説明

接続構造体の製造方法

【課題】電極間の導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】接続構造体の製造方法は、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2上に、導電性粒子5を含む異方性導電材料を用いた異方性導電材料層を配置する工程と、該異方性導電材料層の上面に、電極4bを下面4aに有する第2の接続対象部材4を積層する工程と、第2の接続対象部材4の上面4cに、加熱圧着ヘッド11を降下させる工程と、第2の接続対象部材4の上面4cから、上記加熱圧着ヘッド11を引き上げる工程とを備える。接続構造体の製造方法では、上記加熱圧着ヘッド11を降下させる際に、該加熱圧着ヘッド11が第2の接続対象部材4の上面4cに接するまでの上記加熱圧着ヘッド11の降下速度を50mm/s以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた接続構造体の製造方法に関し、より詳細には、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間を、導電性粒子を介して電気的に接続する接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂などに複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、並びに半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、半導体チップの電極とガラス基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0005】
また、上記接続構造体の製造方法の一例として、下記の特許文献1には、絶縁性接着剤を基材として導電性粒子が分散された異方性導電フィルムを介して、第1及び第2被接続部材を互いに接着する接続構造体の製造方法が開示されている。ここでは、熱圧着によって上記第1及び第2被接着部材を接着する際に、上記第1被接続部材の表面に形成される圧痕の表面粗度値(Ra)を0.1μm以上、5.0μm以下にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/083963A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のように、被接続部材に表面粗度値(Ra)が0.1μm以上、5.0μm以下である圧痕を形成したとしても、得られる接続構造体において、電極間の接続抵抗が高くなったり、電極間が確実に導通されなかったりすることがある。すなわち、得られる接続構造体において、導通信頼性が低いことがある。
【0008】
本発明の目的は、電極間の導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた異方性導電材料層を配置する工程と、該異方性導電材料層の上面に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、該第2の接続対象部材の上面に、加熱圧着ヘッドを降下させる工程と、上記第2の接続対象部材の上面から、上記加熱圧着ヘッドを引き上げる工程とを備え、上記加熱圧着ヘッドを降下させる際に、該加熱圧着ヘッドが上記第2の接続対象部材の上面に接するまでの上記加熱圧着ヘッドの降下速度を50mm/s以上にする、接続構造体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、上記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と導電性粒子とを含む異方性導電材料が用いられ、上記加熱圧着ヘッドを降下させた後に、上記加熱圧着ヘッドが上記第2の接続対象部材の上面に接した状態で、上記異方性導電材料層を硬化させる工程がさらに備えられ、上記異方性導電材料層を硬化させる工程の後、上記加熱圧着ヘッドが引き上げられる。
【0011】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記加熱圧着ヘッドを上記第2の接続対象部材の上面から引き上げた直後の上記異方性導電材料層又はその硬化物層中の上記熱硬化性化合物の反応率が80%以上である。
【0012】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記異方性導電材料として、上記加熱圧着ヘッドを降下させて、該加熱圧着ヘッドの下面が上記第2の接続対象部材の上面に接した直後に流動する異方性導電材料を用いる。
【0013】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記加熱圧着ヘッドが上記第2の接続対象部材の上面に接してから、上記加熱圧着ヘッドを上記第2の接続対象部材の上面から引き上げるまでの時間が8秒以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、第1の接続対象部材上に配置された異方性導電材料層の上面に第2の接続対象部材を積層した後、該第2の接続対象部材の上面に加熱圧着ヘッドを降下させて、次に、上記第2の接続対象部材の上面から上記加熱圧着ヘッドを引き上げるので、更に上記加熱圧着ヘッドを降下させる際に、該加熱圧着ヘッドが上記第2の接続対象部材の上面に接するまでの上記加熱圧着ヘッドの降下速度を50mm/s以上にするので、電極と導電性粒子とを精度よく接触させることができる。従って、電極間の導通信頼性に優れた接続構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための正面断面図である。
【図3】図3(a)〜(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための正面断面図である。
