説明

摩擦対

【課題】高い摩擦係数が必要とされる摺動部において、ノイズ及び振動の抑制に優れた摩擦面を安定して形成し、かつ維持する摩擦対を提供する。
【解決手段】第一の摩擦材及び第二の摩擦材を組み合わせ、当該第一の摩擦材の摩擦面と当該第二の摩擦材の摩擦面とが当接してなる摩擦対であって、前記第一の摩擦材は、第一の基材、第一の母材、第一の高硬度材料、及び潤滑性樹脂を有し、且つ、前記第一の母材中に前記第一の高硬度材料と前記潤滑性樹脂とを分散分布させた第一の表面層を有し、当該第一の表面層の最表面が摩擦面となり、前記第二の摩擦材は、第二の基材、第二の母材、及び第二の高硬度材料を有し、且つ、前記第二の母材中に前記第二の高硬度材料を分散分布させた第二の表面層を有し、当該第二の表面層の最表面が摩擦面となることを特徴とする、摩擦対。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い摩擦係数が必要とされる摺動部において、ノイズ及び振動の抑制に優れた摩擦面を安定して形成し、かつ維持する摩擦対に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や工作機等のクラッチ用又はブレーキ用摺材及び相手材との対として用いられる摩擦対には、様々な性能が求められている。特に、摺材及び相手材の摩擦面の安定した形成は、効きの良いクラッチ又はブレーキを開発する上で欠かせない課題である。
【0003】
摩擦材の安定した摩擦面の形成に、自己潤滑性摩擦材料を用いる技術が、これまでにも開示されている。
特許文献1は、母材金属と該母材金属表面に形成された硬質皮膜と該硬質皮膜を貫通し該母材に達する細孔中に固定された自己潤滑性材料とからなることを特徴とする自己潤滑性摩擦材料に関する技術を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−46083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示されたような自己潤滑性材料を用いた摩擦材料は、耐摩耗かつ低摩擦係数特性の向上を課題としている。したがって、前記文献に記載された技術を用いたとしても、耐摩耗かつ高摩擦係数特性の向上を達成した材料を作製することは困難であると考えられる。また、特許文献1で開示されたような摩擦材料は、摺動過程で平坦な硬質皮膜上に自己潤滑性材料の被膜が形成されることによって自己潤滑性が発生する。このため、接触圧力、摩擦速度、摩擦面や雰囲気温度などの摺動条件や、砂、泥、雨、水たまりの水などの摩擦面への介入や超低温などの特殊環境によっては、自己潤滑性の被膜が掻き取られて、安定した摩擦面の維持は困難であると考えられる。
本発明は、高い摩擦係数が必要とされる摺動部において、ノイズ及び振動の抑制に優れた摩擦面を安定して形成し、かつ維持する摩擦対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の摩擦対は、第一の摩擦材及び第二の摩擦材を組み合わせ、当該第一の摩擦材の摩擦面と当該第二の摩擦材の摩擦面とが当接してなる摩擦対であって、前記第一の摩擦材は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の基材、並びに、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の母材、及び当該第一の母材よりも熱膨張率が大きい金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の高硬度材料、及び当該第一の高硬度材料よりも熱膨張率の大きい少なくとも1つの物質を有する潤滑性樹脂を有し、且つ、前記第一の母材中に前記第一の高硬度材料と前記潤滑性樹脂とを分散分布させた第一の表面層を有し、当該第一の表面層の最表面が摩擦面となり、前記第二の摩擦材は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の基材、並びに、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の母材、及び金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の高硬度材料を有し、且つ、前記第二の母材中に前記第二の高硬度材料を分散分布させた第二の表面層を有し、当該第二の表面層の最表面が摩擦面となることを特徴とする。
【0007】
このような構成の摩擦対は、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用使用温度時には、わずかな摩擦熱によって熱膨張率の大きい前記潤滑性樹脂が前記第一の摩擦材の摩擦面上に突出し、前記第二の摩擦材中の前記第二の高硬度材料によって摩擦面に引き延ばされて、第一の表面層と第二の表面層との間に潤滑層を形成し、前記第一及び第二の摩擦材の摩耗を低減するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
