説明

接触判別装置

【課題】接触体、及び接触部位を精度よく判定し操作者等が意図した動作であることを正
確に判断する接触判別装置を提供することを目的とする。
【解決手段】共振周波数が異なる2以上の部位を有する被接触部材と、被接触部材に取り
付けられ、被接触部材に接触体が接触したときの振動を検出する振動検出手段と、振動検
出手段によって検出された信号の周波数帯域を2つ以上に分割する周波数分割手段と、2
つ以上に分割した周波数帯域の波形に基づいて、被接触部材に接触した接触体の硬度を判
別する接触体硬度判別手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触した物体を判別する接触判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のドアに振動センサを取付けて、乗員がドアを開こうとする操作を振動セ
ンサによって検知し解錠制御するものがある。例えば特許文献1に示すものでは、車両の
スライドドアに振動センサが設けられ、操作者によるドアハンドルの操作もしくは、操作
者のドアを叩く操作から発生する振動が検知される。そして検知された振動の周波数が解
析され解析結果が予め設定された閾値内であれば、操作者がドアハンドルを操作している
、もしくは、ドアを叩いたと判定され、解錠される。これにより例えば雨や雪等の他の環
境による振動を操作者の操作と間違えることはなく、誤作動が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すものでは、振動発生源である接触体の硬度の違いによ
る振動特性の違いについては判別していない。また叩く場所によって異なる振動特性の違
いについても判別していない。これにより人が偶然ドアを強く叩いたり、金属等の部材が
ドアに偶然接触したりしたときにも、操作者がドアを開く意図した動作と識別できず、ド
アが解錠される虞がある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、接触体、及び接触部位を精度よく判
定し操作者が意図した動作であることを正確に判断する接触判別装置を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、共振周波数が異なる2以上の
部位を有する被接触部材と、前記被接触部材に取り付けられ、前記被接触部材に接触体が
接触したときの振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段によって検出された信
号の周波数帯域を2つ以上に分割する周波数分割手段と、前記2つ以上に分割した周波数
帯域の波形に基づいて、前記被接触部材に接触した前記接触体の硬度を判別する接触体硬
度判別手段と、を備えることである。
【0007】
上記課題を解決するため、請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記2つ
以上に分割した周波数帯域の波形に基づいて、前記接触体が接触した前記被接触部材の部
位を判別する接触部位判別手段を備えたことである。
【0008】
上記課題を解決するため、請求項3に係る発明の特徴は、請求項1又は2において、前
記周波数分割手段は、前記振動検出手段が検出した振動を周波数が第1周波数より高い高
周波数成分と、周波数が前記第1周波数より低く第2周波数より高い中間周波数成分とに
分割し、前記接触体硬度判別手段は、前記高周波数成分の振幅の最大値が前記中間周波数
成分の振幅の最大値に1より大きい第1係数を乗算した値より大きい場合、前記接触体が
高硬度であると判別することである。
【0009】
上記課題を解決するため、請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、前記接触
体硬度判別手段は、前記高周波数成分の振幅の最大値が前記中間周波数成分の振幅の最大
値に前記第1係数を乗算した値より小さく、かつ前記中間周波数成分の振幅の最大値に前
記第1係数より小で1より大きい第2係数を乗算した値より小さい場合、前記接触体が高
硬度であると判別することである。
【0010】
上記課題を解決するため、請求項5に係る発明の特徴は、請求項4において、前記接触
体硬度判別手段は、前記高周波数成分及び中間周波数成分を全波整流し包絡線検波した信
号の最大電圧値を前記高周波数成分及び前記中間周波数成分の振幅の最大値として検出し
、前記高周波数成分を包絡線検波した信号の前記最大電圧値に達するまでの強制振動の信
号の範囲から強制振動信号の立ち上がり傾きを演算し、前記高周波数成分の振幅の最大値
が前記中間周波数成分の振幅の最大値に前記第1係数を乗算した値より小さく、かつ前記
中間周波数成分の振幅の最大値に前記第2係数を乗算した値より大きい場合は、前記立ち
上がり傾きが設定値より小であるとき、前記接触体が低硬度であると判別することである

【0011】
上記課題を解決するため、請求項6に係る発明の特徴は、請求項5において、前記接触
体硬度判別手段は、前記立ち上がり傾きが設定値より大であるときは、前記高周波数成分
の最大値が前記中間周波数成分の振幅の最大値に前記第1係数より小さく前記第2係数よ
り大きい第3係数を乗算した値より大きい場合に前記接触体が高硬度であると判別し、小
さい場合に前記接触体が低硬度であると判別することである。
【0012】
上記課題を解決するため、請求項7に係る発明の特徴は、請求項3〜6のいずれか1項
において、前記高周波数成分及び中間周波数成分の最大値が大きいほど前記第1係数、及
び第2係数を大きく設定することである。
【0013】
上記課題を解決するため、請求項8に係る発明の特徴は、請求項3〜7のいずれか1項
において、前記周波数分割手段は、前記振動検出手段が検出した振動を周波数が第1周波
数より高い高周波数成分と、周波数が前記第1周波数より低く第2周波数より高い中間周
波数成分と、周波数が前記第2周波数より低い低周波数成分とに分割し、前記接触部位判
別手段は、前記低周波数成分の振幅の最大値が前記高周波数成分の振幅の最大値に1より
小さい第4係数を乗算した値より大きい場合、前記接触体が接触した前記被接触部材の部
位が高共振周波数部位と判別し、小さい場合、低共振周波数部位と判別することである。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項9に係る発明の特徴は、請求項8において、前記高周
波数成分、及び低周波数成分の最大値に応じて前記第4係数を変更することである。
【0015】
上記課題を解決するため、請求項10に係る発明の特徴は、請求項1〜9のいずれか1
項において、前記被接触部材は、共振周波数が低い片持ち梁部を有し、前記振動検知手段
