説明

搬送装置、定着装置、および湿式画像形成装置

【課題】紙媒体を搬送する際に、紙媒体に対する接触面積を低減することが可能な搬送装置を得る。
【解決手段】搬送経路の上流側から下流側に向かって紙媒体を搬送する搬送装置20であって、互いに間隔を空けて並ぶように配置され、紙媒体を支持しつつ支持した紙媒体を上記搬送経路上において搬送する複数のワイヤーロープ26を備え、複数のうちいずれか2本の隣り合うワイヤーロープ26同士の間隔は、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に広がるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、定着装置、および湿式画像形成装置に関し、特に、紙媒体を搬送する搬送装置、その搬送装置を備える定着装置、およびその定着装置を備える湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−355453号公報(特許文献1)に開示されるように、紙媒体を搬送する搬送装置が知られる。紙媒体を搬送する搬送装置は、たとえば、湿式電子写真方式を採用する画像形成装置(以下、湿式画像形成装置という)の定着装置に用いられる。湿式画像形成装置は、近年、オフィスプリンターまたはオンデマンド印刷装置などに多く用いられている。
【0003】
湿式画像形成装置においては、液体現像剤が用いられる。一般的には、液体現像剤は、パラフィン系溶媒等のキャリア液と、このキャリア液中に分散されたトナー粒子とを含む。湿式画像形成装置における現像工程または転写工程では、電界による泳動によって、液体現像剤中のトナー粒子がキャリア液とともに紙媒体上に移動する。
【0004】
湿式画像形成装置においては、定着装置が、紙媒体上に搬送されたトナー粒子を紙媒体上に定着させる。トナー粒子の定着によって、紙媒体上に所望の画像が形成される。一般的な定着装置においては、紙媒体を搬送させるための搬送装置として、ゴムベルトが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−355453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙媒体を搬送する搬送装置にゴムベルトが用いられる場合、ゴムベルトと紙媒体との相互の接触面積が大きくなる。このような搬送装置が、たとえば湿式画像形成装置の定着装置などに用いられたとする。この場合、トナーの定着工程において紙媒体が良好に乾燥されなくなることによって、キャリア液が紙媒体中に残留する。いわゆる裏うつり現象が発生し易くなる。
【0007】
乾燥を促進して裏うつり現象の発生を抑制する等の目的ために、ゴムベルトに複数の孔が設けられる場合もある。孔が設けられた部分においては紙媒体の乾燥が促進されるものの、ゴムベルトと紙媒体とが相互に接触している部分については、紙媒体はやはり乾燥されにくい。紙媒体を搬送する搬送装置にゴムベルトが用いられる場合、ゴムベルトと紙媒体との相互の接触面積が大きくなることによって、上記のような不具合の発生を招いていた。
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みて為されたものであって、紙媒体を搬送する際に、紙媒体に対する接触面積を低減することが可能な搬送装置、その搬送装置を備える定着装置、およびその定着装置を備える湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく搬送装置は、搬送経路の上流側から下流側に向かって紙媒体を搬送する搬送装置であって、互いに間隔を空けて並ぶように配置され、上記紙媒体を支持しつつ支持した上記紙媒体を上記搬送経路上において搬送する複数のワイヤーロープを備え、複数のうちいずれか2本の隣り合う上記ワイヤーロープ同士の上記間隔は、上記上流側から上記下流側に向かうにつれて徐々に広がるように設定される。
【0010】
好ましくは、複数のうち中央寄りに配置された上記ワイヤーロープは、互いに平行に配置され、複数のうち外側寄りに配置された上記ワイヤーロープは、隣り合う上記ワイヤーロープ同士の上記間隔が、上記上流側から上記下流側に向かうにつれて徐々に広がるように配置される。
【0011】
好ましくは、複数のうち隣り合う上記ワイヤーロープ同士の上記間隔は、上記搬送経路上を搬送される上記紙媒体が、一方の外側寄りに配置された上記ワイヤーロープに向かって斜め方向に搬送されるように設定され、上記搬送経路の側方には、上記紙媒体の上記斜め方向における移動量が所定の値を超えないように、上記斜め方向に搬送される上記紙媒体の移動を規制するガイド部材が設けられる。
【0012】
好ましくは、上記搬送経路上を搬送される上記紙媒体を複数の上記ワイヤーロープに対して押し付ける風圧発生装置と、上記斜め方向に移動する上記紙媒体が上記斜め方向における所定の位置に到達したことを検出する検出装置と、上記紙媒体が上記所定の位置に到達したことを上記検出装置が検出したことに基づいて、上記紙媒体の上記斜め方向における上記移動量が所定の値を超えないように上記風圧発生装置の駆動量を制御する制御部と、をさらに備える。
【0013】
本発明に基づく定着装置は、本発明に基づく上記の搬送装置と、湿式電子写真方式によって上記紙媒体に転写されたトナー画像を上記紙媒体上に定着させる定着部と、を備える。
【0014】
本発明に基づく湿式画像形成装置は、本発明に基づく上記の定着装置を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、紙媒体を搬送する際に、紙媒体に対する接触面積を低減することが可能な搬送装置、その搬送装置を備える定着装置、およびその定着装置を備える湿式画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における湿式画像形成装置を模式的に示す図である。
