説明

接着剤フィルム

【課題】ガラス基板と半導体素子との接続に用いられたときに、優れた接続信頼性を維持しつつガラス基板の変形が抑制され、しかもフィルム形成性にも優れる接着剤フィルムを提供すること。
【解決手段】硬化性樹脂組成物と、平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子とを混合して得ることのできる接着剤から形成された接着剤フィルムであって、
2種以上の絶縁性有機粒子のうち、平均粒径が最も大きいものの平均粒径が2〜5μmで、平均粒径が最も小さいものの平均粒径が0.05〜0.5μmであり、
当該接着剤フィルムに含まれる2種以上の絶縁性有機粒子の合計量が、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として10〜50質量%である、接着剤フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板、中でも液晶などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に半導体素子を接続するために、加熱により硬化する熱硬化性の接着剤フィルムが用いられている。
【0003】
熱硬化性の接着剤フィルムとしては、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含有するものが広く用いられており、エポキシ樹脂が加熱により硬化すると機械的強度の高い重合体となるので、半導体素子と液晶ディスプレイとが該接着剤フィルムによって強固に接続され、信頼性の高い電気装置が得られる。近年、エポキシ樹脂と比べて、より低温で硬化できるアクリレートを含有する接着剤フィルムも用いられるようになった。
【0004】
ところで、接着剤フィルムを加熱する際に、熱伝導により加熱されて熱膨張するために半導体素子が伸張することがあり、加熱終了後に全体が冷却されると伸張した半導体素子が収縮し、その収縮に伴いFPDを構成するガラス基板に反り等の変形が生じることがある。ガラス基板に変形が生じると、変形した部分に位置するディスプレイの表示画像に乱れが生じてしまう。
【0005】
これまで、反り等の変形を抑制するためにさまざまな手法が知られている。たとえば、加熱加圧ツールと半導体素子との間にフィルムを介する接続方法(特許文献1)、加熱加圧工程後に加熱する方法(特許文献2)が報告されている。
【0006】
また、接着剤フィルムにおいて応力緩和できる材料を用いる手法も最近知られるようになった(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−29124号公報
【特許文献2】特開2004−200230号公報
【特許文献3】特開2004−277573号公報
【特許文献4】特許第3477367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、応力緩和できる材料の使用によりガラス基板の変形は抑制され得るものの、接続信頼性が低下するという問題があった。また、接着剤フィルムを形成する際のフィルム形成性が低下して、接着剤フィルムを安定して得ることが困難になる場合があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ガラス基板と半導体素子との接続に用いられたときに、優れた接続信頼性を維持しつつガラス基板の変形が抑制され、しかもフィルム形成性にも優れる接着剤フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ガラス基板の変形が生じるのは実装後の接着剤フィルムの内部応力が高すぎること、また、接続信頼性が低下するのは実装後の接着剤フィルム中で弾性率が低すぎるかまたは樹脂の不均一分布により弾性率が低すぎる部分が発生することに起因していることを見出した。係る知見に基づいて更に検討し、接着剤フィルムに平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子の組み合わせを添加することで、高接続信頼性を保ちつつも、ガラス基板の変形を低下できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、硬化性樹脂組成物と、平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子とを混合して得ることのできる接着剤から形成された接着剤フィルムであって、2種以上の絶縁性有機粒子のうち、平均粒径が最も大きいものの平均粒径が2〜5μmで、平均粒径が最も小さいものの平均粒径が0.05〜0.5μmであり、当該接着剤フィルムに含まれる2種以上の絶縁性有機粒子の合計量が、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として10〜50質量%である、接着剤フィルムに関する。平均粒径が最も大きい絶縁性有機粒子の平均粒径と平均粒径が最も小さい絶縁性有機粒子の平均粒径との差が1.5〜5.5μmであってもよい。平均粒径が最も大きい絶縁性有機粒子の平均粒径の、平均粒径が最も小さい絶縁性有機粒子の平均粒径に対する比が3〜100で、平均粒径が最も大きい絶縁性有機粒子の平均粒径が6μm以下であってもよい。
【0012】
上記本発明に係る接着剤フィルムは、ガラス基板と半導体素子との接続に用いられたときに、優れた接続信頼性を維持しつつガラス基板の変形が抑制され、しかもフィルム形成性にも優れる。
【0013】
上記の2種以上の絶縁性有機粒子のうち少なくとも1種はシリコーンゴム粒子であることが好ましい。これにより、ガラス基板の反りがより効果的に抑制される。