は前記片持ち梁部に取り付けられていることである。
【0016】
上記課題を解決するため、請求項11に係る発明の特徴は、請求項10において、前記
被接触部材は、車両のドアであり、前記接触体硬度判別手段は、前記ドアに接触した前記
接触体の硬度を判別することにより、前記接触体が人体か否か判別することである。
【0017】
上記課題を解決するため、請求項12に係る発明の特徴は、請求項8又は9において、
前記被接触部材は、車両のドアであり、前記接触部位判別手段は、前記低周波数成分の振
幅の最大値が前記高周波数成分の振幅の最大値に前記第4係数を乗算した値より大きい場
合、前記接触体が接触した前記ドアの部位がドアハンドル付近と判別し、小さい場合、前
記ドアハンドル付近でないと判別することである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、2つ以上に分割された周波数帯域の波形に基づいて、接
触体の硬度が判別される。これにより、周波数帯域の波形の違いから人と人以外の判別が
簡易に且つ適切にできる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、2つ以上に分割された周波数帯域の波形に基づいて、接
触体が接触した被接触部材の部位が判別される。これにより周波数帯域の波形の違いから
接触体が被接触部材の例えば操作部に接触したのか、否かを簡易に適切に判別できる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、高周波数成分の振幅の最大値と、中間周波数成分の振幅
の最大値に第1係数を乗算した値との大小に基づき、接触体の硬度が判別されるので、接
触体が人か否かを精度よく適切に判別できる。なお、第1係数は実験等によって求められ
た適切な値に設定することにより、接触体の硬度の判別精度を向上することができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、高周波数成分の振幅の最大値と、中間周波数成分の振幅
の最大値に第2係数を乗算した値との大小に基づき、接触体の硬度が判別されるので、接
触体が人か否かを精度よく適切に判別できる。この場合も、第2係数は実験等によって求
められた適切な値に設定することにより、接触体の硬度の判別精度を向上することができ
る。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、中間周波数成分の振幅の最大値に、第1係数と第2係数
が乗算され2つの積が求められる。高周波数成分の振幅の最大値が、該2つの結果の中間
にあり、かつ高周波数成分の振幅の最大値に達するまでの信号の立ち上がり傾きが設定値
より小さいとき、接触体が低硬度であると判別されるので、接触体が人か否かをより精度
よく適切に判別できる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、高周波数成分の立ち上がり傾きが設定値より大きいとき
、高周波数成分の最大値が、中間周波数成分の振幅の最大値に第1係数と第2係数の中間
の大きさである第3係数を乗算した値より大きい場合に接触体が高硬度であると判別され
、小さい場合に接触体が低硬度であると判別されるので、接触体が人か否かをより精度よ
く適切に判別できる。またこの場合も、第3係数は実験等によって求められた適切な値に
設定することにより、接触体の硬度の判別精度を向上することができる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、高周波数成分及び中間周波数成分の最大値の大きさに応
じて第1係数、及び第2係数の値が変更されるので、さらに精度よく判別できる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、低周波数成分の振幅の最大値と、高周波数成分の振幅の
最大値に第4係数を乗算した値との大小に基づき、接触体が接触した被接触部材の部位が
高共振周波数部位か、低共振周波数部位かが判別されるので、接触体が接触した接触部位
が精度よく適切に判別できる。さらにこの場合も、第4係数は実験等によって求められた
適切な値に設定することにより、接触体が接触した接触部位の判別精度を向上することが
できる。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、高周波数成分及び中間周波数成分の大きさに応じて第4
係数の値が変更されるので、さらに精度よく接触部位が特定できる。
【0027】
請求項10に係る発明によれば、被接触部材は、共振周波数が低い片持ち梁部を有して
いるので、片持ち梁部に接触体が接触したときと、片持ち梁部以外に接触体が接触したと
きの振動周波数の違いにより、接触部位を簡易で確実に判別できる。
【0028】
請求項11に係る発明によれば、被接触部材は、車両のドアであり、ドアに接触した接
触体の硬度によって、接触体が人体か否かが判別される。これにより、人以外の物体がド
アに偶然接触しても、人体と誤判定されてドアが解錠されることはなく、セキュリティ性
が向上される。
【0029】
請求項12に係る発明によれば、被接触部材は、車両のドアであり、低周波数成分の振
幅の最大値が高周波数成分の振幅の最大値に第4係数を乗算した値より大きい場合、接触
体が接触したドアの部位がドアハンドル付近と判別し、小さい場合、ドアハンドル付近で
ないと判別する。これにより接触体の接触した部位がドアハンドル付近か否かが精度よく
判別でき、セキュリティ性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る接触判別装置を備えた車両である。
【図2】本発明に係る後方から見たときのドアパネルの模式図である。
【図3】図2のP視側面図である。
【図4】包絡線検波信号を示した図である。
【図5】振動センサで検出した信号の処理フローを示したフローチャート1図である。
【図6】判定プログラム選定のためのフローチャート2図である。
【図7】接触体の硬度判定及び接触部位判定のフローを示したフローチャート3図である。
【図8】全波整流信号を示した図である。
【図9】各周波数帯域の最大値の挙動の実験結果概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本実施形態にかかる接触判別装置5について図面を参照して説明する。以下で説
明する実施形態は、本発明の接触判別装置5を車両用バックドアに適用した例である。ま
ず、図1を参照して本実施の形態に係る接触判別装置5を備えた車両用バックドア10の
構成について説明する。なお、以下の説明において前後左右とは、車両における進行方向
