説明

接点部品または電池部品用材料と、それを用いた電池

【課題】鋼板の表面に、簡便な処理を施すことにより、安価で、特性に優れた接点部品または電池部品用材料を提供する。
【解決手段】第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートからなり、金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板を含み、前記表層部の最表面において、前記第1の金属元素の少なくとも一部が、前記第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である第2の金属元素で置換されて、前記第2の金属元素が、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で前記最表面に析出している、接点部品または電池部品用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、低い表面抵抗値を長期間に亘り安定的に維持できる接点部品または電池部品用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
接点部品または電池部品用材料には、Cr含有鋼板や表面処理鋼板などの鋼板(鋼帯を含む)が広く利用されている。接点部品用途では、接触抵抗値やハンダ付け性などが重視される。電池部品用途では、耐食性や加工性が重視される。一般に、接点部品用途に供される鋼板としては、低い接触抵抗値と良好なハンダ付け性を確保する観点から、各種の表面処理鋼板(例えばニッケルめっき鋼板、錫めっき鋼板または銅めっき鋼板)などが用いられている。一方、電池部品用途に供される鋼板としては、耐食性や加工性を確保する観点から、Cr含有鋼板や表面処理鋼板(特にニッケルめっき鋼板)が用いられている。
【0003】
いずれの用途においても、鋼板は、低い接触抵抗値を保持することが要求される。しかし、Cr含有鋼板は、高い耐食性を有する反面、鋼板の表面にCrの酸化物層が存在する。よって、Cr含有鋼板の表面抵抗値は、大きな値を示すことになる。接点部品や電池部品などにCr含有鋼板を用いるためには、何らかの表面処理を施し、表面抵抗値を低下させることが必要となる。
【0004】
例えば、リチウム一次電池の正極ケースには、主にSUS304、SUS430、SUS444などのステンレス鋼板(Cr含有鋼板)が用いられている。正極ケースの内面側には、ステンレス鋼板の接触抵抗値を低下させるために、カーボンペーストが塗布される。しかし、カーボンペーストを塗布する工程は煩雑であり、カーボンペーストの乾燥にも大きな負荷がかかる。そのため、設備費、人件費、エネルギー消費などが嵩み、製造コストの低減を図ることが困難である。
【0005】
昨今の技術革新や省力化により、様々な部品に対し、更なる性能の向上が要求されている。それに伴って、接点部品や電池部品用材料の性能の向上も厳しく問われつつある。なかでも接触抵抗値の経時変化を抑制し、抵抗値を長期間安定化させることが大きな課題となっている。従来に劣らない低い接触抵抗値を有し、かつ、抵抗値の経時変化が小さい材料が要望されている。
【0006】
特許文献1は、アルカリ電池用の集電体の電気伝導度を向上させるために、集電体を貴金属でコーティングすることを提案している。貴金属には、金、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどが用いられている。コーティングの手法としては、スパッタリング、ペインティング法、ディッピング法、エアアトマイズ噴霧法、電気分解、化学的蒸着、物理的蒸着、超音波エアアトマイズ、フレーム溶射、電気加熱溶射、プラズマ溶射などが提案されている。
【0007】
特許文献2は、表面処理された冷延鋼板を円筒形の電池ケースに用いることを提案している。表面処理は、冷間圧延された鋼板を熱処理した後、溶融めっきにより施される。深絞り時の絞りじわを低減する観点から、めっきには、ニッケル、コバルト、鉄、ビスマス、インジウム、パラジウム、金、亜鉛などが用いられている。
【特許文献1】特開2004−39609号公報
【特許文献2】特表2003−525346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、鋼板を用いて接点部品や電池部品を作製する場合、接触抵抗値を低くするために、表面処理を施す必要がある。しかし、表面処理に必要なコストが高いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、鋼板(例えばCr含有鋼板や表面処理鋼板)の表面に、簡便な処理を施すことにより、安価で、特性に優れた接点部品または電池部品用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、鋼板の表面を所定の金属イオンを含む水溶液に接触させる簡便な処理により、鋼板の表面抵抗値が低下すること、および、低い表面抵抗値を長期間に亘り安定的に維持できることを見出した。
【0011】
本発明は、第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートからなり、金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板を含み、前記表層部の最表面において、第1の金属元素の少なくとも一部が、第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である第2の金属元素で置換されて、第2の金属元素が、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で前記最表面に析出している接点部品または電池部品用材料に関する。金属シートが第1の金属元素を含む表層部を複数有する場合には、少なくとも1つの表層部の最表面において、第1の金属元素の少なくとも一部が、第2の金属元素で置換されていればよい。
