説明

接着剤組成物、この接着剤組成物を用いた多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法

【課題】 樹脂フローの調整が容易な接着剤樹脂組成物、この接着剤組成物を用いることによりキャビティー内への樹脂のはみ出しが小さい多層プリント配線板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 熱硬化性樹脂、単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマー及び無機充填剤を必須成分として含有してなる接着剤組成物、基板間の接着に上記の接着剤組成物を用いた多層プリント配線板及び上記の接着剤組成物をワニスとし、このワニスを基板の接着面に塗布し、乾燥した後、加熱加圧することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、この接着剤組成物を用いた多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板は、複数の基板を接着一体化して製造され、基板の接着には、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含む熱硬化樹脂組成物をガラス布などの基材に含浸乾燥して得られるプリプレグが用いられている。プリプレグに含浸乾燥された熱硬化性樹脂組成物は、接着一体化するときのプレス工程において一旦溶融流動化し、基板に形成された導体回路間の凹みを埋めるようにされている。
【0003】
最近、チップキャリア、ピングリッドアレイ、ボールグリッドアレイ等、半導体素子を搭載するために用いられるパッケージ(以下単にパッケージという)を、多層プリント配線板を製造する手法により製造するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、ピングリッドアレイは、図1に示すように、半導体素子搭載部1を有する下基板2a及び半導体素子を納めるキャビティー3となる窓穴4b、4c及び4dを形成した上基板2b、2c及び2dを接着一体化し、これに、電気的接続及び取り付け用導体ピン5を挿通した多層プリント配線板である。
【0005】
上基板の内の1枚、例えば2bには、半導体素子からのワイヤをボンディングするためのボンディングパッド6が通常設けられ、また最上部に位置する上基板2dの表面を除き、下基板2a及び上基板2d並びに2cには導体回路7が設けられている。なお、図1には上基板を3枚とした例を示したが、上基板の枚数はこれに制限するものではない。
【0006】
このように窓穴を設けた上基板2b、2c及び2dを接着一体化するときに従来の多層プリント配線板の製造に用いられていたものと同様のプリプレグを用いると、プレス工程において一旦溶融流動化した熱硬化性樹脂組成物がキャビティー3内にはみ出し、図2に示すように、ボンディングパッド6がはみ出した熱硬化性樹脂組成物に覆われることがあった。ボンディングパッド6がはみ出した熱硬化樹脂組成物により覆われると、半導体素子からのワイヤをボンディングすることが困難になるので好ましくない。
【0007】
そこで、通常の多層プリント配線板の製造に用いられているプリプレグよりも熱硬化性樹脂組成物の硬化を進めて、プレス成形時の樹脂フローを小さくしたプリプレグが開発されている。
【0008】
しかしながら、熱硬化性樹脂組成物の硬化条件は、樹脂組成や溶剤の種類、量等により変化するため樹脂フローを適正に調整することが困難であり、またプレス成形時の樹脂フローを小さくしたプリプレグは、樹脂フローが小さいために導体回路間の凹みを充分に埋めることができないことがあるためボイドが残り、さらには、熱硬化性樹脂の硬化が進んでいるため、基板との接着性も悪くなるという欠点を有していた。
【0009】
【特許文献1】特開平11−181398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたもので、樹脂フローの調整が容易な接着剤樹脂組成物、この接着剤組成物を用いることによりキャビティー内への樹脂のはみ出しが小さい多層プリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の事項に関する。
(1)熱硬化性樹脂、単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマー及び無機充填剤を必須成分として含有してなる接着剤組成物。
【0012】
(2)基板間の接着に上記(1)記載の接着剤組成物を用いた多層プリント配線板。
(3)上記(1)記載の接着剤組成物をワニスとし、このワニスを基板の接着面に塗布し、乾燥した後、加熱加圧することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャビティー内への樹脂のはみ出しを小さくすることができ、さらに基板間の接着性も良好とすることができる。
また、本発明によれば、導体回路間の凹みに接着剤を塗布し、乾燥した後加熱加圧するので、導体回路間の凹みを充分に埋めることができ、ボイドのない接着性の良好な多層プリント配線板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂は、プレス成形時に溶融流動することなく、熱硬化性樹脂中に散在し、いわゆる海島型分散構造をとることができ、熱硬化性樹脂中に散在することにより、溶融した熱硬化性樹脂の流動を抑制することによりキャビティー内への樹脂のはみ出しを抑制することができる。
【0015】
また、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーも、プレス成形時に溶融流動することなく、熱硬化性樹脂中に粒子として散在し、いわゆる海島型分散構造をとることができ、熱硬化性樹脂中に散在する粒子により、溶融した熱硬化性樹脂の流動を抑制することによりキャビティー内への樹脂のはみ出しを抑制することができる。
【0016】