【図2】実施の形態1における定着装置を模式的に示す図である。
【図3】実施の形態1における搬送装置を模式的に示す図である。
【図4】実施の形態1における搬送装置に用いられるローラーを示す斜視図である。
【図5】図3におけるV−V線に沿った矢視断面図である。
【図6】図3におけるVI−VI線に沿った矢視断面図である。
【図7】図3におけるVII−VII線に沿った矢視断面図である。
【図8】実施の形態1の比較例における搬送装置を示す平面図である。
【図9】実施の形態2における搬送装置を示す平面図である。
【図10】実施の形態3における搬送装置を示す平面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線に沿った矢視断面図である。
【図12】実施の形態4における定着装置を模式的に示す図である。
【図13】実施例1および比較例1の結果を示す図である。
【図14】実施例2、比較例2、および実施例3の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態および各実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態および各実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0018】
[実施の形態1]
(湿式画像形成装置100)
図1は、実施の形態における湿式画像形成装置100を模式的に示す図である。図1に示すように、湿式画像形成装置100は、感光体ドラム41、帯電装置42、露光装置43、液体現像装置44、中間転写ローラー45、クリーニング装置46、二次転写ローラー47、クリーニング装置48、および定着装置50(図2も参照)を備える。
【0019】
感光体ドラム41は、円筒状に形成される。感光体ドラム41の表面には、感光体層(図示せず)が設けられる。感光体ドラム41は、矢印AR41方向に回転する。感光体ドラム41の周りには、感光体ドラム41の回転方向に沿って、帯電装置42、露光装置43、液体現像装置44、中間転写ローラー45、およびクリーニング装置46が順に配置される。
【0020】
帯電装置42は、感光体ドラム41の表面を所定の電位に帯電させる。露光装置43は、感光体ドラム41の表面に、所定の画像情報に基づいた光を照射する(矢印AR43参照)。露光装置43からの光によって、感光体ドラム41の表面は露光され、感光体ドラム41の表面の帯電レベルが低下する。この帯電レベルの低下により、感光体ドラム41の表面には、静電潜像が形成される。
【0021】
液体現像装置44は、液体現像剤(図示せず)を含む。液体現像剤は、キャリア液およびトナー粒子を有する。液体現像装置44の現像ローラーには、トナー粒子と同極性の現像バイアス電圧が印加される。トナー粒子を表面に有する現像ローラーと感光体ドラム41上の静電潜像との間には、所定の電位差が設けられる。
【0022】
液体現像装置44の現像ローラーと感光体ドラム41との間に形成された電界の作用によって、液体現像装置44の液体現像剤は、感光体ドラム41の表面(現像領域)上に搬送される。液体現像剤中のキャリア液およびトナー粒子は、感光体ドラム41の表面上に静電吸着される。静電潜像が現像されることによって、感光体ドラム41の表面には、静電潜像の形状に対応したトナー画像(図示せず)が形成される。
【0023】
(一次転写)
中間転写ローラー45は、感光体ドラム41と対向するように配置される。中間転写ローラー45は、感光体ドラム41と接触しつつ、矢印AR45方向に回転する。感光体ドラム41と中間転写ローラー45との接触部(ニップ部)において、感光体ドラム41の表面上のトナー画像は、感光体ドラム41から中間転写ローラー45の表面上に転写される(一次転写)。
【0024】
一次転写においては、中間転写ローラー45に、感光体ドラム41上に形成されたトナー画像に含まれるトナー粒子とは逆極性の転写バイアス電圧が印加される。感光体ドラム41と中間転写ローラー45との間のニップ部において、電界が形成される。この電界の作用によって、トナー画像を形成するキャリア液およびトナー粒子は、中間転写ローラー45の表面上に搬送される。トナー画像を形成するキャリア液およびトナー粒子は、中間転写ローラー45の表面上に静電吸着される。
【0025】
転写されずに感光体ドラム41上に残存したキャリア液およびトナー粒子は、クリーニング装置46によって、感光体ドラム41の表面から除去される。感光体ドラム41の表面はクリーニングされ、次の画像形成に供される。
【0026】
(二次転写)
二次転写ローラー47は、中間転写ローラー45と対向するように配置される。紙媒体40(印刷媒体)は、二次転写ローラー47と中間転写ローラー45との間を通過するように搬送される(矢印AR40参照)。二次転写ローラー47は、二次転写ローラー47と中間転写ローラー45との間に紙媒体40を挟んだ状態で、矢印AR47方向に回転する。二次転写ローラー47と中間転写ローラー45との間のニップ部において、中間転写ローラー45の表面のトナー画像は、中間転写ローラー45から紙媒体40の表面上に転写される(二次転写)。
【0027】
二次転写においては、二次転写ローラー47に、中間転写ローラー45上に形成されたトナー画像に含まれるトナー粒子とは逆極性の転写バイアス電圧が印加される。中間転写ローラー45と二次転写ローラー47との間のニップ部において、電界が形成される。この電界の作用によって、トナー画像を形成するキャリア液およびトナー粒子は、ニップ部を通過する紙媒体40の表面上に搬送される。トナー画像を形成するキャリア液およびトナー粒子は、紙媒体40の表面上に静電吸着される。