また、本発明の摩擦対は、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、前記潤滑性樹脂が前記第一の摩擦材の摩擦面上に引き延ばされて潤滑層を形成するのと同時に、前記第一の高硬度材料が熱膨張によって摩擦面上に突出するため、前記第一及び第二の高硬度材料同士の摩擦が生じることにより高い摩擦係数を有し、且つ、前記第一の高硬度材料が前記潤滑層にくいこみ、前記第二の高硬度材料によって前記潤滑層が剥ぎ取られるのを防止するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
このように、本発明の摩擦対は、軽負荷時及び高負荷時のいずれにおいても、安定した摩擦面を維持することができる。
【0008】
本発明の摩擦対の一形態としては、前記第二の高硬度材料が、前記第二の母材よりも熱膨張率が大きいという構成をとることができる。
【0009】
このような構成の摩擦対は、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、前記潤滑性樹脂が前記第一の摩擦材の摩擦面上に引き延ばされて潤滑層を形成するのと同時に、前記第一及び第二の高硬度材料が熱膨張によって摩擦面上に突出するため、前記第一及び第二の高硬度材料同士の摩擦が生じることにより高い摩擦係数を有し、且つ、前記第一の高硬度材料が前記潤滑層にくいこみ、前記第二の高硬度材料によって前記潤滑層が剥ぎ取られるのを防止するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
【0010】
本発明の摩擦対は、前記第一の摩擦材の前記第一の表面層は、前記摩擦面に開口する細孔を有し、当該細孔に前記潤滑性樹脂が充填されていることが好ましい。
【0011】
このような構成の摩擦対は、前記細孔が、前記潤滑性樹脂を充填及び保持することができるため、特に軽負荷時、すなわち低温時に、前記潤滑性樹脂が熱膨張による潤滑剤の役割を果たすことができる。
【0012】
本発明の摩擦対は、前記潤滑性樹脂が耐熱性樹脂であることが好ましい。
【0013】
このような構成の摩擦対は、前記潤滑性樹脂が、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時においても、潤滑剤としての役割を果たすことができる。
【0014】
本発明の摩擦対の一形態としては、前記第一の摩擦材が非摺動部材であり、前記第二の摩擦材が摺動部材であるという構成をとることができる。
【0015】
本発明の摩擦対は、前記第一及び第二の母材の内、少なくともいずれか一方が金属酸化物であることが好ましい。
【0016】
このような構成の摩擦対は、熱膨張率が小さい金属酸化物を前記第一又は第二の母材の内少なくともいずれか一方に用いることによって、前記第一の母材と前記第一の高硬度材料との熱膨張率の差、及び前記第二の母材と前記第二の高硬度材料との熱膨張率の差の少なくともいずれか一方が大きくなることから、前記潤滑性樹脂が潤滑剤としての役割をより果たすことができる。
【0017】
本発明の摩擦対は、前記第一及び第二の高硬度材料の内、少なくともいずれか一方の300℃における硬さがHv1.5GPa以上であることが好ましい。
【0018】
このような構成の摩擦対は、特に高負荷時において、より高い摩擦係数を有することができる。
【0019】
本発明の摩擦対は、前記第一及び第二の高硬度材料は、繊維及び粒子の少なくともいずれか一方の形態であることが好ましい。
【0020】
このような構成の摩擦対は、前記第一及び第二の高硬度材料が、熱膨張で摩擦面から突出した前記潤滑性樹脂を前記第一の摩擦材の摩擦面上に均すことによって、当該摩擦面上により均一な潤滑層を形成することができる。
【0021】
本発明の摩擦対は、前記第一及び第二の高硬度材料の熱膨張率が、12×10−6〜21×10−6―1であり、前記潤滑性樹脂の熱膨張率が23×10−6―1以上であることが好ましい。
【0022】
このような構成の摩擦対は、前記潤滑性樹脂の熱膨張率と、前記第一の摩擦材中の前記第一の高硬度材料の熱膨張率に十分な差が設けられていることによって、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用使用温度時には、前記潤滑性樹脂のみが摩擦面上に十分に突出し、潤滑剤の役割をより良く果たすことができ、また、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、前記第一及び第二の高硬度材料が摩擦面上に突出するため、前記第一及び第二の高硬度材料による高い摩擦状態を得ることができる。
【0023】
本発明の摩擦対は、前記第一及び第二の高硬度材料の内少なくともいずれか一方の融点が1000℃以上であることが好ましい。
【0024】
このような構成の摩擦対は、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時においても、より高い摩擦係数を有することができる。
【0025】
本発明の摩擦対は、前記潤滑性樹脂は、融点が150℃以上であることが好ましい。
【0026】
このような構成の摩擦対は、前記潤滑性樹脂が、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時においても、潤滑剤としての役割を果たすことができる。
【0027】
本発明の摩擦対は、前記第一の高硬度材料の、前記第一の摩擦材に対する含有割合、及び前記第二の高硬度材料の、前記第二の摩擦材に対する含有割合がいずれも1〜50vol%であり、且つ、前記第一の摩擦材に含まれる前記潤滑性樹脂の体積に対する、前記第一の高硬度材料の体積割合が1/10〜2/1であることが好ましい。
