説明

携帯無線端末、無線端末装置および無線通信システム

【課題】無線通信を行うための通信設定を容易に行うことができる。
【解決手段】バッテリー202は電力を蓄積する。端末高速無線通信部205は情報を無線通信する。端末通信設定部203は端末高速無線通信部205による無線通信に係る所定の設定情報を設定する。コイルアンテナ2011は、無接点でバッテリー202に充電する電力を外部端末から受電するアンテナであって、設定情報を当該外部端末との間で送信又は受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯無線端末、無線端末装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network、ローカル・エリア・ネットワーク)等の無線通信技術の普及発達に伴い、送受信機に無線通信機能を安価に実装できるようになった。そのため、送受信機の対を複数組、一般家庭や法人施設に導入し、送受信機が無線通信を行うために必要な通信設定(例えば、ID(identification data、識別情報)の設定や暗号鍵の交換など)を行うことも多くなった。さらに、送受信機が無線通信を行う相手先を頻繁に変更するような用途も必要になって来た。
【0003】
また、無線化によるケーブルフリーのメリットを享受する為には、送受信機はバッテリー駆動でなければならない。また、バッテリーはNi−Cd(ニッケル・カドミウム)電池やリチウム電池などの充電する事で再利用可能な2次電池が使用されることが多い。2次電池の充電方式として、電磁誘導等を利用し電気接点を必要としない無接点電力伝送を利用した充電方式が確立されている。無接点電力伝送を利用した充電方式は、電気接点が苦手とする水気の多い場所で使用する製品を中心に普及している。また、無接点電力伝送の応用技術として無接点電力伝送路にデータ伝送信号を重畳する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、ケーブルを介して情報を送受信していた機器間の通信方法を無線通信に変更する場合、接続先を指定するのに手間がかかるという問題があった。例えば、デジタルカメラとパーソナルコンピュータをUSBケーブルで接続し、デジタルカメラで撮影した画像データをパーソナルコンピュータにUSBケーブルを介して伝送する代わりに無線通信を用いて伝送しようとした場合、無線通信では電波が届く範囲の全てのデジタルカメラとパーソナルコンピュータとが通信を行うことができる可能性がある。そのため、複数のデジタルカメラとパーソナルコンピュータとのうち、操作者の意図するデジタルカメラとパーソナルコンピュータとのみが通信を行うことができるように通信設定を行う必要があった。また、プライバシーの観点で、不特定の第3者にはデジタルカメラとパーソナルコンピュータとの間の通信内容が見られない様に暗号化等のセキュリティの設定も必要となるため、さらに通信設定は煩雑になるという課題があった。
【0006】
言い換えれば、ケーブルを介して通信を行う方法であれば、ケーブルを接続するという行為で通信を行う対象機器を設定した事と同義になるが、無線通信では、ケーブルを接続するという行為の代わりになる設定を何らかの形で行わなければならないが、この通信設定が煩雑であるという課題がある。
【0007】
また、無接点電力伝送路にデータ伝送信号を重畳する技術では、無接点電力伝送路は昨今の高速データ伝送の搬送周波数として使用される周波数(数百MHz以上)に比べると低い周波数でデータを伝送する為、データ伝送レートの向上は難しく、大容量の画像データ等を短時間に伝送する用途としては向かない。
【0008】
本発明は、無線通信を行うための通信設定を容易に行うことができる携帯無線端末、無線端末装置および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電力を蓄積するバッテリー部と、情報を無線通信する端末無線データ通信部と、前記端末無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する端末通信設定部と、無接点で前記バッテリー部に充電する電力を外部端末から受電する受電アンテナであって、前記設定情報を当該外部端末との間で送信又は受信する受電アンテナと、を有することを特徴とする携帯無線端末である。
【0010】
