描画装置、及び描画方法
【課題】被描画媒体の温度が変化することによって、被描画媒体が伸縮することに起因して、着弾位置精度が損なわれることを抑制することができる描画装置、及び描画方法を提供する。
【解決手段】描画装置は、被描画媒体を保持する保持手段と、液状体を吐出する吐出手段を備え、吐出手段から吐出された液状体を保持手段に保持された被描画媒体に着弾させることによって、液状体を被描画媒体に配置して、液状体からなる画像を描画する描画手段と、被描画媒体に配置された状態の液状体の硬化を促進させる硬化促進手段と、保持手段の温度を調整する温度調整手段と、温度測定手段と、温度測定手段の測定結果に基づいて、温度調整手段を制御する温度制御手段と、を備える。
【解決手段】描画装置は、被描画媒体を保持する保持手段と、液状体を吐出する吐出手段を備え、吐出手段から吐出された液状体を保持手段に保持された被描画媒体に着弾させることによって、液状体を被描画媒体に配置して、液状体からなる画像を描画する描画手段と、被描画媒体に配置された状態の液状体の硬化を促進させる硬化促進手段と、保持手段の温度を調整する温度調整手段と、温度測定手段と、温度測定手段の測定結果に基づいて、温度調整手段を制御する温度制御手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画対象物を描画領域に供給し、当該描画領域において、供給された描画対象物の所望の位置に液状体を配置することで、描画対象物に画像などを描画する描画装置、及び描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を液滴として吐出し、任意の位置に着弾させることによって、所定の量の液状体を所定の位置に精度よく配置する液状体吐出装置が知られている。当該液状体吐出装置を用いて、被描画媒体の被描画面における所定の位置に液状体を配置することで、画像などの所定の形状を描画する描画装置が知られている。このような描画装置を用いた場合、着弾した液状体が流動することで、描画形状が規定された形状からずれる場合があった。
【0003】
特許文献1には、基板Wの表面上に、インクジェット装置の吐出手段から、膜形成成分および溶剤を含有する液体を吐出して膜パターンを形成する方法であって、ホットプレートを備えた載置台上に基板Wを固定し、基板Wの表面温度を溶剤の沸点以下でかつ吐出手段内の液体の温度より高い温度に制御した状態で、吐出手段と基板Wとの相対位置を移動させつつ、吐出手段から液体を吐出して、液体を基板Wの表面上に塗布する塗布工程を有することで、塗布された液体の硬化を促進することによって、微細な膜パターンを低コストで形成でき、厚膜の膜パターンを効率よく形成できる膜パターンの形成方法および形成装置、ならびにこれらにより得られる膜構造体、電気光学装置、電子機器、および非接触型カード媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−133692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている膜パターンの形成方法および形成装置においては、被描画媒体としての基板の温度も液体と同様の温度になるため、被描画媒体の温度が変化する。被描画媒体の温度が変化することによって、被描画媒体が伸縮する。
一般的に、描画装置は、描画装置上で規定された座標系を用いて規定された位置に正確に液滴を着弾させる。被描画媒体における着弾させるべき位置(以降、「着弾予定位置」と表記する)は、被描画媒体の座標系を用いて規定される。被描画媒体の基準点を描画装置の基準点に合致させることによって、被描画媒体の座標系を描画装置の座標系と関連付ける。これにより、描画装置は、描画装置上で規定された座標系を用いて規定された位置に正確に液滴を着弾させることで、被描画媒体の座標系を用いて位置が規定されている着弾予定位置に正確に液滴を着弾させることができる。
しかし、特許文献1に開示されている膜パターンの形成方法および形成装置においては、被描画媒体の温度が変化することによって、被描画媒体が伸縮するため、被描画媒体の基準点に対する着弾予定位置がずれてしまう可能性があった。これにより、描画装置は、規定された位置に正確に液滴を着弾させているにもかかわらず、被描画媒体においては、着弾位置が着弾予定位置からずれてしまう可能性があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、被描画媒体を保持する保持手段と、液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を前記保持手段に保持された前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段と、前記被描画媒体に配置された状態の前記液状体の硬化を促進させる硬化促進手段と、前記保持手段の温度を調整する温度調整手段と、温度測定手段と、前記温度測定手段の測定結果に基づいて、前記温度調整手段を制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画装置によれば、保持手段によって被描画媒体を保持し、保持された被描画媒体に、描画手段によって液状体を配置して描画することができる。硬化促進手段によって、保持された被描画媒体に配置された液状体の硬化を促進させることができる。温度調整手段によって保持手段の温度を調整することで、保持手段に保持された被描画媒体の温度を調整することができる。温度制御手段によって温度測定手段の測定結果に基づいて、温度調整手段を制御して、保持手段の温度を制御することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度を制御することができる。例えば、硬化促進手段によって液状体の硬化を促進させることに起因する被描画媒体の温度の変動を、温度測定手段によって測定し、保持手段の温度を制御して、被描画媒体の温度を適切な温度に維持するように調整することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することが好ましい。
【0010】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、保持手段の温度を測定する。被描画媒体は保持手段に保持されており、保持手段に保持された被描画媒体の温度は、保持手段の温度と一定の相関関係を有する温度となる可能性が高い。保持手段の温度を測定することで、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の量によって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量が変わる。温度調整媒体の量を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することが好ましい。
【0012】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、保持手段の温度を測定する。被描画媒体は保持手段に保持されており、保持手段に保持された被描画媒体の温度は、保持手段の温度と一定の相関関係を有する温度となる可能性が高い。保持手段の温度を測定することで、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の温度によって、温度調整媒体と保持手段との温度差が異なり、温度調整媒体と保持手段との間での熱エネルギーの移動量が変わる。温度調整媒体の温度を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出する熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することが好ましい。
【0014】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を測定することができる。被描画媒体の温度から、被描画媒体が保持された保持手段の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の量によって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量が変わる。温度調整媒体の量を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。保持手段の温度が収束する温度を調整することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度が収束する温度を調整することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することが好ましい。
【0016】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を測定することができる。被描画媒体の温度から、被描画媒体が保持された保持手段の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の温度によって、温度調整媒体と保持手段との温度差が異なり、温度調整媒体と保持手段との間での熱エネルギーの移動量が変わる。温度調整媒体の温度を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出する熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。保持手段の温度が収束する温度を調整することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度が収束する温度を調整することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、複数の副温度調整手段を備え、前記複数の副温度調整手段のそれぞれの副温度調整手段は、それぞれ前記保持手段の一部分に配設されており、前記温度調整手段を構成する媒体副流路を備えることが好ましい。
【0018】
この描画装置によれば、温度調整手段は、複数の副温度調整手段を備え、副温度調整手段が備える媒体副流路は、保持手段の一部分に配設されている。副温度調整手段によって、当該副温度調整手段が備える媒体副流路が配設されている保持手段の一部分の温度を、調整することができる。すなわち、保持手段の温度を、媒体副流路が配設されている部分ごとに、個別に調整することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる描画装置は、前記描画手段は、前記吐出手段からの前記液状体の吐出を実施しながら前記吐出手段と前記被描画媒体とを相対移動させる主走査の際に、前記吐出手段と前記被描画媒体とを主走査方向に相対移動させる主走査手段と、前記吐出手段と前記被描画媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる副走査手段と、をさらに備え、前記保持手段における、1個の前記媒体副流路が配設された副温度調整区画は、前記副走査方向における幅が、前記吐出手段の前記副走査方向における前記液状体を吐出可能な幅であり、前記主走査方向における幅が、前記保持手段の前記主走査方向における幅であることが好ましい。
【0020】
この描画装置によれば、副温度調整区画は、副走査方向における幅が、吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅であり、主走査方向における幅が、保持手段の主走査方向における幅である。吐出手段は、1回の主走査において、吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅で、保持手段の主走査方向における端から端まで液状体を配置することができる。副温度調整区画は、1個の媒体副流路が配設されており、副温度調整区画ごとに、保持手段の温度を、個別に調整することができる。したがって、1回の主走査において液状体が配置される領域ごとに、個別に保持手段の温度を調整することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度制御手段が、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を同時に稼動させることが好ましい。
【0022】
この描画装置によれば、互いに隣接する2個所の副温度調整区画の温度が調整される。描画装置は、副走査手段による改行幅を吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅より小さくすることで、被描画媒体の一個所に対して複数回の主走査を実施して液状体を配置する、いわゆる微小改行描画を実施する場合がある。微小改行描画の場合、1個所の副温度調整区画に対応する領域に向けて液状体を吐出している際には、当該領域に隣接する副温度調整区画に対応する領域にむけても液状体を吐出している状態となる。互いに隣接する2個所の温度調整手段を同時に稼動させることで、微小改行描画において液状体が配置されつつある領域に対応する保持手段の部分の温度を調整することができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度制御手段が、次に稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させることが好ましい。
【0024】
この描画装置によれば、副温度調整手段は、稼動させられる前に事前稼動させられるように制御される。事前稼動させることで、稼動開始時における副温度調整手段の状態を、稼動時に適切な稼動状態となる状態にすることができる。例えば、事前稼動において副温度調整区画の温度を略適切な温度に調整しておくことで、稼動状態においては、副温度調整区画の温度を上昇又は降下させて略適切な温度にするための時間を抑制することができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、前記保持手段における、前記硬化促進手段が臨むことが可能な部分に配設されていることが好ましい。
【0026】
この描画装置によれば、温度調整手段は、保持手段における、硬化促進手段が臨むことが可能な部分に配設されている。保持手段における、硬化促進手段が臨むことが可能な部分は、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させる液状体が配置された部分を、保持する部分である。被描画媒体において、硬化促進手段が硬化を促進させる液状体が配置された部分は、硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じやすい部分である。したがって、温度調整手段は、保持手段における、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じやすい部分を、保持する部分の温度を調整することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度制御手段が、前記複数の副温度調整手段の中で、前記保持手段における稼動している前記硬化促進手段が臨んでいる部分に、配設されている前記副温度調整手段を稼動させることが好ましい。
【0028】
この描画装置によれば、複数の副温度調整手段の中で、保持手段における稼動している硬化促進手段が臨んでいる部分に、配設されている副温度調整手段が稼動させられる。保持手段における稼動している硬化促進手段が臨んでいる部分は、保持手段における、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させている液状体が配置されている部分を、保持している部分である。被描画媒体において、硬化促進手段が硬化を促進させている液状体が配置されている部分は、硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じている可能性が高い部分である。これにより、温度制御手段は、保持手段における、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じやすい部分を、保持する部分に配設された副温度調整手段を稼動させることができる。
【0029】
[適用例12]本適用例にかかる描画方法は、被描画媒体を保持手段によって保持する保持工程と、保持された前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画工程と、前記被描画媒体に配置された前記液状体の硬化を促進させる硬化促進工程と、温度測定工程と、前記温度測定工程における測定結果に基づいて、前記保持手段の温度を制御する温度制御工程と、を有することを特徴とする。
【0030】
本適用例にかかる描画方法によれば、保持工程において被描画媒体を保持し、保持された被描画媒体に、描画工程において液状体を配置して描画することができる。硬化促進工程において、保持された被描画媒体に配置された液状体の硬化を促進させることができる。温度測定工程において温度を測定し、温度制御工程において、温度測定工程の測定結果に基づいて、保持手段の温度を制御することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度を制御することができる。例えば、硬化促進工程において液状体の硬化を促進させることに起因する被描画媒体の温度の変動を、温度測定工程において測定し、温度制御工程において保持手段の温度を制御して、被描画媒体の温度を適切な温度に維持するように制御することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる描画方法は、前記温度制御工程は、複数の副温度調整手段を備える温度調整手段を用いて実施し、前記描画工程は、前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させる描画吐出工程を有し、前記副温度調整手段は、前記保持手段の部分であって、前記被描画媒体における1回の前記描画吐出工程において前記液状体を着弾させることが可能な領域に相当する範囲を保持する部分に配設されており、前記温度制御工程では、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を稼動させることが好ましい。
【0032】
この描画方法によれば、温度制御工程では、互いに隣接する2個の副温度調整手段が稼動させられる。保持手段における、副温度調整手段が配設されている部分を、副温度調整区画と表記する。一般的に、描画装置は、描画吐出工程と改行工程とを交互に繰り返すことで、面状の画像を描画する。改行工程における改行幅を吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅より小さくすることで、被描画媒体の一個所に対して複数回の主走査を実施して液状体を配置する、いわゆる微小改行描画を実施する場合がある。微小改行描画の場合、1個所の副温度調整区画に対応する領域に向けて液状体を吐出している際には、当該領域に隣接する副温度調整区画に対応する領域にむけても液状体を吐出している状態となる。互いに隣接する2個所の温度調整手段を同時に稼動させることで、微小改行描画において液状体が配置されつつある領域に対応する保持手段の部分の温度を調整することができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる描画方法は、前記温度制御工程に先んじて、前記温度制御工程において稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させる事前稼動工程をさらに備えることが好ましい。
【0034】
この描画方法によれば、副温度調整手段は、稼動させられる前に、事前稼動工程において事前稼動させられる。温度制御工程に先んじて事前稼動させることで、温度制御工程の稼動開始時における副温度調整手段の状態を、稼動時に適切な稼動状態となる状態にすることができる。例えば、事前稼動において副温度調整区画の温度を略適切な温度に調整しておくことで、温度制御工程においては、副温度調整区画の温度を上昇又は降下させて略適切な温度にするための時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図。(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図。(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットの概略構成、及びヘッドユニットと硬化ユニットとの位置関係を示す平面図。
【図4】冷却ユニットの構成を示す説明図。
【図5】液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図。
【図6】(a)は、吐出ノズルの配置位置を示す説明図。(b)は、液滴をノズル列の延在方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図。(c)は、液滴を主走査方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図。(d)は、液滴を面状に着弾させた状態を示す説明図。
【図7】(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャート。(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャート。(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャート。
【図8】描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図。
【図9】冷却ユニットの構成を示す説明図。
【図10】(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャート。(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャート。(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャート。
【図11】描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、描画装置、及び描画方法について、図面を参照して説明する。本実施形態は、被描画媒体の一例である帯状のフィルムに画像を描画する工程で用いられる描画装置及び描画方法を例に説明する。
【0037】
<液滴吐出法>
最初に、描画装置において描画用の機能液を吐出するために用いられる液滴吐出法について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0038】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒーターにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。このうち、ピエゾ方式は、液状材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状材料選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0039】
<描画装置>
次に、フィルム10に描画する描画装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、描画装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図である。フィルム10が、被描画媒体に相当する。
【0040】
図1に示すように、描画装置1は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、機能液供給部(図示省略)と、メンテナンス装置部5と、を備えている。
ヘッド機構部2が備える液滴吐出ヘッド20は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドであり、紫外線硬化性を有する機能液を液滴として、描画対象物に向けて吐出する。供給排出機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴を着弾させる描画対象物であるフィルム10を描画位置に給排紙する。機能液供給部は、液滴吐出ヘッド20への機能液の供給を行う。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド20の保守を行う。
描画装置1は、また、これら各機構部等を総括的に制御する描画装置制御部8(図4参照)を備えている。液滴吐出ヘッド20が、吐出手段に相当する。機能液が、液状体に相当する。
【0041】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取リール32と、吸着ユニット30と、アイドラローラー37と、アイドラローラー38と、Y軸走査機構42と、冷却ユニット71(図4参照)と、を備えている。
Y軸走査機構42は、Y軸ガイドレール42aとY軸スライダー42bと、をそれぞれ1対備えている。吸着ユニット30は、吸着テーブル33と、テーブル台43と、テーブル昇降機構44と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、を備えている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回動軸まわりに回動可能であり、それぞれの回動軸は互いに略平行である。
フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、フィルム10の送り方向をY軸方向と表記する。
【0042】
Y軸走査機構42のY軸ガイドレール42aは、吸着テーブル33を挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、Y軸方向に延在している。Y軸スライダー42bは、Y軸駆動モーターを介して、Y軸ガイドレール42aに、Y軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。
2本のY軸ガイドレール42aのそれぞれに支持されたY軸スライダー42bには、吸着ユニット30のテーブル台43の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれY軸スライダー42bに固定されたテーブル台43は、Y軸スライダー42bに支持されて、2本のY軸ガイドレール42aの間に差渡されている。テーブル台43は、Y軸駆動モーターによって、Y軸ガイドレール42aに沿って、Y軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0043】
吸着ユニット30の吸着テーブル33は、テーブル台43に固定されたテーブル昇降機構44に固定されている。テーブル昇降機構44は、吸着テーブル33を、テーブル台43に対して、X軸方向及びY軸方向と直交する方向であるZ軸方向に昇降可能であって、吸着テーブル33の吸着面33a(図4参照)の位置がZ軸方向の所定の位置である吸着位置、及び吸着位置よりテーブル台43に近い退避位置に保持可能に支持している。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aのZ軸方向における所定の位置は、後述する供給ローラー34の外周及び媒体送りローラー36の外周に接する面の位置に略一致する位置である。
吸着テーブル33には、冷却ユニット71を構成する媒体流路72(図4参照)などが配設されている。冷却ユニット71の詳細は、後述する。
【0044】
供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、図示省略した支持部材を介してテーブル台43に固定されている。供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向において吸着テーブル33を挟んで両側に配設されている。フィルム10は、Y軸方向に略平行に供給され、供給ローラー34及び従動ローラー34aは、フィルム10の供給方向における吸着テーブル33の上流側に配設されており、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aは、吸着テーブル33の下流側に配設されている。
テーブル台43は、Y軸走査機構42によってY軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能に支持されている。吸着テーブル33と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸走査機構42によってY軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0045】
供給排出機構部3が備える供給リール31と、アイドラローラー37と、吸着ユニット30と、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、この順で配置されている。吸着ユニット30において、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33と、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、この順で配置されている。したがって、供給排出機構部3において、供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33と、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向に、この順で配置されている。
