説明

携帯端末

【課題】通信により移動速度を算出する携帯端末を提案する。
【解決手段】複数の相関演算系を含む受信系と、各相関演算系に接続された中央処理装置を備え、受信系により複数のGPS衛星または符号分割多元接続方式の通信基地局からの電波を受信する機能を有する携帯端末であって、各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘りGPS衛星または通信基地局に対する測位動作を行ない、この測位動作に基づく測位履歴データを記憶し、中央処理装置が、測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話機または携帯情報通信端末などの携帯端末に関し、とくに移動速度を求める機能を有する携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるカーナビゲーションは、衛星との間で通信を行ない、自動車の位置を測定する測位機能を持つが、特開2004−340633号公報には、このカーナビゲーションにおいて、自動車のドライブシャフトの回転に応じて発生する車速パルスを併用し、過去に測位した位置からの移動距離を算出して、測位結果を補正し、即位精度を高くするものが提案されている。
【0003】
また、特開2004−233058号公報には、車速パルスを利用できない携帯端末において、地磁気を検出する特別な方位センサと、圧電素子を用いた特別な加速度センサを併用して携帯端末の移動速度を算出し、この移動速度により、測位結果を補正し、測位精度を高くするものが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−340633号公報、図1
【特許文献2】特開2004−233058号公報、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開2004−233058号公報に開示された携帯端末では、特別な方位センサ、加速度センサを用いるために、携帯端末が大型化する不都合があり、また、この特別なセンサは自動車または電車内では利用できない不都合もある。
【0006】
この発明は、この不都合を改善できる改良された携帯端末を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の観点による携帯端末は、複数の相関演算系を含む受信系と、各相関演算系に接続された中央処理装置を備え、受信系により複数の外部基準局からの電波を受信する機能を有する携帯端末であって、各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘り外部基準局に対する測位動作を行ない、この外部基準局に対する複数回の測位動作に基づく測位履歴データを記憶し、中央処理装置が、測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求めることを特徴とする。
【0008】
この発明の第2の観点による携帯端末は、複数の相関演算系を含む第1の受信系、複数の相関演算系を含む第2の受信系、および第1の受信系の各相関演算系と第2の受信系の各相関演算系とに共通に接続された中央処理装置を備え、第1の受信系により複数の衛星からの衛星電波を受信し、また、第2の受信系により符号分割多元接続方式の複数の通信基地局からの通信電波を受信する機能を有する携帯端末であって、第1の受信系の各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘り各衛星に対する測位動作を行ない、この各衛星に対する複数回の測位動作に基づく第1の測位履歴データを記憶装置に記憶し、また、第2の受信系の各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘り各通信基地局に対する測位動作を行ない、この各通信基地局に対する複数回の測位動作に基づく第2の測位履歴データを記憶し、中央処理装置が、第1、第2測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の第1の観点による携帯端末は、外部基準局に対する複数回の測位動作に基づく測位履歴データを記憶し、中央処理装置が、この測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求めるものであり、この携帯端末では、通信により携帯端末の移動速度を求めることができ、携帯端末を大型化せず、また自動車または電車内でも携帯端末の移動速度を求めることができる。