さらに、無機充填剤もプレス成形時に溶融流動することなく、熱硬化性樹脂中に粒子として散在し、熱硬化性樹脂中に散在する粒子により、溶融した熱硬化性樹脂の流動を抑制することによりキャビティー内への樹脂のはみ出しを抑制することができる。
【0017】
熱硬化性樹脂中に配合する単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂及び主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマー、無機充填剤の量により溶融した熱硬化性樹脂の流動性を調整できることから、その制御も容易であり、かつ、一定した品質とすることができる。
そして、熱硬化性樹脂の硬化を進めておく必要がないので、基板との接着性を損なうこともない。
【0018】
単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂及び主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマー、無機充填剤は併用する必要がある。単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂を単独で使用し、樹脂のはみ出しを小さくすると、熱硬化性樹脂の量が相対的に少なくなり、熱硬化性樹脂の相が連続しなくなるため、接着性が劣る。
【0019】
主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーを単独で使用し、樹脂のはみ出しを小さくすると、誘電率及び誘電正接が上昇する。単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂と主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーを併用し、樹脂のはみ出しを小さくすると、耐熱信頼性が劣る。無機充填剤を単独で使用し、樹脂のはみ出しを小さくすると、熱硬化性樹脂の量が相対的に少なくなり、熱硬化性樹脂の相が連続しなくなるため接着性が劣り、また誘電率も上昇する。
【0020】
本発明になる接着剤組成物は、加熱硬化時の樹脂フローが小さい。このように樹脂フローが小さい接着剤樹脂組成物をシート状に形成し、これを基板間に挿んで加熱加圧すると、基板表面に形成された導体回路間の凹部を十分に埋めることができないことがある。
【0021】
そこで、本発明になる接着剤組成物を有機溶剤に溶解分散させてこれを基板表面に塗布乾燥してその上に他の基板を重ね加熱加圧するのが好ましい。
すなわち、接着剤組成物をワニスとし、このワニスを基板の接着面に塗布し、乾燥した後、加熱加圧することにより、導体回路の凹みを充分に埋めることができ、ボイドのない接着性の良好な多層プリント配線板の製造することができる。
【0022】
本発明において接着剤組成物に使用される熱硬化性樹脂としては、シアナート樹脂、構造中にベンゾオキサジン環を有する樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、構造中にトリアジン環を有する樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂を2種類以上適宜組み合わせて使用することもできる。
【0023】
これらの熱硬化性樹脂には、必要な硬化剤及び/又は硬化促進剤が用いられるが、硬化剤及び/又は硬化促進剤としては、それぞれの熱硬化性樹脂について公知の硬化剤及び/又は硬化促進剤を使用することができ、特に制限はない。
【0024】
本発明において使用される単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂については、下記一般式(1)で示される構造単位を有している樹脂である。
【0025】
【化1】

(ただし、R、R及びRは炭素数1〜3の低級アルキル基又は水素原子でありRとRのうち少なくとも一方は低級アルキル基である。)
【0026】
また、上記一般式(1)で示される構造を根幹とし、この根幹にビニル芳香族化合物をグラフト重合して得られるグラフト共重合体も使用することができる。
【0027】
ポリフェニレンエーテル樹脂の合成に使用される単環式フェノールとしては、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,6−ジプロピルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2−メチル−6−プロピルフェノール、2−エチル−6−プロピルフェノール、m−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,3−ジプロピルフェノール、2−メチル−3−エチルフェノール、2−メチル−3−プロピルフェノール、2−エチル−3−メチルフェノール、2−エチル−3−プロピルフェノール、2−プロピル−3−メチルフェール、2−プロピル−3−エチル−フェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,6−トリエチルフェノール、2,3,6−トリプロピルフェノール、2,6−ジメチル−3−エチルフェノール、2,6−ジメチル−3−プロピルフェノール等が挙げられる。
【0028】
これら単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られるポリフェニレンエーテル樹脂を具体的に例示すると、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルにスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体が挙げられる。
【0029】
