説明

搬送装置及び基板処理装置

【課題】生産性を向上させることができ、かつメンテナンスが容易な搬送装置及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板4,5を搬送する搬送手段と、基板4,5が搬送される搬送方向と交差する方向の基板4,5の移動を規制する規制10とを有する搬送装置において、
規制装置10は、基板4,5を通過させる幅を回転角によって変更させることができる、回動可能に支持された、回転軸1、第1のサイドローラ2及び第2のサイドローラ3からなる軸部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送材を搬送する搬送装置、及び基板を被搬送材とする基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置においては、生産品種の変更に際して幅寸法の異なる基板を処理する場合がある。また、適格な処理を行うためには、基板の幅方向への移動を規制する必要がある。
【0003】
幅方向の移動を規制するための機構としては、サイドローラを基板の搬送経路の両側に設けたものが挙げられる。この機構は、サイドローラに基板の側端を当接させることで基板の幅方向の移動を規制し、基板のサイズが変更されると、基板のサイズに合わせてサイドローラを搬送経路の幅方向に平行移動させるものである。
【0004】
この他、引用文献1には、傾斜させた搬送ローラを用い、その搬送ローラの下位側に配置されたサイドローラを基板の幅に合わせてボールネジ機構により移動させる構成の位置保持手段が開示されている。
【特許文献1】特開平09−232268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サイドローラを幅方向に平行移動させることでその間隔を変更する構成の場合、サイドローラを基板の幅に合わせてその位置を調整するのに時間を要していた。その結果、生産に寄与しない無駄時間が多くなり、生産性が向上しない場合があった。
【0006】
一方、引用文献1に開示された方式の場合、ボールネジ機構が摺動部を有するため、定期的なメンテナンスが要求される。また、ボールネジ機構が基板処理装置内に配置されていることから、注油等、メンテナンスも煩雑となる。
【0007】
そこで、本発明は、生産性を向上させることができ、かつメンテナンスが容易な搬送装置及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の搬送装置は、被搬送材を搬送する搬送手段と、被搬送材が搬送される搬送方向と交差する方向の被搬送材の移動を規制する規制手段とを有する搬送装置において、規制手段は、被搬送材を通過させる幅を回転角によって変更させることができる、回動可能に支持された軸部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、規制手段が、被搬送材を通過させる幅を変更させることができる回動可能に支持された軸部材を有するので、生産性を向上させることができ、かつメンテナンスが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に本実施形態の基板処理装置の全体の構成を示す模式的な側面図を示す。
【0011】
基板処理装置100は、基板投入部81と、処理槽部82〜86と、乾燥処理部87と、基板取出部88とを有し、これらが、基板4が搬送されていく上流側からこの順に配列されている。
【0012】
基板投入部81、処理槽部82〜86、乾燥処理部87及び基板取出部88はいずれも被搬送材である基板4の搬送手段として、ローラコンベアが適用されている。このローラコンベアは、基板4の搬送方向(図中矢印A方向)と直交する方向に回転軸を有する複数の搬送ローラ7が所定のピッチで搬送方向に並設されてなるものである。搬送ローラ7の配列ピッチは、基板4の搬送方向の寸法よりも小さくなるように設定されている。搬送ローラ7が不図示の駆動手段により回転駆動(図1においては時計回り方向に回転)されることで、基板4は、搬送ローラ7上を矢印A方向に向けて搬送されることとなる。
【0013】
基板投入部81は、前工程から不図示のコンベア等により移送されてきた基板4が投入される領域である。基板投入部81の搬送ローラ7上に移送された基板4は、搬送ローラ7が回転駆動されることで、基板4を処理槽部82へと導入する。
【0014】
処理槽部82〜86内においては、基板4に対して所望の処理が施される。基板4は搬送ローラ7により処理槽部82から処理槽部86まで各処理槽内を矢印A方向に搬送される。その間、処理槽部82〜84において所定の薬液が基板4に表面に供給される。処理槽部84を通過した後、処理槽85、86においては、基板4に純水等を供給し、基板4の表面の洗浄がなされる。処理槽85では純水が低圧で基板4に噴射され、処理槽86では純水が高圧で基板4に対して噴射される。
【0015】
純水により洗浄された基板4は、搬送ローラ7により、さらに乾燥処理部87内へと搬送され、乾燥処理部87では、基板4の上下に配置されたスリット状の開口から窒素等の気体が噴出され、基板4を乾燥させる。
【0016】
次いで、基板4は、乾燥処理部87から搬送ローラ7により基板取出部88へと搬送される。基板取出部88に搬送されてきた基板4は不図示のコンベア等により次工程へと移送される。
【0017】
なお、上述した基板4の処理例は一例であり、本発明はこのような処理内容に限定されるものではない。
【0018】
次に、図2(a)に本実施形態の基板処理装置における規制装置の一部拡大図、図2(b)に図2(a)のA−A線における矢視図を示す。また、図3は第1のサイドローラによる規制状態を示す規制装置の斜視図であり、図4は第2のサイドローラによる規制状態を示す規制装置の斜視図である。
【0019】
