摩擦ダンパー
【課題】構造が簡単であって安価に製造することができ、メンテナンスの回数が少なく、設置も容易に行うことができるエネルギー吸収性能の高い摩擦ダンパーを提供する。
【解決手段】摩擦ダンパー1において、相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に連続した波形の凹凸が形成された第1部材2と、相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材2に移動自在に嵌挿されるケース6を備えた第2部材5とを、有し、前記第2部材5のケース内に前記第1部材2の波形の凹凸と係合する波形の凹凸8を形成した摩擦部材7が軸方向の移動を拘束されとともに、弾性部材9を介して前記第1部材2側に押圧付勢されて収容される。
【解決手段】摩擦ダンパー1において、相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に連続した波形の凹凸が形成された第1部材2と、相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材2に移動自在に嵌挿されるケース6を備えた第2部材5とを、有し、前記第2部材5のケース内に前記第1部材2の波形の凹凸と係合する波形の凹凸8を形成した摩擦部材7が軸方向の移動を拘束されとともに、弾性部材9を介して前記第1部材2側に押圧付勢されて収容される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土木、建築の技術分野において免震装置や制振装置、変位制限装置として用いられる建築物や橋梁等の構造物の2つの構造部間に発生する相対変位を摩擦力により吸収する摩擦ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木構造物や建築構造物に地震等により負荷される振動や水平力を抑制するための免震装置や制振装置、変位制限装置として各種のダンパーが用いられる。その1つはオイルダンパーであり、もう1つは摩擦ダンパーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−310733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免震装置や制振装置、変位制限装置として用いられるオイルダンパーは、防塵等のメンテナンスが不可欠であり、価格も高価であり、さらに、構造物の狭い空間に配置する作業が困難であるという問題を有する。また、摩擦ダンパーは、摺動部材をシリンダ内に設置し楔を介して圧縮力を生じさせるため、制作工程が複雑となり、摺動部材の摺動距離も制限されるという問題を有する。
【0005】
本発明は、従来の技術が持つ課題を解決する、構造が簡単であって安価に製造することができ、メンテナンスの回数が少なく、設置も容易に行うことができるエネルギー吸収性能の高い摩擦ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の摩擦ダンパーは、前記課題を解決するために、相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に軸方向に連続した波形の凹凸が形成された第1部材と、相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材に移動自在に嵌挿されるケースを備えた第2部材と、を有し、前記第2部材のケース内に前記第1部材の波形の凹凸と係合する波形の凹凸を形成した摩擦部材が軸方向の移動を拘束されるとともに、弾性部材を介して前記第1部材側に押圧付勢されて収容されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗と、他方の方向への相対移動による移動抵抗とが同じになるように形成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗が、他方の方向への相対移動による移動抵抗よりも大きくなるように形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材を板状とし、前記波形の凹凸を表裏面の少なくとも一面に形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材を円筒形状とし、前記摩擦部材を周方向に複数に分割した円弧形状としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記摩擦部材を軸方向に複数に分割したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に軸方向に連続した波形の凹凸が形成された第1部材と、相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材に移動自在に嵌挿されるケースを備えた第2部材と、を有し、前記第2部材のケース内に前記第1部材の波形の凹凸と係合する波形の凹凸を形成した摩擦部材が軸方向の移動を拘束されるとともに、弾性部材を介して前記第1部材側に押圧付勢されて収容される構成により、簡単な構成で地震時の大きな変位に対して波形の凹凸を乗り越えて相対変位する際の移動抵抗により大きなエネルギーを吸収することが可能な摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材の波形の凹凸と摩擦部材の波形の凹凸の形状を、第1部材と第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗と、他方の方向への相対移動による移動抵抗とが同じになるように形成する構成により、構造物の両方向の相対移動に対して同等のエネルギー吸収ができる摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材の波形の凹凸と摩擦部材の波形の凹凸の形状を、第1部材と第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗が、他方の方向への相対移動による移動抵抗よりも大きくなるように形成する構成により、方向性を有する摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材を板状とし、波形の凹凸を表裏面の少なくとも一面に形成した構成により、製造が容易でコンパクトな摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材を円筒形状とし、摩擦部材を周方向に複数に分割した円弧形状とした構成により、波形の凹凸同士の係合接触面積が板状のものより大きくすることができ、相対移動に伴う移動抵抗を大きくすることでエネルギー吸収性を向上することが可能となる。
摩擦部材を軸方向に複数に分割した構成により、第1部材のずれた相対移動に対しての追随性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の摩擦ダンパーの第1実施形態を示す横断面図である。
