説明

携帯形通信装置

【課題】 操作者が緊急事態を報知すべきときに、緊急事態の報知のときに必要な電力を確保し、緊急情報を確実に送信することができる携帯形通信装置を提供することである。
【解決手段】 携帯形通信装置の動作モードが通常モードに設定されている状態では、予備電源の電力の利用を禁止し、動作モードが緊急モードに設定されている状態では、主電源の電力を優先させて主電源および予備電源の電力を利用して、位置検出手段に位置を検出させて、少なくとも検出された位置が含まれる緊急情報を送信手段に送信させる緊急時制御動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯形通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、特許文献1に、通常時に用いる主電池と、緊急事態発生時に主電池の電力の不足を補うための予備電池とを備えた携帯形電話装置が示されている。携帯形電話装置は、緊急事態発生時に連絡する可能性のある警察、消防および病院など特定通信先の電話装置を設定しておき、この設定された電話装置との通信中に、主電池による電力の供給が不可能になると、電力の供給源を主電池から予備電池に切換え、当該通信を継続させるように構成されている。
【0003】
他の従来の技術として特許文献2に、電源ONの状態で実行する位置登録を、電源OFFの状態になっても、継続して実行することができる携帯形電話装置が示されている。携帯形電話装置は、電源OFF状態で位置登録タイマを起動し、予め定める間隔で制御部と無線部とに電力を供給することによって、継続的に位置登録動作を繰り返し実行する。また携帯形電話装置から取外しすることができる外部電池と携帯形通信装置に内蔵された内部電池とを備え、外部電池が予め定める電源電圧を供給できない場合は、切換えスイッチによって外部電池を内部電池に切換え、内部電池によって制御部および無線部に電力を供給する。
【0004】
また他の従来の技術として特許文献3に、操作者の操作によって、緊急事態が発生したことを予め定める相手先または周囲の人に報知する携帯形電話装置が示されている。携帯形電話装置は、緊急入力を、緊急検出回路によって検出し、検出結果を中央制御装置に伝達する。中央制御装置は、緊急入力があった場合に、サウンダを制御して自動的に警報を鳴音させ、無線部を制御して自動的に発呼させ、携帯形電話装置の操作者に緊急事態が発生したことを報知する。
【0005】
さらに他の従来の技術として特許文献4に、携帯形電話装置の現在の位置情報を予め定めるセキュリティセンタの端末に送信する携帯形電話装置が示されている。特許文献2に示す携帯形電話装置は、携帯形電話装置の通常使用が可能な通常モードと、操作者の緊急事態を報知するための緊急モードとを有し、予め定めるキー操作によって通常モードから緊急モードに移行すると、GPS(Global Positioning System)を用いて、携帯形電話装置の位置情報を検出し、携帯形電話装置の現在位置を表す情報をセキュリティセンタの端末に送信する。
【0006】
さらに従来の技術として、特許文献5および6には、操作者が携帯形電話装置を紛失した場合に、基地局への位置登録動作によって、位置を探索するシステムに用いられる携帯形電話装置が示されている。また特許文献7〜10には、携帯形電話装置の動作に必要な電力を供給する主電池と、主電池の他に予備電池とを備えた携帯形電話装置が示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−374326号公報
【特許文献2】特開2003−218767号公報
【特許文献3】特開平11−164057号公報
【特許文献4】特開2005−26827号公報
【特許文献5】特開2001−275163号公報
【特許文献6】特開2002−345038号公報
【特許文献7】特開平6−29898号公報
【特許文献8】特開平8−54451号公報
【特許文献9】特開2001−56894号公報
【特許文献10】特開2003−23489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の携帯形電話装置では、特定通信先に通信を実行し、主電池による電力の供給が不可能になると予備電池の電力が消費される。特定通信先の病院などに緊急時以外、たとえば問い合わせのためなどの連絡をする可能性があり、特定通信先への通信が、必ずしも緊急事態を報知するための通信とは限らないので、操作者が緊急事態を報知したいときに、既に予備電池の電力が一部または全部消費され、報知したいときの通信に用いる電力の残量が不足するおそれがある。したがって緊急事態を報知することができないおそれがある。
【0009】
さらに特許文献2に記載の携帯形電話装置では、通常の使用時であっても、外部電池が予め定める電源電圧を供給することができない場合は、内部電池からの電力の供給に切換る。したがって特許文献2に示す携帯形電話装置は、緊急事態が発生した場合に、電力を確保する構成ではない。
【0010】
また特許文献3および4に記載の携帯形電話装置は、緊急事態を報知する構成を有する構成であるけれども、通常使用によって電源の電力がすべて消費され、緊急事態を報知すべきときに、緊急事態を報知する動作に必要な電力が残っていないおそれがあり、緊急事態を報知することができないおそれがある。
【0011】
また特許文献5および6に記載の携帯形電話装置は、携帯形電話装置を紛失した場合に、操作者が携帯形電話装置を探索できるが、緊急事態が発生した場合に緊急事態の発生を報知することができる構成ではない。また特許文献7〜10に記載の携帯形電話装置は、2つの電池を備えるが、緊急事態を報知する構成ではない。
【0012】
本発明の目的は、緊急事態を報知すべきときに緊急事態の報知のときに必要な電力を確保し、緊急情報を確実に送信することができる携帯形通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は携帯形通信装置であって、
主電源および予備電源を保持する電源保持手段と、
携帯形通信装置の位置を検出する位置検出手段と、
情報を送信する送信手段と、
操作者の操作に基づいて、動作モードを通常モードおよび緊急モードのいずれかに設定するモード設定手段と、
動作モードが通常モードに設定されている状態では、予備電源の電力の利用を禁止し、動作モードが緊急モードに設定されている状態では、主電源の電力を優先させて主電源および予備電源の電力を利用して、位置検出手段に位置を検出させて、少なくとも検出された位置が含まれる緊急情報を送信手段に送信させる緊急時制御動作を実行する制御手段とを含むことを特徴とする携帯形通信装置である。
【0014】
本発明に従えば、制御手段は、通常モードでは、予備電源の電力の利用を禁止する。また制御手段は、緊急モードでは、主電源および予備電源の電力の利用を許容する。このように、制御手段は、予備電源の電力の利用を緊急モードに限定する。したがって通常モードで主電源の電力が消費された場合であっても、緊急時制御動作を行う電力を確保することができる。さらに緊急モードでは、主電源の電力が予備電源の電力よりも優先して利用されるので、予備電源の電力をできるだけ利用しない。このような携帯形通信装置では、電力不足による緊急時制御動作の不実行を防ぐことができるとともに、可及的に長時間にわたって緊急時制御動作を行うことができるので、緊急情報を送信し報知先の相手が確実に受信することができる。
【0015】
また本発明は、主電源の電力の残量を検出する残量検出手段を備え、
制御手段は、動作モードが緊急モードに設定されている状態では、残量検出手段の検出結果に基づいて、主電源の電力の残量が通信動作に必要な下限電力以上である場合、主電源の電力によって、緊急時制御動作を繰返し実行し、主電源の電力の残量が下限電力未満である場合、予備電源の電力によって、緊急時制御動作を繰返し実行することを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、緊急時制御動作を繰返し実行する。一回だけ緊急情報を送信する場合は、携帯形通信装置の現在位置の通信環境などによって、送信した緊急情報を報知することができないおそれがある。緊急時制御動作を繰返し実行することによって、複数回緊急情報が送信されるので、一回だけ緊急情報を送信する場合と比較して、送信した緊急情報が報知先に報知される確率を高くすることができる。また携帯形通信装置の位置情報を長時間にわたって経時的に報知先に報知することができるので、携帯形通信装置の現在位置を報知先の相手に正確に把握させることができる。このように緊急情報を迅速かつ確実に送信するとともに、現在位置を正確に報知先に伝えることができる。
【0017】