【0010】
この発明の第2の観点による携帯端末は、各衛星に対する複数回の測位動作に基づく第1の測位履歴データを記憶し、また、各通信基準局に対する複数回の測位動作に基づく第2の測位履歴データを記憶し、中央処理装置が、第1、第2の測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求めるものであり、この携帯端末でも、通信により携帯端末の移動速度を求めることができ、携帯端末を大型化せず、また自動車または電車内でも携帯端末の移動速度を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下この発明のいくつかの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明による携帯端末の実施の形態1を示すブロック回路図、図2は、その移動速度算出装置の動作説明図である。
【0013】
この実施の形態1による携帯端末HTは、携帯電話機または携帯情報通信端末である。この携帯端末HTは、移動速度算出機能ブロック10を内蔵している。この携帯端末HTは、電話通信機能ブロックまたは情報通信機能ブロックとともに、移動速度算出機能ブロック10を内蔵するが、図1には、移動速度算出機能ブロック10だけを示す。
【0014】
移動速度算出機能ブロック10は、それが内蔵された携帯端末HTの移動速度を算出するものである。この移動速度算出機能ブロック10は、移動速度算出装置11を有し、この移動速度算出装置11は、受信系20と、タイミング回路70と、中央処理回路80を含む。
【0015】
この実施の形態1の携帯端末HTの受信系20は、その携帯端末HTの外部に存在する複数のN個の外部基準局からの電波を受信する機能を有し、この機能を利用して携帯端末HAの測位動作を繰返し実行する。この実施の形態1では、N個の外部基準局として、N個のGPS衛星1〜衛星Nを利用する。このN個の衛星1〜衛星Nは、互いに同じ周波数で、互いに同期した同期タイミングTsで周期的に衛星電波を発信する。この各GPS衛星からの衛星電波は、GPS信号(アナログ信号)を含み、このGPS信号には、各GPS衛星に固有のCAコードと呼ばれる識別コードが含まれる。
【0016】
受信系20はアンテナ12と、RFブロック13と、相関演算回路30を含む。アンテナ12は、複数の各GPS衛星1〜衛星Nからの衛星電波を受信する。RFブロック13は、アンテナ12に接続された高周波受信回路であり、各衛星1〜衛星Nからの衛星電波を受けて、それに含まれるGPS信号を復調する。このRFブロック12は、A/D変換器を有し、復調したGPS信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換し、ディジタルのサンプリングデータSを発生する。
【0017】
相関演算回路30は、N個の相関演算系31〜3Nを含む。これらの各相関演算系31〜3Nは、衛星1〜衛星Nのそれぞれに対応しており、互いに並列に接続される。RFブロック13からのサンプリングデータSは、これらの各相関演算系31〜3Nに供給される。
【0018】
各相関演算系31〜3Nは、それぞれN個のエラー補正回路41〜4Nと、N個の相関計算回路51〜5Nと、N個のピーク位置検出回路61〜6Nを含む。エラー補正回路41〜4Nは、各相関演算系31〜3Nの入口に配置されており、RFブロック13からのサンプリングデータSはこれらの各エラー補正回路41〜4Nに入力される。各エラー補正回路41〜4Nは、サンプリングデータSのエラー補正を行ない、エラー補正したサンプリングデータS1〜SNを出力する。
【0019】
