説明

搬送車及び搬送システム

【課題】搬送車において、被搬送物の揺れを効果的に抑制する。
【解決手段】搬送車(200)は、天井に敷設された軌道(100)を走行する走行部(210)と、走行部に取り付けられており、把持した被搬送物(400)を収容空間に収容して搬送する搬送部(220)と、搬送部の下端側に、水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、退避位置及び落下防止位置の間を移動可能な落下防止部材(260)と、落下防止部材と同一の軸心で水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、落下防止部材の退避位置から落下防止位置への移動に合わせて被搬送物の側面を押圧するように突出する揺れ抑制部材(270)とを備える。揺れ抑制部材は、被搬送物の側面を押圧面で平面的に押圧する押圧部(272)と、押圧部を先端側で支持すると共に基端側において搬送部に軸支された長尺状のレバー部(271)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板等が収容された容器などの被搬送物を軌道上で搬送する搬送車、及び該搬送車を備える搬送システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送車として、例えば天井に敷設された軌道を走行することで、FOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を搬送する懸垂型のもの(所謂OHT:Overhead Hoist Transport)が知られている。このような搬送車には、移載した被搬送物の下側に突出することで被搬送物の落下を防止する落下防止部材と、該落下防止部材に連動して回動可能とされており、被搬送物を押圧することで揺れを抑制する揺れ抑制部材とが備えられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。揺れ抑制部材は、被搬送物に当接し始める位置と、落下防止部材が突出し終わった際の位置とが互いに異なるため、そのズレを調整可能なローラ等によって構成される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−187175号公報
【特許文献2】特開2006−298535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようにローラとして構成された揺れ抑制部材は、回転可能であるがゆえに、押圧方向に交わる方向の揺れに対しては抑制効果が十分とは言えない。例えば、搬送車がカーブを走行する際に遠心力が加わってしまうと、被搬送物の横揺れに合わせてローラが回転してしまうため、被搬送物は比較的大きく揺れてしまうおそれがある。
【0005】
近年、被搬送物の重量は、例えば半導体基板の大口径化に伴い飛躍的に増大している。搬送車に加わる遠心力は、被搬送物の重量の増加と共に大きくなるため、上述したような遠心力が被搬送物に与える影響は無視できない。即ち、ローラとして構成された揺れ抑制部材には、大型化する被搬送物に対して、その揺れを効果的に抑制することができないという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、被搬送物の揺れを効果的に抑制することが可能な搬送車及び搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送車は上記課題を解決するために、天井に敷設された軌道を走行する走行部と、前記走行部に取り付けられており、把持した被搬送物を収容空間に収容して搬送する搬送部と、前記搬送部の下端側に、水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記収容空間への前記被搬送物の収容を可能とする退避位置と、前記収容空間に収容された前記被搬送物の下側に突出して前記被搬送物の前記収容空間からの落下を防止する落下防止位置との間を移動可能な落下防止部材と、前記搬送部の前記落下防止部材より上方側に、前記落下防止部材と同一の軸心で水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記落下防止部材の前記退避位置から前記落下防止位置への移動に合わせて前記被搬送物の側面を押圧するように突出する揺れ抑制部材とを備え、前記揺れ抑制部材は、前記被搬送物の側面を押圧面で平面的に押圧する押圧部と、該押圧部を先端側で支持すると共に基端側において前記搬送部に軸支されており、長さ方向の軸線が前記被搬送物の側面に対して斜めとなった状態で前記押圧部を前記被搬送物に当接させる長尺状のレバー部とを有する。
【0008】