また、ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリスチレンなどとのアロイ化ポリマーの形で市販されることがある。このようなアロイ化ポリマーも使用できる。アロイ化ポリマーとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンとのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマーとのアロイ化ポリマーが挙げられる。
【0030】
本発明において使用される主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーとしては、ポリウレタン系、アクリル系、ポリアミド系、酢酸ビニル系等のエラストマーの主鎖の構造単位の一部を架橋させたエラストマーを挙げることができる。なかでも、熱硬化性樹脂と海島構造を形成しやすく、さらに吸湿時の耐熱性に優れていることから、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマーが好ましく用いられる。
エラストマーの粒子径は、熱硬化性樹脂への分散性の観点から、0.5〜2.0μmであるのが好ましい。
【0031】
本発明において使用される無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム等が挙げられ、その中でも、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等がより好ましい。なお、無機充填剤は、1種類を単独で用いてもよく又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
熱硬化性樹脂、単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマー及び無機充填剤の配合割合は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂を5〜40重量部、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーを1〜10重量部及び無機充填剤を10〜50重量部とするのが好ましい。
【0033】
単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂が5重量部未満、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーが1重量部未満、無機充填剤が10重量部未満であると,樹脂のはみ出しを小さくする効果が小さくなる。
【0034】
また,単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂が40重量部を超える場合には、熱硬化性樹脂の量が相対的に少なくなり、熱硬化性樹脂の相が連続しなくなるため接着性が劣る。
【0035】
主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーが10重量部を超える場合には、誘電率及び誘電正接が上昇する。無機充填剤が50重量部を超える場合には、熱硬化性樹脂の量が相対的に少なくなり、熱硬化性樹脂の相が連続しなくなるため接着性が劣り、また誘電率も上昇する。
【0036】
このことから、熱硬化性樹脂100重量部に対して、単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂を10〜30重量部,主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマーを2〜5重量部及び無機充填剤を20〜40重量部とするのが好ましい。
【0037】
本発明になる接着剤組成物は、有機溶剤に溶解分散させ、ワニスとして基板に塗布することにより使用されるのが好ましいが、ここで使用される有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルエチルグリコール、メチルイソブチルケトン、メチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、トルエン、メタノール等が挙げられ、これらは、単独で又は適宜2種類以上組み合わせて使用される。
【0038】
接着剤組成物とこれら有機溶剤との配合割合は、ワニスとして基板に塗布するときの作業性により選定される。
ワニス塗布後の乾燥は指触乾燥とされるのが、良好な接着を形成できることから好ましい。
【0039】
なお,主として半導体搭載用のキャビティーを有する多層プリント配線板について説明したが,本発明の接着剤組成物及び本発明の製造方法はキャビティーを有さない通常の多層プリント配線板の製造にも適用できることはいうまでもない。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(旭チバ株式会社製、商品名:Arocy B−10、)77重量部、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(日本ジーイープラスチックス株式会社製、商品名:ノリルPKN4752)30重量部及びp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社製、商品名:PCP)1重量部をトルエン30重量部に加熱溶解分散し、金属系反応触媒としてナフテン酸マンガン(マンガン含有量10%、日本化学産業株式会社製)0.03重量部を、添加後液温を120℃として反応させた。
【0041】
90℃に冷却後、シアネートエステル類化合物と反応性を有しない難燃剤として2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン(第一工業製薬株式会社製、商品名:SR−245)14重量部を投入し、次いで、メチルエチルケトン30重量部を投入撹拌し、さらに40℃以下に冷却後に前記p−(α−クミル)フェノール8重量部,金属系反応触媒としてナフテン酸亜鉛(亜鉛含有量8重量%、日本化学産業株式会社製)0.0125重量部、架橋アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマー(アクリロニトリル含有量20%、日本合成ゴム株式会社製、商品名:XER−91)3重量部及びシリカ(アドマテックス株式会社製、商品名:SO−25R)30重量部を添加して接着剤ワニスを調製した。
