表面31を活性化させるとともに、各プラズマ重合膜3に導電性を発現させる(第2の工程)。
プラズマ重合膜3の表面31にエネルギーを付与する方法としては、表面31を活性化し得る方法であれば、いかなる方法であってもよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、プラズマ重合膜3を加熱する方法、プラズマ重合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられるが、特にエネルギー線を照射する方法が好ましい。エネルギー線によれば、プラズマ重合膜3の表面31を効率よく活性化させる。また、この方法によれば、プラズマ重合膜3中の分子構造を必要以上に(例えば、基材2の界面に至るまで)切断しないので、プラズマ重合膜3の特性が低下してしまうのを避けることができる。エネルギー線としては、例えば、紫外光、レーザー光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、粒子線等が挙げられる。
【0066】
また、エネルギー線には、特に、図2(d)に示すように、波長150〜300nm程度の紫外光を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる紫外光によれば、プラズマ重合膜3の特性の著しい低下を防止しつつ、広い範囲をムラなく、より短時間に処理することができる。このため、プラズマ重合膜3の表面31の活性化をより効率よく行うことができる。また、紫外光には、紫外(UV)ランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外光の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
【0067】
また、UVランプを用いる場合、その出力は、プラズマ重合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプとプラズマ重合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0068】
また、紫外光を照射する時間は、プラズマ重合膜3の表面31付近の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、特に限定されないが、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0069】
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、プラズマ重合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による基材2の変質・劣化を防止することができる。
【0070】
また、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。これにより、プラズマ重合膜3に発現する接着性の程度を容易に制御することができる。
【0071】
すなわち、付与するエネルギーを大きくすることにより、プラズマ重合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、付与するエネルギーを小さくすることにより、プラズマ重合膜3に発現する接着性を抑えることができる。これにより、最終的に得られる接合体1の接合強度を調整することができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
【0072】
また、このようなエネルギー線は、プラズマ重合膜3の表面31にエネルギーが集中するように、その焦点を合わせるようにして照射されるのが好ましい。このようにすれば、プラズマ重合膜3の表面31付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、エネルギー線がプラズマ重合膜3中の分子構造を必要以上に切断するのを、より確実に防止することができる。その結果、プラズマ重合膜3の特性が著しく低下してしまうのを、より確実に避けることができる。
【0073】
なお、前述の「活性化させる」とは、表面31付近および内部の分子結合が切断されて、終端化されていない結合手が生じた状態や、その切断された結合手に水酸基が結合した状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
プラズマ重合膜3にエネルギーが付与されると、プラズマ重合膜3の表面31付近および内部の分子結合が切断され、プラズマ重合膜3中から原子団(脱離基)が脱離する。これにより、この脱離基が結合していた結合手は、終端化されていない結合手(未結合手)となる。
【0074】
また、周囲の雰囲気中に水分が含まれている場合、この水分が未結合手に作用することにより、未結合手が水酸基で終端化される。
ここで、脱離基としては、例えば、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含む原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、プラズマ重合膜3に発現する接着性を高度に制御し得るものである。
【0075】
なお、離脱基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含むプラズマ重合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0076】
また、プラズマ重合膜3にエネルギーを付与すると、プラズマ重合膜3中から有機成分が除去され、導電性成分が支配的になる。これにより、プラズマ重合膜3に導電性が発現する。
なお、有機金属ポリマーの種類によっては、エネルギーを付与しなくても、導電性を有するものもある。このような有機金属ポリマーは、成膜された直後から、導電性を有している。
【0077】
なお、以下のようにしてプラズマ重合膜3を加熱することにより、プラズマ重合膜3にエネルギーを付与する方法も好ましく用いられる。
プラズマ重合膜3を加熱する場合、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、基材2が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、プラズマ重合膜3を確実に活性化させることができる。
【0078】
また、加熱時間は、プラズマ重合膜3の表面31付近の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、プラズマ重合膜3は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種加熱方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、基材2が、シリコン系材料のような光吸収性(赤外線吸収性)を有する材料で構成されているのが好ましい。このような材料で構成された基材2は、赤外線を吸収することにより効率よく発熱する。このため、基材2に赤外線を照射することにより、プラズマ重合膜3を効率よく加熱することができる。
【0079】
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、基材2が、金属系材料のような熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、このような材料で構成された基材2を介して、ヒータまたは火炎の熱エネルギーをプラズマ重合膜3に対して効率よく伝えることができる。その結果、プラズマ重合膜3を効率よく加熱することができる。
【0080】
なお、2つの基材2、2の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で加熱するのが好ましいが、2つの基材2、2の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、2つの基材2、2の熱膨張率差にもよるが、25〜50℃程度の温度で接合を行うのが好ましく、25〜40℃程度の温度で接合を行うのがより好ましい。このような温度範囲であれば、2つの基材2、2の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
【0081】
この場合、2つの基材2、2の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが強く推奨される。
なお、プラズマ重合膜3に対するエネルギーの付与は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
【0082】
[4]次に、活性化させた表面同士が接触するように、2つの基材2同士を貼り合わせる(図3(e)参照)。これにより、2つのプラズマ重合膜3同士が一体化され、2つの基材2同士が接合される。
ここで、この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の双方または一方に基づくものであると推測される。
【0083】
(i)2つの基材2同士を貼り合わせると、各プラズマ重合膜3の表面にそれぞれ存在するOH基同士が隣接することとなる。この隣接したOH基同士は、水素結合によって互いに引き合い、OH基同士の間に引力が発生する。
