説明

接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルム

【課題】 金属等の補強材への接着性、耐熱性に優れた接着剤組成物および、接着フィルムを提供する。
【解決手段】 樹脂固形分に対し、下記の(A)〜(E)を必須成分として含む接着剤組成物。
(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴム10〜98重量%、
(B)(b1)エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂と、(b2)少なくとも1分子中に1つの水酸基をもつエポキシ化合物、および(b3)アルコキシシラン部分縮合物を脱アルコール反応させたシラン変性エポキシ樹脂2〜50重量%、
(C)エポキシ樹脂5〜90重量%、
(D)フェノール樹脂2〜50重量%、
(E)ジシアンジアミド0.01〜10重量%。
前記の接着剤組成物を用いた支持体上に形成した接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス等の金属、ポリイミド、ガラス・エポキシ樹脂複合基板等の被着体への接着性および耐熱性に優れた接着剤組成物およびそれを用いた接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料に用いる材料は、ポリイミドやガラス・エポキシ樹脂複合基板といったものだけでなく、ステンレス(SUS)やLCP(液晶ポリマー)、銅、セラミックなど多岐にわたっている。
【0003】
特に、フレキシブルプリント基板(FPC)は、リジッド基板と比較し、機械的強度がないため、他のFPCやリジッド基板と接続する際に、ポリイミドフィルムやガラス・エポキシ樹脂複合基板などを補強材として用いて補強する。補強材の材料は多岐にわたり、SUS、ポリイミド、ガラス・エポキシ樹脂複合基板、などが使用されている。これらの補強材とFPCを接着するために接着フィルムが使用されている。補強材の貼り合わせ方法は、100℃程度の温度で、接着フィルムを用いて補強材とFPCとを仮付けし、プレスを行う。そのため、接着フィルムは、被着体である補強材やFPCへの仮付け性と、かつ、プレス後の流れ出し性を抑える必要がある。また、硬化後においては、鉛フリーはんだに対応可能なリフローはんだ耐熱性が要求されている。
【0004】
これら電子材料の接着には、エポキシ樹脂を成分とした接着剤が広く用いられてきている。このような接着剤として、たとえば、エポキシ樹脂に、芳香族アミンまたはジアミン等の硬化剤や硬化助剤を配合したものが知られている。
【0005】
また、エポキシ樹脂をベースとした接着剤組成物としては、おもにビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたものが広く使用されており、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に熱可塑性重合体とエポキシ樹脂硬化剤を配合した熱硬化性接着剤組成物が提案されている(引用文献1)。
【0006】
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂についても接着剤としての検討が行われるようになったが、十分な接着性、耐熱性等が得られていない(引用文献2)。
【0007】
さらに、耐熱性を向上させる手法としては、樹脂の高Tg(ガラス転移温度)化等が提案されているが、はく離接着強さが低下してしまいフィルムが硬く作業性が劣るなどの問題があり、上記特性を充分に満足させるためには、樹脂の改良だけでは不充分となってきた。
【0008】
そのほか、電子材料の接着には、これまでアクリロニトリルブタジエンゴム系、ポリイミド系、エポキシ樹脂系およびアクリルゴム系等が使用されている。しかしながら、アクリロニトリルブタジエンゴム系接着剤では熱劣化により、電気抵抗、はく離接着強さ等の特性の低下が起こりやすいという欠点を有している。
【0009】
ポリイミド系では、接着剤に使用される有機溶媒が、N−メチルピロリドンのような高沸点溶剤であることから、残留溶剤として高沸点溶剤が大量に残りやすく、リフローはんだ耐熱性が低下しやすいという欠点を有している。エポキシ樹脂系接着剤は可とう性に劣り、また、はく離接着強さも低い。
【0010】
低沸点の汎用溶剤に溶解可能なアクリルゴム系接着剤が、耐熱劣化性、乾燥性、可とう性、はく離接着強さに優れているが、イソシアネートや、メラミン等の架橋剤で硬化させただけでは、エポキシ系、ポリイミド系に比べ架橋密度が低く、電気抵抗が十分に得られず、電気的信頼性に劣るという欠点を有している。この為、アクリルゴムにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をブレンドして、これら特性を向上する手法が取られているが、リフローはんだ耐熱性に劣るなどの問題がある。
【0011】
この対策として、低分子量のアクリルゴムやCTBNを必須成分として用いることで、Bステージでの流動性がよくなり、より低い温度での仮付けは可能となるが、熱可塑性樹脂であるため、リフローはんだ耐熱性に劣るといった問題が生じやすくなる。
【0012】
【特許文献1】特公昭47−43615号公報
