説明

搬送車両および運転支援装置

【課題】パレットに対して搬送車両を進行させるべき方向を運転者が容易に認識できる搬送車両および運転支援装置を提供すること。
【解決手段】周囲状況画面では、搬送車両1の周囲状況として、第1レーダレーダ5A(又は、第2レーダレーダ5B)の走査により障害物が検出されなかった障害物非検出エリアAと、障害物の影となって測定が行えない検知不可能エリアBとが、それぞれ異なる表示態様で表示される。例えば、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアBとが、運転者が区別可能に、別々の色で表示される。これにより、搬送車両1がパレット100の架台部100aの下に進入する場合に、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能な進入経路を、運転者が容易に見いだすことができるので、パレット100に対して搬送車両1を進行させるべき方向を運転者が容易に認識できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車両および運転支援装置に関し、特に、パレットに対して搬送車両を進行させるべき方向を運転者が容易に認識できる搬送車両および運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大型鋼材などの重量物を載置する台部と、その台部の両側に設けられた台部を支持する脚部とにより構成されるパレットを搬送する搬送車両が知られている。搬送車両によりパレットを搬送する場合には、運転者が、搬送車両の荷台を下降させた状態で車両を走行させて、脚部が設けられていないパレットの前面側(又は、後面側)から台部の下に進入し、台部の下面全体を荷台により支持できる位置まで車両を進めて停車させる。その後、パレットの両側の脚部が地面から浮き上がるまで荷台を上昇させて車両にパレットを積載し、その状態で車両を走行させて目的地までパレットを搬送する。
【0003】
ここで、パレットにおける両脚部間の幅は、一般的に搬送車両の荷台幅よりも、わずかに広く(例えば、20cm)設計されている。そのため、運転者はパレットの台部の下に搬送車両を進入させる場合、搬送車両の荷台幅に対して余裕のないパレットの両脚部間に、搬送車両を進入させなければならず、運転者は搬送車両をパレットに衝突させずに台部の下に進入させることに、多大な労力を要していた。
【0004】
これに対し、次の特許文献1には、パレットにレーザ光を照射し、その反射光から搬送車両とパレットとの相対位置や、搬送車両の進行方向を基準としたパレットの傾きを、数式を用いて算出し、その算出結果を運転席のディスプレイに表示する搬送車両が開示されている。この搬送車両によれば、ディスプレイに算出結果として表示される値が所定の許容範囲に収まるように、運転者が搬送車両の進行方向を調整することにより、運転者がパレットに対する搬送車両の進行方向を合せられるため、搬送車両をパレットの台部の下に進入させる場合の運転者の労力が軽減される。
【0005】
また、次の特許文献2には、パレットにレーザ光を照射して、その反射光に基づいてパレットを左右対称に分ける中心線を算出し、そのパレットの中心線と、車両を左右対称に分ける中心線とが同一直線上に位置する場合に、ブザーを鳴らしたりランプを点灯する搬送車両が開示されている。この搬送車両によれば、ブザーやランプによる報知を手がかりとして、運転者が搬送車両の進行方向を調整することにより、運転者がパレットに対する搬送車両の進行方向を合せられるため、搬送車両をパレットの台部の下に進入させる場合の運転者の労力が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3481363号公報
【特許文献2】特許第4330050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された搬送車両では、数式により算出された算出結果がディスプレイに表示されるだけなので、その算出結果である値からは、搬送車両をパレットの台部の下へ進入させるための進入経路を運転者が認識することは困難である。また、特許文献2に開示された搬送車両では、パレットを左右対称に分ける中心線と、車両を左右対称に分ける中心線とが同一直線上に位置したことを、ブザーやランプで運転者に報知するだけなので、やはり、搬送車両をパレットの台部の下へ進入させるための進入経路を運転者が認識することは困難である。よって、これらの搬送車両では、搬送車両をどの方向に進行させれば良いのか解りづらく、搬送車両をパレットの台部の下へ進入させる場合に、依然として運転者が労力を要するという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、パレットに対して搬送車両を進行させるべき方向を運転者が容易に認識できる搬送車両および運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
請求項1記載の搬送車両によれば、レーダ波放射手段により少なくとも搬送車両の進入方向を含む所定のエリアへレーダ波が放射されると、そのレーダ波の反射波に基づいて所定のエリアに存在する反射物までの距離および方向が検出手段により検出される。そして、その検出結果に基づいて、所定のエリアのうちレーダ波により検出可能なエリアを表す第1エリアと、脚部または脚部以外の反射物の存在によりレーダ波による検出が不可能なエリアを表す第2エリアとを区別して所定のエリアを表す画像が画像生成手段により生成され、その画像が表示手段に表示される。よって、搬送車両がパレットの台部の下に進入する場合には、表示手段に表示される第2エリアの形状からパレットの脚部を含む反射物の存在を示す領域と、第1エリアの形状から反射物が存在しない領域とを運転者に視覚的に認識させることができる。従って、パレットに対して搬送車両が走行可能な領域を運転者が容易に把握できるので、搬送車両をパレットの台部の下へ進入させることが可能な進入経路を運転者が容易に見いだすことができる。故に、パレットに対して搬送車両を進行させるべき方向を運転者が容易に認識できるという効果がある。
【0010】
請求項2記載の搬送車両によれば、請求項1の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、検出手段により検出される反射物が、パレットの脚部であると判別手段により判別されると、その反射物に対応する位置に所定のマークを付して所定のエリアを表す画像が画像生成手段により生成される。よって、表示手段に表示された画像を運転者が見た場合に、その画像に付された所定のマークから運転者がパレットの脚部の位置を直感的に認識できるので、パレットに対して搬送車両を進行させるべき方向を運転者がより容易に認識できるという効果がある。また、判別手段によって反射物がパレットの脚部であると判別されなければ所定のマークは付されないので、反射物に対応する位置に所定のマークが付されているか否かによって、運転者はその反射物がパレットの脚部であるか、それ以外であるかを容易に認識できる。よって、パレットの脚部以外の反射物が存在する場合に、パレットの脚部以外の反射物の存在を運転者が容易に認識できるという効果がある。
【0011】
請求項3記載の搬送車両によれば、請求項2の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、パレットは、一方の側部に設けられた脚部と他方の側部に設けられた脚部とが対をなし、且つ、複数対の脚部が設けられた構成であり、パレットの両側部で対となる配置の反射物が検出手段により検出された場合に、当該対となる配置の反射物が判別手段によりパレットの脚部であると判別される。よって、配置が対になっているかに関係なく、個別に脚部を検出するよりも、パレットの脚部を的確に検出できるので、所定のエリアを表す画像に対して、パレットの脚部が存在する位置に的確に所定のマークを付して表示手段に表示させることができる。従って、パレットに対して搬送車両を進行させるべき方向を運転者が的確に認識できるという効果がある。
【0012】
請求項4記載の搬送車両によれば、請求項3の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、判別手段によりパレットの脚部であると判別された、対となる反射物間の中間点が中間点取得手段により取得されると、その中間点に基づいて、パレットの両側部から等距離にある位置を表した中心線が中心線取得手段により取得される。そして、所定のエリアに対する搬送車両の両側面の位置を示す画像と、中心線取得手段により取得された中心線と平行であり、且つ、中心線からそれぞれ所定距離離隔した一対の直線とを付して所定のエリアを表す画像が画像生成手段により生成される。よって、搬送車両をパレットの台部の下に進入させる場合に、その通行可能な範囲の目安を運転者に認識させることができるという効果がある。
【0013】
請求項5記載の搬送車両によれば、請求項1から4のいずれかの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、画像上の距離と実際の距離との比を表す格子状の直線を付して所定のエリアを表す画像が画像生成手段により生成される。よって、運転者が搬送車両を目標位置まで進行させる場合に、進行方向に加えて、その進行距離を運転者が容易に認識できるという効果がある。