を前とし、乗員が進行方向を向いて乗車した場合の前後左右に一致するものとする。
【0032】
図1に示すように、バックドア10はドア開閉制御装置2を前方に備えた車両1の後部
に設けられている。バックドア10は、上部が回動可能に支持されており、上方の支持部
を中心に回動され開閉する。バックドア10の上部には窓ガラス11が嵌め込まれている

【0033】
図1に示すように、バックドア10には、鋼鈑製のドアパネル12と、窓ガラス11の
下方で、且つドアパネル12上方に配置されたドアハンドル13と、ドアパネル12の下
端に配置された振動センサ14と、開錠及び施錠を行なうバックドアロック装置15と、
バックドアを開閉するバックドア駆動装置16とが配置されている。バックドアロック装
置15とバックドア駆動装置16とは、ドア開閉制御装置2によって信号を送信され駆動
される。振動センサ14はバックドア10が閉じた状態において、乗員がドアハンドル1
3に軽く触れたり、ドアハンドル13をつかむ等の操作や、乗員がドアパネル12を叩く
ドア叩き操作、または他の接触体とドアパネル12との接触により発生するそれぞれの振
動を検知する。また車両1の前方には振動センサ14のデータが送信され振動センサ14
が検知した振動を周波数分割し信号処理するとともに、信号処理結果に基づいてバックド
アロック装置15の開錠の判定を行う制御装置17が配置されている。
【0034】
接触判別装置5は上記の被接触部材であるバックドア10のドアパネル12と、振動検
出手段としての振動センサ14と、制御装置17とから構成されている。制御装置17は
振動センサ14によって検出された信号の周波数帯域を3つに分割する周波数分割手段と
、3つに分割された周波数帯域のうち2つの波形に基づいて、ドアパネル12に接触した
接触体の硬度を判別する接触体硬度判別手段と、3つに分割した周波数帯域のうち2つの
波形に基づいて、接触体が接触したドアパネル12の部位を判別する接触部位判別手段と
からなる。
【0035】
制御装置17は接触体硬度判別手段と、接触部位判別手段とによって判別された結果か
ら、ドアパネル12で発生した振動が人(乗員)の操作によって意図的に発生したものか
、否かを判断する。そして、制御装置17は、該振動が乗員により意図的にドアハンドル
13の操作又はハンドル13近傍のドア叩き操作によって発生した、と判断するとバック
ドア10の開動作がされたと判断して、ドア開閉制御装置2に信号を送信し、ドア開閉制
御装置2がバックドアロック装置15の施錠を解錠する。そしてバックドア10をマニュ
アル又はバックドア駆動装置16で開動作可能にする。
【0036】
次に本発明にかかる接触判別装置5について詳細に説明する。まず接触判別装置5を構
成するバックドア10のドアパネル12について図1及び図2、図3のドアパネル12の
模式図に基づいて説明する。なお、図2、3においては、実際と形状は異なるがそれぞれ
の部材を、ドアパネル12の外装板12a、支持板12b、及び介在物として説明する。
【0037】
ドアパネル12は外側の圧延された鋼鈑等による外装板12aと、外装板12aと平行
に配置された鋼鈑等による車室内側の支持板12bと、外装板12aと支持板12bとの
間に介在される金属製の介在物とによって構成されている。そしてドアパネル12は、外
装板12aと支持板12bとの間に介在される金属製の介在物の構造の違いによって上方
の高共振周波数部18と、下方の低共振周波数部19との2つの部位に分けられている。
【0038】
まず、ドアパネル12の上方側の高共振周波数部18の構造について説明する。高共振
周波数部18は外装板12aと支持板12bと、外装板12aと支持板12bとの間に介
在される介在物である金属板12cと支柱12dとによって構成されている。金属板12
cは上下方向において外装板12aの略半分の長さにて形成されている。
【0039】
また、図2、図3の模式図に示すように金属板12cは、外装板12aと左右方向が略
同形状であり、ドアパネル12の外装板12aの上方部車室内側に一体的に固定されてい
る。金属板12cは外装板12aと同種、又は異種の金属によって形成され、金属板12
cの4隅に、例えば鉄製による角状の支柱12dの一端がそれぞれ固定されている。そし
て4隅の角状の支柱12dの他端は、外装板12と平行に配置される支持板12b表面に
それぞれ固定されている。このようにドアパネル12の外装板12aの上方部においては
、支持板12bが4箇所で確実に外装板12aを支持する構成となっている。これにより
ドアパネル12の上方部では外装板12aの剛性が高くなり、共振周波数(固有振動数)
が高い高共振周波数部3aが形成される。なお、このとき外装板12aに金属板12cを
固定せず金属板12cが本来固定される位置の外装板12aの板厚を大きくして対応して
もよい。また板厚を大きくせず外装板12aの板厚のままとしてもよい。また支柱12d
の形状も本実施形態の形状に限らず、外装板12aを確実に支持でき、ドアパネル12の
上方部の共振周波数を所定共振周波数以上にすることができればどのような形状でもよい

【0040】
次にドアパネル12の下方側の低共振周波数部19の構造について図2、図3に基づい
て説明する。低共振周波数部19は外装板12aと支持板12bと、外装板12aと支持
板12bとの間に介在される介在物である支持部材12eとによって構成されている。
【0041】
低共振周波数部19において支持部材12eは外装板12aと支持板12bとの間に介
在し外装板12aを支持するための部材である。支持部材12eは、断面が左右方向に延
在する長方形形状を呈し、低共振周波数部19の上下方向略中間部の左右両端に設けられ
ている。そして支持部材12eの両端が支持板12b表面と外装板12a車室内側表面に
それぞれ固定されている。このように低共振周波数部19において外装板12aの下端部
は支持板12bに部材を介して支持されていない。これにより外装板12aは支持部材1
2eを支持点として、片持ち梁状態で支持されている。このように構成されることにより
、ドアパネル12の下方部では、外装板12aの剛性が低くなり、共振周波数(固有振動
数)が低い低共振周波数部19が形成される。
【0042】
振動センサ14は片持ち梁状態で支持板12bに支持されているドアパネル12の外装
板12aの下端中央部に、外装板12aに直接接触して一つ配置されている。ただし、振
動センサ14はドアパネル12の振動を確実に検出できれば外装板12aに直接接触して
いなくてもよい。振動センサ14は、振動センサ14から出力される電圧信号を処理する
信号処理回路(図示せず)を備えている。そして振動センサ14及び信号処理回路は、図
示しない導電性の部材(鉄板)でシールドされ配置されている。振動センサ14は、検出