【特許文献2】特開平3−90075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、SUSやポリイミド等の補強板への接着性に優れた接着剤組成物、およびそれを用いた接着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これら問題を、解決する為に鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基を含有するアクリルゴム、特定のシラン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化剤を必須成分として用いることで、金属やポリイミドなど補強材料への接着性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、[1]樹脂固形分に対し、下記の(A)〜(E)を必須成分として含む接着剤組成物に関する。
(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴム10〜98重量%、
(B)(b1)エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂と、(b2)少なくとも1分子中に1つの水酸基をもつエポキシ化合物、および(b3)アルコキシシラン部分縮合物を脱アルコール反応させたシラン変性エポキシ樹脂2〜50重量%、
(C)エポキシ樹脂5〜90重量%、
(D)フェノール樹脂(D)2〜50重量%、
(E)ジシアンジアミド0.01〜10重量%。
また、本発明は、上記[1]に記載の接着剤組成物を用いた接着フィルムに関する。この接着フィルムは、離型紙に接着フィルムの層を積層した構成の接着フィルムであると扱いやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接着フィルムは、(A)カルボキシル基含有アクリルゴム、(B)シラン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂、(D)フェノール樹脂、(E)ジシアンジアミドを必須成分とした接着剤組成物とすることにより、SUSやポリイミド等の補強板への接着性に優れ、耐熱性、可撓性等を維持した接着剤を提供することができ、また、離型紙などの支持基材上に本発明の接着剤組成物を一定の均一な厚みで容易に形成することができるので、作業性、取り扱い性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明は、(A)カルボキシル基含有アクリルゴム、(B)シラン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂、(D)フェノール樹脂、(E)ジシアンジアミドを必須成分とした接着剤組成物である。
本発明に使用される(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴムは、アクリル酸アルキルエステル(メタアクリル酸エステルも含む、以下同様)を主成分とし、カルボン酸を官能基として有するビニル単量体と必要に応じてアクリロニトリル、スチレン等を含む共重合体である。アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸エチル(メタクリル酸エチルも含む、以下同様)、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ラウリル、等の単量体および、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、アリルアルコール等の水酸基を有する単量体が挙げられる。これらのなかから、1種類または2種類以上を選択して使用できる。カルボン酸を官能基として有するビニル単量体としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸があげられるが、これらに制限されるものではない。
【0017】
アクリルゴムの重合方法としては、特に制限はされないが、一般的な懸濁重合法などを用いることができ、例えば、PVA等の分散剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ラウリルパーオキサイド(LPO)等の重合開始剤を水媒体中分散させた液体に、上記アクリルモノマーの2種類以上の混合物を滴下し、重合させる。重合物は、精製水で水洗して、不純物の除去を行い、水洗後加熱乾燥し、残留モノマー、水分の除去を行う。重合物の重量平均分子量としては50000〜1000000程度が好ましい。
【0018】
(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴムの配合量は、樹脂固形分に対し、10〜98重量%である。より好ましくは、40〜80重量%である。10重量%未満では接着力が低下し、所望の特性が得られない。また、98重量%を超えて多いと、耐熱性が低下する傾向がある。
【0019】
本発明で使用する(B)シラン変性エポキシ樹脂は、(b1)エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂と、(b2)少なくとも1分子中に1つの水酸基をもつエポキシ化合物と(b3)アルコキシシラン部分縮合物を脱アルコール反応させたものである。