【0028】
紙媒体40上には、トナー画像49が形成される。トナー画像49が形成された紙媒体40は、定着装置50内に搬送される。トナー画像49は、定着装置50によって紙媒体40の表面上に定着される(詳細は、図2を参照して後述する)。
【0029】
転写されずに中間転写ローラー45上に残存したキャリア液およびトナー粒子は、クリーニング装置48によって、中間転写ローラー45の表面から除去される。中間転写ローラー45の表面はクリーニングされ、次の画像形成に供される。
【0030】
(液体現像剤)
本実施の形態に用いられる液体現像剤としては、上述のとおり、溶媒であるキャリア液体中に、着色されたトナー粒子が高い濃度で分散されている。液体現像剤には、分散剤および荷電制御剤などが添加されていてもよい。キャリア液としては、絶縁性を有し、常温下では揮発しない不揮発性の溶媒が用いられる。不揮発性の溶媒としては、たとえばシリコンオイル、ミネラルオイルまたは、パラフィンオイル等を用いることができる。
【0031】
トナー粒子は、樹脂と、着色のための顔料または染料とから構成される。樹脂は、顔料または染料を樹脂中に均一に分散させる機能と、トナー粒子が紙媒体に定着される際のバインダーとしての機能を有している。樹脂としては、たとえば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、または、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。トナー粒子に用いる樹脂としては、これらのうちから選択された複数の樹脂が混合された状態で用いられても良い。
【0032】
トナーを着色するために用いられる顔料または染料としては、一般的に市販されているものを用いることができる。顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、または、レーキレッドD等を用いることができる。染料としては、ソルベントレッド27、またはアシッドブルー9等を用いることができる。
【0033】
液体現像剤の調整方法としては、一般に用いられる方法が用いられることができる。たとえば、樹脂と顔料とを、所定の配合比で、加圧ニーダーまたはロールミルなどを用いて溶融および混練する。樹脂と顔料とを均一に分散させることによって得られた分散体を、たとえばジェットミルによって微粉砕する。微粉砕によって得られた微粉末を、たとえば風力分級機などにより分級する。これにより、所定の粒径を有する着色トナーが得られる。
【0034】
得られた着色トナーとキャリア液としての絶縁性液体とを、所定の配合比で混合する。この混合物を、ボールミル等の分散手段により均一に分散させる。こうして、液体現像剤が得られる。
【0035】
液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下であるとよい。液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径が0.1μmよりも小さくなると、そのトナー粒子は現像されにくくなる。液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径が5μmよりも大きくなると、そのトナー粒子から形成されるトナー画像の品質が低下する。
【0036】
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10%以上50%以下であるとよい。液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が10%よりも小さくなると、トナー粒子の沈降が生じやすくなり、長期保管時の経時的な安定性が低下する。液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が10%よりも小さくなると、所望の画像濃度を得るために多量の現像剤を供給する必要がある。紙媒体上に供給されるキャリア液の量が増加するため、トナー画像を定着させる際に多くのキャリア液を乾燥させる必要がある。キャリア液を乾燥させる際に、キャリア液から多くの蒸気が発生するため好ましくない。
【0037】
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が50%よりも大きくなると、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上および取り扱い上において不都合が生じる。液体現像剤の粘度は、25℃において、0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。液体現像剤の粘度が10000mPa・sより大きくなると、液体現像剤を撹拌したり液体現像剤を送液したりする際の液体現像剤の取り扱いが困難となる。均一な液体現像剤を得るために、装置への負担が大きくなる。
【0038】
上述のとおり、湿式画像形成装置100に用いられるトナー粒子の粒子径は、いわゆる乾式画像形成装置に用いられるトナー粒子の粒子径に比べて小さい。湿式画像形成装置100によれば、トナー画像に乱れが発生しにくい。湿式画像形成装置100によれば、高い画質および高い解像度を有するトナー画像が紙媒体上に形成される。
【0039】
(定着装置50)
図2は、本実施の形態における定着装置50を模式的に示す図である。図2に示すように、定着装置50は、定着部10、搬送装置20、加熱部52、および風圧発生装置60を備える。
【0040】
定着部10は、互いに間隔を空けて対向するように配置された定着ローラー11および定着ローラー12を含む。定着ローラー11は、中空状に形成されたローラーである。定着ローラー11の表面には、厚さが2mm〜5mmのゴム層が設けられる。定着ローラー11の内部には、加熱用のヒーター13が設けられる。