また本発明は、制御手段は、主電源の電力の残量が通信動作に必要な下限電力以上である場合、第1設定時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰返し、緊急情報を送信させ、主電源の電力の残量が下限電力未満である場合、第1設定時間間隔よりも大きい第2設定時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰返すことを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、制御手段は、主電源の電力の残量が通信動作に必要な下限電力以上である場合は、第1設定時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰り返し、予備電源の電力によって緊急時制御動作を実行する場合は、第1時間間隔よりも大きい第2時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰返す。このように電力の残量に余裕がある場合に、小さい時間間隔で緊急時制御動作を行うことによって、少なくとも位置情報を含む緊急情報が単位時間あたり高頻度で送信される。また電力の残量が予備電源のみとなった場合に、緊急時制御動作を実行する時間間隔を大きくすることによって、緊急情報が長時間にわたって繰返し送信され続ける。したがって電力の残量に余裕があるときは、時間間隔を小さくして現在位置を高精度に報知先に伝え、また可及的に長期間にわたって緊急情報を送信することができる。
【0019】
また本発明は、基地局との間での通信環境を検出する通信環境検出手段を備え、
制御手段は、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行し、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行することを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、制御手段は、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させ、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行する。したがって通信環境が良好であって、大きな送信出力が必要でない場合に、送信に必要な電力の消費を抑えることができる。したがって長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。また通信環境が不良なとき、大きい出力で緊急情報を送信させるので、小さい出力で送信する場合と比較して、報知先に報知することができる。このように電力の無駄な消費を抑え、かつ緊急情報を確実に報知先に報知することができる。
【0021】
また本発明は、基地局との間での通信環境を検出する通信環境検出手段を備え、
主電源の電力の残量を検出する残量検出手段を備え、
制御手段は、主電源の電力の残量が下限電力以上である場合には、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行し、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行し、主電源の電力の残量が下限電力未満である場合には、小さい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行することを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、制御手段は、主電源の電力残量が下限電力以上である場合には、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させ、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させる。したがって通信環境が良好であって、大きな送信出力が必要でない場合に、送信に必要な電力の消費を抑えることができる。したがって長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。
【0023】
また制御手段は、予備電源の電力を利用して緊急時制御動作を実行する場合は、送信出力を小さくするので、出力を大きくした状態で送信する場合と比較して、長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。
【0024】
このように主電源および予備電源を合わせた電力が充分に残っている場合には、通信状態を考慮するので、確実に緊急情報を報知することができる。また予備電源が利用される場合は、送信出力を小さくすることによって、できるだけ長時間にわたって緊急情報を送信することができる。
【0025】
また本発明は、緊急情報は、文字、音声および画像のいずれか1つ以上の形態で表されることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、緊急情報が文字、音声および画像いずれか1つ以上の形態で表されるので、報知先に伝わり易く報知することができる。
【0027】
また本発明は、緊急情報は、携帯形通信装置の位置とは異なる情報を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、緊急情報は、携帯形通信装置の位置とは異なる情報を含むので、位置のみの情報である場合と比較して、緊急情報の情報量を多くすることができる。したがって送信された相手先に正確に緊急事態を通知することができる。
【0029】
また本発明は、制御手段は、携帯形通信装置が緊急モードでの動作の報知を禁止することを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば、緊急モードでの動作の報知を禁止するので、緊急情報が送信されていることを周囲の人に気付かれることがない。
【0031】
また本発明は、制御手段は、動作モードが緊急モードに設定された時点から予め定める時間経過した後に緊急時制御動作を開始することを特徴とする。
【0032】
本発明に従えば、操作者が誤って動作モードを緊急モードに設定した場合に、予め定める時間内に動作モードを通常モードに設定することによって、緊急情報の誤送信を防ぐことができる。
【0033】
また本発明は、予備電源は、一次電池であることを特徴とする。
本発明に従えば、一次電池は、二次電池と比較して自然放電量が小さい。したがって自然放電に起因する予備電源の電力の残量不足を防ぐことができるので、確実に緊急情報を送信することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、通常モードで主電源の電力が消費された場合であっても、緊急時制御動作を行う電力を確保することができる。さらに緊急モードでは、主電源の電力が予備電源の電力よりも優先して利用されるので、予備電源の電力をできるだけ利用しない。このような携帯形通信装置では、電力不足による緊急時制御動作の不実行を防ぐことができるとともに、可及的に長時間にわたって緊急時制御動作を行うことができるので、緊急情報を送信し報知先の相手が確実に受信することができる。
【0035】
また本発明によれば、送信した緊急情報が報知先に報知される確率を高くすることができる。また携帯形通信装置の位置情報を長時間にわたって経時的に報知先に報知することができるので、携帯形通信装置の現在位置を報知先の相手に正確に把握させることができる。このように緊急情報を迅速かつ確実に送信するとともに、現在位置を正確に報知先に伝えることができる。
【0036】
また本発明によれば、電力の残量に余裕がある場合に、小さい時間間隔で緊急時制御動作を行うことによって、少なくとも位置情報を含む緊急情報が単位時間あたり高頻度で送信される。また電力の残量が予備電源のみとなった場合に、緊急時制御動作を実行する時間間隔を大きくすることによって、緊急情報が長時間にわたって繰返し送信され続ける。したがって電力の残量に余裕があるときは、時間間隔を小さくして現在位置を高精度に報知先に伝え、また可及的に長期間にわたって緊急情報を送信することができる。
【0037】
また本発明によれば、通信環境が良好であって、大きな送信出力が必要でない場合に、送信に必要な電力の消費を抑えることができる。したがって長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。また通信環境が不良なとき、大きい出力で緊急情報を送信させるので、小さい出力で送信する場合と比較して、報知先に報知することができる。このように電力の無駄な消費を抑え、かつ緊急情報を確実に報知先に報知することができる。