上記のエポキシ樹脂(b1)は、エポキシ当量180〜400g/eqの範囲内で目的に応じ、適宣に選択して使用できる。180g/eq未満では、反応生成物であるシラン変性エポキシ樹脂中に残存するアルコキシシラン部分縮合物(b3)の量が増えたり、Bステージでの接着フィルムが脆くなる傾向がある。エポキシ当量が400g/eqを超えて大きいと、脱アルコール反応途中で高粘度化する傾向があるため、流動性が得られなくなり、タックが減少し、仮付け性が低下する傾向がある。
【0020】
少なくとも1分子中に1つの水酸基をもつエポキシ化合物(b2)(以下、エポキシ化合物(b2)という)の使用量は特に制限されず、エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)中の水酸基を持たない分子の含有量に応じて適宜に決定すればよい。(B)シラン変性エポキシ樹脂の耐熱性の観点から、エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量が200g/eqより小さい場合には、エポキシ化合物(b2)の重量/エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)の重量=0.05以上であり、当該エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量が200〜300g/eqの場合には、該重量比が0.03以上であり、当該エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量が300g/eqよりの大きい場合には、該重量比が0.01以上であるのが好ましい。
【0021】
エポキシ化合物(b2)としては、少なくとも1分子中に水酸基を1つもつエポキシ化合物であれば、エポキシ基の数は特に制限されない。また、エポキシ化合物(b2)としては、分子量が小さいもの程、エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)やアルコキシシラン部分縮合物(b3)に対する相溶性がよく、耐熱性付与効果が高いことから、炭素数が15以下のものが好適である。その具体例としては、エピクロロヒドリンと水、2価アルコールまたはフェノール類とを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するモノグリシジルエーテル類、エピクロロヒドリンとグリセリンやペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するポリグリシジルエーテル類、エピクロロヒドリンとアミノモノアルコールとを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するエポキシ化合物、分子中に1つの水酸基を有する脂環式炭化水素モノエポキシド(例えば、エポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール)などが例示できる。これらのエポキシ化合物の中でも、グリシドール(2,3-エポキシ-1-プロパノール)が耐熱性付与効果の点で最も優れており、またアルコキシシラン部分縮合物(b3)との反応性も高いため、好適である。
【0022】
本発明で用いるアルコキシシラン部分縮合物(b3)としては、酸または塩基触媒の存在下、アルコキシシラン化合物および水を加え、部分的に加水分解、縮合したものを用いることができる。
【0023】
アルコキシシラン部分縮合物(b3)の構成原料である上記アルコキシシラン化合物の具体例としては、一般的にゾル−ゲル法に用いられているものを使用でき、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン類、またはこれらの縮合物等があげられる。
【0024】
アルコキシシラン部分縮合物(b3)としては、当該構成原料であるアルコキシシラン化合物のうちのメトキシシラン類から得られるものが、エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)やエポキシ化合物(b2)との反応性に富むため好ましく、特に汎用性を考慮するとテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランが更に好ましい。
【0025】
本発明に使用される(B)シラン変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)、エポキシ化合物(b2)およびアルコキシシラン部分縮合物(b3)を脱アルコール反応させることにより得られる。エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)およびエポキシ化合物(b2)と、アルコキシシラン部分縮合物(b3)との使用重量比は、(B)シラン変性エポキシ樹脂中にアルコキシ基が実質的に残存するような割合であれば、特に制限されないが、エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)の水酸基とエポキシ化合物(b2)の水酸基との合計当量/アルコキシシラン部分縮合物(b3)のアルコキシ基の当量(当量比)=0.1〜0.6であることが好ましい。さらに好ましくは0.13〜0.5である。上記当量比が0.1未満であると未反応のアルコキシシラン部分縮合物(b3)が増え、0.6を超えると十分な耐熱性が得られず好ましくない。