【図4】図4は、電極に形成された凹部を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体の一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0018】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0019】
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0020】
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る接続構造体の製造方法では、図1に示す接続構造体1は、以下のようにして得られる。
【0022】
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。また、導電性粒子5を含む異方性導電材料を用意する。ここでは、該異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と導電性粒子5とを含む異方性導電材料を用いている。
【0023】
次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、導電性粒子5を含む異方性導電材料を積層して、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成し、配置する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。異方性導電材料が異方性導電ペーストである場合には、異方性導電ペーストの積層は、異方性導電ペーストの塗布により行われる。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、異方性導電材料層3Aの上面3aに、電極4bを下面4aに有する第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0025】
なお、第2の接続対象部材4を積層する前に、異方性導電材料層3Aに光を照射したり、熱を付与したりして、異方性導電材料層3AをBステージ化してもよい。異方性導電材料層3Aは、Bステージ化した異方性導電材料層であってもよい。
【0026】
次に、図3(a)に示すように、第2の接続対象部材4の上面4cに、加熱圧着ヘッド11を降下させる。このとき、加熱圧着ヘッド11が第2の接続対象部材4の上面4cに接するまでの加熱圧着ヘッド11の降下速度を50mm/s以上にする。本実施形態では、加熱圧着ヘッド11を降下させた後に、加熱圧着ヘッド11の下面11aが第2の接続対象部材4の上面4cに接した状態で、異方性導電材料層3Aを硬化させて、硬化物層である接続部3を形成している。
【0027】
異方性導電材料層3Aを硬化させた後、図3(b)に示すように、加熱圧着ヘッド11を第2の接続対象部材4の上面4cから引き上げて、接続構造体1を得る。
【0028】
また、加熱圧着ヘッド11を第2の接続対象部材4の上面4cから引き上げた後、接続部3をさらに加熱して、硬化させてもよい。
【0029】
本実施形態では、加熱圧着ヘッド11が第2の接続対象部材4の上面4cに接するまでの加熱圧着ヘッド11の降下速度Aを50mm/s以上にすることによって、導電性粒子5と電極2bとの間及び導電性粒子5と電極4bとの間に存在する樹脂成分を効果的に排除することができる。上記樹脂成分は、異方性導電材料中の導電性粒子5を除く成分である。上記導電性粒子を除く成分としては、熱硬化性化合物及び熱硬化剤等が挙げられる。上記樹脂成分を排除することにより、導電性粒子5と電極2b,4bとを効果的に接触させることができる。従って、得られる接続構造体1における電極2b,4b間の導通信頼性を高めることができる。また、降下速度Aが50mm/s以上であると、導電性粒子5と電極2b,4bとの接触面積をより一層大きくしたり、図4に示すように、電極2bに導電性粒子5が押し込まれた凹部2c(圧痕)を形成したり、電極4bに導電性粒子5が押し込まれた凹部(圧痕)を形成したりすることができる。このため、得られる接続構造体1における電極2b,4b間の導通信頼性をより一層高めることも可能である。
【0030】
導電性粒子5と電極2b,4bとをより一層精度よく接触させて、電極2b,4b間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記降下速度Aは、好ましくは60mm/s以上、好ましくは100mm/s以下、より好ましくは90mm/s以下である。
【0031】
加熱圧着ヘッド11を第2の接続対象部材4の上面4cから引き上げた直後の異方性導電材料層又はその硬化物層中の熱硬化性化合物の反応率Rは、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上、100%以下である。上記反応率Rが高いほど、圧痕が十分に形成できるようになる。特に、上記反応率Rが80%以上であると、圧痕の形成がかなり良好になる。
【0032】
なお、本明細書において、上記反応率Rとは、DSC(示差走査熱量測定機)を使用して反応性官能基の反応熱量を測定し下記式より計算される値を意味する。
【0033】
反応率R(%)=(1−(反応後の硬化物の反応熱量/未反応の硬化物の反応熱量))×100
上記異方性導電材料として、加熱圧着ヘッド11を降下させて、加熱圧着ヘッド11の下面11aが第2の接続対象部材4の上面4cに接した直後に流動する異方性導電材料を用いることが好ましい。この場合には、導電性粒子と電極間の樹脂が十分に排除され、圧痕が十分に形成できるようになる。なお、上記異方性導電材料がBステージ状態であるときに加熱圧着ヘッド11を降下させた場合には、加熱圧着ヘッド11の下面11aが第2の接続対象部材4の上面4cに接した直後にBステージ状態の異方性導電材料が溶融して流動することが好ましい。このような溶融状態を経る異方性導電材料とする方法としては、異方性導電材料にTgが室温以上圧着温度未満の樹脂を用いる方法等が挙げられる。
【0034】