【0012】
Cr含有鋼板には、例えばステンレス鋼板を用いることができる。この場合、第1の金属元素は、例えば鉄となる。
表面処理鋼板には、例えばめっき層を有するステンレス鋼板またはめっき層を有する冷延鋼板を用いることができる。この場合、めっき層が、第1の金属元素を含み、第1の金属元素が、Ni、SnおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
第2の金属元素は、例えばPd、Pt、Ag、Au、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種である。
第2の金属元素は、Pd、Pt、AgおよびAuよりなる群から選択される少なくとも1種の第1群元素と、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の第2群元素とを含むことが好ましい。
【0014】
第1群元素は、粒子状で析出していることが好ましい。すなわち、第1群元素を含む粒子が、前記表層部の最表面に分散しており、第2群元素が、第1群元素を含む粒子間に析出している状態が好ましい。
【0015】
本発明は、また、正極ケース、正極ケース内に収容された正極、負極ケース、負極ケース内に収容された負極、正極と負極との間に介在するセパレータ、ならびにリチウムイオン伝導性の非水電解質を具備し、正極ケースが、第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートからなり、金属シートは、ステンレス鋼板またはニッケルめっき層を有するステンレス鋼板からなり、前記表層部が、正極と接触しており、前記表層部の最表面において、第1の金属元素の少なくとも一部が、第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である第2の金属元素で置換されて、第2の金属元素が、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で前記最表面に析出しているリチウム電池に関する。
【0016】
本発明は、また、第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートの前記表層部を、第2の金属元素のイオンを含む水溶液に接触させることにより、前記表層部に存在する第1の金属元素の少なくとも一部を、第2の金属元素で置換する工程を含み、金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板からなり、第2の金属元素は、第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である、接点部品または電池部品用材料の製造法に関する。
【0017】
上記方法では、前記表層部を、第2の金属元素のイオンを含む水溶液に接触させる前に、表層部に酸性溶液を接触させることが好ましい場合がある。
【0018】
上記方法で用いる処理液(第2の金属元素のイオンを含む水溶液)は、例えば、Pd、Pt、Ag、Au、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の金属イオン(第2の金属元素のイオン)と、無機酸と、水とを含む。
【0019】
処理液は、更に、第2の金属元素のイオンと錯体を形成する錯化剤を含むことが好ましい。
処理液は、Pd、Pt、AgおよびAuよりなる群から選択される少なくとも1種の第1群元素のイオンと、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の第2群元素のイオンとを含むことが好ましい。
【0020】
本発明において、接点部品とは、例えば電池ホルダーや各種スイッチの接点部分(携帯電話のボタン下部接点材等)などを含む。電池部品とは、様々な形状のケース、集電体、負極封口板、正極芯材、正極リングなどを含む。本発明は、特に、電池部品として好適であり、なかでもリチウム電池やアルカリ電池の正極ケースとして好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低い表面抵抗値を長期間に亘り安定的に維持できる接点部品または電池部品用材料を安価で提供することができる。本発明の接点部品または電池部品用材料は、従来と同等以下の表面抵抗値、同等以上の耐食性、加工性、ハンダ付け性などを有し、恒温恒湿槽内に保存した場合でも、表面抵抗値の上昇が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の接点部品または電池部品用材料は、第1の金属元素を含む表層部を少なくとも一方の面に有する金属シートを含む。金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板からなる。第1の金属元素を含む少なくとも一方の表層部の最表面において、第1の金属元素の少なくとも一部は、第2の金属元素で置換されている。第1の金属元素を第2の金属元素で置換する置換反応を進行させるためには、第2の金属元素の標準電極電位が、第1の金属元素の標準電極電位よりも貴である必要がある。したがって、第2の金属元素としては、例えばPd、Pt、Ag、Au、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。第2の金属元素は、1種だけでもよく、複数種であってもよい。