【0041】
定着ローラー12も、中空状に形成されたローラーである。定着ローラー12の表面にも、厚さが2mm〜5mmのゴム層が設けられる。定着ローラー12の内部には、加熱用のヒーター14が設けられる。
【0042】
定着ローラー11は、矢印AR11方向に回転する。定着ローラー12は、矢印AR12方向に回転する。定着ローラー11および定着ローラー12の間を通過するように、紙媒体40が搬送される。紙媒体40は、定着ローラー11および定着ローラー12によって加熱および加圧される。
【0043】
紙媒体40の表面のトナー粒子は、定着ローラー11および定着ローラー12の間を通過することによって溶融する。溶融したトナー粒子は、トナー画像として紙媒体40の表面に定着する。その後、紙媒体40は、定着部10から排出される(矢印AR40参照)。
【0044】
(搬送装置20)
図3は、本実施の形態における搬送装置20を示す平面図である。図2および図3に示すように、搬送装置20は、定着部10の下流に設けられる。定着部10と搬送装置20との間には、表面が水平に保持されたガイド板15(図2参照)が設けられるとよい。搬送装置20は、ローラー21〜24、および複数のワイヤーロープ26(ワイヤーロープ26a〜26n)を備える。
【0045】
図4に示すように、ローラー21は、回転軸部21T、円柱部21R、および複数の円周溝部21Gを含む。円柱部21Rは、回転軸部21Tが駆動装置(図示せず)によって駆動されることによって回転する。複数の円周溝部21Gは、円柱部21Rの表面において、互いに独立した溝として環状に凹設される。複数のワイヤーロープ26(図2,図3参照)の各々は、複数の円周溝部21Gに対して、一対一で巻回される。
【0046】
ローラー22〜24(図2参照)は、ローラー21と同様に構成される。ローラー21〜24のうちいずれかまたは複数が駆動ローラーとして機能し、ローラー21〜24のうちの残りが従動ローラーとして機能するとよい。複数のワイヤーロープ26は、無端状に形成され、ローラー21〜24に対して全体として環状に巻回される。
【0047】
ワイヤーロープ26は、エンドレス加工がなされた鋼鉄製の撚り線から構成される。ワイヤーロープ26は、複数の素線を撚ったストランドと呼ばれる撚り線が、さらに複数本束ねて撚られることによってロープ状に形成される。素線の撚りの方向としては任意の方向が採用され得るが、本実施の形態においては、ストランドの撚り方向とロープの撚り方向とが同じであるラング撚りのワイヤーロープ26が用いられる。素線の径は、たとえば0.11mmである。ストランドは、たとえば19本の素線から構成される。ワイヤーロープ26としては、たとえばストランドが7本用いられる。ワイヤーロープ26としてのロープ径は、たとえば1.0mmである。
【0048】
ローラー21〜24のうちいずれかまたは複数によって構成される駆動ローラーが回転することによって、複数のワイヤーロープ26は矢印AR26方向(図2参照)に回転する。複数のワイヤーロープ26のうち、ローラー21とローラー22との間における部分によって、紙媒体40を搬送するための搬送経路25(図2参照)が形成される。ローラー21とローラー22との間の距離は、たとえば600mmである。
【0049】
複数のワイヤーロープ26が回転駆動されることによって、複数のワイヤーロープ26は、紙媒体40を支持しつつ支持した紙媒体40を搬送経路25上において搬送経路25の上流側(図2,図3の紙面左側)から下流側(図2,図3の紙面右側)に向かって搬送する。詳細は後述されるが、ローラー21〜24(図2参照)に巻回された複数のワイヤーロープ26は、互いに所定の間隔C1〜C5(図5参照)を空けて並ぶように配置される。
【0050】
(加熱部52)
図2および図3を参照して、加熱部52は、搬送経路25(図2参照)に対して間隔を空けつつ搬送経路25を挟み込むように配置される。複数の加熱部52の各々は、熱源である遠赤外ヒーター51と、放射板53とを含む。隣り合う加熱部52同士の間には、次述する風圧発生装置60の吸引口61を配置するために、所定の間隔が設けられている。搬送経路25上を搬送される紙媒体40は、複数の加熱部52によって、両面側から加熱されることができる。
【0051】
上述したように、湿式画像形成装置100(図1参照)においては、紙媒体40の一方の表面上にトナー画像が転写される際に、紙媒体40の一方の表面から紙媒体40の内部に向かってキャリア液が浸透する。キャリア液は、室温下ではほとんど揮発しない。定着部10によってトナー粒子を紙媒体40の表面上に定着させた後、加熱部52によって紙媒体40が両面側から加熱される。当該加熱によって、紙媒体40の内部に浸透したキャリア液は揮発(乾燥)され、いわゆる裏うつり現象の発生は抑制されることができる。
【0052】
上述のとおり、紙媒体40を搬送するワイヤーロープ26の直径は、たとえば1.0mmである。複数のワイヤーロープ26と紙媒体40との相互の接触面積は、ゴムベルトを用いて紙媒体40を搬送する場合に比べて極めて小さい。紙媒体40は、表面側からだけでなく、複数のワイヤーロープ26によって支持されている裏面側からも、加熱部52によって効果的に加熱されることが可能となる。したがって、搬送装置20を用いた定着装置50によれば、いわゆる裏うつり現象の発生は効果的に抑制されることができる。
【0053】
(風圧発生装置60)
本実施の形態においては、紙媒体40を搬送する際、複数のワイヤーロープ26の紙媒体40に対する駆動力(摩擦力)を効果的に得るために、風圧発生装置60が用いられる。風圧発生装置60は、排出口62および複数の吸引口61を含む。複数の吸引口61は、隣り合う加熱部52同士の間に一つずつ配置される。吸引口61から排出口62に向かって空気が吸引されることによって、吸引口61と紙媒体40との間に負圧(垂直抗力)が発生する。負圧の発生によって、紙媒体40は、複数のワイヤーロープ26の表面に押し付けられた(吸着された)状態で搬送されることができる。
