説明

摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ及び電磁クラッチ

【課題】 コストアップを招くことなく、摩耗限界に達する前に摩耗状態を検知することができる電磁ブレーキ及び電磁クラッチを提供すること。
【解決手段】 電磁ブレーキ1Aは、被制動軸に固定されて一体に回転するハブプレート10Aと、ハブプレート10Aに対して軸方向に離れて対向する磁極体20Aと、ハブプレート10Aと磁極体20Aとの間に配置され、軸方向にスライド可能で回転不能に磁極体に取り付けられたアーマチュア30Aと、ハブプレート10のアーマチュア30に対向する面に固着された摩擦板11と、アーマチュア30Aと共にスライドする切断刃43、これに対向して配置されたスライドしない切断用信号線42、通電検知回路50を備える。摩擦板が摩耗すると、制動時に切断刃が切断用信号線を切断し、通電検知回路の発光ダイオードが消灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁コイルへの通電、非通電の切換により、被制動回転軸に対する制動、解除を切り換える電磁ブレーキ、及び、入力軸と出力軸との接続、解除を切り換える電磁クラッチに関し、特に、接触部分に固着された摩擦板の摩耗を検知する手段を備えた電磁ブレーキ及び電磁クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦力を利用したブレーキ及びクラッチでは、摩擦力を発生させる摩擦板が使用に応じて摩耗する。摩擦板の摩耗が過度に進むと、ブレーキについては制動力が低下し、クラッチについては接続時の伝達効率が低下する。したがって、このような不具合が生じない段階で摩擦板を交換する必要があり、利用者は交換時期を把握する必要がある。
【0003】
このため、従来から、例えば特許文献1及び2に開示されるような摩擦板の摩耗検知手段が提案されている。特許文献1に開示される摩耗検知手段は、摩擦板の摩耗に伴って摩擦板を押しているピストンの位置が変化することを利用し、摩耗限界に達したときのピストン位置を検出できるように、非接触の近接センサを配置している。
【0004】
一方、特許文献2に開示される摩耗検知手段は、摩擦板の摩耗に伴ってサポートの位置が変化することを利用し、変位しない部分に設けた変位センサの接触子を、このサポートに当接させて摩耗量を連続的に検出できるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−183125号公報 第4図
【特許文献2】特開2002−372082号公報 図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される摩耗検知手段では、ピストンの位置を非接触で検出するために使用される近接スイッチのコストが高く、また、特許文献2に開示される摩耗検知手段では、サポートの位置を連続的に検出するために使用される変位センサのコストが高く、何れの場合にも、適用されるブレーキやクラッチのコストアップを招くという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、より簡単な構成で、コストアップを招くことなく、摩擦板の摩耗状態を検知することができる電磁ブレーキ及び電磁クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキは、上記の目的を達成させるため、請求項1に記載のように、被制動回転軸に固定されて一体に回転するハブプレートと、ハブプレートに対して軸方向に離れて対向する磁極体と、ハブプレートと磁極体との間に配置され、軸方向にスライド可能で回転不能に磁極体に取り付けられたアーマチュアと、アーマチュアをハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、磁極体内に設けられ、通電により付勢手段による付勢力に抗してアーマチュアを変位させる励磁コイルと、ハブプレートとアーマチュアとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置され、軸方向にはスライドしない検知部から成る摩耗検知手段とを備え、接触部と検知部との間隔は、摩擦板が所定の摩耗状態になると、アーマチュアが制動位置にスライドした際に、接触部が検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、ブレーキの使用に伴って摩擦板が摩耗して厚さが減少すると、アーマチュアの制動位置での接触部と検知部との間隔が徐々に狭くなる。摩擦板が所定の摩耗状態になると、アーマチュアが制動位置にスライドした際に接触部が検知部に接触し、検知部の電気的な状態が変化する。この変化を検知することにより、摩擦板が所定の摩耗状態になったことを的確に、検知することができる。
【0010】
検知部と接触部との組み合わせとしては、請求項2に記載のように、検知部には、切断用信号線を備え、接触部には、接触時に切断用信号線を切断する切断刃と通電検知回路とを備え、摩擦板が所定の摩耗状態になると、切断刃で切断用信号線を切断し、通電検知回路を遮断するようにした構成、あるいは、請求項3に記載のように、検知部には、通電検知回路と、この通電検知回路の形成用及び開放用の接点とを備え、また、接触部は導通片を備え、摩擦板が所定の摩耗状態になると、接触部の導通片の軸方向のスライドにより、接触時に接点間を短絡させるようにした構成を採用することができる。この場合、付勢手段が板ばねである場合、請求項4に記載のように、板ばねの一部を接触部として利用することができる。
【0011】
また、請求項5に記載のように、ハブプレートとアーマチュアとを共に導電体により形成し、ハブプレートの一部にアーマチュア側に突出した接触部を形成し、アーマチュアを検知部として機能させてもよい。
さらに、請求項6に記載のように、付勢手段を板ばねとし、摩耗検知手段として、接触部及び検知部に代えて、板ばねに取り付けられた圧電素子を用い、制動時の圧電素子の出力を検知することにより、板ばねのたわみ量から摩擦板の摩耗状態を検知するようにしてもよい。
【0012】
一方、本発明にかかる摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチは、上記の目的を達成させるため、請求項7に記載のように、入力軸又は出力軸の一方に固定されて一体に回転するハブプレートと、入力軸又は出力軸の他方に固定されて一体に回転するロータと、このロータを回転可能に支持する磁極体と、ハブプレートのロータに対向する面に、軸方向にスライド可能で一体に回転するよう取り付けられたアーマチュアと、アーマチュアとロータとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、アーマチュアをハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、磁極体内に設けられ、通電により付勢手段による付勢力に抗してアーマチュアを変位させる励磁コイルと、アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置されたスライドしない検知部から成る摩耗検知手段とを備え、接触部と検知部との間隔は、摩擦板が所定の摩耗状態になると、アーマチュアを接続位置にスライドさせた際に、接触部が検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、クラッチの使用に伴って摩擦板が摩耗して厚さが減少すると、アーマチュアの接続位置での接触部と検知部との間隔が徐々に狭くなる。摩擦板が所定の摩耗状態になると、アーマチュアが接続位置にスライドした際に接触部が検知部に接触し、検知部の電気的な状態が変化する。この変化を検知することにより、摩擦板が所定の摩耗状態になったことを的確に、検知することができる。