また、この水素結合によって互いに引き合うOH基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から脱離する。その結果、2つのプラズマ重合膜3同士の接触界面では、脱離したOH基が結合していた結合手同士が結合する。すなわち、各プラズマ重合膜3を構成するそれぞれの母材同士が直接結合して一体化し、1層のプラズマ重合膜30が形成される。
【0084】
(ii)2つの基材2同士を貼り合わせると、各プラズマ重合膜3の表面31や内部に生じた終端化されていない結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、各プラズマ重合膜3を構成するそれぞれの母材同士が直接接合して一体化し、1層のプラズマ重合膜30が形成される。
【0085】
ここで、前記工程[3]におけるプラズマ重合膜3に対するエネルギー線の照射や、本工程における貼り合わせ作業は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよいが、不活性ガス雰囲気中、または、減圧雰囲気中で行われるのが好ましい。このような雰囲気中には、水分がほとんど含まれていないため、終端化されていない結合手に水酸基が結合するのを防止することができる。その結果、プラズマ重合膜3の表面31付近および内部において、終端化されていない結合手が生じた状態が支配的になる。すなわち、それに伴って、終端化されていない結合手に水酸基が結合した状態は、相対的に生じ難くなる。
【0086】
このように、終端化されていない結合手が生じた状態が支配的になると、2つの基材2同士を貼り合せたときに、これらの結合手同士が再結合する。すなわち、前述のメカニズム(ii)による接合が支配的になる。かかるメカニズム(ii)による接合は、接合に水酸基が関与せず、プラズマ重合膜3中の導電性成分が直接接合に関与したものであるため、接合界面における導電性の向上が図られる。
【0087】
逆に言えば、メカニズム(i)による接合が支配的になると、接合に水酸基が関与する。この水酸基は、プラズマ重合膜3中で金属酸化物の生成を促し、電気的な抵抗成分として作用することとなる。このため、接合界面における導電性は得られるものの、導電性が若干低下するおそれがある。
以上のことから、プラズマ重合膜3に対するエネルギー線の照射や、前述の貼り合わせ作業を、不活性ガス雰囲気中、または、減圧雰囲気中で行うことにより、接合界面における導電性をより高めることができる。
【0088】
以上のようなメカニズムにより、図3(f)に示すように接合体1を得る(第3の工程)。
なお、前記工程[3]で活性化されたプラズマ重合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[3]の終了後、できるだけ早く本工程[4]を行うようにする。具体的には、前記工程[3]の終了後、60分以内に本工程[4]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、プラズマ重合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、貼り合せたときに十分な接合強度を得ることができる。
【0089】
換言すれば、活性化させる前のプラズマ重合膜3は、化学的に安定であり、耐候性に優れている。このため、前記工程[2]を終えた時点のプラズマ重合膜3は、長期にわたる保存に適したものである。したがって、そのようなプラズマ重合膜3を備えた基材2(被着体)を多量に製造または購入して保存しておき、本工程[4]の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[3]を行うようにすれば、接合体の製造効率の観点から有効である。
【0090】
なお、従来のシリコン直接接合のような固体接合では、表面を活性化させても、その活性状態は、大気中では数秒〜数十秒程度の極めて短時間しか維持されない。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの部材を貼り合わせる等の作業を行う時間を十分に確保することができないという問題があった。
これに対し、本発明によれば、プラズマ重合膜の作用により、数分以上の比較的長時間にわたって活性状態を維持することができる。このため、作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。
【0091】
このようにして得られた接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、アンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のように短時間で起こる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材2同士が接合されている。このため、接合体1は、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、本発明の接合方法によれば、従来の固体接合のように、高温(700〜800℃程度)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された基材をも、接合に供することができる。
また、プラズマ重合膜3を介して2つの基材2、2同士を接合しているため、従来の固体接合のような、基材の材質における制約がないという利点もある。
【0092】
以上のことから、本発明によれば、各基材2、2の構成材料の選択の幅を広げることができる。
さらに、従来の固体接合では、接合層を介した接合ではないため、2つの基材の間で熱膨張率の大きな差がある場合、これらを接合したときに、その差に基づく大きな応力が接合界面に集中し、剥離等の不具合が生じるおそれがあったが、本発明によれば、プラズマ重合膜3を介することによって応力の集中が緩和され、接合体1における剥離を確実に防止することができる。
【0093】
また、プラズマ重合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、プラズマ重合膜3を接合層として用いることにより、従来の流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接合層(プラズマ重合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、プラズマ重合膜3を用いて得られた接合体1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0094】
以上のようにして接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
このようにして得られた接合体1は、その基材2間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、本発明の接合方法によれば、2つの基材2同士が上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
【0095】
また、接合体1中のプラズマ重合膜30は導電性を有するが、その抵抗率は構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。プラズマ重合膜30の抵抗率がこのように十分に低ければ、プラズマ重合膜30は、損失の少ない配線として十分に利用することができる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程[5A]、[5B]のうちのいずれか一方または両方を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。また、それとともに、プラズマ重合膜3に発現する導電性のさらなる向上を図ることができる。
【0096】
[5A]図3(g)に示すように、得られた接合体1を各基材2同士が近づく方向に加圧する。
これにより、各プラズマ重合膜3の表面同士がより近接する。その結果、前記工程[4]における脱水縮合や結合活性手の再結合が促進される。そして、2つのプラズマ重合膜3の一体化がより進行して、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加圧する際の圧力は、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して接合体1における接合強度を高めることができる。
【0097】
なお、この圧力は、基材2の構成材料や厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、基材2の構成材料や厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基材2の構成材料によっては、基材2に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くすることができる。
【0098】
[5B]図3(g)に示すように、得られた接合体1を加熱する。
これにより、各プラズマ重合膜3の界面において、OH基の脱水縮合がより進行する。これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0099】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[5A]、[5B]の両方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図3(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
【0100】