【図2】本発明の摩擦ダンパーの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の摩擦ダンパーの第2実施形態を示す横断面図である。
【図4】本発明の摩擦ダンパーの第3実施形態を示す横断面図である。
【図5】本発明の摩擦ダンパーの第3実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の摩擦ダンパーの第4実施形態を示す横断面図である。
【図7】本発明の摩擦ダンパーの第5実施形態を示す横断面図である。
【図8】本発明の摩擦ダンパーの第6実施形態を示す横断面図である。
【図9】本発明の摩擦ダンパーの第7実施形態を示す横断面図である。
【図10】本発明の摩擦ダンパーの第8実施形態を示す横断面図である。
【図11】本発明の摩擦ダンパーの使用形態を示す図である。
【図12】本発明の摩擦ダンパーの使用形態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の摩擦ダンパーの第1実施形態を示す横断面図であり、図2は、第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図である。
【0015】
第1実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は鋼製円筒体の表面に波形の凹凸3が連続して形成される。波形の凹凸3は断面が2等辺三角形になる形状に形成される。
【0016】
第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第1実施形態のケース6は管状とする。管状のケース6の両端には、第1部材2が移動自在に挿入される開口が形成される。管状のケース6内には、円筒形状の第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された周方向に複数に分割された円弧形状の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。管状のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0017】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に相対移動することができる。
【0018】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0019】
第1実施形態の摩擦ダンパー1は、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8の断面は2等辺三角形の形状に形成されているため、構造物の相対変位による一方への相対移動と他方への相対移動による移動抵抗は同じであるため、両方向の相対移動においても同等のエネルギー吸収性を有する。
【0020】
図3は、本発明の摩擦ダンパーの第2実施形態を示す横断面図である。第2実施形態の摩擦ダンパー1は、第1実施形態の摩擦部材7を第1部材の相対移動方向(以下、「軸方向」という。)に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。第2実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図2に示される第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0021】
図4は、本発明の摩擦ダンパーの第3実施形態を示す横断面図であり、図5は、第3実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図である。第3実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は鋼製の板状とされ、その一面に波形の凹凸3が連続して形成される。波形の凹凸3は断面が2等辺三角形になる形状に形成される。
【0022】
第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第2実施形態のケース6は箱状とする。箱状のケース6の両端には、第1部材2が移動自在に挿入される開口が形成される。箱状のケース6内には、板状の第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された板の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。管状のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0023】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に相対移動することができる。
【0024】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0025】
第3実施形態の摩擦ダンパー1は、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8の断面は2等辺三角形の形状に形成されているため、構造物の相対変位による一方への相対移動と他方への相対移動による移動抵抗は同じであるため、両方向の相対移動においても同等のエネルギー吸収性能を有する。図4では、板状の第1部材2の一面にのみ波形の凹凸3を形成した実施形態を示しているが、板状の第1部材2の両面に波形の凹凸3を形成し、両面の波形の凹凸3と係合する凹凸8を形成した摩擦部材7を配置しても良い。
【0026】
図6は、本発明の摩擦ダンパーの第4実施形態を示す横断面図である。第4実施形態の摩擦ダンパー1は、第3実施形態の摩擦部材7を軸方向に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第3実施形態と同様であるので説明を省略する。第4実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図5に示される第3実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0027】
図7は、本発明の摩擦ダンパーの第5実施形態を示す横断面図である。第5実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図2に示される第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0028】
第5実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は鋼製円筒体の表面に波形の凹凸3が連続して形成される。第1部材2に形成される波形の凹凸は、第1部材2の軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に連続して形成されている。