【0023】
第2の金属元素は、金属、酸化物または水酸化物の状態で、金属シートの最表面に析出する。第2の金属元素は、通常、直径1〜200nmの粒子状で析出する。ただし、Pd、Pt、AgおよびAu(第1群元素)は、粒子状の金属の状態で析出しやすい。一方、In、CoおよびCu(第2群元素)は、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で析出しやすい。
【0024】
本発明の接点部品または電池部品用材料の典型的な製造法は、第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートの前記表層部を、第2の金属元素のイオンを含む水溶液(処理液)に接触させることにより、前記表層部に存在する第1の金属元素の少なくとも一部を、第2の金属元素で置換する工程を含む。ただし、金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板からなり、第2の金属元素は、第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である。ここで、鋼板には、鋼帯が含まれる。鋼帯は、例えばコイル状に巻回された状態で入手可能である。
【0025】
金属シートが普通のCr含有鋼板である場合、第1の金属元素はCr含有鋼板の構成元素(例えばFe)である。金属シートが表面処理鋼板である場合、第1の金属元素は、通常、表面処理に用いられている金属元素である。第1の金属元素は、1種だけでもよく、複数種であってもよい。
【0026】
本発明の接点部品または電池部品用材料は、基本的に、置換反応を利用して製造される。置換反応においては、金属シートの表層部の最表面に存在する第1の金属元素(例えばFe)が、処理液中に溶解する際、電子が放出される(例えば、Fe→Fe2++e)。放出された電子は、処理液中に存在する第2の金属元素のイオンにより受け取られ、これによって第2の金属元素が最表面に析出すると考えられる。
【0027】
Cr含有鋼板には、SUS304、SUS430、SUS444などのステンレス鋼板を好適に用いることができる。ただし、Cr含有量12%未満の非ステンレス鋼板、非ステンレス鋼板にチタン、ニオブなどを添加し、加工性を高めた鋼板なども好適に用いることができる。
【0028】
表面処理鋼板には、表面処理が施されたCr含有鋼板や、表面処理が施された冷延鋼板を好適に用いることができる。冷延鋼板のなかでは、特にアルミニウムキルド冷延鋼板を好適に用いることができる。炭素含有量が0.04重量%程度である低炭素鋼や、0.003重量%以下である極低炭素鋼、極低炭素鋼にチタン、ニオブ、ボロンなどを添加し、異方性、時効性、溶接性などを向上させた冷延鋼板も好適に用いることができる。
【0029】
表面処理鋼板の表面処理は、主に電気めっき法により施される。例えばニッケルめっき、ニッケル合金めっき、錫めっき、錫合金めっき、銅めっき、銅合金めっきなどが鋼板に施される。すなわち、表面処理鋼板としては、めっき層を有するステンレス鋼板、めっき層を有する冷延鋼板が好適であり、第1の金属元素は、通常、めっき層の構成元素である。なお、Ni、SnおよびCu以外のめっき層を形成する表面処理を行ってもよく、化学めっき法、蒸着法などにより表面処理を行ってもよい。
【0030】
第2の金属元素は、Pd、Pt、AgおよびAuよりなる群から選択される少なくとも1種の第1群元素と、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の第2群元素とを含むことが好ましい。第1群元素は、第1の金属元素との標準電極電位の差が大きく、第1の金属元素を含む表層部の最表面に分散しやすく、酸化されにくく、導電性も高いが、比較的高価である。第2群元素は、第1の金属元素との標準電極電位の差が小さく、第1群元素ほど良好な物性を示さないが、比較的安価である。第2の金属元素として第1群元素と第2群元素とを併用することで、接点部品または電池部品用材料の製造コストを低くすることができる。また、第1群元素の分散性も高められる。
【0031】
図1に、本発明の接点部品または電池部品用材料の一例の表層部を概念的に示す。ここでは、第2の金属元素として、PdとInとを併用した場合について説明する。
例えばステンレス鋼板10の最表面において、第1の金属元素である鉄の一部を、第2の金属元素であるPdおよびInで置換する場合、金属状態のPd粒子11が最表面に分散し、Pd粒子11の間に酸化物状態のIn粒子12が析出する。このような構造では、Pd粒子11がIn粒子12により安定化される。導電性が高く、化学的に安定であるPd粒子11が、ステンレス鋼板10の最表面に高分散状態で存在するため、低い表面抵抗値が長期間に亘って維持される。
【0032】
図2に、ステンレス鋼板20の表面にPdのめっき層21を形成した状態を概念的に示す。めっき法では、ステンレス鋼板の表面に均一なめっき層が形成される。第2の金属元素により均一なめっき層を形成するためには、比較的多量の第2の金属元素が必要となる。例えば厚さ0.1μmのPdめっき層を形成する場合、図1のようにPdを高分散させる場合の約40倍のPdが必要となり、コストが非常に高くなる。
【0033】
本発明の接点部品または電池部品用材料において、金属シートの最表面に析出させる第2の金属元素の量は、1〜50mg/m2が好ましく、5〜30mg/m2が更に好ましい。第2の金属元素の量がこれより多いと、コストが高くなり、これより少ないと、表面抵抗値を低下させる効果が小さくなる場合がある。
【0034】