【0046】
供給リール31には、帯状のフィルム10が巻かれており、供給モーターによって供給リール31が回動させられることによって、フィルム10が繰り出される。
従動ローラー34aは、外周が供給ローラー34の外周に接しており、付勢装置によって、供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は供給モーターによって回動させられ、供給ローラー34に当接している従動ローラー34aは、供給ローラー34に従って回動する。供給リール31から供給されたフィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟まれて、従動ローラー34aによって供給ローラー34に押し付けられており、供給ローラー34の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0047】
アイドラローラー37は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。アイドラローラー37は、フィルム10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、当該付勢力によって、当接している。アイドラローラー37が付勢された状態で当接することで、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、略弛みなく張られている。これにより、フィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に供給されて挟まれる際の状態が略平坦に維持され易くなっている。また、供給ローラー34におけるフィルム10の供給速度と、供給リール31におけるフィルム10の繰り出し速度との差によって、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー37の位置が変わることで、略弛みなく張られた状態が維持される。吸着ユニット30の移動による供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量の変動についても、同様にして、略弛みなく張られた状態が維持される。
【0048】
従動ローラー36aは、外周が媒体送りローラー36の外周に接しており、付勢装置によって、媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は媒体送りモーターによって回動させられ、媒体送りローラー36に当接している従動ローラー36aは、媒体送りローラー36に従って回動する。供給ローラー34の回動によって供給されたフィルム10は、媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟まれて、従動ローラー36aによって媒体送りローラー36に押し付けられている。これにより、媒体送りローラー36の回動による外周の回動長さに略同等の長さが送られる。
【0049】
媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による供給量より多く設定されている。媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構にはトルク制御機構が組み込まれている。媒体送りローラー36において供給ローラー34より早く送ることができるフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、トルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。
当該張られた部分には、吸着テーブル33の吸着面33aが臨んでいる。上述した吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aの位置は、媒体送りローラー36の外周及び供給ローラー34の外周に接する面の位置に略一致している。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aは、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10に略接している。
【0050】
吸着テーブル33は、吸着面33aにフィルム10を吸着する。吸着面33aは平坦な面であり、フィルム10における吸着面33aに吸着された部分は平坦な状態に維持される。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aは、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10に略接している。このため、フィルム10が吸着テーブル33に吸着されることによって、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10の形状が変形させられる可能性は非常に小さい。すなわち、フィルム10の形状が変形させられるような力がフィルム10に加えられたり、フィルム10の形状が変形させられることによってフィルム10に内部応力が発生したりする可能性は小さい。
吸着方法としては、大気吸引装置を設けて負圧によって吸着する方法や、帯電及び除電装置を設けて静電気によって吸着する方法などを用いることができる。
【0051】
巻取リール32は、巻取モーターによって回動させられる。媒体送りローラー36から送り出されたフィルム10は、回動する巻取リール32に巻き取られる。
アイドラローラー38は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取リール32との間の部分に、アイドラローラー38が付勢された状態で当接することで、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとアイドラローラー38との間、及びアイドラローラー38と巻取リール32との間の部分が、略弛みなく張られている。これにより、フィルム10は、巻取リール32に巻き取られる際の状態が略平坦に維持され易くなっている。また、媒体送りローラー36におけるフィルム10の送り速度と、巻取リール32におけるフィルム10の巻取り速度との差によって、媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー38の位置が変わることで、略弛みなく張られた状態が維持される。吸着ユニット30の移動による媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量の変動についても、同様にして、略弛みなく張られた状態が維持される。
【0052】
このような状態で、フィルム10は、供給リール31から巻取リール32まで送られ、途中の吸着テーブル33に吸着された部分に描画が実施される。フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向がX軸方向と表記する方向であり、フィルム10の送り方向がY軸方向と表記する方向である。
吸着テーブル33が保持手段に相当する。
【0053】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11と、硬化ユニット6と、を備えている。
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bと支持柱台11dとを、それぞれ1対備えており、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えている。
一対の支持柱台11d,11dは、X軸方向において吸着テーブル33を挟んで両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、上述した一対のY軸ガイドレール42a,42aを間に挟む位置に配設されている。一方のY軸ガイドレール42aと支持柱台11dとの間には、メンテナンス装置部5が配設されている。
【0054】
2本のガイドレール支持柱11cが、1個の支持柱台11dの上に、支持柱台11dのY軸方向の両端において、それぞれ1本ずつ立設されている。1個のX軸ガイドレール11aは、支持柱台11dの供給リール31の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。もう1個のX軸ガイドレール11aは、支持柱台11dの巻取リール32の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。
【0055】
X軸スライダー11bは、X軸駆動モーターを介して、X軸ガイドレール11aに、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。2本のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持されて、2本のX軸ガイドレール11aの間に差渡されている。ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによって、X軸ガイドレール11aに沿って、X軸方向に摺動自在であって、X軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0056】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の略中央に懸吊されている。ヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下に固定されている。ヘッドユニット21が備える液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)が形成されたノズル基板25(図2参照)が吸着テーブル33の吸着面33aが臨む状態で保持されている。
【0057】
硬化ユニット6は、支持枠(図示省略)と、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)61aと、LED筐体62aと、UVLED61bと、LED筐体62bと、を備えている。UVLED61a及びUVLED61bは、紫外線を射出するLEDである。
LED筐体62aは、サブキャリッジ28の主走査方向(X軸方向)側の側面に支持枠を介して固定されている。LED筐体62aは、略直方体形状の外形を有し、内部に略直方体形状で一面が開口した筐体室が形成されている。筐体室は、吸着テーブル33に臨む側が開口している。筐体室には、UVLED61aが、開口側に紫外線を射出する状態で固定されている。複数のUVLED61aが、Y軸方向(副走査方向)に並んで配設されている。複数のUVLED61aは、Y軸方向において、ヘッドユニット21が機能液を配置可能な幅を包含する範囲に、紫外線を照射することができる。硬化ユニット6が、硬化促進手段に相当する。
【0058】
UVLED61b及びLED筐体62bは、UVLED61a又はLED筐体62bと同様の構成を有している。UVLED61b及びLED筐体62bは、X軸方向(主走査方向)における、UVLED61a及びLED筐体62aの反対側で、UVLED61a及びLED筐体62aと同様に、サブキャリッジ28の側面に固定されている。すなわち、硬化ユニット6は、X軸方向(主走査方向)において、ヘッドユニット21を挟んで両側に、ヘッドユニット21に関して略対称な状態で、配設されている。硬化ユニット6は、X軸走査機構11によって、ヘッドユニット21と一体に、主走査方向に移動させられる。
【0059】
Y軸走査機構42によって吸着ユニット30をY軸方向に移動させることによって、吸着ユニット30の吸着テーブル33を、Y軸方向に走査させることができる。すなわち、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分を、Y軸方向に走査させることができる。X軸走査機構11によってブリッジプレート27をX軸方向に移動させることによって、ブリッジプレート27に懸吊されたサブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、X軸方向に走査させることができる。並行して、サブキャリッジ28に固定された硬化ユニット6のUVLED61a及びUVLED61bを、X軸方向に走査させることができる。
【0060】
X軸走査機構11によってヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20をX軸方向に走査させ、Y軸走査機構42によってフィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分をY軸方向に走査させる。これにより、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分の略全面に対して、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24を臨ませることができる。同様に、UVLED61a及びUVLED61bを、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分の略全面に対して、臨ませることができる。
X軸走査機構11が、主走査手段に相当する。Y軸走査機構42が、副走査手段に相当する。
【0061】
吸着テーブル33に吸着保持されたフィルム10の描画対象部分を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、ヘッドユニット21のX軸方向の移動に同調させて、描画用の機能液を液滴として吐出させる。並行して、ヘッドユニット21に並設された硬化ユニット6から、吐出されて描画対象部分に着弾させられた機能液に紫外線を照射する。
【0062】
ヘッドユニット21をX軸方向に移動させる主走査と、吸着テーブル33に吸着保持されたフィルム10をY軸方向に移動させる改行(副走査)とを制御することにより、吸着テーブル33の吸着面33aに吸着されたフィルム10上の任意の位置にヘッドユニット21を対向させる。それと共に、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20から吐出した機能液の液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。並行して、ヘッドユニット21に並設された硬化ユニット6から、画像を構成する機能液に紫外線を照射して略硬化させることで、描画された画像などを略固定することが可能である。
ヘッド機構部2とY軸走査機構42とが、描画手段に相当する。
【0063】
<液滴吐出ヘッド>
次に、液滴吐出ヘッド20について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図であり、図2(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図である。図2に示したX軸、Y軸、及びZ軸は、液滴吐出ヘッド20が描画装置1に装着された状態において、図1に示したX軸、Y軸、及びZ軸と一致している。
【0064】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液を液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に機能液を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が描画装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液の液滴を配置することができる。
【0065】
図2(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25に圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液が常に充填される液たまり55が形成されている。液たまり55は、振動板52と、ノズル基板25と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。機能液は、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給される。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。振動板52と、ノズル基板25と、2個のヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
【0066】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じである。圧力室58には、2個のヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給される。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル24を含むノズル列24Aに対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んで配設された吐出ノズル24がもう1列のノズル列24Aを形成している。当該ノズル列24Aに対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0067】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド20全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は、電極層と圧電材料とを積層した活性部を有している。圧電素子59は、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図2(b)又は(c)における振動板52の厚さ方向)に縮む。電極層に印加されていた駆動電圧が解除されることで、活性部が元の長さに戻る。
【0068】
電極層に駆動電圧が印加されて、圧電素子59の活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に撓む。これにより、圧力室58の容積が増加することから、機能液が液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を押圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた機能液に圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル24から機能液が液滴となって吐出される。
【0069】
<ヘッドユニット、及び硬化ユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成、及びヘッドユニット21と硬化ユニット6との位置関係について、図3を参照して説明する。図3は、ヘッドユニットの概略構成、及びヘッドユニットと硬化ユニットとの位置関係を示す平面図である。図3に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0070】
図3に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図3は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組20Aを3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0071】
一つのヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。ヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20において、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。
【0072】
一つのヘッド組20Aが備える3個の液滴吐出ヘッド20が有する6列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列は、例えば180個の6倍、1080個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約75.5mmである。液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組20Aを構成している。
【0073】
ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、それぞれが有する1本のノズル列とみなせるノズル列が、Y軸方向において、ノズル列24Aの半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。言い換えると、それぞれのヘッドユニット21は、互いに隣り合うヘッド組20Aを構成する液滴吐出ヘッド20の、一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が、Y軸方向において、半ノズルピッチずれた位置に、配設されている。
【0074】
一つのヘッドユニット21が備える3つのヘッド組20Aにおける9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、例えば180個の18倍、3240個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約226.7mmである。即ち、一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が70μmのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0075】
上述したように、硬化ユニット6は、X軸方向(主走査方向)において、ヘッドユニット21を挟んで両側に、ヘッドユニット21に関して略対称な状態で、配設されている。ヘッドユニット21の両側において、複数のUVLED61a又はUVLED61bが、Y軸方向(副走査方向)に並んで配設されている。複数のUVLED61a又はUVLED61bは、Y軸方向において、ユニットノズル列240Aが機能液を配置可能な幅を包含する範囲に、紫外線を照射することができる。
【0076】
ヘッドユニット21がX軸方向(主走査方向)に走査されて機能液を吐出する際には、ヘッドユニット21に並んで配設されたUVLED61a又はUVLED61bから、略並行して、紫外線を照射させる。
走査方向において、ヘッドユニット21の後側に位置するUVLED61a又はUVLED61bから紫外線を照射することで、吐出されて着弾させられた機能液に、着弾した直後に紫外線を照射することができる。機能液に紫外線を照射することで、機能液を硬化させることができる。機能液の硬化率に影響を及ぼす要因は、走査速度、UVLED61a及びUVLED61bの照射領域のX軸方向における幅、UVLED61a及びUVLED61bの照射強度、などである。これらの要因について、適切な値に設定することで、着弾させられた機能液を適切な硬化率に硬化させることができる。
【0077】
<冷却ユニット>
次に、冷却ユニット71について、図4を参照して説明する。図4は、冷却ユニットの構成を示す説明図である。図4に示したX軸及びY軸は、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
図4に示すように、冷却ユニット71は、媒体流路72と、開閉バルブ73と、給液管74aと、排液管74bと、給液ポンプ76と、温調機77と、温度計79と、を備えている。冷却ユニット71は、また、開閉バルブ73と、給液ポンプ76と、温調機77と、を制御するテーブル温度制御部81を備えている。
【0078】
媒体流路72は、吸着テーブル33に形成されている。吸着テーブル33の吸着面33aには、吸着溝33bが形成されている。吸着テーブル33は、吸着溝33bの底に開口する吸引孔(図示省略)を備えており、吸引孔が接続された負圧装置(図示省略)によって、吸引孔が負圧にされる。吸引孔が負圧にされることで、吸引孔が底に開口している吸着溝33bが負圧にされて、フィルム10などが、吸着面33aに吸着される。
【0079】
媒体流路72は、流入流路72aと、枝流路72bと、流出流路72cとを備えている。流入流路72aは、一端が、吸着テーブル33のX軸方向に略平行な側面の、Y軸方向に略平行な側面の近くに開口している。流入流路72aは、開口の近くで略直角に曲げられて、Y軸方向に略平行な側面及び吸着面33aの近くで、Y軸方向に延在している。流入流路72aのY軸方向に延在している部分には、複数の枝流路72bの一端が接続されている。複数の枝流路72bは、Y軸方向において、略等間隔に配設されており、吸着面33aの近くで、X軸方向に延在している。枝流路72bの流入流路72aに接続された一端の反対側の端は、流出流路72cに接続されている。流出流路72cは、吸着面33aの中心位置を通り吸着面33aに垂直な直線に関して、流入流路72aと対称な形状を有し、対称な位置に形成されている。
流入流路72a、枝流路72b、及び流出流路72cは、吸着面33aの面方向において、吸引孔の開口と重ならない位置に形成されている。
【0080】
排液管74bは、図示省略した接続部材を介して、流出流路72cに接続されている。
給液管74aは、一端が、図示省略した接続部材を介して、流入流路72aに接続されている。給液管74aにおける、流入流路72aとの接続部分の近くには、開閉バルブ73が取り付けられている。開閉バルブ73によって、給液管74aの流路を開閉することができる。給液管74aにおける、流入流路72aと接続された端と反対側の端は、給液ポンプ76に接続されている。給液ポンプ76は温調機77に接続されている。
給液管74a及び排液管74bは、可撓性に富む素材で形成されている。給液管74a及び排液管74bが容易に屈曲することで、吸着テーブル33のY軸方向の移動に際して、給液管74a及び排液管74bが吸着テーブル33の移動を阻害する負荷となることを抑制している。
【0081】
冷却ユニット71において、温調機77は、冷却機として機能する。温調機77で冷却された温調媒体は、給液ポンプ76によって、給液管74aを経由して、媒体流路72の流入流路72aに送出される。温調媒体は、流入流路72aから複数の枝流路72bに分かれて流動し、枝流路72bを流動することで、吸着テーブル33を冷却する。複数の枝流路72bに分かれて流動した温調媒体は、流出流路72cで合流し、排液管74bを介して排出される。温調媒体としては、例えば、水を用いることができる。
【0082】
温度計79は、吸着テーブル33のY軸方向に略平行な側面に開口して、X軸方向に延在して形成されている孔に配設されている。温度計79は、孔壁の温度を測定することで、吸着テーブル33の温度を測定可能である。温度計79は、給液管74aと流入流路72aとの接続部の近くと、排液管74bと流出流路72cとの接続部の近くとに、それぞれ1個ずつ、配置されている。
【0083】
テーブル温度制御部81は、描画装置制御部8に備えられている。テーブル温度制御部81は、開閉バルブ73、給液ポンプ76、温調機77、及び温度計79と、電気的に接続されている。
テーブル温度制御部81は、温度計79によって測定された吸着テーブル33の温度情報を取得し、当該温度情報に基づいて、開閉バルブ73、給液ポンプ76、及び温調機77を制御する。
媒体流路72と、開閉バルブ73と、給液管74aと、排液管74bと、給液ポンプ76と、温調機77とが、温度調整手段に相当する。温度計79が、温度測定手段に相当する。テーブル温度制御部81が、温度制御手段に相当する。温調媒体が、温度調整媒体に相当する。
【0084】
<機能液の吐出>
次に、描画装置1における液滴吐出ヘッド20からの吐出制御方法について、図5を参照して説明する。図5は、液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図である。
【0085】
上述したように、描画装置1は、描画装置1の各部の動作を制御する描画装置制御部8を備えている。描画装置制御部8は、制御信号を出力するCPU84と、液滴吐出ヘッド20の電気的な駆動制御を行うヘッドドライバー20dとを備えている。
図5に示すように、ヘッドドライバー20dは、FFCケーブルを介して各液滴吐出ヘッド20と電気的に接続されている。また、液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)ごとに設けられた圧電素子59に対応して、シフトレジスター(SL)85と、ラッチ回路(LAT)86と、レベルシフター(LS)87と、スイッチ(SW)88とを備えている。
【0086】
描画装置1における吐出制御は次のように行われる。最初に、CPU84がフィルム10などの描画対象物における機能液の配置パターンをデータ化したドットパターンデータをヘッドドライバー20dに伝送する。そして、ヘッドドライバー20dは、ドットパターンデータをデコードして吐出ノズル24ごとのON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスター85に伝送される。
【0087】
シフトレジスター85に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路86に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフター87でスイッチ88用のゲート信号に変換される。即ち、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ88が開いて圧電素子59に駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合にはスイッチ88が閉じられて圧電素子59に駆動信号(COM)は供給されない。そして、「ON」に対応する吐出ノズル24からは機能液が液滴となって吐出され、吐出された機能液の液滴がフィルム10などの描画対象物の上に着弾して、描画対象物の上に機能液が配置される。