本発明の搬送車は、天井に敷設された軌道部を走行部が走行すると共に、走行部に取り付けられた搬送部が積載した被搬送物を搬送する。搬送部は、典型的には、走行部に吊り下げられた形で取り付けられている。搬送部は、例えば被搬送物を把持する把持部を備えており、被搬送物の積載時には、把持部に把持された被搬送物が搬送部の収容空間に収容される。収容空間は、例えば下方側に向けて開口したコの字状の搬送部における内部の空間として規定されている。
【0009】
本発明の搬送車には、搬送部の下端側に、水平に沿った方向に回動可能に軸支された落下防止部材が設けられている。尚、ここでの「下端側」とは、収容空間に積載された被搬送物を下側から支えられる程度に低い位置であることを意味している。また、「水平に沿った方向」とは、完全な水平方向を意味するだけではなく、水平方向に斜めに交わるような方向をも含む広い概念である。落下防止部材は、把持された被搬送物が、例えば搬送車の揺れ等に起因して落下しそうになった場合に、下側から支えることで落下を防止する。
【0010】
落下防止部材は、収容空間への被搬送物の収容を可能とする退避位置と、収容空間に収容された被搬送物の下側に突出して被搬送物の落下を防止する落下防止位置との間を、水平方向に沿って回動することで移動可能とされている。より具体的には、落下防止部材は、被搬送物を積載使用とする際には、収容空間の入口付近において被搬送物が通過可能なスペースを確保できるよう、少なくとも部分的に収納された状態となる。一方で、被搬送物が積載された後には、収容空間の入口を下方側から部分的に塞ぐように突出し、被搬送物が収容空間から落下してしまうことを防止する。
【0011】
本発明の搬送車には更に、搬送部における落下防止部材より上方側に、揺れ抑制部材が設けられている。揺れ抑制部材は特に、上述した落下防止部材と同一の軸心で水平に沿った方向に回動可能に軸支されている。尚、ここでの「同一の軸心」とは、落下防止部材及び揺れ抑制部材が、例えば同一のシャフト等によって軸支されている場合を含むほか、後述する本発明の効果を発揮できる程度に、落下防止部材及び揺れ抑制部材の軸心が互いに近い場合も含む広い概念である。揺れ抑制部材は、積載された被搬送物の側面を押圧することで揺れを抑制する。尚、ここでの「揺れ」とは、搬送車に移載された被搬送物が、カーブ走行時の遠心力等によって揺れる際の変位量を意味している。揺れ抑制部材は、被搬送物の側面を押圧面で平面的に押圧する押圧部と、該押圧部を先端側で支持すると共に基端側において搬送部に軸支された長尺状のレバー部を有している。押圧部は、例えば弾性体等によって構成される。このような押圧部によって被搬送物を押圧すれば、被搬送物への振動の伝達を抑制することができる。尚、ここでの「振動」とは、上述した揺れの加速度を意味している。
【0012】
揺れ抑制部材は、落下防止部材の退避位置から落下防止位置への移動に合わせて、被搬送物の側面を押圧するように突出可能に構成されている。より具体的には、落下防止部材が退避位置にある場合には、揺れ抑制部材は、積載された被搬送物とは接しないような位置に収納されている。そして、落下防止部材が退避位置から落下防止位置へと移動する場合には、落下防止部材の動きと連動してレバー部が回動し、押圧部の押圧面が積載された被搬送物の側面に押しつけられる。尚、揺れ抑制部材が被搬送物を押圧する際には、レバー部の長さ方向の軸線が被搬送物の側面に対して斜めとなった状態で、押圧部の押圧面が被搬送物の側面に当接される。
【0013】
ここで本発明では特に、搬送部に設けられる落下防止部材及び揺れ抑制部材が、互いに同一の軸心で支持されている。このため、揺れ抑制部材における押圧部の、被搬送物に当接し始める位置と、落下防止部材が突出し終わった際の位置とが互いに異なるものになってしまうことを防止できる。よって、揺れ抑制部材における押圧部を、上述したズレを調整可能とするローラのような部材で構成せずに、押圧面で被搬送物を平面的に押圧可能な部材として構成することができる。被搬送物を平面的に押圧することにより、押圧方向に交わる方向の揺れへの対応が可能となる。
【0014】
また本発明の押圧部は、レバー部が被搬送物の側面に対して斜めになった状態で当接されている。このようにすれば、搬送車の加速或いは減速によって、被搬送物が揺れ抑制部材の押圧方向(即ち、搬送車の走行方向)に揺れた場合であっても、揺れ抑制部材が被搬送物に追従して、揺れを効果的に抑制することが可能である。
【0015】
以上説明したように、本発明の搬送車によれば、互いに同一の軸心となるように支持された落下防止部材及び揺れ抑制部材を備えているため、被搬送物の落下を好適に防止可能であると共に、被搬送物の揺れを好適に抑制可能である。
【0016】
本発明の搬送車の一態様では、前記落下防止部材は、前記退避位置にある場合には前記揺れ抑制部材を押圧して前記被搬送物への突出を防止し、前記落下防止位置にある場合には前記揺れ抑制部材への押圧を解除して前記被搬送物への突出を可能とする突出制御手段を有する。
【0017】