した振動の大きさに対応した電圧レベルを有する電圧信号を生成して出力する既知のピエ
ゾ素子等によるセンサでよい。そして振動センサ14によって振動が検知された電圧信号
が信号処理回路で処理された後、制御装置17に送信される。
【0043】
制御装置17は、周波数分割手段と、接触体硬度判別手段と、接触部位判別手段とから
なる。周波数分割手段は、振動センサ14からの出力を本実施形態においては3つの周波
数帯域に分割する周波数分割手段としてのフィルタ23〜25(ローパスフィルタ23、
バンドパスフィルタ24、ハイパスフィルタ25)と、フィルタ23〜25によって抽出
された各周波数帯域の信号23a〜25aを全波整流する全波整流回路26と、全波整流
された信号23b〜25bを包絡線検波する検波回路27と、によって構成されている。
【0044】
フィルタ23〜25は、フィルタ25〜23の順に振動検出手段である振動センサ14
が検出した振動を周波数が第1周波数である1500Hz以上の高周波数帯域の信号25
aと、周波数が第1周波数である1500Hより低く第2周波数である250Hzより高
い中間周波数帯域の信号24aと、第2周波数である250Hz以下の低周波数帯域の信
号23aとに分割する。
【0045】
全波整流回路26は各フィルタ23〜25によって分割抽出された各周波数帯域の信号
23a〜25aをそれぞれ全波整流し全波整流信号23b〜25b(図8参照)を検出す
る。その後、全波整流された信号23b〜25bに含まれる全振幅データの頂点同士を結
ぶ処理である包絡線検波を検波回路27によって行ない包絡線検波信号23c〜25c(
図4参照)が検出される。
【0046】
包絡線検波された信号23c〜25cは図4に示すように、接触体が被接触部材である
バックドア10のドアパネル12に接触した際の初期エネルギーの大きさを示す強制振動
部Aと、その後の自由振動部Bとを有する。また制御装置17は包絡線検波された信号2
3c〜25cから最大振幅値となる強制振動部Aの最大値23d〜25dを検出する。さ
らに、制御装置17は演算部28を有し、演算部28は図4に示す包絡線検波された高周
波数成分信号25cから強制振動部Aにおいて最大値25dに到達する範囲で、立ち上が
り傾き25eを算出する。
【0047】
次に、接触判別装置5の作用について図5〜図7のフローチャート1〜3に基づいて説
明する。まず振動センサ14によって検出された振動信号の処理フローを示す図5のフロ
ーチャート1に基づいて説明する。
【0048】
接触体が被接触部材であるドアパネル12の鋼板製の外装板12aのいずれかの場所に
接触すると振動が発生する。発生した振動は外装板12aの4方に伝達され、下方に配置
された振動センサ14にも到達する。振動センサ14によって振動信号が検出されると、
まずステップS10にて振動の電圧信号が信号処理回路で処理された後、信号が制御装置
17に送信される。
【0049】
ステップS11では、信号を各フィルタ23〜25によって250Hz以下(低周波数
帯域)と、250Hz〜1500Hz(中間周波数帯域)と、1500Hz以上(高周波
数帯域)それぞれの周波数帯域に分割し、各周波数帯域信号23a〜25aを抽出する。
【0050】
次に、ステップS12〜ステップS14にて、ローパスフィルタ23によって抽出され
た低周波数帯域信号23aに対して各信号処理を行なう。まずステップS12では全波整
流回路26によって全波整流信号23b(図8参照)を検出する。
【0051】
ステップS13では、ステップS12で得られた全波整流信号23bから、検波回路2
7を用い包絡線検波信号23c(図4参照)を検出する。
【0052】
そしてステップS14では、ステップS13で得られた包絡線検波信号23cから低周
波数成分(250Hz以下)の最大値23d(図4参照)を検出する。
【0053】
次にステップS15〜ステップS17にて、バンドパスフィルタ24によって抽出され
た中間周波数帯域の信号24aに対し、ステップS12〜ステップS14と同様の処理を
実施する。このときステップS12はステップS15に対応する。またステップS13は
ステップS16に対応し、ステップS14はステップS17に対応する。
【0054】
そしてステップS17にて、包絡線検波信号24cから検出された中間周波数成分(2
50Hz〜1500Hz)の最大値24dが検出される。
【0055】
さらに、ステップS18〜ステップS20においては、ハイパスフィルタ25によって
抽出された高周波数帯域の信号25aに対し、ステップS12〜ステップS14、及びス
テップS15〜ステップS17と同様の処理が実施される。このときステップS12、ス
テップS15はステップS18に対応する。またステップS13、ステップS16は、ス
テップS19に対応し、ステップS14、ステップS17はステップS20に対応する。
ただしステップS20においては、ステップS14、ステップS17と一部処理内容が異
なり、包絡線検波信号25cから算出された高周波数成分(1500Hz以上)の最大値
25dが検出されるのに加え、演算部28によって立ち上がり傾き25eが算出される。
立ち上がり傾き25eは図4に示す包絡線検波された高周波数成分信号25cの強制振動
部Aにおいて最大値25dに到達するまでの範囲内で、算出される。立ち上がり傾き25
eは強制振動部A内において高周波数成分の最大値25dに対して25%に相当する点と
、高周波数成分の最大値25dに対して75%に相当する点の2点を結んだ直線によって
算出する。この25%と75%とは発明者によって確実に直線部が得られ、かつ適切な立
ち上がり傾きが算出できる範囲として実験によって導出された適切な値であるが、この範
囲は適宜変更可能である。
【0056】
高周波数成分の立ち上がり傾き25eは、高周波数成分の振動が最大値25dに到達す
るまでの時間の大小を表し、立ち上がり傾き25eが大きいほど最大値への到達時間は早
く、立ち上がり傾き25eが小さいと最大値に到達するまでの時間が遅いことを示してい
る。
【0057】
なお、上記においてステップS11〜ステップS13、ステップS15、ステップS1
6、ステップS18、ステップS19及びフィルタ23〜25が周波数分割手段を構成し
ている。そしてステップS14、ステップS17、ステップS20が接触体硬度判別手段
、及び接触部位判別手段の一部を構成している。
【0058】
また、上記においてステップS12〜ステップS14、ステップS15〜ステップS1
7、及びステップS18〜ステップS20を説明したように順次処理するのではなく同時
に処理してもよい。
【0059】
次に実験結果である図9について説明する。図9は、発明者によって実験により求めら
れた結果の概要図であり、接触体の硬度と、接触体が被接触部材に接触した部位と、各周