【0014】
硬化性樹脂組成物は、フィルム形成材と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル発生剤と、を含んでいてもよい。係る硬化性樹脂組成物は即硬化性を有することから、低温かつ短時間で接続できる接着剤フィルムが得られる。
【0015】
硬化性樹脂組成物は、フィルム形成材と、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、を含んでいてもよい。これにより、高耐熱性及び高接着性を有する接着剤フィルムが得られる。
【0016】
硬化性樹脂組成物は、導電性粒子を更に含むことが好ましい。これにより、より優れた電気接続性が得られる。
【0017】
当該接着剤フィルムに含まれる2種以上の絶縁性有機粒子及び導電性粒子の合計量は、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として80質量%以下であることが好ましい。粒子量を制御することにより、ガラス基板の変形(反り量)及び電気接続性がともに更に優れる接着剤フィルムが提供される。
【0018】
本発明に係る接着剤フィルムは、COG実装における異方導電性接着剤として使用される場合に特に有用である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガラス基板と半導体素子との接続に用いられたときに、優れた接続信頼性を維持しつつガラス基板の変形が抑制され、しかもフィルム形成性にも優れる接着剤フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】接合体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】接合体を製造する工程の一実施形態を示す断面図である。
【図3】ガラス基板の反りの評価方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、半導体素子と基板との接合体の一実施形態を示す断面図である。図1に示す接合体は、基板1と、半導体素子2と、これらの間に介在する硬化した接着剤フィルム3とから構成される。基板1はガラス基板及び該ガラス基板上に設けられた配線パターンを有しており、半導体素子2はICチップ2a及びICチップ2a上に設けられたバンプ2bを有している。基板1と半導体素子2とが接着剤フィルム3によって接合されている。
【0023】
図2は、接合体を製造する工程の一実施形態を示す断面図である。基板1、接着剤フィルム3及び半導体素子2がこの順で積層された積層体200を加熱及び加圧することにより、図1に示す接合体が得られる。積層体200は、例えば、支持体と該支持体上に設けられた接着剤フィルム3とを備える回路接続材料を、接着剤フィルム3が基板1側になる向きで基板1に仮圧着した後、支持体を除去し、接着剤フィルム3の上に半導体素子2を載置する方法により得られる。
【0024】
回路接続材料に用いられる支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。
【0025】
支持体の厚みは、20〜75μmであることが好ましい。この厚みが20μm未満では、仮圧着する際に回路接続材料を扱い難くなる傾向があり、75μmを超えると、回路接続材料を巻くときに接着剤フィルムと支持体との間にずれが発生する傾向がある。
【0026】
接着剤フィルムは、硬化性樹脂組成物と、平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子とを混合して得ることのできる接着剤をフィルム状に成形したものである。
【0027】
絶縁性有機粒子は、実装後に発生する応力等を弾性変形することにより吸収し、ガラス基板の反り量を低減させるとともに、接着剤フィルム全体的の弾性率を低下させるものである。
【0028】
絶縁性有機粒子は、例えば、シリコーンゴム、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、アクリルゴム、ポリメチルメタクリレート又はポリブタジエンゴムの粒子である。これらの有機物の構造による影響の原因が解明されていないものの、シリコーンゴム粒子を用いた場合、特に顕著な効果が奏される。
【0029】
また、これら絶縁性有機粒子としては、上述した以外にも例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂等や、これらを成分として含む共重合体が挙げられる。
【0030】
絶縁性有機粒子は、分子量が100万以上の分子量を有することが好ましい。また、絶縁性有機粒子は、三次元架橋構造を有することが好ましい。このような絶縁性有機粒子は硬化性樹脂組成物への分散性が高い。また、このような絶縁性有機粒子を含む接着剤は、接着性と硬化後の応力緩和性に一層優れる。ここで「三次元架橋構造を有する」とは、ポリマー鎖が三次元網目構造を有していることを示し、このような構造を有する絶縁性有機粒子は、例えば、反応点を複数有するポリマーを当該反応点と結合しうる官能基を二つ以上有する架橋剤で処理することで得られる。分子量が100万以上の絶縁性有機粒子及び三次元架橋構造を有する絶縁性有機粒子は、いずれも溶媒への溶解性が低いことが好ましい。溶媒への溶解性が低いこれらの絶縁性有機粒子は、上述の効果を一層顕著に得ることができる。また、上述の効果を一層顕著に得る観点からは、分子量が100万以上の絶縁性有機粒子及び三次元架橋構造を有する絶縁性有機粒子は、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体又はこれらの複合体からなる絶縁性有機粒子であることが好ましい。また、特開2008−150573公報に記載されるようなポリアミック酸粒子、ポリイミド粒子等の絶縁性有機粒子も使用することができる。