【0014】
請求項6記載の運転支援装置によれば、この運転支援装置を用いて搬送車両を運転することによって、請求項1記載の搬送車両と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、搬送車両およびパレットを側面から見た模式図であり、(b)は、搬送車両およびパレットを上面から見た模式図であり、(c)は、搬送車両およびパレットを背面(後方)から見た模式図である。
【図2】搬送車両の電気的構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】(a),(b)は共に、ICTに表示される画面の一例を示すイメージ図である。
【図4】ICTに表示される画面の一例を示すイメージ図である。
【図5】制御装置で実行される周囲状況表示処理を示すフローチャートである。
【図6】制御装置で実行されるパレット脚判別処理を示すフローチャートである。
【図7】測定結果メモリに記憶されている測定結果の概略を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、搬送車両1およびパレット100を側面から見た模式図であり、図1(b)は、搬送車両1およびパレット100を上面から見た模式図であり、図1(c)は、搬送車両1およびパレット100を背面(後方)から見た模式図である。
【0017】
図1においては、搬送車両1の左右方向を矢印Xで図示し、前後方向を矢印Yにより図示している。尚、以下の説明において、搬送車両1に設けられた第1運転室4A側に搬送車両1が進むことを、搬送車両1が前進すると記載し、搬送車両1に設けられた第2運転室4B側に搬送車両1が進むことを、搬送車両1が後進すると記載する。
【0018】
搬送車両1は、大型鋼材などの重量物が載置されるパレット100を搬送する車両であり、荷台2を下降させた状態で前進させてパレット100の架台部100aの下に進入し、その後、荷台2を上昇させてパレット100を積載し目的地まで走行する。この搬送車両1は、運転者が搬送車両1を前進させて、又は、後進させて搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合に、搬送車両1の進行方向を含む周囲状況を画面に表示できるように構成されており、運転者がその画面を視認することで搬送車両1を進行させるべき方向を容易に認識できる。尚、搬送車両1の進行方向を含む周囲状況が表示される画面のことを、以後、周囲状況画面(図4参照)と称する。
【0019】
詳細については後述するが、パレット100の架台部100aの下に搬送車両1を進入させる場合、搬送車両1の走行可能な領域は狭く、運転者は、パレット100の左脚部100b1および右脚部100b2すれすれに搬送車両1を走行させなければならない。そのため、これまでは運転者が熟練者でないと、搬送車両1を安全かつ速やかにパレット100の架台部100aの下に進入させることが困難であった。
【0020】
本実施形態では、後述する周囲状況画面の中に、搬送車両1の周囲状況に加えて、搬送車両1がこれから走行することになる軌道KL,KR(図3(b)参照)と、パレット100の左脚部100b1および右脚部100b2において互いに向かい合う2つの側面のうち、左脚部100b1の側面の位置を示す線HL(図3(b)参照)と、右脚部100b2の側面の位置を示す線HRとを表示している。なお、左脚部100b1および右脚部100b2において互いに向かい合う2つの側面間の距離を、以後、パレット100の内幅Wと称し、線HL,HRのことを、パレットの内幅Wを示す線と称す。
【0021】
よって、運転者は、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRの間に、搬送車両1の軌道KL,KRが共に収まるように搬送車両1を進行させれば、衝突せずに安全に、パレット100の架台部100aの下に搬送車両1を進入させることができる。よって、経験の浅い運転手でも、搬送車両1を安全かつ速やかにパレット100の架台部100aの下に進入させることができる。
【0022】
まず、図1を参照して、搬送車両1の概略構成について説明し、その後、パレット100の概略構成について説明する。図1(a),(b)に示すように、搬送車両1は、荷台2と、第1運転室4Aと、第2運転室4Bと、走行装置6と、第1レーザレーダ5Aと、第2レーザレーダ5Bと、ステアリングセンサ装置13とを主に有して構成されている。なお、図1では、発明の理解を容易とするために、搬送車両1の主要な構成のみが図示されている。
【0023】
第1運転室4A,第2運転室4Bは、搬送車両1の前後方向の端部に設けられ、それぞれがハンドルや運転席等を備えている。第1運転室4Aが設けられている方を、搬送車両1の前方とし、第2運転室4Bが設けられている方を、搬送車両1の後方とする。尚、搬送車両1の運転に使用する運転室4A,4Bは、運転者が各運転室4A,4B内に設置されている運転室選択スイッチ(図示せず)を操作することにより、一方が選択されるように構成されている。
【0024】
第1運転室4Aには、搬送車両1の動作状態を管理するための車両管理PLC(Programmable Logic Controller)11と、周囲状況画面を作成するための制御装置40と、搬送車両1の動作状態を表示したり、制御装置40から出力される画像を表示するためのICT(Intelligent Control Terminal)10とが設けられている。
【0025】
尚、ICT10、車両管理PLC11、制御装置40の詳細については後述する。また、ICT10は、第1運転室4Aおよび第2運転室4Bにそれぞれ設けられているが、車両管理PLC11および制御装置40は、第1運転室4Aにのみ設けられている。
【0026】
搬送車両1は、第1運転室4Aに運転者が乗り込んで運転した場合、主に前方に走行し、第2運転室4Bに運転者が乗り込んで運転した場合、主に後方に走行する。第1運転室4Aまたは第2運転室4Bに設けられたハンドルが運転者により操作されると、そのハンドル操作に応じて、各走行装置6の車輪が荷台2に対し旋回するように構成されており、搬送車両1は、左旋回や右旋回しながら前方または後方に走行できる。
【0027】
荷台2は、パレット100を搬送する場合に、パレット100が載置される部分であり、パレット100における架台部100aの下面全体を支持する。本実施形態では、搬送車両1の上面全体が荷台2となっており、第1運転室4Aおよび第2運転室4Bは、荷台2の下面よりも下に設けられている。
【0028】
走行装置6は、荷台2を支持する油圧シリンダと、その油圧シリンダの伸縮によって上下動可能な車輪と、荷台2の下部に旋回可能に設けられたサスペンションブラケットとを有し、運転者からの指示に応じて荷台2の高さを変更できる。
【0029】
この走行装置6は、荷台2の下部において、車両の前後方向に6列、車両の左右方向に2組(図1(a),図1(c)参照)並べて設けられる。尚、一の走行装置6は、4個の車輪を有し、4つの各車輪が共に同一の角度に制御される。各走行装置6のうち、搬送車両1における進行方向の先頭の一列に並設される2組は、運転者のハンドル操作に応じて各車輪の角度が設定される一方、残りのものは、車両の前後方向に配置された各車輪が進行方向の先頭に配置された車輪と同一の経路を通過するように、各車輪の角度が制御される。
【0030】
また、荷台2の下部であって各走行装置6の取付位置には、搬送車両1の操舵角を検出するためのステアリングセンサ装置13がそれぞれ設けられている。即ち、各走行装置6ごとに、ステアリングセンサ装置13が設けられている。このステアリングセンサ装置13は、電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータにより、走行装置6の車輪の角度を検出するように構成されており、各ステアリングセンサ装置13に対応する走行装置6の車輪の角度はそれぞれ車両管理PLC11に出力される。車両管理PLC11では、各ステアリングセンサ装置13から入力される各走行装置6の車輪の角度のうち、搬送車両1における進行方向の先頭の一列に並設されている2組の走行装置6の各車輪の操舵角を、搬送車両1の操舵角として、制御装置40へ出力する(図2参照)。
【0031】
第1運転室4Aの前面中央には第1レーザレーダ5Aが設置され、第2運転室4Bの前面中央には第2レーザレーダ5Bが設置されている。第1レーザレーダ5Aは、搬送車両1の前方に存在する障害物を検出するためのセンサであり、第2レーザレーダ5Bは、搬送車両1の後方に存在する障害物を検出するためのセンサである。
【0032】
第1レーザレーダ5Aは、搬送車両1の前方(図1に向かって左方向)に向かってレーザ光を照射しその反射光を検出することで、レーザ光を反射した対象物までの距離rおよび角度θを測定する装置である。
【0033】
この第1レーザレーザ5Aは、最大20m先までの範囲を測定できると共に、搬送車両1の中心線を中央として270度の範囲を0.5度ピッチで走査できる。この走査は、一定間隔(例えば、20ms)ごとに繰り返され、走査が終了する度に、対象物までの位置情報(r,θ)が測定結果として制御装置40へ出力される。尚、第1レーザレーダ5Aの測定結果が制御装置40へ出力される場合には、第1レーザレーダ5Aが正常に動作しているかや、故障しているかなどの動作状態も、第1レーザレーダ5Aから制御装置40へ出力される。
【0034】