なお、2つの基材2の熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のようにして接合体1を加熱するのが好ましいが、2つの基材2の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、2つの基材2の熱膨張率差にもよるが、25〜50℃程度の温度で接合を行うのが好ましく、25〜40℃程度の温度で接合を行うのがより好ましい。このような温度範囲であれば、2つの基材2の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
【0101】
この場合、2つの基材2の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが強く推奨される。
以上のような工程を行うことにより、2つのプラズマ重合膜3は、ほぼ完全に一体化して1層のプラズマ重合膜30となる。その結果、図3(h)に示すように、より接合強度を高めた接合体1’が得られる。
【0102】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図4および図5は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4および図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0103】
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第1の基材21上にプラズマ重合膜3を備える第1の被着体41と、第2の基材22を備える第2の被着体42とを接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0104】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21上にプラズマ重合膜3を形成し、第1の被着体41を作製する工程(第1の工程)と、プラズマ重合膜3にエネルギーを付与して活性化させるとともに、プラズマ重合膜3に導電性を発現させる工程(第2の工程)と、プラズマ重合膜3と第2の基材22とが接触するように、2つの被着体41、42を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0105】
[1]まず、第1の基材21および第2の基材22(第2の被着体42)を用意する。そして、前記第1実施形態と同様にして、図4(a)〜(c)に示すように、第1の基材21上に、導電性成分を含むプラズマ重合膜3を形成する。これにより、第1の被着体41を得る。(第1の工程)。
なお、第2の基材22には、第1の基材21と同様、接合面24(後述する工程において、プラズマ重合膜3と密着する面)にも、必要に応じて、あらかじめプラズマ重合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面24を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面24とプラズマ重合膜3とを密着させ、これらを接合したとき、接合面24とプラズマ重合膜3との接合強度を高めることができる。
【0106】
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第1の基材21の接合面23に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
また、第1の基材21の場合と同様に、第2の基材22の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、プラズマ重合膜3との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基材22の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0107】
すなわち、このような材料で構成された第2の基材22は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2の基材22を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24とプラズマ重合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第2の基材22の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面24付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0108】
また、第2の基材22の接合面24に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24とプラズマ重合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
【0109】
また、このような基や物質を有するように、接合面24に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、プラズマ重合膜3に対して強固に接合可能な第2の基材22が得られる。
このうち、第2の基材22の接合面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面24には、水酸基が露出したプラズマ重合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とを特に強固に接合することができる。
【0110】
また、表面処理に代えて、第2の基材22の接合面24に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第1の基材21の場合と同様に、プラズマ重合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して、第2の基材22とプラズマ重合膜3とを接合することにより、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料には、例えば、前記第1の基材21の接合面23に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
なお、上記のような表面処理および中間層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
【0111】
[2]次に、図4(d)に示すように、得られたプラズマ重合膜3の表面31にエネルギーを付与する。これにより、プラズマ重合膜3の分子結合の一部が切断され、プラズマ重合膜3が活性化される。また、それとともに、プラズマ重合膜3に導電性が発現する(第2の工程)。
[3]次に、図5(e)に示すように、プラズマ重合膜3と第2の基材22の接合面24とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とが接合され、図5(f)に示す接合体1が得られる(第3の工程)。
【0112】
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
また、本実施形態では、2つの被着体41、42のうち、第1の被着体41はプラズマ重合膜3を有しているものの、第2の被着体42はプラズマ重合膜を有していない。したがって、プラズマ重合膜3を作製する際に、第1の基材21は比較的長時間にわたってプラズマに曝されるが、第2の基材22はプラズマに曝されることがない。このため、たとえ第2の基材22がプラズマに対する耐久性が低い材料で構成されていたとしても、第2の基材22が変質・劣化するおそれがない。したがって、第2の基材22の構成材料は、プラズマに対する耐久性を考慮することなく、幅広い材料から選択することができるという利点もある。
【0113】
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、図5(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、プラズマ重合膜3の界面における水酸基の脱水縮合が促進される。そして、プラズマ重合膜3と第2の基材22とは、ほぼ完全に一体化して1層のプラズマ重合膜となる。その結果、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0114】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第3実施形態について説明する。
図6および図7は、本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6および図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0115】
以下、接合方法の第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態および前記第2実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第2の工程において、プラズマ重合膜3の一部の所定領域(以下、「第1の領域311」と言う。)にエネルギーを付与することにより、プラズマ重合膜3の第1の領域311を部分的に活性化させるとともに、この第1の領域311に位置するプラズマ重合膜3に導電性を発現させるようにした以外は、前記第2実施形態と同様である。