【0031】
コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層で組成が異なる絶縁性有機粒子を用いることもできる。コアシェル型の絶縁性有機粒子として、具体的には、シリコーン−アクリルゴムをコアとしてアクリル樹脂をグラフトした粒子、アクリル共重合体をコアとしてアクリル樹脂をグラフトとした粒子等が挙げられる。また、WO2009/051067号に記載されるようなコアシェル型シリコーン微粒子や、WO2009/020005号に記載されるような(メタ)アクリル酸アルキルエステル−ブタジエン−スチレン共重合体又は複合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−シリコーン共重合体又は複合体、シリコーン−(メタ)アクリル酸共重合体又は複合体等の絶縁性有機粒子や、特開2002−256037号公報に記載されるようなコアシェル構造重合体粒子や、特開2004−18803号公報に記載されるようなコアシェル構造のゴム粒子、なども使用することができる。これらのコアシェル型の絶縁性有機粒子は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
平均粒径が1μm以下の絶縁性有機粒子のみを用いた場合、表面積が大きいことから絶縁性有機粒子の大量添加が難しくなるため、十分に反り量を低減させることができない。一方、平均粒径1μmを超える絶縁性有機粒子のみを用いた場合、応力を緩和させるために絶縁性有機粒子が変形する際に、接着剤フィルムに含まれる樹脂等との間の接着力が弱くなり、大量に添加すると接続信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。平均粒径が異なる2種以上の絶縁有機粒子を用いると、高い接続信頼性を維持しながら、十分に反り量を低下させることができる。
【0033】
好ましくは、1.5〜6μmの平均粒径を有する第一の絶縁性有機粒子と、0.05〜0.7μmの平均粒径を有する第二の絶縁性有機粒子との組み合わせが採用される。2〜5μmの平均粒径を有する第一の絶縁性有機粒子と、0.05〜0.5μmの平均粒径を有する第二の絶縁性有機粒子との組み合わせがより好ましく、2〜4μmの平均粒径を有する第一の絶縁性有機粒子と、0.05〜0.5μmの平均粒径を有する第二の絶縁性有機粒子との組み合わせが特に好ましい。第一の絶縁性有機粒子の平均粒径が6μmより大きいと、接続信頼性が低下する傾向がある。第二の絶縁性有機粒子の平均粒径が0.05μmより小さいとフィルム形成性が低下し、フィルムの形状を維持することが困難になる傾向がある。
【0034】
高い接続信頼性を維持しながら、十分に反り量を低下させるために、これら第一の絶縁性有機粒子の平均粒径と、第二の絶縁性有機粒子の平均粒径との差は1.5〜5.5μmであることが好ましく、2.5〜5.5μmであることが特に好ましい。また、高い接続信頼性を維持しながら、十分に反り量を低下させるために、第一の絶縁性有機粒子の平均粒径の第二の絶縁性有機粒子の平均粒径に対する比は3〜100であることが好ましく、3〜50であることがより好ましい。
【0035】
第一の絶縁性有機粒子と第二の絶縁性有機粒子の質量比は、好ましくは2:8〜8:2であり、より好ましくは3:7〜7:3である。この質量比が偏りすぎると本発明による効果が低下する傾向がある。
【0036】
当該接着剤フィルムに含まれる2種以上の絶縁性有機粒子の合計量は、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として10〜50質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。絶縁性有機粒子の量が10質量%未満の場合、反り量抑制の効果が小さくなる傾向があり、50質量%を超えると接続信頼性が低下する傾向がある。
【0037】
接着剤フィルムを構成する硬化性樹脂組成物は、フィルム形成材、ラジカル重合性化合物及びラジカル発生剤を含むことが好ましい。
【0038】
フィルム形成材は、液状の樹脂組成物を固形化する作用を有するポリマーである。フィルム形成材を硬化性樹脂組成物に含ませることによって、接着剤をフィルム状に成形したときに、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりすることのない、取扱いが容易な接着剤フィルムを得ることができる。
【0039】
フィルム形成材は、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーである。これらのなかでも、優れた接着性、相溶性、耐熱性、機械強度を有することから、フェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂は、2官能フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子量になるまで反応させるか、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類とを重付加反応させることにより得られる。具体的には、2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとを、アルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下において、非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0040】
