説明

携帯電話端末、高周波複合装置、および高周波切替装置

【課題】複数の通信方式に対応した携帯電話端末における高周波送受信信号経路と制御信号経路のレイアウトを簡略化する。
【解決手段】複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置100aは、複数のスイッチSW1〜SW6と論理回路110aを有する。論理回路110aは、高周波制御装置140aからの制御信号a〜cに応じて制御信号d1〜d8を生成する。そのうち制御信号d1〜d6は、それぞれ、信号経路をON/OFFする複数のスイッチSW1〜SW6の切替制御信号となる。制御信号d7,d8は電力増幅器PA1,PA2のON/OFF制御信号として出力される。SW3,SW4の切替制御信号d3,d4は、PA3,PA4のON/OFF制御信号を兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波切替装置およびそれを用いた携帯電話端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な第3世代(3G)の携帯電話端末は、地域毎に通信方式および周波数帯域の仕様を合わせた送受信機能を備える。1つの地域で複数の通信方式、周波数帯域をもつ地域向け、または、複数の地域に対応する仕様で作られた場合、高周波(RF:Radio Frequency)回路は複数の通信方式および周波数帯のそれぞれの送受信機能を備える。
【0003】
例えば、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、GSM(Global System for Mobile Communications Service)等に対応したマルチバンド対応の携帯電話端末が存在する。
【0004】
携帯電話端末は、電力増幅器(PA)、高周波切替装置および高周波制御装置を備える。
【0005】
高周波制御装置は、それら4つのバンドのそれぞれの送信信号を処理する送信回路および受信信号を処理する受信回路を有し、さらに、その制御を行う制御部を内蔵している。各バンドの高周波送信信号は、それぞれの対応する電力増幅器に入力される。各電力増幅器は消費電流が大きいため、スタンバイ、待ち受け、および受信のみの動作状態においては動作しないことが望ましい。そのため、各電力増幅器は、それぞれ、高周波制御装置から出力される制御信号によりON/OFF制御され、選択的に能動化される。
【0006】
特許文献1には、GSM方式とDCS(Digital Communications System)方式とPCS(Personal Communications Service)方式の3つの通信方式の切替えを行う高周波スイッチモジュールが開示されている。
【0007】
特許文献2には、複数の通信システムに対応し、通信システムの送受信信号が通過する伝送経路を切り替えるFETスイッチ回路および複数のフィルタ回路からなるスイッチモジュールが開示されている。
【0008】
特許文献3には、通信機器のアンテナと送信回路または受信回路との接続を切り替えるアンテナスイッチに関し、特に、外部からの経路切替信号に応じてDC−DC変換回路の出力電圧をスイッチ回路へ供給するデコーダ回路を備えた半導体スイッチ集積回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−123740号公報
【特許文献2】特開2008−271420号公報
【特許文献3】特開2008−124805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようなマルチバンド携帯電話端末においては対応バンド数が増えるにつれ、電力増幅器および切替装置に対して必要となる高周波制御装置からの制御信号の数は増大する。また、高周波制御装置において、高周波信号の処理に関わるブロックと、増幅装置および切替装置の制御に関わるブロックとは、ブロック間での干渉やノイズの回り込みを低減するために一般に分離して配置される。このため、高周波制御装置において、切替装置および増幅装置の制御信号の端子を高周波信号の端子に近接して配置することは難しい。
【0011】
このような状況で、一般に高周波制御装置の制御信号経路は、高周波送受信信号経路と交差しがちとなる。しかし、高周波の送受信信号は外部からのノイズの影響を除外する必要があり、また、高周波送受信信号経路は低損失とするためストリップラインまたはマイクロストリップラインを用いるため、高周波送受信信号経路と交差する制御信号経路のレイアウトは制約を受ける。その結果、レイアウトの冗長性、複雑性が発生することになる。
