説明

接着剤、および、薄板の平板への接着方法

【課題】接着剤の体積収縮による、チップ本体の曲げ変形を抑制する。
【解決手段】接着剤は、硬化されることによって接着力が発生する主剤と、主剤の硬化を促進する硬化剤(以上、樹脂混合物M)と、フィラーFとを有している。フィラーFは、最大粒径0.8μm以下の粒状体から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄板の平板への接着に用いる接着剤、および薄板の平板への接着方法に関し、特に、非接触ICカードの製造ステップにおいて、チップ本体を補強板に接着する際に用いられる接着剤および接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードは、鉄道の出改札などの用途を中心に様々な分野で利用され、今後も多くの分野への適用が期待されている。非接触ICカードは、通信用アンテナおよび半導体チップ(ICチップ)を所定のシートで挟み込んで構成されている。ICチップは、シリコン等の基板上に回路を構成する積層膜が成膜されたチップ本体が、通常ステンレス鋼でできた補強板に支持されて構成されている。補強板はチップ本体が過度の変形を受けないようにチップ本体を保護するとともに、チップ本体からの発熱を吸収するヒートシンクとしての機能を有している。
【0003】
ICチップの製造方法としては種々のものが提案されているが、その一つとして、まず、チップ本体が多数形成されたウエハの裏面を薄化し、次に、薄化されたウエハを切断して個々のチップ本体に分離し、その後分離されたチップ本体を補強板に接着してICチップを製造する方法がある。分離されたチップ本体を補強板に接着するには、まず、複数の補強板を、接着剤が塗布される面を上にして、基台の上に固定する。次に、接着剤が塗布される面に接着剤を塗布し、接着剤が塗布された面にチップ本体を密着させる。接着剤としては、エポキシ樹脂等の高温硬化性樹脂が用いられることが多い。高温硬化性樹脂を用いた場合、この状態で所定時間、所定温度で加熱(例えばエポキシ樹脂であれば、120℃で2時間加熱)することによって、接着剤が硬化し、ICチップは補強板に接着される。
【0004】
接着剤には、エポキシ樹脂等の主剤および硬化反応を促進する硬化剤のほかに、硬化後の接着剤に熱伝導性や電導性を与えるために、フィラーが含まれることがある。フィラーとしては、5μm以下の球状フィラーまたは厚さ5μm以下の鱗片状フィラー(特許文献1参照。)や、最大粒径100μm以下の鱗片状グラファイト粉末と、表面がカーボンにより被覆された最大粒径20μm以下の球状銅粉末とを有するフィラー(特許文献2参照。)や、最大粒径1〜20μmのシリカ粉末と、平均粒子径2〜50nmの疎水性超微細シリカ粉末とを有するフィラー(特許文献3参照。)や、平均粒径1〜20μmで、最大粒径50μm以下のシリカ粉末(特許文献4参照。)などが開示されている。
【特許文献1】特開平6−136341号公報
【特許文献2】特開2000−3987号公報
【特許文献3】特開平5−59158号公報
【特許文献4】特開平6−25512号公報
【特許文献5】特開平9−102567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては以下の問題があった。すなわち、ICチップの接着剤として多用される高温硬化性の樹脂は、硬化していくに従って、徐々に収縮していく性質、すなわち、体積収縮を生じる性質を有している。図5には従来技術に従ってチップ本体を補強板に接着するときの、チップ本体と補強板チップ本体と接着剤との積層体の断面図を示す。
【0006】
同図(a)に示すように、平坦な補強板Hの塗布面H1に接着剤Sを塗布し、接着剤Sの上面S1にチップ本体Cを固定すると、固定した直後は同図(a)に示すように、補強板H、接着剤S、およびチップ本体Cは平行な積層体を形成し、面外方向への歪は生じない。しかし、接着剤Sの重合反応が始まり硬化が進むと、接着剤Sは体積収縮を始める。これは、接着剤Sの塗布面が縮小しようとすることを意味する。また、接着剤Sの接着力は時間とともに増加していくため、接着剤Sと、補強板Hおよびチップ本体Cとは互いに拘束されていく。
【0007】