波数成分の最大値23d、24d、25dとの関係を説明した図である。実験には、接触
体としては、高硬度の部材として金属を適用し、低硬度の部材として人の手を適用した。
また被接触部材としては、接触部位として高共振周波数部18及び低共振周波数部19を
備えた図2、図3に示すバックドア10のドアパネル12を模して製作した模式的なドア
を適用した。
【0060】
その結果、接触体と、接触体と接触した被接触部材の接触部位と、各周波数成分の最大
値23d、24d、25dとの関係は以下の通りであった。
【0061】
まず被接触部材であるドアパネル12の高共振周波数部18(ドアハンドル13を含む
)に、接触体として高硬度の金属が接触した場合には、図9のa欄に示すように、低周波
数成分の最大値23dは相対的に大きい値として検出された。また中間周波数成分の最大
値24dも図9のb欄に示すように中と小の中間くらいの値として検出され、高周波数成
分の最大値25dは図9のc欄に示すように、相対的に大きい値として検出された。そし
てこのとき、繰り返し実験を行なった結果、高周波数成分の最大値25dは、中間周波数
成分の最大値24dに第1係数となるd1を乗算した値よりも大きな値となることがわか
った。また、高周波数成分の最大値25dと低周波数成分の最大値23dとの関係におい
ては図9のa欄とc欄に示すように、高周波数成分の最大値25dに1より小さな第4係
数となるd4を乗算した値よりも、低周波数成分の最大値23dの方が大きくなることが
わかった。また、図示しないが、このとき高周波数成分の立ち上がり傾き25eは大きな
値となることがわかった。
【0062】
さらに、実験結果より、高周波数成分の最大値25dが、中間周波数成分の最大値24
dに第1係数d1を乗算した値よりは小さくても所定の条件の元においては接触体の硬度
が高いものがあることがわかった。その所定の条件とは、高周波数成分の最大値25dが
、中間周波数成分の最大値24dに、後述する第2係数d2を乗算した値よりも大きく、
且つ高周波数成分の立ち上がり傾き25eが大きく、そして最大値25dが中間周波数成
分の最大値24dに第1係数d1と第2係数d2との中間の値である第3係数d3を乗算
した値よりも大きい場合である。
【0063】
次に被接触部材であるドアパネル12の高共振周波数部18に低硬度の人の手が接触し
た場合には、図9のd欄に示すように、低周波数成分の最大値23dは相対的に中くらい
の値として検出された。また中間周波数成分の最大値24dは図9のe欄に示すように、
小さい値として検出された。そして、高周波数成分の最大値25dは、図9のf欄に示す
ようにある程度大きい値であった。これは、被接触部材であるドアパネル12の外装板1
2が金属性であるため、高周波数成分の最大値25dは常に一定以上の値となるためであ
る。そして、繰り返し実験を行なった結果、高周波数成分の最大値25dは、中間周波数
成分の最大値24dに第1係数d1よりも小さな値の前述した第2係数d2を乗算した値
よりも大きな値となることがわかった。また高周波数成分の最大値25dと低周波数成分
の最大値23dとの関係においては、高周波数成分の最大値25dに1より小さな第4係
数となるd4を乗算した値よりも、低周波数成分の最大値23dの方が大きくなることが
わかった。また、図示しないが、高周波数成分の立ち上がり傾き25eは小さな値であっ
た。
【0064】
次に被接触部材であるドアパネル12の低共振周波数部19に、接触体として高硬度の
金属が接触した場合には、低周波数成分の最大値23dは図9のg欄に示すように、小さ
な値として検出された。また中間周波数成分の最大値24dは図9のh欄に示すように、
中程度の大きさとして検出された。そして高周波数成分の最大値25dは図9のi欄に示
すように、中程度の大きさであり、高周波数成分の立ち上がり傾き25eは大きな値(図
示せず)となることがわかった。そして、繰り返し実験を行なった結果、高周波数成分の
最大値25dは、中間周波数成分の最大値24dに第1係数d1よりも小さな値の第2係
数d2を乗算した値よりも小さな値となることがわかった。また高周波数成分の最大値2
5dと低周波数成分の最大値23dとの関係においては、高周波数成分の最大値25dに
1より小さな第4係数となるd4を乗算した値よりも、低周波数成分の最大値23dの方
が小さくなることがわかった。
【0065】
最後に低共振周波数部19に低硬度の人の手が接触した場合には、低周波数成分の最大
値23dは図9のj欄に示すように、小さな値として検出された。また中間周波数成分の
最大値24dも図9のk欄に示すように、小さな値として検出された。さらに高周波数成
分の最大値25dは図9のl欄に示すように、中くらいの値となり、立ち上がり傾き25
eは小さな値(図示せず)となることがわかった。そして、繰り返し実験を行なった結果
、高周波数成分の最大値25dは、中間周波数成分の最大値24dに第1係数d1よりも
小さな値の第2係数d2を乗算した値よりも大きな値となることがわかった。また高周波
数成分の最大値25dと低周波数成分の最大値23dとの関係においては、低周波数成分
の最大値23dは、高周波数成分の最大値25dに1より小さな第4係数d4を乗算した
値よりも小さな値となることがわかった。
【0066】
そして本発明に係る接触判別装置5においては上記の実験結果を基に、低周波数成分の
最大値23d、中間周波数成分の最大値24d、高周波数成分の最大値25d、及び立ち
上がり傾き25eの大小関係から接触体の硬度と、接触体が接触した被接触部材の部位を
判別する。
【0067】
次に図6のフローチャート2について説明する。図9の結果を求めるために行なった実
験(以後、図9の実験と称す)と同様の実験によって、各周波数帯域のそれぞれの最大値
23d〜25dの大きさに応じ、第1係数d1、第2係数d2及び第4係数d4の大きさ
を変更した方がより精度よく接触体の硬度、及び接触体が接触した部位の判定を行なうこ
とができることがわかった。そこでフローチャート2では、接触体の硬度、及び接触体が
接触した部位を判定するための後述するフローチャート3で示される判定プログラムを最
大値23d〜25dの大きさに応じて4段階に分割し、且つ分割した段階に応じて判定プ
ログラム1〜4を用いるようにした。
【0068】
最大値23d〜25dの値に応じて4段階に分割するフローチャート2においては、ス
テップS21に示すように、最大値23d〜25dと、図9の実験と同様の実験によって
求められたV1とが比較され、最大値23d〜25dの値のうち何れか1つ以上が電圧値
V1よりも大きいときは、判定プログラム1を実行する。V1よりも大きな値が1つもな
いときはステップS22に進む。
【0069】