この態様によれば、落下防止部材が退避位置にある場合に、揺れ抑制部材が誤って突出してしまうことを防止できる。よって、落下防止部材及び揺れ抑制部材を、確実に連動させることができる。落下防止部材及び揺れ抑制部材を連動させれば、例えば1つのアクチュエータで落下防止部材及び揺れ抑制部材の両方の動きを制御できる。従って、装置構成の高度複雑化や製造コストの増大を防止することが可能である。
【0018】
本発明の搬送車の他の態様では、前記揺れ抑制部材は、前記レバー部の前記先端側を前記被搬送物の側面へと付勢する付勢手段を有する。
【0019】
この態様によれば、揺れ抑制部材は、例えばねじりバネ等の付勢手段によって、被搬送物を押圧することになる。付勢手段によれば、被搬送物を剛直に固定するのではなく、ある程度の自由度を持たせて押圧できる。このため、積載した被搬送物の振動が増大してしまうことを防止することができる。
【0020】
本発明の搬送車の他の態様では、前記押圧部は、前記レバー部に水平に沿った方向に回動可能に軸支されている。
【0021】
この態様によれば、押圧部が回動可能に軸支されているため、被搬送物に押圧される押圧面の角度を、被搬送物の側面の位置や角度に合わせて調整することができる。例えば、被搬送物の外形寸法には、製作誤差や組立誤差等によってバラツキが生じてしまう。このような場合であっても、本態様の押圧部によれば、被搬送物の側面を確実に平面的に押圧できる。従って、被搬送物の揺れをより確実に抑制できる。
【0022】
本発明の搬送車の他の態様では、前記レバー部は、前記押圧部の回動を所定量以下に規制する回動規制手段を有する。
【0023】
この態様によれば、回動規制手段によって押圧部の回動が規制されるため、押圧部が無制限に回動されてしまうことを防止できる。これにより、押圧部が回動し過ぎることによって、押圧面が被搬送物の側面に当接できなくなる事態を防止できる。よって、押圧部は、被搬送物の側面を確実に平面的に押圧できる。従って、被搬送物の揺れをより確実に抑制できる。
【0024】
本発明の搬送システムは上記課題を解決するために、上述した本発明の搬送車(但し、その各種態様も含む)を具備してなる。
【0025】
本発明の搬送システムによれば、上述した本発明の搬送車が備えられているため、被搬送物の落下を好適に防止可能であると共に、被搬送物の揺れを好適に抑制可能である。尚、本発明の効果は、例えばカーブの多い軌道など、搬送車の揺れが発生し易い要素を多く有するシステムにおいて、より顕著に発揮される。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す上面図である。
【図2】実施形態に係る搬送車の構成を示す側面図である。
【図3】実施形態に係る搬送車の移載動作を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る搬送車の横移載動作を示す斜視図である。
【図5】落下防止部材及び揺れ抑制部材の構成を示す側面図である。
【図6】落下防止位置における落下防止部材及び揺れ抑制部材の配置を示す下面図である。
【図7】退避位置における落下防止部材及び揺れ抑制部材の配置を示す下面図である。
【図8】搬送車における落下防止部材の配置位置を示す下面図である。
【図9】揺れ抑制部材の具体的な構成を示す上面図である。
【図10】搬送車における揺れ抑制部材の配置位置を示す下側から見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0029】
先ず、本実施形態に係る搬送システムの全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す上面図である。
【0030】
図1において、本実施形態に係る搬送システムは、軌道100と、搬送車200と、コントローラ300とを備えて構成されている。
【0031】
軌道100は、例えば天井に敷設されており、アルミニウムやステンレス等の金属から構成される。
【0032】
搬送車200は、軌道100上に複数配置されており、軌道100上を走行することによって被搬送物であるFOUPやレチクル等を搬送することが可能である。
【0033】
コントローラ300は、例えば演算回路やメモリ等を含んで構成されており、搬送車200に搬送指令を出すことが可能に構成されている。搬送車200に設けられた走行制御部(図示せず)は、コントローラ300からの搬送指令を受けて、搬送車200を所定の位置へと走行させる。
【0034】
尚、ここでの図示は省略しているが、軌道100に沿った位置には、FOUPを一時的に保管するバッファが複数設けられている。このバッファの構成については、後に詳述する。
【0035】
次に、軌道100を走行する搬送車200の構成について、図2を参照して説明する。ここに図2は、実施形態に係る搬送車の構成を示す側面図である。
【0036】
図2において、搬送車200は、走行部210、本体部220、移動部230、昇降ベルト240、把持部250、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270を備えて構成されている。