図2(a)に示すように、並設された搬送ローラ7の間には、基板4が搬送される搬送方向(矢印A方向)と交差する方向、すなわち、基板4の幅方向(図2(b)中矢印B方向)の移動を規制する規制装置10が配置されている。この規制装置10は、回転軸1と、第1のサイドローラ2と、第2のサイドローラ3とを有する軸部材を備えている。回転軸1は、図2(b)に示すように、基板4の搬送経路の幅方向に延在しており、その両端部は基板処理装置100の側壁8において、軸受け9により回転可能に支持されている。この回転軸1は不図示の駆動手段により回転し、所定の位置で固定される。また、回転軸1上には、一対の規制部である第1のサイドローラ2が設けられている。第1のサイドローラ2は回転軸1に固定されている軸部2bと、軸部2bに回転可能に取り付けられたローラ部2aを有する。ローラ部2aは緩衝特性に優れ、かつ摩擦係数の大きいゴムや柔軟性を有する樹脂を適用することができる。これにより、ローラ部2aに基板4の側部4aが当接しても基板4を損傷させることなく、ローラ部2aを軸部2b周りに確実に連れ回りさせることができる。回転軸1の高さ方向の位置は、基板4が通過する高さより下方に配置されている。
【0020】
このような第1のサイドローラ2が、互いに回転軸1の同一回転角上に間隔W1を空けて配置されている。これら一対の第1のサイドローラ2の間隔W1は、基板4の幅w1に僅かな遊び代を加えた寸法であり、基板4の幅w1よりもわずかに広い。
【0021】
また、この回転軸1上には第1のサイドローラ2と同じ構造を有する第2のサイドローラ3が一対の規制部として互いに回転軸1の同一回転角上に間隔W2を空けて配置されている。一対の第2のサイドローラ3の間隔W2は、基板4の幅w1よりも狭い幅w2の基板に対応しており、幅w2に僅かな遊び代を加えた寸法であり、基板5の幅w2よりもわずかに広い。第2のサイドローラ3は、図2(a)に示すように、第1のサイドローラ2の反対側に配置されている。すなわち、第1のサイドローラ2が配置されている位置を回転角α=0°の位置とすると、第2のサイドローラ3は、回転角α=180°の位置に配置されている。
【0022】
次に、規制装置10による基板の幅方向の移動の規制方法について説明する。
【0023】
まず、図3に示すように幅w1の基板4が基板処理装置により処理される場合について説明する。
【0024】
この場合、回転軸1は、第1のサイドローラ2が上方に配置され、第2のサイドローラ3が下方に配置されるように回動させられる。回転軸1は、第1のサイドローラ2の軸部2bの軸線と基板4の主面とが直交した位置で固定される。これにより、第1のサイドローラ2のローラ部2aのローラ面は、基板4の側部4aと当接する際、側部4aに対して垂直に当接可能となる。一方、第1のサイドローラ2に対して回転角が180°ずれた位置の第2のサイドローラ3は、基板4と干渉しない位置に退避しているため、基板4の搬送を阻害することはない。
【0025】
次に、図4に示すように幅w2の基板5が基板処理装置により処理される場合について説明する。
【0026】
この場合、回転軸1を図3に示す状態から180°回転させて、第2のサイドローラ3を上方に配置し、第1のサイドローラ2を下方に配置させる。回転軸1はこの位置で固定される。これにより、基板の搬送経路の幅はW1からW2へと変更される。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、規制装置10の回転軸1を回動させるだけで、基板を通過させる幅を変更させることができる。このため、本発明によれば、生産品種数が増大しても生産に寄与しない装置の停止時間を短縮できるので、生産性の向上が可能である。また、規制装置10は、基本的な構成が、回動可能に支持された回転軸1、この回転軸1に設けられた第1のサイドローラ2及び第2のサイドローラ3のみからなる。また、規制装置10は、基板処理装置100内にボールネジ軸等、注油を要する構造を有するものでもない。よって、本発明の規制装置10はメンテナンスを極めて容易なものとすることができる。
(第2の実施形態)
次に、図5(a)に本実施形態の基板処理装置における規制装置の一部拡大図、図5(b)に図5(a)のB−B線における矢視図を示す。
【0028】
第1の実施形態では、2組のサイドローラにより、2種類の幅の基板に対応可能な規制装置10について説明した。本実施形態では、4組のサイドローラ24〜26を有し、4種類の幅の基板に対応可能な規制装置20について説明する。なお、規制装置20の基本的な構成は、第1実施形態の規制装置10と同様であるため、異なる点についてのみ説明するものとする。
【0029】
本実施形態の規制装置20は、4組のサイドローラ24〜26が、回転軸31上の互いに異なる回転角となる位置に配置されている。第1のサイドローラ23が配置されている位置を回転角α=0°の位置とすると、第2のサイドローラ24は回転角α=90°、第3のサイドローラ25は回転角α=180°、第4のサイドローラ25は回転角α=270°の位置にそれぞれ配置されている。
【0030】
また、各サイドローラ24〜26の間隔も互いに異なる。第1のサイドローラ23の間隔W3が最も広く、第2のサイドローラ24の間隔W4、第3のサイドローラ24の間隔W5の順に狭くなり、第4のサイドローラ24の間隔W6が最も狭い。
【0031】
以上のような構成である本実施形態の規制装置20は、4種類の幅の基板に対応可能である。例えば、第1のサイドローラ23の間隔W3に応じた基板を処理した後、第2のサイドローラ24の間隔W4に対応した基板を処理する場合、回転軸31を図5(a)中反時計回りに90°回動させた後、固定する。これにより、基板を通過させる幅を間隔W3から間隔W4へと変更することができる。同様に、間隔W3から間隔W5に変更するときは図5(a)中反時計回りに180°回動させる。また、間隔W3から間隔W6に変更するときは図5(a)中反時計回りに270°回動させる、あるいは、時計回りに90°回動させる。