【0026】
こうして得られた(B)シラン変性エポキシ樹脂は、アルコキシシラン部分縮合物(b3)のアルコキシ基が、エポキシ樹脂残基やグリシジル残基で置換されたものを主成分とするが、当該樹脂中には未反応のエポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂(b1)、エポキシ化合物(b2)、アルコキシシラン部分縮合物(b3)が含有されていてもよい。このようなシラン変性エポキシ樹脂としては、コンポセランE202(荒川化学工業株式会社製、エポキシ当量285g/eq、有効成分83%)があり、好適に用いることができる。
【0027】
(B)シラン変性エポキシ樹脂の配合量は、樹脂固形分に対し、2〜50重量%の範囲であるが、好ましくは、10〜30重量%の範囲である。2重量%未満であると、耐熱性が得られず、50重量%を超えて多いとBステージでフィルム形成が困難となり、また、貯蔵安定性が著しく低下する。
【0028】
本発明に用いる(C)エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物等が使用できる。これらの化合物は、単独もしくは2種類以上併用して使用することができる。(C)エポキシ樹脂の配合量は、樹脂固形分に対して、5〜90重量%の範囲であり、より好ましくは、10〜80重量%である。5重量%未満では、所望の耐熱性が得られず、90重量%を超えて多いと、硬化皮膜が硬くなりすぎ、接着力が低下する。
【0029】
本発明で用いる(D)フェノール樹脂は、フェノール樹脂の分子量、軟化点、水酸基当量などは特に制限されるものではないが、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂は、フェノールに対してホルムアルデヒドを過剰に加えアルカリ触媒で反応させたものである。該レゾール型のフェノール樹脂は、加熱するか、または酸を加えると常温でも反応が進行し自己縮合する。また、本発明においてはフェノール樹脂の自己縮合だけでなく、(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴムに対しても反応性を持つことから、リフローはんだ耐熱性や体積抵抗が向上する傾向がある。(D)フェノール樹脂の配合量は、樹脂固形分に対して、2〜50重量%の範囲が好ましい。2重量%未満では、架橋密度が低下し、十分なリフローはんだ耐熱性が得られず、50重量%を超えて多いと接着フィルムとしての貯蔵安定性が損なわれ、はく離接着強さが低下するなどの問題を生じる。
【0030】
本発明の接着剤組成物に用いられる(E)ジシアンジアミドは、(B)シラン変性エポキシ樹脂および(E)エポキシ樹脂の硬化剤または硬化触媒であり、硬化触媒的な機能と接着付与剤的な機能を果たすものである。ジシアンジアミドが接着性を付与するメカニズムは明らかではないが、ジシアンジアミドは極性が高いので、被着体、例えば金属材料の表面の酸化物と相互作用を示すと考えられる。そのため、極めて優れた金属接着性を発揮することができる。
【0031】
本発明で用いるジシアンジアミド(D)の配合量は、樹脂固形分100重量%に対して、0.01〜10重量%である。0.01重量部未満では、十分な硬化が得られず、はんだ耐熱性が低下し、10重量部を超えて多いと、皮膜が硬くなり、はく離接着強さが低下する、貯蔵安定性が低下する等の問題を生じる。
【0032】
この他、本発明の接着剤組成物には、必要に応じて充填剤を添加してもよい。充填剤には、樹脂よりも弾性率が高く、電気絶縁性のものであれば使用することができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、アルミナ、マグネシア、シリカ、二酸化チタン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、クレイ、窒化けい素、炭化けい素、硼酸アルミニウム、合成雲母等の粉末状の充填剤や、ガラス、アスベスト、ロックウール、アラミド等の短繊維状の充填剤や、炭化けい素、アルミナ、硼酸アルミニウム等のウィスカ等が使用できる。
【0033】
これらの成分はメチルエチルケトン、トルエン、メタノール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶剤に溶解または分散して使用される。
【0034】
充填剤を添加した場合は、ボールミル等を用いて、粒径を10μm以下に調整する。10μmより大きいと、接着フィルムとした時、フィルム表面に凹凸が発生し、はく離接着強さ、リフローはんだ耐熱性の低下および外観性を損ねる。
【0035】
本発明の接着フィルムを製造する際に用いられる支持体としては、特に制限されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの離型紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設けたもの、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたもの、および、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、およびポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものが挙げられるが、塗布された接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、ポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0036】