【0088】
<着弾位置>
次に、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24と、それぞれの吐出ノズル24から吐出された液滴の着弾位置と、の関係について説明する。図6は、吐出ノズルと、それぞれの吐出ノズルから吐出された液滴の着弾位置と、の関係を示す説明図である。図6(a)は、吐出ノズルの配置位置を示す説明図であり、図6(b)は、液滴をノズル列の延在方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図であり、図6(c)は、液滴を主走査方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図であり、図6(d)は、液滴を面状に着弾させた状態を示す説明図である。図6に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。X軸方向が主走査方向であって、図6に示した矢印aの方向に吐出ノズル24(液滴吐出ヘッド20)を相対移動させながら、任意の位置において液状体の液滴を吐出することによって、X軸方向の任意の位置に液滴を着弾させることができる。
【0089】
図6(a)に示すように、ノズル列24Aを構成する吐出ノズル24は、Y軸方向にノズルピッチPの中心間距離で配列されている。上述したように、2列のノズル列24Aをそれぞれ構成する吐出ノズル24同士は、Y軸方向において、相互に、ノズルピッチPの1/2ずつ位置がずれている。
【0090】
図6(b)に示すように、着弾位置を示す着弾点91と、着弾した液滴の濡れ広がり状態を示す着弾円91Aとで、着弾した1滴の液滴の状態を示している。2列のノズル列24Aの全部の吐出ノズル24から、図6(b)に二点鎖線で示した仮想線L上に着弾させるタイミングで、それぞれ液滴を吐出させることによって、ノズルピッチPの1/2の中心間間隔で着弾円91Aが連なる直線が形成される。
【0091】
図6(c)に示すように、一つの吐出ノズル24から連続して液滴を吐出させることによって、X軸方向に着弾円91Aが連なる直線が形成される。X軸方向における着弾点91間の中心間距離の最小値を、最小着弾距離dと表記する。最小着弾距離dは、主走査方向の相対移動速度と、吐出ノズル24の最小吐出間隔との積である。
【0092】
図6(d)に示すように、二点鎖線で示した仮想線L1,L2,L3上に着弾させるタイミングで、それぞれ液滴を吐出させることによって、ノズルピッチPの1/2の中心間間隔で着弾円91Aが連なる直線が、X軸方向に並列した着弾面が形成される。図6(d)に示した仮想線L1,L2,L3間の距離が最小着弾距離dの場合のそれぞれの着弾点91が、描画装置1によって機能液の液滴を配置可能な位置である。
【0093】
画像の描画に際しては、画像の情報に従って、図6(d)に示したそれぞれの着弾点91の位置について、液滴を配置する位置を定める。例えば、当該配置位置、及び配置位置に液滴を吐出する吐出ノズル24を指定した配置表を形成し、配置表に従って機能液を着弾させることによって、画像の情報によって規定される画像を描画する。なお、図6(d)に示した例では、着弾円91Aの間に隙間が存在するが、ノズルピッチPや最小着弾距離dに対して、吐出する液滴の1滴あたりの吐出重量を適切に定めることによって、隙間なく機能液を配置することが可能である。
【0094】
<描画工程>
次に、描画装置1によってフィルム10に描画する描画工程について、図7、及び図8を参照して説明する。図7は、描画工程を示すフローチャートである。図7(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャートであり、図7(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャートであり、図7(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャートである。図8は、描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図である。図8に示したX軸、及びY軸、は、図1に示したX軸、及びY軸と一致している。
【0095】
図7(a)のステップS1では、冷却ユニット71を稼動させて、吸着テーブル33の温度を所定の温度に調整する。所定の温度は、例えば、描画装置1が設置された環境におけるフィルム10の温度である。
【0096】
次に、ステップS2では、吸着テーブル33にフィルム10を吸着する。
最初に、フィルム10をY軸方向に移動させて、フィルム10の被描画領域101を、吸着テーブル33の吸着面33aに臨む位置に位置させる。フィルム10のY軸方向の移動は、上述した供給ローラー34及び媒体送りローラー36を回動させて実施する。被描画領域101は、フィルム10において、フィルム10が吸着テーブル33に吸着された状態を解除することなく描画を実施することが可能な範囲の領域である。
次に、吸着テーブル33によって、フィルム10の被描画領域101を吸着する。フィルム10における吸着テーブル33と重なる部分の略全面が、吸着テーブル33に吸着され、被描画領域101が吸着面33aに倣う状態で吸着される。
【0097】
次に、ステップS3では、Y軸走査機構42によって、吸着テーブル33をY軸方向に移動させて、吸着テーブル33に吸着された被描画領域101を描画開始位置に移動させる。描画開始位置は、ヘッドユニット21に対する被描画領域101のY軸方向の位置が、ヘッドユニット21をX軸方向に走査させると共に液滴吐出ヘッド20から機能液を吐出させる描画走査を開始できる位置である。図8に示した被描画領域101は、ヘッドユニット21の位置が、ヘッドユニット21aで示した位置である場合に、描画開始位置に位置している。この場合の描画開始位置は、被描画領域101に、フィルム10の送り方向における最も下流側(巻取リール32側)から順次描画走査を実施して描画する場合における描画開始位置である。
【0098】
次に、図7(a)のステップS4では、画像描画及び吸着テーブル33の温度調整を実施する。
ステップS4における画像描画工程は、図7(b)に示した各工程を実施することで、実施する。ステップS4における吸着テーブル33の温度調整工程は、図7(c)に示した各工程を実施することで、実施する。
【0099】
画像描画工程における最初のステップである図7(b)のステップS41では、描画走査を実施する。
ヘッドユニット21aの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向(主走査方向)に走査させる。それと共に、吐出ノズル24から、描画形状に対応した位置に機能液の液滴を着弾させられる時点において機能液の液滴を吐出することで、第一描画行121に描画する。並行して、硬化ユニット6を稼動させて、UVLED61a又はUVLED61bによって、第一描画行121に配置された機能液に紫外線を照射して硬化させる。
【0100】
第一描画行121は、Y軸方向の幅がヘッドユニット21のユニットノズル列240Aによって描画可能なユニット描画幅WUである。第一描画行121は、被描画領域101における、フィルム10の進行方向の最も下流側(巻取リール32側)に位置する領域である。第一描画行121への描画走査を実施したヘッドユニット21は、図8に示したヘッドユニット21bの位置に位置している。被描画領域101のY軸方向の幅WEは、ユニット描画幅WUの4倍である。
【0101】
次に、図7(b)のステップS42では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS42でNO)場合には、ステップS43に進む。
【0102】
ステップS42の次に、ステップS43では、改行(副走査)を実施する。改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル33を、Y軸方向の図8に矢印aで示した方向に移動させることによって実施する。改行幅は、例えばユニットノズル列240Aによって描画可能なユニット描画幅WUである。当該改行幅WUの改行を実施することで、図8に示したように、被描画領域101は、第一描画行121に隣接する第二描画行122に、ヘッドユニット21cのユニットノズル列240Aによって描画可能な位置に位置している。
【0103】
なお、改行は吸着テーブル33をY軸方向に移動させることによって実施するため、ヘッドユニット21のY軸方向における位置は固定である。しかし、図8においては、図を判りやすくするために、ヘッドユニット21を相対移動させた位置に示している。ヘッドユニット21bとヘッドユニット21cとは、被描画領域101に対してヘッドユニット21が相対移動したことを示している。描画装置1においては、ヘッドユニット21bとヘッドユニット21cとは同じ位置である。
【0104】
ステップS43の次には、ステップS41に進み、ステップS41及びステップS42を繰り返す。ステップS43の改行を実施して、被描画領域101がユニットノズル列240Aによって第二描画行122に描画可能な位置に位置した次に実施するステップS41では、ヘッドユニット21cの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向に走査させる描画走査を実施する。第二描画行122への描画走査を実施したヘッドユニット21は、図8に示したヘッドユニット21dの位置に位置している。ヘッドユニット21dの位置は、ヘッドユニット21aの位置と略同じである。
【0105】
ステップS43、ステップS41、及びステップS42を繰り返して実施することで、第一描画行121及び第二描画行122に続けて、第三描画行123及び第四描画行124に描画して、被描画領域101の全面への描画が完了する。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS42でYES)場合には、図7(a)のステップS4における画像描画工程を終了する。
【0106】
温度調整工程における最初のステップである図7(c)のステップS46では、吸着テーブル33の温度測定を実施する。2個の温度計79によって吸着テーブル33の温度が計測される。テーブル温度制御部81は、計測された温度情報を取得する。
【0107】
次に、ステップS47では、取得した吸着テーブル33の温度測定値を基準値と比較して、温度の変動量が規格以内であるか否かを判定する。
温度の変動量が規格以内である場合(ステップS47でYES)には、ステップS46に戻り、ステップS46及びステップS47を繰り返す。
温度の変動量が規格値を超えていた場合(ステップS47でNO)には、ステップS48に進む。
【0108】
次に、ステップS48では、吸着テーブル33の温度調整を実施する。上述したステップS1において、冷却ユニット71を稼動させて、吸着テーブル33の温度を所定の温度に調整している。したがって、温度の変動量が規格値を超える場合は、ステップS41の描画走査における紫外線照射によって、フィルム10や吸着テーブル33の温度が変動した場合である可能性が高い。テーブル温度制御部81は、冷却ユニット71の稼動条件を変更することによって、吸着テーブル33の温度を調整する。冷却ユニット71の稼動条件としては、温調機77による温調媒体の冷却温度(調整温度)や、開閉バルブ73や給液ポンプ76による温調媒体の流量が挙げられる。
【0109】
次に、ステップS49では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。ステップS49は、上述したステップS42と同じ工程である。
被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS49でNO)場合には、ステップS46に戻り、ステップS46からステップS49の各工程を繰り返す。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS49でYES)場合には、図7(a)のステップS4における温度調整工程を終了する。
【0110】
図7(a)のステップS4の次に、図7(a)のステップS5では、フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了したか否かを判定する。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していなかった(ステップS5でNO)場合には、ステップS6に進む。
ステップS6では、フィルム10を送り、次に描画を実施する被描画領域101の部分を、吸着テーブル33の吸着面33aに臨む位置に位置させる。ステップS6の次に、ステップS2に戻り、ステップS2からステップS5を繰り返す。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していた(ステップS5でYES)場合には、描画装置1によってフィルム10に描画する描画工程を終了する。
【0111】
<冷却ユニット−2>
次に、冷却ユニット71と一部の構成が異なる冷却ユニット171について、図9を参照して説明する。図9は、冷却ユニットの構成を示す説明図である。図9に示したX軸及びY軸は、冷却ユニット171が描画装置1と同様の構成を有する描画装置に組み込まれた場合に、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0112】
図9に示すように、冷却ユニット171は、4個の冷却ブロック171aと、給液管174aと、排液管174bと、給液ポンプ76と、温調機77と、温度計79と、を備えている。冷却ブロック171aは、媒体流路172と、開閉バルブ73と、を備えている。冷却ユニット171は、また、開閉バルブ73と、給液ポンプ76と、温調機77と、を制御するテーブル温度制御部181を備えている。
【0113】
媒体流路172は、吸着テーブル333に形成されている。吸着テーブル333は、冷却ユニット71と一部の構成が異なる冷却ユニット171が組み込まれていることが、吸着テーブル33と、異なっている。吸着テーブル333は、吸着テーブル33と同様な吸着面33aを備え、吸着溝33bが形成されている。吸着テーブル33と同様に、吸着溝33bが負圧にされて、フィルム10などが、吸着面33aに吸着される。吸着テーブル333が、保持手段に相当する。
【0114】
それぞれの冷却ブロック171aにおいて、媒体流路172は、2個所の枝流路172aと、連結流路172bとを有している。枝流路172aは、一端が吸着テーブル333のY軸方向に略平行な側面に開口し、吸着面33aの近くで、X軸方向に延在している。連結流路172bは、枝流路172aが開口している側面と反対側のY軸方向に略平行な側面近くにおいて、2個所の枝流路172aの開口と反対側の端を連結している。
枝流路172a、及び連結流路172bは、吸着面33aの面方向において、吸引孔の開口と重ならない位置に形成されている。
【0115】
排液管174bは、4個の分岐端を備え、それぞれの分岐端が、図示省略した接続部材を介して、枝流路172aの一方の開口に接続されている。
給液管174aは、4個の分岐端を備え、それぞれの分岐端が、図示省略した接続部材を介して、枝流路172aにおける、排液管174bが接続された開口の反対側の開口に接続されている。給液管174aにおける、枝流路172aとの接続部分の近くには、開閉バルブ73が取り付けられている。開閉バルブ73によって、給液管174aの分岐端の流路を開閉することができる。これにより、開閉バルブ73によって、それぞれの冷却ブロック171aごとに、流動させる温調媒体の流動量を調整することができる。
給液管174aにおける、分岐された側と反対側の端は、給液ポンプ76に接続されている。給液ポンプ76は温調機77に接続されている。
給液管174a及び排液管174bは、可撓性に富む素材で形成されている。給液管174a及び排液管174bが容易に屈曲することで、吸着テーブル333のY軸方向の移動に際して、給液管174a及び排液管174bが、吸着テーブル333の移動を阻害する負荷となることを抑制している。
【0116】
冷却ユニット171において、温調機77は、冷却機として機能する。温調機77で冷却された温調媒体は、給液ポンプ76によって、給液管174aを経由して、媒体流路172に送出される。温調媒体は、枝流路172aなどを流動することで、吸着テーブル333を冷却する。媒体流路172を流動した温調媒体は、排液管174bを介して排出される。温調媒体としては、例えば、水を用いることができる。
【0117】
温度計79は、吸着テーブル333のY軸方向に略平行な側面の、連結流路172bが近くに形成されている側面に開口して、X軸方向に延在して形成されている孔に配設されている。温度計79は、孔壁の温度を測定することで、吸着テーブル333の温度を測定可能である。温度計79は、冷却ブロック171aごとに、それぞれ1個ずつ配置されている。
【0118】
テーブル温度制御部181は、描画装置制御部108に備えられている。テーブル温度制御部181は、開閉バルブ73、給液ポンプ76、温調機77、及び温度計79と、電気的に接続されている。
テーブル温度制御部181は、温度計79によって測定された吸着テーブル333の温度情報を、冷却ブロック171aごとに取得する。テーブル温度制御部181は、取得した温度情報に基づいて、開閉バルブ73、給液ポンプ76、及び温調機77を制御して、冷却ブロック171aごとに、吸着テーブル333の温度を制御する。
【0119】
それぞれの冷却ブロック171aは、吸着テーブル333に吸着保持されたフィルム10における被描画領域101の、第一描画行121、第二描画行122、第三描画行123、又は第四描画行124に対応する位置に配置されている。冷却ユニット171は、それぞれの冷却ブロック171aごとに、吸着テーブル333の温度を制御することで、被描画領域101の、第一描画行121、第二描画行122、第三描画行123、又は第四描画行124のそれぞれごとに、温度を制御することができる。吸着テーブル333における、それぞれの冷却ブロック171aが温度を制御することができる範囲が、温度調整区画に相当する。
冷却ブロック171aと、給液管174aと、排液管174bと、給液ポンプ76と、温調機77とが、温度調整手段に相当する。冷却ブロック171aが、副温度調整手段に相当する。冷却ブロック171aが備える媒体流路172が、媒体副流路に相当する。テーブル温度制御部181が、温度制御手段に相当する。
【0120】
<描画工程−2>
次に、冷却ユニット171を備え、描画装置1と同様の構成を有する描画装置を用いて、フィルム10に描画する描画工程について、図10、及び図11を参照して説明する。図10は、描画工程を示すフローチャートである。図10(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャートであり、図10(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャートであり、図10(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャートである。図11は、描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図である。図11に示したX軸、及びY軸は、冷却ユニット171が描画装置1と同様の構成を有する描画装置に組み込まれた場合に、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0121】
図10(a)のステップS71では、冷却ユニット171を稼動させて、吸着テーブル333の温度を所定の温度に調整する。所定の温度は、例えば、描画装置1が設置された環境におけるフィルム10の温度である。冷却ユニット171において稼動させる冷却ブロック171aは、吸着テーブル333における最初の描画走査において機能液を配置される領域を保持している部分の冷却ブロック171a、及び当該冷却ブロック171aの隣の冷却ブロック171aである。冷却ユニット171において、冷却ブロック171aは、当該冷却ブロック171aに対応する開閉バルブ73を開閉することによって、個別に稼動状態にすることができる。
ステップS71において、冷却ユニット171の冷却ブロック171aを予め稼動させることによって、画像描画に対応して温度調整を実施する際に、迅速に、冷却ブロック171aを適切な稼動状態にすることができる。
【0122】
ステップS72は、図7(a)を参照して説明したステップS2と同様である。
【0123】
次に、ステップS73では、Y軸走査機構42によって、吸着テーブル333をY軸方向に移動させて、吸着テーブル333に吸着された被描画領域101を描画開始位置に移動させる。
【0124】
ここで、本描画工程において実施する微小改行描画工程について、説明する。ヘッドユニット21のユニットノズル列240Aによって描画可能なY軸方向の幅をユニット描画幅WUと表記する。微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/m)であって(mは整数)、1回の描画走査で1個の吐出ノズル24を用いて描画することが可能な描画像を、m回の描画走査を実施して、m個の吐出ノズル24を用いて形成する描画方法である。例えば、1個の吐出ノズル24を用いて描画走査方向に液滴を連続して着弾させて直線を形成することができる。当該直線を、ヘッドユニット21において副走査方向に微小改行幅WKを隔てて位置するm個の吐出ノズル24を用いて、それぞれの吐出ノズル24に当該直線を形成する液滴m個に対して1個の液滴を吐出させることによって、形成する。吐出ノズル24は、吐出量や着弾位置が、規格を満たす範囲でばらついている。m個の吐出ノズル24を使用することで、当該ばらつきの影響を少なくすることができる。
【0125】
図11に示した微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/4)である。
微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224は、Y軸方向の幅が、微小改行幅WKである。ノズル休止行241、ノズル休止行242、及びノズル休止行243は、Y軸方向の幅が微小改行幅WKであり、被描画領域101に含まれない領域である。
【0126】
描画開始位置は、ヘッドユニット21に対する被描画領域101のY軸方向の位置が、ヘッドユニット21をX軸方向に走査させると共に液滴吐出ヘッド20から機能液を吐出させる描画走査を開始できる位置である。
図11に示した被描画領域101は、ヘッドユニット21の位置が、ヘッドユニット21fで示した位置である場合に、描画開始位置に位置している。この場合の描画開始位置は、最初の描画走査において、ヘッドユニット21を、ノズル休止行241、ノズル休止行242、ノズル休止行243、及び微小描画行221に対向させることができる位置である。
【0127】
次に、図10(a)のステップS74では、画像描画及び吸着テーブル333の温度調整を実施する。
ステップS74における画像描画工程は、図10(b)に示した各工程を実施することで、実施する。ステップS74における吸着テーブル333の温度調整工程は、図10(c)に示した各工程を実施することで、実施する。
【0128】
画像描画工程における最初のステップである図10(b)のステップS81では、描画走査を実施する。
図11に示した被描画領域101を描画する最初の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行241、ノズル休止行242、ノズル休止行243、及び微小描画行221に対向させて、微小描画行221に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221に描画するために必要な量の略(1/4)である。
ヘッドユニット21fの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向(主走査方向)に走査させる。それと共に、吐出ノズル24から描画形状に対応した位置に機能液の液滴を着弾させられる位置において機能液の液滴を吐出することで、微小描画行221に描画する。並行して、硬化ユニット6を稼動させて、UVLED61a又はUVLED61bによって、微小描画行221に配置された機能液に紫外線を照射して硬化させる。
【0129】
次に、図10(b)のステップS82では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS82でNO)場合には、ステップS83に進む。
【0130】
ステップS82の次に、ステップS83では、改行(副走査)を実施する。改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル333を、Y軸方向の図11に矢印aで示した方向に移動させることによって実施する。改行幅は、微小改行幅WKである。
【0131】
ステップS83の次には、ステップS81に進み、ステップS81及びステップS82を繰り返す。
【0132】
最初のステップS81の描画走査が終了後、ステップS83において改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、2番目の描画走査を実施する位置に位置させる。2番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行242、ノズル休止行243、微小描画行221、及び微小描画行222に対向させて、微小描画行221及び微小描画行222に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0133】
2番目の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、3番目の描画走査を実施する位置に位置させる。3番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行243、微小描画行221、微小描画行222、及び微小描画行223に対向させて、微小描画行221及び微小描画行222及び微小描画行223に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0134】
3番目の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、4番目の描画走査を実施する位置に位置させる。4番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に対向させて、対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223又は微小描画行224に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223又は微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0135】
微小描画行221には、最初と2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行221に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、4回の描画走査によって、微小描画行221に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、微小描画行221への描画は完成している。
【0136】
微小描画行222には、2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、微小描画行222には、微小描画行222に描画するために必要な量の略(3/4)の機能液が配置されている。
微小描画行223には、3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において、微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、微小描画行223には、微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/2)の機能液が配置されている。
微小描画行224には、4番目の描画走査において、微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、微小描画行224には、微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液が配置されている。
【0137】
さらに3回の、微小改行幅WKの改行及び描画走査を実施することで、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に、それぞれの微小描画行に描画するために必要な量の機能液が配置される。この時点で、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に描画するために必要な量の機能液が配置されている。微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224は、第一描画行121に相当するため、この時点で、第一描画行121への描画が完成している。