【0029】
第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第1実施形態のケース6は管状とする。管状のケース6の両端には、第1部材2を移動自在に挿入する開口が形成される。管状のケース6内には、第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された周方向に複数に分割された円弧形状の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。管状のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0030】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に相対移動することができる。
【0031】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0032】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8は、軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に形成されている。第1部材2と第2部材5が一方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が急な面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。また、第1部材2と第2部材5が他方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が緩い面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。そのため、傾斜が急な傾斜面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の際の移動抵抗は、傾斜が緩い面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の移動抵抗より大きくなる。
【0033】
図8は、本発明の摩擦ダンパーの第6実施形態を示す横断面図である。第6実施形態の摩擦ダンパー1は、第5実施形態の摩擦部材7を軸方向に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。第6実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図2に示される第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0034】
図9は、本発明の摩擦ダンパーの第7実施形態を示す横断面図である。第7実施形態の縦断面図が図5に示される第3実施形態の縦断面図と同じである。第7実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は板状の鋼板で形成される。板状の第1部材2の一面に第1部材2の軸方向に連続した波形の凹凸3が形成される。
【0035】
板状の第1部材2に形成される波形の凹凸は、第1部材2の軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に連続して形成されている。
【0036】
板状の第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第3実施形態では、ケース6は箱形とする。箱形のケース6の両端には、第1部材2が移動自在に挿入される開口が形成される。箱形のケース6内には、板状の第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された板状の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。箱形のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0037】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に移動することができる。
【0038】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は軸方向に連続して複数形成されており、次々と凹凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0039】
板状の第1部材2の波形の凹凸3と円弧形状の摩擦部材7の波形の凹凸8は、軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に形成されている。第1部材2と第2部材5が一方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が緩やか面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。また、第1部材2と第2部材5が他方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が急な面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。そのため、傾斜が緩い傾斜面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の際の移動抵抗は、傾斜が急な面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の移動抵抗より小さくなる。図3では、板状の第1部材2の一面にのみ波形の凹凸3を形成した実施形態を示しているが、板状の第1部材2の両面に波形の凹凸3を形成し、両面の波形の凹凸3と係合する凹凸8を形成した摩擦部材7を配置しても良い。
【0040】
図10は、本発明の摩擦ダンパーの第8実施形態を示す横断面図である。第8実施形態の摩擦ダンパー1は、第7実施形態の摩擦部材7を軸方向に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第7実施形態と同様であるので説明を省略する。第8実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図5に示される第3実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
図11は、両方向の相対移動において同じエネルギー吸収性能を有する第1〜第4実施形態のいずれかの摩擦ダンパー1の使用形態を示す図である。
【0042】
この使用形態では、第1実施形態または第2実施形態の摩擦ダンパー1を、橋台17のパラペット18と橋桁19の間に配置する。橋桁19の地震時の橋軸方向の変位によるパラペット18への負荷を緩和し、パラペット18の破壊を防止する。地震時の橋軸方向の変位は、摩擦ダンパー1の第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の橋桁19の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。