加熱圧着ヘッド11が第2の接続対象部材4の上面4cに接してから、加熱圧着ヘッド11を第2の接続対象部材4の上面4cから引き上げるまでの時間H(圧着保持時間)は、好ましくは5秒以上、より好ましくは6秒以上、好ましくは10秒以下、より好ましくは8秒以下である。上記時間Hが上記下限以上及び上記上限以下であると、圧痕の形成がより一層良好になる。特に、上記時間Hが8秒以下であると、圧痕の形成がかなり良好になる。
【0035】
上記異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であり、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0036】
上記異方性導電ペーストの25℃での粘度は、好ましくは20Pa・s以上、好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散性がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。
【0037】
上記異方性導電材料は、熱硬化性化合物と熱硬化剤と導電性粒子を含むことが好ましい。以下、上記異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0038】
(熱硬化性化合物)
上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。熱硬化をより一層速やかに進行させる観点からは、上記熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物であることが好ましい。
【0040】
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0041】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0043】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
【0044】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0045】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
【0046】
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
【0047】
導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0048】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0049】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0052】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0053】
また、光の照射によっても硬化可能であるように、上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と光重合開始剤とを含んでいてもよい。光の照射によって半硬化した後、熱によって本硬化する2段階反応である場合に、上記異方性導電材料は本硬化時の反応時間を短縮させることができる。
【0054】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0055】
(実施例1)
(1)異方性導電材料の調製
下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を用意した。
【0056】
【化1】

【0057】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーであるシリカ(平均粒子径0.25μm)20重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0058】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0059】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
【0060】
(2)接続構造体の作製
L/Sが15μm/15μmのAl-4%Ti電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが15μm/15μm、1電極あたりの電極面積が1500μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップ(第2の接続対象部材)を用意した。
【0061】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が互いに対向し、接続するように積層した。その後、半導体チップの上面に、加熱圧着ヘッドを降下させて、該加熱圧着ヘッドが半導体チップの上面に接した状態で、上記異方性導電ペースト層を硬化させた。その後、上記加熱圧着ヘッドを半導体チップの上面から引き上げた。このようにして、接続構造体を作製した。
【0062】
上記加熱圧着ヘッドを降下させる際に、該加熱圧着ヘッドが上記半導体チップの上面に接するまでの上記加熱圧着ヘッドの降下速度Aを50mm/s以上とした。また、上記加熱圧着ヘッドが上記半導体チップの上面に接してから、上記加熱圧着ヘッドを半導体チップの上面から引き上げるまでの時間Hは8秒とした。
【0063】
また、加熱圧着ヘッドを引き上げる直前の異方性導電ペースト層の温度Tは180℃であった。
【0064】
(実施例2)
下記式(2B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を用意した。
【0065】
【化2】

【0066】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、上記式(2B)で表されるエピスルフィド化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を作製した。
【0067】
(実施例3)