【0038】
また本発明によれば、通信環境が良好であって、大きな送信出力が必要でない場合に、送信に必要な電力の消費を抑えることができる。したがって長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。
【0039】
また制御手段は、予備電源の電力を利用して緊急時制御動作を実行する場合は、送信出力を小さくするので、送信出力を大きくした状態で送信する場合と比較して、長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。
【0040】
このように主電源および予備電源を合わせた電力が充分に残っている場合には、通信状態を考慮するので、確実に緊急情報を報知することができる。また予備電源が利用される場合は、送信出力を小さくすることによって、できるだけ長時間にわたって緊急情報を送信することができる。
【0041】
また本発明によれば、緊急情報が文字、音声および画像いずれか1つ以上の形態で表されるので、報知先に伝わり易く報知することができる。
【0042】
また本発明によれば、緊急情報は、携帯形通信装置の位置とは異なる情報を含むので、位置のみの情報である場合と比較して、緊急情報の情報量を多くすることができる。したがって送信された相手先に正確に緊急事態を通知することができる。
【0043】
また本発明によれば、緊急情報が送信されていることを周囲の人に気付かれることがない。
また本発明によれば、緊急情報の誤送信を防ぐことができる。
【0044】
また本発明によれば、自然放電に起因する予備電源の電力の残量不足を防ぐことができるので、確実に緊急情報を送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1は、本発明の実施の一形態の携帯形通信装置1の主要な電気的な構成を示すブロック図である。本実施の形態の携帯形通信装置1は、たとえば基地局75と無線通信を実行し、他の端末装置に音声情報、文字情報および画像情報を送信することができる。携帯形通信装置1は、動作モードが、操作者が実行する予め定める操作によって、通常の使用が可能な通常モードおよび操作者が緊急事態を報知するための緊急モードであるエマージェンシーモードに設定される。緊急事態は、操作者が、たとえば火災および遭難などの事故ならびに誘拐および強盗などの犯罪に遭遇した場合などを含み特に限定されるものではない。
【0046】
携帯形通信装置1は、エマージェンシーモード制御部2と、モード設定手段3と、残量検出手段6と、電源切換手段7と、通信環境検出手段8と、画面表示手段9と、メモリ手段10と、位置検出手段の一例であるGPS(Global Positioning System)受信手段11と、送信手段12と、電源保持手段30とを備える。電源保持手段30は、たとえば第1電源保持部35と第2電源保持部36とを有する。第1電源保持部35には、主電源31が保持され、第2電源保持部36には予備電源32が保持される。主電源31および予備電源32の電力は、携帯形通信装置1の各動作に利用される。
【0047】
エマージェンシーモード制御部2は、携帯形通信装置1の制御手段に含まれ、たとえば、中央演算処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)によって実現され、エマージェンシーモード制御プログラムを実行する。これによって、エマージェンシーモード制御部2は、エマージェンシーモードに設定された状態の携帯形通信装置1の動作を実行させる。本発明では、エマージェンシーモードに設定された状態での携帯形通信装置1の動作を緊急時制御動作と言う場合がある。
【0048】
モード設定手段3は、エマージェンシーモード移行手段4と、エマージェンシーモード解除手段5とを含む。エマージェンシーモード移行手段4に予め定める操作を操作者が実行することによって、エマージェンシーモード制御部2にエマージェンシーモード移行信号が与えられる。エマージェンシーモード制御部2にエマージェンシーモード移行信号が与えられると、エマージェンシーモード制御部2がエマージェンシーモード制御プログラムを実行して、携帯形通信装置1の動作モードを通常モードからエマージェンシーモードに移行させる。
【0049】
また操作者がエマージェンシーモード解除手段5に予め定める操作を実行することによって、エマージェンシーモード解除信号がエマージェンシーモード制御部2に与えられる。エマージェンシーモード制御部2にエマージェンシーモード解除信号が与えられると、携帯形通信装置1の動作モードがエマージェンシーモードから通常モードに移行する。
【0050】
携帯形通信装置1は、前記通常モードに設定されている状態では、主電源31の電力のみを利用して通信などの各動作を実行する。通常モードでは、主電源31の電力は、主電源ライン76および電力供給ライン72を介して、携帯形通信装置1の各構成に供給される。またエマージェンシーモードに設定されている状態では、主電源31の電力を優先させて、主電源および予備電源の電力を利用して緊急時制御動作を実行する。
【0051】
残量検出手段6は、たとえばA/D(Analog/Digital)変換器などを備え、緊急時制御動作において、エマージェンシーモード制御部2からの命令を受けると、主電源31の出力電圧を検出して、検出した結果をエマージェンシーモード制御部2に与える。電源切換手段7は、エマージェンシーモード制御部2からの電源切換命令を受けると、携帯形通信装置1の動作に利用する電力を主電源31から予備電源32に、予備電源32から主電源31に切換える。このように電源切換手段7は、電源切換動作を実行する。主電源31および予備電源32は、主電源ライン76および予備電源ライン77ならびに電力供給ライン72を介して携帯形通信装置1の各構成に電力を供給する。
【0052】
通信環境検出手段8は、たとえば電界強度検出回路によって実現される。通信環境検出手段8は、エマージェンシーモード制御部2からの検出命令を受けると、携帯形通信装置1が無線通信を実行する基地局75との通信環境状態を検出し、エマージェンシーモード制御部2に検出結果を与える。
【0053】
画面表示手段9は、たとえばカラー表示可能な半透過形液晶表示素子によって実現される。また透過形液晶表示素子、反射形液晶表示素子、EL(Electro Luminescence)素子などで実現されてもよい。画面表示手段9は、エマージェンシーモード制御部2からの制御命令を受けることによって、文字および画像の表示、非表示が制御される。
【0054】
メモリ手段10は、たとえばフラッシュメモリなどの書換え可能な不揮発性メモリによって実現される。メモリ手段10には、たとえば携帯形通信装置1の操作者が任意に設定する報知先の端末装置の電子メール(以下「Eメール」という場合がある)アドレスが記憶される。
【0055】
GPS受信手段11は、位置測位システムの一例であるGPSを利用して携帯形通信装置1の位置を測位する。GPS受信手段11は、地球上を周回する複数のGPS衛星からの信号を受信するGPS用アンテナを備え、受信した信号を復調する。
【0056】
送信手段12は、Eメール送信手段13と無線通信手段14とを含む。Eメール送信手段13は、緊急時制御動作において、エマージェンシーモード制御部2からのEメール送信命令を受けると、メモリ手段10に予め記憶されている報知先の端末装置のEメールアドレス宛にEメールを送信する。このようにEメール送信手段13は、Eメール送信動作を実行する。またGPS受信手段11は、緊急時制御動作において、エマージェンシーモード制御部2からの命令を受けると、携帯形通信装置1の現在位置を測位して、測位結果をエマージェンシーモード制御部2に与える。エマージェンシーモード制御部2は、携帯形通信装置1の位置情報である測位結果を無線通信手段14に送信させる。このように無線通信手段14は、位置情報送信動作を実行する。無線通信手段14が送信した位置情報は、たとえば前記Eメールの送信先である報知先の端末装置とは異なる他の端末装置からアクセス可能なサーバに送信される。
【0057】
図2は、携帯形通信装置1の構成を詳細に示すブロック図である。携帯形通信装置1は、操作部15と、プログラム用メモリ16と、データ用メモリ17と、制御部18と、受話部19と、送話部20と、アンテナ21と、送信部22と、受信部23と、電界強度検出部24と、電圧検出部25と、電源切換部26と、モード設定部27と、GPS受信部28と、表示部29と、電源保持手段30と、主電源31と、予備電源32とを備える。
【0058】