また、本発明の携帯無線端末において、前記受電アンテナは、前記設定情報として前記端末無線データ通信部による無線通信の開始時に必要な情報を送信又は受信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の携帯無線端末において、前記設定情報は、前記無線通信の識別情報又は暗号化情報であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の携帯無線端末において、前記受電アンテナは、前記充電又は受電中に、前記設定情報を送信又は受信することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、情報を無線通信する無線データ通信部と、前記無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する通信設定部と、無接点で外部端末に電力を送電する送電アンテナであって、前記設定情報を当該外部端末との間で送信又は受信する送電アンテナと、を有することを特徴とする無線端末装置である。
【0014】
また、本発明の無線端末装置において、前記送電アンテナと前記無線データ通信部とは別筐体に配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、携帯無線端末と無線端末装置とを含んだ無線通信システムであって、前記携帯無線端末は、電力を蓄積するバッテリー部と、情報を無線通信する端末無線データ通信部と、前記端末無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する端末通信設定部と、無接点で前記バッテリー部に充電する電力を前記無線端末装置から受電する受電アンテナであって、前記設定情報を当該無線端末装置との間で送信又は受信する受電アンテナと、を備え、前記無線端末装置は、情報を無線通信する無線データ通信部と、前記無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する通信設定部と、無接点で前記携帯無線端末に電力を送電する送電アンテナであって、前記設定情報を当該携帯無線端末との間で送信又は受信する送電アンテナと、を備えたことを特徴とする無線通信システムである。
【0016】
また、本発明の無線通信システムにおいて、前記端末通信設定部は、前記端末無線データ通信部が無線通信を行う前記無線端末装置を、前記受電アンテナが前記設定情報を送信又は受信した前記無線端末装置に限定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の無線通信システムにおいて、前記通信設定部は、前記無線データ通信部が無線通信を行う前記携帯無線端末を、前記送電アンテナが前記設定情報を送信又は受信した前記携帯無線端末に限定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の無線通信システムにおいて、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの間の無線通信回線の到達距離が、前記無接点で電力を送電することが可能な距離と同程度の距離であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無接点でバッテリー部に充電する電力を外部端末から受電する受電アンテナが、端末無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を送信または受信するため、煩雑な入力を行うことなく無線通信を行うための通信設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態における無線通信システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における無線通信システムが備える無線端末装置と携帯無線端末とが属するグループを示した概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における無線通信システムが備える無線端末装置と携帯無線端末とを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における無線通信システムの概略構成を示したブロック図である。無線通信システムは、無線端末装置10と携帯無線端末20とを含む。
【0022】
無線端末装置10は、本体部11と無接点電力送電部102とを備える。本体部11は、電源部101と、記憶部103と、通信設定部104と、高速無線通信部105(無線データ通信部)とを備える。無接点電力送信部102はコイルアンテナ1021(送電アンテナ)を備える。携帯無線端末20は、無接点電力受電部201と、バッテリー202と、端末通信設定部203と、端末記憶部204と、端末高速無線通信部205(端末無線データ通信部)とを備える。無接点電力受電部201はコイルアンテナ2011(受電アンテナ)を備える。
【0023】
電源部101は、商用AC電源に接続され、商用AC電源から供給された電力を無線端末装置10が備える各部に供給する。無接点電力送信部102は、電源部101から供給される電力を携帯無線端末20の無接点電力受電部201が効率良く受電出来るように変調し、コイルアンテナ1021を介して送出する。また、無接点電力送信部102は、コイルアンテナ1021を介して携帯無線端末20の無接点電力受電部201と第2の無線通信回線を用いて通信を行う。第2の無線通信回線については後述する。
