説明

携帯機

【課題】 製造時のコストアップを招かない携帯機を提供する。
【解決手段】 二分割構造の一方のケース(14)に形成された開口(17)と、前記開口を区画する仕切り部材(18、19)と、前記ケースの表面側に突出するように前記仕切り部材上に形成された突起(23、24)と、前記仕切り部材によって仕切られた区画(20〜22)に前記ケースの裏面側から装着される少なくとも二つの押しボタン(11〜13)と、を備えると共に、前記押しボタンは、略平板状の押しボタン部(11a、12a、13a)と、前記押しボタン部の外縁に形成された係止部(11d、11e、12f、12g、12d、12e、13c、13d)とを備え、前記押しボタンを前記ケースの裏面側から前記区画に装着した際に、前記係止部が前記開口の外縁に当接することによって押しボタンの抜け止めが講じられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機に関し、たとえば、自動車等車両のリモートキーレスエントリシステムなどにおけるリモコン装置として用いられる携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
リモートキーレスエントリシステムは、リモコン装置(以下、携帯機という。)の押しボタンを操作するだけで、メカニカルキーを使用することなく、ドアの施解除等を行うことができる便利なシステムであり、一般的に、リモートキーレスエントリシステム用の携帯機には、様々な用途、たとえば、ドアの施錠用、解錠用及びスライドドアの開閉用などの複数の押しボタンが備えられている。
【0003】
ところで、この種の携帯機においては、押しボタンの誤操作を回避するための工夫が凝らされており、たとえば、下記の特許文献1には、その一例として、各押しボタンの間に“突起”を設けたものが開示されている。
【0004】
図9は、従来技術の携帯機の外観図である。ちなみに、この図は特許文献1の「正面図」と「右側面図」に相当するものである。携帯機1は、手持ちに適した小さな本体2の前面に複数個、ここでは三つの押しボタン(以下、第一押しボタン3、第二押しボタン4、第三押しボタン5という。)を配置して構成されている。第一押しボタン3はドアの施錠用、第二押しボタン4はドアの解錠用、第三押しボタン5はスライドドアの開閉用である。
【0005】
このような構成の携帯機1において、夜間等の暗い場所で押しボタンを操作をする際に、ドアを解錠するつもりが、間違ってスライドドアを開いてしまうことがある。すなわち、第二押しボタン4を押すべきところ、隣の第三押しボタン5を誤って押してしまうことがある。
【0006】
こうした不都合を回避するために、従来技術においては、第一押しボタン3と第二押しボタン4の間、及び、第二押しボタン4と第三押しボタン5の間に、それぞれ横長状の突起(以下、第一突起6、第二突起7という。)を設けている。このようにすると、暗い場所で押しボタン操作をする際には、まず、第一及び第二突起6、7を触って、三つの押しボタン(第一押しボタン3、第二押しボタン4、第三押しボタン5)の位置関係を把握し、それから目的の押しボタンを探し出して押圧操作することにより、上述の誤操作を回避することができる。
【0007】
ここで、第一及び第二突起6、7の長手方向寸法Xは、各押しボタン(代表して第二押しボタン4)の横方向寸法Yよりも若干小さくなっており、さらに、第一押しボタン3の下側(本明細書においては、特に言及しない限り、上下左右の各方向は図面の方向に従うことにする。)の二つの角3aと第二押しボタン4の上側の二つの角4aの間に第一突起6が位置し、且つ、第二押しボタン4の下側の二つの角4bと第三押しボタン5の上側の二つの角5aの間に第二突起7が位置している。これは、三つの押しボタン(第一〜第三押しボタン3〜5)の間に、Y>Xなる短めの突起(第一及び第二突起6、7)を入れると共に、Y−Xの余裕部分に三つの押しボタン(第一〜第三押しボタン3〜5)の各々の角を隣り合わせて配置することにより、三つの押しボタンに“一体感”を醸し出すためのデザイン上の要求である。
【0008】
【特許文献1】意匠登録第1221519号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来技術にあっては、各押しボタンの間に突起(第一及び第二突起6、7)を設ける点についての開示はあるものの、三つの押しボタン(第一〜第三押しボタン3〜5)を本体2にどのように組み込むかについての開示がなく、したがって、以下に詳述するような製造上の不都合を否めないという問題点がある。
【0010】
図9において、第一及び第二突起6、7は、いずれも本体2と一体に成形されたものである。また、第一〜第三押しボタン3〜5は、いずれも本体2に開けられた不図示の押しボタン穴に装着されるものである。
【0011】