操作部15は、携帯形通信装置1の各種機能を設定または選択するファンクションキーと、電話番号および文字情報などのデータを入力するデータ入力キーとを含む。プログラム用メモリ16は、たとえばROM(Read Only Memory)などの不揮発性のメモリによって実現され、携帯形通信装置1の通常モードおよびエマージェンシーモードに設定された状態での動作のための制御プログラムが記憶される。データ用メモリ17は、たとえばフラッシュメモリなど書換え可能な不揮発性メモリによって実現される。データ用メモリ17には、たとえば携帯形通信装置1の操作者が任意に設定する報知先の端末装置のEメールアドレス情報が記憶される。また操作者がデータ入力キーを操作することによって、予め定める緊急事態を表す文字情報などを記憶させることができる。
【0059】
制御部18は、中央演算処理ユニットを備える。制御部18には、エマージェンシーモード制御部2が含まれる。エマージェンシー制御部2は、プログラム用メモリ16からエマージェンシーモード制御プログラムを読出し、実行することによって、携帯形通信装置1のエマージェンシーモードでの動作を制御する。
【0060】
送話部20は、たとえばマイクロフォンによって実現され、携帯形通信装置1の通話時の送話音声が入力される。受話部19は、たとえばスピーカによって実現され、通話時の受話音声などが出力される。
【0061】
アンテナ21は、たとえば伸縮自在なロッドアンテナによって実現され、基地局75との間で信号の送受信を実行する。送信部22および受信部23は、アンテナ21に接続される。送信部22は、高周波信号を変調する変調器と、変調器出力を周波数シンセサイザの出力と混合して、無線周波数に変換するミキサと、無線周波数を増幅する送信電力増幅器とを備える。送信部22は、基地局75に信号の送信を行う。送信部22における送信出力は、制御部18から与えられる制御命令によって可変可能に調整される。
【0062】
受信部23は、IF(Intermediate Frequency)増幅器および遅延検波回路または逆拡散回路を備え、基地局75からの電波を受信して復調して信号を取出す。電界強度検出部24は、包絡線検波器およびA/D変換器を備える。電界強度検出部24は、制御部18からの電界強度検出命令を受けると、受信部23で変換された信号から電界強度を検出し、検出結果を制御部18に与える。制御部18は、電界強度検出部24から与えられた検出結果から電界強度を判定する。電界強度は、基地局75から発射された電波の受信点での強度である。
【0063】
電圧検出部25は、A/D変換器を備え、主電源31の出力電圧を検出して、検出した結果を制御部18に与える。電源切換部26は、制御部18からの電源切換え命令を受けると、携帯形通信装置1の動作に利用する電力を主電源31から予備電源32に切換え、また予備電源32から主電源31に切換える。
【0064】
モード設定部27は、たとえば携帯形通信装置1に設けられる連結具および開閉器ならびにストラップを含んで構成される。モード設定部27のストラップを引っ張ることによって、制御部18にエマージェンシーモード移行信号が与えられ、携帯形通信装置1の動作モードが通常モードからエマージェンシーモードに移行する。またストラップを連結する連結具を押圧することによって、制御部18にエマージェンシーモード解除信号が与えられ、エマージェンシーモードから通常モードに移行する。
【0065】
GPS受信部28は、位置測位システムの一例であるGPSを利用して携帯形通信装置1の位置を測位する。GPS受信部28は、地球上を周回する複数のGPS衛星からの信号を受信するGPS用アンテナを備え、制御部18からの位置検出命令を受けると、測位した結果を制御部18に与える。表示部29は、たとえばカラー表示可能な半透過形液晶表示素子によって実現される。また透過形液晶表示素子、反射形液晶表示素子、EL素子などで実現されてもよい。表示部29は、制御部18からの制御命令を受けることによって、文字および画像の表示、非表示などが制御される。
【0066】
電源保持手段30には、主電源31および予備電源32が保持される。主電源31は、たとえば二次電池によって実現される。予備電源32は、一次電池によって実現される。携帯形通信装置1は、前記通常モードに設定されている状態では、主電源31の電力が主電源ライン76および電力供給ライン72を通じて各構成に供給され、通信および表示部29に情報を表示するなどの各動作を実行する。またエマージェンシーモードに設定されている状態では、主電源の電力を優先させて、主電源31および予備電源32の電力が各構成に主電源ライン76および予備電源ライン77ならびに電力供給ライン72を通じて供給され緊急時制御動作を実行する。
【0067】
本実施形態の携帯形通信装置1では、送信部22は送信手段12の一例であり、電界強度検出部24は通信環境検出手段8の一例であり、データ用メモリ17はメモリ手段10の一例であり、GPS受信部28はGPS受信手段11の一例であり、制御部18は制御手段の一例であり、電源切換部26は電源切換手段7の一例であり、モード設定部27はモード設定手段3の一例である。
【0068】
図3は、携帯形通信装置1の外観を示す斜視図である。携帯形通信装置1は、ハウジング33とアンテナ21と操作部15とストラップ34と表示部29と第1電源保持部35と第2電源保持部36と受話口37と送話口38とを備える。ハウジング33は、たとえばプラスチックなど合成樹脂などで形成される。ハウジング33の形状は、特に限定されるわけではないが、本実施形態では、たとえば直方体状の形状である。ハウジング33の長手方向一方側の端面部である上面部44には、基地局75と無線通信を実行するためのアンテナ21が設けられる。なお、アンテナ21はハウジング33の中に内蔵されていてもよい。
【0069】
ハウジング33の厚み方向一方側の表面部である正面部41には、表示部29と操作部15と受話口37と送話口38が設けられる。操作部15は、ファンクションキー39およびデータ入力キー40とを備える。データ入力キー40を、操作者が押下することによって、たとえば電話番号、文字情報などが入力される。ファンクションキーを、操作者が押下することによってたとえば、前記データ入力キーによって入力された電話番号に発呼される。
【0070】
ハウジング33の厚み方向他方側の表面部である背面部には、第1電源保持部35が設けられる。第1電源保持部35には、主電源31が保持される。第1電源保持部35に保持される主電源31はたとえば、二次電池であって、本実施形態では、たとえばリチウムイオンバッテリが用いられる。
【0071】
ハウジング33の短手方向一方側の端面部42には、第2電源保持部36が設けられる。予備電源32は、第2電源保持部36に保持され、ハウジング33内に収納した状態で、取替え可能に保持される。第2電源保持部36には、予備電源32が保持される。予備電源32は、たとえば一次電池であって、本実施形態では、たとえばボタン電池が用いられる。
【0072】
ハウジング33の長手方向他方側の端面部である底面部43には、モード設定部27である、エマージェンシーモード移行手段4およびエマージェンシーモード解除手段5の一例であるストラップ34が設けられる。本実施形態では、操作者がストラップ34を引下げることによって、携帯形通信装置1の動作モードが通常モードからエマージェンシーモードに移行する。またストラップ34を押上げることによって、エマージェンシーモードから通常モードに移行する。
【0073】
図4は、モード切換動作および電源切換動作を説明するための電源切換部26およびモード設定部27の概略を示す回路図である。モード設定部27は、たとえば開閉器60を含む。開閉器60の第1固定接点50は、たとえば携帯形通信装置1の導電性部材78に接続され、いわゆる機体にアースされた状態になる。第2固定接点51は、第1ライン67に接続される。第1ライン67に設けられた第1端子部74は制御部18に接続される。開閉器60の可動接点52は、たとえばストラップ34が固定される連結具に機械的に接続される。
【0074】
電源切換部26は、たとえばスイッチ素子68を含む。主電源31の一方の端子は、主電源ライン76を介してスイッチ素子68の第1接点69に接続される。予備電源32の一方の端子は、予備電源ライン77を介して、スイッチ素子68の第2接点70に接続される。スイッチ素子68の可動接点(以下「スイッチ接点」という)71は、電力供給ライン72に接続される。電力供給ライン72は携帯形通信装置1を構成する各部に接続される。またスイッチ素子68のスイッチ接点71は、電力供給ライン72を介して、電力供給ライン72から分岐する第2ライン73に接続される。第2ライン73に設けられた第2端子部75は電圧検出部25に接続される。第1ライン67と電力供給ライン72とは抵抗74を介して電気的に接続される。
【0075】