【0024】
記憶部103は第1の無線通信回線を用いて通信を行うために必要な情報を記憶する。第1の無線通信回線については後述する。通信設定部104は第1の無線通信回線の通信設定を行う。高速無線通信部105は第1の無線通信回線を用いて携帯無線端末20の端末高速無線通信部205と通信を行う。
【0025】
無接点電力受電部201は、コイルアンテナ2011を介して無接点電力送信部102から受電した電力を直流に変換し、バッテリー202の充電を行う。また、無接点電力受電部201は、コイルアンテナ2011を介して無線端末装置10の無接点電力送信部102と第2の無線通信回線を用いて通信を行う。
【0026】
バッテリー202は二次電池であり、携帯無線端末20が備える各部に電力を供給する。端末通信設定部203は第1の無線通信回線の通信設定を行う。端末記憶部204は第1の無線通信回線を用いて通信を行うために必要な情報を記憶する。端末高速無線通信部205は第1の無線通信回線を用いて無線端末装置10の高速無線通信部105と通信を行う。
【0027】
なお、図示する例では、代表例として、本体部11と無接点電力送信部102とが別の筐体である形態となっているが、一体の形態であっても良い。また、無接点電力送信部102の形状は、無接点電力送信部102に携帯無線端末20が置かれると無接点電力送信部102のコイルアンテナ1021と無接点電力受電部201のコイルアンテナ2011とが無接点電力伝送に好ましい位置関係にセットされる置き台(クレードル)の形状になっている事が望ましい。
【0028】
また、例えば、無線端末装置10はパーソナルコンピュータのようにGUI(Graphical User Interface、グラフィカルユーザインタフェース)が充実したものとし、携帯無線端末20はデジタルカメラのような文字入力等が不便なものとする。パーソナルコンピュータとデジタルカメラとが通信を行うケースは現実に良くあるケースである。
【0029】
次に、第1の無線通信回線について説明する。第1の無線通信回線は、IEEE802.11a/b/gなどで規格化された無線LANなどに代表される高速データ通信回線である。無線端末装置10の高速無線通信部105と、携帯無線端末20の端末高速無線通信部205とは、第1の無線通信回線を用いて通信を行う。第1の無線通信回線は、一般的に数mから数十mの到達距離を持ちその範囲内で高速でデータのやり取りを可能とする。なお、第1の無線通信回線は規格化された通信方式に限定されるものではなく、オリジナルの無線方式であっても構わない。
【0030】
なお、無線端末装置10の高速無線通信部105と携帯無線端末20の端末高速無線通信部205とが第1の無線通信回線を用いて通信を行う際には、通信設定部104と端末通信設定部203とがグループIDや暗号鍵等の情報を交換して通信設定を行う必要がある。通信設定は通信先を特定する等の設定であり、無線LANなどを用いて通信を行う際に必要となる一般的な設定である。また、グループIDは、無線端末装置10と携帯無線端末20が属するグループを一意に特定することができる情報である。
【0031】
次に、第2の無線通信回線について説明する。第2の無線通信回線は、無接点電力伝送路にデータ伝送信号を重畳する技術を用いた無線通信回線である。これにより、無接点電力受電部201のコイルアンテナ2011は、無接点電力送電部102のコイルアンテナ1021から電力を受電中またはバッテリー202を充電中に、設定情報を送信又は受信することができる。なお、第2の無線通信回線での通信可能な距離(データ信号の到達距離)は、無接点で電力を送電することが可能な距離と同程度の距離である。
【0032】
無接点電力伝送路にデータ伝送信号を重畳する技術を用いた無線通信回線を用いて通信装置間で通信を行う場合、伝送距離が短いため第3者の傍受が困難であり、この結果、秘匿性が高い。よって、通信先の設定などの通信設定を行うことなくデータの送受信を行うことができる。そのため、無線端末装置10の無接点電力送信部102と、携帯無線端末20の無接点電力受電部201とは、第2の無線通信回線の伝送距離よりも近づいた場合、通信設定を行うことなく第2の無線通信回線を用いて通信を行うことができる。
【0033】
また、第2の無線通信回線は、昨今の高速データ伝送の搬送周波数として使用される周波数(数百MHz以上)に比べると低い周波数でデータを伝送する。そのため、第2の無線通信回線のデータ伝送レートは低い。また、第2の無線通信回線の伝送距離は秘匿性の観点では短い程都合が良いため、使い勝手とのトレードオフにて決定すると良い。本実施形態では、無線端末装置10の無接点電力送信部102と携帯無線端末20の無接点電力受電部201とは、第2の無線通信回線を用いて、第1の無線通信回線を用いた通信を行うために必要なグループIDや暗号鍵等の情報を送受信する。