【0116】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意し、第1の基材21の接合面23上に、プラズマ重合膜3を形成し、第1の被着体41を作製する工程(第1の工程)と、プラズマ重合膜3の第1の領域311にエネルギーを付与して活性化させるとともに、第1の領域311に位置するプラズマ重合膜3に導電性を発現させる工程(第2の工程)と、プラズマ重合膜3と第2の基材22とが接触するように、2つの被着体41、42を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0117】
[1]まず、前記第2実施形態と同様にして、図6(a)〜(c)に示すように、第1の基材21上に、導電性成分を含むプラズマ重合膜3を形成する。また、前記第1実施形態と同様の第2の基材21(第2の被着体42)を用意する。これにより、第1の被着体41を得る(第1の工程)。
[2]次に、図6(d)に示すように、プラズマ重合膜3の表面31の第1の領域311に対して選択的にエネルギーを付与する。これにより、第1の領域311に位置するプラズマ重合膜3の分子結合の一部が切断され、プラズマ重合膜3が活性化される。
【0118】
なお、プラズマ重合膜3のうち、第1の領域311に対してエネルギー線を照射する場合、レーザー光、電子線のような指向性の高いエネルギー線であれば、目的の方向に向けて照射することにより、第1の領域311に対してエネルギー線を選択的にかつ簡単に照射することができる。
また、指向性の低いエネルギー線であっても、プラズマ重合膜3のうち、第1の領域311以外の領域を覆うようにして照射すれば、第1の領域311に対してエネルギー線を選択的に照射することができる。
【0119】
具体的には、例えば、図6(d)に示すように、プラズマ重合膜3の紫外線を照射すべき第1の領域311の形状に対応する形状をなす窓部61を有するマスク6を設け、このマスク6を介して紫外線を照射するようにすればよい。このようにすれば、プラズマ重合膜3のうち、図6(d)に示す第1の領域311に対して紫外線を選択的に照射することができる。
以上のようにしてエネルギーが付与されると、プラズマ重合膜3の第1の領域311に接着性が発現する。また、それとともに、プラズマ重合膜3の第1の領域311には導電性が発現する(第2の工程)。
【0120】
[3]次に、図7(e)に示すように、プラズマ重合膜3と第2の基材22の接合面24とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とが第1の領域311において部分的に接合される。その結果、図7(f)に示すような接合体1が得られる。
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態または前記第2実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
【0121】
また、本実施形態によれば、接合体1中の第1の領域311に位置するプラズマ重合膜3に、導電性が発現する。このため、例えば、第1の領域311を線状の領域に設定すれば、この線状の領域に位置するプラズマ重合膜3に配線としての機能を付与することができる。
一方、第1の領域311以外の領域(以下、「第2の領域312」と言う。)に位置するプラズマ重合膜3は、非導電性を示すため、絶縁体としての機能を有する部位となる。
【0122】
したがって、本実施形態にかかるプラズマ重合膜3は、導電性を有する第1の領域311と、非導電性を有する第2の領域312とを併設したものとなる。
これにより、図7(f)に示す接合体1では、配線としての機能を有する第1の領域311を、絶縁体としての機能を有する第2の領域312、第1の基材21および第2の基材22によって被覆することができる。
その結果、各基材21、22を非導電性の材料で構成することにより、第1の領域311に位置するプラズマ重合膜3を電気的に絶縁することができる。
【0123】
また、各基材21、22を導電性の材料で構成することにより、各基材21、22間を、第1の領域311に位置するプラズマ重合膜3を介して部分的に導通させることができる。
このような接合体1は、各基材21、22間に、配線としての機能と絶縁体としての機能を併せ持つ層を有するものとなるため、信頼性の高い配線基板に適用することができる。
【0124】
さらに、本実施形態によれば、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際に、これらの接合面(互いに対向する面)全体を接合するのではなく、第1の領域311のみを選択的に接合する。この接合の際、プラズマ重合膜3にエネルギーを付与する領域を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との接合部の面積や形状を制御することができるので、接合体1の接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合部を容易に分離可能な接合体1が得られる。
【0125】
また、第1の基材21と第2の基材22との接合部の面積や形状を制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材21、22を確実に接合することができる。
さらに、本発明の接合方法によれば、第1の基材21が備えるプラズマ重合膜3のうち、第2の領域312では、プラズマ重合膜3と第2の基材22との間にわずかな隙間が生じる。この隙間を活かすため、第1の領域311の形状を適宜調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間に、閉空間や流路を形成したりすることができる。
【0126】
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、図7(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、プラズマ重合膜3の界面における水酸基の脱水縮合が促進される。そして、プラズマ重合膜3と第2の基材22とは、第1の領域311において、ほぼ完全に一体化して1層のプラズマ重合膜となる。その結果、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0127】
≪第4実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第4実施形態について説明する。
図8および図9は、本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図8および図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0128】
以下、接合方法の第4実施形態について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第3実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第1の基材21上にプラズマ重合膜301を備える第1の被着体41と、第2の基材22上にプラズマ重合膜302を備える第2の被着体42とを用意し、各プラズマ重合膜301、302の一部の所定領域(以下、「第1の領域311」と言う。)に対して選択的にエネルギーを付与するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0129】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21上にプラズマ重合膜301を形成し、第1の被着体41を作製するとともに、第2の基材22上にプラズマ重合膜302を形成し、第2の被着体42を作製する工程(第1の工程)と、各プラズマ重合膜301、302のそれぞれの第1の領域311にエネルギーを付与して活性化させるとともに、第1の領域311に導電性を発現させる工程(第2の工程)と、プラズマ重合膜301とプラズマ重合膜302とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0130】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、図8(a)〜(c)に示すように、第1の基材21上に、導電性成分を含むプラズマ重合膜301を形成する。また、それと同様に、第2の基材22上に、導電性成分を含むプラズマ重合膜302を形成する。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とを得る(第1の工程)。
[2]次に、図8(d)に示すように、プラズマ重合膜301の表面303の第1の領域311に対して選択的にエネルギーを付与する。これにより、第1の領域311に位置するプラズマ重合膜301の分子結合の一部が切断され、プラズマ重合膜301が活性化される。また、それと同様に、プラズマ重合膜302の表面304の第1の領域311に対して選択的にエネルギーを付与する。これにより、第1の領域311に位置するプラズマ重合膜302の分子結合の一部が切断され、プラズマ重合膜302が活性化される。
以上のようにしてエネルギーが付与されると、各プラズマ重合膜301、302のそれぞれの第1の領域311に接着性が発現する。また、それとともに、各プラズマ重合膜301、302のそれぞれの第1の領域311には導電性が発現する(第2の工程)。
【0131】