通常モードでは、スイッチ素子68のスイッチ接点71は、第1接点69に接続される。通常モードでは、主電源の電力のみが電力供給ライン72を介して携帯形通信装置1の各構成に供給される。開閉器60の可動接点52が第1固定接点50と第2固定接点51に電気的に接続されると、電位の低下が制御部18に検出され、携帯形通信装置1の動作モードがエマージェンシーモードに移行する。エマージェンシーモードに移行すると、電圧検出部25が制御部18からの検出命令を受けて、主電源31の出力電圧を検出する。検出された出力電圧は信号として制御部18に与えられる。制御部18は、与えられた電圧値に基づいて、主電源31の電力の残量が携帯形通信装置1の通信動作に必要な下限電力未満である場合には、電源切換部26に電源切換命令を与える。電源切換部26は、制御部18から電源切換命令が与えられると、図4の仮想線で示すように、スイッチ素子68のスイッチ接点71を第2接点70に接続させる。スイッチ接点71が第2接点70に接続されると、予備電源32の電力が電力供給ライン72を介して携帯形通信装置1の各構成に供給される。本実施形態の携帯形通信装置1の主電源31の蓄電量は、たとえば予備電源32の蓄電量と比較して大きい。
【0076】
図5は、通常位置47の開閉器60を示す断面図である。図6は、過渡位置64の開閉器60を示す断面図である。図7は、緊急位置48の開閉器60を示す断面図である。ハウジング33には、ストラップ34が連結される連結部44が形成され、連結部44には、嵌合孔45が形成されている。ストラップ34は、携帯形通信装置1の携帯性を向上するために設けられており、たとえば環状の索条体を用いて構成されている。このストラップ34には、連結具46が固定されており、連結具46が嵌合孔45を介して少なくとも部分的にハウジング33内に挿入される状態で、ハウジング33に係止され、ストラップ34がハウジング33に連結される。
【0077】
連結具46は、最も内側の位置である通常位置47と最も外方側の位置である緊急位置48とにわたって、ハウジング33内外方向A1,A2へ変位可能に係止されている。連結具46は、モード設定部27の開閉器60を開閉操作する操作部材であって、連結具46を通常位置47と緊急位置48とにわたって変位させることによって、開閉器60を開閉することができる。
【0078】
ハウジング33の連結部44付近の内表面部には、制御部18に第1ライン67を介して電気的に接続される第1固定具接点50と、器体に接続されるグランドラインに電気的に接続される第2固定接点51とが設けられ、連結具46には、可動接点52が設けられる。連結具46が通常位置47に配置される状態で、可動接点52が第1および第2固定接点50,51に対して離間し、開閉器60は開く。連結具46が緊急位置48に配置される状態では、可動接点52が第1および第2固定接点50,51に接触し、第1および第2固定接点50,51を可動接点52によって電気的に接続し、開閉器60は、閉じる。
【0079】
さらに具体的には、連結具46は円柱状であって、軸線方向の両端部46a,46bが中間部46cの外径d46cよりも大きい外径d46a,d46bを有している。連結具46の中間部46cには、導電材料から成り、円環状に形成される可動接点52が外嵌されている。可動接点52の内径d52は、連結具46の両端部46a,46bの外径d46a,d46bよりも小さく、中間部46cの外径d46cよりも大きい。また可動接点52の軸線方向寸法L52は、連結具46の中間部46cの軸線方向寸法L46cよりも小さく、可動接点52は、連結具46に対して、一端部46aに当接する第1位置62と、他端部46bに当接する第2位置63とにわたる可動範囲内で、軸線方向へ変位可能である。
【0080】
連結具46は、一端部46aをハウジング33の内方側に配置して設けられている。連結具46の他端部46bには、半径方向外方に突出する突起61が形成されている。ハウジング33の連結部44に形成される嵌合孔45は、円形状である。連結部44には、円周方向に延びる環状の凹溝65が形成されている。連結部44の凹溝65を除く部分の内径d33は、連結具46の一端部46aの外径d46aとほぼ同じで、かつ少し大きい。連結具46は、少なくともこの連結部44によって、ハウジング33の内外方向に案内されている。連結具46は、通常位置47にある状態で、突起61が凹溝65に嵌り込むことによって、安定して位置が保持される。
【0081】
連結具46が通常位置47にある状態では、他端部46bの中間部46c寄りの端面66は、第1および第2固定接点50,51よりもハウジング33の内方側にあって、可動接点52は、第1および第2固定接点50,51よりもハウジング33の内方側に配置され、互いに離間している。
【0082】
また可動接点52のハウジング33に対する可動範囲を規定するために位置決め片53が設けられる。この位置決め片53は、ハウジング33に直接または間接的に固定されている。この位置決め片53は、連結具46が通常位置47にある状態で、可動接点52をハウジング33の内方側から係止して、第1位置62に向う方向の変位を阻止し、第2位置付近に配置させる。
【0083】
さらに可動接点52のハウジング33に対する外方への変位を抑制するための接点接続抑止手段54が設けられる。接点接続抑止手段54は、連結具46に近づく方向C1および遠ざかる方向C2へ変位可能に設けられる抑止片55と、ハウジング33に直接または間接的に固定されるばね受け片56によって支持され、連結具46に近づく方向C1のばね力を抑止片55に与える抑止ばね部材58とを有する。本実施形態の携帯形通信装置1では、複数、たとえば2つの接点接続抑止手段54が設けられている。
【0084】
各抑止片55は、連結具46に近づくにつれて、ハウジング33の外方に向う案内面57がそれぞれ形成されている。各抑止片55は、連結具46が通常位置47にある状態で、可動接点52を、案内面57によってハウジング33の外方側から係止するように設けられている。これによって、各抑止片55は、各抑止ばね部材58のばね力によって、可動接点52をハウジング33の内方に向けて弾発的に押圧することができる。各抑止ばね部材58は、たとえば圧縮コイルばねによって実現される。
【0085】
また連結具46の中間部46cには、ハウジング1の内方側に配置される連結具46の一端部46a寄りの部分に、相対変位抑止ばね部材59が設けられる。この相対変位抑止ばね部材59は、連結具46と可動接点52との相対変位を抑止するばね部材であって、半径方向へ出没するように弾発的に変形可能な構成を有している。相対変位抑止ばね部材59は、半径方向外方に凸となるように弧状に湾曲して軸線方向に延びる線状のばね部材によって実現されている。相対変位抑止ばね部材59は、可動接点52が少なくとも第1位置62にある状態では、可動接点52を半径方向内方から外方に向けて押圧するようにばね力を与え、可動接点52が少なくとも第2位置63にある状態では、可動接点52を第1位置62に向う方向への変位を阻止するようにばね力を与える。このようなばね力によって、連結具46と可動接点52とは、相対的な変位が抑止される。
【0086】
図5に示すように連結具46が通常位置47にある状態では、突起61が凹溝65に嵌り込んで安定している。この状態で、可動接点52は、連結具46の他端部46bの中間部46cよりの端面66と、位置決め片53とに挟まれる状態で、連結具46に対する変位が阻止され、結果としてハウジング33に対する変位も阻止されている。さらにこの状態では、可動接点52が第1および第2固定接点50,51から離間しており、開閉器60は、開いている。このようにして連結具46が通常位置にある状態では、開閉器60が開状態に安定して保持される。
【0087】
通常位置47にある連結具46に、たとえば利用者が、ストラップ34を引っ張って、ハウジング33の外方A1へ変位させる力を加えると、突起61およびハウジング33の少なくともいずれか一方が弾発的に変形し、突起61が凹溝65から脱出し、連結具46は、外方A1へ変位する。
【0088】
相対変位抑止ばね部材59および各接続抑止ばね部材58は、抑止片55を連結具46から遠ざける方向C2に変位させるために、可動接点52に与える必要がある外方A1への力が、相対変位抑止ばね部材59を半径方向内方に没入させるために可動接点52に与える必要がある内方A2への力よりも大きくなるように、発生ばね力が設定されている。したがって通常位置47にある連結具46を、外方A1へ変位させると、可動接点52がハウジング33に対して変位せずに、相対変位抑止ばね部材59のばね力に抗して、連結具46に対して変位して、図6のような、連結具46が過渡位置64に配置される過渡状態となる。
【0089】