【0034】
次に、図2を参照して無線端末装置10の通信設定部104と携帯無線端末20の端末通信設定部203との動きを中心に本実施形態の作用について説明する。図2は、本実施形態における無線通信システムが備える無線端末装置10と携帯無線端末20とが属するグループを示した概略図である。
【0035】
図示する例では、無線通信システムには、無線端末装置10a〜eと携帯無線端末20a〜eとが含まれている。無線端末装置10a〜cと携帯無線端末20a〜cとはグループAに属しており、無線端末装置10d〜eと携帯無線端末20d〜eとはグループBに属している。なお、グループAとグループBとの所有者が違うなどの理由で、同一のグループに属している無線端末装置10と携帯無線端末20とは通信を行うように設定するが、グループAに属する無線端末装置10a〜cとグループBに属する携帯無線端末20d〜eとは通信ができないように設定する必要があり、グループBに属する無線端末装置10d〜eとグループAに属する携帯無線端末20a〜cとは通信ができないように設定する必要があるとする。
【0036】
例えば、無線端末装置10の高速無線通信部105と携帯無線端末20の端末高速無線通信部205とが第1の無線通信回線を用いて通信を行うための通信設定の方式は、グループAに属する無線端末装置10a〜cと携帯無線端末20a〜cと、グループBに属する無線端末装置10d〜eと携帯無線端末20d〜eとが、それぞれのグループで共通のグループIDと暗号鍵とを持っていなければ通信を行うことができないようにする方式とする。
【0037】
次に、本実施形態において、無線端末装置10の高速無線通信部105と携帯無線端末20の端末高速無線通信部205とが第1の無線通信回線を用いて通信を行うための通信設定の方法について説明する。この通信設定は無線端末装置10の通信設定部104と携帯無線端末20の端末通信設定部203とが行う。
【0038】
本実施形態では、無線端末装置10の記憶部103が予め記憶しているグループIDと暗号鍵とを、通信設定部104が第2の無線通信回線を用いて携帯無線端末20に送信する。なお、無線端末装置10には、グループIDと暗号鍵とが既知の方法で入力され、入力されたグループIDと暗号鍵とが記憶部103に記憶されているものとする。無線端末装置10にグループIDと暗号鍵とを入力する方法として一番単純な方法は、操作者が、任意に決定したグループIDと暗号鍵とを無線端末装置10が備えるキーボードやマウス等を利用して入力する方法である。
【0039】
無線端末装置10から携帯無線端末20にグループIDと暗号鍵とを第2の無線通信回線を用いて送信する手順は以下のとおりである。操作者が、無線端末装置10の無接点電力送信部102に無線端末装置10の無接点電力受電部201を近づける。無接点電力送信部102と無接点電力受電部201とが第2の無線通信回線の伝送距離よりも近づき第2の無線通信回線を用いて通信を行うことが可能となったとき、通信設定部104は、記憶部103が予め記憶しているグループIDと暗号鍵とを無接点電力送信部102を介して無接点電力受電部201に送信する。
【0040】
無接点電力受電部201は、送信されたグループIDと暗号鍵とを受信し、端末通信設定部203に入力する。端末通信設定部203は、入力されたグループIDと暗号鍵とに基づいて第1の無線通信回線の通信設定を行い、グループIDと暗号鍵とを端末記憶部204に記憶させる。この通信設定により、同一のグループIDと暗号鍵とを記憶する無線端末装置10と携帯無線端末20とは第1の無線通信回線を用いて通信を行うことができる。
【0041】
これにより、操作者は、通常の無接点電力伝送による充電を行う場合などのように、携帯無線端末20の無接点電力受電部201を無線端末装置10の無接点電力送信部102に近づけるだけで、無線端末装置10と携帯無線端末20との間でグループIDと暗号鍵の交換ができる。従って、携帯無線端末20のGUIが十分でない場合においても、操作者は携帯無線端末20へのグループIDと暗号鍵との入力を非常に簡便に行うことができる。
【0042】
図2に示したように、無線端末装置10a〜eと携帯無線端末20a〜eとがグループAまたはグループBに属している場合、操作者は携帯無線端末20の無接点電力受電部201を同一のグループに属している無線端末装置10の無接点電力送信部102に近づけるだけで、同一のグループに属している無線端末装置10と携帯無線端末20との間でグループIDと暗号鍵の交換ができる。そのため、操作者は、同一のグループに属している無線端末装置10と携帯無線端末20とのみが互いに通信を行うことができるように容易に設定することができる。
【0043】