【0028】
このような構成の摩擦対は、前記第一の高硬度材料、前記第二の高硬度材料、前記潤滑性樹脂を適切な割合で含んでいるため、より安定した摩擦面を形成・維持することができる。
【0029】
本発明の摩擦対は、前記第一の摩擦材の前記第一の表面層における前記細孔の直径が、1〜500μmであり、且つ、前記細孔の開口面積の合計の、前記第一の摩擦材の摩擦面の総面積に対する割合が、1〜20%であることが好ましい。
【0030】
このような構成の摩擦対は、熱膨張による潤滑剤の役割を果たすのに十分な量の前記潤滑性樹脂を、前記細孔中に充填及び保持することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用使用温度時には、わずかな摩擦熱によって熱膨張率の大きい前記潤滑性樹脂が前記第一の摩擦材の摩擦面上に突出し、前記第二の摩擦材中の前記第二の高硬度材料によって摩擦面に引き延ばされて、第一の表面層と第二の表面層との間に潤滑層を形成し、前記第一及び第二の摩擦材の摩耗を低減するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
また、本発明によれば、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、前記潤滑性樹脂が前記第一の摩擦材の摩擦面上に引き延ばされて潤滑層を形成するのと同時に、前記第一の高硬度材料が熱膨張によって摩擦面上に突出するため、前記第一及び第二の高硬度材料同士の摩擦が生じることにより高い摩擦係数を有し、且つ、前記第一の高硬度材料が前記潤滑層にくいこみ、前記第二の高硬度材料によって前記潤滑層が剥ぎ取られるのを防止するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
このように、本発明の摩擦対は、軽負荷時及び高負荷時のいずれにおいても、安定した摩擦面を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の摩擦対は、第一の摩擦材及び第二の摩擦材を組み合わせ、当該第一の摩擦材の摩擦面と当該第二の摩擦材の摩擦面とが当接してなる摩擦対であって、前記第一の摩擦材は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の基材、並びに、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の母材、及び当該第一の母材よりも熱膨張率が大きい金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の高硬度材料、及び当該第一の高硬度材料よりも熱膨張率の大きい少なくとも1つの物質を有する潤滑性樹脂を有し、且つ、前記第一の母材中に前記第一の高硬度材料と前記潤滑性樹脂とを分散分布させた第一の表面層を有し、当該第一の表面層の最表面が摩擦面となり、前記第二の摩擦材は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の基材、並びに、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の母材、及び金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の高硬度材料を有し、且つ、前記第二の母材中に前記第二の高硬度材料を分散分布させた第二の表面層を有し、当該第二の表面層の最表面が摩擦面となることを特徴とする。
【0033】
本発明は、摺動時の負荷条件にかかわらず、負荷に適した摩擦面状態を維持する摩擦対を提供する。
負荷条件の変化によって摩擦熱による摩擦面温度も共に変化するので、ノイズ・振動を抑制する性能を有し且つ熱膨張率が大きい潤滑性樹脂と、熱膨張率が潤滑性樹脂よりは小さいが母材よりは大きい中間の熱膨張率の高硬度材料を分散分布させ、熱膨張差によって摩擦面への突出状態を変化させて、摩擦面に引き延ばされた樹脂潤滑による摩擦状態と、中間の熱膨張率で樹脂より硬い高硬度材料と潤滑性樹脂とを混合させた摩擦状態を、円滑に移行させることによって、負荷条件変化による摩擦面温度変化に対応した適正な摩擦面状態を維持することができる。
【0034】
第一の摩擦材及び第二の摩擦材は、いずれも摩擦面を構成する第一又は第二の表面層の母材を有する。
ここでいう母材とは、構造剤として全体強度を司る組織であって、使用条件の温度において熱による変形が起きない物質を用いることが好ましい。
第一の摩擦材の第一の表面層中に含まれる第一の母材は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質である。第一の母材は、熱膨張率が12×10−6―1未満であることが好ましく、具体的には、フェライト系の鉄鋼、フェライト系の合金鋼、フェライト系の鋳鉄、フェライト系の合金鋳鉄、酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、黒鉛、二硫化モリブデンを用いることができる。
