説明

接着補助剤付き金属箔並びにこれを用いたプリント配線板及びその製造方法

【課題】無電解めっきが可能である接着補助剤付金属箔並びに微細配線形成や電気特性、製造コストの上で有利であって、尚且つ信頼性が高く、吸湿耐熱性に優れたプリント配線板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】厚さ0.1〜10μmの接着補助剤の層を表面の十点平均粗さがRz=2.0μm以下の金属上に有し、かつ金属を化学的に除去した接着補助剤表面を化学的に粗化することにより無電解めっきが可能となる接着補助剤付金属箔であって、前記金属箔がニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト及びこれらの酸化物から選択される少なくとも一種により防錆処理された銅箔であり、前記接着補助剤が(A)エポキシ樹脂、(B)化学粗化可能な高分子成分、(C)エポキシ樹脂硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含み、前記(A)エポキシ樹脂の10〜80重量%がゴム変性エポキシ樹脂であり、前記(B)成分がアクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子、ポリビニルアセタール樹脂、及びカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも一種である、接着補助剤付金属箔、並びにこれを用いて,通常の工法により作製したプリント配線板及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着補助剤付金属箔及びそれを用いたプリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化・高速化の要求が高まり、プリント配線板の高密度化が進んでおり、近年、電気めっきを用いたセミアディティブ法によるプリント配線板の製造方法が注目されている。このセミアディティブ法は、例えば、特許文献1にあるように回路を形成したい樹脂表面にレーザー等でIVHとなる穴を形成した後に、化学粗化やプラズマ処理等により数μmの凹凸を樹脂上に形成し、Pd触媒を付与し、1μm程度の無電解めっきを行い、パターン電気めっきレジストを形成し、パターン電気めっきにより回路形成を行った後にレジスト及び回路以外の部分に存在する給電層を除去する手法であり、サイドエッチングの大きいサブトラクティブ法に比べ、より微細な配線形成を可能とするものである。さらに、樹脂付き金属箔上にセミアディティブ法により回路形成を行う方法もある。近年は金属箔の厚みを薄くするために、例えば、特許文献2にあるような支持金属箔上に5μm以下の厚みの金属箔が形成されている引き剥がし可能なタイプの金属箔が用いられる。この手法では、絶縁樹脂層の表面に無電解めっきを施す必要がなく、より信頼性の高いプリント配線板を作製できる。また、特許文献3にあるようにポリイミドフィルムの片面に電子ビーム蒸着装置を用いて1μm程度の銅層を形成し、接着剤やプリプレグを介して内層回路に積層し、給電層とする方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−4254号公報
【特許文献2】特開2003−158364号公報
【特許文献3】特開平7−221444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公知の方法の内、数μmの凹凸を樹脂上に形成する方法や樹脂付き金属箔上にセミアディティブ法により回路形成を行う方法は、粗化形状が微細配線形成の妨げになるだけでなく、粗化形状により電気特性が低下する不具合が発生する。また、ポリイミドフィルムの片面に電子ビーム蒸着装置を用いて1μm程度の銅層を形成し、接着剤やプリプレグを介して内層回路に積層し、給電層とする方法は粗化形状を形成しないため、微細配線形成や電気特性上有利であるが、基板自体が高価になってしまい汎用性が乏しい。
【0005】
本発明は公知の方法の不具合点を解消し、無電解めっきが可能である接着補助剤付金属箔並びに微細配線形成や電気特性、製造コストの上で有利な配線板を提供するものであり、尚且つ信頼性が高く、吸湿耐熱性に優れた配線板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次の発明に関する。
(1) 厚さ0.1〜10μmの接着補助剤の層を表面の十点平均粗さがRz=2.0μm以下の金属上に有し、かつ金属を化学的に除去した接着補助剤表面を化学的に粗化することにより無電解めっきが可能となる接着補助剤付金属箔であって、前記金属箔がニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト及びこれらの酸化物から選択される少なくとも一種により防錆処理された銅箔であり、前記接着補助剤が(A)エポキシ樹脂、(B)化学粗化可能な高分子成分、(C)エポキシ樹脂硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含み、前記(A)エポキシ樹脂の10〜80重量%がゴム変性エポキシ樹脂であり、前記(B)成分がアクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子、ポリビニルアセタール樹脂、及びカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも一種である、接着補助剤付金属箔。
(2) (A)成分100重量部に対し,(B)成分が0.5〜25重量部である(1)に記載の接着補助剤付金属箔。
(3) (C)成分がノボラック型フェノール樹脂またはトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の接着補助剤付金属箔。
(4) 金属箔表面に接着力の促進を目的とする粗化処理を施していないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の接着補助剤付金属箔。
