説明

携帯電話機

【課題】必要な部品点数を増加させることなく、簡易な方法により局所電磁波吸収率SARを低減させる。
【解決手段】筐体の表側上部に表示部LCD22を有するとともに表側下部に操作部(キー操作部23)を有し、筐体の上部に内蔵型のアンテナユニット24を備える。表示部と操作部との間の位置にイヤレシーバ21を配置した。またアンテナユニット24は内蔵型のアンテナユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体上部にアンテナユニットを備えた携帯電話機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機は広く普及し、日常生活の上でなくてはならない道具の一つになっている。
【0003】
図1(a)(b)にそれぞれ、従来のいわゆるスティック型の携帯電話機の表側および裏(背面)側の内部構成を示す。図1(a)から分かるように、携帯電話機100は、回路基板10の表側に上から順にイヤレシーバ11、液晶ディスプレイデバイス(LCD)12、テンキー等を含む各種キーを含むキー操作部13、マイク16が配置されている。また、図1(b)から分かるように、回路基板10の裏側には上部側に内蔵型のアンテナユニット14、下部側にバッテリ15が配置されている。折り畳み型の携帯電話機については筐体が上下に分かれるが、イヤレシーバ、LCD、キー操作部、マイクの配置順は同様である。
【0004】
携帯電話機100では電波による無線通信を行うため、電磁波の放射が避けられない。これに関連して、電磁波の人体への吸収量を示す指標の一つとして、人体の特定部分に加えられた電磁波エネルギーの吸収率である局所電磁波吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)が用いられる。日本国内では、総務省令で携帯電話機などの機器に対して、局所SARが2W/Kg(10g平均)という許容値を超えないことが義務づけられている。
【0005】
図2に示すように、利用者が携帯電話機を手に持ってイヤレシーバ11の部分を耳31に当てて用いる通話時にアンテナユニット14が最も人体(頭部20)に近接し、人体への影響が大きくなる。
【0006】
このような電磁波の放射によるSARを低減させる技術として、磁性体を用いる方法(特許文献1、2)や、導電性平板を用いる方法(特許文献3、4)が提案されている。
【特許文献1】特開2000−101338号公報
【特許文献2】特開2001−320457号公報
【特許文献3】特開2002−26627号公報
【特許文献4】特開2002−353733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術では、SARを低減させるために磁性体や金属板などの追加部品が必要となり、携帯電話機のコスト増および重量増の原因となるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、必要な部品点数を増加させることなく、簡易な方法によりSARを低減させることができる携帯電話機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による携帯電話機は、筐体の表側上部に表示部を有するとともに表側下部に操作部を有し、筐体の上部にアンテナユニットを備える携帯電話機において、前記表示部の上部より低い位置にイヤレシーバを配置したことを特徴とする。このように、イヤレシーバの配置位置を従来の配置位置から変更するだけで、利用者は通話時にイヤレシーバの放音口を耳に当てるように頭部に対する携帯電話機の位置を調整するため、従来構成と比べて頭部に対する携帯電話機の位置が必然的に変化する。その結果、SARが低減される。
【0010】
本発明の一態様として、イヤレシーバは前記表示部と前記操作部との間の位置に配置することができる。
【0011】
本発明は前記アンテナユニットが内蔵型である場合に特に有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、必要な部品点数を増加させることなく、イヤレシーバの配置位置を従来の配置位置から変更するだけで利用者の通話時のSARを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明では携帯電話機としていわゆるスティック型のものを例として説明する。アンテナユニットは図1(b)に示したように背面上部にあるものとする。スティック型でなく、上側筐体と下側筐体からなる折り畳み型やスライド型であっても、上側筐体の上部にアンテナユニットが位置するものであれば、本発明を適用可能である。
【0014】
図3に本実施の形態の携帯電話機200の表側の内部構成を示す。回路基板20の表側に上から順に、表示部としての液晶ディスプレイデバイス(LCD)22、イヤレシーバ21、テンキー等を含む各種キーを含むキー操作部23、マイク26が配置されている。このように、本実施の形態ではイヤレシーバ21をLCD22とキー操作部13との間に配置する。回路基板20の裏側の内部構成については図1(b)と同様、上部側に内蔵型のアンテナユニット24、下部側にバッテリ25が配置されている。
【0015】