第2の金属元素として第1群元素と第2群元素とを併用する場合、金属シートの単位面積あたりに析出させる第1群元素と第2群元素との重量比は、(第1群元素:第2群元素)=(1:1)〜(100:1)であることが好ましく、(第1群元素:第2群元素)=(3:1)〜(10:1)であることが更に好ましい。第1群元素に対し、第2群元素の量が多すぎると、表面抵抗値を低下させる効果が小さくなることがあり、第2群元素の量が少なすぎると、第1群元素を高分散状態で安定化させる効果が十分に得られない。
【0035】
本発明の接点部品または電池部品用材料の製造法において、金属シートの表層部を、第2の金属元素のイオンを含む水溶液(処理液)に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば浸漬またはスプレー(吹きつけ、噴霧)を適用可能である。これらの方法によれば、置換反応を進行させるべき金属シートの表層部が、複雑な形状を有する場合や、大面積である場合でも、均一に、処理液を付与することができる。よって、金属シートに均一な表面処理を施すことが可能となる。
【0036】
Cr含有鋼板の最表面には、通常、Cr酸化物層などが存在する。よって、金属シートがCr含有鋼板である場合、第1の金属元素を第2の金属元素で置換するためには、予め、最表面に存在するCr酸化物層を除去する必要がある。Cr酸化物層は、置換反応を進行させるべき金属シートの表層部に、例えば浸漬によって酸性溶液を接触させることにより、容易に除去できる。酸性溶液としては、例えばpHが0.1〜2.0の無機酸(塩酸、硫酸、硝酸など)の水溶液を用いることができる。
【0037】
処理液は、第2の金属元素のイオンとして、Pd、Pt、Ag、Au、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。処理液には、これらのイオンが単独で含まれていてもよく、複数種が含まれていてもよい。
【0038】
処理液は、水に、第2の金属元素を含む水溶性の金属塩を溶解して調製することができる。
第2の金属元素がPdである場合、水溶性の金属塩としては、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウムなどのPd塩を用いることができる。第2の金属元素がPtである場合、水溶性の金属塩としては、塩化白金、塩化白金酸カリウムなどのPt塩を用いることができる。第2の金属元素がAgである場合、水溶性の金属塩としては、硝酸銀、酢酸銀、シアン化銀などのAg塩を用いることができる。第2の金属元素がAuである場合、水溶性の金属塩としては、シアン化金、シアン化金カリウム、亜硫酸金、塩化金などのAu塩を用いることができる。第2の金属元素がInである場合、水溶性の金属塩としては、硝酸インジウム、硫酸インジウム、塩化インジウムなどのIn塩を用いることができる。第2の金属元素がCoである場合、水溶性の金属塩としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルトなどのCo塩を用いることができる。第2の金属元素がCuである場合、水溶性の金属塩としては、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅などのCu塩を用いることができる。
【0039】
置換反応においては、第1の金属元素との標準電極電位の差が大きい第2の金属元素ほど、析出速度が大きくなる傾向がある。よって、Pd、Pt、Ag、Auなどの貴金属(第1群元素)は、析出速度が非常に大きく、3次元的な構造を有する粗大な粒子状で析出する傾向がある。通常、接点部品や電池部品は、板状の材料にプレス加工などの成型加工を施して作製される。粗大な粒子状の貴金属は、成型加工により、剥離や脱落を生じる可能性がある。
【0040】
接点部品または電池部品用材料の表面抵抗値は、その表面に存在する第2の金属元素の量に依存する。成型加工により、表面に存在する第2の金属元素の量が減少すると、経時的に表面抵抗値が上昇する場合がある。よって、第2の金属元素が3次元的な構造を有する粗大な粒子を形成しないように、粒子の成長を抑制することが望ましい。
【0041】
粗大な粒子の成長を抑制するためには、第1の金属元素との標準電極電位の差が比較的大きい第1群元素と、第1の金属元素との標準電極電位の差が比較的小さい第2群元素とを併用することが有効となる。第1群元素と第2群元素とを共存させた処理液を用いることで、第1群元素からなる粗大な粒子の成長が抑制される。よって、接点部品または電池部品用材料の成型加工を行う際に、第2の金属元素が材料から剥離もしくは脱落するのを抑制することが可能となる。なお、第1群元素からなる粒子は、直径1〜200nmであることが好ましく、第2群元素からなる粒子は、直径1〜200nmであることが好ましい。特に、第1群元素であるPdと、第2群元素であるInとの組み合わせは、Pdの分散性が高くなりやすい点で好ましい。
【0042】
ステンレス鋼板の表層部には、第1の金属元素となるFeやNiが含まれている。冷延鋼板の表層部には、第1の金属元素となるFeが含まれている。ニッケルのめっき層を有する表面処理鋼板の表層部には、第1の金属元素となるNiが含まれている。Feとの標準電極電位の差が小さい第2の金属元素としては、In、Co、Moなどを例示することができる。Niとの標準電極電位の差が小さい第2の金属元素としては、Mo、Cu、Snなどを例示することができる。
【0043】