なお、グループIDと暗号鍵の秘匿性に関する懸念は、第2の無線通信回線の通信距離が短いことで対処可能である。つまり、第2の無線通信回線の通信距離が短いので、悪意を持った第3者が無線端末装置10の無接点電力送信部102に近づくことを防ぐ事が出来れば、携帯無線端末20にグループIDと暗号鍵とを送信することができないため、秘匿性は守れることになる。また、無線端末装置10にグループIDと暗号鍵の受け渡しの確認画面を用意してパスワード等の入力を求めればさらに秘匿性を高めることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、同一グループに属する全ての装置間の通信は常に可能であるため、第1の無線通信回線を利用したデータ伝送の送り元と送り先の指定についてはデータ伝送の毎に指定する必要がある。但し、GUIの発達した無線端末装置10で指定を行うのであればさほど苦にはならない。
【0045】
また、上記では、第2の無線通信回線を用いてグループIDと暗号鍵を交換する例を用いて説明したが、第2の無線通信回線を用いて送受信する情報はこれに限定されるものではなく、秘匿性を高める為の情報などを第2の無線通信回線を利用して伝送しても良い。また、第1の無線通信回線を用いて送受信する主たる情報(例えば、画像、音声、テキスト、アプリケーションファイル等)の伝送はグループ内に限定されるが、これは他のグループとの一切の通信を否定するものではなく、衝突回避等、制御的通信は他のグループに属する装置との間でも行われる。
【0046】
上述したとおり、無線端末装置10と携帯無線端末20とは、第2の無線通信回線を用いてグループIDと暗号鍵との交換を行って第1の無線通信回線の通信設定を行うため、通信設定情報の煩雑な入力を行うことなく第1の無線通信の設定が実現可能となる。さらに、第2の無線通信回線は、無接点電力伝送路にデータ伝送信号を重畳する技術を用いた無線通信回線であるため、無線端末装置10と携帯無線端末20とに近接無線用の個別のアンテナなどを設置する必要もなく第1の無線通信回線の通信設定を行うことができる。従って、コストの削減や小型化にも貢献できる。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態における無線端末装置10と携帯無線端末20との構成は第1の実施形態の各装置と同様の構成である。本実施形態では、第1の無線通信回線の主たる情報の伝送対象が、複数ある無線端末装置10の内の1つと、同じく複数ある携帯無線端末20の内の1つに限定される、一般にピアtoピアと呼ばれる通信の場合に効果のある例について説明する。
【0048】
具体的には、携帯無線端末20はCCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)センサを備え、撮像した動画(画像)を無線端末装置10に送信する画像伝送装置であり、また、無線端末装置10は携帯無線端末20から受信した動画(画像)をリアルタイムでモニタに表示するような装置であり、これらの装置がピアtoピアで通信を行う場合を例として説明する。さらに詳しく述べれば、操作者が、無線端末装置10のモニタを見ながら、携帯無線端末20が備えるCCDセンサの向きや位置など変更し、自由に色々な部位を観察するようなシステムに本発明は適している。
【0049】
また、無線通信システムに無線端末装置10と携帯無線端末20とが複数含まれており、無線端末装置10と携帯無線端末20との間のピアtoピアの通信の対を頻繁に変更する場合にも本発明は威力を発揮する。ピアtoピアの通信の対を頻繁に変更する必要性の例を示すと、例えば、これまで使用していたCCDセンサのついた携帯無線端末20が複数存在し、その内の1台を洗浄や整備の為に別室に持って行き、事前に洗浄や整備が終わっている別の携帯無線端末20を無線端末装置10と無線通信させて利用する場合などが想定される。
【0050】
次に、図3を参照して無線端末装置10の通信設定部104と携帯無線端末20の端末通信設定部203との動きを中心に本実施形態の作用について説明する。図3は、本実施形態における無線通信システムが備える無線端末装置10と携帯無線端末20とを示した概略図である。図示する例では、無線通信システムには無線端末装置10a〜bと、携帯無線端末20a〜cとが含まれている。
【0051】
以下、無線通信システムに含まれている装置のうち、無線端末装置10aと携帯無線端末20cとを組み合わせて使用する場合の動作について説明する。最初に、操作者は固定無線端末10aの無接点電力送信部102に携帯無線端末20cをセットする。無線端末装置10aの通信設定部104と携帯無線端末20cの端末通信設定部203とは、携帯無線端末20cが無線端末装置10aの無接点電力送信部102にセットされた事を検知すると、それぞれの個体識別情報(UID)を第2の無線通信回線を用いて交換する。個体識別情報は、無線端末装置10または携帯無線端末20を一意に特定する情報である。そして、通信設定部104と端末通信設定部203とは、お互いの主たる情報の送信先の装置(ピアtoピアの接続先)を、交換した個体識別情報で一意に特定される装置に変更する。