【0054】
(ワイヤーロープ26a〜26n)
図5は、図3におけるV−V線に沿った矢視断面図である。ローラー21〜24(図2参照)に巻回された複数のワイヤーロープ26は、互いに所定の間隔C1〜C5を空けて並ぶように配置される。
【0055】
複数のワイヤーロープ26a〜26nうち、いずれか2本の隣り合うワイヤーロープ同士の間隔C2〜C5は、搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて、徐々に広がるように設定される。本実施の形態においては、複数のうち中央寄りに配置されたワイヤーロープ26e〜26jは、互いに平行に配置される。ワイヤーロープ26e〜26jのうち隣り合うワイヤーロープ同士の間の間隔C1は、搬送経路25(図2参照)の上流側および下流側において同一の値となっている。本実施の形態においては、間隔C1は、上流側(ローラー21上)および下流側(ローラー22上)の双方において、7mmである。
【0056】
一方、複数のうち外側寄りに配置されたワイヤーロープ26a〜26eのうち隣り合うワイヤーロープ同士の間隔C2〜C5は、搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて、徐々に広がるように設定される。複数のうち外側寄りに配置されたワイヤーロープ26j〜26nのうち隣り合うワイヤーロープ同士の間隔C2〜C5も、搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて、徐々に広がるように設定される。本実施の形態においては、間隔C2〜C5は、上流側(ローラー21上)において7mmであり、下流側(ローラー22上)において10mmである。間隔C1<間隔C2<間隔C3<間隔C4<間隔C5の関係が満足するように設定されていてもよい。なお、本実施の形態においては間隔C1を搬送経路25の上流側と下流側とで同一の値としたが、間隔C2〜間隔C5と同様に、間隔C1を搬送経路25の上流側から下流側に向かうにつれて徐々に広がるようにしてもよい。
【0057】
図6は、図3におけるVI−VI線に沿った矢視断面図である。図6においては、搬送経路25(図2参照)における比較的上流側の部分が示されている。図6に示すように、紙媒体40に浮き部40Fが発生した状態で、紙媒体40が複数のワイヤーロープ26によって搬送される場合がある。
【0058】
隣り合うワイヤーロープ26同士の間の間隔が搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて徐々に広がるように設定された部分においては、ワイヤーロープ26から紙媒体40に対して、矢印AR20方向の摩擦力が付与される。矢印AR20方向の摩擦力とは、紙媒体40が搬送される方向に対して垂直な方向(横方向)である。
【0059】
紙媒体40は、間隔が搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて徐々に広がるように設定されたワイヤーロープ26に対して摺接しつつ、搬送経路25(図2参照)上を上流側から下流側に向かって搬送される。紙媒体40は、徐々に横方向に広げられるようにして搬送される。
【0060】
図7は、図3におけるVII−VII線に沿った矢視断面図である。図7においては、搬送経路25(図2参照)における比較的下流側の部分が示されている。図7に示すように、紙媒体40に矢印AR20方向の摩擦力が付与されることによって、搬送経路25(図2参照)の下流側においては、浮き部40F(図6参照)は消滅する(またはほとんど消滅する)。紙媒体40は、複数のワイヤーロープ26に対して均等に接触した状態で搬送されることが可能となる。
【0061】
定着装置50よりも下流側にたとえば紙媒体40の排出部または他の定着部が設けられる場合であっても、紙媒体40は、しわなどが発生しない状態で排出部または他の定着部に導入されることが可能となる。
【0062】
(作用・効果)
搬送装置20を備える定着装置50、および定着装置50を備える湿式画像形成装置100によれば、加熱部52によって紙媒体40が両面側から加熱される。複数のワイヤーロープ26と紙媒体40との相互の接触面積は、ゴムベルトを用いて紙媒体40を搬送する場合に比べて極めて小さい。加熱部52による加熱によって、紙媒体40の内部に浸透したキャリア液は揮発され、いわゆる裏うつり現象の発生は効果的に抑制されることができる。
【0063】
ここで、定着部10における定着ローラー11,12は、紙媒体40との接触時間が短いため、定着ローラー11,12のみを用いてキャリア液を揮発させることは困難である。定着ローラー11,12の温度を上げたり、定着ローラー11,12の直径を大きくすることでキャリア液を揮発させることも考えられるが、この場合、溶融したトナー粒子が定着ローラー11,12の表面に付着し易くなる(いわゆるオフセット現象が発生し易くなる)。
【0064】
本実施の形態においては、定着部10の下流に搬送装置20および加熱部52が配置される。紙媒体40は、定着部10によってある程度昇温された状態で、対向配置される加熱部52の間を通過する。加熱部52がキャリア液を揮発させる際には、定着部10において紙媒体40に付与された熱エネルギーが活用される。加熱部52がキャリア液を揮発させるために必要なエネルギーが少なくて済むため、定着装置50はエネルギー効率がよい。
【0065】
加熱部52には、遠赤外ヒーター51において発生した熱を、紙媒体40の表面に温風として吹き付ける送風ファンなどが設けられてもよい。温風によって、紙媒体40の内部に浸透したキャリア液はさらに揮発されることが可能となる。