第2レーザレーダ5Bは、第1レーザレーダ5Aと同様に構成されているため、詳細な説明については省略するが、第2レーザレーダ5Bは、搬送車両1の後方(図1に向かって右方向)に向かってレーザ光を照射し、そのレーザ光を反射した対象物までの距離rおよび角度θを測定する装置であり、その測定結果と、第2レーザレーダ5Bが故障しているかなどの動作状態とを、制御装置40へ出力する。
【0035】
本実施形態では、運転者が第1運転室4Aに乗り込んで運転する場合には、第1レーザレーダ5Aから出力される測定結果が制御装置40により取得されて、その測定結果に基づく周囲状況画面がICT10に表示される。一方、運転者が第2運転室4Bに乗り込んで運転する場合には、第2レーザレーダ5Bから出力される測定結果が制御装置40により取得されて、その測定結果に基づく周辺状況画面がICT10に表示される。
【0036】
次に、パレット100の概略構成を説明する。図1(a)〜(c)に示すように、パレット100は、重量物が載置される架台部100aと、その架台部100aを支持すると共にその架台部100aと一体に設けられた脚部100bとにより構成されている。脚部100bは、架台部100aの左側縁部から地表に向かって垂直に設けられる左脚部100b1と、架台部100aの右側縁部から地表に向かって垂直に設けられる右脚部100b2とを有し、それぞれの脚部100b1,100b2は、トラス構造となるように複数の脚110が接合されて構成されている。
【0037】
左脚部100b1を構成する各脚110と、右脚部100b2を構成する各脚110とは、パレット100を上面から見て(図1(b)参照)パレット100を長手方向(Y方向)に沿って等分する中心線を基準として、左右対称となるように配設されており、図1(a)に示すように、パレット100を側面から見ると、左右対称に配設されている各脚110の輪郭がそれぞれ一致する。尚、以下の説明では、パレット100において左右対称に配設されている一対の各脚110のことを、左右でペアとなる脚110と記載する。
【0038】
また、図1(c)に示すように、パレット100の内幅Wは、搬送車両1の車幅(又は、荷台2の幅)に対して若干の余裕しか設けられていない。そのため、運転者は、搬送車両1の車幅に対して余裕のないパレット100の両脚部100b1、100b2間に、搬送車両1を進入させなければならず、搬送車両1をパレット100に衝突させずに架台部100aの下に進入させることに、多大な労力を要していた。
【0039】
これに対して、本実施形態では、図3(a),図3(b),図4を参照して後述するように、ICT10に表示される周囲状況画面を見れば、パレット100における脚110の位置や、搬送車両1の周囲に存在する障害物の位置などを運転者が容易に認識できるので、パレット100に対して搬送車両1が走行可能な領域を運転者が容易に把握できる。よって、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能な進入経路を、運転者が容易に見いだすことができるので、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合にその適切な進行方向を運転者が容易に認識できる。従って、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合の運転者の労力を軽減できる。
【0040】
運転者は、パレット100を目的地まで搬送する場合、第1運転室4Aおよび第2運転室4Bの一方に乗り込み、荷台2を下降させる。搬送車両1において荷台2を下降させると、地面から荷台2上面までの高さが、地面から架台部100a下面までの高さよりも低くなり、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能となる。運転者は、第1運転室4Aに乗り込んでいる場合、荷台2を下降させた状態で、搬送車両1を前進させてパレット100の架台部100aの下に進入し、架台部100aの下面全体を荷台2により支持できる位置まで進む。
【0041】
尚、搬送車両1を前進させて、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合には、第1レーザレーダ5Aによって、一定間隔(例えば、20ms)ごとに走査が行われて、パレット100の脚110や、その他の障害物(例えば、人など)が対象物として測定される。同様に、運転者が第2運転室4Bに乗り込み、荷台2を下降させた状態で、搬送車両1を後進させてパレット100の架台部100aの下に進入させる場合には、第2レーザレーダ5Bによって、パレット100の脚110や、その他の障害物(例えば、人など)が対象物として測定される。
【0042】
運転者は、架台部100aの下面全体を荷台2により支持できる位置まで搬送車両1を進めたら、一旦、搬送車両1を停車させて荷台2を上昇させる。これにより、架台部100aが荷台2に支持され、パレット100の脚部100bが地面から浮き上がり、搬送車両1にパレット100が積載される。その後、運転者は搬送車両1を走行させてパレット100を搬送し、目的地に到着したら荷台2を下降させて、パレット100を地面に降ろす。そして、搬送車両1をそのまま前進させてパレット100の架台部110aの下から脱出しパレット100の搬送を完了する。
【0043】
図2は、搬送車両1の電気的構成を模式的に示すブロック図である。制御装置40は、第1レーザレーダ5Aまたは第2レーザレーダ5Bの測定結果に基づいて、周囲状況画面を作成するための装置であり、パーソナルコンピュータにより構成されている。本実施形態では、運転者が第1運転室4Aに乗り込んで運転している場合、第1レーザレーダ5Aの測定結果に基づいて周囲状況画面が作成され、その画面が各運転室4A,4BのICT10にそれぞれ出力される。一方、運転者が第2運転室4Bに乗り込んで運転している場合、第2レーザレーダ5Bの測定結果に基づいて周囲状況画面が作成され、その画面が各運転室4A,4Bの各ICT10にそれぞれ出力される。
【0044】
また、制御装置40の電源が投入されている間は、作成された周囲状況画面が常にICT10へ出力されると共に、その周囲状況画面が第1レーダレーダ5Aまたは第2レーザレーダ5Bの走査周期に合わせて、定期的(例えば、20msごと)に更新される。
【0045】
制御装置40は、CPU41、ROM42、RAM43、及びハードディスク44を備え、これらがバスライン45を介して入出力ポート46にそれぞれ接続されている。入出力ポート46には、上述した第1レーザレーダ5Aと、第2レーザレーダ5Bと、各運転室4A,4Bに設けられたICT10と、車両管理PLC11とが接続されている。車両管理PLC11には、ステアリングセンサ装置13が接続されており、2つの各ICT10には、車両管理PLC11が接続されている。
【0046】
CPU41は、バスライン45により接続された各部を制御する演算装置である。ROM42は、CPU41により実行される初期設定プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。
【0047】
RAM43は、CPU41が制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、測定結果メモリ43aと、パレット脚位置情報メモリ43bとが設けられている。
【0048】
測定結果メモリ43aは、第1レーザレーダ5Aまたは第2レーザレーダ5Bにより行われた走査の測定結果が記憶されるメモリであり、第1レーザレーダ5Aまたは第2レーザレーダ5Bにより検出された対象物の位置情報が記憶される。本実施形態では、運転者が第1運転室4Aに乗り込んで運転しているか、第2運転室4Bに乗り込んで運転しているかが、後述する車両管理PLC11により検出されて、その検出結果が車両管理PLC11から制御装置40へ入力される。
【0049】
CPU41は、第1運転室4Aにおいて運転が行われていれば、入出力ポート46を介して入力される第1レーザレーダ5Aの測定結果を測定結果メモリ43aに記憶し、第2運転室4Bにおいて運転が行われていれば、入出力ポート46を介して入力される第2レーザレーダ5Bの測定結果を測定結果メモリ43aに記憶する。また、CPU41は、測定結果メモリ43aに記憶されている測定結果に基づいて、周囲状況画面を作成し、その画面を2つの各ICT10にそれぞれ出力する。
【0050】
パレット脚位置情報メモリ43bは、測定結果メモリ43aに記憶される位置情報のうち、パレット100において左右ペアであるとCPU41により判別された各脚110の位置情報が記憶されるメモリである。
【0051】
CPU41は、後述するパレット脚判別処理(図6参照)を実行すると、まず、測定結果メモリ43aの測定結果に基づいて、パレット100における左脚部100b1の各脚110と推定されるものの位置と、右脚部100b2の各脚110と推定されるものの位置とをそれぞれ抽出する。
【0052】
その後、CPU41は、その抽出した脚110の中から左右でペアとなる脚110を探し、ペアとなる脚110があれば、パレット100における脚110であると特定し、その特定した各脚110の位置情報を、パレット脚位置情報メモリ43bに記憶する。CPU41は、周囲状況画面のうち、パレット脚位置情報メモリ43bに記憶されている各位置情報に対応する画面位置に、パレット100の脚110を示すマークD(図3(b)参照)をそれぞれ表示する。