第二の摩擦材の第二の表面層中に含まれる第二の母材は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質である。具体的には、鉄鋼の繊維及び粒子、銅合金の繊維及び粒子、チタン酸カリウム繊維、炭素繊維、及び硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、無定形炭素、ガラス状炭素、アラミド、カシューダスト粒子、黒鉛粒子、二硫化モリブデン粒子や、フェノール樹脂などの結合剤としての熱硬化性樹脂を用いることができる。
なお、第二の母材としては、上述した第一の母材と同様に、熱膨張率が12×10−6―1未満である物質を用いるという構成を採用することもできる。
【0035】
第一及び第二の母材の内、少なくともいずれか一方が金属酸化物であることが好ましい。これは、熱膨張率が小さい金属酸化物を第一及び第二の母材の内少なくともいずれか一方に用いることによって、第一の母材と後述する第一の高硬度材料との熱膨張率の差、及び第二の母材と後述する第二の高硬度材料との熱膨張率の差の少なくともいずれか一方が大きくなることから、後述する潤滑性樹脂が潤滑剤としての役割をより果たすことができる。
金属酸化物の例としては、上述した酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウムなどを用いることができる。
【0036】
第一の摩擦材は、さらに、上述した第一の母材よりも熱膨張率が大きい金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の高硬度材料、及び当該第一の高硬度材料よりも熱膨張率の大きい少なくとも1つの物質を有する潤滑性樹脂を有し、第一の母材中に第一の高硬度材料と潤滑性樹脂とを分散分布させた第一の表面層を有し、当該第一の表面層の最表面が摩擦面となる。
また、第二の摩擦材は、さらに、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の高硬度材料を有し、且つ、上述した第二の母材中に当該第二の高硬度材料を分散分布させた第二の表面層を有し、当該第二の表面層の最表面が摩擦面となる。
ここでいう分散分布とは、表面層中又は摩擦面近傍域において、均一に万遍無く物質が分布していることを意味するものであって、必ずしも摩擦材の内部にまで分散分布することを意味するものではない。
【0037】
第一の摩擦材中の第一の高硬度材料は、上述した第一の母材よりも熱膨張率が大きい金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する。これは、仮に第一の高硬度材料の熱膨張率が第一の母材以下であるとすると、摩擦面温度が上昇しても、第一の高硬度材料が摩擦面から突出することが難しく、したがって、望みの摩擦状態を得ることができないからである。
【0038】
第二の摩擦材中の第二の高硬度材料は、金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の高硬度材料を有する。
なお、第二の高硬度材料が、第二の母材よりも熱膨張率が大きいという構成を採用することができる。このような構成を採用することによって、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、後述する潤滑性樹脂が第一の摩擦材の摩擦面上に引き延ばされて潤滑層を形成するのと同時に、第一及び第二の高硬度材料が熱膨張によって摩擦面上に突出するため、第一及び第二の高硬度材料同士の摩擦が生じることにより高い摩擦係数を有し、且つ、第一の高硬度材料が前記潤滑層にくいこみ、第二の高硬度材料によって潤滑層が剥ぎ取られるのを防止するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
【0039】
第一及び第二の高硬度材料の内、少なくともいずれか一方の300℃における硬さがHv1.5GPa以上であることが好ましい。これは、特に高負荷時において、より高い摩擦係数を有することができるからである。
【0040】
第一及び第二の高硬度材料の熱膨張率が、12×10−6〜21×10−6―1であることが好ましい。これは、後述する潤滑性樹脂の熱膨張率と、第一の高硬度材料の熱膨張率に十分な差が設けられていることによって、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用使用温度時には、前記潤滑性樹脂のみが摩擦面上に十分に突出し、潤滑剤の役割をより良く果たすことができ、また、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、第一及び第二の高硬度材料が摩擦面上に突出するため、第一及び第二の高硬度材料による高い摩擦状態を得ることができるからである。
【0041】
第一及び第二の高硬度材料の内少なくともいずれか一方の融点が1000℃以上であることが好ましい。これは、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時においても、より高い摩擦係数を有することができるからである。
【0042】
上述した硬さ、熱膨張率及び融点の観点から、第一の高硬度材料としては、具体的には、例えば日本工業規格の材料記号において、SUS304、SUS316、SUSXM15J1等と示されるオーステナイト系ステンレス鋼や、又は日本工業規格の材料記号において、SUH35、SUH36、SUH37、SUH660等と示されるオーステナイト系耐熱鋼、また、インコネル(登録商標)750、インコネル(登録商標)751などのニッケル合金、また、酸化マグネシウムを用いるのが好ましい。