【0042】
500×300mm、厚さ0.2mm及び銅はく厚さ12μmの片面銅張積層板に導体回路を形成して下基板とした。
また、500×300mm、厚さ0.1mm及び銅はく厚さ12μmの片面銅張積層板に導体回路及び15×15mmの窓穴を形成して上基板とした。
【0043】
次に、前記下基板に上基板を重ねたときの窓穴の位置をマスクし、前記で調整した接着剤ワニスを印刷により,導体回路を基板面から測定した厚さが50μmで、表面に導体回路の凹凸が現れないように塗布し、その後、80℃で30分間加熱して溶剤を揮発させ、接着剤層を形成し、さらにこの接着剤の上に、上基板を重ね、温度200℃及び圧力3.0MPaの条件で加熱加圧して多層プリント配線板を作製した。
【0044】
実施例2
熱硬化性ポリイミド樹脂(仏ローヌプーラン社製、商品名:ケルイミド601)45重量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシ株式会社製、商品名:エピコート154)45重量部及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(日本ジーイープラスチックス株式会社製、商品名:ノリルPKN4752)30重量部をジメチルアセトアミド60重量部に加熱溶解分散し、30℃以下に冷却後にジシアンジアミド10重量部、架橋アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマー(アクリロニトリル含有量20%、日本合成ゴム株式会社製、商品名:XER−91)3重量部及びシリカ(アドマテックス株式会社製、商品名:SO−25R)30重量部を添加して接着剤ワニスを調製した。
以下、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
【0045】
比較例1
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを除いた他は、実施例1と同様にして接着剤ワニスを調整し、さらに多層プリント配線板を作製した。
【0046】
比較例2
架橋アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマーを除いた他は、実施例1と同様にして接着剤ワニスを調整し、さらに多層プリント配線板を作製した。
【0047】
比較例3
シリカを除いた他は、実施例1と同様にして接着剤ワニスを調整し、さらに多層プリント配線板を作製した。
【0048】
比較例4
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを除いた他は、実施例2と同様にして接着剤ワニスを調整し、さらに多層プリント配線板を作製した。
【0049】
比較例5
架橋アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマーを除いた他は、実施例2と同様にして接着剤ワニスを調整し、さらに多層プリント配線板を作製した。
【0050】
比較例6
シリカを除いた他は、実施例2と同様にして接着剤ワニスを調整し、さらに多層プリント配線板を作製した。
【0051】
実施例1及び2並びに比較例1及び2で調整した接着剤ワニスを真空脱溶剤して、200℃で90分間加熱して硬化させた。得られた硬化物について、JIS C 6481に規定されるTMA法によりガラス転移点(Tg)を調べ、耐熱性のレベルを評価した。
【0052】
また、実施例1及び2並びに比較例1及び2で作製した多層プリント配線板について、樹脂のはみ出し長さ、ボイドの有無、接着部のピール強度、誘電率、誘電正接を次のようにして調べた。
【0053】
樹脂のはみ出し長さ:上基板の開口部の壁から、はみ出した接着剤の最大の長さをマイクロセクション法により測定した。
ボイドの有無:目視により観察した。
ピール強度:上基板及び下基板と接着剤層間を90度方向にクロックヘッドスピード50mm/分で引きはがすのに要する荷重を測定した。
誘電率及び誘電正接:トリプレートストリップライン共振器法により周波数1GHzで測定した。なお、誘電正接の数値は(×10−4)の単位で示したものである。
これらの結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ピングリッドアレイの一例を示す断面図である。
【図2】従来法によりピングリッドアレイを製造したときの要部断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 半導体素子搭載部
2a 下基板
2b,2c,2d 上基板
3 キャビティー
4b,4c,4d 窓穴
5 導体ピン
6 ボンディングパッド
7 導体回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、単環式フェノールの1種類以上の重縮合により得られる200℃で測定した場合のメルトインデックスが5.0〜15.0gのポリフェニレンエーテル樹脂、主鎖の構造単位の一部が架橋したエラストマー及び無機充填剤を必須成分として含有してなる接着剤組成物。
【請求項2】
基板間の接着に請求項1記載の接着剤組成物を用いた多層プリント配線板。
【請求項3】
請求項1記載の接着剤組成物をワニスとし、このワニスを基板の接着面に塗布し、乾燥した後、加熱加圧することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−67867(P2009−67867A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236523(P2007−236523)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】