【0043】
図8は、移動抵抗の大きさが移動方向により異なる第5〜第8実施形態のいずれかの摩擦ダンパーの使用形態を示す図である。
【0044】
この使用形態では、第3実施形態または第4実施形態の摩擦ダンパーを、建物の柱11で連結された天井梁12と床梁13との間の制振装置として用いる。摩擦ダンパー1は、連結部材4,10を介して天井梁12と床梁13との間に鉛直方向に対して傾斜して設置される。摩擦ダンパー1’は、連結部材4,10を介して天井梁12と床梁13との間に摩擦ダンパー1とは逆方向に傾斜して設置される。摩擦ダンパー1、摩擦ダンパー1’は、引張加力時の移動抵抗が圧縮加力次の移動抵抗より大きくなるように設置する。
【0045】
図8の矢印A方向の変位が発生した場合、摩擦ダンパー1には引張力が作用し、摩擦ダンパー1’には圧縮力が作用する。摩擦ダンパー1と摩擦ダンパー1’は、引張加力時の移動抵抗が圧縮加力次の移動抵抗より大きくなるように設置されているため、矢印A方向の変位に対しては、主に摩擦ダンパー1によりそのエネルギーを吸収する。
【0046】
図8の矢印B方向の変位が発生した場合、摩擦ダンパー1には圧縮力が作用し、摩擦ダンパー1’には引張力が作用する。摩擦ダンパー1と摩擦ダンパー1’は、引張加力時の移動抵抗が圧縮加力次の移動抵抗より大きくなるように設置されているため、矢印B方向の変位に対しては、主に摩擦ダンパー1’によりそのエネルギーを吸収する。
【符号の説明】
【0047】
1:摩擦ダンパー、2:第1部材、3:第1部材の波形の凹凸、4:連結部材、5:第2部材、6ケース、7:摩擦部材、8:摩擦部材の波形の凹凸、9:弾性部材、10:連結部材、11:柱、12:天井梁、13:床梁、17:橋台、18パラペット、19橋桁
【技術分野】
【0001】
この発明は、土木、建築の技術分野において免震装置や制振装置、変位制限装置として用いられる建築物や橋梁等の構造物の2つの構造部間に発生する相対変位を摩擦力により吸収する摩擦ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木構造物や建築構造物に地震等により負荷される振動や水平力を抑制するための免震装置や制振装置、変位制限装置として各種のダンパーが用いられる。その1つはオイルダンパーであり、もう1つは摩擦ダンパーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−310733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免震装置や制振装置、変位制限装置として用いられるオイルダンパーは、防塵等のメンテナンスが不可欠であり、価格も高価であり、さらに、構造物の狭い空間に配置する作業が困難であるという問題を有する。また、摩擦ダンパーは、摺動部材をシリンダ内に設置し楔を介して圧縮力を生じさせるため、制作工程が複雑となり、摺動部材の摺動距離も制限されるという問題を有する。
【0005】
本発明は、従来の技術が持つ課題を解決する、構造が簡単であって安価に製造することができ、メンテナンスの回数が少なく、設置も容易に行うことができるエネルギー吸収性能の高い摩擦ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の摩擦ダンパーは、前記課題を解決するために、相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に軸方向に連続した波形の凹凸が形成された第1部材と、相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材に移動自在に嵌挿されるケースを備えた第2部材と、を有し、前記第2部材のケース内に前記第1部材の波形の凹凸と係合する波形の凹凸を形成した摩擦部材が軸方向の移動を拘束されるとともに、弾性部材を介して前記第1部材側に押圧付勢されて収容されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗と、他方の方向への相対移動による移動抵抗とが同じになるように形成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗が、他方の方向への相対移動による移動抵抗よりも大きくなるように形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材を板状とし、前記波形の凹凸を表裏面の少なくとも一面に形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記第1部材を円筒形状とし、前記摩擦部材を周方向に複数に分割した円弧形状としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の摩擦ダンパーは、前記摩擦部材を軸方向に複数に分割したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に軸方向に連続した波形の凹凸が形成された第1部材と、相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材に移動自在に嵌挿されるケースを備えた第2部材と、を有し、前記第2部材のケース内に前記第1部材の波形の凹凸と係合する波形の凹凸を形成した摩擦部材が軸方向の移動を拘束されるとともに、弾性部材を介して前記第1部材側に押圧付勢されて収容される構成により、簡単な構成で地震時の大きな変位に対して波形の凹凸を乗り越えて相対変位する際の移動抵抗により大きなエネルギーを吸収することが可能な摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材の波形の凹凸と摩擦部材の波形の凹凸の形状を、第1部材と第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗と、他方の方向への相対移動による移動抵抗とが同じになるように形成する構成により、構造物の両方向の相対移動に対して同等のエネルギー吸収ができる摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材の波形の凹凸と摩擦部材の波形の凹凸の形状を、第1部材と第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗が、他方の方向への相対移動による移動抵抗よりも大きくなるように形成する構成により、方向性を有する摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材を板状とし、波形の凹凸を表裏面の少なくとも一面に形成した構成により、製造が容易でコンパクトな摩擦ダンパーを提供することが可能となる。