図4(a)と図4(b)に、従来と本発明の携帯電話機の構成を比べ易いようにその表面側の部品配置を並べて示す。両図から分かるように、従来の携帯電話機100のイヤレシーバ11、LCD12、キー操作部13、アンテナユニット14、バッテリ15等の部品は、本実施の形態の携帯電話機200のイヤレシーバ21、LCD22、キー操作部23、アンテナユニット24(図5)、バッテリ25(図5)と同じであり、イヤレシーバとLCDの配置位置が異なるのみである。すなわち、携帯電話機100においてイヤレシーバ11がアンテナユニット14の上部側に位置していたものを、携帯電話機200ではアンテナユニット24の下部側に位置させている。
【0016】
携帯電話機100においてSARの高くなる場所(ホットスポット)18は、図4(a)に示すように、その筐体のほぼ中央の部分にあり、これは携帯電話機200におけるホットスポット28の位置と変わらない。すなわち、携帯電話機100でのホットスポット18の位置はイヤレシーバ11より下部側にあるのに対し、携帯電話機200のホットスポット28はイヤレシーバ21より上方に位置する。
【0017】
通常、マイク16は利用者の口からある程度離れてもその利用者の発する音声を十分に捕らえることができるのに対し、イヤレシーバ21(11)から放出される音の強さはその放音口から離れるにつれて急激に低下する。このため、利用者は、通話時にマイク26の位置よりもイヤレシーバ21の位置を基準として携帯電話機の位置を決定する。すなわち、イヤレシーバ21の放音口に耳31を押し当てる位置で携帯電話機200を使用することになる。その結果、通話時には、図5に示すように、携帯電話機200の頭部30に対する位置は携帯電話機100のそれより高い位置に来る。これにより、携帯電話機100のホットスポット18(図4(a))が利用者の頭部30にほぼ接していたのに対し、携帯電話機200のホットスポット28は耳より上側にずれ、頭部30から離れることになる。そのため、SARが小さくなる。
【0018】
それぞれ携帯電話機100と携帯電話機200のような、上部設置内蔵アンテナを用いたスティック型のPDC800MHz帯の携帯電話機について実際にSARを測定したところ、次のような結果を得た。
【0019】
携帯電話機100のSAR:1g平均1.27W/kg、10g平均0.86W/kg
携帯電話機200のSAR:1g平均1.01W/kg、10g平均0.67W/kg
【0020】
この結果から、携帯電話機100に比べ携帯電話機200の方がSARが低減されていることが分かる。
【0021】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、イヤレシーバの位置は表示部とキー操作部との間に配置したが、従来のような筐体上部の配置位置より低い位置に配置すれば相応の効果は得られる。例えば、表示部の横や操作部の中であってもよい。携帯電話機にはいわゆる簡易携帯電話機(PHS)も含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の携帯電話機の表側および裏(背面)側の内部構成を示す図(a)(b)である。
【図2】従来の携帯電話機の通話時の人体との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る携帯電話機の表側の内部構成を示す図である。
【図4】従来と本発明の携帯電話機の構成を比べ易いようにその表面側の部品配置を並べて示した図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る携帯電話機の通話時の人体との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
10…回路基板、11…イヤレシーバ、13…キー操作部、14…アンテナユニット、15…バッテリ、16…マイク、18…ホットスポット、20…回路基板、20…頭部、21…イヤレシーバ、23…キー操作部、24…アンテナユニット、25…バッテリ、26…マイク、28…ホットスポット、30…頭部、31…耳、100…携帯電話機、200…携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の表側上部に表示部を有するとともに表側下部に操作部を有し、筐体の上部にアンテナユニットを備える携帯電話機において、前記表示部の上部より低い位置にイヤレシーバを配置したことを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
前記表示部と前記操作部との間の位置にイヤレシーバを配置したことを特徴とする請求項1記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記アンテナユニットは内蔵型のアンテナユニットであることを特徴とする請求項1記載の携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−222604(P2006−222604A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32645(P2005−32645)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】