処理液に含まれる第2の金属元素のイオン濃度は、特に制限されないが、例えば0.001〜20g/Lが好ましい。ただし、第1群元素は、標準電極電位が非常に貴であり、析出速度が大きいため、処理液に含まれる第1群元素のイオン濃度は、あまり高くない方がよい。また、第1群元素は、高価であるため、その使用量は少ない方が望ましい。よって、処理液に含まれる第1群元素のイオン濃度は、0.001〜10g/Lが好ましく、0.01〜1g/Lが更に好ましい。一方、第2群元素は、第1の金属元素との標準電極電位の差が比較的小さく、析出速度が小さいため、処理液に含まれる第2群元素のイオン濃度は、第1群元素のイオン濃度よりも高いことが望ましい。特に限定されないが、第1群元素のイオン濃度(C1)に対する第2群元素のイオン濃度(C2)の比:(C2/C1)は、例えば5〜500であり、10〜100が好ましい。
【0044】
置換反応が進行するためには、第1の金属元素が、金属シートの表層部から処理液に溶出する必要がある。第1の金属元素の溶出を促進する観点から、処理液は酸性であることが好ましい。処理液のpHは、第1の金属元素の溶出が進行する範囲であればよいが、pH0.1〜7であることが特に好ましい。処理液に有機酸(酢酸など)または無機酸(塩酸、硫酸、硝酸など)を含ませることにより、処理液を酸性にすることができる。
【0045】
置換反応を連続的に実施しようとする場合、処理液中の第1の金属元素のイオン濃度(例えばFe2+イオン濃度)は徐々に増加する。Fe2+イオン濃度が増加した場合、Fe2+イオンがFe3+イオンに酸化されて、処理液中に共存する第2の金属元素のイオンを還元する可能性がある。よって、第2の金属元素のイオンが金属として析出し、処理液中の第2の金属元素のイオン濃度が急激に低下し、置換反応の進行が阻害される可能性がある。
【0046】
そこで、処理液には、第2の金属元素のイオンを補足する錯化剤を含ませることが望ましい。使用可能な錯化剤としては、特に限定されないが、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、ギ酸などの有機カルボン酸系錯化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、イミノジ酢酸、グルタミン酸などの窒素含有化合物系錯化剤などが挙げられる。処理液に含まれる錯化剤の濃度は、第2の金属元素のイオンのモル数に対して0.1〜10倍モルの濃度であることが好ましく、0.5〜5倍モルの濃度であることが特に好ましい。
【0047】
処理温度(金属シートの表層部と処理液とを接触させる際の処理液および金属シートの温度)は、特に限定されないが、25℃〜70℃が好ましい。ただし、処理液が酸を含む場合、処理温度を高温にし過ぎると、処理装置の腐食などが問題となる場合がある。また、金属シートとして耐食性の高いステンレス鋼板(例えばSUS444材)などを用いる場合、処理温度を低くし過ぎると、Feの溶解速度が小さくなり、置換反応に要する時間が長くなる。よって、処理温度は、30℃〜50℃が最も好ましい。
【0048】
本発明の電池部品用材料は、特にリチウム電池やアルカリ電池などの正極ケースの材料として好適である。本発明の電池部品用材料を、例えばアルカリ電池の正極ケースとして用いる場合、通常、正極ケース内面に均一に塗布する必要のあるカーボンペーストは不要となる。また、本発明の電池部品用材料を、リチウム電池の正極ケースの材料として用いる場合、リチウム一次電池とリチウム二次電池の両方に適用することができる。本発明の電池部品用材料は、特に、コイン型またはボタン型のリチウム一次電池の正極ケースとして有用である。
【0049】
コイン型またはボタン型のリチウム一次電池は、正極ケース、正極ケース内に収容された正極、負極ケース、負極ケース内に収容された負極、正極と負極との間に介在するセパレータ、ならびにリチウムイオン伝導性の非水電解質を具備する。ここで、正極ケースは、第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートからなり、金属シートは、ステンレス鋼板またはニッケルめっき層を有するステンレス鋼板からなり、前記表層部が、正極と接触しており、表層部の最表面において、第1の金属元素の少なくとも一部が、第2の金属元素で置換されている。第2の金属元素は、第1の金属元素よりも標準電極電位が貴であり、第2の金属元素は、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で前記最表面に析出している。
【0050】
リチウム一次電池には、二酸化マンガンを含む正極を具備するCR型電池、フッ化黒鉛を含む正極を具備するBR型電池などが含まれる。以下、リチウム一次電池の一例について説明する。
【0051】
リチウム一次電池の正極は、例えば二酸化マンガンまたはフッ化黒鉛を必須成分として含み、カーボンブラック、黒鉛などの導電材を任意成分として含む。二酸化マンガンには、特に限定されないが、λ型酸化マンガン、β型酸化マンガンなどを用いることができる。フッ化黒鉛は、例えば(CFxn(0.5<x<1)で表される。二酸化マンガンは、マンガン元素が部分的に他元素で置換されていることが望ましい。他元素としては、Mg、Al、Fe、Ca、Cr、Ti、V、Co、Ni、Cu、Znなどを用いることができる。理由は明らかではないが、マグネシウムを用いることが、マンガン溶解を抑制し、放電特性を向上させる上で最も効果的である。
【0052】
リチウム一次電池の負極には、リチウムおよびリチウム合金よりなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。リチウムやリチウム合金は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。好ましいリチウム合金としては、リチウム−アルミニウム合金(Li−Al合金)などが挙げられる。リチウム合金は、放電容量の確保と内部抵抗を安定化させる観点から、リチウム以外の金属元素の含有量が、0.2wt%〜15wt%であることが望ましい。