【0014】
なお、摩耗検知手段としては、請求項8〜10に記載のように、上記の電磁ブレーキの場合と同様の構成が適用できる。
さらに、請求項13及び14に記載するように、上記電磁ブレーキ又は電磁クラッチ磨耗検知手段の出力としてブザーのような音響報知手段又はPCディスプレーのような表示報知手段を用いるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項7に記載の本発明の電磁ブレーキ及び電磁クラッチの基本構成によれば、検知部と接触部という簡単な構成で摩擦板の摩耗状態を検知することができ、コストアップを招くことなく摩耗状態を的確に検知することができる。
【0016】
また、請求項2及び8に記載のように、本発明の電磁ブレーキ及び電磁クラッチの磨耗検知手段を構成すれば、上記基本構成の効果に加えて、次の効果を有する。
(1)検知部における発光ダイオードの消灯等の電気信号による磨耗度減少の報知により、摩擦板の交換時期、または、摩擦板の減少した電磁ブレーキの交換時期をベテランサービスマンでなくても知ることができる。
(2)磨耗度の検知を切断用信号線を切断するという単純な動作原理で行うため、磨耗検知手段が誤作動したり、故障をすることが少ない。
(3)なお、請求項8に記載の電磁クラッチの場合は、切断刃をアーマチュアに固定されるため、電磁クラッチ接続時には、切断刃がアーマチュアと一体で回転するため、より確実に切断用信号線を切断できる。
(4)既存の電磁ブレーキ及び電磁クラッチに後付けで適用可能である。
【0017】
また、請求項3及び9に記載のように、本発明の電磁ブレーキ及び電磁クラッチの磨耗検知手段を構成すれば、上記基本構成の効果に加えて、次の効果を有する。
(1)検知部における発光ダイオードの点灯等の電気信号による磨耗度減少の報知により、摩擦板の交換時期、または、摩擦板の減少した電磁ブレーキの交換時期をベテランサービスマンでなくても知ることができる。
(2)磨耗度の検知を信号線の切断ではなく、接点のON、OFFを利用するため、切断用信号線の交換等の磨耗検知手段のメンテナンスが不要となる。
(3)検知部に発光ダイオードを用いた場合、正常時、あるいは、電磁ブレーキまたは電磁クラッチの非励磁状態で発光ダイオードが消灯し、摩擦板が磨耗し過ぎた状態で電磁ブレーキまたは電磁クラッチが励磁状態になると発光ダイオードが点灯するため、磨耗検知手段の消費電力が少なくて済む。
(4)既存の電磁ブレーキ及び電磁クラッチに後付けで適用可能である。
【0018】
また、請求項4及び10に記載のように、本発明の電磁ブレーキ及び電磁クラッチの付勢手段として、板ばねを使用し、磨耗検知手段の一部を電磁ブレーキ及び電磁クラッチの構成の一部を利用する構成とすれば、上記基本構成の効果に加えて、次の効果を有する。
(1)板ばねの動作を利用して、切断刃又は接点の動作を行うため、構成部品点数を減少することができる。
(2)図8の第5の実施の形態及び図9の第6の実施の形態に示すように、磨耗検知手段である切断刃又は接点を、外付けする場合に比べ、省スペース化とすることができる。
【0019】
また、請求項5及び11に記載のように、本発明の電磁ブレーキのアーマチュアやハブプレートを導電体で形成し、電磁クラッチのロータも導電体で形成して磨耗検知のためのスイッチ手段として利用するようにすれば、上記基本構成の効果に加えて、次の効果を有する。
(1)上記スイッチ手段を外付けする場合に比べ、省スペース化とすることができる。
【0020】
また、請求項6及び12に記載のように、本発明の電磁ブレーキ及び電磁クラッチの磨耗検知手段として板ばねに取り付けた圧電素子使用した構成すれば、上記基本構成の効果に加えて、次の効果を有する。
(1)単に、スイッチのON、OFFではなく、板ばねの撓みによって生じる圧電素子の出力電圧を利用するため、摩擦板の磨耗量の許容限界を細かく設定することができる。
(2)検知部を複数設けることにより、摩擦板の磨耗度を段階的に知ることができるから、ユーザーにおける摩擦板の交換手配または磨耗した摩擦板を備えた電磁ブレーキまたは電磁クラッチの交換手配を行い易くなる。
【0021】
さらに、請求項13及び14に記載のように、本発明の電磁ブレーキ及び電磁クラッチの磨耗検知手段としてブザーのような音響報知手段やPCディスプレーのような表示報知手段を用いるようにすると、上記基本構成の効果に加えて、次の効果を有する。
(1)音響報知手段によれば、現場の近辺にいる者は勿論、現場から離れた場所にいる作業者や管理者でも、摩擦板の磨耗限界の報知を知ることができる。
(2)表示報知手段によれば、離れた場所にいる管理者やサービスマンの手元の管理装置に表示できて、摩擦板の磨耗度のチェックを集中管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明にかかる摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ及び電磁クラッチの実施の形態を9例説明する。
【0023】
第1の実施の形態:
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる電磁ブレーキの摩擦板が摩耗していない状態における制動時の縦断側面図、図2は、図1の電磁ブレーキの制動解除時の縦断側面図、図3は、図1の電磁ブレーキの摩擦板が摩耗した状態における制動時の縦断側面図である。ここでは、本発明を無励磁作動型の電磁ブレーキに適用した例について説明する。
【0024】
図1及び図2に示されるように、第1の実施の形態に係る電磁ブレーキ1Aは、図示せぬ被制動軸に固定されて一体に回転するハブプレート10Aと、ハブプレート10Aに対して軸方向に離れて対向する固定側となる磁極体20Aと、ハブプレート10Aと磁極体20Aとの間に配置され、軸方向にスライド可能で回転不能に磁極体20Aに取り付けられたアーマチュア30Aと、ハブプレート10Aのアーマチュア30Aに対向する面に固着されたリング状の摩擦板11とを備えている。
【0025】
磁極体20Aには、アーマチュア30Aをハブプレート10Aに対して近接する方向に付勢する付勢手段としてコイルスプリング21が設けられると共に、通電によりコイルスプリング21による付勢力に抗してアーマチュア30Aを変位させる励磁コイル22が設けられている。これらのコイルスプリング21及び励磁コイル22は、アーマチュア30Aを軸方向にスライドさせることにより制動、解除を切り換える切換手段として機能する。
【0026】
すなわち、励磁コイル22に電流が供給されない状態では、励磁コイル22は励磁されず、図1に示されるように、アーマチュア30Aはコイルスプリング21の付勢力により、ハブプレート10A側に押し付けられて摩擦板11に接触し、被制動軸に制動がかけられる。
【0027】
励磁コイル22に電流が供給されると、励磁コイル22が励磁され、図2に示されるように、アーマチュア30Aはコイルスプリング21の付勢力に抗して磁極体20Aに吸着され、摩擦板11がアーマチュア30Aから離れて制動が解除される。
【0028】
また、電磁ブレーキ1Aは、摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段として、アーマチュア30Aと共にスライドする接触部40A、接触部40Aに対向して配置されたスライドしない検知部41A、及び、検知部41Aに接続された通電検知回路50を備えている。この例では、検知部41Aは切断用信号線42を備え、接触部40Aは接触時に切断用信号線42を切断する切断刃43を備えている。検知部41Aは、図示しないフレームにより磁極体20A、あるいは、ブレーキ周辺の固定部に固定される。