【0053】
ハードディスク44は、CPU41により実行される制御プログラム(図5に示す周囲状況表示処理、図6に示すパレット脚判別処理)や、各種データなどを書き換え可能に記憶するための記憶装置であり、ハードディスク44に記憶されたデータは、制御装置40の電源オフ後も保持される。
【0054】
制御装置40では、電源が投入され初期設定が終了すると、後述する周囲状況表示処理(図5参照)が実行開始され、後述する周囲状況画面(図3(a),図3(b),図4参照)が作成される。そして、その周囲状況画面が2つの各ICT10にそれぞれ出力されて、その後は、繰り返し周囲状況表示処理が実行され、周囲状況画面が定期的に更新される。
【0055】
また、ハードディスク44には、パレット内幅メモリ44aが設けられており、パレット100の内幅W(図1(c)参照)が記憶されている。尚、パレット100の内幅Wは、車種ごとにそれぞれ異なっており、搬送車両1の製造時には、車両や客先に応じてこのパレット内幅メモリ44aの値が設定される。
【0056】
ICT10は、表示装置および入力装置の機能を有するタッチパネルにより構成されており、車両管理PLC11から入力される信号や、運転者によるタッチパネルの操作に基づいて、搬送車両1の各種状態やメニューボタンなどを表示する表示機能を有している。ICT10は、運転者により、メニューボタンの一つである周囲状況表示ボタン(図示せず)が押下されると、表示画面を切り替えて、制御装置40から入力されている周囲状況画面を表示する。
【0057】
車両管理PLC11は、搬送車両1に設けられている走行装置6などの各種装置の状態を検出すると共に、その検出結果をICT10へ出力する装置である。車両管理PLC11は、運転者が第1運転室4Aに乗り込んで運転しているか、第2運転室4Bに乗り込んで運転しているかを、各運転室4A,4Bに設置される運転室選択スイッチ(図示せず)の状態に基づいて検出し、その検出結果を制御装置40へ出力する。
【0058】
また、ICT10は、車両管理PLC11から入力される各種装置の状態に基づいて、搬送車両1の各種状態を示す画面を作成して表示し、運転者に報知する。尚、ステアリングセンサ装置13により検出され、車両管理PLC11に取り込まれた搬送車両1の操舵角は、ICT10だけでなく制御装置40にも出力される。制御装置40は、車両管理PLC11から入力される操舵角に基づいて、搬送車両1がこれから走行することになる軌道KL,KRを、周囲状況画面上に表示する(図3(b)参照)。
【0059】
次に、図3(a),図3(b),図4を参照して、ICT10に表示される周囲状況画面の一例について説明する。各図は、運転者が第1運転室4Aに乗り込み搬送車両1を前進させて、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させている場合に、制御装置40により作成される周囲状況画面の一例を示している。
【0060】
本実施形態では、最終的には図4に示す周囲状況画面が作成され、ICT10に表示される。図3(a),図3(b)は、図4に示す画面が完成するまでの流れを段階的に説明するために添付した図面であり、図3(a)→図3(b)→図4の順番に画面が作成される。
【0061】
まず、図3(a)に示す周囲状況画面について説明する。周囲状況画面では、搬送車両1の上面から搬送車両1の進行方向を含む周囲状況を見ているように仮想的に表示が行われ、画面の上方が搬送車両1の進行方向となる。また、画面の中央下端には、第1運転室4Aの先端部F(図1(b)参照)が仮想的に表示される。尚、運転者が第2運転室4Bに乗り込み運転する場合には、画面の中央下端に、第2運転室4Bの先端部F(図示せず)が仮想的に表示される。
【0062】
この先端部Fの表示位置は、画面表示の基準位置となっており、常に同じ位置に表示される。例えば、周囲状況画面にパレット100や障害物などが表示されている場合に、搬送車両1が旋回すると、先端部Fの表示位置はそのままで、パレット100や障害物などの表示位置が搬送車両1の旋回に応じて変化する。
【0063】
図3(a)に示す周囲状況画面では、搬送車両1の周囲状況として、第1レーザレーダ5Aの走査により障害物が検出されなかった障害物非検出エリアAと、障害物の影となって測定が行えなかった検知不可能エリアBとが、それぞれ異なる表示態様で表示される。例えば、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアBとが、運転者が区別可能に別々の色で表示される。
【0064】
障害物非検出エリアAは、障害物が検出されておらず、障害物の影とならないエリアである。よって、そのエリア内に障害物が現れた場合には、その障害物までの距離rおよび角度θを第1レーザレーダ5Aにより測定できるので、障害物を検出可能なエリアであると言える。
【0065】
CPU41は、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアBとを表示する場合、まず、車両の先端部Fを示す画面位置に、その先端部Fを示す色を設定する。また、周囲状況画面のうち車両の先端部Fを除く全体を、障害物非検出エリアAを示す色に設定する。次に、RAM43の測定結果メモリ43aから、対象物の位置情報(「第1の位置情報」と称する)を一つ取得し、周囲状況画面のうち、その対象物の位置情報に対応する画面位置を算出する。そして、周囲状況画面のうち、第1レーザレーダ5Aの設置位置に対応する画面位置と、その対象物の画面位置とを結ぶ直線(以後、「第1の直線」と称する)を算出する。
【0066】
次に、位置情報を取得した対象物に対して、隣接している対象物があるか否かを判定し、その結果、隣接している対象物がない場合には、第1の直線のうち、第1レーザレーダ5Aの画面位置から対象物の画面位置直前までの部分については、障害物非検出エリアAを示す色のままとし、対象物の画面位置を含むそれ以降の部分を、検知不可能エリアBを示す色に変更する。
【0067】
一方、位置情報を取得した対象物に対して、隣接している対象物があるか否かを判定した結果、隣接している対象物がある場合には、測定結果メモリ43aから、その隣接する対象物の位置情報(「第2の位置情報」と称する)を取得し、周囲状況画面のうち、その隣接する対象物の位置情報に対応する画面位置を算出する。また、周囲状況画面のうち、第1レーザレーダ5Aの設置位置に対応する画面位置と、その隣接する対象物の画面位置とを結ぶ直線(以後、「第2の直線」と称する)を算出する。
【0068】
そして、第1の直線のうち、第1レーザレーダ5Aの画面位置から対象物の画面位置直前までの部分については、障害物非検出エリアAを示す色のままとし、対象物の画面位置を含むそれ以降の部分(以後、「第3の直線」と称する)を、検知不可能エリアBを示す色に変更する。同様に、第2の直線のうち、第1レーザレーダ5Aの画面位置から対象物の画面位置直前までの部分については、障害物非検出エリアAを示す色のままとし、対象物の画面位置を含むそれ以降の部分(以後、「第4の直線」と称する)を、検知不可能エリアBを示す色に変更する。更に、第3の直線における対象物の画面位置と、第4の直線における対象物の画面位置とを、検知不可能エリアBを示す色の直線(以後、「第5の直線」と称する)で結ぶ。そして、第3の直線、第4の直線、第5の直線、及び、周囲状況画面の外周により囲まれるエリア全体を、検知不可能エリアBを示す色に設定する。
【0069】
以後は、第2の位置情報を、新たな第1の位置情報として、同様な処理を繰り返す。即ち、新たな第1の位置情報が示す対象物に対して、隣接している対象物があるか否かを判定し、その結果、隣接している対象物がある場合には、測定結果メモリ43aから、その隣接する対象物の位置情報を、新たな第2の位置情報として取得し、上述した処理を繰り返す。一方、隣接している対象物がない場合には、測定結果メモリ43aから、対象物の位置情報を新たに取得し、その取得した位置情報を新たな第1の位置情報として、上述した処理を繰り返す。CPU41は、測定結果メモリ43aから全ての位置情報を取得するまで、上述した処理を繰り返すことで、周囲状況画面上に、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアBとを表示する。
【0070】
搬送車両1がパレット100の架台部100aの下に進入している場合には、図3(a)に示すように、周囲状況画面に検知不可能エリアBが複数表示される。検知不可能エリアB1,B2は、第1レーザレーダ5Aの設置位置の関係上、死角となり測定が行えないエリアを示している。検知不可能エリアB3〜B8のそれぞれは、パレット100の脚110が障害物として検出されたため、測定が行えなかったエリアを示している。また、検知不可能エリアB9は、パレット100の脚110とは別の障害物(例えば、人)が検出されたため、測定が行えなかったエリアを示している。
【0071】
このように、周囲状況画面には、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアBとが、運転者が区別可能に、別々の色で表示されるので、運転者が周囲状況画面を視認した場合に、障害物非検出エリアAおよび検知不可能エリアBの形状を運転者が視覚的に認識でき、搬送車両1により走行可能な領域を運転者が容易に把握できる。また、少なくともパレット100の脚110の位置を運転者に視覚的に認識させることができる。よって、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能な進入経路を、運転者が容易に見いだすことができるので、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合の運転者の労力を軽減できる。