【0043】
上述した硬さ、熱膨張率及び融点の観点から、第二の高硬度材料としては、具体的には、鉄鋼、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、無定形炭素、ガラス状炭素を用いるのが好ましい。
なお、第二の高硬度材料としては、上述した第一の高硬度材料と同様の物質を用いるという構成を採用することもできる。
【0044】
第一又は第二の高硬度材料は、繊維及び粒子の少なくともいずれか一方の形態であることが好ましい。これは、第一及び第二の高硬度材料が、熱膨張で摩擦面から突出した後述する潤滑性樹脂を第一の摩擦材の摩擦面上に均すことによって、当該摩擦面上により均一な潤滑層を形成することができるからである。
このように均一な潤滑層を形成するという観点から、例えば繊維の形態を採用する場合には、当該繊維の大きさは、直径が30〜500μmで、長さが100〜5000μmであることが特に好ましい。また、例えば粒子の形態を採用する場合には、当該粒子の直径は、30〜500μmであることが特に好ましい。
【0045】
第一の摩擦材中の潤滑性樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、摺動初期及び摺動中の摩擦面の平衡状態を維持する観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
潤滑性樹脂は、融点が150℃以上であることが好ましい。これは、当該潤滑性樹脂が、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時においても、潤滑剤としての役割を果たすことができるからである。なお、潤滑性樹脂の融点は、200℃以上であることが特に好ましく、250℃以上であることが最も好ましい。
【0047】
潤滑性樹脂が耐熱性樹脂であることが好ましい。これは、当該潤滑性樹脂が、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時においても、潤滑剤としての役割を果たすことができるからである。
【0048】
上述した融点及び樹脂選択の観点から、第一の摩擦材中の潤滑性樹脂としては、具体的には、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶質ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等のエンジニアリング・プラスチックを用いることが好ましい。
なお、これら2種以上の樹脂を混合して潤滑性樹脂として用いることもできる。
【0049】
潤滑性樹脂の熱膨張率は、23×10−6―1以上であることが好ましい。これは、潤滑性樹脂の熱膨張率と、上述した第一の摩擦材中の前記第一の高硬度材料の熱膨張率に十分な差が設けられていることによって、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用使用温度時には、潤滑性樹脂のみが摩擦面上に十分に突出し、潤滑剤の役割をより良く果たすことができ、また、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、第一及び第二の高硬度材料が摩擦面上に突出するため、第一及び第二の高硬度材料による高い摩擦状態を得ることができるからである。
なお、潤滑性樹脂の熱膨張率は、30×10−6―1以上であることがより好ましい。また、潤滑性樹脂の熱膨張率は、110×10−6―1以下であることが好ましく、70×10−6―1以下であることがより好ましい。
【0050】
第一の摩擦材の第一の表面層は、摩擦面に開口する細孔を有し、当該細孔に上述した潤滑性樹脂が充填されていることが好ましい。これは、細孔が、潤滑性樹脂を充填及び保持することができるため、軽負荷時、すなわち低温時に、潤滑性樹脂が熱膨張による潤滑剤の役割を果たすことができるからである。
【0051】
摩擦材に設けられる細孔は、潤滑性樹脂を充填すると同時か、又は潤滑性樹脂充填前のいずれの場合にも設けることができる。
潤滑性樹脂を充填すると同時に細孔を設ける方法としては、例えば、第一の母材、第一の高硬度材料及び潤滑性樹脂を混合して溶射する方法、第一の母材及び潤滑性樹脂をメカニカルアロイング法で合金化して第一の高硬度材料と混合して溶射する方法、第一の高硬度材料及び潤滑性樹脂をメカニカルアロイング法で合金化して第一の母材と混合して溶射する方法、第一の母材、第一の高硬度材料及び潤滑性樹脂をメカニカルアロイング法で合金化して溶射する方法等が挙げられる。
潤滑性樹脂充填前に細孔を設け、その後に潤滑性樹脂を充填する方法としては、例えば、第一の母材と第一の高硬度材料を焼結した後、当該焼結によって形成された細孔の一部又は全部に潤滑性樹脂を含浸する方法、同様に焼結した後、形成された細孔の一部又は全部に潤滑性樹脂の素となるモノマーを充填した後、潤滑性樹脂を熱重合する方法などが挙げられる。
【0052】