【0029】
検知部41Aの切断用信号線42は、細径の銅線、あるいは、切断刃43より幅狭の帯状の銅線により形成され、切断刃43が所定の圧力以上で押し付けられると図3に示すように容易に切断されるように設定されている。
【0030】
通電検知回路50は、バッテリー51と発光ダイオード52とを直列に接続した回路であり、検知部41Aの切断用信号線42が接続されていると、発光ダイオード52が発光し、図3に示すように切断用信号線42が切断されると、発光ダイオード52が消灯する。
【0031】
アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際の接触部40Aと検知部41Aとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Aと検知部41Aとが接触する)ように定められている。間隔xの初期値は、工場で出荷時に設定してもよいし、ユーザ又はサービスマンが設定できるようにしてもよい。
【0032】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図1に示すように、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際にも接触部40Aの切断刃43は検知部41Aの切断用信号線42に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、図3に示すようにアーマチュア30Aが制動位置にスライドした際に、接触部40Aの切断刃43が検知部41Aの切断用信号線42に接触し、検知部41Aの電気的な状態を変化させる。この例では、接触部40Aの切断刃43が検知部41Aの切断用信号線42を切断し、検知部41Aの電気的な状態を接続から切断に切り換える。なお、摩擦板11の交換時には、切断用信号線42も取り替えることになる。
【0033】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは発光し、所定の摩耗状態まで摩耗すると消灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が点灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、消灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0034】
第2の実施の形態:
図4は、本発明の第2の実施の形態にかかる電磁クラッチの摩擦板が摩耗していない状態における入出力軸接続時の縦断側面図、図5は、図4の電磁クラッチの入出力軸切断時の縦断側面図である。ここでは、本発明を励磁接続型の電磁クラッチに適用した例について説明する。なお、以下の実施の形態においては、既に説明した実施の形態と同等の部材については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0035】
第2の実施の形態の電磁クラッチ2Aは、図示せぬモータ等の駆動源により駆動される入力軸3と負荷に接続された出力軸4との接続、切断を切り換えることにより、入力軸3の回転を出力軸4への伝達、切断を切り換える機能を有する。電磁クラッチ2Aは、出力軸4に固定されて一体に回転するハブプレート10Bと、入力軸3に固定されて一体に回転するロータ60と、ベアリング23を介してロータ60を回転可能に支持する磁極体20Bと、ハブプレート10Bのロータ60に対向する面に、軸方向にスライド可能で一体に回転するよう取り付けられたアーマチュア30Bとを備えている。
【0036】
アーマチュア30Bとロータ60との互いに対向する面の一方、この例ではロータ60には、リング状の摩擦板11が固着されている。また、アーマチュア30Bは、付勢手段であるコイルスプリング12により、ハブプレート10Bに対して近接する方向に付勢されている。さらに、磁極体20B内には、通電によりコイルスプリング12による付勢力に抗してアーマチュア30Bを変位させる励磁コイル22が設けられている。
【0037】
励磁コイル22に電流が供給されると、励磁コイル22が励磁され、図4に示されるように、アーマチュア30Bはコイルスプリング12の付勢力に抗して磁極体20Bに吸着され、摩擦板11がアーマチュア30Bに接触してロータ60とハブプレート10Bとが一体に回転し、入力軸3と出力軸4とが接続される。
【0038】
励磁コイル22への通電が遮断されると、図5に示されるように、アーマチュア30Bはコイルスプリング12の付勢力によりハブプレート10Bに引き寄せられ、摩擦板11がアーマチュア30Bから離れ、入力軸3と出力軸4とが接続が切断される。
【0039】
摩擦板11の摩耗状態を検知する摩耗検知手段の構成は、第1の実施形態と同一である。ただし、ブレーキとクラッチとの機構的な相違から、取り付け位置が第1の実施の形態とは異なる。すなわち、接触部40Aの切断刃43は、回転するアーマチュア30Bの外周面の一部に外周側に突出して設けられたアーム61上にロータ60側に向けて取り付けられており、これに対向して検知部41Aの切断用信号線42が配置されている。切断用信号線42は、バッテリー51と発光ダイオード52とを直列に接続して構成される通電検知回路50に接続されている。
【0040】
アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際の接触部40Aと検知部41Aとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Aと検知部41Aとが接触する)ように定められている。
【0041】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図4に示すように、アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際にも接触部40Aの切断刃43は検知部41Aの切断用信号線42に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際に、接触部40Aの切断刃43が検知部41Aの切断用信号線42に接触し、検知部41Aの電気的な状態を変化させる。この例では、接触部40Aの切断刃43が検知部41Aの切断用信号線42を切断し、検知部41Aの電気的な状態を接続から切断に切り換える。この例では、切断刃43がアーマチュア30Bの外周の一部に設けられているため、アーマチュア30Bが回転して切断刃43が切断用信号線42に接触した際に切断用信号線42が切断される。このような構成に代えて、アーマチュア30Bの外周全周にわたってリング状の切断刃を設け、回転を利用せずに切断用信号線を切断できるようにしてもよい。
【0042】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは発光し、所定の摩耗状態まで摩耗すると消灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が点灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、消灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11及び切断用信号線42の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0043】