さて、第一〜第三押しボタン3〜5は、当然ながら、装着後に自然に脱落しないようにするための何らかの抜け止め対策が講じられているはずである。この対策について、図9には明示されていないものの、たとえば、以下のようなものであると推測される。
【0012】
図10は、従来技術の抜け止め対策を示す断面図である。この図において、(a)は、本体2の「裏面側」から押しボタン穴2aよりも若干大きな第一〜第三押しボタン3〜5を装着することにより、抜け止め対策とするものである。以下、この対策を第一の抜け止め対策ということにする。また、(b)は、本体2の「表面側」から第一〜第三押しボタン3〜5を装着すると共に、本体2の「裏面側」から押しボタン穴2aよりも若干大きな抜け止めプレート3a、4a、5aを差し入れて、この抜け止めプレート3a、4a、5aと第一〜第三押しボタン3〜5とを接着又はビス止めする等して固定することにより、抜け止め対策とするものである。以下、この対策を第二の抜け止め対策ということにする。
【0013】
しかしながら、第一の抜け止め対策にあっては、本体2の表面側に臨む第一〜第三押しボタン3〜5の大きさを押しボタン穴2aの大きさ以上にすることができず、前記のデザイン上の要求、すなわち、各押しボタンの角(第一押しボタン3の下側の二つの角3a、第二押しボタン4の上側の二つの角4a、第二押しボタン4の下側の二つの角4b、第三押しボタン5の上側の二つの角5a)を突起(第一及び第二突起6、7)の横に配置することができないという不都合がある。
【0014】
また、第二の抜け止め対策にあっては、前記のデザイン上の要求に応えることができるものの、抜け止めプレート3a、4a、5aやビス等の部品増加に加えて、抜け止めプレート3a、4a、5aと第一〜第三押しボタン3〜5との固定作業が必要となり、コストアップを招くという不都合がある。
【0015】
そこで本発明の目的は、製造時のコストアップを招かない携帯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、二分割構造の一方のケースに形成された開口と、前記開口を区画する仕切り部材と、前記ケースの表面側に突出するように前記仕切り部材上に形成された突起と、前記仕切り部材によって仕切られた区画に前記ケースの裏面側から装着される少なくとも二つの押しボタンと、を備えると共に、前記押しボタンは、略平板状の押しボタン部と、前記押しボタン部の外縁に形成された係止部とを備え、前記押しボタンを前記ケースの裏面側から前記区画に装着した際に、前記係止部が前記開口の外縁に当接することによって押しボタンの抜け止めが講じられることを特徴とする携帯機である。
請求項2記載の発明は、前記係止部が、前記区画に対する前記押しボタンの位置合わせ用としても機能することを特徴とする請求項1記載の携帯機である。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、押しボタンをケースの裏面側から区画に装着した際に、係止部によって押しボタンの抜け止めが講じられるので、たとえば、前記第二の抜け止め対策のように、ビス止めなどの工数増や部品点数増がなく、製造時のコストアップを招かない携帯機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、リモートキーレスエントリシステムのリモコン装置(以下、携帯機という。)への適用を例にして、図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係る携帯機の外観を説明する。
図1は、携帯機10の正面図であり、(a)は三つの押しボタン(第一押しボタン11〜第三押しボタン13)を装着した後の携帯機10を示す図、(b)は三つの押しボタン(第一押しボタン11〜第三押しボタン13)を装着する前の携帯機10を示す図である。なお、以下の説明では、三つの押しボタンを備えた携帯機10を例にするが、これに限定されない。押しボタンの数は複数(少なくとも2個)であればよい。
【0020】
図2は、図1(b)に対応する携帯機10の外観図である。この図に示すように、携帯機10は、アッパーケース14とロアーケース15からなる二分割構造の本体16を備えている。なお、ロアーケース15は、不図示の電子基板や電池等を実装するためのものであるが、本発明と直接の関連がないため、ここでの説明を割愛する。
【0021】
図1及び図2において、アッパーケース14の前面(表面)には、縦長状の開口17が形成されており、この開口17は、アッパーケース14と一体に成形された二本の仕切り部材(以下、第一仕切り部材18、第二仕切り部材19という。)によって三つに区画(以下、第一区画20、第二区画21、第三区画22という。)されており、各区画20〜22は、第一押しボタン11の装着穴、第二押しボタン12の装着穴、及び、第三押しボタン13の装着穴として用いられる。
【0022】