一般にチップ本体Cは表面積に比較して厚みが小さいため、みかけの剛性が小さくなり、変形を受けやすいため、チップ本体Cの、接着剤Sの上面S1と面している接着面C1は、体積(面積)の収縮した接着剤Sにひきづられるようにして、同図(b)に示すように、矢印Aに示す力を受け、この結果、チップ本体Cは内側に寄せられるように変形する。一方、補強板Hの塗布面H1も、接着剤Sにひきづられるようにして、矢印Bに示す力を受ける。しかし、補強板Hはチップ本体Cよりも剛性が高いので、チップ本体Cに比べると変形を受けにくい。この結果、チップ本体Cの接着面C1は、補強板Hの塗布面H1に比べ、より縮小しようとし、チップ本体Cと補強板Hと接着剤Sとの積層体は、チップ本体Cの曲率が補強板Hの曲率より小さくなるように、換言すればチップ本体Cが凹面に、補強板Hの接着剤Sが塗布されていない面が凸面になるような形状に曲げられる。なお、このような歪は積層体の平面内の2方向に生じるため、チップ本体Cは平面的には外周部から中心部に向かって圧縮される応力状態となり、チップ本体Cの中央部が凹部となるような形状に変形される。
【0008】
このようにしてチップ本体に生じた歪は、不要な内部応力をチップ本体に生じさせ、クラックを発生させる原因となり、また、すでに存在するクラックを成長させる原因となる。特に、ICチップが非接触ICカードに組み込まれる場合には、ICチップは利用の際に頻繁に曲げ変形を受けるため、クラックがさらに進展し、最悪の場合ICチップが割れてしまうなど、ICチップ自体の信頼性を大きく低下させることとなる。
【0009】
一般に、接着剤には接着性が要求されるが、要求される接着力は用途に応じて変わるものである。ICチップを非接触ICカードに用いる場合、チップ本体は非常に薄く、補強板との間に要求される接着力はそれほど大きくないこと、ICチップは保護膜に覆われ、固定され、最終的に外装シートでも保護されることから、接着性自体の要求はそれほど厳しいものではない。一方、補強板にヒートシンクとしての機能を発揮させるためには、補強板とチップ本体との間に介在する接着剤には、一定の熱伝導性が必要となる。さらに、非接触ICカードとして利用する場合、接着剤の体積収縮によるチップ本体の曲げ変形を抑制することが極めて重要である。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、熱伝導性を確保しながら、ICチップを補強板に接着する際に、接着剤の体積収縮によるチップ本体の曲げ変形を抑制することのできる接着剤、および接着剤の塗布方法を提供することを目的とする。また本発明は、より一般的には、薄板の平板への接着に用いる接着剤、および薄板の平板への接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の接着剤は、硬化されることによって接着力が発生する主剤と、主剤の硬化を促進する硬化剤と、フィラーとを有している。そして、上記の課題を解決するために、フィラーは、最大粒径0.8μm以下の粒状体から構成されていることを特徴としている。
【0012】
このような接着剤においては、実質的にすべてのフィラーは最大粒径0.8μm以下まで微細化されており、フィラーは接着剤中に満遍なく分布することができる。フィラーは主剤が硬化して体積収縮する場合に、体積収縮を抑制する抵抗成分として作用するので、接着剤の体積収縮を効果的に抑えることができる。この結果、接着剤によって接着される2つの被接着物に、接着剤の体積収縮に起因する面外方向の曲げ変形が発生することを抑制することができる。
【0013】
主剤は、高温硬化性樹脂を用いることができ、代表的にはエポキシ樹脂である。
【0014】
フィラーは、シリカ、銀、カーボン、銅のいずれか、またはシリカ、銀、カーボン、銅のいずれかを含む混合物から作ることができる。
【0015】
本発明の薄板の平板への接着方法は、平板上に、上記の接着剤を塗布する塗布ステップと、塗布された接着剤の上面に薄板を固定するステップと、接着剤を硬化させて、平板と薄板を接着するステップとを有している。
【0016】
このとき、塗布ステップの前に、平板の、薄板が接着される部分に、少なくとも1つの凹部を設けるステップを有し、塗布ステップにおいて、凹部にも接着剤を充填するようにしてもよい。
【0017】