第3の実施の形態:
図6は、本発明の第3の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制動時の縦断側面図である。第3の実施の形態の電磁ブレーキ1Bの基本構造は、図1、図2の第1の実施の形態で示した電磁ブレーキ1Aと同一である。相違点は、摩擦板の摩耗状態を検知する摩耗検知手段の構成にある。
【0044】
すなわち、第3の実施の形態の電磁ブレーキ1Bは、摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段として、アーマチュア30Aと共にスライドする接触部40B、接触部40Bに対向して配置されたスライドしない検知部41B、及び、検知部41Bに接続された通電検知回路50を備えている。この例では、検知部41Bは一対の接点44を備え、接触部40Bは接触時に接点44間を短絡させる導通片45を備え、これらの接点44と導通片45とによりスイッチが構成されている。
【0045】
接触部40Bの導通片45は、アーマチュア30Aの外周の一部に外周側に向けて突出し、先端がハブプレート10A側に折り曲げられて形成されたL字状のアーム31の先端に取り付けられており、検知部41Bは、図示しないフレームにより磁極体20A、あるいは、ブレーキ周辺の固定部に固定される。
【0046】
アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際の接触部40Bと検知部41Bとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Bと検知部41Bとが接触する)ように定められている。
【0047】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図6に示すように、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際にも接触部40Bの導通片45は検知部41Bの一対の接点44に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際に、接触部40Bの導通片45が検知部41Bの接点44に接触して検知部41Bの電気的な状態を変化させる。この例では、接触部40Bの導通片45が検知部41Bの接点44を短絡し、検知部41Bの電気的な状態を切断から接続に切り換える。
【0048】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは消灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると点灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が消灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、点灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0049】
第4の実施の形態:
図7は、本発明の第4の実施の形態にかかる電磁クラッチの入出力接続時の縦断側面図である。第4の実施の形態の電磁クラッチ2Bの基本構造は、図4、図5の第2の実施の形態で示した電磁クラッチ2Aと同一である。また、摩擦板の摩耗状態を検知する摩耗検知手段の構成は、図6の第3の実施の形態で示した電磁ブレーキ1Bと同様である。
【0050】
すなわち、第4の実施の形態の電磁クラッチ2Bは、摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段として、アーマチュア30Bと共にスライドする接触部40B、接触部40Bに対向して配置されたスライドしない検知部41B、及び、検知部41Bに接続された通電検知回路50を備えている。この例では、検知部41Bは一対の接点44を備え、接触部40Bは接触時に接点44間を短絡させる導通片45を備え、これらの接点44と導通片45とによりスイッチが構成されている。
【0051】
接触部40Bの導通片45は、アーマチュア30Bの外周の一部に外周側に向けて突出し、先端が磁極体20B側に折り曲げられて形成されたL字状のアーム32の先端に取り付けられており、検知部41Bは、図示しないフレームにより磁極体20B、あるいは、ブレーキ周辺の固定部に固定される。
【0052】
アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際の接触部40Bと検知部41Bとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Bと検知部41Bとが接触する)ように定められている。
【0053】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図7に示すように、アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際にも接触部40Bの導通片45は検知部41Bの接点44に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際に、接触部40Bの導通片45が検知部41Bの接点44に接触して検知部41Bの電気的な状態を変化させる。この例では、接触部40Bの導通片45が検知部41Bの接点44を短絡し、検知部41Bの電気的な状態を切断から接続に切り換える。
【0054】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは消灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると点灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が消灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、点灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0055】
第5の実施の形態:
図8は、本発明の第5の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制動時の縦断側面図である。第5の実施の形態の電磁ブレーキ1Cの基本構造は、図1、図2の第1の実施の形態で示した電磁ブレーキ1Aとほぼ同一であり、付勢手段の構成のみが異なる。すなわち、第1の実施の形態では付勢手段としてコイルスプリングが用いられているが、第5の実施の形態では付勢手段として板ばねが用いられている。
【0056】
第5の実施の形態の電磁ブレーキ1Cでは、摩擦板11が固着されたハブプレート10Aと、磁極体20Cに付勢手段である板ばね70Aを介して支持されたアーマチュア30Aとが対向している。磁極体20Cには、励磁コイル22が設けられている。
【0057】
摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段は、アーマチュア30Aと共にスライドする接触部40C、接触部40Cに対向して配置されたスライドしない検知部41A、及び、検知部41Aに接続された通電検知回路50を備えている。接触部40Cは、板ばね70Aを延長して形成された切断刃71を備えている。検知部41Aは、第1の実施の形態と同様に、切断用信号線42を備えている。
【0058】
アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際の接触部40Cと検知部41Aとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Cと検知部41Aとが接触する)ように定められている。
【0059】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図8に示すように、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際にも接触部40Cの切断刃71は検知部41Aの切断用信号線42に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際に、接触部40Cの切断刃71が検知部41Aの切断用信号線42に接触し、検知部41Aの電気的な状態を変化させる。この例では、接触部40Cの切断刃71が検知部41Aの切断用信号線42を切断し、検知部41Aの電気的な状態を接続から切断に切り換える。
【0060】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは点灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると消灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が点灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、消灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11及び切断用信号線42の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0061】
第6の実施の形態:
図9は、本発明の第6の実施の形態にかかる電磁クラッチの入出力接続時の縦断側面図である。第6の実施の形態の電磁クラッチ2Cの基本構造は図4、図5の第2の実施の形態で示した電磁クラッチ2Aとほぼ同一であり、付勢手段の構成のみが異なる。
すなわち、第2の実施の形態では付勢手段としてコイルスプリングが用いられているが、第6の実施の形態では付勢手段として板ばねが用いられている。
【0062】
第6の実施の形態の電磁クラッチ2Cでは、入力軸3に固定され、摩擦板11が固着されたロータ60と、出力軸4に固定されたハブプレート10Cに対し、付勢手段である板ばね70Bを介して支持されたアーマチュア30Bとが対向している。
【0063】
摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段は、アーマチュア30Bと共にスライドする接触部40D、接触部40Dに対向して配置されたスライドしない検知部41B、及び、検知部41Bに接続された通電検知回路50を備えている。接触部40Dは、導電体である板ばね70Bを延長して形成された導通片72を備えている。検知部41Bは、第4の実施の形態と同様に、一対の接点44を備えている。これらの接点44と導通片72とによりスイッチが構成されている。
【0064】
アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際の接触部40Dと検知部41Bとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Dと検知部41Bとが接触する)ように定められている。
【0065】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図9に示すように、アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際にも接触部40Dの導通片72は検知部41Bの接点44に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Bが接続位置にスライドした際に、接触部40Dの導通片72が検知部41Bの接点44に接触して検知部41Bの電気的な状態を変化させる。この例では、接触部40Dの導通片72が検知部41Bの接点44を短絡し、検知部41Bの電気的な状態を切断から接続に切り換える。
【0066】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは消灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると点灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が消灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、点灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0067】
第7の実施の形態:
図10は、本発明の第7の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制動時の縦断側面図である。第7の実施の形態の電磁ブレーキ1Dの基本構造は、図1、図2の第1の実施の形態で示した電磁ブレーキ1Aとほぼ同一である。ただし、第7の実施の形態では、ハブプレート10D及びアーマチュア30Aが導電体で形成され、ハブプレート10Dのアーマチュア30Aに対向する面の最も外周側に、突起13が形成されている。なお、突起は、アーマチュア30A側に形成されてもよいし、摩擦板11の外周ではなく内周に形成されてもよいし、摩擦板11に設けた切り欠きに侵入するように形成されてもよい。
【0068】
第7の実施の形態の電磁ブレーキ1Dは、摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段として、スライドする接触部40Eとして導電体のアーマチュア30A自体を用い、接触部40Eに対向して配置されたスライドしない検知部41Cとしてハブプレート10Dの突起13を利用する。そして、通電検知回路50は、一方の導線をアーマチュア30Aに接続すると共に、他方の導線を接触子46を介してハブプレートに接続している。接触子46は、ハブプレート10Dの回転を妨げずに外周に接触して電気的な導通状態を保つ。
【0069】
アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際の接触部40Eと検知部41Cとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Eと検知部41Cとが接触する)ように定められている。
【0070】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図10に示すように、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際にも接触部40Eであるアーマチュア30Aは検知部41Cであるハブプレート10Dの突起13に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Aが制動位置にスライドした際に、接触部40Eであるアーマチュア30Aは検知部41Cであるハブプレート10Dの突起13に接触して検知部41Cの電気的な状態を変化させる。この例では、アーマチュア30Aからハブプレート10Dの突起13の間が導通する。