各相関計算回路51〜5Nは、補正したサンプリングデータS1〜SNを受けるように各エラー補正回路41〜4Nに接続される。各相関計算回路51〜5Nは、エラー補正したサンプリングデータS1〜SNと、衛星1〜衛星Nのそれぞれの識別コード(CAコード)との相関計算を行ない、相関出力データCR1〜CRNを出力する。
【0020】
各ピーク位置検出回路61〜6Nは、相関出力データCR1〜CRNを受けるように各相関計算回路51〜5Nに接続される。各ピーク位置検出回路61〜6Nは、各相関出力データCR1〜CRNに基づいて、相関ピークP1〜PNの位置を検出し、ピーク位置検出出力PO1〜PONを発生する。
【0021】
タイミング回路70は、受信系20について、繰返し時系列に複数回(M回)の測位動作を与えるもので、タイミング制御回路71を含む。このタイミング制御回路71には、外部から同期信号SYが供給される。この同期信号SYは、例えば同期方式では、衛星1〜衛星Nが、互いに同期して衛星電波を発生する同期タイミングTsと同期した基準タイミングで供給される。タイミング制御回路71は、1回目からM回目の各測位動作に対応して、この同期信号SYが与えられる度毎に、複数の基準タイミング信号SY1〜SYNを発生し、これらの基準タイミング信号SY1〜SYNをそれぞれ各相関演算系31〜3Nのエラー補正回路41〜4Nに供給する。
【0022】
各衛星1〜衛星Nには、静止衛星ばかりでなく、軌道上を周回する移動衛星も含まれる。各衛星1〜衛星Nは、互いに同期した同期タイミングTsにおいて、衛星電波を発信するが、移動衛星については、それが移動することにより発生するドップラ効果に伴ない、衛星電波の発信タイミングが、相対的に同期タイミングTsからずれる結果となる。タイミング制御回路71は、1回目からM回目の各測位動作に対応し、同期信号SYが与えられる度毎に、この移動衛星についての相対的な同期タイミングのずれを補正するタイミングで、基準タイミング信号SY1〜SYNを発生し、各相関演算系31〜3Nのそれぞれに対する基準タイミングtを設定する。各エラー補正回路41〜4Nは、繰返される1回目からM回目の各測位動作において、それぞれ基準タイミング信号SY1〜SYNが供給される度毎に、基準タイミングtからサンプリングデータSのエラー補正を開始し、エラー補正したサンプリングデータS1〜SNを発生する。
【0023】
各相関計算回路51〜5Nは、1回目からM回目の各測位動作に対応して、繰返し相関出力データCR1〜CRNを発生する。このM回の測位動作に対応する相関出力データCR1〜CRNは、測位履歴データである。この相関出力データCR1〜CRNは、基準タイミングtからのサンプリングデータS1〜SNと、衛星1〜GPS衛星Nのそれぞれの識別コード(CAコード)との相関出力であり、基準タイミングtと、相関ピークP1〜PNの関する情報を含んでいる。
【0024】
各ピーク位置検出回路61〜6Nは、1回目からM回目の各測位動作に対応して、ピーク位置検出出力データPO1〜PONを繰返し発生する。このM回の測位動作に対応するピーク位置出力データPO1〜PONも、測位履歴データである。このピーク位置検出出力PO1〜PONは、基準タイミングtの発生時刻を表わす基準時刻データDT0と、この基準タイミングtから相関ピークP1〜PNまでの遅延時間t〜tを表わす遅延時間データDDTを含む。1回目の測位動作により各ピーク位置検出回路61〜6Nから出力される相関ピークをP11〜P1Nとし、この各相関ピークP11〜P1Nの基準タイミングtからの遅延時間をt11〜t1Nとする。またM回目の測位動作により各ピーク位置検出回路61〜6Nから出力される相関ピークをPM1〜PMNとし、この各相関ピークPM1〜PMNの基準タイミングtからの遅延時間をtM1〜tMNとする。
【0025】