本発明のICチップの製造方法は、チップ本体の一面が補強板に接着されて構成されるICチップの製造方法であって、チップ本体を製造するステップと、補強板を製造するステップと、補強板を、補強板の接着面を上面にして固定するステップと、チップ本体を薄板として、補強板を平板として、上記の接着方法を用いて、チップ本体を補強板に接着するステップとを有している。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の接着剤等は、熱伝導性を確保しながら、ICチップを補強板に接着する際に、接着剤の体積収縮によるチップ本体の曲げ変形を抑制することができ、より一般的には、薄板を平板に接着する際に、同様の効果を奏することができ、ICチップや接着された薄板の信頼性向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の接着剤について説明する。接着剤は、高温で硬化されることによって接着力が発生する主剤であるエポキシ樹脂と、主剤の硬化を促進する硬化剤と、接着剤の熱伝導性を高めるフィラーとを有している。
【0020】
樹脂は1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に制限はなく、一般的なものを用いることができる。一例として、ビスフェノールF,フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。エポキシ樹脂は常温で液状のものがよいが、液状でなくても溶剤によって液状となるものであればかまわない。
【0021】
硬化剤は、エポキシ樹脂との間で速やかに硬化反応が生じ、硬化後の長期安定性に優れる化合物であれば、特に制限はなく、一般的なものを用いることができる。一例として、潜在性アミン化合物、フェノールノボラック化合物等を挙げることができる。
【0022】
フィラーは、補強板のヒートシンクとしての機能に鑑み、熱伝導性が高いものが望ましい。材料としてはシリカが特に好ましいが、銀、カーボン、または銅からなるフィラーを用いることもでき、シリカ、銀、カーボン、または銅の少なくともいずれかが混合されたフィラーでもよい。
【0023】
フィラーの形状は該当する素材を微粉化したもので、略球形、楕円形、鱗片、円柱形、角柱形等の形状を含んでいてもよい。大きさは最大長径0.8μm程度以下のものが好ましく、特に0.6μm程度以下であることが好ましい。ここで、最大長径とは、上記の形状の縦、横、高さの最も長い辺の長さをいい、本明細書では最大長径を粒径という場合もある。これらの粒径を越える大きさのフィラーは存在していないことが望ましく、実質的にすべてのフィラーが粒径0.8μm程度以下に微細化されていることが重要である。フィラーの量に関しては、特に制約はないが、一例として10〜40重量比程度であればよい。この値は粒径によって変えてもよいが、後述するように、同程度の重量比であれば、粒径が小さくなるほど、チップ本体の曲げ歪を抑制する効果は高まる。
【0024】
次に、フィラーを微細化することによって、被接着物に生じる曲げ変形が抑制されるメカニズムについて説明する。図1(a)は、接着剤中のフィラーの分布形態を示す模式図である。接着剤Sは、主剤と硬化剤とからなる樹脂混合物Mと、樹脂混合物Mの中に分布するフィラーFとからなっている。図1(b)は比較のために、従来技術の比較的大きなフィラーが混入された接着剤の、フィラーの分布形態を示す模式図である。図中フィラーFFの粒径は、本発明のフィラーFよりも1桁以上大きなものである。また、フィラーF,FFの重量比は両図で同等であるとする。
【0025】
樹脂混合物Mが硬化によって収縮しようとすると、樹脂混合物Mは体積収縮の生じないフィラーFに抵抗して収縮しなければならない。すなわち、樹脂混合物MはフィラーFの表面との間で抵抗力(収縮の方向とフィラーFの形状によるが、主としてせん断抵抗であると考えられる。)を受け、このせん断抵抗力は樹脂混合物Mの収縮を妨げるように作用する。フィラーが図1(a)に示したように微細化されていると、樹脂混合物Mと接するフィラーの全表面積が、図1(b)に示すフィラーFFよりも増加する。この結果、樹脂混合物Mは、フィラーFが微細化されるほど、収縮時に大きな抵抗を受け、収縮が抑制されるものと考えられる。換言すれば、フィラーFが微細化されていないと、大きなフィラーが接着剤に部分的に点在するような状態となり、フィラーが存在しない広い領域では、樹脂混合物Mは何の抵抗も受けずに収縮するが、微細化されていると、細かいフィラーFが接着剤中のあらゆる領域に分布し、全体的な収縮抑制効果が生じやすくなると考えられる。
【0026】
また、フィラーFの重量比が増えるほど、樹脂混合物Mの収縮抑制効果は高まる。これは、フィラーFが増えることにより、上記の効果が高まるほか、フィラーFが増えた分だけ樹脂混合物Mの重量比が減ることも寄与している。あまりフィラーFの重量比を大きくすると、接着力が低下する原因となるが、上述の非接触式ICカードのように、大きな接着力が要求されない用途では、このことは大きな問題とはならない。