次にステップS22では、最大値23d〜25dと、上記同様実験によって求められた
電圧値V2とが比較され、最大値23d〜25dの値のうち何れか1つ以上がV2よりも
大きいときは、判定プログラム2を実行する。V2よりも大きな値が1つもないときはス
テップS23に進む。
【0070】
次にステップS23では、最大値23d〜25dと、上記同様実験によって求められた
電圧値V3とが比較され、最大値23d〜25dの値のうち何れか1つ以上がV3よりも
大きいときは、判定プログラム3を実行する。V3よりも大きな値が1つもないときはス
テップS24に進む。
【0071】
そしてステップS24では、最大値23d〜25dと、上記同様実験によって求められ
た電圧値V4とが比較され、最大値23d〜25dの値のうち何れか1つ以上がV4より
も大きいときは、判定プログラム4を実行する。V4よりも大きな値が1つもないときは
プログラムを終了する。なお、V1〜V4は、V1が最大であり、V4に向って順次小さ
な値となっている。
【0072】
次に、接触体の硬度、及び接触体が接触した部位を判定する判定プログラム1〜4につ
いて図7に示すフローチャート3に基づき説明する。なお、4つの判定プログラム1〜4
は各処理ステップ内に図9の実験と同様の実験によって求められた適切な値である第1係
数d1、第2係数d2、第3係数d3、及び第4係数d4をそれぞれ有している。そして
4つの判定プログラム1〜4では、各判定プログラム毎に第1係数d1、第2係数d2、
及び第4係数d4がそれぞれ異なるのみであり、その処理内容は全く同じである。そして
第1係数d1、及び第2係数d2は判定プログラム1〜4の順に順次小さな値になってい
る。また第3係数d3は判定プログラム1〜4で同じ値であり、第4係数については、実
験の結果に基づき判定プログラム1〜4の順序に係らずそれぞれ適切な数値が入力されて
いる。
【0073】
フローチャート3の判定プログラム1〜4は高周波数成分、中間周波数成分、及び低周
波数成分の3つに分割された周波数帯域のうち、高周波数成分と中間周波数成分との2つ
の波形に基づき接触体の硬度が判別される接触体硬度判別手段としての硬度判定部31を
有している。また3つに分割された周波数帯域のうち、高周波数成分と低周波数成分の2
つの周波数帯域の波形に基づき、接触体が非接触部材であるバックドア10のドアパネル
12に接触した部位が判別される接触部位判別手段としての接触部位判定部32を有して
いる。なお、接触体硬度判別手段、及び接触部位判別手段は前述したようにフローチャー
ト1のステップS14、ステップS17及びステップS20をそれぞれ含む。
【0074】
まず接触体硬度判別手段としての硬度判定部31について説明する。硬度判定部31の
ステップS31では、高周波数成分の最大値25dと、中間周波数成分の最大値24dに
1よりも大きい実験から求められた適切な値である第1係数d1を乗じた値とが比較され
る。そして高周波数成分の最大値25dの方が大きければステップS36に進み、接触体
は高硬度の物体であると判定される。また中間周波数成分の最大値24dに第1係数であ
るd1を乗じた値の方が大きい場合にはステップS32に進む。
【0075】
なお、ここで高周波数成分の最大値25dの方が大きい場合に接触体は高硬度の物体で
あると判定した。これは図9の実験結果に基づくものであり、図9のb欄、c欄に示すよ
うに、高周波数成分の最大値25dが、中間周波数成分の最大値24dに第1係数d1を
乗算した値よりも大きい場合には接触体が高硬度であることがわかる。また最大値24d
に第1係数d1を乗算した値より最大値25dの方が小さい場合には、図9のe欄とf欄
、h欄とi欄、及びk欄とl欄に示すように接触体が高硬度である場合と、低硬度である
場合とがあるため、ステップS32に進み再度判定を行なうものである。
【0076】
ステップS32では、高周波数成分の最大値25dと、中間周波数成分の最大値24d
に第1係数d1より小さく1より大きい実験から求められた第2係数d2を乗じた値とが
比較される。そして最大値25dが中間周波数成分の最大値24dに第2係数d2を乗じ
た値より小さければステップS36に進み、接触体は高硬度の物体であると判定される。
また最大値25dが中間周波数成分の最大値24dに第2係数d2を乗じた値より大きけ
ればステップS33に進む。
【0077】
なお、ここでは最大値25dが、中間周波数成分の最大値24dに第2係数d2を乗じ
た値より小さければステップS36に進み、接触体は高硬度の物体であると判定された。
これも図9の実験結果に基づくものであり、図9のh欄,i欄に示す様に高周波数成分の
最大値25dが、中間周波数成分の最大値24dに、第1係数d1より小さい第2係数d
2を乗算した値よりも小さい場合、即ち高周波数成分の最大値25dと中間周波数成分の
最大値24dとが接近している場合には、接触体が高硬度であることがわかる。
【0078】
また高周波数成分の最大値25dが、中間周波数成分の最大値24dに第2係数d2を
乗算した値よりも大きい場合には、図9のe欄とf欄、及びk欄とl欄に示すように接触
体が低硬度である可能性が高い。しかし、前述したステップS31において、中間周波数
成分の最大値24dに第1係数d1を乗算し最大値25dと比較して判定したが、第1係
数d1を乗算した値よりは小さいがd1を乗算した値近傍の値においても接触体が高硬度
である可能性があることが実験結果からわかっている。そこで高硬度である可能性を確認
するため最大値25dが中間周波数成分の最大値24dに第2係数d2を乗算した値より
も大きい場合にはステップS33に進む。
【0079】
ステップS33では、まず高周波数成分の強制振動部A部の立ち上がり傾き25eと所
定値e1とが比較される。前述した通り、接触体が硬い場合には立ち上がり傾き25eが
大きくなり、接触体が軟らかい(たとえば人の手等)場合には立ち上がり傾き25eが小
さくなることが実験から分かっている。そこで接触体が高硬度であるか否かを判定する、
立ち上がり傾き25eに対する閾値を実験より得られた適切な値である所定値e1とし判
定を行なう。高周波数成分の立ち上がり傾き25eの方が所定値e1より小さい場合は、
ステップS35に進み接触体は低硬度であると判定する。また高周波数成分の立ち上がり
傾き25eの方が所定値e1より大きい場合は、ステップS34に進み、再度確認を行な
う。
【0080】
ステップS34では高周波数成分の最大値25dと、中間周波数成分の最大値24dに
第1係数d1よりも小さく第2係数d2よりも大きい実験より求めた第3係数d3を乗算
した値とを比較し、高周波数成分の最大値25dの方が大きい場合にステップS36に進
み接触体は高硬度であると判定する。また高周波数成分の最大値25dの方が小さい場合