【0012】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、複数の通信方式に対応した携帯電話端末における高周波送受信信号経路と制御信号経路のレイアウトを簡略化することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による携帯電話端末は、アンテナと、前記アンテナに対して複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置と、この切替装置の切替制御を行う高周波制御装置と、前記複数の通信方式に対応した高周波送信信号の電力増幅を行う複数の電力増幅器とを備える。この構成において、前記切替装置は、それぞれ信号経路をON/OFFする複数のスイッチ手段と、前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて、前記複数のスイッチ手段に対する切替制御信号および前記複数の電力増幅器に対するON/OFF制御信号を生成する論理回路とを有する。
【0014】
このように、電力増幅器は、高周波制御装置から直接制御されるのではなく、高周波制御装置から高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置を経由して制御される。
【0015】
前記複数のスイッチ手段の切替制御信号の一部は、少なくとも1つの電力増幅器のON/OFF制御信号として共用することができる。
【0016】
前記論理回路は前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて前記電力増幅器を制御する独立の電力増幅器制御信号を生成してもよい。この場合、前記切替装置は、少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記論理回路から出力される前記電力増幅器制御信号との論理積出力を当該電力増幅器に対するON/OFF制御信号として生成する。この構成により電力増幅器の切替に伴ってスイッチ手段の状態が不安定となることが防止される。
【0017】
また、前記切替装置は、少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記高周波制御装置から出力される電力増幅器制御信号との論理積出力を当該電力増幅器に対するON/OFF制御信号として生成するようにしてもよい。この構成では、前記高周波制御装置から出力される電力増幅器制御信号を論理ゲートに対して直接的に供給することにより、切替装置内の論理回路の出力遅延のばらつきの影響が排除される。
【0018】
前記切替装置は、少なくとも1つのスイッチ手段の制御電圧を上昇させる電圧変換手段をさらに備え、前記論理回路は、少なくとも1つの通信方式の送信時に前記電圧変換手段により当該スイッチ手段の制御電圧を上昇させるようにしてもよい。これにより、送信時のスイッチ手段の制御電圧を昇圧させ、その正常な動作を保証する一方、非送信時の消費電力を低減する。
【0019】
本発明による高周波複合装置は、複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置と、この切替装置の切替制御を行う高周波制御装置とを備える。この構成において、前記切替装置は、それぞれ信号経路をON/OFFする複数のスイッチ手段と、前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて、前記複数のスイッチ手段に対する切替制御信号および高周波送信信号の電力増幅を行う電力増幅器に対するON/OFF制御信号を生成する論理回路とを有する。
【0020】
本発明による切替装置は、複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置であって、それぞれ信号経路をON/OFFする複数のスイッチ手段と、外部から複数の制御信号を受ける複数の制御入力端子と、前記複数の制御信号に応じて、前記複数のスイッチ手段に対する切替制御信号および高周波送信信号の電力増幅を行う電力増幅器に対するON/OFF制御信号を生成する論理回路と、前記電力増幅器に対するON/OFF制御信号を出力する出力端子とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高周波制御装置からの電力増幅器のON/OFF制御を、切替装置を経由して行うことにより、高周波送受信信号経路と制御信号経路のレイアウトを簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的なマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す図である。
【図2】図1に示した実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の構成図、およびその説明図である。
【図3】図2の構成の動作説明図である。
【図4】図2の切替装置内の論理回路の入出力関係を表した真理値表を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す図である。
【図6】図5の構成の動作説明図である。
【図7】図5の切替装置内の論理回路の真理値表を示した図である。