【0053】
リチウムイオン伝導性の非水電解質としては、非水溶媒およびこれに溶解するリチウム塩からなるものが用いられる。非水溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン類などを単独で、もしくは複数種を組み合わせて用いることができる。リチウム塩としては、LiClO4、LiNCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiBF4、LiPF6などを単独で、もしくは複数種を組み合わせて用いることができる。
【0054】
セパレータには、例えばポリオレフィン製の織不、不織不、微多孔膜などが用いられる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
【0055】
《実施例1》
(i)金属シート
第1の金属元素としてFeを処理液に溶出させることを前提として、金属シートには、ステンレス鋼板(SUS430)を用いた。ステンレス鋼板の陰極電解脱脂を行い、その後、ステンレス鋼板を30℃の塩酸水溶液(HCl濃度35重量%、pH1以下)に1分間浸漬する前処理を行った。なお、塩酸水溶液による浸漬を行った場合は「○」、行わなかった場合は「×」を、表1〜2の「塩酸浸漬」の欄に示す。
【0056】
(ii)処理液の調製
表1〜2に示す各種組成を有する処理液を調製した。
第2の金属元素を含む水溶性の金属塩には、硫酸インジウム、硝酸銀、塩化パラジウムおよび塩化金酸を、単独で、または、複数種を組み合わせて用いた。表1〜2に、処理液に含まれるこれらの金属塩の量を示す。例えば、硝酸インジウム「10g/L」という表示は、金属塩と無機酸と錯化剤とを含む処理液1L中に10gの硝酸インジウムが含まれていることを示す。
無機酸には、HCl濃度35重量%の塩酸(35%塩酸)およびH2SO4濃度62重量%の硫酸(62%硫酸)を、単独で、または、組み合わせて用いた。表1〜2に、処理液に含まれるこれらの無機酸の量を示す。例えば、35%塩酸「100ml/L」という表示は、水溶性の金属塩と無機酸と錯化剤とを含む処理液1L中に、35%塩酸100mlが含まれている(処理液の体積の1割は塩酸水溶液)ことを示す。
錯化剤には、クエン酸、グルコン酸およびリンゴ酸を、単独で、または、複数種を組み合わせて用いた。表1〜2に、処理液に含まれるこれらの錯化剤の量を示す。例えば、クエン酸「20g/L」という表示は、金属塩と無機酸と錯化剤とを含む処理液1L中に、クエン酸20gが含まれていることを示す。
【0057】
(iii)置換反応
処理液に、前処理後の金属シートを浸漬した。浸漬時間および処理温度を表1〜2に示す。この間に、ステンレス鋼板の表層部に存在するFeの少なくとも一部は、第2の金属元素であるIn、Ag、PdまたはAuに置換された。
【0058】
[評価]
(i)第2の金属元素の析出状態
置換反応後のステンレス鋼板の表面を光電子分光分析装置(XPS)により分析し、析出している第2の金属元素の状態を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0059】
(ii)プレス加工後の第2の金属元素の残存率
置換反応後のステンレス鋼板を直径24mm、高さ4mmの有底筒状にプレス加工して、リチウム一次電池の正極ケースを作製した。得られた正極ケースの内面をXPSで分析し、プレス加工前に対するプレス加工後の第2の金属元素の残存率を百分率で求めた。結果を表1〜2に示す。
【0060】
(iii)初期接触抵抗値
プレス加工直後の正極ケースの内面の接触抵抗値を、以下の要領で測定した。
二酸化マンガン100重量部に対し、導電材であるケッチェンブラック5重量部と、結着剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量部とを添加し、十分に混合して正極合剤を得た。この正極合剤を、直径20mm、厚み3.0mmのディスク状に成形した後、250℃で乾燥し、正極とした。得られた正極を、正極ケースの内面中央に配置し、正極上面の中央に、表面に金メッキが施された円柱形ステンレス鋼材(直径10mm、高さ25mm)を配置した。この状態で、正極ケースと円柱形ステンレス鋼材との間の抵抗値を測定し、接触抵抗値とした。結果を表1〜2に示す。なお、前処理後、置換反応を行う前の金属シートの接触抵抗値は、30〜40Ωであった。
【0061】
(iv)恒温恒湿試験
プレス加工直後の正極ケースを、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽中に放置し、20日後に、正極ケースの内面の接触抵抗値を測定した。接触抵抗値の上昇が見られた場合は「上昇」、上昇がほとんど見られなかった場合は「一定」を、表1〜2の「恒温恒湿試験」の欄に示す。なお、前処理後、置換反応を行う前の金属シートの恒温恒湿試験も行ったところ、接触抵抗値は大きく上昇し、上昇幅はおよそ140Ωであった。
【0062】
(v)総合評価
初期接触抵抗値が6Ω以上であった場合、または、恒温恒湿試験における接触抵抗値の上昇が認められた場合は「×」、それ以外の場合は「○」を、表1〜2に表示した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
《実施例2》
実施例1−8で作製した正極ケースを用い、図3に示す構造を有するコイン型リチウム一次電池を作製した。
(i)正極の作製