[3]次に、図9(e)に示すように、プラズマ重合膜301とプラズマ重合膜302とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、第1の被着体41と第2の被着体42とが第1の領域311において部分的に接合される。その結果、図9(f)に示すような接合体1が得られる(第3の工程)。
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態ないし前記第3実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
【0132】
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、図9(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、各プラズマ重合膜301、302の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。そして、各プラズマ重合膜301、302は、第1の領域311において、ほぼ完全に一体化して1層のプラズマ重合膜となる。その結果、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0133】
また、図10には、本実施形態にかかる接合体の他の構成例を示す。
本実施形態では、プラズマ重合膜301の表面303の所定領域313の平面視形状が、図10(a)に示すようなストライプ状をなしている。また、それとと同様に、プラズマ重合膜302の表面304の所定領域314の平面視形状も、図10(a)に示すようなストライプ状をなしている。
【0134】
すなわち、本実施形態では、プラズマ重合膜301のうち、ストライプ状の所定領域313に対してエネルギーを付与することにより、この所定領域313が選択的に活性化されている。また、それと同様に、プラズマ重合膜302のうち、ストライプ状の所定領域314に対してエネルギーを付与することにより、この所定領域314が選択的に活性化されている。
【0135】
なお、ストライプ状をなす所定領域313と、ストライプ状をなす所定領域314とは、互いに交差する関係にある。
このような第1の被着体41と第2の被着体42とを貼り合わせると、所定領域313と所定領域314とが重なった部分(以下、「共通部分315」と言う。)において、第1の被着体41と第2の被着体42とが部分的に接合される。これにより、図10(b)に示すような接合体1が得られる。
【0136】
このような接合体1では、各所定領域313、314の面積や形状を適宜制御することにより、例えば、接合体1の接合強度を調整したり、接合界面に生じる応力の局所集中を緩和したりすることができる。
また、エネルギーの付与によって、所定領域313に位置するプラズマ重合膜301と、所定領域314に位置するプラズマ重合膜302は、それぞれ導電性を発現するが、これらの各プラズマ重合膜301、302は、共通部分315において導通することができる。
なお、各所定領域313、314の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等の形状であってもよい。
【0137】
≪第5実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第5実施形態について説明する。
図11および図12は、本発明の接合方法の第5実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図11および図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0138】
以下、接合方法の第5実施形態について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第4実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第1の基材21の接合面23のうち、一部の所定領域(以下、「第1の領域311」と言う。)に導電性成分を含むプラズマ重合膜3aを形成するとともに、接合面23のうちの第1の領域311以外の領域(以下、「第2の領域312」と言う。)に導電性成分を含まないプラズマ重合膜3bを形成することにより、第1の基材21と各プラズマ重合膜3a、3bとを備える第1の被着体41を作製し、この第1の被着体41と第2の被着体42とを接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0139】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22(第2の被着体42)とを用意し、第1の基材21の接合面23の一部の第1の領域311にプラズマ重合膜3aを形成するとともに、第1の基材21の接合面23の第2の領域312にプラズマ重合膜3bを形成して、第1の被着体41を作製する工程(第1の工程)と、各プラズマ重合膜3a、3bにエネルギーを付与して活性化させるとともに、プラズマ重合膜3aに導電性を発現させる工程(第2の工程)と、各プラズマ重合膜3a、3bと第2の基材22とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0140】
[1]まず、第1の基材21および第2の基材22(第2の被着体42)を用意する。なお、この各基材21、22は、それぞれ、前記第1実施形態と同様の構成とされる。
次に、図11(a)に示すように、第1の基材21の接合面23の上方に、第1の領域311の形状に対応する形状をなす窓部61aを有するマスク6aを設ける。
次に、マスク6aを介して、第1の基材21の接合面23に導電性成分を含むプラズマ重合膜3aを成膜する。プラズマ重合法によって生成される重合物は、第1の基材21の接合面23上に堆積するが、このとき重合物がマスク6aの窓部61aを通過することにより、第1の領域311にのみ重合物が堆積する。その結果、第1の基材21の接合面23の一部の第1の領域311にプラズマ重合膜3aが形成される(図11(b)参照)。
【0141】
なお、図11(a)では、マスク6aと第1の基材21とが離れているが、第1の基材21の接合面23に接するようにマスク6aを設けるようにしてもよい。
次に、図11(c)に示すように、第1の基材21の接合面23の上方に、第2の領域312の形状に対応する形状をなす窓部61bを有するマスク6bを設ける。そして、マスク6bを介して、第1の基材21の接合面23の第2の領域312に導電性成分を含まないプラズマ重合膜3bを成膜する。
【0142】
以上のようにして、図11(d)に示すように、第1の基材21と、第1の基材21の接合面23の第1の領域311に設けられたプラズマ重合膜3aと、第1の基材21の接合面23の第2の領域312に設けられたプラズマ重合膜3bとを備える第1の被着体41が作製される(第1の工程)。
ここで、導電性成分を含まないプラズマ重合膜3bは、特に、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されているのが好ましい。これにより、プラズマ重合膜3bは、第1の基材21と第2の基材22とをより強固に接合することができる。また、ポリオルガノシロキサンは、導電性成分を含まず、優れた絶縁性を有するものであるため、プラズマ重合膜3bに絶縁体としての優れた機能を付与することができる。
【0143】
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性が発現する。
すなわち、撥水性を示すポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜3bは、後述する工程において、第2の基材22と接触させても、プラズマ重合膜3bの表面にある有機基によって接着が阻害されることとなり、極めて接着し難い。一方、親水性を示すポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜3bは、第2の基材22に接触させると、両者の接着が可能になる。すなわち、撥水性と親水性の制御を容易に行えるという利点は、接着性の制御を容易に行えるという利点に繋がる。
【0144】
したがって、かかるプラズマ重合膜3bは、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に接着性を示すものの、エネルギーを付与されないときには、非接着性を示し、意図しない接着を防止し得るものとなる。
また、ポリオルガノシロキサンは、比較的柔軟性に富んでいるので、例えば、第1の基材21と第2の基材22との各構成材料が互いに異なる場合でも、各基材21、22間に生じる熱膨張に伴う応力を緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
【0145】
さらに、ポリオルガノシロキサンは、耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。具体的には、例えば、樹脂材料を浸食し易い有機系インクが用いられる工業用インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドを製造する際に、ポリオルガノシロキサンを主材料とするプラズマ重合膜3を用いることにより、その耐久性を向上させることができる。
【0146】
このようなポリオルガノシロキサンは、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するものである。このような構造を有することにより、ポリオルガノシロキサンは変形し難い強固な膜となる。このため、プラズマ重合膜3bは特に優れた接着性を示すとともに、プラズマ重合膜3b自体が寸法精度の高いものとなる。このため、最終的に、接合強度に優れ、かつ寸法精度の高い接合体1が得られる。