【0072】
尚、本実施形態では、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアBとを、運転者が区別可能に、別々の色で表示しているが、運転者が別々のエリアだと認識できれば良いので、エリアの模様が別々となるように表示しても良い。この場合にも、搬送車両1がパレット100の架台部100aの下に進入する場合に、少なくともパレット100の脚110の位置を運転者に視覚的に認識させることができる。
【0073】
次に、図3(b)に示す周囲状況画面について説明する。図3(a)に示す周囲状況画面が作成されると、次は、図3(b)に示すように、その画面上に、パレット100の脚110を示すマークDや、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRや、搬送車両1がこれから走行することになる軌道KL,KRなどが表示された画面が作成される。
【0074】
尚、図3(b)における線HCは、画面上には表示されない仮想線であり、説明を分かり易くするために図中に加えたものである。図3(b)では、線HCと、図3(a)の画面から新たに表示されるマークDと、線HL,HRと、軌道KL,KRとについてのみ説明し、図3(a)と重複する説明については省略する。
【0075】
上述したように、搬送車両1がパレット100の架台部100aの下に進入している場合には、障害物非検出エリアAと、検知不可能エリアB1〜B9とがそれぞれ表示される。その後は、第1レーザレーダ5Aの測定結果に基づいて、パレット100における左脚部100b1の各脚110と推定されるものの位置と、右脚部100b2の各脚110と推定されるものの位置とがそれぞれ抽出される。
【0076】
次に、その抽出された脚110の中から左右でペアとなる脚110を見つける処理が実行され、ペアとなる脚110が見つかった場合には、その見つかった各脚110が、パレット100における脚110であると特定される。そして、パレット100の脚110の位置が特定されると、その脚110の位置に対応する画面の表示位置に、パレット100の脚110を示すマークDが表示される。これにより、パレット100の脚110の位置を、運転者に直ぐに認識させることができるので、各脚110の位置を運転者が直感的に認識できる。
【0077】
尚、本実施形態では、脚110の断面形状が矩形状となるので、マークDを矩形状にしている。よって、運転者が、マークDを視認した場合に、運転者が脚110をイメージし易くなるので、各脚110の位置を運転者により直感的に認識させることができる。また、ペアとなる脚110が見つからなかった場合には、パレット100の脚110を示すマークDは表示されない。従って、運転者は、マークDがあるか無いかによって、パレット100の脚110であるか、それ以外の障害物(例えば、人)であるかを容易に認識できるので、パレット100の脚110以外の障害物が存在する場合に、パレット100の脚110以外の障害物の存在を容易に認識できる。
【0078】
周囲状況画面にマークDが表示されると、次に、パレット100の中央を示す仮想中心線HC(画面上には表示せず)が算出され、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRが直線で表示される。詳細については後述するが、仮想中心線HCは、パレット100の脚110であると特定された各脚110の位置に基づいて算出される。また、線HL,HRは、仮想中心線HCを中央として両側に、仮想中心線HCからの距離が「パレット100の内幅W÷2」離れていることを示す画面位置に、それぞれ表示される。尚、線HLは、パレット100における左脚部100b1の内側の位置を示し、線HRは、パレット100における右脚部100b2の内側の位置を示す。
【0079】
運転者は、搬送車両1が線HL,HRに接触しないように搬送車両1を進行させれば、衝突せずに安全に、パレット100の架台部100aの下に搬送車両1を進入させることができる。また、運転者は、線HL,HRを視認することで、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合に、その通行可能な範囲の目安を認識できる。
【0080】
尚、線HL,HRを直線で表示しているので、パレット100の左脚部100b1において、又、右脚部100b2において、各脚110を直線で繋いで線HL,線HRを折れ線で表示する場合よりも、運転者がパレット100の内幅Wを見易くなる。よって、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合に、搬送車両1を進行させるべき方向を運転者が容易に認識できる。また、本実施形態の周囲状況画面には、パレット100の仮想中心線HCを表示していないが、仮想中心線HCを表示しても良い。
【0081】
そして、周囲状況画面にパレット100の内幅Wを示す線HL,HRが表示されると、次に、車両管理PLC11にから入力される搬送車両1の操舵角に基づいて、搬送車両1がこれから進行することになる軌道KL,KRが表示される。軌道KLは、運転者が現在のハンドル操作を維持して搬送車両1を進行させた場合に、その搬送車両1の左側面が通過する軌道を示しており、軌道KRは、搬送車両1を進行させた場合に、その搬送車両1の右側面が通過する軌道を示している。
【0082】
運転者は、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRの間に、搬送車両1の軌道KL,KRが共に収まるように搬送車両1を進行させれば、衝突せずに安全に、パレット100の架台部100aの下に搬送車両1を進入させることができる。言い換えれば、運転者は、線HLおよび軌道KLの間と、線HRおよび軌道KRの間とにそれぞれ隙間が生じる状態を保ちながら搬送車両1を進行させれば、衝突せずに安全に、パレット100の架台部100aの下に搬送車両1を進入させることができる。
【0083】
次に、図4に示す周囲状況画面について説明する。図3(b)に示す周囲状況画面が作成されると、次は、図4に示すように、その画面上に、マス目Mが表示された画面が作成される。尚、図4では、図3(b)の画面から新たに表示されるマス目Mについてのみ説明し、図3(b)と重複する説明については省略する。
【0084】
本実施形態では、周囲状況画面に、マークDや、軌道KL,KRや、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRが表示されると、図4に示すように、最後にマス目Mが表示される。このマス目Mの表示間隔は、実際の走行距離に換算すると2m間隔となるように表示される。このように、周囲状況画面にマス目Mを表示することで、運転者が進行方向に加えて、目標位置までの進行距離を容易に認識できる。
【0085】
以上、図3(a),図3(b),図4を参照して説明したように、運転者が第1運転室4Aに乗り込み搬送車両1を前進させて、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合には、第1レーザレーダ5Aの測定結果に基づいて、制御装置40により周囲状況画面が作成され、その画面が2つの各ICT10に出力される。また、周囲状況画面の中央下端には、第1運転室4Aの先端部F(図1(b)参照)が仮想的に表示される。
【0086】
次に、図5を参照して、制御装置40で実行される周囲状況表示処理について説明する。図5は、周囲状況表示処理を示すフローチャートである。この処理は、測定結果メモリ43aに記憶されている測定結果に対応する周囲状況画面を作成して、その画面を2つの各ICT10に出力するための処理であり、制御装置40の電源が投入されてから、電源が遮断されるまで繰り返し実行される処理である。ICT10は、運転者によってメニューボタンの一つである周囲状況表示ボタン(図示せず)が押下されると、表示画面を切り替えて、制御装置40から入力されている周囲状況画面を表示する。
【0087】
以下の説明では、運転者が第1運転室4Aに乗り込み搬送車両1を運転していることを前提に説明する。まず、CPU41は、RAM43の測定結果メモリ43aから第1レーダレーダ5Aの測定結果を取得し(S1)、その測定結果に基づいて、障害物(対象物)が検出されなかった障害物非検出エリアAと、障害物の影となって測定が行えなかった検知不可能エリアBとを、運転者が区別可能にそれぞれ別々の色で表示した画面(図3(a)参照)を作成する(S2)。
【0088】
上述したように、CPU41は、測定結果メモリ43aから障害物(対象物)の位置情報を一つずつ全て取得し、取得した各障害物の位置情報に基づいて、第1レーザレーダ5Aの設置位置から各障害物が検出された直前までのエリアと、第1レーザレーダ5Aがレーザ光を照射しても、その反射光が検出されなかったエリア(即ち、障害物が見つからなかったエリア)とを、障害物非検出エリアAとする画面を作成する。また、検出された各障害物の影となって第1レーザレーダ5Aのレーザ光が届かないエリアと、各障害物が検出された位置とを含むエリアとを、検知不可能エリアBとして、作成した画面上に加える。