第一描画行121への描画は、7回の描画走査を実施することによって完成する。7回の描画走査の中で後半の3回の描画走査においては、ヘッドユニット21は第一描画行121及び第二描画行122に向けて機能液を吐出している。以降の描画走査における4回に3回の描画走査では、ヘッドユニット21は、2個所の描画行にまたがる範囲に向けて、機能液を吐出する。
【0138】
5番目以降の描画走査では、ヘッドユニット21を、4個所の微小描画行に対向させて、それぞれの微小描画行に、当該微小描画行に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液を配置する。当該描画走査及び微小改行幅WKの改行を繰り返して、被描画領域101の領域230に機能液を配置して描画を実施する。
【0139】
図11に示した被描画領域101における微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び微小描画行229に描画する描画走査では、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に描画した描画走査と同様の描画走査を実施する。当該描画走査では、ヘッドユニット21が備える吐出ノズル24における、微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び微小描画行229に対向する吐出ノズル24からは液滴を吐出させ、被描画領域101から外れた領域であるノズル休止行245、ノズル休止行246、及びノズル休止行247に対向する吐出ノズル24からは液滴を吐出させない。
微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び微小描画行229は、Y軸方向の幅が、微小改行幅WKである。ノズル休止行245、ノズル休止行246、及びノズル休止行247は、Y軸方向の幅が微小改行幅WKであり、被描画領域101に含まれない領域である。
【0140】
ステップS83、ステップS81、及びステップS82を繰り返して実施することで、被描画領域101の全面への描画が完了する。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS82でYES)場合には、図10(a)のステップS74における画像描画工程を終了する。
【0141】
温度調整工程における最初のステップである図10(c)のステップS86では、冷却ブロック171aの温度測定を実施する。温度測定を実施する冷却ブロック171aは、吸着テーブル333における最初の描画走査において機能液を配置される領域を保持している部分の冷却ブロック171a、当該冷却ブロック171aの隣の冷却ブロック171a、及び隣の冷却ブロック171aの隣に位置する冷却ブロック171aの、3個の冷却ブロック171aである。上述したように、当該3個の冷却ブロック171aは、吸着されたフィルム10の被描画領域101における、第一描画行121、第二描画行122、又は第三描画行123に対応する。
冷却ブロック171aの温度測定は、それぞれの冷却ブロック171aに配設された温度計79によって冷却ブロック171aの温度を計測することで実施する。テーブル温度制御部181は、計測された温度情報を取得する。
【0142】
次に、ステップS87では、取得した冷却ブロック171aの温度測定値を基準値と比較して、温度の変動量が規格以内であるか否かを判定する。
温度の変動量が規格以内である場合(ステップS87でYES)には、ステップS86に戻り、ステップS86及びステップS87を繰り返す。
温度の変動量が規格値を超えていた場合(ステップS87でNO)には、ステップS88に進む。
【0143】
次に、ステップS88では、冷却ブロック171aの温度調整を実施する。上述したステップS71において、冷却ブロック171aを稼動させて、吸着テーブル333の当該冷却ブロック171aが配設された部分の温度を所定の温度に調整している。したがって、温度の変動量が規格値を超える場合は、ステップS81の描画走査における紫外線照射によって、フィルム10や吸着テーブル333の温度が変動した場合である。テーブル温度制御部181は、冷却ユニット171の該当する冷却ブロック171aの稼動条件を変更することによって、吸着テーブル333の温度を、冷却ブロック171aに対応する部分ごとに調整する。冷却ブロック171aの稼動条件としては、温調機77による温調媒体の冷却温度(調整温度)や、開閉バルブ73の開閉による温調媒体の流量が挙げられる。
【0144】
本実施形態の微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/4)である。描画走査の4回に3回は、ヘッドユニット21及び硬化ユニット6が、2個所の描画行(例えば、第一描画行121と第二描画行122)にまたがって描画又は紫外線の照射を実施している。隣接する2個所の冷却ブロック171aを稼動させることで、硬化ユニット6が紫外線の照射を実施している2個所の描画行に対応する2個所の冷却ブロック171aを稼動させる。さらに、次に描画を実施する対象となる描画行に対応する冷却ブロック171aを稼動させることで、当該冷却ブロック171aを予備稼動させる。冷却ブロック171aの予備稼動が、事前稼動に相当する。冷却ブロック171aを予備稼動させることが、事前稼動工程に相当する。
【0145】
次に、ステップS89では、現在描画を実施している被描画領域101における現在描画を実施している描画行への描画が完了したか否かを判定する。上述したように、第一描画行121への描画は、微小描画行221から微小描画行224への描画が完了することで、完了する。例えば、微小描画行224への描画が完了した場合、第一描画行121への描画が完了したと判定される。
第一描画行121などの現在描画を実施している描画行への描画が完了していなかった(ステップS89でNO)場合には、ステップS86に戻り、ステップS86からステップS89の各工程を繰り返す。
現在描画を実施している描画行への描画が完了していた(ステップS89でYES)場合には、ステップS90に進む。
【0146】
次に、ステップS90では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。ステップS90は、上述したステップS82と同じ工程である。
被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS90でNO)場合には、ステップS91に進む。
【0147】
ステップS90の次に、ステップS91では、稼動させる冷却ブロック171aを変更する。例えば、第一描画行121と第二描画行122と第三描画行123とに対応する冷却ブロック171aを稼動させていた場合、ステップS91に進むのは、第一描画行121への描画(紫外線の照射)が終了した場合である。以降の画像描画工程は、第二描画行122と第三描画行123とにまたがって実施されるため、第二描画行122と第三描画行123とに対応する冷却ブロック171aを稼動させて、温度調整を実施する。加えて、第四描画行124に対応する冷却ブロック171aを稼動させて、予備稼動させる。すなわち、稼動させる冷却ブロック171aを、第一描画行121と第二描画行122と第三描画行123とに対応する冷却ブロック171aから、第二描画行122と第三描画行123と第四描画行124とに対応する冷却ブロック171aに変更する。
【0148】
ステップS91の次に、ステップS86に戻り、ステップS86からステップS90の各工程を繰り返す。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS90でYES)場合には、図10(a)のステップS74における温度調整工程を終了する。
【0149】
図10(a)のステップS74の次に、図10(a)のステップS75では、フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了したか否かを判定する。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していなかった(ステップS75でNO)場合には、ステップS76に進む。
【0150】
ステップS76では、フィルム10を送り、次に描画を実施する被描画領域101の部分を、吸着テーブル333の吸着面33aに臨む位置に位置させる。ステップS76の次に、ステップS72に戻り、ステップS72からステップS75を繰り返す。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していた(ステップS75でYES)場合には、冷却ユニット171を備える描画装置によってフィルム10に描画する描画工程を終了する。
【0151】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)吸着テーブル33及び吸着テーブル333には、媒体流路72又は媒体流路172が形成されており、媒体流路72及び媒体流路172には温調媒体を流動させることができる。温調媒体が吸着テーブル33又は吸着テーブル333から熱を奪うことで、吸着テーブル33又は吸着テーブル333を冷却することができる。
【0152】
(2)フィルム10の被描画領域101に描画を実施する際には、被描画領域101は、全面が吸着テーブル33又は吸着テーブル333に吸着されている。これにより、吸着テーブル33又は吸着テーブル333を冷却することで、フィルム10の被描画領域101の部分を冷却することができる。
【0153】
(3)冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333を冷却可能に配設されている。吸着テーブル33又は吸着テーブル333に吸着保持されたフィルム10は、被吸着面の反対側の面に機能液を配置されて描画される。この構成により、機能液が配置されていない側からフィルム10の温度を調整するため、フィルム10の温度を調整するための熱の授受が配置された機能液に影響を与えることを抑制することができる。
【0154】
(4)吸着テーブル333には、4個の媒体流路172が形成されており、それぞれの媒体流路172に連通する流路を開閉可能な開閉バルブ73が設けられている。開閉バルブ73によって、それぞれの媒体流路172に流動させる温調媒体の量を調整することができる。流動させる温調媒体の量を調整することで、それぞれの媒体流路172が配設された部分ごとに、吸着テーブル333の温度を調整することができる。
媒体流路172が配設された部分ごとに、吸着テーブル333の温度を調整することで、紫外線の照射に伴う熱を受けている部分の近傍のみの温度を調整することができる。近傍のみの温度を調整することで、吸着テーブル333の全体を一律に温度調整する場合にくらべて、迅速かつ正確に温度調節できる。紫外線の照射に伴う熱を受けていない部分を冷却などすることを抑制することができるため、紫外線の照射に伴う熱を受けていない部分を冷却などすることに起因して、当該部分の温度が適切な温度から外れることを抑制することができる。
【0155】
(5)フィルム10の被描画領域101に描画を実施する際には、被描画領域101は、全面が吸着テーブル33又は吸着テーブル333に吸着されている。これにより、フィルム10の被描画領域101を平坦に維持して、被描画領域101に皺ができるなどの平坦な状態が維持されないことに起因して、描画形状精度や描画位置精度などが損なわれることを抑制することができる。
【0156】
(6)フィルム10への描画は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333によって、被描画領域101を吸着して実施し、改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル33又は吸着テーブル333をY軸方向に移動させることによって実施する。これにより、改行に際しても被描画領域101を吸着した状態が維持されるため、改行することに起因して被描画領域101が変形することを抑制することができる。改行するための力は直接フィルム10に加えられることはないため、改行するための力によって被描画領域101が変形することを実質的になくすることができる。
【0157】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0158】
(変形例1)前記実施形態においては、冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333の温度を測定する温度計79を備えていた。しかし、温度測定手段が保持手段の温度を測定する装置であることは必須ではない。温度測定手段は、被描画媒体の温度を測定する装置であってもよい。被描画媒体の温度を測定する装置としては、例えば、放射温度計などの非接触温度計を用いることができる。
【0159】
(変形例2)前記実施形態においては、描画装置が備える温度調整手段としての冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、温調機77を備え、当該温調機77が冷却機として機能する冷却装置であったが、温度調整手段が冷却装置であることは必須ではない。熱源を備える加熱装置であってもよいし、冷却及び加熱が可能な調整装置であってもよい。
【0160】
(変形例3)前記実施形態においては、冷却ユニット71は流路を開閉可能な開閉バルブ73を備えていたが、温度調整手段が媒体流路を流動させる温度調整媒体の流量を調整する手段を備えることは必須ではない。温度調整手段が温度調整媒体の温度を調整する手段を備え、温度制御手段は、温度調整手段を制御して温度調整媒体の温度を適切な温度に調整させる構成であってもよい。
【0161】
(変形例4)前記実施形態においては、冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、温調機77を備えていたが、温度調整手段が温調機77のような温度調整媒体の温度を調整する手段を備えることは必須ではない。略一定の温度の温度調整媒体が得られる環境であれば、温度調整媒体流量のみを制御して温度を調整する構成であってもよい。
【0162】
(変形例5)前記実施形態においては、媒体流路72が吸着テーブル33に形成されている冷却ユニット71を備える描画装置1では、改行幅がユニット描画幅WUである改行を実施する描画工程を実施していた。4個の媒体流路172が吸着テーブル333に形成されている冷却ユニット171を備える描画装置では、改行幅が微小改行幅WKである微小改行描画工程を実施していた。しかし、温度調整手段が単一の温度調整手段であるか、複数の副温度調整手段を備える温度調整手段であるかによって、描画工程における改行幅は規定されない。冷却ユニット71を備える描画装置1で微小改行描画工程を実施しても良いし、冷却ユニット171を備える描画装置で改行幅がユニット描画幅WUである改行を実施する描画工程を実施してもよい。
冷却ユニット171を備える描画装置で改行幅がユニット描画幅WUである改行を実施する描画工程を実施する場合も、描画(紫外線照射)を実施している部分に対応させて、一部の冷却ブロック171aを稼動させる描画方法を用いても良い。
【0163】
(変形例6)前記実施形態においては、冷却ユニット171は流路を開閉可能な開閉バルブ73を媒体流路172ごとに備えており、開閉バルブ73によって対応する媒体流路172の稼動状態を制御していた。しかし、副温度調整手段に供給する温度調整媒体の流量を制御することで副温度調整手段の稼動状態を制御することは必須ではない。副温度調整手段が、給液ポンプ76や温調機77のような装置を、それぞれ備え、互いに独立して稼動させることが可能な構成であってもよい。
【0164】
(変形例7)前記実施形態においては、冷却ユニット71は流路を開閉可能な開閉バルブ73を備えていたが、温度調整手段が媒体流路を流動させる温度調整媒体の流量を調整する手段が媒体流路を開閉するバルブであることは必須ではない。給液ポンプ76のような温度調整媒体を流動させる力を発生する装置を制御することによって温度調整媒体の流量を調整する構成であってもよい。
【0165】
(変形例8)前記実施形態においては、吸着テーブル333には、4個の冷却ブロック171aが組み込まれていたが、冷却ブロック171aの境界は形成されていなかった。しかし、保持手段に、副温度調整手段間を明確に分離する境界部を構成してもよい。例えば、冷却ブロック171aの境界に断熱部材を用いた境界部を設け、冷却ブロック171a間の熱伝導を抑制する構成であってもよい。
【0166】
(変形例9)前記実施形態においては、描画装置1はヘッドユニット21を1個備えていたが、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。
【0167】
(変形例10)前記実施形態においては、ヘッドユニット21は液滴吐出ヘッド20を9個備えていたが、ヘッドユニットが備える吐出ヘッドが9個であることは必須ではない。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、いくつであってもよい。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、複数であってもよいし、1個であってもよい。
【0168】
(変形例11)前記実施形態においては、描画装置1は、張力ローラーに相当する媒体送りローラー36及び従動ローラー36aを備え、フィルム10における吸着テーブル33や吸着テーブル333に臨む部分を略平坦に維持していた。しかし、連続媒体における保持手段に臨む部分の状態を略平坦に維持するための張力ローラーが、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aのような装置であることは必須ではない。例えば、巻取リール32によって供給ローラー34との間にフィルム10における適切な長さを保持し、アイドラローラー38によって適切な張力をフィルム10の当該保持された部分に付与する構成であってもよい。
【0169】
(変形例12)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20は、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aを2列備えていたが、吐出ヘッドが備えるノズル列は何列であってもよい。また、液滴吐出ヘッド20が備える吐出ノズル24は、ノズル列24Aの延在方向において互いの位置がずれていたが、吐出ヘッドは、ノズル列の延在方向において、略同一位置に位置する吐出ノズルを複数備える構成であってもよい。
【0170】
(変形例13)前記実施形態においては、描画装置1の供給排出機構部3は、巻取リール32を備えており、描画済みのフィルム10は巻取リール32に巻き取られていた。しかし、描画装置が巻取リールを備えることも、連続媒体の描画済みの部分を巻き取ることも、必須ではない。例えば、切断装置を設け、描画済みの部分を所定の長さに切断する、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。あるいは、型抜き装置を設け、描画済みの連続媒体から製品部分のみを型抜きし、製品以外の部分を切断したり巻き取ったりする、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。
【0171】
(変形例14)前記実施形態においては、描画装置1のヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11とを備えていた。当該X軸走査機構11によってヘッドキャリッジ22をX軸方向に走査させ、ヘッドキャリッジ22が備える液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24から機能液を吐出させて、フィルム10に描画していた。しかし、描画装置が吐出ノズルを連続媒体に対して主走査方向に相対移動させる装置を備えることは必須ではない。描画装置は、連続媒体の幅方向の略全体に亘って液滴を吐出可能に吐出ノズルが配設された、いわゆるラインヘッドを備える構成であってもよい。この場合、硬化ユニットは、連続媒体の送り方向において、ラインヘッドの下流側の直近に設けることが好ましい。ラインヘッドの下流側の直近に配設された硬化ユニットから紫外線を照射することで、機能液を、配置された直後に硬化させることができる。
描画装置がラインヘッドを備える場合、ラインヘッドから描画画像に規定された位置に液滴を吐出する工程が、描画工程に相当する。
【0172】
(変形例15)前記実施形態においては、機能液の種類については特に記載しなかったが、描画装置においては、色が異なるなど種類の異なる機能液を吐出してもよい。色が異なる複数種類の機能液を吐出することでカラー描画も可能である。機能液の種類は、複数のヘッドユニットを備えてヘッドユニットごとに異ならせてもよいし、ヘッド組ごとに異ならせてもよいし、液滴吐出ヘッドごとに異ならせてもよいし、ノズル列ごとに異ならせてもよい。吐出ノズルごとに機能液を個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なる機能液を吐出してもよい。なお、カラー描画を実施するためには、同じ着弾位置に、複数の、例えば色が異なる機能液を着弾させることができる構成のヘッドユニット又は液滴吐出ヘッドを用いたり、走査方法を用いたりすることが好ましい。
【0173】
(変形例16)前記実施形態においては、印刷対象として、連続媒体としてのフィルム10に印刷する印刷装置及び印刷方法を例にして説明したが、印刷対象がフィルム10のような連続媒体であることは必須ではない。印刷対象は、一枚の印刷対象に、保持手段によって吸着保持される被印刷領域が1個所ある、いわゆる単票紙のような媒体であってもよい。印刷装置は、当該媒体を保持手段に対して供給及び排出できる供給手段を備える装置であってもよい。
【0174】
(変形例17)前記実施形態においては、描画装置1などにおいて、描画走査は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333によって、被描画領域101を吸着して実施し、改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル33又は吸着テーブル333をY軸方向に移動させることによって実施していた。しかし、被描画媒体を保持した保持手段を移動させることによって改行を実施することは必須ではない。描画装置は、ヘッドユニット21などの吐出手段を移動させることによって改行を実施する構成であってもよい。
【0175】
(変形例18)前記実施形態においては、描画工程は、図7又は図10に示した各ステップを実施する工程であったが、描画工程は図7又は図10に示したような工程に限らない。描画工程は、例えば、描画する画像をビットマップに展開し、当該ビットマップにしたがって描画する工程であってもよい。ビットマップは、画像を、機能液の液滴を着弾させる位置情報、及び当該機能液を吐出させる吐出ノズルの情報で規定したマップである。
【0176】
(変形例19)前記実施形態においては、温調媒体として、水を挙げていた。温調媒体としては、他の液状体を用いても良い。液状体以外にも、気体などであってもよい。温調媒体は、保持手段と熱の授受をしやすくするために、熱伝導率が高い物質であることが好ましい。また、保持手段と熱の授受をした際に温調媒体の温度変化が小さいことが好ましいため、比熱が高い物質であることが好ましい。
【0177】
(変形例20)前記実施形態においては、使用後の温調媒体は、排液管74bなどを介して廃棄していたが、温調媒体は、例えば循環させるなど、繰り返して使用してもよい。特に、温調媒体が、廃棄することによって環境に影響を与えるような物質であったり、高価な物質であったりするような場合には、廃棄することなく、繰り返して使用することが好ましい。
【0178】
(変形例21)前記実施形態においては、冷却ユニット171は、4個の冷却ブロック171aを備えていた。吸着テーブル333において、1個の冷却ブロック171aが対応する部分である副温度調整区画は、第一描画行121などの1個の描画行を吸着する部分に対応していた。副温度調整区画を描画行に対応させて形成することは必須ではない。例えば、描画行にくらべて多数の副温度調整区画(副温度調整手段)を設ける構成であってもよい。多数の副温度調整区画(副温度調整手段)を設けることで、保持手段における温度調整を実施する部分をより狭い範囲を単位として設定することができる。
【0179】
(変形例22)前記実施形態においては、硬化ユニット6は、ヘッドユニット21と一体に移動可能に構成されていた。しかし、硬化促進手段が移動可能であることも、硬化促進手段が吐出手段と一体に移動可能であることも、必須ではない。硬化促進手段を吐出手段とは離して配置する構成であってもよい。この場合、保持手段における、少なくとも硬化促進手段が臨む部分に、温度調整手段を配設する。
【符号の説明】
【0180】
1…描画装置、2…ヘッド機構部、3…供給排出機構部、6…硬化ユニット、8…描画装置制御部、10…フィルム、11…X軸走査機構、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、30…吸着ユニット、33…吸着テーブル、33a…吸着面、42…Y軸走査機構、61a,61b…UVLED、62a,62b…LED筐体、71…冷却ユニット、72…媒体流路、73…開閉バルブ、74a…給液管、74b…排液管、76…給液ポンプ、77…温調機、79…温度計、81…テーブル温度制御部、91…着弾点、91A…着弾円、101…被描画領域、108…描画装置制御部、121…第一描画行、122…第二描画行、123…第三描画行、124…第四描画行、171…冷却ユニット、171a…冷却ブロック、172…媒体流路、174a…給液管、174b…排液管、181…テーブル温度制御部、221,222,223,224,226,227,228,229…微小描画行、333…吸着テーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画対象物を描画領域に供給し、当該描画領域において、供給された描画対象物の所望の位置に液状体を配置することで、描画対象物に画像などを描画する描画装置、及び描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を液滴として吐出し、任意の位置に着弾させることによって、所定の量の液状体を所定の位置に精度よく配置する液状体吐出装置が知られている。当該液状体吐出装置を用いて、被描画媒体の被描画面における所定の位置に液状体を配置することで、画像などの所定の形状を描画する描画装置が知られている。このような描画装置を用いた場合、着弾した液状体が流動することで、描画形状が規定された形状からずれる場合があった。
【0003】
特許文献1には、基板Wの表面上に、インクジェット装置の吐出手段から、膜形成成分および溶剤を含有する液体を吐出して膜パターンを形成する方法であって、ホットプレートを備えた載置台上に基板Wを固定し、基板Wの表面温度を溶剤の沸点以下でかつ吐出手段内の液体の温度より高い温度に制御した状態で、吐出手段と基板Wとの相対位置を移動させつつ、吐出手段から液体を吐出して、液体を基板Wの表面上に塗布する塗布工程を有することで、塗布された液体の硬化を促進することによって、微細な膜パターンを低コストで形成でき、厚膜の膜パターンを効率よく形成できる膜パターンの形成方法および形成装置、ならびにこれらにより得られる膜構造体、電気光学装置、電子機器、および非接触型カード媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−133692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている膜パターンの形成方法および形成装置においては、被描画媒体としての基板の温度も液体と同様の温度になるため、被描画媒体の温度が変化する。被描画媒体の温度が変化することによって、被描画媒体が伸縮する。
一般的に、描画装置は、描画装置上で規定された座標系を用いて規定された位置に正確に液滴を着弾させる。被描画媒体における着弾させるべき位置(以降、「着弾予定位置」と表記する)は、被描画媒体の座標系を用いて規定される。被描画媒体の基準点を描画装置の基準点に合致させることによって、被描画媒体の座標系を描画装置の座標系と関連付ける。これにより、描画装置は、描画装置上で規定された座標系を用いて規定された位置に正確に液滴を着弾させることで、被描画媒体の座標系を用いて位置が規定されている着弾予定位置に正確に液滴を着弾させることができる。
しかし、特許文献1に開示されている膜パターンの形成方法および形成装置においては、被描画媒体の温度が変化することによって、被描画媒体が伸縮するため、被描画媒体の基準点に対する着弾予定位置がずれてしまう可能性があった。これにより、描画装置は、規定された位置に正確に液滴を着弾させているにもかかわらず、被描画媒体においては、着弾位置が着弾予定位置からずれてしまう可能性があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、被描画媒体を保持する保持手段と、液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を前記保持手段に保持された前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段と、前記被描画媒体に配置された状態の前記液状体の硬化を促進させる硬化促進手段と、前記保持手段の温度を調整する温度調整手段と、温度測定手段と、前記温度測定手段の測定結果に基づいて、前記温度調整手段を制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画装置によれば、保持手段によって被描画媒体を保持し、保持された被描画媒体に、描画手段によって液状体を配置して描画することができる。硬化促進手段によって、保持された被描画媒体に配置された液状体の硬化を促進させることができる。温度調整手段によって保持手段の温度を調整することで、保持手段に保持された被描画媒体の温度を調整することができる。温度制御手段によって温度測定手段の測定結果に基づいて、温度調整手段を制御して、保持手段の温度を制御することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度を制御することができる。例えば、硬化促進手段によって液状体の硬化を促進させることに起因する被描画媒体の温度の変動を、温度測定手段によって測定し、保持手段の温度を制御して、被描画媒体の温度を適切な温度に維持するように調整することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することが好ましい。