【0037】
搬送車200は、走行部210が例えばリニアモータ等によって推進力を与えることで、走行ローラ215が転動されつつ、軌道100に沿って走行する。走行部210の下面には、本発明の「搬送部」の一例である本体部220が吊り下がる形で取り付けられている。
【0038】
本体部220には、移動部230が取り付けられている。移動部230は、軌道100の側方(即ち、図における左右方向)に移動することが可能である。移動部230の下面には、FOUPを把持する把持部250が昇降ベルト240によって取り付けられている。把持部250は、昇降ベルト240を巻き出す或いは巻き取ることで、本体部220に対し昇降可能である。
【0039】
落下防止部材260は、本体部220の下端周辺に設けられており、積載されたFOUPを下側から支えるように突出することで、FOUPの落下を防止する。
【0040】
揺れ抑制部材270は、上述した落下防止部材260と同一の軸心で支持されるように設けられており、積載されたFOUPの側面を押圧することで揺れを抑制する。
【0041】
落下防止部材260及び揺れ抑制部材270の具体的な構成や動作については、後に詳述する。
【0042】
次に、搬送車によるFOUPの移載方法について、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、実施形態に係る搬送車の移載動作を示す斜視図であり、図4は、実施形態に係る搬送車の横移載動作を示す斜視図である。
【0043】
図3において、搬送車200が軌道100の真下に位置する一時保管棚510(即ち、アンダーバッファ)上のFOUP400を移載する際には、先ず搬送車200が軌道100上を走行して、一時保管棚510上に設置されたFOUP400の上方に停止する。
【0044】
続いて、図に示すように、昇降ベルト240が巻き出されることで把持部250がFOUP400の位置まで降下する。そして、把持部250とFOUP400との位置の微調整が行われ、FOUP400が把持される。
【0045】
FOUP400が把持されると、昇降ベルト240が巻き取られ、把持部250及び把持されたFOUP400が本体部220の位置まで上昇する。そして、再び搬送車200が軌道100上を走行して、FOUP400が搬送される。
【0046】
図4において、FOUP400が軌道100の側方にそれた位置にある一時保管棚520(即ち、サイドバッファ)に設置されている場合には、移動部230が軌道100の側方に移動した後に、昇降ベルト240が巻き出され、把持部250がFOUP400の位置まで降下する。このように動作することで、軌道部100からFOUP400の横移載を行うことが可能となる。
【0047】
次に、本実施形態に係る搬送車に設けられた落下防止部材及び揺れ抑制部材について、図5から図10を参照して、より詳細に説明する。
【0048】
先ず、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270の具体的な構成について、図5を参照して説明する。ここに図5は、落下防止部材及び揺れ抑制部材の構成を示す側面図である。
【0049】
図5において、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270は、同一のシャフト280にそれぞれ接続されている。このため、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270は、互いに連動するように同一の軸心で回動する。より具体的には、動力伝達部290から伝達された動力によってベアリングホルダ285で支持されたシャフト280が回転すると、シャフト280に接続された落下防止部材260及び揺れ抑制部材270が、水平方向に沿って(即ち、図中の手前方向或いは奥行き方向に)それぞれ回動する。
【0050】
続いて、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270の回動動作について、図6及び図7を参照して説明する。ここに図6は、落下防止位置における落下防止部材及び揺れ抑制部材の配置を示す下面図であり、図7は、退避位置における落下防止部材及び揺れ抑制部材の配置を示す下面図である。また図8は、搬送車における落下防止部材の配置位置を示す下面図である。
【0051】
図6及び図7において、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270は、回転機構610にクランク621及び622を介して接続されている。このようにすれば、落下防止部材260及び揺れ抑制部材270の回動動作を、回転機構610の回転によって制御することが可能となる。尚、回転機構610は、例えば図示しないアクチュエータ等によって回転される。