) (1)〜()のいずれかに記載の接着補助剤付金属箔を用いて,通常の工法により作製したプリント配線板。
) (1)〜()のいずれかに記載の接着補助剤付金属箔とプリプレグとを積層一体化し積層板を得る工程、前記積層板に回路加工をする工程を有するプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着補助剤付き金属箔を使用することにより,微細配線の形成が可能でありながら,通常の銅箔を使用した場合とほぼ同等の引き剥がし強さを有することができ,かつ吸湿耐熱性に優れたプリント配線板を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は,厚さ0.1〜10μmの接着補助剤の層を表面の十点平均粗さがRz=2.0μm以下の金属上に有し、かつ金属を化学的に除去した接着補助剤表面を化学的に粗化することにより無電解めっきが可能である接着補助剤付金属箔を提供するものであり,本発明によると、微細配線形成や電気特性、製造コストの上で有利であって、尚且つ信頼性が高く、吸湿耐熱性、高周波特性が良好なプリント配線板を提供することが可能となる。
【0009】
本発明に用いる金属箔の表面粗さはJISB0601に示す10点平均粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることが電気特性上好ましい。金属箔には銅箔、ニッケル箔、アルミ箔などを用いることができるが、通常は銅箔を使用する。銅箔の製造条件は、硫酸銅浴の場合、硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dmの条件、ピロリン酸銅浴の場合、ピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dmの条件が一般的によく用いられ、銅の物性や平滑性を考慮して各種添加剤をいれる場合もある。銅箔は,通常粗し処理とよばれる粗面化処理を行うが、本発明では実質的な粗化処理を行わず、銅箔が足を有さないことを特徴とする。「銅箔が足を有さない」とは、銅箔の凹凸が少ないことを意味する。銅箔の凹凸が少ないと、エッチングの際に樹脂上の回路がない部分に銅箔残さが残らない。
また,Rz=2.0μm以下であれば,銅箔の粗化処理がされていない光沢面を用いることもできる。
【0010】
金属箔の厚みは,特に限定されるものではない。一般にプリント配線板に用いられている,厚み105μm以下の金属箔で構わないが,表面粗さRzが両面とも2.0μm以下である金属箔を用いると良い。より微細配線を形成するためには、好ましくは、厚みが5.0μm以下のピーラブルタイプであり、かつ表面粗さRzが両面とも2.0μm以下である金属箔を用いると良い。尚、ピーラブルタイプの代わりに,アルミキャリアやニッケルキャリアを有するようなエッチャブルタイプの銅箔を用いることもできる。
【0011】
金属箔の樹脂接着面に行う防錆処理は、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト及びこれらの酸化物のいずれか、若しくはそれらの合金を用いて行うことができるが、亜鉛及びクロムから選択される少なくとも一種により行われることが好ましい。これらはスパッタや電気めっき、無電解めっきにより金属箔上に薄膜形成を行うものであるが、コストの面から電気めっきが好ましい。具体的にはめっき層にニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトの内一種類以上の金属塩を含むめっき層を用いてめっきを行う。後の信頼性等の観点から、亜鉛を含むめっきを行うのが好適である。金属イオンの析出を容易にするためにクエン酸塩、酒石酸塩、スルファミン酸等の錯化剤を必要量添加することも出来る。めっき液は通常酸性領域で用い、室温(25℃)〜80℃の温度で行う。めっきは通常電流密度0.1〜10A/dm、通電時間1〜60秒、好ましくは1〜30秒の範囲から適宜選択する。防錆処理金属の量は、金属の種類によって異なるが、合計で10〜2000μg/dmが好適である。防錆処理が厚すぎるとエッチング阻害と電気特性の低下を引き起こし、薄すぎると樹脂とのピール強度低下の要因となりうる。
【0012】
さらに、防錆処理上にクロメート処理層が形成されていると樹脂とのピール強度低下を抑制できるため有用である。具体的には六価クロムイオンを含む水溶液を用いて行われる。クロメート処理は単純な浸漬処理でも可能であるが、好ましくは陰極処理で行う。重クロム酸ナトリウム0.1〜50g/L、pH1〜13、浴温0〜60℃、電流密度0.1〜5A/dm、電解時間0.1〜100秒の条件で行うのが良い。重クロム酸ナトリウムの代わりにクロム酸或いは重クロム酸カリウムを用いて行うことも出来る。
【0013】
本発明においては、金属箔の最外層にさらにシランカップリング剤を吸着していることが好ましい。シランカップリング剤としては例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ官能性シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のオレフィン官能性シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランなどが用いられる。後に塗工する接着補助剤との相性を考えると、分子内にエポキシ基あるいはアミノ基を有することが望ましい。これらは単独で用いることもできるし、複数を混合して用いても良い。これらのカップリング剤は、例えば水などの溶媒に0.1〜15g/Lの濃度で溶解させて室温(25℃)〜50℃の温度で金属箔に塗布したり、電着させたりして吸着させる。これらのシランカップリング剤は金属箔表面の防錆金属の水酸基と縮合結合することで皮膜を形成する。シランカップリング処理後は加熱、紫外線照射等によって安定的結合を形成する。加熱であれば例えば100〜200℃の温度で2〜60秒乾燥させる。紫外線照射であれば例えば200〜400nm、200〜2500mJ/cmの範囲で行う。
【0014】