フェノキシ樹脂を得る重付加反応は、接着剤フィルムの機械的特性及び熱的特性を良好にする観点から、2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類との配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1として行うことが好ましい。また、この重付加反応は、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中において原料固形分を50質量部以下とし、50〜200℃に加熱して行うことが好ましい。
【0041】
フェノキシ樹脂を得るために用いられる2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテルなどが挙げられる。2官能フェノール類としては、2個のフェノール性水酸基を有するもの、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類などが挙げられる。
【0042】
フェノキシ樹脂はラジカル重合性の官能基や、その他の反応性化合物によって変性されていてもよい。上述の種々のフェノキシ樹脂を、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
フィルム形成材の配合量は、フィルム形成材とラジカル重合性化合物との合計100質量部に対して、40〜60質量部であることが好ましい。該配合量が40質量部未満の場合、接着剤フィルムが保管中に変形する傾向があり、60質量部を超える場合、圧着する際の流動性が低下する傾向がある。
【0044】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合する官能基を有する化合物であり、例えば、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物、スチレン誘導体等が挙げられる。ラジカル重合性化合物として、モノマー及びオリゴマーの一方又は双方を用いることができる。
【0045】
アクリレート及びメタクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンチニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、ウレタンアクリレート類、これらのアクリレートに対応するメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。接着剤フィルムの耐熱性を向上する観点から、アクリレート及びメタクリレートは、ジシクロペンチニル基、トリシクロデカニル基及びトリアジン環からなる群より選択される少なくとも一つを有することが好ましい。必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を併せて用いてもよい。
【0046】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上有するものが好ましい。その具体例としては、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロへキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロへキシル)ベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)へキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
硬化性樹脂組成物は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種のモノマーの重合体又は共重合体を含有してもよい。応力緩和に優れた接着剤フィルムを得る観点から、これらの重合体又は共重合体とグリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムとを併用することが好ましい。
【0048】
ラジカル重合性化合物の配合量は、フィルム形成材とラジカル重合性化合物との合計100質量部に対して、40〜60質量部であることが好ましい。該配合量が40質量部未満の場合、接着剤フィルムが硬化不足になる傾向があり、60質量部を超える場合、接着剤フィルムを用いて形成された接続構造体の反りが大きくなり、接続信頼性が低下する傾向がある。
【0049】
ラジカル発生剤は、過酸化化合物、アゾ系化合物などの、加熱により分解して遊離ラジカルを発生する化合物である。ラジカル発生剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等に応じて適宜選定される。接着剤フィルムの反応性とポットライフを向上させる観点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。
【0050】
ラジカル発生剤の具体例としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0051】