【0032】
なお、各サイドローラ24〜26のうちのいずれかが基板の幅方向の移動を規制するために基板の搬送経路の側方に配置されている状態においては、他のサイドローラは搬送経路から退避した位置に配置されている。よって、他のサイドローラが搬送中の基板と干渉することはない。
【0033】
以上のように、本実施形態も第1の実施形態と同様に、規制装置20の回転軸31を回動させるだけで、基板を通過させる幅を変更させることができる。このため、本実施形態も第1の実施形態と同様に、生産性の向上が可能であるとともに、メンテナンスを極めて容易なものとすることができる。
【0034】
なお、上述に各実施形態では、回転軸の高さ方向の位置は、基板が通過する位置よりも下方に配置された例を示した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、基板の上方に配置されているものであってもよい。また、回転軸は、基板の搬送方向と交差する方向に延在し、かつ基板の搬送経路を横断する1本の軸として示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、回転軸は、基板の搬送経路を横断するものではなく、搬送経路の両側にそれぞれ片持ち支持されたものとしてもよい。このような構成とすることで、回転軸が各基板の処理の際に邪魔にならないようにすることができる。
【0035】
また、上述した各実施形態では、規制手段は、回転角によって被搬送材を通過させる幅が変わる軸部材を、回転軸の両端部であって、回転角の異なる位置に設けた複数のサイドローラにより構成したが本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、ローラが設けられた位置にローラ機構を持たない、棒状の部材等を配置してもよい。または回転軸の両端部に偏心させた円盤の板部材を配置してもよく、この場合、基板の幅に無段階で対応することができる。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。
(実施例1)
本実施例では、図1に示される基板処理装置に、第1の実施形態で説明した図2に示す規制装置10を適用し、生産品種を変更するのに要する時間について測定を行った。その結果、切換え時間は約3分であった。このように、従来、切換え時間に約30分要していたものが、約3分と大幅に短縮できることが確認された。
(実施例2)
本実施例では、図1に示される基板処理装置に、第2の実施形態で説明した図5に示す規制装置20を適用し、生産品種を変更するのに要する時間について測定を行った。すなわち、本実施例では、生産品種を4品種取り扱う際に、品種変更に要する時間の累計時間を測定した。その結果、品種変更に要する時間の累計時間は6分であった。つまり、従来、1回の品種変更だけで約30分要していたのに対し、本実施例では、3回の品種変更に要する累計時間のほうが短い。このように、本発明を適用することで、生産品種数が増大しても生産に寄与しない装置の停止時間を短縮できるので、生産性の向上が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態における基板処理装置の全体の構成を示す模式的な側面図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態における規制装置の一部拡大図であり、(b)は図2(a)のA−A線における矢視図である。
【図3】第1のサイドローラにより、基板の幅方向への移動を規制している状態を示す模式的な斜視図である。
【図4】第2のサイドローラにより、基板の幅方向への移動を規制している状態を示す模式的な斜視図である。
【図5】(a)は、本発明の第2の実施形態における規制装置の一部拡大図であり、(b)は図5(a)のA−A線における矢視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 回転軸
2 第1のサイドローラ
2a ローラ部
2b 軸部
3 第2のサイドローラ
4、5 基板
4a 側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送材を搬送する搬送手段と、前記被搬送材が搬送される搬送方向と交差する方向の前記被搬送材の移動を規制する規制手段とを有する搬送装置において、
前記規制手段は、前記被搬送材を通過させる幅を回転角によって変更させることができる、回動可能に支持された軸部材を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記軸部材は、一対の規制部であって前記規制部の間隔が異なる一対の規制部を複数有し、各前記一対の規制部は異なる前記回転角となる位置にそれぞれ配置されている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記規制部は、ローラ機構を備えている請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
被搬送材である基板を搬送しながら前記基板に処理を施す基板処理装置において、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の搬送装置を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−42902(P2010−42902A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207943(P2008−207943)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】