過渡位置64は、連結具46の一端部46aと可動接点52とが当接する位置である。連結具46が通常位置47と過渡位置64との間にある状態では、可動接点52が第1および第2固定接点50,51から離間して、開閉器60が開いた状態にある。このようにいわゆる遊びを有する構成であり、携帯形通信装置1の取扱い中に、操作者の体の一部および物品などにストラップ34が不所望に引っ掛かるなどして、連結具46が変位しても、開閉器60が閉じにくくすることができる。したがって誤動作を防ぐことができる。また単に遊びを設けるだけでなく、突起61が凹溝65に嵌り込む構成、および相対変位阻止ばね59を設ける構成によって、連結具46が通常位置47から容易に変位しないようにすることができる。
【0090】
過渡位置64にある連結具46に、さらに外方A1に変位させる力を与えると、可動接点52が連結具46の一端部46aによって外方A1に押圧され、連結具46とともに可動接点52が、接続抑止ばね部材58のばね力に抗して変位し、図7のような連結具46が緊急位置48に配置される緊急状態となる。この緊急状態で可動接点52は、第1および第2固定接点50,51間に嵌り込み、第1および第2固定接点50,51に弾発的に当接する。これによって、第1および第2固定接点50,51が、可動接点52によって電気的に接続され、開閉器60が閉じる。また緊急状態で、可動接点52は、第1および第2固定接点50,51に対して弾発的に当接しているので、内外方A1,A2への変位が抑制され、連結具46が、可動接点52に対して相対変位抑止ばね部材59のばね力で変位が抑制されている。これによって連結具46は、緊急位置48でも、安定して位置が保持されるように構成されている。
【0091】
操作者が手で連結具46を押圧するなどして、緊急位置にある連結具46に、内方A2に向う力を与えると、相対変位抑止ばね部材59のばね力によって、連結具46と可動接点52とがともに内方A2に変位し、図6に示す連結具46が過渡位置64に配置される過渡状態となる。この状態からさらに連結具46に内方A2への力を与えると、位置決め片53によって可動接点52がハウジング33に対する内方A2への変位が阻止され、連結具46が可動接点52に対して相対的に変位し、図5に示す連結具46が通常位置47に配置される通常状態となる。
【0092】
モード設定手段3は、開閉器60と連結具46とストラップ34と接点接続抑止手段54と相対変位抑止ばね部材59とを含んで実現される。
【0093】
図8および図9は、携帯形通信装置1のエマージェンシーモードにおける緊急時制御動作を段階的に示すフローチャートである。図8および図9においてSi(i=1,2,3,…)はステップを示す。エマージェンシーモードでは、プログラム用メモリ16に記憶されたエマージェンシーモード用のプログラムを制御部18が読出し、緊急時制御動作を実行する。操作者が携帯形通信装置1のストラップ34を引下げることによって、開閉器60の第1固定接点50と第2固定接点51とが可動接点52を介して電気的に接続されると、制御部18にエマージェンシーモード移行信号が与えられ、エマージェンシーモードが起動して、ステップS0からステップS1に移行する。
【0094】
ステップS1では、制御部18は、電圧検出部25に主電源31の出力電圧を検出させる。電圧検出部25によって検出された主電源の出力電圧に基づいて、主電源31の電力の残量が、携帯形通信装置1の通信動作に必要な予め定める下限電力以上であると判断した場合は、ステップS2に移行する。
【0095】
ステップS2では、制御部18は、電界強度検出部24によって検出された電界強度に基づいて、携帯通信装置1の現在位置の通信状態を判断する。具体的には、携帯形通信装置1が無線通信可能か否かを判断する。制御部18が携帯形通信装置1の現在位置が、通信可能な位置(以下「圏内」という場合がある)であると判断した場合は、ステップS3に移行し、通信不能な位置(以下「圏外」という場合がある)であると判断した場合は、ステップS5に移行する。
【0096】
ステップS3では、制御部18は、データ用メモリ17から、予め記憶されたEメールアドレスおよび予め記憶された緊急事態を表す情報を読出し、送信部22から前記Eメールアドレス宛に前記緊急事態を表す情報が添付されたEメールを送信させる。また制御部18は、電界強度検出部24によって検出される電界強度に基づいて、通信環境が良好なときは、小さい送信出力になるように送信部22を制御する。また電界強度検出部24によって検出される電界強度に基づいて、通信環境が不良なときは、大きい送信出力で送信させる。前記Eメールの送信が完了するとステップS4に移行する。
【0097】
ステップS4では、制御部18は、GPS受信部28に位置情報を検出させる。GPS受信部28によって検出される携帯形通信装置1の位置情報が制御部18に与えられる。制御部18に与えられた位置情報は、送信部22から送信される。位置情報の送信は、たとえば予め定めるサーバに送信し、前記Eメールを受取った報知先の端末装置とは異なる他の端末装置から位置情報が閲覧できるようにする。また制御部18は、電界強度検出部24によって検出される電界強度に基づいて、通信環境が良好なときは、小さい送信出力になるように送信部22を制御する。また電界強度検出部24によって検出される電界強度に基づいて、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で送信させる。位置情報の送信が完了するとステップS7に移行する。
【0098】
ステップS2において、携帯電話端末1が圏外と判断されステップS5に移行した場合は、制御部18は、送信部22の送信出力を最大にする。制御部18は、データ用メモリ17から、予め記憶されたEメールアドレスおよび予め記憶された緊急事態を表す情報を読出し、送信部22から前記Eメールアドレス宛に前記緊急事態を表す情報が添付されたEメールを、送信出力を最大にした状態で送信させる。送信出力を最大にした状態で送信するとは、たとえば携帯形通信装置1の法定の送信出力範囲の最大出力で送信することである。最大の送信出力でのEメールの送信が完了するとステップS6に移行する。
【0099】
ステップS6では、制御部18は、GPS受信部28に位置情報を検出させる。GPS受信部28によって検出された携帯形通信装置1の位置情報が制御部18に与えられる。制御部18は、送信部22の送信出力を最大にして、位置情報を送信部22から送信する。位置情報の送信は、予め定めるサーバに送信し、前記Eメールを受取った報知先の相手が他の端末装置から携帯形通信装置1の位置情報を閲覧できるようにする。位置情報の送信が完了するとステップS7に移行する。
【0100】
ステップS7では、制御部18は、電圧検出部25に主電源31の出力電圧を検出させる。電圧検出部25によって検出された電源電圧に基づいて、主電源31の電力の残量が、携帯形通信装置1の通信動作に必要な予め定める下限電力以上であると判断した場合は、ステップS8に移行する。
【0101】
ステップS8では、制御部18は、ストラップ34が戻っているかどうか、開閉器60が閉じているか開いているかを判断する。開閉器60が閉じている場合は、再度ステップS2に移行して、ステップS2〜ステップS7までの動作を繰返させる。このとき繰返されるEメール送信動作と位置情報送信動作は、たとえば予め定める第1設定時間間隔を開けて繰返される。第1設定時間間隔は、たとえば予め操作者が設定することができる。
【0102】
ステップS1およびステップS7において、主電源31の電力の残量が下限電力未満であると判断された場合には、ステップS9に移行する。ステップS9では、制御部18から電源切換命令を受けることによって、電源切換部26が、携帯形通信装置1の各構成への主電源31からの電力の供給を、予備電源32からの電力の供給に切換える。電源の切換が完了すると、ステップS10に移行する。
【0103】
ステップS10では、制御部18は、表示部29での画像などの表示を停止する。エマージェンシーモードに移行した情報を表示部29に表示させなければよい。本実施形態では、表示部29への電力の供給を断ち、表示部29に画像を表示させないようにする。このように表示部29への電力の供給を断つことによって、携帯形通信装置1の消費電力を抑えることができる。また携帯通信装置1の通常モードでの待ち受け状態を表す情報を表示させてもよい。表示部29の表示を停止するとステップS11に移行する。
【0104】
ステップS11では、制御部18は携帯形通信装置1の通話機能を停止させる。また携帯形通信装置1が計算器機能およびゲーム機能などの各種アプリケーション機能を備えている場合は、アプリケーション機能を停止させる。通話機能およびアプリケーション機能を停止させるとステップS12に移行する。
【0105】