【0071】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは消灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると点灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が消灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、点灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0072】
第8の実施の形態:
図11は、本発明の第8の実施の形態にかかる電磁クラッチの入出力接続時の縦断側面図である。第8の実施の形態の電磁クラッチ2Dの基本構造は、図4、図5の第2の実施の形態で示した電磁クラッチ2Aとほぼ同一である。ただし、第8の実施の形態では、ロータ60及びアーマチュア30Cが導電体で形成され、アーマチュア30Cのロータ60に対向する面の最も外周側に、突起33が形成されている。なお、突起33は、ロータ60側に形成されてもよいし、摩擦板11の外周ではなく内周に形成されてもよいし、摩擦板11に設けた切り欠きに侵入するように形成されてもよい。
【0073】
第8の実施の形態の電磁クラッチ2Dは、摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段として、スライドする接触部40Fとして導電体のアーマチュア30Cの突起33を用い、接触部40Fに対向して配置されたスライドしない検知部41Dとしてロータ60自体を利用する。そして、通電検知回路50は、一方の導線を接触子47aを介してアーマチュア30Cに接続すると共に、他方の導線を接触子47bを介してロータ60に接続している。接触子47a、47bは、アーマチュア30C及びロータ60のそれぞれの回転を妨げずに外周に接触して電気的な導通状態を保つ。
【0074】
アーマチュア30Cが制動位置にスライドした際の接触部40Fと検知部41Dとの間隔xは、摩擦板11の厚さyより小さく設定されており、摩擦板11が摩耗して機能しなくなる前に間隔xが0以下になる(接触部40Fと検知部41Dとが接触する)ように定められている。
【0075】
摩擦板11が摩耗してない状態では、図11に示すように、アーマチュア30Cが接続位置にスライドした際にも接触部40Fであるアーマチュア30Cの突起33は検知部41Dであるロータ60に接触しない。一方、摩擦板11が所定の摩耗状態になると、アーマチュア30Cが接続位置にスライドした際に、接触部40Fであるアーマチュア30Cの突起33は検知部41Dであるロータ60に接触して検知部41Dの電気的な状態を変化させる。この例では、アーマチュア30Cの突起33からロータ60の間が導通する。
【0076】
通電検知回路50の発光ダイオード52は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは消灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると点灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード52が消灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、点灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0077】
第9の実施の形態:
図12は、本発明の第9の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制動時の縦断側面図である。第9の実施の形態の電磁ブレーキ1Eの基本構造は、付勢手段として板ばねを用いた図8の第5の実施の形態で示した電磁ブレーキ1Cとほぼ同一である。ただし、第9の実施の形態では、摩擦板の摩耗状態を検知する摩耗検知手段として、上記の各実施の形態で用いた接触部及び検知部に代えて、板ばねに取り付けられた圧電素子を用い、制動時の圧電素子の出力を検知することにより、板ばねのたわみ量から摩擦板の摩耗状態を検知するようにしている。
【0078】
すなわち、第9の実施の形態の電磁ブレーキ1Eでは、摩擦板11が固着されたハブプレート10Aと、磁極体20Cに付勢手段である板ばね70Cを介して支持されたアーマチュア30Aとが対向している。磁極体20Cには、励磁コイル22が設けられている。
【0079】
摩擦板11の摩耗を検知する摩耗検知手段は、図13に拡大して示すように、板ばね70Cの撓み量の大きい中間部に貼り付けられた圧電素子73と、この圧電素子73の変形により発生する出力電圧を測定する電圧検知回路80とから構成されている。
【0080】
電圧検知回路80は、バッテリー81と発光ダイオード82とを備える他、圧電素子73の出力電圧を基準電圧と比較するコンパレータ83、抵抗84、トランジスタ85を備えている。トランジスタ85のコレクタ、エミッタと発光ダイオード82とを直列にした回路がバッテリー81に対して並列に接続され、トランジスタ85のベースにコンパレータ83の出力が入力されている。これにより、圧電素子73の出力電圧が基準電圧を超えると、トランジスタ85がオンして発光ダイオード82に電流を流して点灯させる。
【0081】
板ばね70Cの制動時の撓み量は、摩擦板11の厚さが減少するほど大きくなるため、摩耗限界での板ばねの撓み量を予め求め、その際の圧電素子の出力電圧を基準電圧として設定しておくことにより、上記の構成で摩擦板が所定の摩耗状態に達したことを検知することができる。
【0082】
すなわち、電圧検知回路80の発光ダイオード82は、摩擦板11が所定の摩耗状態まで摩耗するまでは消灯し、所定の摩耗状態まで摩耗すると点灯する。したがって、ユーザは、発光ダイオード82が消灯している間は摩擦板11が摩耗していないこと、点灯した時点で所定の摩耗状態に達したことを知ることができ、摩擦板11の交換タイミングを適切に知ることができる。
【0083】
なお、第9の実施の形態では、電圧検知回路を単独で設けているが、異なる基準電圧で複数の電圧検知回路を設ければ、摩擦板の摩耗状態を、例えば、正常、摩耗量小、摩耗量大、交換時期等、段階的に検知することもできる。
【0084】
本発明は、上記の各実施の形態の構成に限定されない。
例えば、図示の説明は省略するが、第9の実施の形態の電磁ブレーキの構成は、図9の第6の実施の形態の基本構成の電磁クラッチに適用することで、第9の実施の形態と同等の電磁クラッチにも適用可能である。
また、上記の各実施の形態では、告知手段として発光ダイオードを用いているが、これに限定されず、ブザー等の音響素子を用いてもよいし、コンパレータやトランジスタ、A/D変換器を介してパーソナルコンピュータに取り込み、PCディスプレイ上で正常、異常を表示させるようにしてもよい。
【0085】
さらに、通電検知回路50や電圧検知回路80は、電磁ブレーキや電磁クラッチの近傍に配置してもよいし、離れた場所に配置してユーザやサービスマンが複数のブレーキやクラッチの状態を集中管理できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる電磁ブレーキの摩擦板が摩耗していない状態における制動時の縦断側面図である。
【図2】図1の電磁ブレーキの制動解除時の側面断面図である。
【図3】図1の電磁ブレーキの摩擦板が摩耗した状態における制動時の縦断側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる電磁クラッチの摩擦板が摩耗していない状態における入出力軸接続時の縦断側面図である。