第1部材を円筒形状とし、摩擦部材を周方向に複数に分割した円弧形状とした構成により、波形の凹凸同士の係合接触面積が板状のものより大きくすることができ、相対移動に伴う移動抵抗を大きくすることでエネルギー吸収性を向上することが可能となる。
摩擦部材を軸方向に複数に分割した構成により、第1部材のずれた相対移動に対しての追随性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の摩擦ダンパーの第1実施形態を示す横断面図である。
【図2】本発明の摩擦ダンパーの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の摩擦ダンパーの第2実施形態を示す横断面図である。
【図4】本発明の摩擦ダンパーの第3実施形態を示す横断面図である。
【図5】本発明の摩擦ダンパーの第3実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の摩擦ダンパーの第4実施形態を示す横断面図である。
【図7】本発明の摩擦ダンパーの第5実施形態を示す横断面図である。
【図8】本発明の摩擦ダンパーの第6実施形態を示す横断面図である。
【図9】本発明の摩擦ダンパーの第7実施形態を示す横断面図である。
【図10】本発明の摩擦ダンパーの第8実施形態を示す横断面図である。
【図11】本発明の摩擦ダンパーの使用形態を示す図である。
【図12】本発明の摩擦ダンパーの使用形態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の摩擦ダンパーの第1実施形態を示す横断面図であり、図2は、第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図である。
【0015】
第1実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は鋼製円筒体の表面に波形の凹凸3が連続して形成される。波形の凹凸3は断面が2等辺三角形になる形状に形成される。
【0016】
第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第1実施形態のケース6は管状とする。管状のケース6の両端には、第1部材2が移動自在に挿入される開口が形成される。管状のケース6内には、円筒形状の第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された周方向に複数に分割された円弧形状の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。管状のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0017】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に相対移動することができる。
【0018】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0019】
第1実施形態の摩擦ダンパー1は、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8の断面は2等辺三角形の形状に形成されているため、構造物の相対変位による一方への相対移動と他方への相対移動による移動抵抗は同じであるため、両方向の相対移動においても同等のエネルギー吸収性を有する。
【0020】
図3は、本発明の摩擦ダンパーの第2実施形態を示す横断面図である。第2実施形態の摩擦ダンパー1は、第1実施形態の摩擦部材7を第1部材の相対移動方向(以下、「軸方向」という。)に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。第2実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図2に示される第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0021】
図4は、本発明の摩擦ダンパーの第3実施形態を示す横断面図であり、図5は、第3実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図である。第3実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は鋼製の板状とされ、その一面に波形の凹凸3が連続して形成される。波形の凹凸3は断面が2等辺三角形になる形状に形成される。
【0022】
第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第2実施形態のケース6は箱状とする。箱状のケース6の両端には、第1部材2が移動自在に挿入される開口が形成される。箱状のケース6内には、板状の第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された板の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。管状のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0023】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に相対移動することができる。
【0024】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0025】
第3実施形態の摩擦ダンパー1は、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8の断面は2等辺三角形の形状に形成されているため、構造物の相対変位による一方への相対移動と他方への相対移動による移動抵抗は同じであるため、両方向の相対移動においても同等のエネルギー吸収性能を有する。図4では、板状の第1部材2の一面にのみ波形の凹凸3を形成した実施形態を示しているが、板状の第1部材2の両面に波形の凹凸3を形成し、両面の波形の凹凸3と係合する凹凸8を形成した摩擦部材7を配置しても良い。
【0026】
図6は、本発明の摩擦ダンパーの第4実施形態を示す横断面図である。第4実施形態の摩擦ダンパー1は、第3実施形態の摩擦部材7を軸方向に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第3実施形態と同様であるので説明を省略する。第4実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図5に示される第3実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0027】
図7は、本発明の摩擦ダンパーの第5実施形態を示す横断面図である。第5実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図2に示される第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0028】
