説明

接触形成前に実施する表面の下処理法

【課題】熱伝導性に優れた半導体材料を使用可能で、生産性に優れた半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】リン化インジウム材料に高濃度のシリコンをドーピングしたサブコレクタ層12上にパッシベーション層14が形成される。パッシベーション層14の一部をエッチングにより除去して接触領域を露出させる。露出させた接触領域にエネルギー照射を行い、エネルギー照射を行った部分に低抵抗のオーム接触金属51を堆積する。その後、フォトレジスト21、22を、フォトレジスト22上に堆積した金属51と共に除去する。エネルギー照射としては、不活性材料を使用したスパッタリング処理、化学的に活性を有するイオンを使用したスパッタリング処理、イオンミリング、及びプラズマエッチングのうちのいずれかを利用できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ(HBT)を製作する為の現行プロセスにおけるベース/コレクタ・メサのエッチングは、サブコレクタ接触層の上又は内部で留まるように設計されている。リン化インジウム(InP)基板上に設けられたHBTの場合、この接触層は代表的にはガリウム・インジウム・ヒ素(GaInAs)から成る。GaInAsから成る接触層とした場合、例えばチタン(Ti)、プラチナ(Pt)及び/又は金(Au)などを用いた非合金の低オーム金属(抵抗率の低い金属)との間で通常は1x10-7Ωcm2の比接触抵抗率(specific contact resistivity)が得られる。
【0002】
ベース/コレクタ・メサのエッチング時に、ファイナル酸性水溶液エッチング(水[H2O]と塩酸[HCl]の1:x[xは1以下]混合物、又はリン酸[H3PO4]とHClの1:x[xは任意の値]混合物等)が実施される場合、コレクタ領域上のInPが選択的に除去され、GaInAsサブコレクタ接触層はエッチングされない。例えば非特許文献1を参照されたい。このような接触層は非常に薄くしても(例えば50オングストローム)、HClベースのエッチングにおける優秀な選択性によりエッチストップとして機能するものである。
【0003】
ベース/コレクタ・メサのエッチングにドライエッチングが用いられる場合、ファイナル酸性水溶液エッチングを行った場合と比べると、その選択性は著しく低い、又は全く無くなってしまう。よってドライエッチングの場合、大幅に厚いGaInAs接触層を使わなければならない。例えばドライエッチングが用いられる場合、GaInAs接触層の厚さは、代表的には数百オングストローム〜数千オングストロームとしなければならない。しかしながら、GaInAsの熱伝導率は、InPの約0.68W/(cm・K)と比較すると約0.05W/(cm・K)である(熱が伝わりにくい)。このことから、サブコレクタ中にGaInAsが存在した場合は熱の管理が著しく困難となる。例えば、非特許文献2を参照されたい。このことから、GaInAs接触はドライエッチングによるベース/コレクタ・メサのエッチングには適していないのである。
【0004】
更に、シンタ・オーム接触(シンタによって得られるオーム接触、例えば金ゲルマニウム・ニッケル[AuGeNi])を用いる一般的な手法は、シンタリングサイクルの代表的な温度である約400℃(これは金・ゲルマニウム[AuGe]共晶合金の製作において一般的な温度である)が、既に設けられているエミッタ及びベースのオーム接触に適合しないことから、HBTの製作には適していない。
【0005】
【非特許文献1】N.Matine、M.W.Dvorak、J.L.Pelouard、F.Pardo及びC.R.Bolognesi著、“Fabrication and characterization of InP HBTs with emitter edges parallel to [001] and [010] crystal orientations”、Jap.J.Appl.Phys.Part1、vol.38、no.2B、pp.1200−1203、1999
【非特許文献2】E.Sano、K.Kurishima、H.Nakajima及びS.Yamahata著、“High−speed, low−power lightwave communication ICs using InP/InGaAs double−heterojunction bipolar transistors”、IEICE Trans.Electron.、vol.E82−C、no.11、pp.2000−2006、1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、熱伝導性に優れた半導体材料を使用可能で、生産性に優れた半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例においては、接触はリン化インジウム材料上に形成される。リン化インジウム材料の一部の領域が露出される。リン化インジウムの露出された領域にエネルギー照射が実行される。エネルギー照射が行われた露出リン化インジウム領域上に金属が堆積される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図6は、低抵抗オーム接触を作る為の単ステップ・ドライエッチング処理を描いたものである。この処理には、バンドギャップの狭いGaInAs材料の特別なエピタキシャル層の成膜は必要無い。