【0066】
また、風圧発生装置60としては、吸引口61が空気を吸引することによって紙媒体40を複数のワイヤーロープ26に吸着させるほかに、紙媒体40の表面側から空気を吹き付けることによって紙媒体40を複数のワイヤーロープ26に押し付けるように構成されてもよい。
【0067】
(比較例)
図8を参照して、比較例における搬送装置20Zとして、複数のワイヤーロープ26が互いに平行に配置されたとする。この場合、紙媒体40には、紙媒体40が搬送される方向に対して垂直な方向(横方向)の力は発生しない。紙媒体40が複数のワイヤーロープ26によって搬送される際、紙媒体40は、複数のワイヤーロープ26に対して広がるように摺接することはない。紙媒体40に浮き部40F(図6参照)が発生したとしても、浮き部40Fが発生したままの状態で紙媒体40は搬送される。
【0068】
これに対して、本実施の形態(実施の形態1)における搬送装置20(図3等参照)によれば、紙媒体40は、徐々に横方向に広げられるようにして搬送される。紙媒体40は、しわなどが発生しない状態で排出部等から排出されることが可能となる。したがって本実施の形態における搬送装置20は、いわゆるカット紙を搬送する際に、特に有効に活用されることができる。
【0069】
[実施の形態2]
図9を参照して、本実施の形態における搬送装置20Aについて説明する。図9は、搬送装置20Aを示す平面図である。
【0070】
搬送装置20Aにおいては、複数のワイヤーロープ26のうちワイヤーロープ26a〜26jは、互いに平行に配置される。ワイヤーロープ26a〜26jのうち隣り合うワイヤーロープ同士の間の間隔は、搬送経路25(図2参照)の上流側および下流側において同一の値となっている。ワイヤーロープ26a〜26jの本数としては、複数のワイヤーロープ26の全体としての約2/3である。
【0071】
複数のうち一方の外側寄りに配置されたワイヤーロープ26k〜26nのうち隣り合うワイヤーロープ同士の間隔は、搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて、徐々に広がるように設定される。ワイヤーロープ26k〜26nの本数としては、複数のワイヤーロープ26の全体としての約1/3である。ワイヤーロープ26k〜26nのうち隣り合うワイヤーロープ同士の間隔は、上流側(ローラー21上)において7mmであり、下流側(ローラー22上)において10mmである。当該構成によって、搬送経路25上を搬送される紙媒体40(図2参照)は、一方の外側寄りに配置されたワイヤーロープ26nに向かって斜め方向に搬送される。
【0072】
搬送経路25(図2参照)の側方(ワイヤーロープ26nの外側)には、紙媒体40(図2参照)の斜め方向における移動量が所定の値を超えないように、斜め方向に搬送される紙媒体40の移動を規制する板状のガイド部材70が設けられる。
【0073】
搬送装置20Aによれば、紙媒体40は、間隔が搬送経路25(図2参照)の上流側から下流側に向かうにつれて徐々に広がるように設定されたワイヤーロープ26に対して摺接しつつ、搬送経路25(図2参照)上を上流側から下流側に向かって搬送される。紙媒体40は、徐々に横方向に広げられるようにして搬送される。紙媒体40は、しわなどが発生しない状態で搬送されることが可能となる。
【0074】
さらに、紙媒体40が複数のワイヤーロープ26によって搬送される際、紙媒体40はガイド部材70に接近するように誘導される。紙媒体40の端部は、ガイド部材70に当接する。紙媒体40がガイド部材70に当接することによって、紙媒体40の向き(傾き)は所定の角度に矯正される。紙媒体40は、所定の角度で定着装置50から排出されることが可能となる。
【0075】
[実施の形態3]
図10および図11を参照して、本実施の形態における搬送装置20Bについて説明する。図10は、搬送装置20Bを示す平面図である。図11は、図10におけるXI−XI線に沿った矢視断面図である。
【0076】
図10に示すように、搬送装置20Bにおいては、吸引口61とは独立して制御される吸引口63が、ガイド部材70側に配置される。ガイド部材70の上方には、制御部74を内蔵する反射型センサー72(検出装置)が設けられる。制御部74は、風圧発生装置60(図2参照)に接続される。制御部74により風圧発生装置60の駆動量が制御されることによって、吸引口63からの空気の吸引量が調節されたり、吸引口63からの空気の吸引が停止されたりする。
【0077】
本実施の形態においても、搬送経路25上を搬送される紙媒体40(図2参照)は、一方の外側寄りに配置されたワイヤーロープ26nに向かって斜め方向に搬送される。
【0078】
反射型センサー72は、投光部76からのセンサー光77を受光部78が受光することによって、斜め方向(図11における矢印AR22参照)に移動する紙媒体40が斜め方向における所定の位置に到達したことを検出する。本実施の形態における反射型センサー72は、紙媒体40の端部がガイド部材70に当接したことを検出する。
【0079】
制御部74は、紙媒体40の端部がガイド部材70に当接したことを反射型センサー72が検出したことに基づいて、紙媒体40の斜め方向(図11における矢印AR22参照)における移動量が所定の値を超えないように、吸引口63からの空気の吸引量を調節する。吸引口63からの空気の吸引量が低減される(または吸引口63からの空気の吸引が停止される)ことによって、紙媒体40は、斜め方向(矢印AR22参照)には移動しなくなり、ローラー21側からローラー22側に向かって真っ直ぐ搬送されることとなる。
【0080】