【0010】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、保持手段の温度を測定する。被描画媒体は保持手段に保持されており、保持手段に保持された被描画媒体の温度は、保持手段の温度と一定の相関関係を有する温度となる可能性が高い。保持手段の温度を測定することで、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の量によって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量が変わる。温度調整媒体の量を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することが好ましい。
【0012】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、保持手段の温度を測定する。被描画媒体は保持手段に保持されており、保持手段に保持された被描画媒体の温度は、保持手段の温度と一定の相関関係を有する温度となる可能性が高い。保持手段の温度を測定することで、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の温度によって、温度調整媒体と保持手段との温度差が異なり、温度調整媒体と保持手段との間での熱エネルギーの移動量が変わる。温度調整媒体の温度を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出する熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することが好ましい。
【0014】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を測定することができる。被描画媒体の温度から、被描画媒体が保持された保持手段の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の量によって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量が変わる。温度調整媒体の量を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出できる熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。保持手段の温度が収束する温度を調整することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度が収束する温度を調整することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することが好ましい。
【0016】
この描画装置によれば、温度測定手段によって、適切な温度に維持する対象である被描画媒体の温度を測定することができる。被描画媒体の温度から、被描画媒体が保持された保持手段の温度を推定することができる。
温度調整媒体と保持手段との温度差によって、温度調整媒体と保持手段との間で熱エネルギーの移動が発生する。温度調整媒体の温度及び保持手段の温度は、当該熱エネルギーの移動量が一定の値になる温度に収束する。温度調整媒体の温度によって、温度調整媒体と保持手段との温度差が異なり、温度調整媒体と保持手段との間での熱エネルギーの移動量が変わる。温度調整媒体の温度を調整することによって、保持手段に対して温度調整媒体が吸収又は放出する熱エネルギーの量を調整して、保持手段の温度が収束する温度を調整することができる。保持手段の温度が収束する温度を調整することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度が収束する温度を調整することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、複数の副温度調整手段を備え、前記複数の副温度調整手段のそれぞれの副温度調整手段は、それぞれ前記保持手段の一部分に配設されており、前記温度調整手段を構成する媒体副流路を備えることが好ましい。
【0018】
この描画装置によれば、温度調整手段は、複数の副温度調整手段を備え、副温度調整手段が備える媒体副流路は、保持手段の一部分に配設されている。副温度調整手段によって、当該副温度調整手段が備える媒体副流路が配設されている保持手段の一部分の温度を、調整することができる。すなわち、保持手段の温度を、媒体副流路が配設されている部分ごとに、個別に調整することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる描画装置は、前記描画手段は、前記吐出手段からの前記液状体の吐出を実施しながら前記吐出手段と前記被描画媒体とを相対移動させる主走査の際に、前記吐出手段と前記被描画媒体とを主走査方向に相対移動させる主走査手段と、前記吐出手段と前記被描画媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる副走査手段と、をさらに備え、前記保持手段における、1個の前記媒体副流路が配設された副温度調整区画は、前記副走査方向における幅が、前記吐出手段の前記副走査方向における前記液状体を吐出可能な幅であり、前記主走査方向における幅が、前記保持手段の前記主走査方向における幅であることが好ましい。
【0020】
この描画装置によれば、副温度調整区画は、副走査方向における幅が、吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅であり、主走査方向における幅が、保持手段の主走査方向における幅である。吐出手段は、1回の主走査において、吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅で、保持手段の主走査方向における端から端まで液状体を配置することができる。副温度調整区画は、1個の媒体副流路が配設されており、副温度調整区画ごとに、保持手段の温度を、個別に調整することができる。したがって、1回の主走査において液状体が配置される領域ごとに、個別に保持手段の温度を調整することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度制御手段が、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を同時に稼動させることが好ましい。
【0022】
この描画装置によれば、互いに隣接する2個所の副温度調整区画の温度が調整される。描画装置は、副走査手段による改行幅を吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅より小さくすることで、被描画媒体の一個所に対して複数回の主走査を実施して液状体を配置する、いわゆる微小改行描画を実施する場合がある。微小改行描画の場合、1個所の副温度調整区画に対応する領域に向けて液状体を吐出している際には、当該領域に隣接する副温度調整区画に対応する領域にむけても液状体を吐出している状態となる。互いに隣接する2個所の温度調整手段を同時に稼動させることで、微小改行描画において液状体が配置されつつある領域に対応する保持手段の部分の温度を調整することができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度制御手段が、次に稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させることが好ましい。
【0024】
この描画装置によれば、副温度調整手段は、稼動させられる前に事前稼動させられるように制御される。事前稼動させることで、稼動開始時における副温度調整手段の状態を、稼動時に適切な稼動状態となる状態にすることができる。例えば、事前稼動において副温度調整区画の温度を略適切な温度に調整しておくことで、稼動状態においては、副温度調整区画の温度を上昇又は降下させて略適切な温度にするための時間を抑制することができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整手段が、前記保持手段における、前記硬化促進手段が臨むことが可能な部分に配設されていることが好ましい。
【0026】
この描画装置によれば、温度調整手段は、保持手段における、硬化促進手段が臨むことが可能な部分に配設されている。保持手段における、硬化促進手段が臨むことが可能な部分は、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させる液状体が配置された部分を、保持する部分である。被描画媒体において、硬化促進手段が硬化を促進させる液状体が配置された部分は、硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じやすい部分である。したがって、温度調整手段は、保持手段における、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じやすい部分を、保持する部分の温度を調整することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度制御手段が、前記複数の副温度調整手段の中で、前記保持手段における稼動している前記硬化促進手段が臨んでいる部分に、配設されている前記副温度調整手段を稼動させることが好ましい。
【0028】
この描画装置によれば、複数の副温度調整手段の中で、保持手段における稼動している硬化促進手段が臨んでいる部分に、配設されている副温度調整手段が稼動させられる。保持手段における稼動している硬化促進手段が臨んでいる部分は、保持手段における、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させている液状体が配置されている部分を、保持している部分である。被描画媒体において、硬化促進手段が硬化を促進させている液状体が配置されている部分は、硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じている可能性が高い部分である。これにより、温度制御手段は、保持手段における、被描画媒体において硬化促進手段が硬化を促進させることに起因して温度変化が生じやすい部分を、保持する部分に配設された副温度調整手段を稼動させることができる。
【0029】
[適用例12]本適用例にかかる描画方法は、被描画媒体を保持手段によって保持する保持工程と、保持された前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画工程と、前記被描画媒体に配置された前記液状体の硬化を促進させる硬化促進工程と、温度測定工程と、前記温度測定工程における測定結果に基づいて、前記保持手段の温度を制御する温度制御工程と、を有することを特徴とする。
【0030】
本適用例にかかる描画方法によれば、保持工程において被描画媒体を保持し、保持された被描画媒体に、描画工程において液状体を配置して描画することができる。硬化促進工程において、保持された被描画媒体に配置された液状体の硬化を促進させることができる。温度測定工程において温度を測定し、温度制御工程において、温度測定工程の測定結果に基づいて、保持手段の温度を制御することによって、保持手段に保持された被描画媒体の温度を制御することができる。例えば、硬化促進工程において液状体の硬化を促進させることに起因する被描画媒体の温度の変動を、温度測定工程において測定し、温度制御工程において保持手段の温度を制御して、被描画媒体の温度を適切な温度に維持するように制御することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる描画方法は、前記温度制御工程は、複数の副温度調整手段を備える温度調整手段を用いて実施し、前記描画工程は、前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させる描画吐出工程を有し、前記副温度調整手段は、前記保持手段の部分であって、前記被描画媒体における1回の前記描画吐出工程において前記液状体を着弾させることが可能な領域に相当する範囲を保持する部分に配設されており、前記温度制御工程では、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を稼動させることが好ましい。
【0032】
この描画方法によれば、温度制御工程では、互いに隣接する2個の副温度調整手段が稼動させられる。保持手段における、副温度調整手段が配設されている部分を、副温度調整区画と表記する。一般的に、描画装置は、描画吐出工程と改行工程とを交互に繰り返すことで、面状の画像を描画する。改行工程における改行幅を吐出手段の副走査方向における液状体を吐出可能な幅より小さくすることで、被描画媒体の一個所に対して複数回の主走査を実施して液状体を配置する、いわゆる微小改行描画を実施する場合がある。微小改行描画の場合、1個所の副温度調整区画に対応する領域に向けて液状体を吐出している際には、当該領域に隣接する副温度調整区画に対応する領域にむけても液状体を吐出している状態となる。互いに隣接する2個所の温度調整手段を同時に稼動させることで、微小改行描画において液状体が配置されつつある領域に対応する保持手段の部分の温度を調整することができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる描画方法は、前記温度制御工程に先んじて、前記温度制御工程において稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させる事前稼動工程をさらに備えることが好ましい。
【0034】
この描画方法によれば、副温度調整手段は、稼動させられる前に、事前稼動工程において事前稼動させられる。温度制御工程に先んじて事前稼動させることで、温度制御工程の稼動開始時における副温度調整手段の状態を、稼動時に適切な稼動状態となる状態にすることができる。例えば、事前稼動において副温度調整区画の温度を略適切な温度に調整しておくことで、温度制御工程においては、副温度調整区画の温度を上昇又は降下させて略適切な温度にするための時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図。(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図。(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットの概略構成、及びヘッドユニットと硬化ユニットとの位置関係を示す平面図。
【図4】冷却ユニットの構成を示す説明図。
【図5】液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図。
【図6】(a)は、吐出ノズルの配置位置を示す説明図。(b)は、液滴をノズル列の延在方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図。(c)は、液滴を主走査方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図。(d)は、液滴を面状に着弾させた状態を示す説明図。
【図7】(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャート。(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャート。(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャート。
【図8】描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図。
【図9】冷却ユニットの構成を示す説明図。
【図10】(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャート。(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャート。(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャート。
【図11】描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、描画装置、及び描画方法について、図面を参照して説明する。本実施形態は、被描画媒体の一例である帯状のフィルムに画像を描画する工程で用いられる描画装置及び描画方法を例に説明する。
【0037】
<液滴吐出法>
最初に、描画装置において描画用の機能液を吐出するために用いられる液滴吐出法について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0038】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒーターにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。このうち、ピエゾ方式は、液状材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状材料選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0039】
<描画装置>
次に、フィルム10に描画する描画装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、描画装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図である。フィルム10が、被描画媒体に相当する。
【0040】
図1に示すように、描画装置1は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、機能液供給部(図示省略)と、メンテナンス装置部5と、を備えている。
ヘッド機構部2が備える液滴吐出ヘッド20は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドであり、紫外線硬化性を有する機能液を液滴として、描画対象物に向けて吐出する。供給排出機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴を着弾させる描画対象物であるフィルム10を描画位置に給排紙する。機能液供給部は、液滴吐出ヘッド20への機能液の供給を行う。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド20の保守を行う。
描画装置1は、また、これら各機構部等を総括的に制御する描画装置制御部8(図4参照)を備えている。液滴吐出ヘッド20が、吐出手段に相当する。機能液が、液状体に相当する。
【0041】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取リール32と、吸着ユニット30と、アイドラローラー37と、アイドラローラー38と、Y軸走査機構42と、冷却ユニット71(図4参照)と、を備えている。
Y軸走査機構42は、Y軸ガイドレール42aとY軸スライダー42bと、をそれぞれ1対備えている。吸着ユニット30は、吸着テーブル33と、テーブル台43と、テーブル昇降機構44と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、を備えている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回動軸まわりに回動可能であり、それぞれの回動軸は互いに略平行である。
フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、フィルム10の送り方向をY軸方向と表記する。
【0042】
Y軸走査機構42のY軸ガイドレール42aは、吸着テーブル33を挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、Y軸方向に延在している。Y軸スライダー42bは、Y軸駆動モーターを介して、Y軸ガイドレール42aに、Y軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。
2本のY軸ガイドレール42aのそれぞれに支持されたY軸スライダー42bには、吸着ユニット30のテーブル台43の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれY軸スライダー42bに固定されたテーブル台43は、Y軸スライダー42bに支持されて、2本のY軸ガイドレール42aの間に差渡されている。テーブル台43は、Y軸駆動モーターによって、Y軸ガイドレール42aに沿って、Y軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0043】
吸着ユニット30の吸着テーブル33は、テーブル台43に固定されたテーブル昇降機構44に固定されている。テーブル昇降機構44は、吸着テーブル33を、テーブル台43に対して、X軸方向及びY軸方向と直交する方向であるZ軸方向に昇降可能であって、吸着テーブル33の吸着面33a(図4参照)の位置がZ軸方向の所定の位置である吸着位置、及び吸着位置よりテーブル台43に近い退避位置に保持可能に支持している。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aのZ軸方向における所定の位置は、後述する供給ローラー34の外周及び媒体送りローラー36の外周に接する面の位置に略一致する位置である。
吸着テーブル33には、冷却ユニット71を構成する媒体流路72(図4参照)などが配設されている。冷却ユニット71の詳細は、後述する。
【0044】
供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、図示省略した支持部材を介してテーブル台43に固定されている。供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向において吸着テーブル33を挟んで両側に配設されている。フィルム10は、Y軸方向に略平行に供給され、供給ローラー34及び従動ローラー34aは、フィルム10の供給方向における吸着テーブル33の上流側に配設されており、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aは、吸着テーブル33の下流側に配設されている。
テーブル台43は、Y軸走査機構42によってY軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能に支持されている。吸着テーブル33と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸走査機構42によってY軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0045】
供給排出機構部3が備える供給リール31と、アイドラローラー37と、吸着ユニット30と、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、この順で配置されている。吸着ユニット30において、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33と、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、この順で配置されている。したがって、供給排出機構部3において、供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33と、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向に、この順で配置されている。
【0046】
供給リール31には、帯状のフィルム10が巻かれており、供給モーターによって供給リール31が回動させられることによって、フィルム10が繰り出される。
従動ローラー34aは、外周が供給ローラー34の外周に接しており、付勢装置によって、供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は供給モーターによって回動させられ、供給ローラー34に当接している従動ローラー34aは、供給ローラー34に従って回動する。供給リール31から供給されたフィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟まれて、従動ローラー34aによって供給ローラー34に押し付けられており、供給ローラー34の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0047】
アイドラローラー37は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。アイドラローラー37は、フィルム10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、当該付勢力によって、当接している。アイドラローラー37が付勢された状態で当接することで、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、略弛みなく張られている。これにより、フィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に供給されて挟まれる際の状態が略平坦に維持され易くなっている。また、供給ローラー34におけるフィルム10の供給速度と、供給リール31におけるフィルム10の繰り出し速度との差によって、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー37の位置が変わることで、略弛みなく張られた状態が維持される。吸着ユニット30の移動による供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量の変動についても、同様にして、略弛みなく張られた状態が維持される。
【0048】
従動ローラー36aは、外周が媒体送りローラー36の外周に接しており、付勢装置によって、媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は媒体送りモーターによって回動させられ、媒体送りローラー36に当接している従動ローラー36aは、媒体送りローラー36に従って回動する。供給ローラー34の回動によって供給されたフィルム10は、媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟まれて、従動ローラー36aによって媒体送りローラー36に押し付けられている。これにより、媒体送りローラー36の回動による外周の回動長さに略同等の長さが送られる。
【0049】
媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による供給量より多く設定されている。媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構にはトルク制御機構が組み込まれている。媒体送りローラー36において供給ローラー34より早く送ることができるフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、トルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。
当該張られた部分には、吸着テーブル33の吸着面33aが臨んでいる。上述した吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aの位置は、媒体送りローラー36の外周及び供給ローラー34の外周に接する面の位置に略一致している。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aは、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10に略接している。
【0050】
吸着テーブル33は、吸着面33aにフィルム10を吸着する。吸着面33aは平坦な面であり、フィルム10における吸着面33aに吸着された部分は平坦な状態に維持される。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aは、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10に略接している。このため、フィルム10が吸着テーブル33に吸着されることによって、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10の形状が変形させられる可能性は非常に小さい。すなわち、フィルム10の形状が変形させられるような力がフィルム10に加えられたり、フィルム10の形状が変形させられることによってフィルム10に内部応力が発生したりする可能性は小さい。