例えばシランカップリング剤処理を行った銅箔上にエポキシ樹脂を成分とする接着補助剤を銅箔上に塗布する。塗布する厚みは0.1〜10μmとなることが望ましく、0.1〜5.0μmの範囲であることが更に望ましい。
【0015】
本発明の接着補助剤は、(A)エポキシ樹脂、(B)化学粗化可能な高分子成分、(C)エポキシ樹脂硬化剤を含み,(A)成分のうち,10〜80重量%がゴム変性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0016】
(A)成分はノボラック型エポキシ樹脂、又はノボラック型エポキシ樹脂を含むことが望ましい。本発明におけるノボラック型エポキシ樹脂は、ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有したノボラック型のエポキシ樹脂をいい、例えば、下記式(1)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0017】
【化1】

(但し、式中、pは、1〜5を示す)
【0018】
市販品としては、日本化薬株式会社製のNC−3000S(pが1.7の式(1)のエポキシ樹脂)、NC−3000S−H(pが2.8の式(1)のエポキシ樹脂)が挙げられる。
【0019】
(A)成分中に含まれるゴム変性エポキシ樹脂は,接着剤用または塗料用として市販されている製品であれば,とくに制限なく使用することができる。
【0020】
市販品としては,大日本インキ化学工業株式会社製のEPICLON TSR−960や,東都化成株式会社製のEPOTOHTO YR−102や,住友化学株式会社のスミエポキシ ESC−500などが挙げられる。
【0021】
ゴム変性エポキシ樹脂の含有量は,全エポキシ樹脂の10〜80重量%がよい。ゴム変性エポキシ樹脂を配合すると,粗化処理をされていない金属箔表面への接着性が向上する。しかしながら,10重量%未満では,その効果を十分に発揮することができず,80重量%を超えると,耐熱性に劣る。30〜70重量%の範囲がより好ましい。また,ゴム変性エポキシ樹脂は,2種類以上を使用しても良いが,その総量は前述の重量%以内でなければならない。
【0022】
(B)成分は架橋ゴム粒子であることが好ましく、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子,カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子,ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子から選択される少なくとも一種からなることが好ましい。
アクリロニトリルブタジエンゴム粒子とは、アクリロニトリル、ブタジエンを共重合させ、かつ共重合する段階で、部分的に架橋させ、粒子状にしたものである。またアクリル酸,メタクリル酸等のカルボン酸を併せて共重合することにより,カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子を得ることも可能である。ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子は,乳化重合でブタジエン粒子を重合させ,引き続きアクリル酸エステル,アクリル酸等のモノマーを添加して重合を続ける二段階の重合方法で得ることができる。粒子の大きさは、一次平均粒子径で、50nm〜1μmにすることができる。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0023】
例えば、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の市販品としては日本合成ゴム株式会社製のXER−91が挙げられ,ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子は呉羽化学工業株式会社製のEXL−2655や武田薬品工業株式会社のAC−3832が挙げられる。
【0024】
(B)成分としてポリビニルアセタール樹脂,カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも一種からなることも好ましい。
【0025】
ポリビニルアセタール樹脂の種類、水酸基量、アセチル基量は特に限定されないが、重合度は1000〜2500のものが好ましい。この範囲にあると、はんだ耐熱性が確保でき、また、ワニスの粘度、取り扱い性も良好である。ここでポリビニルアセタール樹脂の数平均重合度は、たとえば、その原料であるポリ酢酸ビニルの数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定する)から決定することができる。また、カルボン酸変性品などを用いることもできる。
【0026】
ポリビニルアセタール樹脂は、たとえば、積水化学工業(株)製の商品名、エスレックBX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BX−7、BH−3、BH−S、KS−3Z、KS−5、KS−5Z、KS−8、KS−23Z、電気化学工業(株)製の商品名、電化ブチラール4000−2、5000A、6000C、6000EP等を使用することができる。これらの樹脂は単独で、または2種類以上混合して用いることもできる。
【0027】
(B)成分として架橋ゴム粒子とポリビニルアセタール樹脂を併用すると金属箔の引き剥がし強さや化学粗化後の無電解めっきの引き剥がし強さが向上しさらに好ましい。
【0028】
(A)成分の100重量部に対し,(B)成分が0.5〜25重量部であることが好ましい。(B)成分が0.5重量部未満では,ピール強度や化学粗化後の無電解めっきのピール強度が低く,25重量部を超えるとはんだ耐熱性等や絶縁信頼性が低下するため,好ましくない。特に架橋ゴム粒子とポリビニルアセタール樹脂をそれぞれ1重量部以上であると,金属箔の引き剥がし強さや化学粗化後の無電解めっきの引き剥がし強さが向上し,さらに好ましい。
【0029】
(C)成分はノボラック型フェノール樹脂であることが好ましく、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂であると金属箔の引き剥がし強さや化学粗化後の無電解めっきの引き剥がし強さが向上し,さらに好ましい。
