説明

撥液性硬化性インク組成物

【課題】微量吐出法のみにより、高い撥液性を有する硬化膜を基材上に形成でき、並びに、隣接するパターンが硬化前に接触しても、混じり合わずにパターン形状が維持される撥液剤を提供する。
【解決手段】(a1)炭素数1〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよい)を有するα位置換アクリレート100重量部、(a2)エポキシ基含有モノマー5〜60重量部および(a3)−(RO)で示されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー10〜100重量部を繰返し単位とするフッ素系ポリマー(A)を含有する硬化性インク組成物用撥液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性(特に、光硬化または熱硬化)組成物に特定構造の撥液剤を内添した撥液性硬化性インク用撥液剤に関する。本発明はまた、該撥液剤を含む撥液性硬化性インク組成物を微量吐出法(インクジェット法など)により基板にパターン状に吐出し、その微細な塗膜に硬化させる(特に光硬化または熱を照射して硬化させる)ことにより、表面自由エネルギーが異なる複数の領域から構成されるパターンを基板上に形成することを特徴とする、パターン基板の製造方法に関する。さらに、本発明は、撥液性硬化性インクから得られた硬化膜が基板上に形成されたディスプレイ用カラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用の画素や回路などのデバイスをインクジェットに代表される印刷技術で製造する方法として、以下に示す大気圧プラズマ法(特許文献1)と撥液剤内添法(特許文献2〜3)が提案されている。
【0003】
大気圧プラズマ法は、フォトリソグラフィー法により隔壁を形成した後、CFに代表されるフッ素ガスを大気圧プラズマ法で隔壁に処理することで隔壁を撥液化し、この撥液化された隔壁を撥液バンクとして用い、インクジェット法で開口部にカラーインクを打ち込むことにより、カラーフィルタを製造する方法である。しかし、地球温暖化係数の高いフッ素ガスを用いること、大気圧プラズマ装置を用意すること、撥液化工程が必要なこと、および、隔壁側面まで撥液化されるので、カラーインクが弾いて白抜きの原因となることなどの欠点があった。
【0004】
この大気圧プラズマ法の問題を改良する方法として、撥液剤内添法が提案されている。撥液剤内添法では、撥液剤を内添した隔壁用レジスト材料を基板上に均一塗布し、フォトリソグラフィー法で隔壁をパターニングすることにより、一工程で上面のみが撥液化された隔壁を形成することが可能である。しかし、この方法でも隔壁形成に少なくとも一回はフォトリソグラフィー工程を実施する必要があった。
【0005】
本願の出願人は、特許文献4において、フォトリソグラフィー工程なしのインクジェット法のみでカラーフィルタを製造できる方法を提案した。即ち、フッ素系モノマーを内添した光硬化性インクをインクジェット法でパターニング後、光照射することにより、フォトリソグラフィー工程なしで撥液バンクを形成する方法であった。しかし、この方法で形成した撥液バンクは撥液性が十分ではなく、インクジェット法で吐出したカラーインクが撥液バンクを決壊して、混色する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開99/048339号
【特許文献2】特開2005-315984号公報
【特許文献3】特開2008-287251号公報
【特許文献4】国際公開2006/129800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は次の二つの課題を達成することである。まず一つ目は、フォトリソグラフィー工程なしの微量吐出法(インクジェット法など)のみにより、高い撥液性を有する光硬化または熱硬化膜を基材上に形成する方法、及び特定構造のフッ素系ポリマーから成る撥液剤を内添した光硬化性または熱硬化性インク組成物を提供することである。その際に、
・特定構造の撥液剤は、光硬化または熱硬化組成物(無溶剤の光硬化または熱硬化組成物を含む)に対する相溶性が良好であること
・撥液性光硬化性または熱硬化性インク組成物の光硬化または熱硬化後の撥液性が優れていること
の二つが重要である。
【0008】
本発明の二つ目の目的は、撥液性光硬化性または熱硬化性インク組成物を微量吐出法によってパターニングするとき、隣接するパターンが光硬化または熱硬化前に接触しても、混じり合わずにパターン形状が維持される撥液剤を提供することである。従ってこの特徴を利用することで、3色(赤、緑、青)もしくは4色(赤、緑、青、黄)、又は、これらにそれぞれブラックマトリックス用の黒を加えた4色(赤、緑、青、黒)もしくは5色(赤、緑、青、黄、黒)の撥液性光硬化性または熱硬化性インクを同時に基板にパターニングした後、まとめて光硬化または熱硬化させることで、撥液バンクを必要としない工程数の少ないカラーフィルタの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の繰り返し単位(a1)、(a2)および(a3):
(a1)炭素数1〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレートから誘導された繰り返し単位 100重量部
[α位の置換基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]、
(a2)エポキシ基含有モノマーから誘導された繰り返し単位 5〜60重量部、および
(a3)アルキレンオキサイド基を含有するモノマーから誘導された繰り返し単位 10〜100重量部
を有してなるフッ素系ポリマー(A)を含有する撥液性硬化性インク用撥液剤を提供するものであり、これによって、本発明の課題は達成される。
以下、「インク組成物」を、「インク」または「組成物」と称することもある。「硬化性」とは、特に、光硬化性および/または熱硬化性を意味する。
【0010】
フッ素系ポリマー(A)のフッ素濃度(含フッ素系ポリマーに対するフッ素原子の重量割合)が、好ましくは、10〜40重量%である。
また、フッ素系ポリマー(A)の重量平均分子量が、好ましくは、3,000〜20,000である。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(標準ポリスチレン換算)。
【0011】
フッ素系ポリマー(A)は、さらに、(a4)高軟化点モノマーから誘導された繰り返し単位 5〜110重量部を含んでよい。
【0012】
フッ素系ポリマー(A)は、必要に応じて、溶剤に溶解した形態を有する撥液剤であってもよい。すなわち、撥液剤は、フッ素系ポリマー(A)を溶剤に溶解した溶液であってもよい。溶剤は吐出安定性の観点から沸点が100℃以上の溶剤が好ましく、さらに、沸点が200℃以上の溶剤であることがより好ましい。溶剤は1種類の化合物であっても、2種類以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0013】