【0089】
このS2の処理により、周囲状況画面が大まかに作成されることになる。この周囲状況画面によれば、障害物非検出エリアAおよび検知不可能エリアBの形状を運転者に視覚的に認識させられるので、パレット100に対して搬送車両1が走行可能な領域を運転者に容易に認識させられる。また、搬送車両1がパレット100の架台部100aの下に進入する場合に、少なくともパレット100の脚110の位置を運転者に視覚的に認識させることができる。よって、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能な進入経路を運転者が容易に見いだすことができるので、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合の運転者の労力を軽減できる。
【0090】
次に、CPU41は、パレット脚判別処理を実行する(S3)。ここで、図6を参照して、制御装置40で実行されるパレット脚判別処理(S3)について説明する。図6は、パレット脚判別処理(S3)を示すフローチャートである。この処理は、S1の処理で取得した測定結果に基づいて、パレット100における脚110の位置を特定すると共に、その特定した脚110の位置情報をRAM43のパレット脚位置情報メモリ43bに記憶するための処理である。
【0091】
まず、CPU41は、S1の処理で取得した測定結果に基づいて、パレット100における左脚部100b1の脚110の位置をそれぞれ推定し(S21)、次に、S1の処理で取得した測定結果に基づいて、パレット100における右脚部100b2の脚110の位置をそれぞれ推定する(S22)。
【0092】
このS21の処理、及び、S22の処理では、第1レーザレーダ5Aの測定結果から、一定以上の大きさを有する障害物の輪郭が全て抽出され、その抽出された各輪郭ごとに、その輪郭の形状が、パレット100における脚110の輪郭の一部と類似しているかが判定される。ここで、脚110の輪郭の一部と類似していると判定されると、その障害物はパレットの脚110であると推定される。尚、ここでは、障害物の中から脚110であると推定されるものが抽出されるだけであり、脚110であるか否かまでは特定されない。
【0093】
そして、CPU41は、パレット100において、ペアとなる左右の脚110があるかを判別する(S23)。尚、ペアとなる左右の脚110の判別方法については後述する。S23の判別が肯定される場合には(S23:Yes)、ペアとなる左右の各脚110の全てについて、その位置情報をRAM43のパレット脚位置情報メモリ43bにそれぞれ記憶する(S24)。
【0094】
そして、このパレット脚判別処理を終了し、周囲状況表示処理に戻る。一方、S23の判別が否定される場合には(S23:No)、パレット脚位置情報メモリ43bをクリアして(S25)、このパレット脚判別処理を終了し、周囲状況表示処理に戻る。
【0095】
ここで、図7を参照して、パレット100の脚110の位置を推定する方法と、ペアとなる左右の脚110を判別する方法とについて説明する。図7は、測定結果メモリ43aに記憶されている測定結果の概要を説明するための説明図であり、障害物(対象物)が検出された場所を、搬送車両1の上面から搬送車両1の進行方向を見ているように仮想的に示したものである。図中では、障害物(対象物)の位置情報が示している場所を太線で図示しており、図の上方が搬送車両1の進行方向となる。
【0096】
図7では、6つの障害物が検出されている状態を示しており、図面の右半分には、L字状の輪郭を有する障害物が、縦方向に等間隔で上・中・下と3つ検出され、図面の左半分には、L字を左に90度回転させた輪郭を有する障害物が、縦方向に等間隔で3つ上・中・下と検出されている状態を示している。
【0097】
上述したように、本実施形態では、障害物が検出されると、その障害物の輪郭の形状が、パレット100における脚110の輪郭の一部に類似しているかが判別され、脚110の輪郭の一部に類似していれば、その障害物が脚110であると推定される。図7では、各障害物がそれぞれL字状の輪郭を有しており、脚110の輪郭と類似しているので、図面の左半分に存在する上・中・下の3つの障害物が、パレット100の左脚部100b1を構成する各脚110であると推定され、図面の右半分に存在する上・中・下の3つの障害物が、パレット100の右脚部100b2を構成する各脚110であると推定される。
【0098】
障害物が脚110であると推定されると、次に、その推定された脚110の中に、ペアとなる左右の脚110があるかが判別される。この判別では、特定された複数の脚110の中から、第1レーザレーダ5Aからの直線距離が同等である脚110を2つ抽出し、その2つの脚110間の距離が、ハードディスク44のパレット内幅メモリ44aに記憶されているパレット100の内幅Wに近似しているかが判別される。ここで、2つの脚110間の距離が、パレット100の内幅Wに近似していれば、その2つの脚110が、ペアとなる左右の脚110であると判別される。
【0099】
例えば、図7では、左脚部100b1を構成する上・中・下の3つの脚と、右脚部100b2を構成する上・中・下の3つの脚とのうち、下(図中の最下)の脚110同士が、ペアとなる左右の脚110であると判別される。同様に、中(図中の中央)の脚110同士も、上(図中の最上)の脚110同士も、それぞれペアとなる左右の脚110であると判別される。
【0100】
ここで、ペアとなる左右の脚110であると判別された場合には、ペアとなる各脚110の位置情報が、RAM43のパレット脚位置情報メモリ43bにそれぞれ記憶される。上述したように、本実施形態では、障害物の輪郭の形状だけから、パレット100の脚110であるかを判別するのではなく、ペアとなる脚110が見つかり且つその距離がパレット100の内幅Wに近似している場合に、パレット100の脚110であると判別しているので、パレット100の脚110と、それ以外の障害物とを的確に識別できる。
【0101】
ここで、図5の説明に戻る。上述したパレット脚判別処理(S3)が終了したら、次に、CPU41は、そのパレット脚判別処理において、ペアとなる左右の脚110が見つかったかを判別する(S4)。ここでは、パレット脚位置情報メモリ43bに位置情報が記憶されていれば、ペアとなる左右の脚110が見つかったと判定し、位置情報が記憶されていなければ、見つからなかったと判定する。S4の判別が否定される場合には(S4:No)、S10の処理に移行する。一方、S4の判別が肯定される場合には(S4:Yes)、CPU41は、S3の処理において見つかった脚110の位置情報をパレット脚位置情報メモリ43bから、1組(1ペア)分ずつ全て取得する(S5)。
【0102】
次に、CPU41は、S2の処理で作成した画面上であり、S5の処理で取得した各位置情報に対応する画面位置に、パレット100の脚110を示すマークDをそれぞれ表示した画面を作成する(S6)。これにより、図3(b)を参照して説明したように、パレット100の脚110の位置を、運転者に直ぐに認識させることができるので、各脚110の位置を運転者が直感的に認識できる。よって、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能な進入経路を運転者がより容易に見いだすことができる。
【0103】
また、パレット100の脚110以外の障害物には、脚110を示すマークDは表示されないので、運転者は、マークDがあるか無いかによって、パレット100の脚110であるか、それ以外の障害物(例えば、人)であるかを容易に認識できる。更に、この脚110を示すマークDは、ペアとなる脚110が見つかった場合にしか表示されない。よって、個別にパレット100の脚110を見つけて、脚110を示すマークDを表示するよりも、パレット100の脚110が存在する位置に的確にそのマークDを表示できる。
【0104】
S6の処理が終了したら、次に、CPU41は、1組(1ペア)の左右の脚ごとに、2つの脚110の中間点を算出する(S7)。ここで、再び図7を参照して、2つの脚110の中間点を算出する方法について説明する。上述したパレット脚判別処理(S3)が実行され、ペアとなる左右の脚110が見つかった場合には、各脚110ごとに、その脚110の輪郭のうち第1レーザレーダ5Aから最も近い1点が、脚110の基準点とされる。
【0105】
例えば、図7に示すように、左脚部100b1を構成する上・中・下の3つの脚のうち下の脚110であれば、L字状である輪郭の頂点P1が基準点となり、右脚部100b2を構成する上・中・下の3つの脚のうち下の脚110であれば、L字状の頂点P2が基準点となる。そして、この2つの脚110の基準点に基づいて、中間点C1が算出される。同様に、中の脚110同士についても、上の脚110同士についても、それぞれ中間点C2,C3が算出される。
【0106】
ここで、図5の説明に戻る。CPU41は、S7の処理により各中間点を算出したら、次に、その各中間点に基づいて回帰(近似)直線を算出して、それをパレット100の仮想中心線HCとする(S8)。そして、CPU41は、S8の処理で算出したパレット100の仮想中心線HC(画面上には表示せず)の両側に、その仮想中心線HCから実際の距離が「パレットの内幅W÷2」離れていることを示す画面位置に、その仮想中心線HCと平行になる直線を、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRとして表示した画面を作成する(S9)。そして、S10の処理へ移行する。