回路接続材料の回路電極の腐食を押さえるために、ラジカル発生剤に含まれる塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましい。このため、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドが好ましく、このうち、反応性向上の観点から、パーオキシエステル、パーオキシケタールがより好ましい。上記ラジカル発生剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0053】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルへキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0054】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロへキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロへキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルへキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン、t−へキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルへキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0055】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0056】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0057】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0058】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0059】
上述の種々のラジカル発生剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、ラジカル発生剤を分解促進剤、抑制剤等と組み合わせて用いてもよい。可使時間を延長するためには、ラジカル発生剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化することが好ましい。
【0060】
ラジカル発生剤の配合量は、接着剤フィルムの硬化反応において、十分な反応率により接続時間を短時間(10秒以下)とする観点から、フィルム形成材とラジカル重合性化合物との合計100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、1〜5質量部とすることがさらに好ましい。ラジカル発生剤の配合量が0.1質量部未満では、十分な反応率を得ることができず、良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。ラジカル発生剤の配合量が30質量部を超えると、接着剤フィルムの流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤組成物のポットライフが短くなる傾向にある。
【0061】
接着剤フィルムを構成する硬化性樹脂組成物は、フィルム形成材、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を含むことも好ましい。この場合、フィルム形成材の配合量は、フィルム形成材とエポキシ樹脂との合計100質量部に対して、50〜90質量部であることが好ましい。該配合量が50質量部未満の場合、保管する際に接着剤フィルムが変形する傾向があり、90質量部を超える場合、圧着する際に流動性が低下する傾向がある。
【0062】
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールAD等からなる群より選択される少なくとも一種とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック及びクレゾールノボラックの一方又は双方とから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、並びにグリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。エポキシ樹脂は、エレクトロマイグレーション防止、すなわちマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na+、Cl−等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。
【0063】
エポキシ樹脂の配合量は、フィルム形成材とエポキシ樹脂との合計100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましい。該配合量が10質量部未満の場合、圧着する際に流動性が低下する傾向があり、50質量部を超える場合、保管する際に接着剤フィルムが変形する傾向がある。
【0064】
潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、アミンイミド、及びジシアンジアミド等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、潜在性硬化剤を分解促進剤、抑制剤等と組み合わせてもよい。なお、可使時間を延長するためには、潜在性硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化することが好ましい。
【0065】