吸着方法としては、大気吸引装置を設けて負圧によって吸着する方法や、帯電及び除電装置を設けて静電気によって吸着する方法などを用いることができる。
【0051】
巻取リール32は、巻取モーターによって回動させられる。媒体送りローラー36から送り出されたフィルム10は、回動する巻取リール32に巻き取られる。
アイドラローラー38は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取リール32との間の部分に、アイドラローラー38が付勢された状態で当接することで、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとアイドラローラー38との間、及びアイドラローラー38と巻取リール32との間の部分が、略弛みなく張られている。これにより、フィルム10は、巻取リール32に巻き取られる際の状態が略平坦に維持され易くなっている。また、媒体送りローラー36におけるフィルム10の送り速度と、巻取リール32におけるフィルム10の巻取り速度との差によって、媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー38の位置が変わることで、略弛みなく張られた状態が維持される。吸着ユニット30の移動による媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量の変動についても、同様にして、略弛みなく張られた状態が維持される。
【0052】
このような状態で、フィルム10は、供給リール31から巻取リール32まで送られ、途中の吸着テーブル33に吸着された部分に描画が実施される。フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向がX軸方向と表記する方向であり、フィルム10の送り方向がY軸方向と表記する方向である。
吸着テーブル33が保持手段に相当する。
【0053】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11と、硬化ユニット6と、を備えている。
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bと支持柱台11dとを、それぞれ1対備えており、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えている。
一対の支持柱台11d,11dは、X軸方向において吸着テーブル33を挟んで両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、上述した一対のY軸ガイドレール42a,42aを間に挟む位置に配設されている。一方のY軸ガイドレール42aと支持柱台11dとの間には、メンテナンス装置部5が配設されている。
【0054】
2本のガイドレール支持柱11cが、1個の支持柱台11dの上に、支持柱台11dのY軸方向の両端において、それぞれ1本ずつ立設されている。1個のX軸ガイドレール11aは、支持柱台11dの供給リール31の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。もう1個のX軸ガイドレール11aは、支持柱台11dの巻取リール32の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。
【0055】
X軸スライダー11bは、X軸駆動モーターを介して、X軸ガイドレール11aに、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。2本のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持されて、2本のX軸ガイドレール11aの間に差渡されている。ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによって、X軸ガイドレール11aに沿って、X軸方向に摺動自在であって、X軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0056】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の略中央に懸吊されている。ヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下に固定されている。ヘッドユニット21が備える液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)が形成されたノズル基板25(図2参照)が吸着テーブル33の吸着面33aが臨む状態で保持されている。
【0057】
硬化ユニット6は、支持枠(図示省略)と、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)61aと、LED筐体62aと、UVLED61bと、LED筐体62bと、を備えている。UVLED61a及びUVLED61bは、紫外線を射出するLEDである。
LED筐体62aは、サブキャリッジ28の主走査方向(X軸方向)側の側面に支持枠を介して固定されている。LED筐体62aは、略直方体形状の外形を有し、内部に略直方体形状で一面が開口した筐体室が形成されている。筐体室は、吸着テーブル33に臨む側が開口している。筐体室には、UVLED61aが、開口側に紫外線を射出する状態で固定されている。複数のUVLED61aが、Y軸方向(副走査方向)に並んで配設されている。複数のUVLED61aは、Y軸方向において、ヘッドユニット21が機能液を配置可能な幅を包含する範囲に、紫外線を照射することができる。硬化ユニット6が、硬化促進手段に相当する。
【0058】
UVLED61b及びLED筐体62bは、UVLED61a又はLED筐体62bと同様の構成を有している。UVLED61b及びLED筐体62bは、X軸方向(主走査方向)における、UVLED61a及びLED筐体62aの反対側で、UVLED61a及びLED筐体62aと同様に、サブキャリッジ28の側面に固定されている。すなわち、硬化ユニット6は、X軸方向(主走査方向)において、ヘッドユニット21を挟んで両側に、ヘッドユニット21に関して略対称な状態で、配設されている。硬化ユニット6は、X軸走査機構11によって、ヘッドユニット21と一体に、主走査方向に移動させられる。
【0059】
Y軸走査機構42によって吸着ユニット30をY軸方向に移動させることによって、吸着ユニット30の吸着テーブル33を、Y軸方向に走査させることができる。すなわち、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分を、Y軸方向に走査させることができる。X軸走査機構11によってブリッジプレート27をX軸方向に移動させることによって、ブリッジプレート27に懸吊されたサブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、X軸方向に走査させることができる。並行して、サブキャリッジ28に固定された硬化ユニット6のUVLED61a及びUVLED61bを、X軸方向に走査させることができる。
【0060】
X軸走査機構11によってヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20をX軸方向に走査させ、Y軸走査機構42によってフィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分をY軸方向に走査させる。これにより、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分の略全面に対して、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24を臨ませることができる。同様に、UVLED61a及びUVLED61bを、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分の略全面に対して、臨ませることができる。
X軸走査機構11が、主走査手段に相当する。Y軸走査機構42が、副走査手段に相当する。
【0061】
吸着テーブル33に吸着保持されたフィルム10の描画対象部分を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、ヘッドユニット21のX軸方向の移動に同調させて、描画用の機能液を液滴として吐出させる。並行して、ヘッドユニット21に並設された硬化ユニット6から、吐出されて描画対象部分に着弾させられた機能液に紫外線を照射する。
【0062】
ヘッドユニット21をX軸方向に移動させる主走査と、吸着テーブル33に吸着保持されたフィルム10をY軸方向に移動させる改行(副走査)とを制御することにより、吸着テーブル33の吸着面33aに吸着されたフィルム10上の任意の位置にヘッドユニット21を対向させる。それと共に、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20から吐出した機能液の液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。並行して、ヘッドユニット21に並設された硬化ユニット6から、画像を構成する機能液に紫外線を照射して略硬化させることで、描画された画像などを略固定することが可能である。
ヘッド機構部2とY軸走査機構42とが、描画手段に相当する。
【0063】
<液滴吐出ヘッド>
次に、液滴吐出ヘッド20について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図であり、図2(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図である。図2に示したX軸、Y軸、及びZ軸は、液滴吐出ヘッド20が描画装置1に装着された状態において、図1に示したX軸、Y軸、及びZ軸と一致している。
【0064】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液を液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に機能液を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が描画装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液の液滴を配置することができる。
【0065】
図2(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25に圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液が常に充填される液たまり55が形成されている。液たまり55は、振動板52と、ノズル基板25と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。機能液は、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給される。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。振動板52と、ノズル基板25と、2個のヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
【0066】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じである。圧力室58には、2個のヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給される。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル24を含むノズル列24Aに対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んで配設された吐出ノズル24がもう1列のノズル列24Aを形成している。当該ノズル列24Aに対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0067】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド20全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は、電極層と圧電材料とを積層した活性部を有している。圧電素子59は、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図2(b)又は(c)における振動板52の厚さ方向)に縮む。電極層に印加されていた駆動電圧が解除されることで、活性部が元の長さに戻る。
【0068】
電極層に駆動電圧が印加されて、圧電素子59の活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に撓む。これにより、圧力室58の容積が増加することから、機能液が液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を押圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた機能液に圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル24から機能液が液滴となって吐出される。
【0069】
<ヘッドユニット、及び硬化ユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成、及びヘッドユニット21と硬化ユニット6との位置関係について、図3を参照して説明する。図3は、ヘッドユニットの概略構成、及びヘッドユニットと硬化ユニットとの位置関係を示す平面図である。図3に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0070】
図3に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図3は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組20Aを3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0071】
一つのヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。ヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20において、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。
【0072】
一つのヘッド組20Aが備える3個の液滴吐出ヘッド20が有する6列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列は、例えば180個の6倍、1080個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約75.5mmである。液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組20Aを構成している。
【0073】
ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、それぞれが有する1本のノズル列とみなせるノズル列が、Y軸方向において、ノズル列24Aの半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。言い換えると、それぞれのヘッドユニット21は、互いに隣り合うヘッド組20Aを構成する液滴吐出ヘッド20の、一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が、Y軸方向において、半ノズルピッチずれた位置に、配設されている。
【0074】
一つのヘッドユニット21が備える3つのヘッド組20Aにおける9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、例えば180個の18倍、3240個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約226.7mmである。即ち、一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が70μmのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0075】
上述したように、硬化ユニット6は、X軸方向(主走査方向)において、ヘッドユニット21を挟んで両側に、ヘッドユニット21に関して略対称な状態で、配設されている。ヘッドユニット21の両側において、複数のUVLED61a又はUVLED61bが、Y軸方向(副走査方向)に並んで配設されている。複数のUVLED61a又はUVLED61bは、Y軸方向において、ユニットノズル列240Aが機能液を配置可能な幅を包含する範囲に、紫外線を照射することができる。
【0076】
ヘッドユニット21がX軸方向(主走査方向)に走査されて機能液を吐出する際には、ヘッドユニット21に並んで配設されたUVLED61a又はUVLED61bから、略並行して、紫外線を照射させる。
走査方向において、ヘッドユニット21の後側に位置するUVLED61a又はUVLED61bから紫外線を照射することで、吐出されて着弾させられた機能液に、着弾した直後に紫外線を照射することができる。機能液に紫外線を照射することで、機能液を硬化させることができる。機能液の硬化率に影響を及ぼす要因は、走査速度、UVLED61a及びUVLED61bの照射領域のX軸方向における幅、UVLED61a及びUVLED61bの照射強度、などである。これらの要因について、適切な値に設定することで、着弾させられた機能液を適切な硬化率に硬化させることができる。
【0077】
<冷却ユニット>
次に、冷却ユニット71について、図4を参照して説明する。図4は、冷却ユニットの構成を示す説明図である。図4に示したX軸及びY軸は、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
図4に示すように、冷却ユニット71は、媒体流路72と、開閉バルブ73と、給液管74aと、排液管74bと、給液ポンプ76と、温調機77と、温度計79と、を備えている。冷却ユニット71は、また、開閉バルブ73と、給液ポンプ76と、温調機77と、を制御するテーブル温度制御部81を備えている。
【0078】
媒体流路72は、吸着テーブル33に形成されている。吸着テーブル33の吸着面33aには、吸着溝33bが形成されている。吸着テーブル33は、吸着溝33bの底に開口する吸引孔(図示省略)を備えており、吸引孔が接続された負圧装置(図示省略)によって、吸引孔が負圧にされる。吸引孔が負圧にされることで、吸引孔が底に開口している吸着溝33bが負圧にされて、フィルム10などが、吸着面33aに吸着される。
【0079】
媒体流路72は、流入流路72aと、枝流路72bと、流出流路72cとを備えている。流入流路72aは、一端が、吸着テーブル33のX軸方向に略平行な側面の、Y軸方向に略平行な側面の近くに開口している。流入流路72aは、開口の近くで略直角に曲げられて、Y軸方向に略平行な側面及び吸着面33aの近くで、Y軸方向に延在している。流入流路72aのY軸方向に延在している部分には、複数の枝流路72bの一端が接続されている。複数の枝流路72bは、Y軸方向において、略等間隔に配設されており、吸着面33aの近くで、X軸方向に延在している。枝流路72bの流入流路72aに接続された一端の反対側の端は、流出流路72cに接続されている。流出流路72cは、吸着面33aの中心位置を通り吸着面33aに垂直な直線に関して、流入流路72aと対称な形状を有し、対称な位置に形成されている。
流入流路72a、枝流路72b、及び流出流路72cは、吸着面33aの面方向において、吸引孔の開口と重ならない位置に形成されている。
【0080】
排液管74bは、図示省略した接続部材を介して、流出流路72cに接続されている。
給液管74aは、一端が、図示省略した接続部材を介して、流入流路72aに接続されている。給液管74aにおける、流入流路72aとの接続部分の近くには、開閉バルブ73が取り付けられている。開閉バルブ73によって、給液管74aの流路を開閉することができる。給液管74aにおける、流入流路72aと接続された端と反対側の端は、給液ポンプ76に接続されている。給液ポンプ76は温調機77に接続されている。
給液管74a及び排液管74bは、可撓性に富む素材で形成されている。給液管74a及び排液管74bが容易に屈曲することで、吸着テーブル33のY軸方向の移動に際して、給液管74a及び排液管74bが吸着テーブル33の移動を阻害する負荷となることを抑制している。
【0081】
冷却ユニット71において、温調機77は、冷却機として機能する。温調機77で冷却された温調媒体は、給液ポンプ76によって、給液管74aを経由して、媒体流路72の流入流路72aに送出される。温調媒体は、流入流路72aから複数の枝流路72bに分かれて流動し、枝流路72bを流動することで、吸着テーブル33を冷却する。複数の枝流路72bに分かれて流動した温調媒体は、流出流路72cで合流し、排液管74bを介して排出される。温調媒体としては、例えば、水を用いることができる。
【0082】
温度計79は、吸着テーブル33のY軸方向に略平行な側面に開口して、X軸方向に延在して形成されている孔に配設されている。温度計79は、孔壁の温度を測定することで、吸着テーブル33の温度を測定可能である。温度計79は、給液管74aと流入流路72aとの接続部の近くと、排液管74bと流出流路72cとの接続部の近くとに、それぞれ1個ずつ、配置されている。
【0083】
テーブル温度制御部81は、描画装置制御部8に備えられている。テーブル温度制御部81は、開閉バルブ73、給液ポンプ76、温調機77、及び温度計79と、電気的に接続されている。
テーブル温度制御部81は、温度計79によって測定された吸着テーブル33の温度情報を取得し、当該温度情報に基づいて、開閉バルブ73、給液ポンプ76、及び温調機77を制御する。
媒体流路72と、開閉バルブ73と、給液管74aと、排液管74bと、給液ポンプ76と、温調機77とが、温度調整手段に相当する。温度計79が、温度測定手段に相当する。テーブル温度制御部81が、温度制御手段に相当する。温調媒体が、温度調整媒体に相当する。
【0084】
<機能液の吐出>
次に、描画装置1における液滴吐出ヘッド20からの吐出制御方法について、図5を参照して説明する。図5は、液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図である。
【0085】
上述したように、描画装置1は、描画装置1の各部の動作を制御する描画装置制御部8を備えている。描画装置制御部8は、制御信号を出力するCPU84と、液滴吐出ヘッド20の電気的な駆動制御を行うヘッドドライバー20dとを備えている。
図5に示すように、ヘッドドライバー20dは、FFCケーブルを介して各液滴吐出ヘッド20と電気的に接続されている。また、液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)ごとに設けられた圧電素子59に対応して、シフトレジスター(SL)85と、ラッチ回路(LAT)86と、レベルシフター(LS)87と、スイッチ(SW)88とを備えている。
【0086】
描画装置1における吐出制御は次のように行われる。最初に、CPU84がフィルム10などの描画対象物における機能液の配置パターンをデータ化したドットパターンデータをヘッドドライバー20dに伝送する。そして、ヘッドドライバー20dは、ドットパターンデータをデコードして吐出ノズル24ごとのON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスター85に伝送される。
【0087】
シフトレジスター85に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路86に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフター87でスイッチ88用のゲート信号に変換される。即ち、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ88が開いて圧電素子59に駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合にはスイッチ88が閉じられて圧電素子59に駆動信号(COM)は供給されない。そして、「ON」に対応する吐出ノズル24からは機能液が液滴となって吐出され、吐出された機能液の液滴がフィルム10などの描画対象物の上に着弾して、描画対象物の上に機能液が配置される。
【0088】
<着弾位置>
次に、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24と、それぞれの吐出ノズル24から吐出された液滴の着弾位置と、の関係について説明する。図6は、吐出ノズルと、それぞれの吐出ノズルから吐出された液滴の着弾位置と、の関係を示す説明図である。図6(a)は、吐出ノズルの配置位置を示す説明図であり、図6(b)は、液滴をノズル列の延在方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図であり、図6(c)は、液滴を主走査方向に直線状に着弾させた状態を示す説明図であり、図6(d)は、液滴を面状に着弾させた状態を示す説明図である。図6に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。X軸方向が主走査方向であって、図6に示した矢印aの方向に吐出ノズル24(液滴吐出ヘッド20)を相対移動させながら、任意の位置において液状体の液滴を吐出することによって、X軸方向の任意の位置に液滴を着弾させることができる。
【0089】
図6(a)に示すように、ノズル列24Aを構成する吐出ノズル24は、Y軸方向にノズルピッチPの中心間距離で配列されている。上述したように、2列のノズル列24Aをそれぞれ構成する吐出ノズル24同士は、Y軸方向において、相互に、ノズルピッチPの1/2ずつ位置がずれている。
【0090】
図6(b)に示すように、着弾位置を示す着弾点91と、着弾した液滴の濡れ広がり状態を示す着弾円91Aとで、着弾した1滴の液滴の状態を示している。2列のノズル列24Aの全部の吐出ノズル24から、図6(b)に二点鎖線で示した仮想線L上に着弾させるタイミングで、それぞれ液滴を吐出させることによって、ノズルピッチPの1/2の中心間間隔で着弾円91Aが連なる直線が形成される。
【0091】
図6(c)に示すように、一つの吐出ノズル24から連続して液滴を吐出させることによって、X軸方向に着弾円91Aが連なる直線が形成される。X軸方向における着弾点91間の中心間距離の最小値を、最小着弾距離dと表記する。最小着弾距離dは、主走査方向の相対移動速度と、吐出ノズル24の最小吐出間隔との積である。
【0092】
図6(d)に示すように、二点鎖線で示した仮想線L1,L2,L3上に着弾させるタイミングで、それぞれ液滴を吐出させることによって、ノズルピッチPの1/2の中心間間隔で着弾円91Aが連なる直線が、X軸方向に並列した着弾面が形成される。図6(d)に示した仮想線L1,L2,L3間の距離が最小着弾距離dの場合のそれぞれの着弾点91が、描画装置1によって機能液の液滴を配置可能な位置である。
【0093】
画像の描画に際しては、画像の情報に従って、図6(d)に示したそれぞれの着弾点91の位置について、液滴を配置する位置を定める。例えば、当該配置位置、及び配置位置に液滴を吐出する吐出ノズル24を指定した配置表を形成し、配置表に従って機能液を着弾させることによって、画像の情報によって規定される画像を描画する。なお、図6(d)に示した例では、着弾円91Aの間に隙間が存在するが、ノズルピッチPや最小着弾距離dに対して、吐出する液滴の1滴あたりの吐出重量を適切に定めることによって、隙間なく機能液を配置することが可能である。
【0094】
<描画工程>
次に、描画装置1によってフィルム10に描画する描画工程について、図7、及び図8を参照して説明する。図7は、描画工程を示すフローチャートである。図7(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャートであり、図7(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャートであり、図7(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャートである。図8は、描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図である。図8に示したX軸、及びY軸、は、図1に示したX軸、及びY軸と一致している。
【0095】
図7(a)のステップS1では、冷却ユニット71を稼動させて、吸着テーブル33の温度を所定の温度に調整する。所定の温度は、例えば、描画装置1が設置された環境におけるフィルム10の温度である。
【0096】
次に、ステップS2では、吸着テーブル33にフィルム10を吸着する。
最初に、フィルム10をY軸方向に移動させて、フィルム10の被描画領域101を、吸着テーブル33の吸着面33aに臨む位置に位置させる。フィルム10のY軸方向の移動は、上述した供給ローラー34及び媒体送りローラー36を回動させて実施する。被描画領域101は、フィルム10において、フィルム10が吸着テーブル33に吸着された状態を解除することなく描画を実施することが可能な範囲の領域である。