初期接触抵抗値を測定するときに作製したのと同様の正極を作製した。すなわち、二酸化マンガン100重量部に対し、導電材であるケッチェンブラック5重量部と、結着剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量部とを添加し、十分に混合して正極合剤を得た。この正極合剤を、直径20mm、厚み3.0mmのディスク状に成形した後、250℃で乾燥し、正極とした。
【0066】
(ii)負極の作製
厚み1.0mmの金属リチウムを直径20mmのディスク状に打抜き、これを負極として用いた。
【0067】
(iii)非水電解質の調製
プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとの体積比6:4の混合溶媒に、過塩素酸リチウムを1モル/Lの濃度で溶解し、非水電解質とした。
【0068】
(iv)リチウム一次電池の作製
図3に示すような直径24mm、厚み5.0mmのコイン型のリチウム一次電池(CR2450)を作製し、電池Aとした。電池Aは、以下の要領で組み立てた。
正極32を、正極ケース(実施例1−8の材料をプレス加工したもの)31の内面中央に載置した。正極32の上に、ポリプロピレン製の不織布からなるセパレータ33を被せた。次に、所定量の非水電解質(図示せず)を、セパレータ33の上から、正極ケース31内に注液した。
【0069】
負極(金属リチウム)34を負極ケース(実施例1−8の金属シートと同じステンレス鋼板をプレス加工したもの)36の内面に圧着した。負極ケース36の周縁に、ポリプロピレン樹脂を環状に射出成形したガスケット35を配した。ガスケット35と負極ケース36の周縁との界面には、アスファルトを主成分とする封止剤を介在させた。
【0070】
正極ケース31の開口に、負極ケース36と一体化したガスケット35を挿入し、開口を封口した。ガスケット35と正極ケース31の内周との界面には、アスファルトを主成分とする封止剤を介在させた。その後、正極ケース31の開口上端部を内方に屈曲させてガスケット35にかしめ、電池Aを完成させた。
《比較例1》
表面に処理を施していないステンレス鋼板をプレス加工し、正極ケースを作製した。
正極ケースの内面中央の直径17mmの円形領域に、導電性カーボンペーストを厚み約30μmで塗布した。導電性カーボンペーストは、平均粒径10μmの黒鉛粉末30重量部と、イオン交換水70重量部とを混合して得たものである。その後、150℃の熱風で、正極ケースを8時間以上乾燥させた。こうして得られた導電性カーボン層を有する正極ケースを用いたこと以外、実施例2の電池Aと同様にして、比較例1の電池Bを作製した。
【0071】
[評価]
(i)60℃電池特性
製造直後の初期の電池AおよびBを、温度60℃、湿度10%の恒温恒湿槽中で保存し、〈a〉保存期間と開路電圧との関係、〈b〉保存期間と内部電圧との関係、および、〈c〉保存期間と閉路電圧との関係を調べた。結果を図4〜6に示す。
【0072】
(ii)60℃−湿度90%電池特性
製造直後の初期の電池AおよびBを、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽中で保存し、〈a〉保存期間と開路電圧との関係、〈b〉保存期間と内部電圧との関係、および、〈c〉保存期間と閉路電圧との関係を調べた。結果を図7〜9に示す。
【0073】
図4および7が示すように、開路電圧に関しては、電池AおよびBともに、ほぼ同じ電圧で推移した。一方、内部抵抗値に関しては、図5および8が示すように、保存条件および保存期間にかかわらず、電池Aの方が常に電池Bよりも低い値で推移した。また、閉路電圧は、電池Aの方が、常に電池Bよりも高い電圧で推移した。以上の結果は、正極ケースに導電性カーボンを塗布した場合よりも、正極ケースの表層部のFeをPdとInで置換した場合の方が、正極と正極ケースとの接触抵抗値が低くなることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、様々な接点部品および電池部品用材料に適用可能であるが、特にリチウム一次電池の正極ケースに適用するのに好適である。本発明のリチウム一次電池は、例えば高品質のタイヤ・プレッシャ・モニタリング(マネジメント)・システム(TPMS)などに適用することができるが、用途は特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の接点部品または電池部品用材料の一例の表層部を概念的に示す図である。
【図2】に、ステンレス鋼板20の表面にPdのめっき層21を形成した状態を概念的に示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るコイン型のリチウム一次電池の縦断面図である。
【図4】リチウム一次電池(電池AおよびB)を、温度60℃、湿度10%の恒温恒湿槽中で保存した際の保存期間と開路電圧との関係を示す図である。
【図5】リチウム一次電池(電池AおよびB)を、温度60℃、湿度10%の恒温恒湿槽中で保存した際の保存期間と内部電圧との関係を示す図である。
【図6】リチウム一次電池(電池AおよびB)を、温度60℃、湿度10%の恒温恒湿槽中で保存した際の保存期間と閉路電圧との関係を示す図である。
【図7】リチウム一次電池(電池AおよびB)を、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽中で保存した際の保存期間と開路電圧との関係を示す図である。
【図8】リチウム一次電池(電池AおよびB)を、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽中で保存した際の保存期間と内部電圧との関係を示す図である。