潜在性硬化剤の配合量は、硬化反応において十分な反応率を得るため、フィルム形成材とエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、0.1〜60質量部であることが好ましく、40〜50質量部であることがより好ましい。潜在性硬化剤の配合量が0.1質量部未満では、十分な反応率を得ることができず、良好な接着強度及び低い接続抵抗が得られ難い傾向がある。潜在性硬化剤の配合量が60質量部を超えると、接着剤フィルムの流動性の低下、接続抵抗の上昇、接着剤フィルムのポットライフの短縮などが発生する傾向がある。
【0066】
接着剤フィルムを構成する硬化性樹脂組成物は、フィルム形成材、ラジカル重合性化合物、ラジカル発生剤及びエポキシ樹脂を含んでいてもよく、さらに潜在性硬化剤を含んでいてもよい。また、本実施形態の接着剤フィルムを形成する硬化性樹脂組成物は、カップリング剤、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、難燃化剤、色素、チキソトロピック剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びイソシアネート類等を含有することもできる。
【0067】
硬化性樹脂組成物は、導電性粒子を含んでいてもよい。導電性粒子が含まれていなくても、電子材料の接続において、互いに対向する回路電極の直接接触により電気的接続が得られる。しかし、硬化性樹脂組成物が導電性粒子を含有することにより、該導電性粒子の変形により回路電極の位置や高さのばらつきが吸収されること、及び接触面積が増加等されることによって、一層安定した電気的接続を得ることができる。また、接着剤フィルムが導電性粒子を含有することによって、回路電極表面の酸化層や不動態層を突き破っての接触が可能となる場合があり、電気的接続のより一層の安定化を図ることができる。
【0068】
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン粒子等が挙げられる。導電性粒子の最外層は、十分なポットライフを得る観点から、Ni、Cu等の遷移金属類ではなく、Au、Ag、白金属の貴金属類が好ましく、このうちAuがより好ましい。また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよく、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に上述の金属等の導通層を被覆等により形成し、最外層を貴金属類としたものでもよい。
【0069】
導電性粒子として、プラスチックに導通層を被覆等により形成した粒子又は熱溶融金属粒子を用いることが好ましい。これらの粒子は加熱及び加圧により変形性を有するので、接続時の回路電極との接触面積の増加、及び回路部材の回路端子の厚みばらつきの吸収等の作用を有するので、回路接続の信頼性を向上することができる。
【0070】
導電性粒子の最外層に設けられる貴金属類の被覆層の厚みは、接続される回路間の抵抗を十分低減する観点から、100Å以上であることが好ましい。ただし、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の被覆層を設ける場合、該厚みは、300Å以上であることが好ましい。この理由は、導電性粒子の混合分散時に発生する貴金属類の被覆層の欠損等によりNi等の遷移金属が接着剤フィルム中に露出し、該遷移金属による酸化還元作用により遊離ラジカルが発生し、接着剤フィルムの保存安定性を低下させてしまうからである。一方、貴金属類の被覆層の厚みの上限は、特に制限はないが製造コストの観点から1μm以下であることが望ましい。
【0071】
導電性粒子の配合量は、接着剤フィルム中の樹脂成分100体積部に対して0.1〜30体積部とすることが好ましく、用途に応じて配合量を調製することができる。導電性粒子の配合量は、過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止する観点から、0.1〜20体積部とすることがより好ましい。
【0072】
接着剤フィルムに含まれる2種以上の絶縁性有機粒子及び前記導電性粒子の合計量は、接着剤フィルム全体の質量を基準として80質量%以下であることが好ましい。
【0073】
接着剤フィルムの厚みは、10〜40μmであることが好ましい。この厚みが10μm未満では、被着体の間の空間を完全に埋めることができず、接着力が低下する傾向があり、40μmを超えると圧着する際に樹脂が溢れ出し、周辺部品を汚す傾向がある。
【0074】
本実施形態にかかる回路接続材料、すなわち回路接続用接着剤フィルムは、上述の硬化性樹脂組成物及び絶縁性有機粒子を含有する接着剤を溶剤に溶解又は分散させて得られた混合液を、支持体上に塗布して乾燥させ、支持体上に接着剤フィルムを設けることによって得られる。支持体上に接着剤フィルムを設ける他の方法としては、接着剤フィルムの構成成分を加熱して流動性を確保した後、溶剤を加えて支持体上に塗布して乾燥させる方法が挙げられる。
【0075】
支持体上に設けられる接着剤フィルムは単層でもよく、組成の異なる接着剤フィルムを2層以上重ねて積層してもよい。2層以上を積層する場合には、導電性粒子を含まない層(SO1)と導電性粒子を含む層(SO2)とを、支持体、SO1、SO2の順に積層す
ることが望ましいが、これに制限されるものではない。
【0076】