第5実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は鋼製円筒体の表面に波形の凹凸3が連続して形成される。第1部材2に形成される波形の凹凸は、第1部材2の軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に連続して形成されている。
【0029】
第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第1実施形態のケース6は管状とする。管状のケース6の両端には、第1部材2を移動自在に挿入する開口が形成される。管状のケース6内には、第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された周方向に複数に分割された円弧形状の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。管状のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0030】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に相対移動することができる。
【0031】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0032】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8は、軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に形成されている。第1部材2と第2部材5が一方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が急な面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。また、第1部材2と第2部材5が他方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が緩い面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。そのため、傾斜が急な傾斜面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の際の移動抵抗は、傾斜が緩い面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の移動抵抗より大きくなる。
【0033】
図8は、本発明の摩擦ダンパーの第6実施形態を示す横断面図である。第6実施形態の摩擦ダンパー1は、第5実施形態の摩擦部材7を軸方向に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。第6実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図2に示される第1実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。
【0034】
図9は、本発明の摩擦ダンパーの第7実施形態を示す横断面図である。第7実施形態の縦断面図が図5に示される第3実施形態の縦断面図と同じである。第7実施形態の摩擦ダンパー1は、建築物や橋梁等の相対変位する一方の構造部側に固定される第1部材2を備えている。第1部材2は板状の鋼板で形成される。板状の第1部材2の一面に第1部材2の軸方向に連続した波形の凹凸3が形成される。
【0035】
板状の第1部材2に形成される波形の凹凸は、第1部材2の軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に連続して形成されている。
【0036】
板状の第1部材2に移動自在に嵌挿される第2部材5は、ケース6を備えている。第3実施形態では、ケース6は箱形とする。箱形のケース6の両端には、第1部材2が移動自在に挿入される開口が形成される。箱形のケース6内には、板状の第1部材2の波形の凹凸3と係合する波形の凹凸8が形成された板状の鋼製の摩擦部材7がその背面に弾性部材9を介して収容されている。弾性部材9としてはゴム等の弾性材料で形成する。弾性部材9としてゴムを用いる場合、摩擦部材7とゴムを予め加硫一体成形しておくと良い。箱形のケース6の両端部には、弾性部材9を介してケース6内に収容された摩擦部材7の軸方向の移動を拘束するフランジ6’が形成される。
【0037】
摩擦部材7の波形の凹凸8と第1部材の波形の凹凸3の係合は、摩擦部材7の背面に設置した弾性部材9により弾性係合とされる。その結果、第1部材2と第2部材5の相対移動の際、第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸との係合部が凸の頂部を乗り越えて軸方向に移動することができる。
【0038】
第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の構造物の各構造部の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は軸方向に連続して複数形成されており、次々と凹凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。弾性部材9の弾性率を変えることにより、移動抵抗の大きさを調整できる。
【0039】
板状の第1部材2の波形の凹凸3と円弧形状の摩擦部材7の波形の凹凸8は、軸方向に対する傾斜が急な面と、第1部材2の軸方向に対する傾斜が緩い面が交互に形成されている。第1部材2と第2部材5が一方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が緩やか面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。また、第1部材2と第2部材5が他方の方向に相対移動する場合、軸方向に対する傾斜が急な面で形成される凸部の頂部を乗り越えて移動する。そのため、傾斜が緩い傾斜面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の際の移動抵抗は、傾斜が急な面で形成される凸部の頂部を乗り越える相対移動の移動抵抗より小さくなる。図3では、板状の第1部材2の一面にのみ波形の凹凸3を形成した実施形態を示しているが、板状の第1部材2の両面に波形の凹凸3を形成し、両面の波形の凹凸3と係合する凹凸8を形成した摩擦部材7を配置しても良い。
【0040】
図10は、本発明の摩擦ダンパーの第8実施形態を示す横断面図である。第8実施形態の摩擦ダンパー1は、第7実施形態の摩擦部材7を軸方向に複数に分割して形成する。摩擦部材7を軸方向に複数に分割することで、相対移動する第1部材2との追随性が向上する。他の構成は第7実施形態と同様であるので説明を省略する。第8実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図は、図5に示される第3実施形態の摩擦ダンパーの縦断面図と同じである。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