【図8】図5の実施の形態の作用効果の説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示した図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示した図である。
【図11】図10の構成の動作説明図である。
【図12】図10の切替装置内の論理回路の真理値表を示した図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成、および、その説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1に、一般的なマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す。
【0025】
図1の例では、UMTSの2バンド(Band1、Band2)と、GSMの2バンド(Band3、Band4)に対応したマルチバンド対応の高周波複合装置の構成を示している。この場合、UMTS、CDMA等、送受信を同時に行う通信方式と、GSM、GPRS等、送受信を同時に行わない通信方式のそれぞれ2バンドずつに対応した高周波複合装置を示している。この高周波複合装置は、複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置100と、この切替装置100の切替制御を行う高周波(RF)制御装置140とを備えている。
【0026】
高周波制御装置140は、特にその内部詳細を図示しないが、4つのバンドのそれぞれの送信信号を処理する送信回路および受信信号を処理する受信回路を有し、さらに、その制御を行う制御部を内蔵している。制御部は図示しないプロセッサやASICにより構成される。
【0027】
高周波制御装置140は、バンド1〜4の符号化処理および変調処理等を行う処理部を有し、選択されたバンドの高周波送信信号を出力する。各バンドの高周波送信信号は、それぞれの対応する電力増幅器(PA1〜PA4)131〜134に入力される。
【0028】
また、高周波制御装置140はバンド1〜4のそれぞれの高周波受信信号を受信し、その対応する受信回路でそのバンドに対応した復調処理、復号処理等の必要な処理を行う。
【0029】
切替装置(高周波切替装置)100は、それぞれのバンドの高周波送受信信号経路の接続/遮断を行うスイッチSW1〜SW6を複数備え、高周波制御装置からの制御信号を受けて、各スイッチの切替制御信号を生成し、任意の高周波送受信信号経路がアンテナと接続するようスイッチの制御を行う。すなわち、これらのスイッチによりアンテナ115と各高周波送受信信号経路の接続/遮断を行う。本実施の形態におけるスイッチ(SW)はFETなどの半導体スイッチまたはMEMSなどの機械式スイッチにより構成されるスイッチ手段である。高周波送受信信号経路は、通信方式により高周波送信経路と高周波受信経路が共通の経路の場合と別々の経路の場合とがある。UMTSのように送受信を同時に行う通信方式では、高周波送信経路と高周波受信経路は分波器を介して単一のスイッチに接続される。図の例ではバンド1、バンド2が送受信に共通の経路を用いている。切替装置100内の論理回路110は、高周波制御装置140から制御信号a,b,cを受け、それぞれのスイッチSW1〜SW6の切替制御信号d1〜d6を生成する。これにより、高周波制御装置140からの制御に応じて、スイッチSW1〜SW6および電力増幅器PA1〜PA4の必要な任意のON/OFFの組み合わせを実現する。なお、切替装置100は集積回路(IC)で構成することができ、入出力端子I1〜I10を有している。
【0030】
電力増幅器(PA)131〜134の各々は、それぞれのバンドの送信信号を所定の出力電力に増幅する機能を有する。各電力増幅器(PA)は消費電流が大きいため、スタンバイ、待ち受け、および受信のみの動作状態においては動作しないことが望ましい。そのため、電力増幅器131〜134は、それぞれ、高周波制御装置140から出力される制御信号d,e,f,gによりON/OFF制御され、選択的に能動化される。
【0031】
分波器(DUP)121,122は、1つのアンテナ115で送受信を同時に行うために、バンド1、バンド2のそれぞれの送受信信号の周波数の違いを利用して、そのバンドの送受信信号を所定の高周波送受信信号経路に振り分ける機能を有する。すなわち、UMTS等の送受信を同時に行う通信方式では、送受信の経路の切替は分波器にて行い、切替装置100ではバンドの切替のみ行う。
【0032】
これに対し、GSMのように送受信を時間で分ける(時分割の)通信方式では、送受信の切替の際に、切替装置100で送受信および高周波送受信信号経路の切替を行う。
【0033】
図2(a)は、本実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す。この図において、図1に示したと同様の構成要素には同様の参照番号を付して、重複した説明は省略する。図2(b)は、バンド1についての各種動作でのスイッチSW1と電力増幅器PA1の状態を示している。
【0034】