にはステップS35に進み接触体は低硬度であると判定する。
【0081】
次に接触体が非接触部材であるバックドア10のドアパネル12に接触した部位が判別
される接触部位判別手段としての接触部位判定部32について説明する。接触部位判定部
32においては高周波数成分、中間周波数成分、及び低周波数成分の3つに分割された周
波数帯域の波形にうち高周波数成分、及び低周波数成分の2つの波形に基づき接触体が接
触した接触部位の判定を行なう。
【0082】
ステップS37では低周波数成分の最大値23dと、高周波数成分の最大値25dに1
より小さい実験により求めた第4係数d4を乗算した値とを比較する。そして低周波数成
分の最大値23dが、図9の実験結果(a欄とc欄、及びd欄とf欄参照)に示すように
高周波数成分の最大値25dに第4係数d4を乗算した値よりも大きい場合は、ステップ
S39で接触体が接触した部位がドアパネル12の高共振周波数部18のドアハンドル1
3付近であると判定する。また低周波数成分の最大値23dが図9の実験結果(g欄とi
欄、及びj欄とl欄参照)に示すように高周波数成分の最大値25dに第4係数d4を乗
算した値よりも小さい場合は、ステップS38で接触体が接触した部位はドアパネル12
の低共振周波数部19であり、ドアハンドル13付近ではないと判定する。
【0083】
そして上記のように接触体硬度判定部31及び接触部位判定部32によって判定された
硬度及び部位に基づき、制御装置17によって検出された振動は人によって意図的に行な
われたバックドア10の開動作によるものであるか否かの判断がされる。制御装置17が
、検出された振動は、低硬度である人の手で高共振周波数部18であるドアハンドル13
を触ったりドアハンドル13付近をドア叩き操作(ノック)したことにより発生したと判
断した時には、開動作であると判断する。そして信号をドア開閉制御装置2に送信し、閉
制御装置2によってバックドアロック装置15の施錠を解除し、バックドア10をマニュ
アルまたはバックドア駆動装置16によって開動作可能にする。また人ではなく、高硬度
の接触体がドアハンドル13やドアハンドル13以外の場所に接触したと判断した場合に
はバックドアロック装置15は作動させず施錠状態を維持する。
【0084】
なお、本実施形態においては、振動センサ14によって検出した振動信号を周波数分割
手段を構成するフィルタ23〜25によって3つの周波数帯域の信号23a〜25aに分
割した。しかし、それに限らずフィルタ24、25によって第1周波数と第2周波数との
中間である中間周波数成分信号24aと、第1周波数より高い高周波数帯域信号25aと
の2つの周波数帯域に分割し接触体硬度判定部31によって接触体の硬度のみの判定をお
こなってもよい。またフィルタ23、25によって第2周波数より低い低周波数成分信号
23aと高周波数成分信号25aとの2つの周波数帯域に分割し、接触部位判定部32に
よって接触体の接触部位のみの判定をおこなってもよい。これによっても相応の効果は得
られる。さらに、フィルタによって4つ以上の周波数帯域に分割し、周波数帯域を細分化
することにより、より精度の高い判定が期待できる。
【0085】
上述より明らかなように、本実施形態においては3つに分割された周波数帯域のうち2
つの周波数帯域の波形に基づいて、接触体の硬度が判別される。これにより、周波数帯域
の波形の違いから人と人以外の判別が簡易に且つ適切にできる。
【0086】
また本実施形態においては、3つに分割された周波数帯域のうち2つの周波数帯域の波
形に基づいて、接触体が接触した被接触部材であるバックドア10のドアパネル12の部
位が判別される。これにより周波数帯域の波形の違いから接触体がドアハンドル13に接
触したのか、否かを簡易に適切に判別できる。
【0087】
また本実施形態においては、高周波数成分の振幅の最大値25dと、中間周波数成分の
振幅の最大値24dに実験等によって求められた適切な値である第1係数d1を乗算した
値との大小に基づき、接触体の硬度が判別されるので、接触体が人か否かを精度よく適切
に判別できる。
【0088】
また本実施形態においては、高周波数成分の振幅の最大値25dと、中間周波数成分の
振幅の最大値24dに実験等によって求められた適切な値である第2係数d2を乗算した
値との大小に基づき、接触体の硬度が判別されるので、接触体が人か否かを精度よく適切
に判別できる。
【0089】
また本実施形態においては、中間周波数成分の振幅の最大値最大値24dに、第1係数
d1と第2係数d2が乗算され2つの積が求められる。高周波数成分の振幅の最大値25
dが、該2つの結果の中間にあり、かつ高周波数成分の振幅の最大値25dに達するまで
の信号の立ち上がり傾き25eが実験等により求められ適切な値に設定された設定値e1
より小さいとき、接触体が低硬度であると判別されるので、接触体が人か否かをより精度
よく適切に判別できる。
【0090】
また本実施形態においては、高周波数成分の立ち上がり傾き25eが設定値e1より大
きいとき、高周波数成分の最大値25dが、中間周波数成分の振幅の最大値24dに第1
係数d1と第2係数d2の中間の大きさである実験等によって求められた適切な値である
第3係数d3を乗算した値より大きい場合に接触体が高硬度であると判別され、小さい場
合に接触体が低硬度であると判別されるので、接触体が人か否かをより精度よく適切に判
別できる。よって、人以外の物体がバックドア10に偶然接触しても、人体と誤判定され
てドアが解錠されることはなく、セキュリティ性が向上される。
【0091】
また本実施形態においては、高周波数成分及び中間周波数成分の最大値25d、24d
の大きさに応じて第1係数d1、及び第2係数d2の値が実験等により求められた適切な
値に変更されるので、さらに精度よく判別できる。
【0092】
また本実施形態においては、低周波数成分の振幅の最大値23dと、高周波数成分の振
幅の最大値25dに実験等によって求められた適切な値である第4係数を乗算した値との
大小に基づき、接触体が接触した被接触部材であるバックドア10のドアパネル12の部
位がドアハンドル13を含む高共振周波数部位18か、低共振周波数部位19かが判別さ
れるので、接触体が接触した接触部位が精度よく適切に判別できる。よって接触体の接触
した部位がドアハンドル13付近か否かが判別できるので、セキュリティ性が向上される

【0093】
また本実施形態においては、高周波数成分及び中間周波数成分の大きさに応じて第4係
数d4の値が変更されるので、さらに精度よく接触部位が特定できる。
【0094】
さらに本実施形態においては、被接触部材であるバックドア10のドアパネル12は、
共振周波数が低い片持ち梁部である低共振周波数部位19を有しているので、低共振周波