【0052】
この動作は書き換え動作であり、通信設定部104と端末通信設定部203とは、これまで記憶部103と端末記憶部204とに記録保持されていた個体識別情報を消去し、新たに受信した個体識別情報を記憶部103と端末記憶部204とに記録保持させる。通信設定部104と端末通信設定部203とがこの様な動作をする様にプログラミングされていれば、リアルタイムに動画(画像)を転送するシステムの具体例では、操作者は、無線端末装置10aの無接点電力送信部102に携帯無線端末20cをセットするだけで、眼前の携帯無線端末20cが備えるCCDセンサが撮影した動画(画像)を、同じく眼前の無線端末装置10aが備えるモニタ画面に表示させることができる。
【0053】
また、ある操作者が無線端末装置10aと携帯無線端末20cとを使用している間においても、他の操作者は無線端末装置10cと携帯無線端末20aまたはbとを並行して使用することができる。但し、無線端末装置10と携帯無線端末20との間の通信はピアtoピアを目的としているため、複数の携帯無線端末20の通信相手先を1つの無線端末装置10とした場合には、一番先に電源が入った携帯無線端末20のみを無線端末装置10と通信できるようにするなどの取り決めとその制御が必要となる。なお、後から電源が入った携帯無線端末20を優先しても構わない。
【0054】
また、無線端末装置10の通信設定部104と携帯無線端末20の端末通信設定部203とが、携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされた事を検知する方法として以下の様な代表例が考えられるが、無線通信システムに応じて最善の方法を選択すれば良い。
【0055】
1)無接点電力伝送によって携帯無線端末20の無接点電力受電部201で発生する起電圧を検知した場合、携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされたと検知する方法。なお、この場合、無線端末装置10の無接点電力送信部102を常に動かしておく必要があるが、通常は無接点電力送信部102の印加電力を下げておくことや、インターバルを持たせる等で省電力化を実現することが可能である。
【0056】
2)第2の通信回線を用いた通信を一定のインターバルで常に行い、その通信が成功した場合、携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされたと検知する方法。
【0057】
3)磁石とホールセンサなど磁気を利用したセンサ、または光センサと光受光素子など光の検出を利用したセンサを設け、このセンサの検知結果により携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされたと検知する方法。なお、この場合、センサや素子を無接点電力送信部102や携帯無線端末20に設置する必要がある。
【0058】
4)無線端末装置10の無接点電力送信部102と携帯無線端末20とに専用の接点を設け、接点が接続したことを検知した場合、携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされたと検知する方法。
【0059】
なお、上述した無線端末装置10の通信設定部104と携帯無線端末20の端末通信設定部203とが、携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされた事を検知する方法については、第1の実施形態にも適用できる。
【0060】
上述したとおり、無線端末装置10の通信設定部104と携帯無線端末20の端末通信設定部203とは、携帯無線端末20が無線端末装置10の無接点電力送信部102にセットされた事を検知すると、それぞれの個体識別情報を第2の無線通信回線を用いて交換し、お互いの主たる情報の通信先を、交換した個体識別情報で一意に特定される装置に変更する。これにより、ピアtoピアの情報の伝送の対を、煩雑な入力無しに設定可能となる。さらに、第2の無線通信回線は、無接点電力伝送路にデータ伝送信号を重畳する技術を用いた無線通信回線であるため、近接無線用の個別のアンテナなどを設置する必要もなく実現できるので、コストの削減や小型化にも貢献できる。
【0061】
なお、上述した第1の実施形態および第2の実施形態では、無線端末装置10の記憶部103が、第1の無線通信回線を用いて通信を行うために必要な設定情報(第1の実施形態ではグループIDと暗号鍵、第2の実施形態では個体識別情報)を記憶しており、第2の無線通信回線を用いて無線端末装置10から携帯無線端末20に送信する例を示したが、これに限らない。例えば、携帯無線端末20の端末記憶部204が、第1の無線通信回線を用いて通信を行うために必要な設定情報を記憶しており、第2の無線通信回線を用いて携帯無線端末20から無線端末装置10に送信するようにしてもよい。