接着フィルムは接着剤組成物溶液を離型紙(支持体)上に直接コーティングし、有機溶剤を乾燥することで得られる。コーティング方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。乾燥後の接着フィルム厚みは、必要に応じて適宜変更され特に制限するものではないが、好ましくは3〜200μmの範囲である。接着フィルム厚みが3μm未満では、接着層の層間絶縁等の信頼性が低下し、200μmを超えて厚いと乾燥が不十分で残留溶剤が多くなり、接着フィルムの硬化時にフクレを生じるという問題点が生じるおそれがある。乾燥条件は特に制限されないが、乾燥後の残留溶剤含有率は2重量%以下が好ましい。2重量%を超えて大きいと、接着フィルムの硬化時に残留溶剤が発泡して、ふくれを生じるおそれがある。
【0037】
本発明の接着剤組成物は上記の如く、支持体として例えば、離型紙に塗工して接着フィルムとして用いる他に、例えば、ポリイミドや銅箔などに塗工し、FPC用のカバーレイやRCC(樹脂付き銅箔)などの接着フィルム層、ポリイミドまたはPEN(ポリエチレンナフタレート)などを銅箔と接着剤を介してラミネートしてなる3層構成のフレキシブル銅箔張り積層板やFPCに部分的に用いられる事があるプリプレグの粉落ち防止用の接着フィルム層などとしても好適に用いることができる。
【0038】
本発明の接着剤組成物の用いられる分野としては、特に制限されないが、電気・電子材料分野、自動車産業分野、宇宙航空分野、土木・建築分野、等が挙げられる。本発明の接着剤組成物は、ステンレスといった金属材料同士の接着に限らず、金属以外の材料にも優れた接着性を有することから、金属材料とそれ以外の材料との接着にも用いることができる。
【0039】
被着体の金属としては、特に制限されないが、具体的には、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、チタン、銅、ニッケル、クロム、金や各種の合金等が挙げられる。
金属以外の被着体材料としては、特に制限されないが、具体的には、例えば、ポリイミド、ガラス・エポキシ樹脂複合基板、ポリエチレンテレフタレート、セラミック、等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
次に本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
(実施例1)
(1)接着剤組成物溶液の調整
(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴムとしてWS023DR(帝国化学産業株式会社製)を用いて樹脂固形分に対し60重量%、(C)エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂YDCN703(東都化成株式会社製)を樹脂固形分に対し5重量%、(D)フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂TD2625(群栄化学工業株式会社製)を樹脂固形分に対し5重量%を、固形分25重量%となるようにメチルエチルケトンに溶解、分散し、さらに、(B)シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE202(荒川化学工業株式会社製 有効成分83% エポキシ当量285g/eq)を樹脂固形分に対し、30重量%を混合し、20分間室温(25℃)にて撹拌した。さらに上記混合液の樹脂固形分100重量%に対し、エポキシ樹脂硬化剤として(E)ジシアンジアミド0.5重量%となるように混合して接着剤組成物溶液とした。
【0041】
(2)接着フィルムの作製
130μm厚の上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にシリコン系離型剤を用いたセパレータに乾燥後の接着剤厚みが25μmになるように前記の接着剤組成物溶液を塗付し、熱風乾燥機中で90℃、3分乾燥して接着フィルムとした。
【0042】
(実施例2)
実施例1において、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のYDCN703を樹脂固形分に対して20重量%、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE202を樹脂固形分に対して10重量%、レゾール型フェノール樹脂TD2625の代わりに、BKM2620(昭和高分子株式会社製)を樹脂固形分に対して20重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0043】
(実施例3)
実施例2において、ジシアンジアミドを樹脂固形分100重量%に対し、1重量%、充填剤として水酸化アルミニウムH42M(昭和電工株式会社製)を樹脂固形分100重量%に対して30重量%加えた以外は、実施例2と同様に行った。
【0044】
(実施例4)