ステップS12では、制御部18は、電界強度検出部24から与えられた信号に基づいて、携帯通信装置1の現在位置の通信状態を判断する。具体的には、携帯形通信装置1が無線通信可能か否かを判断する。携帯形通信装置1の現在位置が、圏内であると判断した場合は、ステップS15に移行し、圏外であると判断した場合は、ステップS13に移行する。
【0106】
ステップS13では、制御部18は、送信部22へ電力の供給を断ち、送信部22の動作を停止させ、無線通信および基地局75に対して実行する位置登録などを停止する。送信部22の動作を停止させるとステップS14に移行する。
【0107】
ステップS14では、制御部18は、送信部22を停止させた状態で待機させる。ここで、送信部22を停止した状態であっても受信部23は動作した状態なので、制御部18は、電界強度検出部24が検出した電界強度に基づいて、通信可能と判断すると、送信部22の動作を開始させ、ステップS15に移行する。
【0108】
ステップS15では、制御部18は、データ用メモリ17から、予め記憶されたEメールアドレスおよび予め記憶された緊急事態を表す情報を読出し、送信部22から前記Eメールアドレス宛に前記緊急事態を表す情報が添付されたEメールを送信させる。制御部18は、予備電源32を利用して緊急時制御動作を実行する場合は、送信出力を小さくする。前記Eメールの送信が完了するとステップS16に移行する。
【0109】
ステップS16では、制御部18は、GPS受信部28に位置情報を検出させる。GPS受信部28によって検出される携帯形通信装置1の位置情報が制御部18に与えられる。制御部18は、送信部22の送信出力を最大にして、位置情報を送信部22から送信する。位置情報の送信は、予め定めるサーバに送信し、前記Eメールを受取った報知先の相手が他の端末装置から携帯形通信装置1の位置情報を閲覧できるようにする。制御部18は、予備電源32を利用して緊急時制御動作を実行する場合は、送信出力を小さくする。位置情報の送信が完了するとステップS17に移行する。
【0110】
ステップS17では、制御部18は、ストラップ34が戻ったか否か、開閉器60が閉じているか開いているかを判断する。開閉器60が閉じている場合は、ステップS12に移行して、ステップS12〜ステップS18までの動作を繰返す。このときEメール送信および位置情報は、前記予め定める第1設定時間間隔よりも大きい第2設定時間間隔を開けて繰返して送信される。
【0111】
ステップS8およびステップS17でストラップ34が戻り、開閉器60の第1固定接点50と第2固定接点51との電気的な接続が断たれると、ステップS18に移行して、エマージェンシーモードから通常モードに移行して緊急時制御動作が終了する。
【0112】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、制御部18は、通常モードでは、予備電源32の電力の利用を禁止する。また制御部18は、緊急モードでは、主電源31および予備電源32の電力の利用を許容する。このように、制御部18は、予備電源32の電力の利用を緊急モードに限定する。したがって通常モードで主電源31の電力が消費された場合であっても、緊急時制御動作を行う電力を確保することができる。
【0113】
また主電源31は二次電池なので、電力を消費した後も充電することができる。予備電源32は一次電池なので、自然放電量が小さく、長時間放置した場合であっても、電力の残量の減少が少ない。このような主電源31と予備電源32とを備える携帯形通信装置1の緊急モードで、主電源31の電力が予備電源32の電力よりも優先して利用され、予備電源32の電力をできるだけ利用しないので、電力不足による緊急時制御動作の不実行を防ぐことができるとともに、可及的に長時間にわたって緊急時制御動作を行うことができるので、緊急情報を送信した報知先の相手が緊急情報を確実に受信することができる。
【0114】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、緊急時制御動作を繰返し実行する。一回だけ緊急情報を送信する場合は、携帯形通信装置1の現在位置の通信環境などによって、送信した緊急情報を報知することができないおそれがある。緊急時制御動作を繰返し実行することによって、複数回緊急情報が送信されるので、一回だけ緊急情報を送信する場合と比較して、送信した緊急情報が報知先に報知される確率を高くすることができる。また携帯形通信装置1の位置情報を長時間にわたって経時的に報知先に報知することができるので、携帯形通信装置の現在位置を報知先の相手に正確に把握させることができる。このように緊急情報を迅速かつ確実に送信するとともに、現在位置を正確に報知先に伝えることができる。
【0115】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、制御部18は、主電源31の電力の残量が通信動作に必要な下限電力以上である場合は、第1設定時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰り返し、予備電源32の電力によって緊急時制御動作を実行する場合は、第1時間間隔よりも大きい第2時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰返す。このように電力の残量に余裕がある場合に、小さい時間間隔で緊急時制御動作を行うことによって、少なくとも位置情報を含む緊急情報が単位時間あたり高頻度で送信される。したがって、たとえば携帯形通信装置1の現在位置が変化した場合に、現在位置の変化をできるだけ早く報知することが可能であって、位置情報の精度が高くなる。また電力の残量が予備電源32のみとなった場合に、緊急時制御動作を実行する時間間隔を大きくすることによって、緊急情報が長時間にわたって繰返し送信され続ける。したがって電力の残量に余裕があるときは、時間間隔を小さくして現在位置を高精度に報知先に伝え、また可及的に長期間にわたって緊急情報を送信することができる。
【0116】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、制御部18は、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させ、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行する。したがって通信環境が良好であって、大きな送信出力が必要でない場合に、送信に必要な電力の消費を抑えることができる。したがって長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。また通信環境が不良なとき、大きい出力で緊急情報を送信させるので、小さい出力で送信する場合と比較して、報知先に報知することができる。このように電力の無駄な消費を抑え、かつ緊急情報を確実に報知先に報知することができる。
【0117】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、制御部18は、主電源31の電力残量が下限電力以上である場合には、通信環境が良好なとき、送信部22に小さい送信出力で緊急情報を送信させ、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で送信部22に緊急情報を送信させる。したがって通信環境が良好であって、大きな送信出力が必要でない場合に、送信に必要な電力の消費を抑えることができる。したがって長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。
【0118】
また制御部18は、予備電源32を利用して緊急時制御動作を実行する場合は、送信出力を小さくするので、出力を大きくした状態で送信する場合と比較して、長時間にわたって緊急時制御動作を繰返し実行することができる。
【0119】
このように主電源31および予備電源32を合わせた電力が充分に残っている場合には、通信状態を考慮するので、確実に緊急情報を報知することができる。また予備電源32が利用される場合は、送信出力を小さくすることによって、できるだけ長時間にわたって緊急情報を送信することができる。
【0120】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、予備電源32が一次電池であるので、一次電池は、二次電池と比較して自然放電量が小さい。したがって自然放電に起因する予備電源の電力の残量不足を防ぐことができるので、確実に緊急情報を送信することができる。
【0121】
本実施形態の携帯形通信装置1によれば、予備電源の電力によって動作し、圏外である場合は、送信部22の動作を停止させる。したがってたとえば、携帯形通信装置1が基地局75との間での位置登録動作の実行などを停止するので、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0122】