【0062】
以上、この発明の第1の実施形態と第2の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10,10a〜10e・・・無線端末装置、11・・・本体部、20,20a〜20e・・・携帯無線端末、101・・・電源部、102・・・無接点電力送信部、103・・・記憶部、104・・・通信設定部、105・・・高速無線通信部、201・・・無接点電力受電部、202・・・バッテリー、203・・・端末通信設定部、204・・・端末記憶部、205・・・端末高速無線通信部、1021,2011・・・コイルアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を蓄積するバッテリー部と、
情報を無線通信する端末無線データ通信部と、
前記端末無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する端末通信設定部と、
無接点で前記バッテリー部に充電する電力を外部端末から受電する受電アンテナであって、前記設定情報を当該外部端末との間で送信又は受信する受電アンテナと、
を有することを特徴とする携帯無線端末。
【請求項2】
前記受電アンテナは、前記設定情報として前記端末無線データ通信部による無線通信の開始時に必要な情報を送信又は受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。
【請求項3】
前記設定情報は、前記無線通信の識別情報又は暗号化情報である
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。
【請求項4】
前記受電アンテナは、前記充電又は受電中に、前記設定情報を送信又は受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。
【請求項5】
情報を無線通信する無線データ通信部と、
前記無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する通信設定部と、
無接点で外部端末に電力を送電する送電アンテナであって、前記設定情報を当該外部端末との間で送信又は受信する送電アンテナと、
を有することを特徴とする無線端末装置。
【請求項6】
前記送電アンテナと前記無線データ通信部とは別筐体に配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の無線端末装置。
【請求項7】
携帯無線端末と無線端末装置とを含んだ無線通信システムであって、
前記携帯無線端末は、
電力を蓄積するバッテリー部と、
情報を無線通信する端末無線データ通信部と、
前記端末無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する端末通信設定部と、
無接点で前記バッテリー部に充電する電力を前記無線端末装置から受電する受電アンテナであって、前記設定情報を当該無線端末装置との間で送信又は受信する受電アンテナと、
を備え、
前記無線端末装置は、
情報を無線通信する無線データ通信部と、
前記無線データ通信部による無線通信に係る所定の設定情報を設定する通信設定部と、
無接点で前記携帯無線端末に電力を送電する送電アンテナであって、前記設定情報を当該携帯無線端末との間で送信又は受信する送電アンテナと、
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
前記端末通信設定部は、前記端末無線データ通信部が無線通信を行う前記無線端末装置を、前記受電アンテナが前記設定情報を送信又は受信した前記無線端末装置に限定する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記通信設定部は、前記無線データ通信部が無線通信を行う前記携帯無線端末を、前記送電アンテナが前記設定情報を送信又は受信した前記携帯無線端末に限定する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記送電アンテナと前記受電アンテナとの間の無線通信回線の到達距離が、前記無接点で電力を送電することが可能な距離と同程度の距離であること
を特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−176972(P2011−176972A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40096(P2010−40096)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】