図1の構成と異なる点は、高周波制御装置140から出力される7本の制御信号a〜gを3本の制御信号a〜cに低減し、これに伴って、切替装置100の構成を変更して切替装置100aに変更したことである。論理回路110aは制御入力端子I7〜I9に高周波制御装置140cからの制御信号a〜cを受け、SW1〜SW6の切替制御信号とともに、電力増幅器131〜134へのON/OFF制御信号を生成する。このON/OFF制御信号は、制御出力端子c1〜c4を介して電力増幅器131〜134へ出力される。
【0035】
図2(b)に示すように、例えばUMTSのバンド1については通話(送受信)時にはSW1とPA1を共にONし、通話(非送信)時にはSW1をON、PA1をOFFとする。また、待ち受け時にはSW1をON、PA1をOFFとし、スタンバイ時にはSW1とPA1を共にOFFする。
【0036】
図3に、図2の構成での各種動作に対応した状態における各スイッチ(SW)および各電力増幅器(PA)のON/OFFを表した動作説明図を示す。各バンドと状態との関係は次のとおりである。
Band1の場合、非送信時に状態0、送信時に状態1となる。
Band2の場合、非送信時に状態2、送信時に状態3となる。
Band3の場合、受信時に状態6、送信時に状態4となる。
Band4の場合、受信時に状態7、送信時に状態5となる。
なお、図2(a)に示した「スタンバイ」はPA1に着目した動作であり、図3では他のバンドがアクティブの状態に対応した例を示している。
【0037】
図3から分かるように、PA3のON/OFFパターンはSW3のON/OFFパターンと同じである。また、PA4のON/OFFパターンはSW4のON/OFFパターンと同じである。送受信を同時に行わない通信方式では送受信は切替え装置にて行われる。また、増幅装置は送信時にのみ能動化される。このため、増幅装置を接続するスイッチと増幅装置の動作は一致する。したがって、PA3とPA4のON/OFF制御信号として、それぞれ、SW3とSW4の切替制御信号d3,d4を利用することができる。そこで、本発明では、切替装置100の論理回路110aの出力数を増やし、一部を切替装置外へ出力して電力増幅装置を制御するようにする。
【0038】
図4に、図2の切替装置100a内の論理回路110aの入出力関係を表した真理値表を示す。論理回路110aは3入力8出力の論理回路である。論理回路110aから出力される制御信号d1〜d8のうちd1〜d6はそれぞれSW1〜SW6の制御に利用される。また、制御信号d3はPA3,SW3の制御に共用され、制御信号d4はPA4,SW4の制御に共用される。制御信号d7はPA1の制御に利用され、制御信号d8はPA2の制御に利用される。論理回路110aとしては、組み合わせ論理回路、PLA(Programmable Logic Array)、PLD(Programmable Logic Device)、ROM(Read Only Memory)等のデバイスにより構成することができる。
【0039】
高周波送受信信号は周波数が高いため、線路での減衰が大きいこと、および、PAで1W近くに増幅された信号の減衰はバッテリ駆動時間の低下および装置の発熱につながるため、PA−切替装置のレイアウトにおいてはPA−高周波制御装置をより近接してレイアウトすることが多い。図1と図2を対比して分かるように、図1では高周波制御装置140からPA1〜PA4への制御信号経路が高周波制御装置140と切替装置100の間の高周波送受信信号経路と交差している。これに対して、図2の構成では、切替装置100aからPA1〜PA4への制御信号経路は、高周波送受信信号経路と並走するため、信号経路の交差がなくなり、レイアウト上の制約を受けにくく、シンプルなレイアウトが可能となる。また、高周波制御装置からの制御信号線が4本削減される。
【0040】
なお、すべてのバンドに対して本発明を適用する必要はなく、バンドに応じて図1に示したように高周波制御装置からPAを直接制御する方式との組み合わせも考えられる。
【0041】
また、PAのON/OFF、SWのON/OFFはいずれもその制御信号がハイレベル(H)のときにONするという前提で上記の説明をしている。装置によってON/OFFが変わるので、必ずしもAND論理でPAの制御を行うことに限定したものではない。後述する他の実施の形態においても同様である。
【0042】
図5に、本発明の第2の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す。図2に示したと同様の構成要素には同様の参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0043】