【0107】
このように、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRを表示することで、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合に、その通行可能な範囲の目安を運転者が認識できる。
【0108】
また、一般的にパレット100には、構造上、歪みが生じるため、パレット100の左脚部100b1(右脚部100b2も同様)の各脚110は一直線上に並んでいない。もし、各脚110が一直線上に並んでいたとしても、第1レーザレーダ5A(第2レーザレーダ5B)により走査を行った場合に、測定誤差が生じるので、各脚110が一直線上に並ぶように検出される可能性は低い。
【0109】
よって、パレット100の各脚110の位置をそのまま直線で結んで、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRとして表示すると、線HL,HRが折れ線となり、運転者が見づらくなる。本実施形態では、パレット100の内幅Wを示す線HL,HRをそれぞれ1本の直線で表示しているので、折れ線で表示する場合よりも、運転者がパレット100の内幅Wを認識し易くなる。よって、パレット100に対して搬送車両1を進行させるべき方向を運転者が容易に認識することができる。
【0110】
S10の処理では、CPU41は、車両管理PLC11から入力されるステアリングセンサ装置13の検出結果(操舵角)を取得する(S10)。本実施形態では、各ステアリングセンサ装置13のうち、搬送車両1における進行方向の先頭の一列に並設される2個の各ステアリングセンサ装置13により検出されたそれぞれの操舵角が、車両管理PLC11を介して制御装置40へ入力される。
【0111】
CPU41は、入力された2個の操舵角の平均値を算出した後、その算出した操舵角に基づいて、搬送車両1がこれから進行することになる軌道KL,KRを表示した画面(図3(b)参照)を作成する(S11)。尚、S4の処理が肯定されている場合には、S9の処理で作成した画面上に、軌道KL,KRを表示した画面を作成し、S4の処理が否定されている場合には、S2の処理で作成した画面上に、軌道KL,KRを表示した画面を作成する。
【0112】
尚、搬送車両1では、運転者のハンドル操作に応じて、搬送車両1における進行方向の先頭の一列に並設された2組の走行装置6の各車輪の角度が設定される一方、残りの車輪は、車両の前後方向に配置された各車輪が進行方向の先頭に配置された車輪と同一の経路を通過するように、各車輪の角度が制御される。つまり、本実施形態の搬送車両1では、進行方向の先頭に並設された各車輪の操舵角に応じて、搬送車両1がこれから進行することになる軌道KL,KRが一意に決まる。
【0113】
S11の処理が終了したら、次に、CPU41は、S11の処理で作成した画面上に、マス目Mを表示した画面(図4参照)を作成する(S12)。このように、周囲状況画面にマス目Mを表示することで、運転者が進行方向に加えて、目標位置までの進行距離を容易に認識できる。次に、CPU41は、S12の処理で作成した画面を、2つの各ICT10に出力して(S13)、その後、第1レーザレーダ5Aの走査間隔(例えば、20ms)が経過するまで待機し(S14)、S1の処理に戻る。そして、測定結果メモリ43aに記憶された新たな測定結果に基づいて、ICT10へ出力する周囲状況画像を更新する。
【0114】
以上、運転者が第1運転室4Aに乗り込み搬送車両1を運転しているものとして、図5に示す周囲状況表示処理を説明したが、運転者が第2運転室4Bに乗り込み搬送車両1を運転している場合には、第1レーザレーダ5Aの測定結果に代えて、第2レーザレーダ5Bの測定結果に基づいて、上述した周囲状況画面が作成され、その画面が2つの各ICT10に出力される。
【0115】
尚、上記実施形態に記載の「パレット100の内幅Wを示す線HL,HR」が、特許請求の範囲に記載の「一対の直線」に対応する。また、上記実施形態に記載の「マス目M」が、特許請求の範囲に記載の「格子状の直線」に対応する。
【0116】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0117】
例えば、上記実施形態で挙げた具体的数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0118】
また、上記実施形態では、ペアとなる左右の脚110が見つかった場合に、その脚110が見つかった各位置に対応する画面位置に、パレット100の脚110を示すマークDを表示しているが、ペアとなる脚110が見つかったか否かに関係なく、個別にパレット100の脚110を見つけて、脚110を示すマークDを表示しても良い。この場合にも、パレット100の脚110の位置を、運転者に直ぐに認識させることができるので、各脚110の位置を運転者が直感的に認識できる。よって、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させることが可能な進入経路を運転者がより容易に見いだすことができる。従って、搬送車両1をパレット100の架台部100aの下に進入させる場合の運転者の労力をより軽減できる。
【0119】
また、上記実施形態では、マス目Mの表示間隔が、実際の走行距離に換算すると2m間隔となるように構成しているが、マス目Mの表示間隔を、運転者が任意(1m〜5mなど)の間隔に設定できるように構成しても良い。このようにすれば、運転者が搬送車両1を進行させたい距離に応じて、運転者がマス目Mの間隔を設定できるので、運転者が目標位置までの進行距離をさらに容易に認識できる。また、周囲状況画面の縦方向に並ぶマス目Mの数や、周囲状況画面の横方向に並ぶマス目Mの数を、運転者が任意に設定できるように構成しても良い。この場合には、マス目Mの数に応じてマス目Mの大きさを変化させる。この場合は、運転者が搬送車両1を進行させたい距離に応じて、運転者がマス目Mの数を設定できるので、運転者が目標位置までの進行距離を容易に認識できる。
【0120】
また、上記実施形態では、脚110を示すマークDを矩形状としているが、実際の脚110の断面形状となるように表示しても良い。実際の脚110の断面形状が表示されるので、運転者がマークDを視認した場合に、運転者が脚110をイメージし易くなり、各脚110の位置を運転者により直感的に認識させることができる。
【0121】
また、上記実施形態では、ステアリングセンサ装置13が各走行装置6ごとに設けられているが、搬送車両1における進行方向の先頭の一列に並設される2組の走行装置6のうち、少なくとも1つに設けられていれば良い。また、ステアリングセンサ装置13により操舵角を検出する代わりに、運転者のハンドル操作に基づいて設定される車輪の操舵角を取得するように構成しても良い。
【0122】
また、上記実施形態では、車両の前方に第1運転室4Aが設けられ、車両の後方に第2運転室4Bが設けられた2つの運転室4A,4Bを有する搬送車両1について説明したが、車両の前方にだけ運転室が設けられ、車両の後方が荷台となっている搬送車両であっても、上記実施形態を適用できる。
【0123】
また、上記実施形態の制御装置40は、運転者が第1運転室4Aに乗り込んで運転している場合、第1レーザレーダ5Aの測定結果に基づく周囲状況画面を作成して、その画面を2つの各運転室4A,4BのICT10に出力し、また、運転者が第2運転室4Bに乗り込んで運転している場合、第2レーザレーダ5Bの測定結果に基づく周囲状況画面を作成して、その画面を2つの各運転室4A,4BのICT10に出力するように構成されている。これに対して、第1レーザレーダ5Aの測定結果に基づく周囲状況画面と、第2レーザレーダ5Bの測定結果に基づく周囲状況画面とをそれぞれ作成して、2つの画面を各運転室4A,4BのICT10にそれぞれ出力し、運転者が各運転席4A,4BのICT10を操作することで、表示する周囲状況画面を切り替えられるように構成しても良い。これにより、運転者が搬送車両1の前方および後方をそれぞれ確認できるので、より安全に搬送車両1を走行させることができる。尚、このように構成する場合、例えば、RAM43内に、第1レーザレーダ5Aの測定結果を記憶する測定結果メモリと、第2レーザレーダ5Bの測定結果を記憶する測定結果メモリとをそれぞれ設けておき、各測定結果メモリの測定結果ごとに、周囲状況表示処理を実行するように構成する。
【0124】
また、上記実施形態の制御装置40は、第1又は第2レーザレーダ5A,5Bの測定結果に基づく周囲状況画面を2つの各運転室4A,4BのICT10にそれぞれ出力したが、作成した周囲状況画面を、運転者が運転に使用している運転室4A,4BのICT10だけに出力するように構成しても良い。
【0125】