例えば、ベース/コレクタ・メサの形成において、ドライエッチング処理を用いて接触層をInP(リン化インジウム)上に形成する。シンタ処理は全く、又はわずかしか必要としない。ここに開示するドライエッチング処理は、サブコレクタからのGaInAsの排除に適合している。これにより完成したデバイスの熱抵抗が改善され(すなわち、低減する)、よって作動電流及び電圧の所定組み合わせについての接合部温度及び回路の自己発熱による温度上昇を抑えることが出来るのである。これはデバイスの信頼性を向上させる。更にこうすることにより、所定の最高接合部温度上昇及び回路の自己発熱温度上昇に対して作動電流及び/又は電圧を増大させることが出来、これによりスイッチング時間が短縮され、よってこのデバイスを用いた回路の作動周波数を高くすることが出来る。全てのHBT回路は低いコレクタ接触抵抗を必要としており、そしてこの処理は、コレクタ金属をInP上のGaInAs接触層上に形成する従前の処理と同様に、十分に低いコレクタ抵抗を提供するものである。
【0009】
図1はヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ(HBT)のようなデバイスの形成における一つの段階を示す図である。図1は、説明目的で描かれたものであり、寸法を正確に表したものではない。基板11は、例えば半絶縁性のInPから成る。基板11上に配置されたサブコレクタ層12は、例えば高い濃度でシリコンをドーピングしたInP材料から成る。パッシベーション層(保護層)14は、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンから成る。代わりにパッシベーション層14をこの時点では省いておき、処理の後の時点で形成される他のパッシベーション層によって置き換えることも可能である。追加処理層(追加の処理で形成された層)13は、メサ領域上にHBTを形成する(HBTの作用を有する)複数の層からなる材料を表している。
【0010】
図2は、フォトレジスト層21及びフォトレジスト層22が形成された後の状態を描いた図である。フォトレジスト層21はアンダカット部を高い(サブコレクタ層12から離隔した)位置に形成するために用いられ、フォトレジスト層22はパターニング用のレジストとしても用いられる。図2に描かれているように、リソグラフィー処理によってフォトレジスト層21及びフォトレジスト層22を貫通する開口がパターニングされている。開口は後でコレクタのオーム接触が形成される位置である。
【0011】
図3に示したように、パッシベーション層14のエッチングが実施される。例えば、エッチングはフッ素ベースのプラズマ等を使ったドライエッチング、又はフッ化水素(HF)水溶液等を使ったウエットエッチングである。パッシベーション層14のエッチングによりサブコレクタ層12が露出する。
【0012】
図4は、接触材料のデポジション(成膜、堆積)に備えてサブコレクタ層12の表面を下処理する為の意図的な表面処理(intentional surface treatment)を描いた図である。表面処理は矢印41により示したが、これはエネルギー照射を表す。例えば、エネルギー照射はアルゴン(Ar)等の不活性材料を使ったスパッタリング処理、又は化学的に活性を有するイオンを使ったスパッタリング処理である。代わりに、エネルギー照射はイオンミリング又はプラズマエッチング等の他の処理とすることも出来る。表面処理は例えば真空下で実施される。表面処理を実施した結果、サブコレクタ層12の表面は化学量論的ではない状態となる。
【0013】
図5は金属層51の形成を示す図である。例えば、金属層51は高真空システムにおいて高真空システム下で堆積されるもので、これは例えばサブコレクタ層12の表面を粗く処理するスパッタリングに続き、同じ処理チャンバ中のその場所で(同一の工程、あるいは同一の環境で)実施することが出来る。代わりに金属層51は、意図的照射後のサブコレクタ層12の清浄化においてサブコレクタ層12を空気に晒した後、別の場所で形成されるものであっても良い。例えば、清浄化処理は1つ又は複数ステップの処理を含んでいる。例えば清浄化処理は、HCl及び脱イオン水を1対2の割合で混合したもの等の水溶液を用いた後に脱イオン水で洗浄することにより実施することが出来る。代わりに脱イオン水と共に他の酸を溶液中に用いて清浄化した後に例えば脱イオン水で洗浄しても良い。洗浄後はウエハ・スピンドライ又は窒素ガンを用いたブロードライ処理を実施することにより、特別な乾燥処理を実施しない場合に生じる可能性のあるしみを防ぐことが出来る。
【0014】
図6はレジストを除去した後の状態を描いた図であり、フォトレジスト層21、フォトレジスト層22が除去されており、更に金属層51のフォトレジスト層22の上にあった部分もリフトオフ(除去)されている。金属層51のうち、サブコレクタ層12上に堆積された部分は残されており、これが低抵抗のオーム接触として機能する。
【0015】
図1〜図6に示した処理においては、金属層51堆積後の通常ウエハ処理に含まれる、多数分に及ぶ300℃及び数時間に及ぶ250℃のアニール処理が実施される可能性はあるものの、これを除けば意図的な合金化又はシンタリングは必要とされていない。オーム接触抵抗を安定化させるには、低温アニールで十分である。
【0016】