図2に示した構成では、SWとPAの制御を論理回路110aの任意のロジックで行った場合、送信のON/OFF(PAのON/OFF)の切替の際にロジックが過渡状態となるため、SWの状態が不安定となりうる。すなわち、SWの不安定化により、受信信号の電力損失の増大、信号歪の増大、受信信号の品質が劣化、最悪の場合接続の切れる場合がありうる。そこで、第2の実施の形態では、PA1〜PA4に対してそれぞれ論理ゲート(ここではAND回路151〜154)を設けるとともに、高周波制御装置140bが制御信号a〜cに加えてもう1本の制御信号dを生成する。論理回路110bは4入力7出力として、制御信号d1〜d7を生成する。本実施の形態では、AND回路151〜154のそれぞれの一方の入力端には制御信号d1〜d4が入力され、他方の入力端にはPAのON/OFFに特化した独立の電力増幅器制御信号である制御信号d7(PA_ON)が共通に入力される。AND回路151〜154からのそれぞれの論理積出力が、対応するPA1〜PA4の制御に利用される。
【0044】
図6は、図5の構成での各種動作に対応した状態における各スイッチ(SW)および各電力増幅器(PA)のON/OFF、および制御信号PA_ONの状態を示す。各バンドと状態との関係は、図6の状態2〜9が図3の状態0〜7に対応している。図6の状態0はスタンバイ状態に対応し、状態1は不使用である。
【0045】
図7は、図5の切替装置100b内の4入力7出力の論理回路110bの真理値表を示している。この図から分かるように、論理回路の出力として制御信号d7(PA_ON)が追加されている。この制御信号d7は入力制御信号dに一致し、各SWの状態に関与せず、AND回路151〜154の制御にのみ利用される。
【0046】
図8は、第2の実施の形態の作用効果の説明図である。この図は、バンド1非送信の状態からバンド1送信に切り替わる状態変化が生じる場合のSW1とPA1の状態の変化とこれに関係する制御信号の時間軸上の波形例を示している。図8(a)が第1の実施の形態の例、図8(b)が第2の実施の形態の例を示している。第1の実施の形態の場合、PA1がOFFからONへ状態変化する際に、図示のようなSW1の過渡動作が生じる可能性がある。これに対して、第2の実施の形態によれば、AND回路の付加により、制御信号PA_ONのH/Lの変化に対して、制御信号dの追加により、SWのON/OFFは影響を受けないようにすることができる。換言すれば、電力増幅器の状態変化時に、スイッチの状態変化に関与する入力制御信号a〜cの状態は変化しないことが保証される。このため、非送信時→送信時への過渡状態における受信の不安定化を抑えることができる。したがって、図8(a)に示すような問題が解消される。すなわち、PAの制御をSWの制御信号と別信号とすることにより、送信の有無によらずSWの状態が安定する。
【0047】
図9に、本発明の第3の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す。図5に示したと同様の構成要素には同様の参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0048】
第2の実施の形態の場合、PAの立ち上げタイミングは高周波制御装置のソフトウェアの設定で決定することができる。しかし、切替装置内の論理回路による制御信号の遅延のばらつきの影響を無視することができない場合がある。
【0049】
そこで、本実施の形態では、高周波制御装置140bからの制御信号dを、切替装置100cの制御信号PA_ONとしてそのまま用い、AND回路151〜154の制御に利用する。すなわち、制御信号dをPA1〜PA4のON/OFF制御に振り向ける。これにより、PA1〜PA4に対する切替装置100c内の制御はAND回路の1つのみとなり、制御信号の遅延による影響を最小限にすることができ、上記の問題が解決される。
【0050】
図10に、本発明の第4の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す。上述した他の図に示したと同様の構成要素には同様の参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0051】
異なる通信方式における2つ以上のバンドを周波数の近いバンドにする場合、図示のように増幅装置(この場合PA1)を共用し、第2の切替装置155で各バンドの分波器121,122に接続する構成をとる場合がある。このような場合にも本発明を適用することができる。そのために、論理回路110cから切替装置155に対する切替制御信号d7と、電力増幅器PA1に対するON/OFF制御信号d8を生成する。
【0052】
図11は、図10の構成での各種動作に対応した状態における各スイッチ(SW)の切替、第2の切替装置155の切替、各電力増幅器(PA)のON/OFF、および制御信号PA_ONの状態を示す。この図から分かるように、第2の切替装置155は、状態1でDUP1側に切り替わり、状態3でDPU2側に切り替わるように制御される。
【0053】
図12は、図10の切替装置100c内の3入力8出力の論理回路110cの真理値表を示している。論理回路110cの入力信号a〜cに応じて、制御信号d1〜d8が生成される。ここでは、切替装置155に対する切替制御信号d7はHのときDUP1側、LのときDUP2側に切替装置155が切り替わる例を示している。
【0054】