図11は、両方向の相対移動において同じエネルギー吸収性能を有する第1〜第4実施形態のいずれかの摩擦ダンパー1の使用形態を示す図である。
【0042】
この使用形態では、第1実施形態または第2実施形態の摩擦ダンパー1を、橋台17のパラペット18と橋桁19の間に配置する。橋桁19の地震時の橋軸方向の変位によるパラペット18への負荷を緩和し、パラペット18の破壊を防止する。地震時の橋軸方向の変位は、摩擦ダンパー1の第1部材2の波形の凹凸3と摩擦部材7の波形の凹凸8との係合部が凸の頂部を乗り越えて移動する際大きな移動抵抗が発生し、この移動抵抗により地震時の橋桁19の相対変位のエネルギーを吸収する。波形の凹凸は第1部材2の軸方向に連続して複数形成されており、次々と凸の頂部を乗り越えることにより連続して大きなエネルギーを吸収できる。
【0043】
図8は、移動抵抗の大きさが移動方向により異なる第5〜第8実施形態のいずれかの摩擦ダンパーの使用形態を示す図である。
【0044】
この使用形態では、第3実施形態または第4実施形態の摩擦ダンパーを、建物の柱11で連結された天井梁12と床梁13との間の制振装置として用いる。摩擦ダンパー1は、連結部材4,10を介して天井梁12と床梁13との間に鉛直方向に対して傾斜して設置される。摩擦ダンパー1’は、連結部材4,10を介して天井梁12と床梁13との間に摩擦ダンパー1とは逆方向に傾斜して設置される。摩擦ダンパー1、摩擦ダンパー1’は、引張加力時の移動抵抗が圧縮加力次の移動抵抗より大きくなるように設置する。
【0045】
図8の矢印A方向の変位が発生した場合、摩擦ダンパー1には引張力が作用し、摩擦ダンパー1’には圧縮力が作用する。摩擦ダンパー1と摩擦ダンパー1’は、引張加力時の移動抵抗が圧縮加力次の移動抵抗より大きくなるように設置されているため、矢印A方向の変位に対しては、主に摩擦ダンパー1によりそのエネルギーを吸収する。
【0046】
図8の矢印B方向の変位が発生した場合、摩擦ダンパー1には圧縮力が作用し、摩擦ダンパー1’には引張力が作用する。摩擦ダンパー1と摩擦ダンパー1’は、引張加力時の移動抵抗が圧縮加力次の移動抵抗より大きくなるように設置されているため、矢印B方向の変位に対しては、主に摩擦ダンパー1’によりそのエネルギーを吸収する。
【符号の説明】
【0047】
1:摩擦ダンパー、2:第1部材、3:第1部材の波形の凹凸、4:連結部材、5:第2部材、6ケース、7:摩擦部材、8:摩擦部材の波形の凹凸、9:弾性部材、10:連結部材、11:柱、12:天井梁、13:床梁、17:橋台、18パラペット、19橋桁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に軸方向に連続した波形の凹凸が形成された第1部材と、
相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材に移動自在に嵌挿されるケースを備えた第2部材と、
を有し、
前記第2部材のケース内に前記第1部材の波形の凹凸と係合する波形の凹凸を形成した摩擦部材が軸方向の移動を拘束されるとともに、弾性部材を介して前記第1部材側に押圧付勢されて収容されることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗と、他方の方向への相対移動による移動抵抗とが同じになるように形成することを特徴とする請求項1に記載の摩擦ダンパー。
【請求項3】
前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗が、他方の方向への相対移動による移動抵抗よりも大きくなるように形成することを特徴とする請求項1に記載の摩擦ダンパー。
【請求項4】
前記第1部材を板状とし、前記波形の凹凸を表裏面の少なくとも一面に形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摩擦ダンパー。
【請求項5】
前記第1部材を円筒形状とし、前記摩擦部材を周方向に複数に分割した円弧形状としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摩擦ダンパー。
【請求項6】
前記摩擦部材を軸方向に複数に分割して形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の摩擦ダンパー。
【請求項1】
相対変位する一方の構造部側に固定され、表面に軸方向に連続した波形の凹凸が形成された第1部材と、
相対変位する他方の構造部側に固定され、前記第1部材に移動自在に嵌挿されるケースを備えた第2部材と、
を有し、
前記第2部材のケース内に前記第1部材の波形の凹凸と係合する波形の凹凸を形成した摩擦部材が軸方向の移動を拘束されるとともに、弾性部材を介して前記第1部材側に押圧付勢されて収容されることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗と、他方の方向への相対移動による移動抵抗とが同じになるように形成することを特徴とする請求項1に記載の摩擦ダンパー。
【請求項3】
前記第1部材の波形の凹凸と前記摩擦部材の波形の凹凸の形状を、前記第1部材と前記第2部材の一方の方向への相対移動による移動抵抗が、他方の方向への相対移動による移動抵抗よりも大きくなるように形成することを特徴とする請求項1に記載の摩擦ダンパー。
【請求項4】
前記第1部材を板状とし、前記波形の凹凸を表裏面の少なくとも一面に形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摩擦ダンパー。
【請求項5】
前記第1部材を円筒形状とし、前記摩擦部材を周方向に複数に分割した円弧形状としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摩擦ダンパー。
【請求項6】
前記摩擦部材を軸方向に複数に分割して形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の摩擦ダンパー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−249169(P2010−249169A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96607(P2009−96607)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(391051256)株式会社美和テック (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(391051256)株式会社美和テック (29)
【Fターム(参考)】
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