第一仕切り部材18と第二仕切り部材19には、それぞれ第一突起23、第二突起24が一体に形成されている。これらの突起(第一突起23、第二突起24)は、冒頭で説明した従来技術の第一突起6、第二突起7に相当するものであり、従来技術と同様に、第一突起23及び第二突起24の長手方向寸法Xは、三つの押しボタン(第一〜第三押しボタン11〜13)の横方向寸法Yよりも小さい「Y>X」の関係にあり、且つ、Y−Xの余裕部分に三つの押しボタン(第一〜第三押しボタン11〜13)の角(第一押しボタン11の下側の二つの角111、第二押しボタン12の上側の二つの角121、第二押しボタン12の下側の二つの角122、第三押しボタン13の上側の二つの角131)が位置するようになっている。すなわち、冒頭で説明した「デザイン上の要求」に沿うようになっている。
【0023】
図3は、アッパーケース14の背面斜視図である。この図に示すように、アッパーケース14の背面側から三つの押しボタン(第一押しボタン11、第二押しボタン12、第三押しボタン13)を差し入れ、それぞれの押しボタンを図示のように傾けながら、第一区画20、第二区画21及び第三区画22に順次(順番は問わない)に装着する。
【0024】
次に、押しボタンの構造について説明する。
図4は、第一押しボタン11の背面図、A−A断面図、B−B断面図である。第一押しボタン11は、プラスチック素材等で一体成形された略平板状の押しボタン部11aからなり、この押しボタン部11aの左右外縁上部から各々左方と右方に突出する舌辺状の係止部11b、11cと、下外縁両端から下方に突出する舌辺状の係止部11d、11eと、前記の係止部11b、11cを含むように、押しボタン部11aの上外縁及び左右外縁の一部に形成された薄肉部11f、11fとを備える。
【0025】
図5は、第二押しボタン12の背面図、C−C断面図、D−D断面図である。第二押しボタン12は、プラスチック素材等で一体成形された略平板状の押しボタン部12aからなり、この押しボタン部12aの左外縁略中央部から左方に突出する舌辺状の係止部12bと、押しボタン部12aの右外縁から右方に突出する舌辺状の係止部12cと、下外縁両端から下方に突出する舌辺状の係止部12d、12eと、上外縁両端から上方に突出する舌辺状の係止部12f、12gと、前記の係止部12bを含むように、押しボタン部12aの左外縁の一部に形成された薄肉部12hとを備える。
【0026】
図6は、第三押しボタン13の背面図、E−E断面図、F−F断面図である。第三押しボタン13は、プラスチック素材等で一体成形された略平板状の押しボタン部13aからなり、この押しボタン部13aの左外縁下端付近から左方に突出する舌辺状の係止部13bと、押しボタン部13aの上外縁両端から上方に突出する舌辺状の係止部13c、13dと、前記の係止部13bを含むように、押しボタン部13aの左右外縁の一部及び下外縁に形成された薄肉部13e、13eとを備える。
【0027】
次に、押しボタンと押しボタン装着穴(区画)の関係について説明する。
図7は、第一〜第三押しボタン11〜13と第一〜第三区画20〜22との関係を示す図である。なお、この図は、第一〜第三押しボタン11〜13を装着した状態のアッパーケース14を裏面側(背面側)から見た図である。アッパーケース14の裏面側には、第一〜第三区画20〜22の周囲を巡る壁26が形成されており、装着された第一〜第三押しボタン11〜13は、この壁26の内側に収まるようになっている。
【0028】
壁26には位置合わせのための4つの開放部(以下、第一〜第四開放部27〜30という。)が形成されており、第一及び第二開放部27、28は第一押しボタン11の位置合わせ用、第三開放部29は第二押しボタン12の位置合わせ用、第四開放部30は第三押しボタン13の位置合わせ用である。すなわち、各々の開放部に、第一〜第三押しボタン11〜13の係止部11b、11c、12b、13bが収まることによって各押しボタンの位置合わせを行うようになっている。
【0029】
さて、第一押しボタン11を矢印イの方向に差し込むと、つまり、第一押しボタン11を斜めにして上から下へと差し込むと、第一押しボタン11の下外縁の係止部11d、11eが第一仕切り部材18の裏面側に入り、そして、そのまま第一押しボタン11を静かに第一区画20に置くと、第一押しボタン11の係止部11b、11cが第一及び第二開放部27、28に収まって自然に位置合わせが行われる。
【0030】
同様にして、第二押しボタン12を矢印ロの方向に差し込むと、つまり、第二押しボタン12を斜めにして下から上へと差し込むと、第二押しボタン12の上外縁の係止部12f、12gが第一仕切り部材18の両側切り込み18a、18bに当接する。そして、そのまま第二押しボタン12を静かに第二区画21に置くと、第二押しボタン12の下外縁の係止部12d、12eが第二仕切り部材19の両側切り込み19a、19bに当接すると共に、第二押しボタン12の係止部12bが第三開放部29に収まり、自然に位置合わせが行われる。