搬送装置20Bによれば、紙媒体40がガイド部材70に当接することによって、紙媒体40の向き(傾き)は所定の角度に矯正される。紙媒体40がガイド部材70に対して過度に当接することは、制御部74によって風圧発生装置60(図2参照)が制御されることにより抑制されている。紙媒体40がガイド部材70に対して過度に当接することによって、紙媒体40が折れ曲がったり、紙媒体40にしわ等が発生したりすることは防止される。
【0081】
[実施の形態4]
図12を参照して、本実施の形態における定着装置50Aについて説明する。上述の実施の形態1〜3の定着装置50(図2参照)においては、定着部として、搬送装置20の上流側に定着部10が設けられる。本実施の形態の定着装置50Aにおいては、定着部として、搬送装置20の下流側に定着部30がさらに設けられる。搬送装置20と定着部30との間には、表面が水平に保持されたガイド板16が設けられるとよい。
【0082】
定着部30は、互いに間隔を空けて対向するように配置された定着ローラー31および定着ローラー32を含む。定着ローラー31は、中空状に形成されたローラーである。定着ローラー31の表面には、厚さが2mm〜5mmのゴム層が設けられる。定着ローラー31の内部には、加熱用のヒーター33が設けられる。
【0083】
定着ローラー32も、中空状に形成されたローラーである。定着ローラー32の表面にも、厚さが2mm〜5mmのゴム層が設けられる。定着ローラー32の内部には、加熱用のヒーター34が設けられる。
【0084】
定着ローラー31は、矢印AR31方向に回転する。定着ローラー32は、矢印AR32方向に回転する。搬送装置20によって搬送された紙媒体40は、定着ローラー31および定着ローラー32の間を通過するようにさらに搬送される。紙媒体40は、定着ローラー31および定着ローラー32によって加熱および加圧される。
【0085】
紙媒体40の表面のトナー粒子は、定着ローラー31および定着ローラー32の間を通過することによって、トナー画像として紙媒体40の表面にさらに定着する。その後、紙媒体40は定着部30から排出される。
【0086】
定着部10によって紙媒体40に定着されたトナー画像が十分な定着強度を有していれば、上述の実施の形態1〜3のように定着部30は設けられなくてもよい。定着強度が不足している場合には、定着部30を用いることによって、トナー画像としての十分な定着強度を得ることが可能となる。
【0087】
[実施例1・比較例1]
図13を参照して、実施例1およびこれに対する比較例1について説明する。実施例1としては、上述の実施の形態1の態様に基づく搬送装置20(図2〜図7参照)および定着装置50(図2参照)(定着部として定着部10を備えるもの)を使用した。比較例1としては、上述の比較例(図8参照)に基づく搬送装置20Zおよび定着装置50(図2参照)(定着部として定着部10を備えるもの)を使用した。
【0088】
以上の条件の下、A3サイズの紙媒体40を250枚搬送した。紙媒体40としては、王子製紙株式会社製のOKトップコート+(トップコート:登録商標)(単位面積当りの重量127.9g/m)を用いた。搬送装置20および搬送装置20Zの各々の終端における紙媒体40の状態を目視で確認し、紙媒体40がワイヤーロープ26から浮いた部分を有する状態で搬送されてきた枚数を、異常搬送として計数した。
【0089】
その結果、図13に示すように、実施例1によれば、異常搬送の発生頻度は、250枚中の0枚であった。一方、比較例1によれば、異常搬送の発生頻度は、250枚中の約50枚であった。したがって、上述の実施の形態1(図2〜図7参照)によれば、紙媒体40は、しわなどが発生しない状態で排出されることが可能であることがわかる。
【0090】
[実施例2・比較例2]
図14を参照して、実施例2およびこれに対する比較例2について説明する。実施例2としては、上述の実施の形態2の態様に基づく搬送装置20A(図9参照)および上述の実施の形態4の態様に基づく定着装置50A(図12参照)(定着部として定着部10および定着部30を備えるもの)を使用した。比較例2としては、上述の比較例(図8参照)に基づく搬送装置20Zおよび定着装置50A(図12参照)(定着部として定着部10および定着部30を備えるもの)を使用した。
【0091】
以上の条件の下、A3サイズの紙媒体40を250枚搬送した。紙媒体40としては、王子製紙株式会社製のOKトップコート+(トップコート:登録商標)を用いた。紙媒体40としては、単位面積当りの重量が、127.9g/mであるものと、79.1g/mであるものとを用いた。定着部30から排出された紙媒体40の状態を確認した。
【0092】
その結果、図14に示すように、実施例2によれば、紙媒体40が127.9g/mである場合については、紙媒体40に紙しわが発生した頻度は、250枚中の0枚であった。紙媒体40が79.1g/mである場合については、紙媒体40に紙しわが発生した頻度は、250枚中の約5枚であった。一方、比較例2によれば、紙媒体40が127.9g/mである場合については、紙媒体40に紙しわが発生した頻度は、250枚中の約120枚であった。紙媒体40が79.1g/mである場合については、紙媒体40に紙しわが発生した頻度は、250枚中の約210枚であった。比較例2については、ガイド部材70が用いられていないため、紙媒体40は、傾きが設計どおりとならない状態で搬送された結果、紙しわが多く発生したものと考えられる。
【0093】
したがって、上述の実施の形態2の態様に基づく搬送装置20A(図9参照)および上述の実施の形態4の態様に基づく定着装置50A(図12参照)によれば、ガイド部材70を用いることによって、紙媒体40は、しわなどが発生しない状態で排出されることが可能であることがわかる。
【0094】
[実施例3]