次に、吸着テーブル33によって、フィルム10の被描画領域101を吸着する。フィルム10における吸着テーブル33と重なる部分の略全面が、吸着テーブル33に吸着され、被描画領域101が吸着面33aに倣う状態で吸着される。
【0097】
次に、ステップS3では、Y軸走査機構42によって、吸着テーブル33をY軸方向に移動させて、吸着テーブル33に吸着された被描画領域101を描画開始位置に移動させる。描画開始位置は、ヘッドユニット21に対する被描画領域101のY軸方向の位置が、ヘッドユニット21をX軸方向に走査させると共に液滴吐出ヘッド20から機能液を吐出させる描画走査を開始できる位置である。図8に示した被描画領域101は、ヘッドユニット21の位置が、ヘッドユニット21aで示した位置である場合に、描画開始位置に位置している。この場合の描画開始位置は、被描画領域101に、フィルム10の送り方向における最も下流側(巻取リール32側)から順次描画走査を実施して描画する場合における描画開始位置である。
【0098】
次に、図7(a)のステップS4では、画像描画及び吸着テーブル33の温度調整を実施する。
ステップS4における画像描画工程は、図7(b)に示した各工程を実施することで、実施する。ステップS4における吸着テーブル33の温度調整工程は、図7(c)に示した各工程を実施することで、実施する。
【0099】
画像描画工程における最初のステップである図7(b)のステップS41では、描画走査を実施する。
ヘッドユニット21aの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向(主走査方向)に走査させる。それと共に、吐出ノズル24から、描画形状に対応した位置に機能液の液滴を着弾させられる時点において機能液の液滴を吐出することで、第一描画行121に描画する。並行して、硬化ユニット6を稼動させて、UVLED61a又はUVLED61bによって、第一描画行121に配置された機能液に紫外線を照射して硬化させる。
【0100】
第一描画行121は、Y軸方向の幅がヘッドユニット21のユニットノズル列240Aによって描画可能なユニット描画幅WUである。第一描画行121は、被描画領域101における、フィルム10の進行方向の最も下流側(巻取リール32側)に位置する領域である。第一描画行121への描画走査を実施したヘッドユニット21は、図8に示したヘッドユニット21bの位置に位置している。被描画領域101のY軸方向の幅WEは、ユニット描画幅WUの4倍である。
【0101】
次に、図7(b)のステップS42では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS42でNO)場合には、ステップS43に進む。
【0102】
ステップS42の次に、ステップS43では、改行(副走査)を実施する。改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル33を、Y軸方向の図8に矢印aで示した方向に移動させることによって実施する。改行幅は、例えばユニットノズル列240Aによって描画可能なユニット描画幅WUである。当該改行幅WUの改行を実施することで、図8に示したように、被描画領域101は、第一描画行121に隣接する第二描画行122に、ヘッドユニット21cのユニットノズル列240Aによって描画可能な位置に位置している。
【0103】
なお、改行は吸着テーブル33をY軸方向に移動させることによって実施するため、ヘッドユニット21のY軸方向における位置は固定である。しかし、図8においては、図を判りやすくするために、ヘッドユニット21を相対移動させた位置に示している。ヘッドユニット21bとヘッドユニット21cとは、被描画領域101に対してヘッドユニット21が相対移動したことを示している。描画装置1においては、ヘッドユニット21bとヘッドユニット21cとは同じ位置である。
【0104】
ステップS43の次には、ステップS41に進み、ステップS41及びステップS42を繰り返す。ステップS43の改行を実施して、被描画領域101がユニットノズル列240Aによって第二描画行122に描画可能な位置に位置した次に実施するステップS41では、ヘッドユニット21cの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向に走査させる描画走査を実施する。第二描画行122への描画走査を実施したヘッドユニット21は、図8に示したヘッドユニット21dの位置に位置している。ヘッドユニット21dの位置は、ヘッドユニット21aの位置と略同じである。
【0105】
ステップS43、ステップS41、及びステップS42を繰り返して実施することで、第一描画行121及び第二描画行122に続けて、第三描画行123及び第四描画行124に描画して、被描画領域101の全面への描画が完了する。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS42でYES)場合には、図7(a)のステップS4における画像描画工程を終了する。
【0106】
温度調整工程における最初のステップである図7(c)のステップS46では、吸着テーブル33の温度測定を実施する。2個の温度計79によって吸着テーブル33の温度が計測される。テーブル温度制御部81は、計測された温度情報を取得する。
【0107】
次に、ステップS47では、取得した吸着テーブル33の温度測定値を基準値と比較して、温度の変動量が規格以内であるか否かを判定する。
温度の変動量が規格以内である場合(ステップS47でYES)には、ステップS46に戻り、ステップS46及びステップS47を繰り返す。
温度の変動量が規格値を超えていた場合(ステップS47でNO)には、ステップS48に進む。
【0108】
次に、ステップS48では、吸着テーブル33の温度調整を実施する。上述したステップS1において、冷却ユニット71を稼動させて、吸着テーブル33の温度を所定の温度に調整している。したがって、温度の変動量が規格値を超える場合は、ステップS41の描画走査における紫外線照射によって、フィルム10や吸着テーブル33の温度が変動した場合である可能性が高い。テーブル温度制御部81は、冷却ユニット71の稼動条件を変更することによって、吸着テーブル33の温度を調整する。冷却ユニット71の稼動条件としては、温調機77による温調媒体の冷却温度(調整温度)や、開閉バルブ73や給液ポンプ76による温調媒体の流量が挙げられる。
【0109】
次に、ステップS49では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。ステップS49は、上述したステップS42と同じ工程である。
被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS49でNO)場合には、ステップS46に戻り、ステップS46からステップS49の各工程を繰り返す。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS49でYES)場合には、図7(a)のステップS4における温度調整工程を終了する。
【0110】
図7(a)のステップS4の次に、図7(a)のステップS5では、フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了したか否かを判定する。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していなかった(ステップS5でNO)場合には、ステップS6に進む。
ステップS6では、フィルム10を送り、次に描画を実施する被描画領域101の部分を、吸着テーブル33の吸着面33aに臨む位置に位置させる。ステップS6の次に、ステップS2に戻り、ステップS2からステップS5を繰り返す。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していた(ステップS5でYES)場合には、描画装置1によってフィルム10に描画する描画工程を終了する。
【0111】
<冷却ユニット−2>
次に、冷却ユニット71と一部の構成が異なる冷却ユニット171について、図9を参照して説明する。図9は、冷却ユニットの構成を示す説明図である。図9に示したX軸及びY軸は、冷却ユニット171が描画装置1と同様の構成を有する描画装置に組み込まれた場合に、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0112】
図9に示すように、冷却ユニット171は、4個の冷却ブロック171aと、給液管174aと、排液管174bと、給液ポンプ76と、温調機77と、温度計79と、を備えている。冷却ブロック171aは、媒体流路172と、開閉バルブ73と、を備えている。冷却ユニット171は、また、開閉バルブ73と、給液ポンプ76と、温調機77と、を制御するテーブル温度制御部181を備えている。
【0113】
媒体流路172は、吸着テーブル333に形成されている。吸着テーブル333は、冷却ユニット71と一部の構成が異なる冷却ユニット171が組み込まれていることが、吸着テーブル33と、異なっている。吸着テーブル333は、吸着テーブル33と同様な吸着面33aを備え、吸着溝33bが形成されている。吸着テーブル33と同様に、吸着溝33bが負圧にされて、フィルム10などが、吸着面33aに吸着される。吸着テーブル333が、保持手段に相当する。
【0114】
それぞれの冷却ブロック171aにおいて、媒体流路172は、2個所の枝流路172aと、連結流路172bとを有している。枝流路172aは、一端が吸着テーブル333のY軸方向に略平行な側面に開口し、吸着面33aの近くで、X軸方向に延在している。連結流路172bは、枝流路172aが開口している側面と反対側のY軸方向に略平行な側面近くにおいて、2個所の枝流路172aの開口と反対側の端を連結している。
枝流路172a、及び連結流路172bは、吸着面33aの面方向において、吸引孔の開口と重ならない位置に形成されている。
【0115】
排液管174bは、4個の分岐端を備え、それぞれの分岐端が、図示省略した接続部材を介して、枝流路172aの一方の開口に接続されている。
給液管174aは、4個の分岐端を備え、それぞれの分岐端が、図示省略した接続部材を介して、枝流路172aにおける、排液管174bが接続された開口の反対側の開口に接続されている。給液管174aにおける、枝流路172aとの接続部分の近くには、開閉バルブ73が取り付けられている。開閉バルブ73によって、給液管174aの分岐端の流路を開閉することができる。これにより、開閉バルブ73によって、それぞれの冷却ブロック171aごとに、流動させる温調媒体の流動量を調整することができる。
給液管174aにおける、分岐された側と反対側の端は、給液ポンプ76に接続されている。給液ポンプ76は温調機77に接続されている。
給液管174a及び排液管174bは、可撓性に富む素材で形成されている。給液管174a及び排液管174bが容易に屈曲することで、吸着テーブル333のY軸方向の移動に際して、給液管174a及び排液管174bが、吸着テーブル333の移動を阻害する負荷となることを抑制している。
【0116】
冷却ユニット171において、温調機77は、冷却機として機能する。温調機77で冷却された温調媒体は、給液ポンプ76によって、給液管174aを経由して、媒体流路172に送出される。温調媒体は、枝流路172aなどを流動することで、吸着テーブル333を冷却する。媒体流路172を流動した温調媒体は、排液管174bを介して排出される。温調媒体としては、例えば、水を用いることができる。
【0117】
温度計79は、吸着テーブル333のY軸方向に略平行な側面の、連結流路172bが近くに形成されている側面に開口して、X軸方向に延在して形成されている孔に配設されている。温度計79は、孔壁の温度を測定することで、吸着テーブル333の温度を測定可能である。温度計79は、冷却ブロック171aごとに、それぞれ1個ずつ配置されている。
【0118】
テーブル温度制御部181は、描画装置制御部108に備えられている。テーブル温度制御部181は、開閉バルブ73、給液ポンプ76、温調機77、及び温度計79と、電気的に接続されている。
テーブル温度制御部181は、温度計79によって測定された吸着テーブル333の温度情報を、冷却ブロック171aごとに取得する。テーブル温度制御部181は、取得した温度情報に基づいて、開閉バルブ73、給液ポンプ76、及び温調機77を制御して、冷却ブロック171aごとに、吸着テーブル333の温度を制御する。
【0119】
それぞれの冷却ブロック171aは、吸着テーブル333に吸着保持されたフィルム10における被描画領域101の、第一描画行121、第二描画行122、第三描画行123、又は第四描画行124に対応する位置に配置されている。冷却ユニット171は、それぞれの冷却ブロック171aごとに、吸着テーブル333の温度を制御することで、被描画領域101の、第一描画行121、第二描画行122、第三描画行123、又は第四描画行124のそれぞれごとに、温度を制御することができる。吸着テーブル333における、それぞれの冷却ブロック171aが温度を制御することができる範囲が、温度調整区画に相当する。
冷却ブロック171aと、給液管174aと、排液管174bと、給液ポンプ76と、温調機77とが、温度調整手段に相当する。冷却ブロック171aが、副温度調整手段に相当する。冷却ブロック171aが備える媒体流路172が、媒体副流路に相当する。テーブル温度制御部181が、温度制御手段に相当する。
【0120】
<描画工程−2>
次に、冷却ユニット171を備え、描画装置1と同様の構成を有する描画装置を用いて、フィルム10に描画する描画工程について、図10、及び図11を参照して説明する。図10は、描画工程を示すフローチャートである。図10(a)は、描画工程の全工程を示すフローチャートであり、図10(b)は、描画工程における画像描画工程を示すフローチャートであり、図10(c)は、描画工程におけるテーブル温度調整工程を示すフローチャートである。図11は、描画工程における、吸着テーブルに対するフィルムの被描画領域の位置及び描画行の位置を示す説明図である。図11に示したX軸、及びY軸は、冷却ユニット171が描画装置1と同様の構成を有する描画装置に組み込まれた場合に、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0121】
図10(a)のステップS71では、冷却ユニット171を稼動させて、吸着テーブル333の温度を所定の温度に調整する。所定の温度は、例えば、描画装置1が設置された環境におけるフィルム10の温度である。冷却ユニット171において稼動させる冷却ブロック171aは、吸着テーブル333における最初の描画走査において機能液を配置される領域を保持している部分の冷却ブロック171a、及び当該冷却ブロック171aの隣の冷却ブロック171aである。冷却ユニット171において、冷却ブロック171aは、当該冷却ブロック171aに対応する開閉バルブ73を開閉することによって、個別に稼動状態にすることができる。
ステップS71において、冷却ユニット171の冷却ブロック171aを予め稼動させることによって、画像描画に対応して温度調整を実施する際に、迅速に、冷却ブロック171aを適切な稼動状態にすることができる。
【0122】
ステップS72は、図7(a)を参照して説明したステップS2と同様である。
【0123】
次に、ステップS73では、Y軸走査機構42によって、吸着テーブル333をY軸方向に移動させて、吸着テーブル333に吸着された被描画領域101を描画開始位置に移動させる。
【0124】
ここで、本描画工程において実施する微小改行描画工程について、説明する。ヘッドユニット21のユニットノズル列240Aによって描画可能なY軸方向の幅をユニット描画幅WUと表記する。微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/m)であって(mは整数)、1回の描画走査で1個の吐出ノズル24を用いて描画することが可能な描画像を、m回の描画走査を実施して、m個の吐出ノズル24を用いて形成する描画方法である。例えば、1個の吐出ノズル24を用いて描画走査方向に液滴を連続して着弾させて直線を形成することができる。当該直線を、ヘッドユニット21において副走査方向に微小改行幅WKを隔てて位置するm個の吐出ノズル24を用いて、それぞれの吐出ノズル24に当該直線を形成する液滴m個に対して1個の液滴を吐出させることによって、形成する。吐出ノズル24は、吐出量や着弾位置が、規格を満たす範囲でばらついている。m個の吐出ノズル24を使用することで、当該ばらつきの影響を少なくすることができる。
【0125】
図11に示した微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/4)である。
微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224は、Y軸方向の幅が、微小改行幅WKである。ノズル休止行241、ノズル休止行242、及びノズル休止行243は、Y軸方向の幅が微小改行幅WKであり、被描画領域101に含まれない領域である。
【0126】
描画開始位置は、ヘッドユニット21に対する被描画領域101のY軸方向の位置が、ヘッドユニット21をX軸方向に走査させると共に液滴吐出ヘッド20から機能液を吐出させる描画走査を開始できる位置である。
図11に示した被描画領域101は、ヘッドユニット21の位置が、ヘッドユニット21fで示した位置である場合に、描画開始位置に位置している。この場合の描画開始位置は、最初の描画走査において、ヘッドユニット21を、ノズル休止行241、ノズル休止行242、ノズル休止行243、及び微小描画行221に対向させることができる位置である。
【0127】
次に、図10(a)のステップS74では、画像描画及び吸着テーブル333の温度調整を実施する。
ステップS74における画像描画工程は、図10(b)に示した各工程を実施することで、実施する。ステップS74における吸着テーブル333の温度調整工程は、図10(c)に示した各工程を実施することで、実施する。
【0128】
画像描画工程における最初のステップである図10(b)のステップS81では、描画走査を実施する。
図11に示した被描画領域101を描画する最初の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行241、ノズル休止行242、ノズル休止行243、及び微小描画行221に対向させて、微小描画行221に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221に描画するために必要な量の略(1/4)である。
ヘッドユニット21fの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向(主走査方向)に走査させる。それと共に、吐出ノズル24から描画形状に対応した位置に機能液の液滴を着弾させられる位置において機能液の液滴を吐出することで、微小描画行221に描画する。並行して、硬化ユニット6を稼動させて、UVLED61a又はUVLED61bによって、微小描画行221に配置された機能液に紫外線を照射して硬化させる。
【0129】
次に、図10(b)のステップS82では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS82でNO)場合には、ステップS83に進む。
【0130】
ステップS82の次に、ステップS83では、改行(副走査)を実施する。改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル333を、Y軸方向の図11に矢印aで示した方向に移動させることによって実施する。改行幅は、微小改行幅WKである。
【0131】
ステップS83の次には、ステップS81に進み、ステップS81及びステップS82を繰り返す。
【0132】
最初のステップS81の描画走査が終了後、ステップS83において改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、2番目の描画走査を実施する位置に位置させる。2番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行242、ノズル休止行243、微小描画行221、及び微小描画行222に対向させて、微小描画行221及び微小描画行222に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0133】
2番目の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、3番目の描画走査を実施する位置に位置させる。3番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行243、微小描画行221、微小描画行222、及び微小描画行223に対向させて、微小描画行221及び微小描画行222及び微小描画行223に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0134】
3番目の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、4番目の描画走査を実施する位置に位置させる。4番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に対向させて、対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223又は微小描画行224に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223又は微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0135】
微小描画行221には、最初と2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行221に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、4回の描画走査によって、微小描画行221に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、微小描画行221への描画は完成している。
【0136】
微小描画行222には、2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、微小描画行222には、微小描画行222に描画するために必要な量の略(3/4)の機能液が配置されている。
微小描画行223には、3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において、微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、微小描画行223には、微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/2)の機能液が配置されている。
微小描画行224には、4番目の描画走査において、微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液が配置されている。4番目の描画走査が実施された状態では、微小描画行224には、微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液が配置されている。
【0137】
さらに3回の、微小改行幅WKの改行及び描画走査を実施することで、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に、それぞれの微小描画行に描画するために必要な量の機能液が配置される。この時点で、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に描画するために必要な量の機能液が配置されている。微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224は、第一描画行121に相当するため、この時点で、第一描画行121への描画が完成している。
第一描画行121への描画は、7回の描画走査を実施することによって完成する。7回の描画走査の中で後半の3回の描画走査においては、ヘッドユニット21は第一描画行121及び第二描画行122に向けて機能液を吐出している。以降の描画走査における4回に3回の描画走査では、ヘッドユニット21は、2個所の描画行にまたがる範囲に向けて、機能液を吐出する。
【0138】
5番目以降の描画走査では、ヘッドユニット21を、4個所の微小描画行に対向させて、それぞれの微小描画行に、当該微小描画行に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液を配置する。当該描画走査及び微小改行幅WKの改行を繰り返して、被描画領域101の領域230に機能液を配置して描画を実施する。
【0139】
図11に示した被描画領域101における微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び微小描画行229に描画する描画走査では、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に描画した描画走査と同様の描画走査を実施する。当該描画走査では、ヘッドユニット21が備える吐出ノズル24における、微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び微小描画行229に対向する吐出ノズル24からは液滴を吐出させ、被描画領域101から外れた領域であるノズル休止行245、ノズル休止行246、及びノズル休止行247に対向する吐出ノズル24からは液滴を吐出させない。
微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び微小描画行229は、Y軸方向の幅が、微小改行幅WKである。ノズル休止行245、ノズル休止行246、及びノズル休止行247は、Y軸方向の幅が微小改行幅WKであり、被描画領域101に含まれない領域である。
【0140】
ステップS83、ステップS81、及びステップS82を繰り返して実施することで、被描画領域101の全面への描画が完了する。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS82でYES)場合には、図10(a)のステップS74における画像描画工程を終了する。
【0141】
温度調整工程における最初のステップである図10(c)のステップS86では、冷却ブロック171aの温度測定を実施する。温度測定を実施する冷却ブロック171aは、吸着テーブル333における最初の描画走査において機能液を配置される領域を保持している部分の冷却ブロック171a、当該冷却ブロック171aの隣の冷却ブロック171a、及び隣の冷却ブロック171aの隣に位置する冷却ブロック171aの、3個の冷却ブロック171aである。上述したように、当該3個の冷却ブロック171aは、吸着されたフィルム10の被描画領域101における、第一描画行121、第二描画行122、又は第三描画行123に対応する。
冷却ブロック171aの温度測定は、それぞれの冷却ブロック171aに配設された温度計79によって冷却ブロック171aの温度を計測することで実施する。テーブル温度制御部181は、計測された温度情報を取得する。
【0142】
次に、ステップS87では、取得した冷却ブロック171aの温度測定値を基準値と比較して、温度の変動量が規格以内であるか否かを判定する。
温度の変動量が規格以内である場合(ステップS87でYES)には、ステップS86に戻り、ステップS86及びステップS87を繰り返す。
温度の変動量が規格値を超えていた場合(ステップS87でNO)には、ステップS88に進む。
【0143】
次に、ステップS88では、冷却ブロック171aの温度調整を実施する。上述したステップS71において、冷却ブロック171aを稼動させて、吸着テーブル333の当該冷却ブロック171aが配設された部分の温度を所定の温度に調整している。したがって、温度の変動量が規格値を超える場合は、ステップS81の描画走査における紫外線照射によって、フィルム10や吸着テーブル333の温度が変動した場合である。テーブル温度制御部181は、冷却ユニット171の該当する冷却ブロック171aの稼動条件を変更することによって、吸着テーブル333の温度を、冷却ブロック171aに対応する部分ごとに調整する。冷却ブロック171aの稼動条件としては、温調機77による温調媒体の冷却温度(調整温度)や、開閉バルブ73の開閉による温調媒体の流量が挙げられる。
【0144】
本実施形態の微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/4)である。描画走査の4回に3回は、ヘッドユニット21及び硬化ユニット6が、2個所の描画行(例えば、第一描画行121と第二描画行122)にまたがって描画又は紫外線の照射を実施している。隣接する2個所の冷却ブロック171aを稼動させることで、硬化ユニット6が紫外線の照射を実施している2個所の描画行に対応する2個所の冷却ブロック171aを稼動させる。さらに、次に描画を実施する対象となる描画行に対応する冷却ブロック171aを稼動させることで、当該冷却ブロック171aを予備稼動させる。冷却ブロック171aの予備稼動が、事前稼動に相当する。冷却ブロック171aを予備稼動させることが、事前稼動工程に相当する。
【0145】