本実施形態の接着剤フィルムは、COG(Chip On Glass)などの実装における、ガラスなど比較的硬い基板とICチップとを接合する異方導電性接着剤として使用することもできる。例えば、第一の接続端子を有する第一の回路部材と第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子とが対向配置されるように配置し、対向配置された第一の接続端子と第二の接続端子との間に本実施形態の接着剤フィルムを介在させた状態で加熱及び加圧して、第一の接続端子と第二の接続端子とを電気的に接続することができる。ここで、ICチップ又は基板の厚みが500μm以下のものを使用した場合、反りの問題が顕著になるため、本発明の接着剤フィルムを特に有効に使用することができる。更に300μm以下のものを使用した場合は、更に反りの問題が顕著になる。下限としてはICチップや基板としての機械的強度を維持できれば問題はなく、一般的には100μm程度である。
【0077】
これらの回路部材には、通常接続端子が多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。対向配置された回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置された接続端子間に本実施形態の接着剤フィルムを介在させた状態で、加熱及び加圧することで対向配置された接続端子同士を電気的に接続して回路板を得ることができる。対抗配置された回路部材の少なくとも一方を加熱及び加圧することにより、対向配置された接続端子同士は、直接接触により電気的に接続される。また、接着剤フィルムが導電性粒子を含有する場合には、導電性粒子を介した接触及び直接接触の一方又は双方により、電気的に接続される。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
硬化性樹脂組成物の準備
硬化性樹脂組成物として硬化メカニズムの異なる下記a.及びb.の2種類を準備した。
a.フェノキシ樹脂(東都化成製、製品名YD−8125):50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、製品名850−S):25質量部、潜在性硬化剤(旭化成ケミカルズ製、製品名ノバキュア):20質量部、シランカップリング剤(東レダウコーニング製、製品名SH6040):5質量部、導電性粒子(積水化学製、製品名ミクロパールAU):30質量部
b.フェノキシ樹脂(東都化成製、製品名YD−8125):50質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業製、製品名UN−1255):40質量部、過酸化物(日油製、製品名パーヘキサTMH):5質量部、シランカップリング剤(東レダウコーニング製、製品名Z−6030)5質量部、導電性粒子(積水化学製、製品名ミクロパールAU):30質量部
【0080】
接着剤フィルムの準備
上記a.及びb.の硬化性樹脂組成物に表1に示す各組み合わせの絶縁性有機粒子を添加した接着剤を支持体上でフィルム状に成形して、厚み25μmの接着剤フィルムを形成させた。その際、以下の基準でフィルム形成性を評価した。
A:フィルムにでき、ガラスに仮付けできる(70℃、2s、1MPa、圧力はフィルム面積換算)。
B:フィルムにできるが、ガラスに仮付けできない。
C:フィルムにできない。
【0081】
粒度分布測定
それぞれの絶縁性有機粒子を1:100の質量比でメチルエチルケトンに分散させ、その分散液を用い、BeckmanCoulter社製の流動分布測定装置(LS13 320)で絶縁性有機粒子の平均粒径を測定した。それぞれの絶縁有機微粒子の平均粒径を表1に示す。
【0082】
基板及び半導体素子の準備
基板として、ガラス基板(コーニング#1737、外形38mm×28mm、厚さ0.2〜0.5mm)の表面にITO(Indium Tin Oxide)の配線パターン(パターン幅50μm、電極間スペース50μm)を形成させたものを準備した。半導体素子としては、ICチップ(外形17mm×1.7mm、厚さ0.55mm、バンプの大きさ50μm×50μm、バンプ間スペース50μm)を準備した。
【0083】
接合体の作製
セラミックヒーターからなるステージ(150mm×150mm)とセラミックヒーターからなるツール(3mm×20mm)とから構成される加熱圧着具を用いて、上記の基板と半導体素子が各接着剤フィルムを介して接着された接合体を作製した。このとき、それぞれの接着剤フィルムに適した温度(フィルムa.の場合190℃、b.の場合150℃;接着剤フィルムの実測最高到達温度)及び加重(半導体素子のバンプ面積換算で70MPa)で加熱及び加圧を行った。
【0084】
反りの評価
図3は、ガラス基板の反りの評価方法を示す模式断面図である。図3に示す接合体は、基板1、半導体素子2及びこれらを接合する硬化した接着剤フィルム3から構成される。Lは、半導体素子2の中心における基板1の下面の高さを0としたときの、半導体素子2の中心から12.5mm離れた場所までの基板1の下面の高さのうち最も大きい値を表す。反りの評価は、Lを指標として行った。Lの値が小さいほど、反りが小さいことを示す。反りの評価結果は表1に示す。
【0085】
接続抵抗の測定(接続信頼性)
作製した接合体を用いて基板の回路と半導体素子の電極間の抵抗値を測定した。測定は、マルチメータ(装置名:MLR21、ETAC社製)を用いて行った。温度85℃、湿度85%RH、1000時間のTHTテスト(Thermal Humidity Test)の前後で行った。THTテスト後の抵抗値に基づいて、接続信頼性を以下の基準でA、Cの2段階に評価した。各接合体の測定結果は表1に示す。
A:10Ω未満
C:10Ω以上
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示されるように、各実施例の接着剤フィルムはフィルム形成性、反り及び接続信頼性のいずれに関しても優れた特性を示した。
【符号の説明】
【0088】