説明した本発明の実施の形態は、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ上のコレクタ・オーム接触を製作することを想定したものであるが、一般的に本処理は、例えば低抵抗のオーム接触をInP等の材料上に設けるいずれの処理においても有用である。例えば、本処理は、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタのエミッタ接触領域の形成にも、ダイオード上のオーム接触の形成にも、そして電界効果トランジスタのオーム接触の形成にも有用なのである。
【0017】
上述は本発明の方法及び実施の形態の単なる例を開示し、説明したに過ぎない。当業者には明らかなように、本発明は、本発明の精神及び本質的特性から離れることなく、他の特定の態様により実現することが可能である。よって本発明の本開示は説明目的で行われたものであり、本願請求項により定められる本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る接触を設ける処理ステップを説明する図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る接触を設ける処理ステップを説明する図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る接触を設ける処理ステップを説明する図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る接触を設ける処理ステップを説明する図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る接触を設ける処理ステップを説明する図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る接触を設ける処理ステップを説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
11:基板
12:サブコレクタ領域(接触領域、リン化インジウム材料)
13:追加処理層
14:パッシベーション層
21、22:フォトレジスト
41:エネルギー照射
51:オーム接触金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触領域をデバイス上に形成する方法であって、
パッシベーション材料を除去して前記デバイスの接触領域を露出させることと、
露出させた前記接触領域にエネルギー照射を行うことと、
露出させた前記接触領域上の前記エネルギー照射を行った部分に低抵抗のオーム接触金属を堆積することと
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エネルギー照射を行うことが、不活性材料を使用したスパッタリング処理、化学的に活性を有するイオンを使用したスパッタリング処理、イオンミリング、及びプラズマエッチングのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低抵抗のオーム接触金属が、前記エネルギー照射を行った後に同一の環境において引き続き実施される処理により堆積されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記低抵抗のオーム接触金属を堆積することの前に、前記照射を行った前記接触領域の清浄化に水溶液処理が用いられる場合、前記低抵抗のオーム接触金属を堆積することは、前記接触領域にエネルギー照射を行うこととは別の工程で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液処理が、酸及び脱イオン水を利用した洗浄を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記低抵抗のオーム接触金属を堆積する以前の前記接触領域が、リン化インジウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デバイスが、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタを構成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記接触領域が、リン化インジウム材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リン化インジウム材料が、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタのサブコレクタ領域、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタのエミッタ領域、ダイオードのオーム接触領域、及び電界効果トランジスタのオーム接触のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接触領域が、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタのサブコレクタ領域、ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタのエミッタ領域、ダイオードのオーム接触領域、及び電界効果トランジスタのオーム接触のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−279040(P2006−279040A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78792(P2006−78792)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】