【0052】
ここで仮に、図6に示すように落下防止部材260が落下防止位置にある状態で、回転機構610を図中の矢印Aの方向に回転したとする。すると、回転機構610に接続されたクランク621及び622が、動力伝達部290を図中の矢印Bの方向に回転させる。これにより、落下防止部材260は、図7に示すような退避位置へと移動する。また、揺れ抑制部材270も落下防止部材260の動作に連動して移動する。
【0053】
落下防止部材260及び揺れ抑制部材270は、FOUP400の移載時には、図7に示すような退避位置とされる。即ち、FOUP400の収容空間に突出しないように収納される。これにより、移載されるFOUP400との衝突を防止できる。また、FOUP400を移載した後には、図6に示すように、落下防止位置とされる。落下防止部材260は、積載されたFOUP400の下側に突出することで、FOUPの落下を防止する。揺れ抑制部材270は、積載されたFOUP400の側面を押圧することで、FOUP400の揺れを抑制する。
【0054】
図8において、上述した落下防止部材260は、搬送車200における本体部220の下端周辺に、計4つ設けられている。このように落下防止部材260を設ければ、積載されたFOUP400が把持部250から落下した場合であっても、FOUP400は、落下防止部材260によって支えられた状態となる。従って、搬送車200からFOUP400が落下してしまうことを確実に防止できる。
【0055】
尚、落下防止部材260は、必ずしも4つ設けられなくともよく、FOUP400の落下が防止できるようであれば、より少ない数であっても構わない。また、より耐荷重性能を高めるために、4つを超える数の落下防止部材260が設けられていてもよい。
【0056】
次に、揺れ抑制部材のより具体的な構成について、図9及び図10を参照して説明する。ここに図9は、揺れ抑制部材の具体的な構成を示す上面図である。また図10は、搬送車における揺れ抑制部材の配置位置を示す下側から見た部分断面図である。
【0057】
図9において、揺れ抑制部材270は、レバー部271、押圧部272、回動規制部273、ねじりバネ274及びストッパ275を備えて構成されている。
【0058】
レバー部271は、その一端においてシャフト280に接続されていると共に、他端に押圧部272が取り付けられている。レバー部271は、シャフト280の回転に伴って回動し、押圧部272をFOUP400の側面に当接させる。
【0059】
押圧部272は、例えば樹脂等の弾力性を有する材料を含んで構成されており、レバー部271の一端に回動可能に取り付けられている。押圧部272は、FOUP400の側面を押圧面で平面的に押圧する。これにより、極めて好適にFOUP400の揺れを抑制することができる。
【0060】
回動規制部273は、押圧部272の切り欠き部分に対応するように設けられており、押圧部272が無制限に回動してしまうことを防止する。即ち、回動規制部273は、本発明の「回動規制手段」の一例である。回動規制部273が押圧部272の回動を規制することにより、押圧部272は、確実にFOUP400の側面を平面的に押圧可能となる。押圧部272が回動可能となる所定量は、押圧部272及び回動規制部273間のクリアランスCの大きさによって適宜設定することができる。具体的には、クリアランスCを大きくすれば、押圧部272の回動できる範囲は大きくなり、クリアランスCを小さくすれば、押圧部272の回動できる範囲は小さくなる。
【0061】
ねじりバネ274は、シャフト280を軸にするように設けられており、その一端がレバー部271に取り付けられ、他端がストッパ275に取り付けられている(図5参照)。ねじりバネ274は、本発明の「付勢手段」の一例であり、その付勢力によって押圧部272をFOUP400に押しつける。ねじりバネ274を用いれば、FOUP400を剛直に固定するのではなく、ある程度の自由度を持たせて押圧できる。このため、積載したFOUP400の振動が増大してしまうことを防止することができる。
【0062】
ストッパ275は、本発明の「突出制御手段」の一例であり、シャフト280の回転によってレバー部271と共に回動可能に構成されている。ストッパ275は、レバー部271の凸部701と当接することで、レバー部271の回動を規制している。尚、押圧部272がFOUP400に当接した後には、そこから押圧部272が押し込まれた分だけ、ストッパ275とレバー部271の凸部701との間に間隙が生じる。
【0063】
図10において、上述した揺れ抑制部材270は、搬送車200に設けられた落下防止部材260に対応するように(図8参照)、計4つ設けられている。このように揺れ抑制部材270を設ければ、積載されたFOUP400を、搬送車200の進行方向に沿う方向で押圧できるため、押圧方向の揺れを抑制できる。また、揺れ抑制部材270は、FOUP400を平面的に押圧しているため、搬送車200の進行方向に交わる方向の揺れ(即ち、横揺れ)も効果的に抑制できる。