【図9】リチウム一次電池(電池AおよびB)を、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽中で保存した際の保存期間と閉路電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10、20 ステンレス鋼板
11 Pd粒子
12 In粒子
21 Pdのめっき層
31 正極ケース
32 正極
33 セパレータ
34 負極
35 ガスケット
36 負極ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートからなり、前記金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板を含み、
前記表層部の最表面において、前記第1の金属元素の少なくとも一部が、前記第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である第2の金属元素で置換されて、前記第2の金属元素が、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で前記最表面に析出している、接点部品または電池部品用材料。
【請求項2】
前記Cr含有鋼板が、ステンレス鋼板からなり、前記第1の金属元素が、鉄である、請求項1記載の接点部品または電池部品用材料。
【請求項3】
前記表面処理鋼板が、めっき層を有するステンレス鋼板またはめっき層を有する冷延鋼板からなり、前記めっき層が、前記第1の金属元素を含み、前記第1の金属元素が、Ni、SnおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の接点部品または電池部品用材料。
【請求項4】
前記第2の金属元素が、Pd、Pt、Ag、Au、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接点部品または電池部品用材料。
【請求項5】
前記第2の金属元素が、Pd、Pt、AgおよびAuよりなる群から選択される少なくとも1種の第1群元素と、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の第2群元素とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接点部品または電池部品用材料。
【請求項6】
前記第1群元素を含む粒子が、前記最表面に分散しており、前記第2群元素が、前記粒子間に析出している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接点部品または電池部品用材料。
【請求項7】
正極ケース、前記正極ケース内に収容された正極、負極ケース、前記負極ケース内に収容された負極、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータ、ならびにリチウムイオン伝導性の非水電解質を具備し、
前記正極ケースが、第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートからなり、前記金属シートは、ステンレス鋼板またはニッケルめっき層を有するステンレス鋼板からなり、前記表層部が、前記正極と接触しており、
前記表層部の最表面において、前記第1の金属元素の少なくとも一部が、前記第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である第2の金属元素で置換されて、前記第2の金属元素が、粒子状の金属、酸化物または水酸化物の状態で前記最表面に析出している、リチウム電池。
【請求項8】
第1の金属元素を含む表層部を有する金属シートの前記表層部を、第2の金属元素のイオンを含む水溶液に接触させることにより、前記表層部に存在する前記第1の金属元素の少なくとも一部を、前記第2の金属元素で置換する工程を含み、
前記金属シートは、Cr含有鋼板または表面処理鋼板からなり、前記第2の金属元素は、前記第1の金属元素よりも標準電極電位が貴である、接点部品または電池部品用材料の製造法。
【請求項9】
前記表層部を、第2の金属元素のイオンを含む水溶液に接触させる前に、前記表層部に酸性溶液を接触させる、請求項8記載の接点部品または電池部品用材料の製造法。
【請求項10】
前記第2の金属元素が、Pd、Pt、Ag、Au、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8または9記載の接点部品または電池部品用材料の製造法。
【請求項11】
前記第2の金属元素が、Pd、Pt、AgおよびAuよりなる群から選択される少なくとも1種の第1群元素と、In、CoおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の第2群元素とを含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の接点部品または電池部品用材料の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−335120(P2007−335120A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162750(P2006−162750)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(390025689)片山特殊工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】