【0031】
同様にして、第三押しボタン13を矢印ハの方向に差し込むと、つまり、第三押しボタン13を斜めにして下から上へと差し込むと、第三押しボタン13の上外縁の係止部13c、13eが第二仕切り部材19の裏面側に入り、そして、そのまま第三押しボタン13を静かに第三区画22に置くと、第三押しボタン13の係止部13bが第四開放部30に収まり、自然に位置合わせが行われる。
【0032】
図8は、押しボタン装着時の様子と装着後の様子を示すアッパーケース14の断面図である。この図に示すように、本実施形態では、(イ)アッパーケース14に装着後の第一〜第三押しボタン11〜13は、各々の係止部11d、11e、12f、12g、12d、12e、13c、13d、13eの間に、第一突起23、第二突起24を挟装(挟んだ状態に備え付けること)しているから、冒頭で説明した「デザイン上の要求」にも応えることができる。加えて、(ロ)アッパーケース14の第一〜第三区画20〜22に対して、アッパーケース14の裏面側から第一〜第三押しボタン11〜13をそれぞれ斜めにしながら、所定方向(矢印イ〜ハの方向)から差し入れるだけで、抜け止め対策を講じつつ、ワンタッチで第一〜第三押しボタン11〜13を装着することができ、冒頭で説明した第二の抜け止め対策の欠点、つまり、従来技術のような抜け止めプレートやビス止め等を必要とせず、コストアップを招かないという特有の効果が得られる。
【0033】
なお、以上の説明では、リモートキーレスエントリシステムのリモコン装置への適用を例にしたが、これに限定されないことはもちろんである。複数の押しボタンを備えると共に、前記のような「デザイン上の要求」がある携帯機一般(たとえば、AV機器や家電製品又はその他電子機器等のリモコン装置、あるいは、携帯情報端末や携帯電話等の携帯型電子機器など)に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の携帯機10の正面図である。
【図2】図1(b)に対応する携帯機10の外観図である。
【図3】アッパーケース14の背面斜視図である。
【図4】第一押しボタン11の背面図、A−A断面図、B−B断面図である。
【図5】第二押しボタン12の背面図、C−C断面図、D−D断面図である。
【図6】第三押しボタン13の背面図、E−E断面図、F−F断面図である。
【図7】第一〜第三押しボタン11〜13と第一〜第三区画20〜22との関係を示す図である。
【図8】押しボタン装着時の様子と装着後の様子を示すアッパーケース14の断面図である。
【図9】従来技術の携帯機の外観図である。
【図10】従来技術の抜け止め対策を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
11 第一押しボタン(押しボタン)
11a、12a、13a 押しボタン部
11d、11e、12f、12g、12d、12e、13c、13d 係止部
12 第二押しボタン(押しボタン)
13 第三押しボタン(押しボタン)
14 アッパーケース(ケース)
17 開口
18 第一仕切り部材(仕切り部材)
19 第二仕切り部材(仕切り部材)
20 第一区画(区画)
21 第二区画(区画)
22 第三区画(区画)
23 第一突起(突起)
24 第二突起(突起)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二分割構造の一方のケース(14)に形成された開口(17)と、
前記開口を区画する仕切り部材(18、19)と、
前記ケースの表面側に突出するように前記仕切り部材上に形成された突起(23、24)と、
前記仕切り部材によって仕切られた区画(20〜22)に前記ケースの裏面側から装着される少なくとも二つの押しボタン(11〜13)と、を備えると共に、
前記押しボタンは、略平板状の押しボタン部(11a、12a、13a)と、
前記押しボタン部の外縁に形成された係止部(11d、11e、12f、12g、12d、12e、13c、13d)とを備え、
前記押しボタンを前記ケースの裏面側から前記区画に装着した際に、前記係止部が前記開口の外縁に当接することによって押しボタンの抜け止めが講じられることを特徴とする携帯機。
【請求項2】
前記係止部が、前記区画に対する前記押しボタンの位置合わせ用としても機能することを特徴とする請求項1記載の携帯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−130512(P2009−130512A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301873(P2007−301873)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】