【0147】
なお、このようなポリオルガノシロキサンの結晶化度は、特に限定されないが、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、ポリオルガノシロキサンは、十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、上述したポリオルガノシロキサンが示す特性が顕在化し、プラズマ重合膜3bの寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
【0148】
また、プラズマ重合膜3bがポリオルガノシロキサンで構成されている場合、プラズマ重合膜3bを構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率との合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、プラズマ重合膜3bは、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、プラズマ重合膜3b自体が強固なものとなる。また、かかるプラズマ重合膜3bは、第1の基材21および第2の基材22に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
【0149】
また、プラズマ重合膜3b中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、プラズマ重合膜3bの安定性が高くなり、各被着体41、42をより強固に接合することができるようになる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするプラズマ重合膜3bは、接着性に特に優れることから、本実施形態において、特に好適に用いられるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0150】
[2]次に、図12(e)に示すように、各プラズマ重合膜3a、3bに対してエネルギーを付与する。これにより、各プラズマ重合膜3a、3bの分子結合の一部が切断され、活性化される。
具体的には、図12(e)に示すように、紫外線を照射することにより、エネルギーを付与する。その結果、各プラズマ重合膜3a、3bにそれぞれ接着性が発現する。そして、この接着性により、各プラズマ重合膜3a、3bと第2の基材22とが接合される。また、それとともに、プラズマ重合膜3aには導電性が発現する(第2の工程)。
【0151】
[3]次に、図12(f)に示すように、各プラズマ重合膜3a、3bと第2の基材22の接合面24とが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、図12(g)に示すような接合体1が得られる(第3の工程)。
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態ないし前記第4実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0152】
≪第6実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第6実施形態について説明する。
図13および図14は、本発明の接合方法の第6実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図13および図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0153】
以下、接合方法の第6実施形態について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第5実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第2の基材22と、第2の基材22の接合面24の全面に設けられたプラズマ重合膜3cとを備える第2の被着体42を用いるようにした以外は、前記第5実施形態と同様である。
【0154】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22とを用意し、第1の基材21の接合面23の第1の領域311と第2の領域312に、それぞれプラズマ重合膜3aとプラズマ重合膜3bとを形成して、第1の被着体41を作製するとともに、第2の基材22の接合面24の全面にプラズマ重合膜3cを形成して、第2の被着体42を作製する工程(第1の工程)と、各プラズマ重合膜3a、3b、3cにエネルギーを付与して活性化させるとともに、プラズマ重合膜3aに導電性を発現させる工程(第2の工程)と、各プラズマ重合膜3a、3bとプラズマ重合膜3cとが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0155】
[1]まず、図13(a)〜(d)に示すように、前記第5実施形態と同様にして、第1の被着体41を作製する。
一方、図13(a)〜(b)に示すように、前記第1実施形態と同様の方法により、第2の基材22の接合面24の全面に、導電性成分を含まないプラズマ重合膜3cを形成する。これにより、第2の基材22とプラズマ重合膜3cとを備える第2の被着体42を得る(第1の工程)。
ここで、導電性成分を含まないプラズマ重合膜3cは、前記第5実施形態におけるプラズマ重合膜3bと同様の構成とされる。すなわち、プラズマ重合膜3cは、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されているのが好ましい。これにより、プラズマ重合膜3cに絶縁体としての優れた機能を付与することができる。
【0156】
[2]次に、図14(e)に示すように、各プラズマ重合膜3a、3b、3cに対してエネルギーを付与する。これにより、各プラズマ重合膜3a、3b、3cの分子結合の一部が切断され、活性化される。
具体的には、図14(e)に示すように、紫外線を照射することにより、エネルギーを付与する。その結果、各プラズマ重合膜3a、3b、3cにそれぞれ接着性が発現する。そして、この接着性により、各プラズマ重合膜3a、3bとプラズマ重合膜3cとが接合される。また、それとともに、プラズマ重合膜3aには導電性が発現する(第2の工程)。
【0157】
[3]次に、図14(f)に示すように、各プラズマ重合膜3a、3bとプラズマ重合膜3cとが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、図14(g)に示すような接合体1が得られる(第3の工程)。
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態ないし前記第5実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0158】
≪第7実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第7実施形態について説明する。
図15および図16は、本発明の接合方法の第7実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図15および図16中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0159】
以下、接合方法の第7実施形態について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第6実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法では、第2の基材22と、第2の基材22の接合面24のうち、一部の所定領域(以下、「第1の領域311」と言う。)に導電性成分を含むプラズマ重合膜3aを形成するとともに、接合面24のうちの第1の領域311以外の領域(以下、「第2の領域312」と言う。)に導電性成分を含まないプラズマ重合膜3bを形成することにより、第2の基材22と各プラズマ重合膜3a、3bとを備える第2の被着体42を作製し、この第2の被着体42と第1の被着体41とを接合するようにした以外は、前記第5実施形態と同様である。
【0160】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と、第2の基材22とを用意し、第1の基材21の接合面23の第1の領域311と第2の領域312に、それぞれプラズマ重合膜3aとプラズマ重合膜3bとを形成して、第1の被着体41を作製するとともに、第2の基材22の接合面24の第1の領域311と第2の領域312に、それぞれプラズマ重合膜3aとプラズマ重合膜3bとを形成して、第2の被着体42を作製する工程(第1の工程)と、第1の被着体41の各プラズマ重合膜3a、3bと、第2の被着体42の各プラズマ重合膜3a、3bとに、それぞれエネルギーを付与して活性化させるとともに、第1の被着体41のプラズマ重合膜3aと第2の被着体42のプラズマ重合膜3aとにそれぞれ導電性を発現させる工程(第2の工程)と、各プラズマ重合膜3a、3b同士が密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせ、接合体を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0161】
[1]まず、図15(a)〜(d)に示すように、前記第5実施形態と同様にして、第1の被着体41を作製する。