1…基板、2…半導体素子、3…接着剤フィルム、100…接合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂組成物と、平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子とを混合して得ることのできる接着剤から形成された接着剤フィルムであって、
前記2種以上の絶縁性有機粒子のうち、平均粒径が最も大きいものの平均粒径が1.5〜6μmで、平均粒径が最も小さいものの平均粒径が0.05〜0.7μmであり、
当該接着剤フィルムに含まれる前記2種以上の絶縁性有機粒子の合計量が、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として10〜50質量%である、
接着剤フィルム。
【請求項2】
硬化性樹脂組成物と、平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子とを混合して得ることのできる接着剤から形成された接着剤フィルムであって、
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径と平均粒径が最も小さい前記絶縁性有機粒子の平均粒径との差が1.5〜5.5μmであり、
当該接着剤フィルムに含まれる前記2種以上の絶縁性有機粒子の合計量が、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として10〜50質量%である、
接着剤フィルム。
【請求項3】
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径と平均粒径が最も小さい前記絶縁性有機粒子の平均粒径との差が2.5〜5.5μmである、請求項2に記載の接着剤フィルム。
【請求項4】
硬化性樹脂組成物と、平均粒径の異なる2種以上の絶縁性有機粒子とを混合して得ることのできる接着剤から形成された接着剤フィルムであって、
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径の、平均粒径が最も小さい前記絶縁性有機粒子の平均粒径に対する比が3〜100で、平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径が6μm以下であり、
当該接着剤フィルムに含まれる前記2種以上の絶縁性有機粒子の合計量が、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として10〜50質量%である、
接着剤フィルム。
【請求項5】
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径の、平均粒径が最も小さい前記絶縁性有機粒子の平均粒径に対する比が3〜50である、請求項4に記載の接着剤フィルム。
【請求項6】
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径が1.5〜6μmである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項7】
平均粒径が最も小さい前記絶縁性有機粒子の平均粒径が0.05〜0.7μmである、請求項2〜5いずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項8】
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径が2〜5μmである、請求項1〜5のいずれか一項記載の接着剤フィルム。
【請求項9】
平均粒径が最も大きい前記絶縁性有機粒子の平均粒径が2〜4μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項10】
平均粒径が最も小さい前記絶縁性有機粒子の平均粒径が0.05〜0.5μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項11】
前記の2種以上の絶縁性有機粒子のうち少なくとも1種がシリコーンゴム粒子である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項12】
前記硬化性樹脂組成物が、フィルム形成材と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル発生剤と、を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項13】
前記硬化性樹脂組成物が、フィルム形成材と、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着剤フィルム。
【請求項14】
前記硬化性樹脂組成物が、導電性粒子を更に含む、請求項12又は13に記載の接着剤フィルム。
【請求項15】
当該接着剤フィルムに含まれる前記2種以上の絶縁性有機粒子及び前記導電性粒子の合計量が、当該接着剤フィルム全体の質量を基準として80質量%以下である、請求項14に記載の接着剤フィルム。
【請求項16】
COG実装における異方導電性接着剤として使用される、請求項1〜15いずれか一項記載の接着剤フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−121124(P2010−121124A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243703(P2009−243703)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】