本発明の実施の他の形態として、前述の実施の一形態の携帯電話装置1では、主電源31からの電力の供給によって、エマージェンシーモードを起動したが、これに代えて予備電源32からの電力の供給によって、エマージェンシーモードを起動する構成としてもよい。本実施形態によれば、主電源31の電力の残量が下限電力以下であっても確実に緊急時制御動作を実行して、緊急情報を確実に送信することができる。
【0123】
本発明の実施の他の形態として、携帯形通信装置1の動作モードをエマージェンシーモードに移行させる緊急入力操作を操作者が実行してから、予め定める時間経過した後に緊急時制御動作を実行するように携帯形通信装置1を構成してもよい。予め定める時間は、たとえば操作者が任意に定めることができる。このように携帯形通信装置1を構成すると、操作者が誤って動作モードを緊急モードに設定した場合に、予め定める時間内に動作モードを通常モードに設定することによって、緊急情報の誤送信を防ぐことができる。誤動作によって、エマージェンシーモードに移行した場合であっても、報知先の端末装置にEメールなどを送信する前に、エマージェンシーモードを解除することができる。したがって緊急情報の誤報知を防ぐことができる。
【0124】
本発明の実施の他の形態として、エマージェンシーモードに移行にともなって、携帯形通信装置1の表示部29の表示を停止し、携帯形通信装置1の電源OFF状態と同じ状態の表示部29の表示となるように携帯形通信装置1を構成してもよい。緊急モードでの動作の報知を禁止するので、緊急情報が送信されていることを周囲の人に気付かれることがない。したがってたとえば誘拐など犯罪に遭遇した場合であっても、犯人に気付かれることなく緊急情報を送信することができる。
【0125】
本発明の実施の他の形態として、撮像手段をさらに備え、エマージェンシーモードでの緊急時制御動作において、撮像手段によって撮像される動画や静止画を予め定める報知先の端末装置に送信してもよい。またエマージェンシーモードの緊急時制御動作において、送話部20によって与えられる携帯形通信装置1の周囲の音声を送信してもよい。撮像手段は、たとえば画像を取り込む撮像素子、および撮像素子からの画像信号を切換える画像切換器、画像信号をデジタルデータに変換するA/D変換器と、JPEG形式等への画像変換などの信号処理を行う画像信号処理部と、バッファメモリとを有して構成される。このように携帯形通信装置1を構成することによって、報知先に操作者本人の状況など詳しい情報を送信することができる。
【0126】
本発明の実施の他の形態として、携帯形通信装置1では、GPSを用いた位置測位によって、携帯形通信装置1の位置を測位する構成であるが、複数基地局測位方式を利用した位置測位であってもよく、またセルベース測位方式を利用した位置測位であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の一形態の携帯形通信装置1の主要な電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】携帯形通信装置1の構成を詳細に示すブロック図である。
【図3】携帯形通信装置1の外観を示す斜視図である。
【図4】モード切換動作および電源切換動作を説明するための電源切換部26およびモード設定部27の概略を示す回路図である。
【図5】通常位置47の開閉器60を示す断面図である。
【図6】過渡位置64の開閉器60を示す断面図である。
【図7】緊急位置48の開閉器60を示す断面図である。
【図8】携帯形通信装置1のエマージェンシーモードにおける緊急時制御動作を段階的に示すフローチャートである。
【図9】携帯形通信装置1のエマージェンシーモードにおける緊急時制御動作を段階的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
1 携帯形通信装置
2 エマージェンシーモード制御部
3 モード設定手段
4 エマージェンシーモード移行手段
5 エマージェンシーモード解除手段
6 残量検出手段
7 電源切換手段
8 通信環境検出手段
9 画面表示手段
10 メモリ手段
11 GPS受信手段
12 送信手段
13 Eメール送信手段
14 無線通信手段
30 電源保持手段
31 主電源
32 予備電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯形通信装置であって、
主電源および予備電源を保持する電源保持手段と、
携帯形通信装置の位置を検出する位置検出手段と、
情報を送信する送信手段と、
操作者の操作に基づいて、動作モードを通常モードおよび緊急モードのいずれかに設定するモード設定手段と、
動作モードが通常モードに設定されている状態では、予備電源の電力の利用を禁止し、動作モードが緊急モードに設定されている状態では、主電源の電力を優先させて主電源および予備電源の電力を利用して、位置検出手段に位置を検出させて、少なくとも検出された位置が含まれる緊急情報を送信手段に送信させる緊急時制御動作を実行する制御手段とを含むことを特徴とする携帯形通信装置。
【請求項2】
主電源の電力の残量を検出する残量検出手段を備え、
制御手段は、動作モードが緊急モードに設定されている状態では、残量検出手段の検出結果に基づいて、主電源の電力の残量が通信動作に必要な下限電力以上である場合、主電源の電力によって、緊急時制御動作を繰返し実行し、主電源の電力の残量が下限電力未満である場合、予備電源の電力によって、緊急時制御動作を繰返し実行することを特徴とする請求項1記載の携帯形通信装置。
【請求項3】
制御手段は、主電源の電力の残量が通信動作に必要な下限電力以上である場合、第1設定時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰返し、緊急情報を送信させ、主電源の電力の残量が下限電力未満である場合、第1設定時間間隔よりも大きい第2設定時間間隔を開けて緊急時制御動作を繰返すことを特徴とする請求項2記載の携帯形通信装置。
【請求項4】
基地局との間での通信環境を検出する通信環境検出手段を備え、
制御手段は、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行し、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。
【請求項5】
基地局との間での通信環境を検出する通信環境検出手段を備え、
主電源の電力の残量を検出する残量検出手段を備え、
制御手段は、主電源の電力の残量が下限電力以上である場合には、通信環境が良好なとき、小さい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行し、通信環境が不良なとき、大きい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行し、主電源の電力の残量が下限電力未満である場合には、小さい送信出力で緊急情報を送信させるように緊急時制御動作を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。
【請求項6】
緊急情報は、文字、音声および画像のいずれか1つ以上の形態で表されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。
【請求項7】
緊急情報は、携帯形通信装置の位置とは異なる情報を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。
【請求項8】
制御手段は、携帯形通信装置が緊急モードでの動作の報知を禁止することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。
【請求項9】
制御手段は、動作モードが緊急モードに設定された時点から予め定める時間経過した後に緊急時制御動作を開始することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。
【請求項10】
予備電源は、一次電池であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の携帯形通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−352787(P2006−352787A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179553(P2005−179553)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】