【0030】
本発明における、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂とは、ノボラック型フェノール樹脂の主鎖にトリアジン環を含むノボラック型フェノール樹脂を示し,トリアジン環を含むクレゾールノボラック型フェノール樹脂でも構わない。窒素含有量は、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂中、10〜25重量%が好ましく、より好ましくは12〜19重量%である。分子中の窒素含有量がこの範囲であると、誘電損失が大きくなりすぎることもなく、接着補助剤をワニスとする場合に、溶剤への溶解度が適切で、未溶解物の残存量が抑えられる。トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、数平均分子量が、500〜600であるものを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0031】
なお、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、フェノールとアデヒドとトリアジン環含有化合物を、pH5〜9の条件下で反応させて得ることができる。フェノールに換えクレゾールを用いるとトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂となる。クレゾールは、o−、m−、p−クレゾールのいずれも使用することができ、トリアジン環含有化合物としてはメラミン、グアナミン及びその誘導体、シアヌル酸及びその誘導体を使用することができる。
【0032】
市販品としては、大日本インキ化学工業(株)製のトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂フェノライトEXB−9829(窒素含有量18重量%)が挙げられる。
【0033】
(D)成分の反応促進剤として、どのようなものを用いても構わないが,潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類やBFアミン錯体を配合することが好ましい。接着補助剤の保存安定性、Bステージにした際の取り扱い性及びはんだ耐熱性の点から、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテートが好ましい。
【0034】
(D)成分の配合量は、接着補助剤中の(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲が好ましく,0.3〜1重量部の範囲がより好ましい。これらの範囲にあると、十分なはんだ耐熱性、良好な接着補助剤の保存安定性及びBステージにした際の良好な取り扱い性が得られる。
【0035】
本発明の接着補助剤には難燃性を向上させるため、(E)フェノール性水酸基含有リン化合物を含有させても良い。(E)フェノール性水酸基含有リン化合物は、下記式(2)で示されるような、フェノール性水酸基を含有するリン化合物である。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
【化2】

【0037】
式(2)中、nが、1の場合、Rは、水素原子、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、nが2の場合、それぞれのRは独立して、水素原子、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であるか、2つのRは、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、非置換又はアルキル基若しくはシクロアルキル基で置換されているベンゼン環を形成し、xは、2以上の自然数である。
【0038】
式(2)において、Rが直鎖状若しくは分枝状のアルキル基の場合、C1〜C6アルキル基が好ましく、シクロアルキル基の場合は、C6〜C8シクロアルキル基が好ましい。アリール基の場合、フェニル基が好ましく、アラルキルの場合、C7〜C10アラルキル基が好ましい。xは、2が好ましい。また、式(2)において、nが2であり、2つのRが、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、2つのRは、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、非置換又はアルキル基若しくはシクロアルキル基で置換されているベンゼン環を形成する場合は、非置換又はC1〜C4アルキル基若しくはC6〜C8シクロアルキル基で置換されているベンゼン環が好ましい。
【0039】
具体的には、下記(3)又は式(4)で示されるリン化合物が挙げられる。
【0040】
【化3】

(式中、Rは、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基、シクロヘキシル基を表す)
【0041】
特に、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド及びそれらの誘導体が好ましい。
【0042】
市販品としては、三光株式会社製のHCA−HQが挙げられる。
【0043】
難燃性を付与する場合、本発明の接着補助剤における、(E)フェノール性水酸基含有リン化合物の配合量は、(A)〜(D)成分の重量の合計中、リン原子換算で、1.5〜3.5重量%の範囲が好ましく、より好ましくは1.8〜2.5重量%の範囲である。配合量がこの範囲にあると、難燃性が良好で、絶縁信頼性に優れ、かつ硬化塗膜のTgが低すぎることもない。
【0044】
本発明における接着補助剤には信頼性向上のため、(F)無機フィラーを含有していても良い。
【0045】