また、上記実施形態において周囲状況画面の作成方法を説明したが、この方法は一例であり、この方法に限らず別の方法を用いて周囲状況画面を作成しても良い。例えば、周囲状況画面を作成する場合、まず、周囲状況画面全体を、障害物検知不可能エリアBを示す色に設定する。次に、RAM43の測定結果メモリ43aから、対象物の位置情報を一つずつ取得し、各対象物の位置情報ごとに、周囲状況画面における画面位置を算出する。そして、全ての対象物の位置情報について画面位置を算出できたら、次に、周囲状況画面のうち、第1レーザレーダ5Aの設置位置に対応する画面位置を基準点とし、その基準点から画面の右側面に対して垂直に延ばした延長線を、基準点を中心として反時計回りに、その延長線が画面の左側面に対して垂直となるまで回転させる。ここで、その延長線が重なった順に、各対象物の画面位置を1つずつ繋いで行き、最後に延長線が重なった対象物の画面位置と、最初に延長線が重なった対称物の画面位置とを繋ぎ、多角形を作成する。そして、作成した多角形の内部を、障害物非検出エリアAを示す色に設定して、その後、車両の先端部Fを示す画面位置に、その先端部Fを示す色を設定する。この方法で、周囲状況画面を作成しても良い。
【0126】
また、上記実施形態では、図6に示すパレット脚判別処理(S3)を実行し、パレット100においてペアとなる左右の脚110を判別しているが、パレット脚判別処理(S3)に限らず、別の処理を実行して、ペアとなる左右の脚110を判別しても良い。
【0127】
例えば、RAM43の測定結果メモリ43aに記憶されている対象物の位置情報のうち、パレット100の左脚部100b1が存在すると推定されるエリア(以下、「左脚推定エリア」と称す)内に入るものを特定する。また、測定結果メモリ43aに記憶されている対象物の位置情報のうち、パレット100の右脚部100b2が存在すると推定されるエリア(以下、「右脚推定エリア」と称す)内に入るものを特定する。
【0128】
次に、左脚推定エリア内に入っている対象物を一つ選択し、右脚推定エリア内に入っている対象物のうち、その一つ選択した対象物から最も近い距離に存在する対象物を一つ特定する。そして、一つ選択した左脚推定エリア内の対象物には、一つ特定した右脚推定エリア内の対象物が対応することを示すリスト(テーブルの一部)を作成する。尚、このリストは、左脚推定エリア内の対象物を基準として作成する。
【0129】
以下同様に、左脚推定エリア内に入っている対象物を一つずつ選択して、選択した対象物ごとに、その対象物から最も近い距離に存在する右脚推定エリア内の対象物を一つ特定する。そして、一つずつ選択される左脚推定エリア内の対象物と、その選択された対象物に対して特定される右脚推定エリア内の対象物との対応を示すリストを、左脚推定エリア内の各対象物を基準として作成する。
【0130】
これにより、左脚推定エリア内の各対象物について、その対象物から最も近い距離に存在する右脚推定エリア内の対象物を示すリストが作成され、その結果、左脚推定エリア内の各対象物を基準とするテーブル全体が作成される。次に、上述した手順と同様な手順で、右脚推定エリア内の各対象物を基準としたテーブルを作成する。即ち、右脚推定エリア内に入っている対象物を一つずつ選択して、選択した対象物ごとに、その対象物から最も近い距離に存在する左脚推定エリア内の対象物を一つ特定する。
【0131】
そして、一つずつ選択される右脚推定エリア内の対象物と、その選択された対象物に対して特定される左脚推定エリア内の対象物との対応を示すリスト(テーブルの一部)を、右脚推定エリア内の各対象物を基準として作成する。これにより、右脚推定エリア内の各対象物について、その対象物から最も近い距離に存在する左脚推定エリア内の対象物を示すリストが作成され、その結果、右脚推定エリア内の各対象物を基準としたテーブル全体が作成される。
【0132】
次に、左脚推定エリア内の各対象物を基準として作成したテーブル内から、左脚推定エリア内の対象物(第1の対象物)を一つ選択すると共に、その選択した第1の対象物に対応する右脚推定エリア内の対象物(第2の対象物)を取得する。そして、右脚推定エリア内の各対象物を基準として作成したテーブル内から、第2の対象物に対応するリストを探し、そのリストから第2の対象物に対応する左脚推定エリア内の対象物(第3の対象物)を取得する。
【0133】
そして、第1の対象物と、第3の対象物とを比較し、第1の対象物と、第3の対象物とが同じものであれば(即ち、位置情報の示す位置が同一であれば)、第1の対象物と、第2の対象物とが、ペアとなる左右の脚110であると判別する。尚、第1の対象物と、第3の対象物とが別のものである場合や、右脚推定エリア内の各対象物を基準として作成したテーブル内に、第2の対象物に対応するリストが無い場合には、第1の対象物と、第2の対象物とは、ペアとなる左右の脚110ではないと判別する。
【0134】
以後同様に、左脚推定エリア内の各対象物を基準として作成したテーブル内から、左脚推定エリア内の対象物(第1の対象物)を一つずつ選択し、左脚推定エリア内の各対象物(第1の対象物)について同様な判別処理を繰り返し行うことで、パレット100においてペアとなる左右の脚110を判別できる。
【符号の説明】
【0135】
1 搬送車両
2 荷台
5A 第1レーザレーダ(検出手段)
5B 第2レーザレーダ(検出手段)
10 ICT(表示手段)
40 制御装置(運転支援装置)
100 パレット
100a 架台部(台部)
100b 脚部
A 障害物非検出エリア(第1エリア)
B 検知不可能エリア(第2エリア)
D マーク(所定のマーク)
S2、S6、S9、S12 画像生成手段
S3 判別手段
S7 中間点取得手段
S8 中心線取得手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側部に設けられた脚部と当該脚部によって支持される台部とを有するパレットの前記台部の下に進入し、前記台部の下において荷台を上昇させることにより前記パレットを積載し、搬送する搬送車両であって、
少なくとも前記搬送車両の進入方向を含む所定のエリアへレーダ波を放射するレーダ波放射手段と、
そのレーダ波放射手段により放射されるレーダ波の反射波に基づいて前記所定のエリアに存在する反射物までの距離および方向を検出する検出手段と、
その検出手段による検出結果に基づいて、前記所定のエリアのうち前記レーダ波により検出可能なエリアを表す第1エリアと、前記脚部または前記脚部以外の反射物の存在により前記レーダ波による検出が不可能なエリアを表す第2エリアとを区別して前記所定のエリアを表す画像を生成する画像生成手段と、
その画像生成手段により生成される前記所定のエリアを表す画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする搬送車両。
【請求項2】
前記検出手段により検出される前記反射物が、前記パレットの脚部であるかを判別する判別手段を備え、
前記画像生成手段は、
前記判別手段により前記パレットの脚部であると判別された前記反射物に対応する位置に所定のマークを付して、前記所定のエリアを表す画像を生成することを特徴とする請求項1記載の搬送車両。
【請求項3】
前記パレットは、一方の側部に設けられた脚部と他方の側部に設けられた脚部とが対をなし、且つ、複数対の脚部が設けられた構成であって、
前記判別手段は、前記パレットの両側部で対となる配置の反射物が前記検出手段により検出された場合に、当該対となる配置の反射物が前記パレットの脚部であると判別するものである請求項2記載の搬送車両。
【請求項4】
前記判別手段により前記パレットの脚部であると判別された、対となる反射物間の中間点を取得する中間点取得手段と、
その中間点取得手段により取得される中間点に基づいて、前記パレットの前記両側部から等距離にある位置を表した中心線を取得する中心線取得手段とを備え、
前記画像生成手段は、
前記所定のエリアに対する前記搬送車両の両側面の位置を示す画像と、前記中心線取得手段により取得される前記中心線と平行であり、且つ、前記中心線からそれぞれ所定距離離隔した一対の直線とを付して、前記所定のエリアを表す画像を生成するものであることを特徴する請求項3記載の搬送車両。
【請求項5】
前記画像生成手段は、
画像上の距離と実際の距離との比を表す格子状の直線を付して、前記所定のエリアを表す画像を生成するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の搬送車両。
【請求項6】
両側部に設けられた脚部と当該脚部によって支持される台部とを有するパレットの前記台部の下に進入し、前記台部の下において荷台を上昇させることにより前記パレットを積載し、搬送する搬送車両の運転支援装置であって、
少なくとも前記搬送車両の進入方向を含む所定のエリアへレーダ波を放射するレーダ波放射手段と、
そのレーダ波放射手段により放射されるレーダ波の反射波に基づいて前記所定のエリアに存在する反射物までの距離および方向を検出する検出手段と、
その検出手段による検出結果に基づいて、前記所定のエリアのうち前記レーダ波により検出可能なエリアを表す第1エリアと、前記脚部または前記脚部以外の反射物の存在により前記レーダ波による検出が不可能なエリアを表す第2エリアとを区別して前記所定のエリアを表す画像を生成する画像生成手段と、
その画像生成手段により生成される前記所定のエリアを表す画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする運転支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46079(P2012−46079A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189982(P2010−189982)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】