第一の摩擦材の第一の表面層における細孔の直径が、1〜500μmであり、且つ、細孔の開口面積の合計の、第一の摩擦材の摩擦面の総面積に占める割合が、1〜20%であることが好ましい。これは、仮に細孔の直径が1μm未満であるとすると、細孔が十分な量の潤滑性樹脂を内部に捕捉することが難しく、500μmを超えると、摩擦面に潤滑性樹脂を保持することが難しくなり、いずれの場合も軽負荷時、すなわち低温時に、潤滑性樹脂が熱膨張による潤滑剤の役割を果たすことができなくなり、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、且つ、維持することができなくなるからである。また、細孔の開口面積の合計の第一の摩擦材の摩擦面の総面積に占める割合が、1%未満であるとすると、十分な量の潤滑性樹脂を第一の表面層に留めることができず、また、前記割合が20%を超える値であるとすると、細孔の総面積が大きすぎることから第一の表面層自体を保つことができない。
なお、各細孔の直径は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。また、各細孔の直径は、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが最も好ましい。
細孔の開口面積の合計が第一の摩擦材の摩擦面の総面積に占める面積割合は、5〜15%であることがより好ましい。
【0053】
上述した第一の高硬度材料の、第一の摩擦材に対する含有割合、及び上述した第二の高硬度材料の、第二の摩擦材に対する含有割合がいずれも1〜50vol%であり、且つ、第一の摩擦材に含まれる潤滑性樹脂の体積に対する、上述した第一の高硬度材料の体積割合が1/10〜2/1であることが好ましい。
これは、第一の高硬度材料の含有割合及び第二の高硬度材料の含有割合の少なくとも一方が1vol%未満であると、潤滑性樹脂による潤滑層を形成すること及び高温での高い摩擦を生じさせることが難しくなるからであり、これらの含有割合の少なくとも一方が50vol%を超えると、潤滑層の剥離を抑制することが難しくなるからである。なお、これらの含有割合は、6vol%以上であることが好ましく、10vol%以上であることがより好ましい。また、これらの含有割合は、40vol%以下であることが好ましく、30vol%以下であることがより好ましい。
また、潤滑性樹脂の体積に対する、第一の高硬度材料の体積割合が1/10未満であると、高温での高い摩擦を生じさせることが難しくなり、前記体積割合が2/1を超える割合であるとすると、潤滑層を形成するのに十分な量の潤滑性樹脂を含有できなくなる。
【0054】
第一及び第二の表面層の厚さは、いずれも100〜1000μmであることが好ましい。これは、厚さが100μm未満では十分な耐久寿命を得るのが難しいからであり、1000μmを超えると、表面層の内部応力が大きくなりやすいために、後述する基材との密着性が低下することがあるからである。なお、第一の表面層と第一の基材との間、及び第二の表面層と第二の基材との間には、それぞれ密着性の向上のための中間層を設けることができ、その材質や厚さは密着性が得られるものであれば、特に限定されるものではない。
【0055】
第一の摩擦材が有する第一の基材、及び第二の摩擦材が有する第二の基材は、それぞれ金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する。
第一及び第二の基材としては、熱による変形が起きない材料を用いることが好ましく、具体的には、鋳鉄等の金属や、アラミド繊維、セルロースなどの有機繊維、鋼繊維、銅繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、ロックウールなどの無機繊維を用いることができる。なお、第一及び第二の基材が、第一及び第二の各摩擦材全体に占める割合は、5〜50vol%であるのが好ましい。
【0056】
本発明の摩擦対の一形態としては、前記第一の摩擦材が非摺動部材であり、前記第二の摩擦材が摺動部材であるという構成をとることができる。
【0057】
図1は、本発明の摩擦対の典型例の断面模式図である。
本発明の摩擦対100は、第一の摩擦材1と第二の摩擦材2を有し、当該第一の摩擦材1の第一の基材14に密着した第一の表面層10上の摩擦面41と当該第二の摩擦材2の第二の基材33に密着した第二の表面層30上の摩擦面43とが当接している。なお、本典型例においては、第二の摩擦材2が摺動部材であり、第一の摩擦材1が非摺動部材であるという構成をとる。
第一の摩擦材1は、第一の表面層10中に第一の母材11、第一の高硬度材料12及び潤滑性樹脂13を有し、当該材料12及び当該樹脂13の一部が摩擦面41に露出している。第二の摩擦材2は、第二の表面層30中に第二の母材31及び第二の高硬度材料32を有し、当該材料32の一部が摩擦面43に露出している。ここで、前記材料12及び前記材料32は、同一の物質である。
【0058】
図2は、上記典型例の摩擦対の軽負荷時、及び高負荷時の様子を示した断面模式図である。
図2(a)は、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用温度時の摩擦対の様子を示した断面模式図である。前記第一の母材11よりも熱膨張率が大きい前記潤滑性樹脂13が摩擦面41上に突出することによって、潤滑性樹脂13より硬い第二の高硬度材料32の働きによって、潤滑性樹脂13は摩擦面に沿って引き延ばされて、表面層10及び表面層30の間に潤滑層50が形成される。また、摩擦面に露出した第一の高硬度材料12と第二の高硬度材料32の一部が軽く接触して摩擦力を発生させている。このようにして、潤滑性樹脂13は摩擦面から突出することによって潤滑剤の役割を果たし、第一の摩擦材1及び第二の摩擦材2の摩耗を低減するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