【0027】
次に、フィラーをどの程度微細化すればよいのかを定量的に評価するため、平面積5×6mm、厚さ0.2mmのステンレス製の補強板と、平面積4×5mm、厚さ0.05mmのチップ本体とを非接着物として、これらをエポキシ樹脂の主剤、硬化剤およびフィラーからなる接着剤で接着した。主剤の成分は、Cas No.124358-36-7を主とした3種類のアミノフェノール系樹脂、硬化剤の成分は変性脂肪族ポリアミン系樹脂とした(CasはChemical Abstracts Service(アメリカ化学会発行)の略称。)。フィラーはシリカとし、塗布厚さは、10μmとした。接着剤の粘度は43Pa・s、弾性率は8.5GPaであった。フィラーの粒径を最大粒径0.2mmから段階的に3mmまで増加させ(図3(a)参照)、接着剤が加熱によって硬化した後のICチップの厚さ方向の変形量を計測した。硬化条件は、120℃で2時間の加熱とした。変形量は、図2に示すように、チップ本体の上面の表面高さをチップ本体の端部から中心に向けて(白抜き矢印参照)表面粗さ計で測定し、その差分として求めた。
【0028】
図3に測定結果を示す。同図(a)には、フィラーの粒径と測定した変形量との関係を表で示し、同図(b)には、グラフで示す。フィラーの最大粒径が0.6μm以下であると変形は全く生じなかった。また、最大粒径が0.8μmでも変形は極く小さいが、0.8μmを越えると、変形量は急激に増大する。これより、最大粒径を0.8μm以下、より好ましくは0.6μm以下とするのがよい。
【0029】
次に、以上説明した接着剤を用いた、チップ本体の補強板への接着方法について説明する。
【0030】
まず、シリコン基板にチップ本体Cが多数形成されたウエハ(図示せず)を製作し、次に、ウエハのチップ本体Cが形成された面の裏面を研磨する。ウエハは一例では0.65mm程度の厚さを有しているが、例えば機械研磨で厚さをある程度落として、最終的にケミカルエッチングによって仕上げ、0.1mm以下まで、例えば75μm以下まで薄化する。次に、ウエハに加工用テープ(図示せず)を貼り付け、ウエハを安定化させた上で、ウエハを砥石(図示せず)で切断し、多数のチップ本体Cを形成する。
【0031】
次に、ステンレス製の補強板Hを多数作成し、両面接着テープ等によって基台(図示せず)に保持させ、補強板Hに接着剤Sを塗布する。接着剤の塗布厚さは一例では50μm以下である。次に、チップ本体Cを接着剤Sに密着させる。具体的には、チップ本体Cの素子の形成されている面の反対面(ウエハの基板側の面)を接着剤Sの塗布面に密着させる。このときの状態は図5(a)に示したものと同様である。次に、全体を加熱して接着剤Sを硬化させる。硬化に要する時間は、エポキシ樹脂の場合、120℃で2時間程度である。このとき、本発明の接着剤の効果によって、補強板H、接着剤S、およびチップ本体Cは面外方向に変形することはなく、ほぼ図5(a)に示した状態を維持しながら硬化する。その後、補強板Hを基台から切り離す。以上のステップで、チップ本体Cに補強板Hが取り付けられたICチップが完成する。
【0032】
このとき、図4(a)に示すように、補強板Hの塗布面H1に凹部1を設け、図4(b)に示すように、凹部1にも接着剤Sを流入させるようにしてもよい。凹部1を設けることによって、もし接着剤Sに、上述した適正な粒径よりも大きなフィラーが混入した場合でも、粒径の大きなフィラーは、接着剤Sを塗布面H1に引き伸ばすとき、凹部1に引っかかり、重力によって凹部1に沈降するするので、凹部1以外の、塗布面H1とチップ本体Cの接着面C1とが対向する平面部2にある接着剤Sには、適切な粒径のフィラーだけを含ませることができる。
【0033】
その後、ICチップを洗浄し、外観検査をおこなう。さらに、完成したICチップを通信用アンテナとともにアンテナ基板上に搭載し、アンテナ基板上に、ICチップおよび通信用アンテナを被覆する保護膜を形成し、保護膜とアンテナ基板とを外装シートで覆って、非接触ICカードが完成する。
【0034】
以上説明したように、チップ本体を補強板に接着してICチップを形成する際に、最大粒径が0.8μm以下のフィラーを混入した接着剤を用いるので、接着剤の樹脂混合物は微細化されたフィラーによって体積収縮が抑制される。その結果、チップ本体が大きな曲げ変形を受けることがなくなり、曲げ変形に起因するクラックの発生を防止することができ、ICチップおよびICチップを内蔵した非接触式ICカードの信頼性を向上させることができる。
【0035】