数部位19に接触体が接触したときと、低共振周波数部位19以外に接触体が接触したと
きの振動周波数の違いにより、接触部位を簡易で確実に判別できる。
【0095】
なお、本実施形態では、接触判別装置5をバックドア10に備えた場合について説明し
たが、バックドア10に限定されるものではなく、車両のスライドドアや、一般の乗用車
に用いられるヒンジにより支持されヒンジを回転中心に手前に引いて開扉するタイプのド
アに備えてもよい。
【0096】
また、接触判別装置5を車両ではなく、例えばエレベータ、電車、飛行機、及び建物の
ドアに適用したりガレージや店舗等のシャッタ等、他の開閉動作を有するドアに適用して
もよい。
【符号の説明】
【0097】
1・・・車両、2・・・ドア開閉制御装置、5・・・接触判別装置、10・・・バックド
ア(ドア)、12・・・ドアパネル(被接触部材)、13・・・ドアハンドル、14・・
・振動センサ(振動検出手段)、15・・・バックドアロック装置、16・・・バックド
ア駆動装置、17・・・制御装置、18・・・高共振周波数部、19・・・低共振周波数
部、23〜25・・・フィルタ(周波数分割手段)、23d〜25d・・・最大値、26
・・・全波整流回路、27・・・検波回路、28・・・演算部、31・・・硬度判定部(
接触体硬度判別手段)、32・・・接触部位判定部(接触部位判別手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振周波数が異なる2以上の部位を有する被接触部材と、
前記被接触部材に取り付けられ、前記被接触部材に接触体が接触したときの振動を検出
する振動検出手段と、
前記振動検出手段によって検出された信号の周波数帯域を2つ以上に分割する周波数分
割手段と、
前記2つ以上に分割した周波数帯域の波形に基づいて、前記被接触部材に接触した前記
接触体の硬度を判別する接触体硬度判別手段と、を備えることを特徴とする接触判別装置

【請求項2】
請求項1において、前記2つ以上に分割した周波数帯域の波形に基づいて、前記接触体
が接触した前記被接触部材の部位を判別する接触部位判別手段を備えたことを特徴とする
接触判別装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記周波数分割手段は、前記振動検出手段が検出した振動を
周波数が第1周波数より高い高周波数成分と、周波数が前記第1周波数より低く第2周波
数より高い中間周波数成分とに分割し、
前記接触体硬度判別手段は、前記高周波数成分の振幅の最大値が前記中間周波数成分の
振幅の最大値に1より大きい第1係数を乗算した値より大きい場合、前記接触体が高硬度
であると判別することを特徴とする接触判別装置。
【請求項4】
請求項3において、前記接触体硬度判別手段は、前記高周波数成分の振幅の最大値が前
記中間周波数成分の振幅の最大値に前記第1係数を乗算した値より小さく、かつ前記中間
周波数成分の振幅の最大値に前記第1係数より小で1より大きい第2係数を乗算した値よ
り小さい場合、前記接触体が高硬度であると判別することを特徴とする接触判別装置。
【請求項5】
請求項4において、前記接触体硬度判別手段は、前記高周波数成分及び中間周波数成分
を全波整流し包絡線検波した信号の最大電圧値を前記高周波数成分及び前記中間周波数成
分の振幅の最大値として検出し、前記高周波数成分を包絡線検波した信号の前記最大電圧
値に達するまでの強制振動の信号の範囲から強制振動信号の立ち上がり傾きを演算し、前
記高周波数成分の振幅の最大値が前記中間周波数成分の振幅の最大値に前記第1係数を乗
算した値より小さく、かつ前記中間周波数成分の振幅の最大値に前記第2係数を乗算した
値より大きい場合は、前記立ち上がり傾きが設定値より小であるとき、前記接触体が低硬
度であると判別することを特徴とする接触判別装置。
【請求項6】
請求項5において、前記接触体硬度判別手段は、前記立ち上がり傾きが設定値より大で
あるときは、前記高周波数成分の最大値が前記中間周波数成分の振幅の最大値に前記第1
係数より小さく前記第2係数より大きい第3係数を乗算した値より大きい場合に前記接触
体が高硬度であると判別し、小さい場合に前記接触体が低硬度であると判別することを特
徴とする接触判別装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項において、前記高周波数成分及び中間周波数成分の最大値
が大きいほど前記第1係数、及び第2係数を大きく設定することを特徴とする接触判別装
置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項において、前記周波数分割手段は、前記振動検出手段が検
出した振動を周波数が第1周波数より高い高周波数成分と、周波数が前記第1周波数より
低く第2周波数より高い中間周波数成分と、周波数が前記第2周波数より低い低周波数成
分とに分割し、
前記接触部位判別手段は、前記低周波数成分の振幅の最大値が前記高周波数成分の振幅
の最大値に1より小さい第4係数を乗算した値より大きい場合、前記接触体が接触した前
記被接触部材の部位が高共振周波数部位と判別し、小さい場合、低共振周波数部位と判別
することを特徴とする接触判別装置。
【請求項9】
請求項8において、前記高周波数成分、及び低周波数成分の最大値に応じて前記第4係
数を変更することを特徴とする接触判別装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、前記被接触部材は、共振周波数が低い片持ち梁
部を有し、前記振動検知手段は前記片持ち梁部に取り付けられていることを特徴とする接
触判別装置。
【請求項11】
請求項10において、前記被接触部材は、車両のドアであり、前記接触体硬度判別手段
は、前記ドアに接触した前記接触体の硬度を判別することにより、前記接触体が人体か否
か判別することを特徴とする接触判別装置。
【請求項12】
請求項8又は9において、前記被接触部材は、車両のドアであり、前記接触部位判別手
段は、前記低周波数成分の振幅の最大値が前記高周波数成分の振幅の最大値に前記第4係
数を乗算した値より大きい場合、前記接触体が接触した前記ドアの部位がドアハンドル付
近と判別し、小さい場合、前記ドアハンドル付近でないと判別することを特徴とする接触
判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68265(P2011−68265A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221111(P2009−221111)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】