【0059】
図2(b)は、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時の摩擦対の様子を示した断面模式図である。潤滑性樹脂13のみではなく、第一の高硬度材料12及び第二の高硬度材料32も熱膨張によって摩擦面41及び43からそれぞれ突出し、その一部が強く接触するようになって、高い摩擦が生じるようになる。潤滑性樹脂13が、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用温度時よりさらに熱膨張して摩擦面41から突出し、第一の高硬度材料12及び第二の高硬度材料32の突出によって形成される第一の表面層10と第二の表面層30の空隙に引き延ばされることによって、潤滑層50が形成される。このとき、第一の高硬度材料が潤滑層にくいこむため、第二の高硬度材料によって潤滑層が剥ぎ取られるのを防止している。
このようにして、低負荷時よりもさらに潤沢な潤滑性樹脂の層が保持されるため、第一の高硬度材料12と第二の高硬度材料32との高い摩擦が生じても潤滑が保たれ、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
【0060】
本発明によれば、軽負荷時、すなわち100℃以下の常用使用温度時には、わずかな摩擦熱によって熱膨張率の大きい潤滑性樹脂が第一の摩擦材の摩擦面上に突出し、第二の摩擦材中の第二の高硬度材料によって摩擦面に引き延ばされて、第一の表面層と第二の表面層との間に潤滑層を形成し、第一及び第二の摩擦材の摩耗を低減するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
また、本発明によれば、高負荷時、すなわち300℃程度の高温時には、潤滑性樹脂が第一の摩擦材の摩擦面上に引き延ばされて潤滑層を形成するのと同時に、第一の高硬度材料が熱膨張によって摩擦面上に突出するため、第一及び第二の高硬度材料同士の摩擦が生じることにより高い摩擦係数を有し、且つ、第一の高硬度材料が潤滑層にくいこみ、第二の高硬度材料によって潤滑層が剥ぎ取られるのを防止するため、摩擦力変動や面圧変動が小さく、且つ、摺動時のノイズ・振動を抑制する摩擦面を安定して形成し、かつ維持することができる。
このように、本発明の摩擦対は、軽負荷時及び高負荷時のいずれにおいても、安定した摩擦面を維持することができる。
【実施例】
【0061】
以下に示す実施例に基づいて、比較例と対比しつつ本発明の説明をする。
【0062】
1.摩擦対の作製
[実施例]
第一の母材としてFe‐C合金を、第一の高硬度材料として日本工業規格の材料記号でSUH35と示されるオーステナイト系耐熱鋼を、潤滑性樹脂としてポリアミドイミドをそれぞれ選択し、これらの混合物を第一の基材(鋳鉄製のローター)にプラズマ溶射して第一の摩擦材を得た。
第二の摩擦材の構成要素の1つである第二の基材(ブレーキパッド)は、下記表1に示す材料を、下記表1の実施例の欄に示した配合(vol%)で混合して作製した。製造方法の詳細としては、まず、縦型ミキサーによって各種原料を5分間均一に混合し、摩擦材原料混合物を得た。次の工程の熱成形は、150℃に加熱した金型中に摩擦材原料混合物を投入した後、10分間、200kg/cmで加圧して行った。その後200℃、2時間硬化を行い、第二の基材を得た。その後、第二の母材としてFe‐C合金を、第二の高硬度材料として日本工業規格の材料記号でSUH35と示されるオーステナイト系耐熱鋼を、それぞれ選択し、これらの混合物を上述した第二の基材の表面にプラズマ溶射して第二の摩擦材を得た。
これら第一の摩擦材(非摺動部材)及び第二の摩擦材(摺動部材)を合わせて、実施例の摩擦対とした。
【0063】
[比較例]
第一の基材(鋳鉄製のローター)と、下記表1に示す材料を、下記表1の比較例の欄に示した配合(vol%)で混合して作製した第二の基材(ブレーキパッド)とを合わせて、比較例の摩擦対とした。なお、ブレーキパッド原料の混合・熱成形方法は、実施例のブレーキパッド同様である。
すなわち、比較例1においては、第一の基材・第二の基材共に、本発明の特徴の1つである、表面層の形成を行わなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
2.摩擦対の摩擦特性の測定及び評価
実施例及び比較例の摩擦対について、100℃又は300℃の温度条件において、テストピース形状で200Nの荷重のもと、1m/sの速度で1時間すり合わせを行い、その後、1m/s→0m/sの制動を行った。その際の摩擦係数(μ)、及び一制動中の摩擦係数の変動量(Δμ)、摩耗量を比較したものを表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2に示されるように、100℃及び300℃のいずれの温度条件においても、実施例の摩擦対は、比較例の摩擦対と比べて摩擦係数μが高く、摩擦係数の変動量Δμも小さく、さらに摩耗量も少ないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の摩擦対の典型例の断面模式図である。