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、エピスルフィド化合物(三菱化学社製「YL7007」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を作製した。
【0068】
(実施例4)
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、レゾルシノールグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX−201」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を作製した。
【0069】
(実施例5)
上記導電性粒子を、3μmのニッケル金属粒子に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を作製した。
【0070】
(実施例6)
上記半導体チップ(第2の接続対象部材)をフレキシブルプリント基板に変更したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を作製した。
【0071】
(実施例7〜12及び比較例1〜3)
上記温度T、上記降下速度A及び上記時間Hを下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を作製した。
【0072】
(評価)
(1)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。100ヶ所の接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。
【0073】
(2)圧痕状態
得られた接続構造体における100箇所の導電性粒子と電極との接続部分について、電極に形成された圧痕の状態を観察した。
【0074】
偏光顕微鏡を使用し、1電極あたり(1500μmあたり)に明らかな球状の圧痕が平均25個以上確認できる場合を、良好な圧痕が形成されていると判断した。また、1電極あたり(1500μmあたり)明らかな球状の圧痕が平均5個未満確認できる場合を、圧痕の形成が不十分と判断した。圧痕状態を下記の判定基準で判定した。
【0075】
[圧痕状態の判定基準]
○○:100箇所の接続部分中、明らかな球状の圧痕が平均25個以上確認できる
○:100箇所の接続部分中、明らかな球状の圧痕が平均5個以上25個未満確認できる
×:100箇所の接続部分中、明らかな球状の圧痕が平均5個未満しか確認できない
【0076】
(3)反応率R
加熱圧着ヘッドを半導体チップの上面から引き上げた直後の上記異方性導電ペースト層又はその硬化物層中の上記熱硬化性化合物の反応率Rを評価した。
【0077】
(4)異方性導電材料の流動状態
上記接続構造体の作製時において、上記加熱圧着ヘッドを降下させて、該加熱圧着ヘッドの下面が第2の接続対象部材の上面に接した直後に、異方性導電ペースト層が流動するか否かを、接続構造体の下部からカメラで観察することにより評価した。異方性導電ペースト層が流動しているか否かは、導電性粒子の流動により判断した。
【0078】
[流動状態の判定基準]
○:導電性粒子の流動が観察される
×:導電性粒子の流動が観察されない
【0079】
結果を下記の表1に示す。
【0080】
【表1】

【符号の説明】
【0081】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
2c…凹部
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電材料層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
4c…上面
5…導電性粒子
11…加熱圧着ヘッド
11a…下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた異方性導電材料層を配置する工程と、
前記異方性導電材料層の上面に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記第2の接続対象部材の上面に、加熱圧着ヘッドを降下させる工程と、
前記第2の接続対象部材の上面から、前記加熱圧着ヘッドを引き上げる工程とを備え、
前記加熱圧着ヘッドを降下させる際に、該加熱圧着ヘッドが上記第2の接続対象部材の上面に接するまでの前記加熱圧着ヘッドの降下速度を50mm/s以上にする、接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いて、
前記加熱圧着ヘッドを降下させた後に、前記加熱圧着ヘッドが前記第2の接続対象部材の上面に接した状態で、前記異方性導電材料層を硬化させる工程をさらに備え、
前記異方性導電材料層を硬化させる工程の後、前記加熱圧着ヘッドを引き上げる、請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記加熱圧着ヘッドを前記第2の接続対象部材の上面から引き上げた直後の前記異方性導電材料層又はその硬化物層中の前記熱硬化性化合物の反応率が80%以上である、請求項2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記異方性導電材料として、前記加熱圧着ヘッドを降下させて、該加熱圧着ヘッドの下面が前記第2の接続対象部材の上面に接した直後に流動する異方性導電材料を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記加熱圧着ヘッドが前記第2の接続対象部材の上面に接してから、前記加熱圧着ヘッドを前記第2の接続対象部材の上面から引き上げるまでの時間が8秒以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160615(P2012−160615A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20015(P2011−20015)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】