中央処理回路80は、中央処理装置81と主記憶装置82を有する。中央処理装置81は、各相関演算系31〜3Nからピーク位置検出出力PO1〜PONを受けるように各ピーク位置検出回路61〜6Nに接続される。主記憶装置82は、この中央処理装置81に接続され、M回の測位動作に対応するピーク位置検出出力データPO1〜PON、すなわち測位履歴データを記憶する。具体的には、主記憶装置82は、1回目からM回目の各測位動作に対応する各ピーク位置検出出力データPO1〜PONに含まれる基準時刻データDT0と、遅延時間データDDTを記憶する。中央処理装置81は、これらの基準時刻データDT0と、遅延時間データDDTに基づき、移動速度算出ブロック10を内蔵した携帯端末HTの移動速度を演算する。
【0026】
図2は、同期信号SYがM回に亘り時系列に繰返し供給され、相関演算回路30が1回目からM回目のM回の測位動作を行なった場合について、相関出力データCR1〜CRNの変化を示す。M回の測位動作の中の1回目の測位動作に対応する相関出力データCR11〜CR1Nが図2の一番上に示され、また、M回の測位動作の中のM回目の測位動作に対応する相関出力データCRM1〜CRMNが図2の一番下に示される。相関出力データCR11、・・・、CRM1は衛星1に対応し、また、相関出力データCR1N、・・・、CRMNは衛星Nに対応する。
【0027】
これらの相関出力データは、すべて基準タイミングtからのデータである。相関出力データCR11は、相関ピークP11を含んでおり、この相関ピークP11は、基準タイミングtから遅延時間t11だけ遅延している。相関出力データCR1Nは、相関ピークP1Nを含んでおり、この相関ピークP1Nは、基準タイミングtから遅延時間t1Nだけ遅延している。
【0028】
同様に、相関出力CRM1は、相関ピークPM1を含んでおり、この相関ピークPM1は、基準タイミングtから遅延時間tM1だけ遅延している。また、相関計算出力CMNは、相関ピークPMNを含んでおり、この相関ピークPMNは、基準タイミングtから遅延時間tMNだけ遅延している。
【0029】
図2に示す遅延時間t11、・・・、t1N、・・・、tM1、・・・、tMNを表わす遅延時間データDDTは、1回目からM回目までの各測位動作における基準タイミングtの発生時刻を表わす基準時刻データDT0とともに、主記憶装置82に記憶される。
【0030】
さて、図2を参照して、図1に示す移動速度算出ブロック10の演算について、説明する。1回目の測位動作における基準タイミングtの発生時刻をTとし、M回目の測位動作における基準タイミングtの発生時刻をTとする。この時刻TからTまでの間に、この移動速度算出ブロック10を内蔵した携帯端末の移動によって各GPS衛星1〜GPS衛星Nからこの携帯端末への衛星電波の伝播速度が変わるため、例えばGPS衛星1について1回目〜M回目までの測位動作に対応して、相関出力データCR11〜CRM1が図2のように変化し、それらの相関ピークP11〜PM1の遅延時間が遅延時間差(tM1―t11)だけする。また、例えばGPS衛星Nについて1回目〜M回目までの測位動作に対応して、相関出力データCRM1〜CRMNも図2のように変化し、その相関ピークP1N〜PMNの遅延時間が遅延時間差(tMN―tM1)だけ変化する。他のGPS衛星についても同様の遅延時間差が求まる。
【0031】
これらの各GPS衛星1〜GPS衛星Nについての遅延時間差と測位時間差(T−T)から、各GPS衛星1〜GPS衛星Nとの相対移動速度F1〜FNを、次の式から求めることができる。
F1=C×(tM1−t11)/(T−T
・・・
FN=C×(tMN−t1N)/(T−T
なお、測位時間差(T−T)は、1回目とM回目の測位動作における基準時刻データDT0から求められる。また、これらの式でCは、電波の伝播速度である。
【0032】
また、GPS衛星1〜GPS衛星Nが周回衛星である場合には、GPS衛星1〜GPS衛星Nの軌道上の移動に伴なうドップラ効果が、各遅延時間t11、・・・、tM1、・・・、t1N、・・・、tMNに影響するので、相対移動速度F1〜FNは、次の式から求めることができる。
F1=C×{tDOP1−(tM1−t11)}/(T−T
・・・
FN=C×{tDOPN−(tMN−T1N)/(T−T
なお、この式において、tDOP1、・・・、tDOPNは、各GPS衛星1〜GPS衛星Nにおける遅延時間補正データであり、これも主記憶装置82に記憶される。
【0033】