図14を再び参照して、実施例3について説明する。実施例3としては、上述の実施の形態3の態様に基づく搬送装置20B(図10,図11参照)および上述の実施の形態4の態様に基づく定着装置50A(図12参照)(定着部として定着部10および定着部30を備えるもの)を使用した。
【0095】
以上の条件の下、A3サイズの紙媒体40を250枚搬送した。紙媒体40としては、王子製紙株式会社製のOKトップコート+(トップコート:登録商標)を用いた。紙媒体40としては、単位面積当りの重量が、127.9g/mであるものと、79.1g/mであるものとを用いた。定着部30から排出された紙媒体40の状態を確認した。
【0096】
その結果、図14に示すように、実施例3によれば、紙媒体40が127.9g/mである場合については、紙媒体40に紙しわが発生した頻度は、250枚中の0枚であった。紙媒体40が79.1g/mである場合についても、紙媒体40に紙しわが発生した頻度は、250枚中の0枚であった。
【0097】
したがって、上述の実施の形態3の態様に基づく搬送装置20B(図10,図11参照)および上述の実施の形態4の態様に基づく定着装置50A(図12参照)によれば、ガイド部材70および制御部74等を用いることによって、紙媒体40は、しわなどが発生しない状態で確実に排出されることが可能であることがわかる。
【0098】
以上、本発明に基づいた実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。たとえば、上述の実施の形態においては、感光体ドラム41(図1参照)の周囲に1つの液体現像装置44が配置される。液体現像装置44は、カラー画像形成のために複数準備されてもよい。カラー現像の方式および中間転写の有無などは、任意に設定される。カラー現像の方式および中間転写の有無などに合わせて、感光体ドラム41および液体現像装置44などは任意の構成に配置されることができる。したがって、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
10,30 定着部、11,12,31,32 定着ローラー、13,14,33,34 ヒーター、15,16 ガイド板、20,20A,20B,20Z 搬送装置、21,22,23,24 ローラー、21G 円周溝部、21R 円柱部、21T 回転軸部、25 搬送経路、26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h,26i,26j,26k,26l,26m,26n ワイヤーロープ、40 紙媒体、40F 浮き部、41 感光体ドラム、42 帯電装置、43 露光装置、44 液体現像装置、45 中間転写ローラー、46,48 クリーニング装置、47 二次転写ローラー、49 トナー画像、50,50A 定着装置、51 赤外ヒーター、52 加熱部、53 放射板、60 風圧発生装置、61,63 吸引口、62 排出口、70 ガイド部材、72 反射型センサー、74 制御部、76 投光部、77 センサー光、78 受光部、100 湿式画像形成装置、AR22,AR40,AR43 矢印、C1,C2,C3,C4,C5 間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路の上流側から下流側に向かって紙媒体を搬送する搬送装置であって、
互いに間隔を空けて並ぶように配置され、前記紙媒体を支持しつつ支持した前記紙媒体を前記搬送経路上において搬送する複数のワイヤーロープを備え、
複数のうちいずれか2本の隣り合う前記ワイヤーロープ同士の前記間隔は、前記上流側から前記下流側に向かうにつれて徐々に広がるように設定される、
搬送装置。
【請求項2】
複数のうち中央寄りに配置された前記ワイヤーロープは、互いに平行に配置され、
複数のうち外側寄りに配置された前記ワイヤーロープは、隣り合う前記ワイヤーロープ同士の前記間隔が、前記上流側から前記下流側に向かうにつれて徐々に広がるように配置される、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
複数のうち隣り合う前記ワイヤーロープ同士の前記間隔は、前記搬送経路上を搬送される前記紙媒体が、一方の外側寄りに配置された前記ワイヤーロープに向かって斜め方向に搬送されるように設定され、
前記搬送経路の側方には、前記紙媒体の前記斜め方向における移動量が所定の値を超えないように、前記斜め方向に搬送される前記紙媒体の移動を規制するガイド部材が設けられる、
請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送経路上を搬送される前記紙媒体を複数の前記ワイヤーロープに対して押し付ける風圧発生装置と、
前記斜め方向に移動する前記紙媒体が前記斜め方向における所定の位置に到達したことを検出する検出装置と、
前記紙媒体が前記所定の位置に到達したことを前記検出装置が検出したことに基づいて、前記紙媒体の前記斜め方向における前記移動量が所定の値を超えないように前記風圧発生装置の駆動量を制御する制御部と、をさらに備える、
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の前記搬送装置と、
湿式電子写真方式によって前記紙媒体に転写されたトナー画像を前記紙媒体上に定着させる定着部と、を備える、
定着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の定着装置を備える、
湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−52950(P2013−52950A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191434(P2011−191434)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】