第4の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様にAND回路によるPAの制御信号を生成する構成を採用することができる。
【0055】
図13(a)は、本発明の第5の実施の形態におけるマルチバンド携帯電話端末の本発明に関連する部分の構成を示す。図13(b)は、その説明図を示している。上述した他の図に示したと同様の構成要素には同様の参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0056】
切替装置100dは、内部に昇圧型のDC/DCコンバータ160(電圧変換手段)を備えている。上述した実施の形態では電源電圧を明記しなかったが、ここでは電源電圧Vddを明記している。端子I11は論理回路に対する電源電圧の入力端子であり、端子I12はDC/DCコンバータ160に対する電源電圧の入力端子である。携帯電話端末の送信信号は、最大出力時に概算で18V(GSM 33dBm)もの振幅の高周波信号となるため、高周波信号の振幅によってSWによる信号の線形性の劣化がおこる。最悪の場合は、意図しないSWがON状態となって、電話の送受信全体が不安定となる。この対策として、高周波信号の電圧振幅に対して昇圧型DC/DCコンバータ160でSWの制御電圧を十分に上げる。ただし、一般に受信信号は最大でもせいぜいコンマ数Vの振幅であるためDC/DCコンバータ160を動作させる必要はない。また、DC/DCコンバータ160は消費電流が大きいという課題がある。
【0057】
そこで、第2の実施の形態のPAのON/OFF制御に対応して昇圧DC/DCコンバータ160をON/OFFさせ、送信時にのみDC/DCコンバータ160を用いて、SWの制御電圧を上げる。図の例では制御信号d7がHのとき、DC/DCコンバータ160がONとなり、端子12から受けた電源電圧Vddを所定の電圧にまで上昇させた出力電圧を出力線161経由で論理回路110cに印加する。このとき、論理回路110cは端子I11からのVddに代えて、出力線161からの昇圧された電圧をSW1〜SW6の制御電圧として利用する。非送信時にはDC/DCコンバータ160はOFFとなるので、切替装置100dの無駄な消費電流を抑えることができる。
【0058】
尚、PAのON/OFF制御信号と、DC/DCコンバータ160のON/OFFが一致しない場合は、必要に応じてDC/DCコンバータ160の制御入力端にNOT回路を挿入する。
【0059】
このようなDC/DCコンバータ160の利用は、AND回路を用いない他の実施の形態においても同様に利用することが可能である。
【0060】
また、この実施の形態において第3の実施の形態のように、AND回路の制御に高周波制御装置からの制御信号を直接用いることも可能である。
【0061】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0062】
100,100a,100b,100c,100d…切替装置、110,110a,110b,110c…論理回路、115…アンテナ、121,122…分波器(DUP1,DUP2)、131〜134…電力増幅器(PW1〜PW4)、140,140a,140b…高周波制御装置、151〜154…AND回路(論理ゲート)、155…切替装置、160…DC/DCコンバータ、161…出力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナに対して複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置と、
この切替装置の切替制御を行う高周波制御装置と、
前記複数の通信方式に対応した高周波送信信号の電力増幅を行う複数の電力増幅器とを備え、
前記切替装置は、それぞれ信号経路をON/OFFする複数のスイッチ手段と、
前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて、前記複数のスイッチ手段に対する切替制御信号および前記複数の電力増幅器に対するON/OFF制御信号を生成する論理回路とを有する
携帯電話端末。
【請求項2】
前記複数のスイッチ手段の切替制御信号の一部は少なくとも1つの電力増幅器のON/OFF制御信号として共用される請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項3】
前記論理回路は前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて前記電力増幅器を制御する独立の電力増幅器制御信号を生成し、
前記切替装置は、少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記論理回路から出力される前記電力増幅器制御信号との論理積出力を当該電力増幅器に対するON/OFF制御信号として生成する請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項4】