衛星1〜衛星Nの中に静止衛星と移動衛星の両方が含まれる場合、静止衛星に対する相対移動読度は、段落0031の式から、また移動衛星に対する相対移動速度は段落0032の式から、それぞれ求めることができる。中央処理装置81は、主記憶装置82に記憶された測位履歴データにおける基準時刻データDT0と、遅延時間データDDTと、遅延時間補正データtDOP1〜tDOPNを用いて各衛星1〜衛星Nに対する携帯端末HTの相対移動速度F1〜FNを算出する。
【0034】
中央処理装置81は、さらに、これらの各衛星1〜衛星Nに対する相対移動速度F1〜FNと、各衛星1〜衛星Nから送信される各衛星1〜衛星Nの軌道情報とに基づき、携帯端末HTの各衛星1〜衛星Nに対する相対移動ベクトルを求め、それらの各相対移動ベクトルを合成することにより、移動速度算出ブロック10を内蔵した携帯端末の移動速度と移動方向を求める。このM回の測位動作に基づいて得られた携帯端末の移動速度および移動方向は、次回の測位動作時の携帯端末の移動範囲を絞り込むのに使用され、これを利用して次回の測位結果を補正することにより、携帯端末HTの測位精度の向上を図ることができる。
【0035】
以上のように、実施の形態1による携帯端末は、相関演算回路30を用いて、時系列の複数回に亘り各外部基準局に対する測位動作を行ない、この外部基準局に対する複数回の測位動作に基づく、ピーク位置検出出力データPO1〜PON,すなわち測位履歴データを記憶し、中央処理装置が、この測位履歴データに基づいて、携帯端末HTの移動速度を求めるものであり、この携帯端末HTでは、通信により携帯端末の移動速度を求めることができ、携帯端末HTを大型化せず、また自動車または電車内でも携帯端末HTの移動速度を求めることができる。
【0036】
なお、実施の形態1では、タイミング制御回路71に対する同期信号SYを外部から供給するものであるが、携帯端末HTの内部でこの同期信号SYを生成することもできる。この場合にも、衛星1〜衛星Nから受信した衛星電波に基づき、同期信号SYを生成する。
【0037】
また実施の形態1では、衛星1〜衛星Nが互いに同期して衛星電波を発信する同期タイミングTsと同期したタイミングで同期信号SYを発生する同期方式の測位動作を具体例として説明したが、非同期方式、すなわち各衛星1〜衛星Nの同期タイミングTsと任意に設定されるタイミングで同期信号SYを発生する方式とすることもできる。
【0038】
実施の形態2.
図3は、この発明による携帯端末の実施の形態2を示すブロック回路図である。この実施の形態2による携帯端末HTも、携帯電話機または携帯情報通信端末である。この実施の形態2による携帯端末HTの移動速度算出装置11における受信系20Aは、実施の形態1における相関演算回路30を変形した相関演算回路30Aを有する。その他は実施の形態1と同じに構成される。
【0039】
この相関演算回路30Aは、N個の副記憶装置91〜9Nを有する。これらの各副記憶装置91〜9Nは、各相関演算系31〜3Nのそれぞれにおいて、相関計算回路51〜5Nとピーク位置検出回路61〜6Nとの間に接続される。この各副記憶装置91〜9Nは、M回の測位動作に亘り各相関演算回路51〜5Nから出力される測位履歴データ、すなわち相関出力データCR11、・・・、CR1N、・・・、CRM1、・・・、CRMNを記憶する。
【0040】
実施の形態1では、M回の測位動作により、各ピーク位置検出回路61〜&Nから出力されるピーク位置検出出力データPO1〜PONを測位履歴データとして、主記憶装置82に記憶したが、実施の形態2では、M回の測位動作により、相関計算回路51〜5Nから出力される相関出力データCR11、・・・、CR1N、・・・、CRM1、・・・、CRMNを測位履歴データとして、副記憶装置91〜9Nに記憶するので、主記憶装置82の記憶容量を小さくすることができる。
【0041】
この実施の形態2では、中央処理装置81は、衛星1〜衛星Nに対する携帯端末HTの相対速度F1〜FNを演算するときに、副記憶装置91〜9Nに記憶された相関出力CR11、・・・、CR1N、・・・、CRM1、・・・、CRMNをピーク位置検出回路61〜6Nを通じて読み出す。
【0042】
実施の形態3.