一方、図15(a)〜(d)に示すように、この第1の被着体41の作製方法と同様にして、第2の基材22と、この第2の基材22の接合面24の第1の領域311と第2の領域312にそれぞれ設けられたプラズマ重合膜3aとプラズマ重合膜3bとを備える第2の被着体42を作製する(第1の工程)。
【0162】
[2]次に、図16(e)に示すように、第1の被着体41の各プラズマ重合膜3a、3bと、第2の被着体42の各プラズマ重合膜3a、3bに対して、それぞれエネルギーを付与する。これにより、各プラズマ重合膜3a、3bの分子結合の一部が切断され、活性化される。
具体的には、図16(e)に示すように、紫外線を照射することにより、エネルギーを付与する。その結果、各プラズマ重合膜3a、3bにそれぞれ接着性が発現する。そして、この接着性により、第1の被着体41の各プラズマ重合膜3a、3bと第2の被着体42の各プラズマ重合膜3a、3bとが接合される。また、それとともに、第1の被着体41のプラズマ重合膜3aと第2の被着体42のプラズマ重合膜3aには、それぞれ導電性が発現する。
【0163】
[3]次に、図16(f)に示すように、第1の被着体41の各プラズマ重合膜3a、3bと、第2の被着体42の各プラズマ重合膜3a、3bとが密着するように、2つの被着体41、42を貼り合わせる。これにより、図16(g)に示すような接合体1が得られる。
本実施形態にかかる接合方法では、前記第1実施形態ないし前記第6実施形態にかかる接合方法と同様の作用・効果が得られる。
【0164】
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における3つの工程([5A]、[5B]および[5C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
また、第1の被着体41が備えるプラズマ重合膜3aの平面視形状(第1の領域311の平面視形状)と、第2の被着体42が備えるプラズマ重合膜3aの平面視形状(第1の領域311の平面視形状)は、同じであってもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0165】
以上のような前記各実施形態にかかる接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
このような接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光学変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
【0166】
<配線基板>
ここでは、本発明の接合体を配線基板に適用した場合の実施形態について説明する。
図17は、本発明の接合体を適用して得られた配線基板を示す斜視図である。
図17に示す配線基板10は、絶縁基板13と、絶縁基板13上に配設された電極12と、リード14と、リード14の一端に、電極12と対向するように設けられた電極15とを有する。
【0167】
そして、電極12の上面と、電極15の下面とには、それぞれプラズマ重合膜が形成されている。これらのプラズマ重合膜同士は、前述の本発明の接合方法によって貼り合わせることにより接合されている。これにより、電極12、15間は、1層のプラズマ重合膜11によって強固に接合されることになり、各電極12、15間の層間剥離等が確実に防止されるとともに、信頼性の高い配線基板10が得られる。
【0168】
また、プラズマ重合膜11は、各電極12、15間を導通する機能をも担う。プラズマ重合膜11は、非常に薄いものでも十分な接合力を発揮する。このため、各電極12、15間の間隙をより小さくすることができ、各電極12、15間の電気抵抗成分(接触抵抗)の低減を図ることができる。その結果、各電極12、15間の導電性をより高めることができる。
【0169】
また、プラズマ重合膜11は、前述したように、その厚さを高い精度で容易に制御することができる。これにより、配線基板10は、より寸法精度の高いものとなり、各電極12、15間の導電性も容易に制御することができる。
以上、本発明の接合方法、接合体および配線基板を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0170】
例えば、本発明の接合方法は、電極同士の接合のように、接合界面の電気抵抗成分を抑制しつつ強固に接合すべきものについて、好適に適用できる。すなわち、本発明の接合方法によって接合された接合界面は、接触抵抗が小さくなる。
また、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記各実施形態では、2つの被着体(第1の被着体および第2の被着体)を接合する方法について説明したが、3つ以上の被着体を接合する場合に、本発明の接合方法を適用してもよい。
【実施例】
【0171】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.積層体(接合体)の製造
(実施例1)
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、第2の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、これらの基材を図1に示すプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納し、酸素プラズマによる下地処理を行った。
次に、下地処理を行った面に、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0172】
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :トリメチルガリウム
・原料ガスの流量 :50sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:100sccm
・高周波電力の出力 :100W
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :15分
・基板温度 :20℃
【0173】
次に、得られたプラズマ重合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
続いて、紫外線を照射してから1分後に、紫外線を照射した面が接触するように、各基材を重ね合わせた。
そして、各基材を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、各基材を接合し、積層体(接合体)を得た。
【0174】
(実施例2)
加熱の温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例3〜12)
第1の基材の構成材料および第2の基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料に変更した以外は、前記実施例1と同様にして積層体を得た。
【0175】
(実施例13〜15)
第1の基材の構成材料を表1に示すように変更するとともに、原料ガスを表1に示す組成のガスに変更し、プラズマ重合膜の組成を変更した以外は、それぞれ前記実施例1、3、4と同様にして積層体を得た。
(実施例16)
前記実施例15において、プラズマ重合膜の半分の領域のみに紫外線を照射するようにした以外は、前記実施例15と同様にして積層体を得た。
(比較例1〜3)
第1の基材の構成材料を、それぞれ表1に示す材料とし、各基材間をAgペーストで接着した以外は、それぞれ前記実施例1、3、4と同様にして積層体を得た。
【0176】
2.積層体(接合体)の評価
2.1 接合強度(割裂強度)の評価
各実施例および各比較例で得られた積層体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各基材を引き剥がしたとき、剥がれる直前の強度を測定することにより行った。そして、接合強度を以下の基準にしたがって評価した。
【0177】
<接合強度の評価基準>
◎:10MPa(100kgf/cm)以上
○: 5MPa( 50kgf/cm)以上、10MPa(100kgf/cm)未満
△: 1MPa( 10kgf/cm)以上、 5MPa( 50kgf/cm)未満
×: 1MPa( 10kgf/cm)未満
【0178】
2.2 寸法精度の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ厚さ方向の寸法精度を測定した。
寸法精度の測定は、正方形の接合体の各角部の厚さを測定し、4箇所の厚さの最大値と最小値の差を算出することにより行った。そして、この差を以下の基準にしたがって評価した。
<寸法精度の評価基準>
○:10μm未満
×:10μm以上
【0179】
2.3 抵抗率の評価
実施例12、実施例15、実施例16および比較例3で得られた積層体について、それぞれ接合部分の抵抗率を測定した。そして、測定した抵抗率を以下の基準にしたがって評価した。
なお、実施例16で得られた積層体についての抵抗率の測定では、プラズマ重合膜に紫外線を照射した領域(照射領域)と、照射しなかった領域(非照射領域)の境界線に沿って積層体を切断し、照射領域の積層体と非照射領域の積層体とについて個別に抵抗率を測定した。
<抵抗率の評価基準>
○:1×10−3Ω・cm未満
×:1×10−3Ω・cm以上
以上、2.1〜2.3の各評価結果を表1に示す。
【0180】
【表1】

【0181】
表1から明らかなように、各実施例で得られた積層体は、高い接合強度および寸法精度を示すとともに、抵抗率は十分に小さかった。