次に、ステップS89では、現在描画を実施している被描画領域101における現在描画を実施している描画行への描画が完了したか否かを判定する。上述したように、第一描画行121への描画は、微小描画行221から微小描画行224への描画が完了することで、完了する。例えば、微小描画行224への描画が完了した場合、第一描画行121への描画が完了したと判定される。
第一描画行121などの現在描画を実施している描画行への描画が完了していなかった(ステップS89でNO)場合には、ステップS86に戻り、ステップS86からステップS89の各工程を繰り返す。
現在描画を実施している描画行への描画が完了していた(ステップS89でYES)場合には、ステップS90に進む。
【0146】
次に、ステップS90では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。ステップS90は、上述したステップS82と同じ工程である。
被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS90でNO)場合には、ステップS91に進む。
【0147】
ステップS90の次に、ステップS91では、稼動させる冷却ブロック171aを変更する。例えば、第一描画行121と第二描画行122と第三描画行123とに対応する冷却ブロック171aを稼動させていた場合、ステップS91に進むのは、第一描画行121への描画(紫外線の照射)が終了した場合である。以降の画像描画工程は、第二描画行122と第三描画行123とにまたがって実施されるため、第二描画行122と第三描画行123とに対応する冷却ブロック171aを稼動させて、温度調整を実施する。加えて、第四描画行124に対応する冷却ブロック171aを稼動させて、予備稼動させる。すなわち、稼動させる冷却ブロック171aを、第一描画行121と第二描画行122と第三描画行123とに対応する冷却ブロック171aから、第二描画行122と第三描画行123と第四描画行124とに対応する冷却ブロック171aに変更する。
【0148】
ステップS91の次に、ステップS86に戻り、ステップS86からステップS90の各工程を繰り返す。
被描画領域101への描画が完了していた(ステップS90でYES)場合には、図10(a)のステップS74における温度調整工程を終了する。
【0149】
図10(a)のステップS74の次に、図10(a)のステップS75では、フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了したか否かを判定する。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していなかった(ステップS75でNO)場合には、ステップS76に進む。
【0150】
ステップS76では、フィルム10を送り、次に描画を実施する被描画領域101の部分を、吸着テーブル333の吸着面33aに臨む位置に位置させる。ステップS76の次に、ステップS72に戻り、ステップS72からステップS75を繰り返す。
フィルム10の描画対象領域の全体への描画が完了していた(ステップS75でYES)場合には、冷却ユニット171を備える描画装置によってフィルム10に描画する描画工程を終了する。
【0151】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)吸着テーブル33及び吸着テーブル333には、媒体流路72又は媒体流路172が形成されており、媒体流路72及び媒体流路172には温調媒体を流動させることができる。温調媒体が吸着テーブル33又は吸着テーブル333から熱を奪うことで、吸着テーブル33又は吸着テーブル333を冷却することができる。
【0152】
(2)フィルム10の被描画領域101に描画を実施する際には、被描画領域101は、全面が吸着テーブル33又は吸着テーブル333に吸着されている。これにより、吸着テーブル33又は吸着テーブル333を冷却することで、フィルム10の被描画領域101の部分を冷却することができる。
【0153】
(3)冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333を冷却可能に配設されている。吸着テーブル33又は吸着テーブル333に吸着保持されたフィルム10は、被吸着面の反対側の面に機能液を配置されて描画される。この構成により、機能液が配置されていない側からフィルム10の温度を調整するため、フィルム10の温度を調整するための熱の授受が配置された機能液に影響を与えることを抑制することができる。
【0154】
(4)吸着テーブル333には、4個の媒体流路172が形成されており、それぞれの媒体流路172に連通する流路を開閉可能な開閉バルブ73が設けられている。開閉バルブ73によって、それぞれの媒体流路172に流動させる温調媒体の量を調整することができる。流動させる温調媒体の量を調整することで、それぞれの媒体流路172が配設された部分ごとに、吸着テーブル333の温度を調整することができる。
媒体流路172が配設された部分ごとに、吸着テーブル333の温度を調整することで、紫外線の照射に伴う熱を受けている部分の近傍のみの温度を調整することができる。近傍のみの温度を調整することで、吸着テーブル333の全体を一律に温度調整する場合にくらべて、迅速かつ正確に温度調節できる。紫外線の照射に伴う熱を受けていない部分を冷却などすることを抑制することができるため、紫外線の照射に伴う熱を受けていない部分を冷却などすることに起因して、当該部分の温度が適切な温度から外れることを抑制することができる。
【0155】
(5)フィルム10の被描画領域101に描画を実施する際には、被描画領域101は、全面が吸着テーブル33又は吸着テーブル333に吸着されている。これにより、フィルム10の被描画領域101を平坦に維持して、被描画領域101に皺ができるなどの平坦な状態が維持されないことに起因して、描画形状精度や描画位置精度などが損なわれることを抑制することができる。
【0156】
(6)フィルム10への描画は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333によって、被描画領域101を吸着して実施し、改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル33又は吸着テーブル333をY軸方向に移動させることによって実施する。これにより、改行に際しても被描画領域101を吸着した状態が維持されるため、改行することに起因して被描画領域101が変形することを抑制することができる。改行するための力は直接フィルム10に加えられることはないため、改行するための力によって被描画領域101が変形することを実質的になくすることができる。
【0157】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0158】
(変形例1)前記実施形態においては、冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333の温度を測定する温度計79を備えていた。しかし、温度測定手段が保持手段の温度を測定する装置であることは必須ではない。温度測定手段は、被描画媒体の温度を測定する装置であってもよい。被描画媒体の温度を測定する装置としては、例えば、放射温度計などの非接触温度計を用いることができる。
【0159】
(変形例2)前記実施形態においては、描画装置が備える温度調整手段としての冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、温調機77を備え、当該温調機77が冷却機として機能する冷却装置であったが、温度調整手段が冷却装置であることは必須ではない。熱源を備える加熱装置であってもよいし、冷却及び加熱が可能な調整装置であってもよい。
【0160】
(変形例3)前記実施形態においては、冷却ユニット71は流路を開閉可能な開閉バルブ73を備えていたが、温度調整手段が媒体流路を流動させる温度調整媒体の流量を調整する手段を備えることは必須ではない。温度調整手段が温度調整媒体の温度を調整する手段を備え、温度制御手段は、温度調整手段を制御して温度調整媒体の温度を適切な温度に調整させる構成であってもよい。
【0161】
(変形例4)前記実施形態においては、冷却ユニット71及び冷却ユニット171は、温調機77を備えていたが、温度調整手段が温調機77のような温度調整媒体の温度を調整する手段を備えることは必須ではない。略一定の温度の温度調整媒体が得られる環境であれば、温度調整媒体流量のみを制御して温度を調整する構成であってもよい。
【0162】
(変形例5)前記実施形態においては、媒体流路72が吸着テーブル33に形成されている冷却ユニット71を備える描画装置1では、改行幅がユニット描画幅WUである改行を実施する描画工程を実施していた。4個の媒体流路172が吸着テーブル333に形成されている冷却ユニット171を備える描画装置では、改行幅が微小改行幅WKである微小改行描画工程を実施していた。しかし、温度調整手段が単一の温度調整手段であるか、複数の副温度調整手段を備える温度調整手段であるかによって、描画工程における改行幅は規定されない。冷却ユニット71を備える描画装置1で微小改行描画工程を実施しても良いし、冷却ユニット171を備える描画装置で改行幅がユニット描画幅WUである改行を実施する描画工程を実施してもよい。
冷却ユニット171を備える描画装置で改行幅がユニット描画幅WUである改行を実施する描画工程を実施する場合も、描画(紫外線照射)を実施している部分に対応させて、一部の冷却ブロック171aを稼動させる描画方法を用いても良い。
【0163】
(変形例6)前記実施形態においては、冷却ユニット171は流路を開閉可能な開閉バルブ73を媒体流路172ごとに備えており、開閉バルブ73によって対応する媒体流路172の稼動状態を制御していた。しかし、副温度調整手段に供給する温度調整媒体の流量を制御することで副温度調整手段の稼動状態を制御することは必須ではない。副温度調整手段が、給液ポンプ76や温調機77のような装置を、それぞれ備え、互いに独立して稼動させることが可能な構成であってもよい。
【0164】
(変形例7)前記実施形態においては、冷却ユニット71は流路を開閉可能な開閉バルブ73を備えていたが、温度調整手段が媒体流路を流動させる温度調整媒体の流量を調整する手段が媒体流路を開閉するバルブであることは必須ではない。給液ポンプ76のような温度調整媒体を流動させる力を発生する装置を制御することによって温度調整媒体の流量を調整する構成であってもよい。
【0165】
(変形例8)前記実施形態においては、吸着テーブル333には、4個の冷却ブロック171aが組み込まれていたが、冷却ブロック171aの境界は形成されていなかった。しかし、保持手段に、副温度調整手段間を明確に分離する境界部を構成してもよい。例えば、冷却ブロック171aの境界に断熱部材を用いた境界部を設け、冷却ブロック171a間の熱伝導を抑制する構成であってもよい。
【0166】
(変形例9)前記実施形態においては、描画装置1はヘッドユニット21を1個備えていたが、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。
【0167】
(変形例10)前記実施形態においては、ヘッドユニット21は液滴吐出ヘッド20を9個備えていたが、ヘッドユニットが備える吐出ヘッドが9個であることは必須ではない。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、いくつであってもよい。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、複数であってもよいし、1個であってもよい。
【0168】
(変形例11)前記実施形態においては、描画装置1は、張力ローラーに相当する媒体送りローラー36及び従動ローラー36aを備え、フィルム10における吸着テーブル33や吸着テーブル333に臨む部分を略平坦に維持していた。しかし、連続媒体における保持手段に臨む部分の状態を略平坦に維持するための張力ローラーが、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aのような装置であることは必須ではない。例えば、巻取リール32によって供給ローラー34との間にフィルム10における適切な長さを保持し、アイドラローラー38によって適切な張力をフィルム10の当該保持された部分に付与する構成であってもよい。
【0169】
(変形例12)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20は、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aを2列備えていたが、吐出ヘッドが備えるノズル列は何列であってもよい。また、液滴吐出ヘッド20が備える吐出ノズル24は、ノズル列24Aの延在方向において互いの位置がずれていたが、吐出ヘッドは、ノズル列の延在方向において、略同一位置に位置する吐出ノズルを複数備える構成であってもよい。
【0170】
(変形例13)前記実施形態においては、描画装置1の供給排出機構部3は、巻取リール32を備えており、描画済みのフィルム10は巻取リール32に巻き取られていた。しかし、描画装置が巻取リールを備えることも、連続媒体の描画済みの部分を巻き取ることも、必須ではない。例えば、切断装置を設け、描画済みの部分を所定の長さに切断する、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。あるいは、型抜き装置を設け、描画済みの連続媒体から製品部分のみを型抜きし、製品以外の部分を切断したり巻き取ったりする、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。
【0171】
(変形例14)前記実施形態においては、描画装置1のヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11とを備えていた。当該X軸走査機構11によってヘッドキャリッジ22をX軸方向に走査させ、ヘッドキャリッジ22が備える液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24から機能液を吐出させて、フィルム10に描画していた。しかし、描画装置が吐出ノズルを連続媒体に対して主走査方向に相対移動させる装置を備えることは必須ではない。描画装置は、連続媒体の幅方向の略全体に亘って液滴を吐出可能に吐出ノズルが配設された、いわゆるラインヘッドを備える構成であってもよい。この場合、硬化ユニットは、連続媒体の送り方向において、ラインヘッドの下流側の直近に設けることが好ましい。ラインヘッドの下流側の直近に配設された硬化ユニットから紫外線を照射することで、機能液を、配置された直後に硬化させることができる。
描画装置がラインヘッドを備える場合、ラインヘッドから描画画像に規定された位置に液滴を吐出する工程が、描画工程に相当する。
【0172】
(変形例15)前記実施形態においては、機能液の種類については特に記載しなかったが、描画装置においては、色が異なるなど種類の異なる機能液を吐出してもよい。色が異なる複数種類の機能液を吐出することでカラー描画も可能である。機能液の種類は、複数のヘッドユニットを備えてヘッドユニットごとに異ならせてもよいし、ヘッド組ごとに異ならせてもよいし、液滴吐出ヘッドごとに異ならせてもよいし、ノズル列ごとに異ならせてもよい。吐出ノズルごとに機能液を個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なる機能液を吐出してもよい。なお、カラー描画を実施するためには、同じ着弾位置に、複数の、例えば色が異なる機能液を着弾させることができる構成のヘッドユニット又は液滴吐出ヘッドを用いたり、走査方法を用いたりすることが好ましい。
【0173】
(変形例16)前記実施形態においては、印刷対象として、連続媒体としてのフィルム10に印刷する印刷装置及び印刷方法を例にして説明したが、印刷対象がフィルム10のような連続媒体であることは必須ではない。印刷対象は、一枚の印刷対象に、保持手段によって吸着保持される被印刷領域が1個所ある、いわゆる単票紙のような媒体であってもよい。印刷装置は、当該媒体を保持手段に対して供給及び排出できる供給手段を備える装置であってもよい。
【0174】
(変形例17)前記実施形態においては、描画装置1などにおいて、描画走査は、吸着テーブル33又は吸着テーブル333によって、被描画領域101を吸着して実施し、改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域101を吸着した吸着テーブル33又は吸着テーブル333をY軸方向に移動させることによって実施していた。しかし、被描画媒体を保持した保持手段を移動させることによって改行を実施することは必須ではない。描画装置は、ヘッドユニット21などの吐出手段を移動させることによって改行を実施する構成であってもよい。
【0175】
(変形例18)前記実施形態においては、描画工程は、図7又は図10に示した各ステップを実施する工程であったが、描画工程は図7又は図10に示したような工程に限らない。描画工程は、例えば、描画する画像をビットマップに展開し、当該ビットマップにしたがって描画する工程であってもよい。ビットマップは、画像を、機能液の液滴を着弾させる位置情報、及び当該機能液を吐出させる吐出ノズルの情報で規定したマップである。
【0176】
(変形例19)前記実施形態においては、温調媒体として、水を挙げていた。温調媒体としては、他の液状体を用いても良い。液状体以外にも、気体などであってもよい。温調媒体は、保持手段と熱の授受をしやすくするために、熱伝導率が高い物質であることが好ましい。また、保持手段と熱の授受をした際に温調媒体の温度変化が小さいことが好ましいため、比熱が高い物質であることが好ましい。
【0177】
(変形例20)前記実施形態においては、使用後の温調媒体は、排液管74bなどを介して廃棄していたが、温調媒体は、例えば循環させるなど、繰り返して使用してもよい。特に、温調媒体が、廃棄することによって環境に影響を与えるような物質であったり、高価な物質であったりするような場合には、廃棄することなく、繰り返して使用することが好ましい。
【0178】
(変形例21)前記実施形態においては、冷却ユニット171は、4個の冷却ブロック171aを備えていた。吸着テーブル333において、1個の冷却ブロック171aが対応する部分である副温度調整区画は、第一描画行121などの1個の描画行を吸着する部分に対応していた。副温度調整区画を描画行に対応させて形成することは必須ではない。例えば、描画行にくらべて多数の副温度調整区画(副温度調整手段)を設ける構成であってもよい。多数の副温度調整区画(副温度調整手段)を設けることで、保持手段における温度調整を実施する部分をより狭い範囲を単位として設定することができる。
【0179】
(変形例22)前記実施形態においては、硬化ユニット6は、ヘッドユニット21と一体に移動可能に構成されていた。しかし、硬化促進手段が移動可能であることも、硬化促進手段が吐出手段と一体に移動可能であることも、必須ではない。硬化促進手段を吐出手段とは離して配置する構成であってもよい。この場合、保持手段における、少なくとも硬化促進手段が臨む部分に、温度調整手段を配設する。
【符号の説明】
【0180】
1…描画装置、2…ヘッド機構部、3…供給排出機構部、6…硬化ユニット、8…描画装置制御部、10…フィルム、11…X軸走査機構、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、30…吸着ユニット、33…吸着テーブル、33a…吸着面、42…Y軸走査機構、61a,61b…UVLED、62a,62b…LED筐体、71…冷却ユニット、72…媒体流路、73…開閉バルブ、74a…給液管、74b…排液管、76…給液ポンプ、77…温調機、79…温度計、81…テーブル温度制御部、91…着弾点、91A…着弾円、101…被描画領域、108…描画装置制御部、121…第一描画行、122…第二描画行、123…第三描画行、124…第四描画行、171…冷却ユニット、171a…冷却ブロック、172…媒体流路、174a…給液管、174b…排液管、181…テーブル温度制御部、221,222,223,224,226,227,228,229…微小描画行、333…吸着テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被描画媒体を保持する保持手段と、
液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を前記保持手段に保持された前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段と、
前記被描画媒体に配置された状態の前記液状体の硬化を促進させる硬化促進手段と、
前記保持手段の温度を調整する温度調整手段と、
温度測定手段と、
前記温度測定手段の測定結果に基づいて、前記温度調整手段を制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項5】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項6】
前記温度調整手段は、複数の副温度調整手段を備え、
前記複数の副温度調整手段のそれぞれの副温度調整手段は、それぞれ前記保持手段の一部分に配設されており、前記温度調整手段を構成する媒体副流路を備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項7】
前記描画手段は、
前記吐出手段からの前記液状体の吐出を実施しながら前記吐出手段と前記被描画媒体とを相対移動させる主走査の際に、前記吐出手段と前記被描画媒体とを主走査方向に相対移動させる主走査手段と、
前記吐出手段と前記被描画媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる副走査手段と、をさらに備え、
前記保持手段における、1個の前記媒体副流路が配設された副温度調整区画は、前記副走査方向における幅が、前記吐出手段の前記副走査方向における前記液状体を吐出可能な幅であり、前記主走査方向における幅が、前記保持手段の前記主走査方向における幅であることを特徴とする、請求項6に記載の描画装置。
【請求項8】
前記温度制御手段は、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を同時に稼動させることを特徴とする、請求項7に記載の描画装置。
【請求項9】
前記温度制御手段は、次に稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項10】
前記温度調整手段は、前記保持手段における、前記硬化促進手段が臨むことが可能な部分に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項11】
前記温度制御手段は、前記複数の副温度調整手段の中で、前記保持手段における稼動している前記硬化促進手段が臨んでいる部分に、配設されている前記副温度調整手段を稼動させることを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項12】
被描画媒体を保持手段によって保持する保持工程と、
保持された前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画工程と、
前記被描画媒体に配置された前記液状体の硬化を促進させる硬化促進工程と、
温度測定工程と、
前記温度測定工程における測定結果に基づいて、前記保持手段の温度を制御する温度制御工程と、を有することを特徴とする描画方法。
【請求項13】
前記温度制御工程は、複数の副温度調整手段を備える温度調整手段を用いて実施し、
前記描画工程は、前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させる描画吐出工程を有し、
前記副温度調整手段は、前記保持手段の部分であって、前記被描画媒体における1回の前記描画吐出工程において前記液状体を着弾させることが可能な領域に相当する範囲を保持する部分に配設されており、
前記温度制御工程では、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を稼動させることを特徴とする、請求項12に記載の描画方法。
【請求項14】
前記温度制御工程に先んじて、前記温度制御工程において稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させる事前稼動工程をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の描画方法。
【請求項1】
被描画媒体を保持する保持手段と、
液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を前記保持手段に保持された前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段と、
前記被描画媒体に配置された状態の前記液状体の硬化を促進させる硬化促進手段と、
前記保持手段の温度を調整する温度調整手段と、
温度測定手段と、
前記温度測定手段の測定結果に基づいて、前記温度調整手段を制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記保持手段の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の流量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項5】
前記温度調整手段は、温度調整媒体を流動させるための媒体流路を備え、
前記温度測定手段は、前記被描画媒体の温度を測定し、
前記温度制御手段は、前記媒体流路を流動させる前記温度調整媒体の温度を制御することを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項6】
前記温度調整手段は、複数の副温度調整手段を備え、
前記複数の副温度調整手段のそれぞれの副温度調整手段は、それぞれ前記保持手段の一部分に配設されており、前記温度調整手段を構成する媒体副流路を備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項7】
前記描画手段は、
前記吐出手段からの前記液状体の吐出を実施しながら前記吐出手段と前記被描画媒体とを相対移動させる主走査の際に、前記吐出手段と前記被描画媒体とを主走査方向に相対移動させる主走査手段と、
前記吐出手段と前記被描画媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる副走査手段と、をさらに備え、
前記保持手段における、1個の前記媒体副流路が配設された副温度調整区画は、前記副走査方向における幅が、前記吐出手段の前記副走査方向における前記液状体を吐出可能な幅であり、前記主走査方向における幅が、前記保持手段の前記主走査方向における幅であることを特徴とする、請求項6に記載の描画装置。
【請求項8】
前記温度制御手段は、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を同時に稼動させることを特徴とする、請求項7に記載の描画装置。
【請求項9】
前記温度制御手段は、次に稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項10】
前記温度調整手段は、前記保持手段における、前記硬化促進手段が臨むことが可能な部分に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項11】
前記温度制御手段は、前記複数の副温度調整手段の中で、前記保持手段における稼動している前記硬化促進手段が臨んでいる部分に、配設されている前記副温度調整手段を稼動させることを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項12】
被描画媒体を保持手段によって保持する保持工程と、
保持された前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画工程と、
前記被描画媒体に配置された前記液状体の硬化を促進させる硬化促進工程と、
温度測定工程と、
前記温度測定工程における測定結果に基づいて、前記保持手段の温度を制御する温度制御工程と、を有することを特徴とする描画方法。
【請求項13】
前記温度制御工程は、複数の副温度調整手段を備える温度調整手段を用いて実施し、
前記描画工程は、前記被描画媒体に向けて液状体を吐出して前記被描画媒体に着弾させる描画吐出工程を有し、
前記副温度調整手段は、前記保持手段の部分であって、前記被描画媒体における1回の前記描画吐出工程において前記液状体を着弾させることが可能な領域に相当する範囲を保持する部分に配設されており、
前記温度制御工程では、互いに隣接する2個の前記副温度調整手段を稼動させることを特徴とする、請求項12に記載の描画方法。
【請求項14】
前記温度制御工程に先んじて、前記温度制御工程において稼動させる前記副温度調整手段を事前稼動させる事前稼動工程をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の描画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−40501(P2012−40501A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183717(P2010−183717)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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