この実施の形態3は、実施の形態1または実施の形態2において、N個の外部基準局として、符号分割多元接続方式のN個の通信基地局を利用するものであり、この実施の形態3の携帯端末HTは、この符号分割多元接続方式の携帯通信情報端末とされ、符号分割多元接続方式のN個の通信基地局との間で通信を行なう機能を有する。
【0043】
この実施の形態3の携帯端末HTでは、受信系20、20Aが符号分割多元接続方式のN個の通信基地局からの通信電波を受信する。この符号分割多元接続方式の通信基地局からの通信電波は、実施の形態1で利用した衛星1〜衛星Nからの衛星電波とは周波数が異なるので、図1のアンテナ12とは異なる受信周波数のアンテナが使用され、また図1のRFブロック13とは異なる復調回路を有するRFブロックが使用されるが、相関演算回路30、30Aと、タイミング回路70と、中央処理回路80は、図1、図3と同じ構成とされる。
【0044】
この実施の形態3の携帯端末でも、符号分割多元接続方式の複数の通信基地局は、それぞれに固有の識別コードを含む通信電波を、互いに同じ周波数で発信するので、その受信信号に基づくサンプリングデータSを受信系20、20Aにより、実施の形態1、2と同様に処理することにより、携帯端末HTの移動速度を求めることができる。
【0045】
実施の形態4.
図4は、この発明による携帯端末の実施の形態4を示すブロック回路図である。この実施の形態4による携帯端末HTは、複数のN1個のGPS衛星からの衛星電波と、符号分割多元接続方式の複数のN2個の通信基地局からの通信電波とを併用して携帯端末HTの移動速度を求めるものである。
【0046】
この実施の形態4における移動速度算出装置11は、2つの受信系20、200と、これらに付属する2つのタイミング回路70、700と、2つの受信系20、200に共通に接続された中央処理回路100を有する。受信系20は、図1に示す実施の形態1の受信系20と同じに構成され、複数のN1個のGPS衛星からの衛星電波を受信し処理する。
【0047】
受信系200は、実施の形態3で利用した符号分割多元接続方式の複数のN2個の通信基地局からの通信電波を受信し処理する。この受信系200は、アンテナ120と、RFブロック130と、相関演算回路300とを有する。アンテナ120は、符号分割多元接続方式の複数の通信基地局からの通信電波を受信する。RFブロック130は、アンテナ120に接続された高周波受信回路であり、各通信基地局からの通信電波を復調するとともに、そのアナログ信号をディジタル変換したサンプリングデータS200を発生する。相関演算回路300は、図1に示す実施の形態1における相関演算回路30と同じに構成される。
【0048】
受信系20に付属するタイミング回路70および受信系200に付属するタイミング回路700は、ともに実施の形態1と同じタイミング制御回路71を有する。
【0049】
中央処理回路100は、実施の形態1と同じ中央処理装置81と、これに接続された主記憶装置82を有する。この中央処理回路100の中央処理装置81は、受信系20の各ピーク位置検出回路61〜6NからのM1回の測位履歴データ、すなわちM1回のピーク位置検出出力データPO1〜PON、および受信系200の各ピーク位置検出回路61〜6Nからの測位履歴データ、すなわちピーク位置検出出力データPO1〜PONを受けるように接続される。
【0050】
この実施の形態4では、N1個のGPS衛星からの衛星電波に基づいて、受信系20の各ピーク位置検出回路61〜6Nが、M1回に亘る測位履歴データ、すなわちピーク位置検出出力データPO1〜PONを出力し、これが主記憶装置82に記憶される。また同様に、N2個の符号分割多元接続方式の通信基地局からの通信電波に基づいて、受信系200の各ピーク位置検出回路61〜6Nが、M2回に亘る測位履歴データ、すなわちピーク位置検出出力データPO1〜PONを出力し、これも主記憶装置82に記憶される。
【0051】
中央処理回路100の中央処理装置81は、これらの各受信系20、200からの測位履歴データを用い、また移動衛星に関する遅延時間補正データtDOP1〜tDOPNを用いて、N1個のGPS衛星とN2個の通信基地局とに対する携帯端末HTの移動速度および移動方向を算出する。
【0052】
この実施の形態4による携帯端末HTでも、通信により携帯端末の移動速度を求めることができ、携帯端末HTを大型化せず、また自動車または電車内でも携帯端末HTの移動速度を求めることができる。
【0053】
なお、実施の形態4において、利用するGPS衛星の数N1と符号分割多元接続方式の通信基地局の数N2は、互いに等しくても、また相違してもよい。また、GPS衛星に関する測位履歴データの回数M1と、通信基地局に関する測位履歴データの回数M2も、互いに等しくても、また相違してもよい。
【0054】
実施の形態5.