実施例1において、カルボキシル基を含有するアクリルゴムWS023DRを樹脂固形分に対して80重量%、YDCN703の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のEP1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製)を樹脂固形分に対して5重量%、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE202を樹脂固形分に対して5重量%、レゾール型フェノール樹脂TD2625の代わりに、BKM2620を樹脂固形分に対して10重量%、ジシアンジアミドを樹脂固形分100重量%に対し、0.3重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0045】
(実施例5)
実施例1において、カルボキシル基を含有するアクリルゴムWS023DRを樹脂固形分に対して65重量%、YDCN703を樹脂固形分に対して20重量%、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE202を樹脂固形分に対して5重量%、レゾール型フェノール樹脂TD2625を樹脂固形分に対して10重量%、ジシアンジアミドを樹脂固形分100重量%に対し、0.3重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0046】
(比較例1)
実施例1において、(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴムWS023DRを樹脂固形分に対して90重量%、(C)YDCN703を樹脂固形分に対して5重量%、(B)シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE202を樹脂固形分に対して0重量%、(D)レゾール型フェノール樹脂TD2625を樹脂固形分に対して5重量%、(E)ジシアンジアミドを樹脂固形分100重量%に対し、1.0重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0047】
(比較例2)
実施例1において、ジシアンジアミドのかわりに、2E4MZ(四国化成工業株式会社製、2-エチル-4-メチルイミダゾール)を樹脂固形分100重量%に対し、1.0重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0048】
(比較例3)
実施例1において、ジシアンジアミドのかわりに、メタキシレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)を樹脂固形分100重量%に対し、1.0重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0049】
(比較例4)
実施例1において、ジシアンジアミドのかわりに、無水フタル酸を樹脂固形分100重量%に対し、1.0重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0050】
(比較例5)
実施例1において、ジシアンジアミドのかわりに、チオール系硬化剤アデカハードナーEH316(旭電化工業株式会社製)を樹脂固形分100重量%に対し、2.0重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0051】
以上、実施例1〜5、比較例1〜5の配合と、上記で得られた接着フィルムを用いて下記の評価方法により測定したはく離接着強さ、リフローはんだ耐熱性、流れ出し性の結果を表1、2に示した。
【0052】
(評価方法)
(1)ポリイミド(PI)に対するはく離接着強さ
厚さ50μmのポリイミドフィルムKapton200H(デュポン社製)とセパレータ(離型紙)のついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、セパレータをはがし、セパレータをはがした接着フィルム面にさらに、厚さ50μmのポリイミドフィルムKapton200Hを100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、3分間)を行い、150℃、2時間の後硬化を行ったものを試験片とした。硬化した試験片をJIS K 6854−3に準拠し、T形はく離接着強さを測定した。はく離温度は、23℃、はく離速度は10mm/分で行った。
(2)ステンレス(SUS)に対するはく離接着強さ
厚さ25μmのポリイミドフィルムKapton200H(デュポン社製)とセパレータ(離型紙)のついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがした接着フィルム面に厚さ0.1mmのステンレス板SUS403を100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、3分間)を行い、150℃、2時間の後硬化を行ったものを試験片とした。硬化した試験片をJIS K 6854−3に準拠し、T形はく離接着強さを測定した。はく離温度は、23℃、はく離速度は10mm/分で行った。
(3)ガラス・エポキシ複合基板(ガラエポ基板、GE)に対するはく離接着強さ