【図5】図4の電磁クラッチの入出力軸切断時の縦断側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態にかかる電磁ブレーキの摩擦板が摩耗していない状態における制動時の縦断側面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態にかかる電磁クラッチの摩擦板が摩耗していない状態における入出力軸接続時の縦断側面図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態にかかる電磁ブレーキの摩擦板が摩耗していない状態における制動時の縦断側面図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態にかかる電磁クラッチの摩擦板が摩耗していない状態における入出力軸接続時の縦断側面図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態にかかる電磁ブレーキの摩擦板が摩耗していない状態における制動時の縦断側面図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態にかかる電磁クラッチの摩擦板が摩耗していない状態における入出力軸接続時の縦断側面図である。
【図12】本発明の第9の実施の形態にかかる電磁ブレーキの摩擦板が摩耗していない状態における制動時の縦断側面図である。
【図13】図12の電磁ブレーキに用いられている板ばねと圧電素子とを示す拡大図である。
【符号の説明】
【0087】
1A、1B、1C、1D、1E 電磁ブレーキ
2A、2B、2C、2D 電磁クラッチ
10A、10B、10C、10D ハブプレート
11 摩擦板
20A、20B、20C 磁極体
12、21 コイルスプリング
22 励磁コイル
30A、30B、30C アーマチュア
40A、40B、40C、40D、40E、40F 接触部
41A、41B、41C、41D 検知部
50 導通検知回路
70A、70B、70C 板ばね
73 圧電素子
80 電圧検知回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制動回転軸に固定されて一体に回転するハブプレートと、
前記ハブプレートに対して軸方向に離れて対向する磁極体と、
前記ハブプレートと前記磁極体との間に配置され、軸方向にスライド可能で回転不能に前記磁極体に取り付けられたアーマチュアと、
前記アーマチュアを前記ハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、
前記磁極体内に設けられ、通電により前記付勢手段による付勢力に抗して前記アーマチュアを変位させる励磁コイルと、
前記ハブプレートと前記アーマチュアとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、
前記アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置され、軸方向にはスライドしない検知部から成る摩耗検知手段とを備え、
前記接触部と前記検知部との間隔は、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記アーマチュアが制動位置にスライドした際に、前記接触部が前記検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められていることを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ。
【請求項2】
被制動回転軸に固定されて一体に回転するハブプレートと、
前記ハブプレートに対して軸方向に離れて対向する磁極体と、
前記ハブプレートと前記磁極体との間に配置され、軸方向にスライド可能で回転不能に前記磁極体に取り付けられたアーマチュアと、
前記アーマチュアを前記ハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、
前記磁極体内に設けられ、通電により前記付勢手段による付勢力に抗して前記アーマチュアを変位させる励磁コイルと、
前記ハブプレートと前記アーマチュアとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、
前記アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置され、軸方向にはスライドしない検知部から成る摩耗検知手段とを備え、
前記接触部と前記検知部との間隔は、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記アーマチュアが制動位置にスライドした際に、前記接触部が前記検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められている摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキにおいて、
前記検知部は、切断用信号線を備え、前記接触部は、接触時に前記切断用信号線を切断する切断刃と通電検知回路とを備え、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記切断刃で切断用信号線を切断し、前記通電検知回路を遮断することで、摩擦板の磨耗度の検知を行うようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ。
【請求項3】
被制動回転軸に固定されて一体に回転するハブプレートと、
前記ハブプレートに対して軸方向に離れて対向する磁極体と、
前記ハブプレートと前記磁極体との間に配置され、軸方向にスライド可能で回転不能に前記磁極体に取り付けられたアーマチュアと、
前記アーマチュアを前記ハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、
前記磁極体内に設けられ、通電により前記付勢手段による付勢力に抗して前記アーマチュアを変位させる励磁コイルと、
前記ハブプレートと前記アーマチュアとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、
前記アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置され、軸方向にはスライドしない検知部から成る摩耗検知手段とを備え、
前記接触部と前記検知部との間隔は、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記アーマチュアが制動位置にスライドした際に、前記接触部が前記検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められている摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキにおいて、
前記検知部は、通電検知回路と、この通電検知回路の形成用及び開放用の接点とを備え、また、前記接触部は導通片を備え、
前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記接触部の導通片の軸方向のスライドにより、接触時に前記接点間を短絡させることで摩擦板の磨耗度の検知を行うようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ。
【請求項4】
前記付勢手段は、板ばねであり、当該板ばねの一部を前記接触部として利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ。
【請求項5】