図5は、この発明による携帯端末の実施の形態5を示すブロック回路図である。この実施の形態5による携帯端末HTも、複数のN1個のGPS衛星からの衛星電波と、符号分割多元接続方式の複数のN2個の通信基地局からの通信電波とを併用して携帯端末HTの移動速度を求めるものである。
【0055】
この実施の形態5では、実施の形態4における受信信号処理回路20、200に代わって、受信信号処理回路20A、200Aが使用される。これらの受信信号処理回路20A、200Aは、ともに実施の形態2において使用された相関演算回路30Aを有する。
【0056】
この実施の形態5による携帯端末HTでも、通信により携帯端末の移動速度を求めることができ、携帯端末HTを大型化せず、また自動車または電車内でも携帯端末HTの移動速度を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明による携帯端末は、携帯電話機または携帯通信端末として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、この発明による携帯端末の実施の形態1を示すブロック回路図。
【図2】図2は、実施の形態1の動作説明図。
【図3】図3は、この発明による携帯端末の実施の形態2を示すブロック回路図。
【図4】図4は、この発明による携帯端末の実施の形態4を示すブロック回路図。
【図5】図5は、この発明による携帯端末の実施の形態5を示すブロック回路図。
【符号の説明】
【0059】
10:移動速度算出ブロック、11:移動速度算出装置、
20、20A、200、200A:受信系、
30、30A:相関演算回路、31〜3N:相関演算系、41〜4N:エラー補正回路、
51〜5N:相関計算回路、61〜6N:ピーク位置検出回路、
70、700:タイミング回路、80、100:中央処理回路、81:中央処理装置、
82:主記憶装置、91〜9N:副記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相関演算系を含む受信系と、前記各相関演算系に接続された中央処理装置を備え、前記受信系により複数の外部基準局からの電波を受信する機能を有する携帯端末であって、
前記各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘り前記外部基準局に対する測位動作を行ない、この外部基準局に対する複数回の測位動作に基づく測位履歴データを記憶し、
前記中央処理装置が、前記測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求めることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1記載の携帯端末であって、前記中央処理装置に接続された主記憶装置を備え、
前記主記憶装置が、前記測位履歴データを記憶することを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1記載の携帯端末であって、前記各相関演算系のそれぞれに設けられた複数の副記憶装置を備え、前記各副記憶装置が、前記測位履歴データを記憶することを特徴とする携帯端末。
【請求項4】
請求項1記載の携帯端末であって、前記複数の外部基準局として、複数の衛星を利用することを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
請求項1記載の携帯端末であって、前記複数の外部基準局として、符号分割多元接続方式の通信基地局を利用することを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
複数の相関演算系を含む第1の受信系、複数の相関演算系を含む第2の受信系、および前記第1の受信系の各相関演算系と前記第2の受信系の各相関演算系とに共通に接続された中央処理装置を備え、前記第1の受信系により複数の衛星からの衛星電波を受信し、また、前記第2の受信系により符号分割多元接続方式の複数の通信基地局からの通信電波を受信する機能を有する携帯端末であって、
前記第1の受信系の各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘り前記各衛星に対する測位動作を行ない、この各衛星に対する複数回の測位動作に基づく第1の測位履歴データを記憶し、
また、前記第2の受信系の各相関演算系を用いて、時系列に複数回に亘り前記各通信基地局に対する測位動作を行ない、この各通信基地局に対する複数回の測位動作に基づく第2の測位履歴データを記憶し、
前記中央処理装置が、前記第1、第2の測位履歴データに基づいて、携帯端末の移動速度を求めることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−3367(P2007−3367A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184378(P2005−184378)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】