【0064】
また本実施形態に係る揺れ抑制部材270では、押圧部272が、レバー部がFOUP400の側面に対して斜めになった状態で当接されている。このようにすれば、ローラのように回転しない押圧面であっても、極めて好適にFOUP400を押圧することができる。従って、FOUP400の揺れを効果的に抑制することが可能である。
【0065】
本実施形態では特に、上述した落下防止部材260及び揺れ抑制部材270が、互いに同一の軸心で支持されている(図5参照)。このため、揺れ抑制部材270における押圧部272の、FOUP400に当接し始める位置と、落下防止部材260が突出し終わった際の位置とが互いに異なるものになってしまうことを防止できる。よって、揺れ抑制部材270における押圧部272を、例えばローラのような部材で構成せずに、FOUP400を平面的に押圧可能な部材として構成することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送システムによれば、搬送車200に同一の軸心で支持された落下防止部材260及び揺れ抑制部材270が設けられているため、FOUP400の落下を好適に防止可能であると共に、FOUP400の揺れを好適に抑制可能である。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送車及び搬送システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
100…軌道、200…搬送車、210…走行部、215…走行ローラ、220…本体部、230…移動部、240…昇降ベルト、250…把持部、260…落下防止部材、270…揺れ抑制部材、271…レバー部、272…押圧部、273…回動規制部、274…ねじりバネ、275…ストッパ、280…シャフト、290…動力伝達部、300…コントローラ、400…FOUP、510,520…一時保管棚、610…回転機構、621,622…クランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設された軌道を走行する走行部と、
前記走行部に取り付けられており、把持した被搬送物を収容空間に収容して搬送する搬送部と、
前記搬送部の下端側に、水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記収容空間への前記被搬送物の収容を可能とする退避位置と、前記収容空間に収容された前記被搬送物の下側に突出して前記被搬送物の前記収容空間からの落下を防止する落下防止位置との間を移動可能な落下防止部材と、
前記搬送部の前記落下防止部材より上方側に、前記落下防止部材と同一の軸心で水平に沿った方向に回動可能に軸支されており、前記落下防止部材の前記退避位置から前記落下防止位置への移動に合わせて前記被搬送物の側面を押圧するように突出する揺れ抑制部材と
を備え、
前記揺れ抑制部材は、
前記被搬送物の側面を押圧面で平面的に押圧する押圧部と、
該押圧部を先端側で支持すると共に基端側において前記搬送部に軸支されており、長さ方向の軸線が前記被搬送物の側面に対して斜めとなった状態で前記押圧部を前記被搬送物に当接させる長尺状のレバー部と
を有することを特徴とする搬送車。
【請求項2】
前記落下防止部材は、前記退避位置にある場合には前記揺れ抑制部材を押圧して前記被搬送物への突出を防止し、前記落下防止位置にある場合には前記揺れ抑制部材への押圧を解除して前記被搬送物への突出を可能とする突出制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記揺れ抑制部材は、前記レバー部の前記先端側を前記被搬送物の側面へと付勢する付勢手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記押圧部は、前記レバー部に水平に沿った方向に回動可能に軸支されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項5】
前記レバー部は、前記押圧部の回動を所定量以下に規制する回動規制手段を有することを特徴とする請求項4に記載の搬送車。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送車を具備してなることを特徴とする搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−76894(P2012−76894A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224740(P2010−224740)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(309031466)ムラテックオートメーション株式会社 (52)
【Fターム(参考)】