また、実施例16で得られた積層体では、照射領域と非照射領域との間で、抵抗率に差が認められた。これは、プラズマ重合膜が照射領域において導電性を発現し、非照射領域においては導電性を発現しなかったことに起因すると推察される。
これに対し、各比較例で得られた積層体は、接合強度および寸法精度が低く、抵抗率は高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図9】本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図10】第4実施形態にかかる接合体の他の構成例を示す図である。
【図11】本発明の接合方法の第5実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図12】本発明の接合方法の第5実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図13】本発明の接合方法の第6実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図14】本発明の接合方法の第6実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図15】本発明の接合方法の第7実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図16】本発明の接合方法の第7実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図17】本発明の接合体を適用して得られた配線基板を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0183】
1、1’……接合体 2……基材 21……第1の基材 22……第2の基材 23、24……接合面 3、30、301、302、3a、3b、3c……プラズマ重合膜 31、303、304……表面 313、314……所定領域 315……共通部分 311……第1の領域 312……第2の領域 41……第1の被着体 42……第2の被着体 6、6a、6b……マスク 61、61a、61b……窓部 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 10……配線基板 11……プラズマ重合膜 12……電極 13……絶縁基板 14……リード 15……電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上の少なくとも一部の領域に設けられた導電性成分を含むプラズマ重合膜を備える第1の被着体と、第2の被着体とを用意する第1の工程と、
前記プラズマ重合膜のうち、少なくとも一部の所定領域に対してエネルギーを付与して、前記プラズマ重合膜を活性化させるとともに、前記プラズマ重合膜に導電性を発現させる第2の工程と、
前記プラズマ重合膜と前記第2の被着体とを密着させるように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせ、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記第1の被着体は、前記基材と、該基材上の全部の領域に設けられた導電性成分を含むプラズマ重合膜とを備えており、
前記第2の工程において、前記プラズマ重合膜のうち、一部の所定領域に対してエネルギーを付与することにより、前記所定領域に位置する前記プラズマ重合膜を部分的に活性化させるとともに、前記所定領域に位置する前記プラズマ重合膜に部分的に導電性を発現させる請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第2の被着体のうち、前記第1の被着体のプラズマ重合膜と密着する面には、水酸基が存在しており、
前記第3の工程において、前記プラズマ重合膜と、前記第2の被着体の前記水酸基が存在する面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせる請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第2の被着体の少なくとも前記プラズマ重合膜と密着する面は、酸化膜で覆われており、
前記第3の工程において、前記プラズマ重合膜と、前記第2の被着体の前記酸化膜で覆われた面とが密着するように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせる請求項1ないし3いずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
基材上にそれぞれ導電性成分を含むプラズマ重合膜を備えた第1の被着体および第2の被着体を用意する第1の工程と、
前記第1の被着体および前記第2の被着体の各プラズマ重合膜の表面にそれぞれエネルギーを付与して、該各プラズマ重合膜の表面を活性化させるとともに、前記各プラズマ重合膜に導電性を発現させる第2の工程と、
該活性化させた各プラズマ重合膜の表面同士を密着させるように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを貼り合わせ、接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項6】
前記第1の被着体および前記第2の被着体は、それぞれ、あらかじめ前記各基材上にプラズマによる下地処理を施した後、該下地処理を施した領域に前記プラズマ重合膜を形成してなるものである請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記第1の被着体が備える基材と、前記第2の被着体が備える基材とは、それぞれ剛性が異なっている請求項5または6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記導電性成分を含むプラズマ重合膜は、有機金属ポリマーを主材料として構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記有機金属ポリマーは、トリメチルガリウムまたはトリメチルアルミニウムの重合物を主成分とするものである請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記プラズマ重合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
前記第2の工程における前記エネルギーの付与は、前記プラズマ重合膜を加熱する方法により行われる請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
前記第2の工程における前記エネルギーの付与は、前記プラズマ重合膜に、エネルギー線を照射する方法により行われる請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法。
【請求項14】
前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外光である請求項13に記載の接合方法。
【請求項15】
前記第2の工程は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし14のいずれかに記載の接合方法。
【請求項16】
前記第3の工程の後、前記接合体に熱処理を施す工程を有する請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
【請求項17】
前記熱処理の温度は、25〜100℃である請求項16に記載の接合方法。
【請求項18】
前記第3の工程の後、前記接合体を加圧する工程を有する請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
【請求項19】
前記接合体を加圧する際の圧力は、0.2〜10MPaである請求項18に記載の接合方法。
【請求項20】
前記第2の工程の終了後、60分以内に、前記第3の工程を開始する請求項1ないし19のいずれかに記載の接合方法。
【請求項21】
2つの基材同士が、請求項1ないし20のいずれかに記載の接合方法により接合されていることを特徴とする接合体。
【請求項22】
2つの基材と、
導電性を有するプラズマ重合膜とを有し、
前記2つの基材同士が、前記プラズマ重合膜を介して接合されていることを特徴とする接合体。
【請求項23】
前記導電性を有するプラズマ重合膜は、前記2つの基材上にそれぞれあらかじめ形成された導電性成分を含むプラズマ重合膜に、それぞれエネルギーを付与することにより、前記導電性成分を含むプラズマ重合膜に導電性を発現させるとともに、該各プラズマ重合膜同士を接合してなるものである請求項22に記載の接合体。
【請求項24】
前記2つの基材間の接合強度は5MPa以上である請求項21ないし23のいずれかに記載の接合体。
【請求項25】
当該接合体中の前記導電性が発現したプラズマ重合膜の抵抗率は、1×10−3Ω・cm以下である請求項21ないし24のいずれかに記載の接合体。
【請求項26】
請求項21ないし25のいずれかに記載の接合体を有することを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−27120(P2009−27120A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192705(P2007−192705)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】