前記ハブプレートと前記アーマチュアは、導電体により形成され、前記ハブプレートの一部が前記アーマチュア側に突出した前記接触部として形成され、前記アーマチュアは、導電体により形成され、前記検知部として機能することを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ。
【請求項6】
前記付勢手段は、板ばねであり、前記摩耗検知手段は、前記接触部及び検知部に代えて、前記板ばねに取り付けられた圧電素子を備え、制動時の該圧電素子の出力を検知することにより、前記板ばねのたわみ量から前記摩擦板の摩耗状態を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁ブレーキ。
【請求項7】
入力軸又は出力軸の一方に固定されて一体に回転するハブプレートと、
前記入力軸又は出力軸の他方に固定されて一体に回転するロータと、
該ロータを回転可能に支持する磁極体と、
前記ハブプレートの前記ロータに対向する面に、軸方向にスライド可能で一体に回転するよう取り付けられたアーマチュアと、
前記アーマチュアと前記ロータとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、
前記アーマチュアを前記ハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、
前記磁極体内に設けられ、通電により前記付勢手段による付勢力に抗して前記アーマチュアを変位させる励磁コイルと、
前記アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置されたスライドしない検知部からなる磨耗検知手段とを備え、前記接触部と前記検知部との間隔は、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記アーマチュアが接続位置にスライドした際に、前記接触部が前記検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められていることを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチ。
【請求項8】
入力軸又は出力軸の一方に固定されて一体に回転するハブプレートと、
前記入力軸又は出力軸の他方に固定されて一体に回転するロータと、
該ロータを回転可能に支持する磁極体と、
前記ハブプレートの前記ロータに対向する面に、軸方向にスライド可能で一体に回転するよう取り付けられたアーマチュアと、
前記アーマチュアと前記ロータとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、
前記アーマチュアを前記ハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、
前記磁極体内に設けられ、通電により前記付勢手段による付勢力に抗して前記アーマチュアを変位させる励磁コイルと、
前記アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置、接触部と前記検知部との間隔は、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記アーマチュアが接続位置にスライドした際に、前記接触部が前記検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められている摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチにおいて、
前記検知部は、切断用信号線を備え、前記接触部は、接触時に前記切断用信号線を切断する切断刃と通電検知回路とを備え、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記切断刃で切断用信号線を切断し、前記通電検知回路を遮断することで、摩擦板の磨耗度の検知を行うようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチ。
【請求項9】
入力軸又は出力軸の一方に固定されて一体に回転するハブプレートと、
前記入力軸又は出力軸の他方に固定されて一体に回転するロータと、
該ロータを回転可能に支持する磁極体と、
前記ハブプレートの前記ロータに対向する面に、軸方向にスライド可能で一体に回転するよう取り付けられたアーマチュアと、
前記アーマチュアと前記ロータとの互いに対向する面の一方に固着された摩擦板と、
前記アーマチュアを前記ハブプレートに対して近接する方向、又は離反する方向に付勢する付勢手段と、
前記磁極体内に設けられ、通電により前記付勢手段による付勢力に抗して前記アーマチュアを変位させる励磁コイルと、
前記アーマチュアと共に軸方向にスライドする接触部、及び、該接触部に対向して配置、接触部と前記検知部との間隔は、前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記アーマチュアが接続位置にスライドした際に、前記接触部が前記検知部に接触して検知部の電気的な状態を変化させるように定められている摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチにおいて、
前記検知部は、通電検知回路と、この通電検知回路の形成用及び開放用の接点とを備え、また、前記接触部は導通片を備え、
前記摩擦板が所定の摩耗状態になると、前記接触部の導通片の軸方向のスライドにより、接触時に前記接点間を短絡させることで摩擦板の磨耗度の検知を行うようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチ。
【請求項10】
前記付勢手段は、板ばねであり、当該板ばねの一部を前記接触部として利用することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチ。
【請求項11】
前記アーマチュアは、導電体により形成され、一部が前記ロータ側に突出した前記接触部として形成され、前記ロータは、導電体により形成され、前記検知部として機能することを特徴とする請求項7又は8に記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチ。
【請求項12】
前記付勢手段は、板ばねであり、前記摩耗検知手段は、前記接触部及び検知部に代えて、前記板ばねに取り付けられた圧電素子を備え、接続時の該圧電素子の出力を検知することにより、前記板ばねのたわみ量から前記摩擦板の摩耗状態を検知することを特徴とする請求項7又は8に記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えた電磁クラッチ。
【請求項13】
前記磨耗検知手段の出力としてブザーのような音響報知手段又はPCディスプレーのような表示報知手段を用いるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁ブレーキ。
【請求項14】
前記磨耗検知手段の出力としてブザーのような音響報知手段又はPCディスプレーのような表示報知手段を用いるようにしたことを特徴とする請求項7乃至12のいずれかに記載の電磁クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−144786(P2008−144786A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329734(P2006−329734)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】