厚さ25μmのポリイミドフィルムKapton200H(デュポン社製)とセパレータ(離型紙)のついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがした接着フィルム面に厚さ0.3mmのガラス・エポキシ複合基板を100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、3分間)を行い、150℃、2時間の後硬化を行ったものを試験片とした。硬化した試験片をJIS K 6854−3に準拠し、T形はく離接着強さを測定した。はく離温度は、23℃、はく離速度は10mm/分で行った。
(4)リフローはんだ耐熱性
厚さ35μmの圧延銅箔とセパレータのついた接着フィルムの接着フィルム面を100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがし、セパレータをはがした接着フィルム面にさらに35μmの圧延銅箔を100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、3分間)を行い、150℃、2時間の後硬化を行ったものを試験片とした。上記試験片をJIS C 6481に準拠し、加湿条件(温度40℃、相対湿度80%)に12時間放置した後、リフローはんだ付け装置(日本パルス研究所製、RF430)を用いて、試験片の表面最高温度が260℃となるように、試験片を加熱し、接着剤層のフクレの有無を観測した。膨れ、剥がれのなかったものを「○」として評価し、膨れ、剥がれのあったものを「×」として評価した。
【0053】
(5)流れ出し性
厚さ25μmのポリイミドフィルムKapton100Hとセパレータのついた接着フィルムの接着フィルム面を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた後、上記のセパレータをはがし、セパレータをはがした接着フィルム面にさらに25μmのポリイミドフィルムKapton100Hを100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せ試験片とした。上記試験片を80mm×80mmに切出し、プレス(160℃、3MPa、20分)を行った。その後、四辺それぞれの最大はみ出し部分をノギスにて測定し、その平均を流れ出し量(mm)とした。流れ出し量の評価は、0.5mm未満であったものを「○」として、0.5mm以上であったものを「×」として評価した。
【0054】
【表1】

表中の部数は溶剤を除いた重量%比
【0055】
【表2】

表中の部数は溶剤を除いた有効成分の重量%比
【0056】
本発明は、(A)カルボキシル基含有アクリルゴム、(B)シラン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂、(D)フェノール樹脂、(E)ジシアンジアミドを必須成分とした接着剤組成物であるが、比較例に示すように、(B)シラン変性エポキシ樹脂を用いない場合(比較例1)、硬化剤に(E)ジシアンジアミドを用いない場合(比較例2、3、4)は、いずれもリフローはんだ耐熱性に劣り、膨れや剥がれが発生した。また、プレスした際に接着剤層が周辺に押し出され過ぎる流れ出し性に劣る。さらに、はく離接着強さがガラス・エポキシ複合基板に対し6〜8N/m、ポリイミドフィルムに対し5〜7N/m、ステンレスに対し3〜6N/mであり、ガラス・エポキシ複合基板よりポリイミド、ステンレスに対しての接着性は劣る。これに対し、本発明の接着剤組成物を用いた接着フィルムでは、リフローはんだ耐熱性、流れ出し性は良好であり、また、はく離接着強さがガラス・エポキシ複合基板に対し12〜15N/m、ポリイミドフィルムに対し10〜12N/m、ステンレスに対し10〜12N/mであり、比較例に対して大幅に接着性に優れると共にガラス・エポキシ複合基板に対してポリイミド、ステンレスの接着性はほぼ同等程度であり、接着性に優れる。
本発明によれば、(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴム、(B)特定のシラン変性エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂、(D)フェノール樹脂、(E)ジシアンジアミドを必須成分として用いることで金属などの補強板への接着性、耐熱性に優れた接着剤組成物、それを用いた接着フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂固形分に対し、下記の(A)〜(E)を必須成分として含む接着剤組成物。
(A)カルボキシル基を含有するアクリルゴム10〜98重量%、
(B)(b1)エポキシ当量180〜400g/eqのエポキシ樹脂と、(b2)少なくとも1分子中に1つの水酸基をもつエポキシ化合物、および(b3)アルコキシシラン部分縮合物を脱アルコール反応させたシラン変性エポキシ樹脂2〜50重量%、
(C)エポキシ樹脂5〜90重量%、
(D)フェノール樹脂2〜50重量%、
(E)ジシアンジアミド0.01〜10重量%
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤組成物を用いた接着フィルム。

【公開番号】特開2009−67931(P2009−67931A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239391(P2007−239391)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】