本発明における、(F)無機フィラーは、特に限定されないが、シリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、アエロジル及び炭酸カルシウムが挙げられる。無機フィラーには、分散性を高める等の目的で、これらをシランカップリング剤等の各種カップリング剤で処理したものを含む。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、誘電特性や低熱膨張の点からシリカが好ましい。
【0046】
(F)成分である無機フィラーの配合量は、(A)〜(E)成分の容積の合計中、5〜35容積%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、10〜30容積%である。配合量がこの範囲にあると、熱膨張係数と誘電損失が大きくなることもなく、絶縁層を内層回路上に形成するのに、十分なフローが得られる。なお、本発明の接着補助剤に無機フィラーを分散させるには、例えば、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等既知の混練方法を用いることができる。
【0047】
本発明の接着補助剤には、必要に応じて、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等の添加剤を配合してもよい。
【0048】
以上のように作製した接着補助剤は、例えば溶剤に希釈してワニスにして、銅箔に塗工する。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、エチルエトキシプロピオネート等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶剤は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。接着補助剤に対する溶剤の使用量は、特に限定されず、従来から使用されている量とすることができる。
【0049】
本発明の接着補助剤、及び上記のワニスを、金属箔の片面に塗工し、半硬化させることにより、接着補助剤付金属箔が完成する。
【0050】
接着補助剤をワニスとして、コンマコータやグラビアコータで金属箔に塗工する場合は、接着補助剤の全固形分量が、10〜30重量%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましいが、またフィルム形成用の設備にあわせて量を調整することもできる。
【0051】
以上のような接着補助剤付金属箔を用いた基板の製造方法は,接着補助剤付金属箔とプリプレグとは従来公知の方法により積層一体化され,積層板を得ることができる。更に前記積層板に、従来公知の方法により回路加工し、プリント配線板を得ることができる。
【0052】
以上示した方法により,2層から成る積層板が完成する。以上のように作製したコア基板は導体回路の表面粗さがRz=2.0μm以下であり、コア基板の絶縁層の表面粗さがRz=2.0μm以下であることが電気特性上望ましい。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
下記に示す樹脂組成物Aを作製した。
(樹脂組成物Aの作製)
・ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、NC3000S−H(日本化薬株式会社製)35重量部
・ゴム変性エポキシ樹脂,EPICLON TSR−960(大日本インキ化学工業株式会社製)30重量部
・カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、XER−91SE−15(JSR株式会社製)5重量部
・カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂,KS−23Z(積水化学工業株式会社製)10重量部
・トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、フェノライトLA−3018(窒素含有量18重量%、水酸基当量151、大日本インキ化学工業株式会社製)20重量部
・イミダゾール誘導体化合物、1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製)0.3重量部
・溶剤、メチルエチルケトン
【0054】
(金属箔Aの作製)
幅510mm、厚み12μmの電解銅箔(製品名F0−WS12:古河サーキットフォイル社製。Rz=1.2μm)の光択面に,上記樹脂組成物Aを塗工し金属箔Aを作製した。塗工後は残溶剤が5重量%以下になるように160℃で10分程度の乾燥を行った。塗工した樹脂組成物Aの厚みは,3.0μmであった。
【0055】
日立化成工業株式会社製 ガラス布基材高Tgエポキシ樹脂プリプレグGEA−679F (厚み0.1mm)4枚とその上下に樹脂組成物Aが塗工された面がプリプレグに接するように金属箔Aを積層し、180℃、2.5MPaの条件で1時間プレス成形し,銅張積層板を製造した。銅箔を化学的に除去し、樹脂組成物Aの表面を化学的に粗化し、さらに無電解(銅)めっきを行った。
【0056】
次に、ドライフィルムフォトレジストであるRY−3325(日立化成工業株式会社製、商品名)を、無電解(銅)めっき層の表面にラミネートし、電解銅めっきを行う箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し、現像してめっきレジストを形成した。
【0057】
電解銅めっきにより最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=20/20μmとなるように回路パターンを形成した。
【0058】
次に、レジスト剥離液であるHTO(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)でドライフィルムの除去を行った。コア基板の絶縁層の表面粗さRz=1.2μmであり、導体回路の表面粗さRz=1.1μmであった。なお、表面粗さはJIS−B−0601に基づき測定した。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、金属箔Aを作製する際、樹脂組成物Aを8μmの厚みに塗布したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0060】