【図2】本発明の摩擦対の典型例の軽負荷時、及び高負荷時の様子を示した断面模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1…第一の摩擦材
2…第二の摩擦材
10…第一の表面層
11…第一の母材
12…第一の高硬度材料
13…潤滑性樹脂
14…第一の基材
30…第二の表面層
31…第二の母材
32…第二の高硬度材料
33…第二の基材
41…摩擦面
43…摩擦面
50…潤滑層
100…摩擦対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の摩擦材及び第二の摩擦材を組み合わせ、当該第一の摩擦材の摩擦面と当該第二の摩擦材の摩擦面とが当接してなる摩擦対であって、
前記第一の摩擦材は、
金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の基材、並びに、
金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の母材、及び当該第一の母材よりも熱膨張率が大きい金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第一の高硬度材料、及び当該第一の高硬度材料よりも熱膨張率の大きい少なくとも1つの物質を有する潤滑性樹脂を有し、且つ、前記第一の母材中に前記第一の高硬度材料と前記潤滑性樹脂とを分散分布させた第一の表面層を有し、当該第一の表面層の最表面が摩擦面となり、
前記第二の摩擦材は、
金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の基材、並びに、
金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の母材、及び金属単体、金属化合物、有機化合物及び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの物質を有する第二の高硬度材料を有し、且つ、前記第二の母材中に前記第二の高硬度材料を分散分布させた第二の表面層を有し、当該第二の表面層の最表面が摩擦面となることを特徴とする、摩擦対。
【請求項2】
前記第二の高硬度材料が、前記第二の母材よりも熱膨張率が大きい、請求項1に記載の摩擦対。
【請求項3】
前記第一の摩擦材の前記第一の表面層は、前記摩擦面に開口する細孔を有し、当該細孔に前記潤滑性樹脂が充填されている、請求項1又は2に記載の摩擦対。
【請求項4】
前記潤滑性樹脂が耐熱性樹脂である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項5】
前記第一の摩擦材が非摺動部材であり、前記第二の摩擦材が摺動部材である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項6】
前記第一及び第二の母材の内、少なくともいずれか一方が金属酸化物である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項7】
前記第一及び第二の高硬度材料の内、少なくともいずれか一方の300℃における硬さがHv1.5GPa以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項8】
前記第一及び第二の高硬度材料は、繊維及び粒子の少なくともいずれか一方の形態である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項9】
前記第一及び第二の高硬度材料の熱膨張率が、12×10−6〜21×10−6―1であり、前記潤滑性樹脂の熱膨張率が23×10−6―1以上である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項10】
前記第一及び第二の高硬度材料の内少なくともいずれか一方の融点が1000℃以上である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項11】
前記潤滑性樹脂は、融点が150℃以上である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項12】
前記第一の高硬度材料の、前記第一の摩擦材に対する含有割合、及び前記第二の高硬度材料の、前記第二の摩擦材に対する含有割合がいずれも1〜50vol%であり、且つ、前記第一の摩擦材に含まれる前記潤滑性樹脂の体積に対する、前記第一の高硬度材料の体積割合が1/10〜2/1である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の摩擦対。
【請求項13】
前記第一の摩擦材の前記第一の表面層における前記細孔の直径が、1〜500μmであり、且つ、前記細孔の開口面積の合計の、前記第一の摩擦材の摩擦面の総面積に対する割合が、1〜20%である、請求項3乃至12のいずれか一項に記載の摩擦対。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−91080(P2010−91080A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263940(P2008−263940)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】