前記切替装置は、少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記高周波制御装置から出力される電力増幅器制御信号との論理積出力を当該電力増幅器に対するON/OFF制御信号として生成する請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項5】
送信と受信が同時に行われる通信方式については高周波送信経路と高周波受信経路は分波器を介して単一のスイッチ手段に接続される請求項1〜4のいずれかに記載の携帯電話端末。
【請求項6】
前記切替装置は、少なくとも1つのスイッチ手段の制御電圧を上昇させる電圧変換手段をさらに備え、
前記論理回路は、少なくとも1つの通信方式の送信時に前記電圧変換手段により当該スイッチ手段の制御電圧を上昇させる請求項1〜5のいずれかに記載の携帯電話端末。
【請求項7】
複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置と、
この切替装置の切替制御を行う高周波制御装置とを備え、
前記切替装置は、それぞれ信号経路をON/OFFする複数のスイッチ手段と、
前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて、前記複数のスイッチ手段に対する切替制御信号および高周波送信信号の電力増幅を行う電力増幅器に対するON/OFF制御信号を生成する論理回路とを有する
高周波複合装置。
【請求項8】
前記複数のスイッチ手段の切替制御信号の一部は少なくとも1つの電力増幅器のON/OFF制御信号として共用される請求項7に記載の高周波複合装置。
【請求項9】
前記論理回路は前記高周波制御装置から出力される制御信号に応じて前記電力増幅器を制御する独立の電力増幅器制御信号を生成し、
前記切替装置は、少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記論理回路から出力される前記電力増幅器制御信号との論理積出力を前記ON/OFF制御信号として生成する請求項7に記載の高周波複合装置。
【請求項10】
前記切替装置は、少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記高周波制御装置から出力される電力増幅器制御信号との論理積出力を当該電力増幅器に対するON/OFF制御信号として生成する請求項7に記載の高周波複合装置。
【請求項11】
少なくとも1つのスイッチ手段の制御電圧を上昇させる電圧変換手段をさらに備え、前記論理回路は、少なくとも1つの通信方式の送信時に前記電圧変換手段により当該スイッチ手段の制御電圧を上昇させる請求項7〜10のいずれかに記載の高周波複合装置。
【請求項12】
複数の通信方式の高周波送受信信号経路の切替を行う切替装置であって、
それぞれ信号経路をON/OFFする複数のスイッチ手段と、
外部から複数の制御信号を受ける複数の制御入力端子と、
前記複数の制御信号に応じて、前記複数のスイッチ手段に対する切替制御信号および高周波送信信号の電力増幅を行う電力増幅器に対するON/OFF制御信号を生成する論理回路と、
前記電力増幅器に対するON/OFF制御信号を出力する出力端子と
を備えた高周波切替装置。
【請求項13】
前記複数のスイッチ手段の切替制御信号の一部は少なくとも1つの電力増幅器のON/OFF制御信号として共用される請求項12に記載の高周波切替装置。
【請求項14】
前記論理回路は前記外部からの制御信号に応じて前記電力増幅器を制御する独立の電力増幅器制御信号を生成し、
少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートをさらに備え、この論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記論理回路から出力される前記電力増幅器制御信号との論理積出力を前記ON/OFF制御信号として生成する請求項12に記載の高周波切替装置。
【請求項15】
少なくとも1つの前記電力増幅器に対してそのON/OFF制御信号を生成する論理ゲートと、外部から電力増幅器制御信号を受ける制御入力端子とをさらに備え、前記論理ゲートは当該スイッチ手段に対する切替制御信号と前記外部から受けた電力増幅器制御信号との論理積出力を当該電力増幅器に対するON/OFF制御信号として生成する請求項12に記載の高周波切替装置。
【請求項16】
少なくとも1つのスイッチ手段の制御電圧を上昇させる電圧変換手段をさらに備え、前記論理回路は、少なくとも1つの通信方式の送信時に前記電圧変換手段により当該スイッチ手段の制御電圧を上昇させる請求項12〜15のいずれかに記載の高周波切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−30001(P2011−30001A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174418(P2009−174418)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】