また、接着剤のフィラーとして、シリカを用いているので、熱伝導特性に優れ、チップ本体の発生熱をヒートシンクである補強板に有効に伝えることができる。さらに、シリカ粉末は安価に調達することが可能であるので、経済性への影響も小さい。
【0036】
なお、本発明の接着剤および接着方法は、以上説明した実施形態に限定されない。例えば、接着剤は、硬化時に体積収縮を起こす接着剤であればよく、例えば、エポキシ樹脂の代わりに紫外線硬化樹脂を用いてもよい。また、フィラーとして本実施形態のように熱伝導性が重視されず、導電特性が重視される場合(例えば半導体素子と基板とを電気的導通を取りながら接合する場合)には、銀や銅等の導電性フィラーを用いればよい。さらに熱伝導性フィラーと導電性フィラーの両者の特性を具備したい場合には、銀を用いることができる。
【0037】
また、本実施形態は、ウエハをチップ本体に切断後、補強板に接着する手順を例に説明したが、ウエハを補強板に接着後、ウエハと補強板の一体物をICチップに切断する手順も考えられる。この場合も、従来技術を適用すると、接着剤が体積収縮して、接着されたウエハに歪が発生することが考えられる。本発明を適用すれば、ウエハに生じる曲げ変形を抑制することが可能となる。
【0038】
さらに、本発明は、曲げ変形を防止することが特に望ましい薄板を平板に接着する、より一般的な使用にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明および従来技術の接着剤中の、フィラーの分布形態を示す模式図である。
【図2】ICチップの変形量の測定方法を示す概念図である。
【図3】フィラーの粒径と測定したICチップの変形量との関係を示す図表である。
【図4】補強板の塗布面形状の変形例を示す概略図である。
【図5】従来技術を用いてチップ本体と補強板チップ本体を接着するときの、チップ本体、接着剤、および補強板チップ本体の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
C チップ本体
C1 接着面
F フィラー
H 補強板
H1 塗布面
M 樹脂混合物
S 接着剤
S1 上面
1 凹部
2 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化されることによって接着力が発生する主剤と、該主剤の硬化を促進する硬化剤と、フィラーとを有する接着剤において、
前記フィラーは、最大粒径0.8μm以下の粒状体から構成されていることを特徴とする接着剤。
【請求項2】
前記主剤は、高温硬化性樹脂である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記主剤は、エポキシ樹脂である、請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記フィラーは、シリカ、銀、カーボン、銅のいずれか、またはシリカ、銀、カーボン、銅のいずれかを含む混合物からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
平板上に、請求項1から4のいずれか1項に記載の接着剤を塗布する塗布ステップと、
塗布された前記接着剤の上面に薄板を固定するステップと、
前記接着剤を硬化させて、前記平板と前記薄板を接着するステップとを有する、
薄板の平板への接着方法。
【請求項6】
前記塗布ステップの前に、前記平板の、前記薄板が接着される部分に、少なくとも1つの凹部を設けるステップを有し、
前記塗布ステップにおいて、前記凹部にも前記接着剤を充填する、
請求項5に記載の接着方法。
【請求項7】
チップ本体の一面が補強板に接着されて構成されるICチップの製造方法であって、
前記チップ本体を製造するステップと、
前記補強板を製造するステップと、
前記補強板を、該補強板の接着面を上面にして固定するステップと、
前記チップ本体を前記薄板として、前記補強板を前記平板として、請求項5または6に記載の接着方法を用いて、前記チップ本体を前記補強板に接着するステップとを有する、
ICチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−169288(P2006−169288A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359812(P2004−359812)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】