(実施例3)
実施例1において、ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂(NC3000S−H)の配合量を50重量部、ゴム変性エポキシ樹脂(TSR−960)の配合量を30重量部,カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子(XER−91SE−15)の配合量を2重量部,カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂(KS−23Z)の配合量を5重量部,トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(フェノライトLA−3018)の配合量を13重量部とした。その他は、実施例1と同様にして行った。
【0061】
(実施例4)
実施例1において,カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子5重量部の代わりに,ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子,EXL−2655(呉羽化学工業株式会社)5重量部を用いた。その他は、実施例1と同様にして行った。
【0062】
(実施例5)
実施例1において,トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂20重量部の代わりに,フェノールノボラック樹脂,HP−850N(日立化成工業株式会社)15重量部を用いた。その他は、実施例1と同様にして行った。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、金属箔Aを積層する代わりにF0−WS12箔を積層したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0064】
(比較例2)
実施例1の樹脂組成物Aを作製する際に,EPICLON TSR−960を用いず,NC−3000S−Hを65重量部とした他は,実施例1と同様に基板を作製した。
【0065】
(導体引き剥がし強さの測定)
実施例1〜5、比較例1〜2用の評価サンプルの導体引き剥がし強さを測定した。引き剥がしは垂直引き剥がし強さを測定した。測定は常に20℃で行った。測定方法は,JIS−C−6481に準じた。
【0066】
(吸湿耐熱試験)
実施例1〜5、比較例1〜2用基板及び評価用サンプルの吸湿耐熱試験を行った。基板の試験は各サンプルを121℃、湿度100%、2気圧の条件で2時間処理し、その後260℃のはんだ浴に20秒浸漬して,基板に膨れ等が発生しないかどうかの確認を行った。試験には平山製作所製飽和型PCT装置PC−242を用いた。
【0067】
(試験結果)
試験結果を下記表1に示す。実施例1〜5で作製した基板及び評価用サンプルは導体引き剥がし強さはすべて0.6kN/m以上と高い値であった。一方比較例1および2で得られた基板及び評価用サンプルは導体引き剥がし強さが弱く、吸湿耐熱試験後内層導体と絶縁層の間で膨れが発生した。また接続信頼性も良好な結果が得られなかった。
【0068】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.1〜10μmの接着補助剤の層を表面の十点平均粗さがRz=2.0μm以下の金属上に有し、かつ金属を化学的に除去した接着補助剤表面を化学的に粗化することにより無電解めっきが可能となる接着補助剤付金属箔であって、前記金属箔がニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト及びこれらの酸化物から選択される少なくとも一種により防錆処理された銅箔であり、前記接着補助剤が(A)エポキシ樹脂、(B)化学粗化可能な高分子成分、(C)エポキシ樹脂硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含み、前記(A)エポキシ樹脂の10〜80重量%がゴム変性エポキシ樹脂であり、前記(B)成分がアクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子、ポリビニルアセタール樹脂、及びカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも一種である、接着補助剤付金属箔。
【請求項2】
(A)成分100重量部に対し,(B)成分が0.5〜25重量部である請求項1に記載の接着補助剤付金属箔。
【請求項3】
(C)成分がノボラック型フェノール樹脂またはトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着補助剤付金属箔。
【請求項4】
金属箔表面に接着力の促進を目的とする粗化処理を施していないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着補助剤付金属箔。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の接着補助剤付金属箔を用いて,通常の工法により作製したプリント配線板。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の接着補助剤付金属箔とプリプレグとを積層一体化し積層板を得る工程、前記積層板に回路加工をする工程を有するプリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2012−250543(P2012−250543A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198395(P2012−198395)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2006−2372(P2006−2372)の分割
【原出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】