本発明はまた、前記撥液剤を含有してなる撥液性硬化性インク(または、インク組成物)を提供する。本発明が提供する撥液性光硬化性インク組成物は、フッ素系ポリマー(A)に加えて、多官能モノマー(B)と光重合開始剤(C)とを含有してなることを特徴とし、さらに、必要に応じて、その他の成分として、単官能モノマー(D)、エポキシ樹脂(E)、重合禁止剤(F)、着色剤(G)、界面活性剤(H)を含んでもよい。また、本発明が提供する撥液性熱硬化性インク組成物は、前記のフッ素系ポリマー(A)に加えて、多官能モノマー(B)、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂(E)、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂、および着色剤(G)をさらに含有してなることを含有してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、撥液性硬化性インク(インク組成物)を用いる撥液性硬化膜の形成方法、該方法を用いるパターン基板の形成方法、撥液性硬化性インクを用いるカラーフィルタの製造方法を提供する。本発明で云う光硬化には、UV硬化も含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬化性インク組成物を用いることで、フォトリソグラフィー工程なしの微量吐出法(インクジェット法など)のみにより、高い撥液性を有する硬化膜を基材上に形成することができ、塗膜撥液性の向上と工程数の削減を図ることができる。
更に、本発明の撥液性硬化性インク組成物を微量吐出法によってパターニングするとき、隣接するパターンが硬化性前に接触しても、混じり合わずにパターン形状が維持される特徴を有することから、3色(赤、緑、青)もしくは4色(赤、緑、青、黄)、又は、これらにそれぞれブラックマトリックス用の黒を加えた4色(赤、緑、青、黒)もしくは5色(赤、緑、青、黄、黒)の撥液性硬化性インクを同時に基板にパターニングした後、まとめて硬化性させることで、工程数の少ないカラーフィルタの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「フッ素系ポリマー(A)の製造に用いるモノマー」
本発明の撥液性硬化性インク組成物用撥液剤で使用するフッ素系ポリマー(A)において、フッ素モノマー(a1)は炭素数1〜8(好ましくは4〜8)のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレートである。α位の置換基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。
フッ素系ポリマー(A)は、さらにエポキシ基含有モノマー(a2)および/またはアルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)を構成単位として含有してよい。
フッ素系ポリマー(A)は、好ましくは、さらに高軟化点モノマー(a4)を含有してよい。
【0017】
フッ素系ポリマー(A)の構成成分(a1)、(a2)および(a3)の量は、それぞれ、
・α位置換アクリレート(a1)100重量部
・エポキシ基含有モノマー(a2)5〜60重量部
・アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)10〜100重量部、好ましくは40〜100重量部、より好ましくは70〜90重量部
である。
フッ素系ポリマー(A)がさらに、高軟化点モノマー(a4)を含む場合は、
・高軟化点モノマー(a4)の量は、5〜110重量部、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは10〜25重量部
である。
α位置換アクリレート(a1)は、フッ素系ポリマー(A)に対して15〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%、例えば40〜50重量%であることが好ましい。
【0018】
フッ素系ポリマー(A)において、フッ素濃度(含フッ素系ポリマーに対するフッ素原子の重量割合)が、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%であってよい。フッ素濃度がこれらの範囲にあると、好ましい撥液性が発揮され、かつ、好ましい相溶性が得られる。
フッ素系ポリマー(A)において、重量平均分子量が、好ましくは3,000〜20,000、より好ましくは5,000〜15,000であってよい。重量平均分子量がこれらの範囲にあると、好ましい撥液性が発揮され、かつ、好ましい相溶性が得られる。
【0019】
α位置換アクリレート(a1)がフッ素系ポリマー(A)に対して40〜50重量%であり、かつ、フッ素系ポリマー(A)のフッ素濃度が15〜25重量%であると、硬化性組成物との相溶性がより一層良好であり、かつ、撥液性硬化性インク組成物の硬化後の撥液性がより一層高くなる。また、フッ素系ポリマー(A)の重量平均分子量が3,000〜20,000であると、撥液レジスト膜中でのフッ素系ポリマー(A)の表面偏析性が優れ、少ない量で十分な撥液性を付与することができる。
【0020】
α位置換アクリレート(a1)は、
式:
【化1】

[式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基もしくは芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、または、−(CHSO−基(nは1〜10)である。
Rfは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)である。]
であることが好ましい。
【0021】
Rfは炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基であることが好ましい。Rfはパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Rfが炭素原子間にエーテル性酸素原子を有している場合には、Rfは、フルオロアルキル基(正確には、オキシフルオロアルキレン基)を繰り返し単位とするフルオロポリエーテル基、特に、パーフルオロアルキル基(正確には、オキシパーフルオロアルキレン基)を構成単位とするパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0022】
α位置換アクリレート(a1)のフルオロルキル基が、エーテル性酸素原子を含まないパーフルオロアルキル基である場合に、パーフルオロアルキル基は直鎖でも分岐構造でも良い。パーフルオロアルキル基の炭素数は、C1〜C6であり、より好ましくはC4〜C6、例えばC6である。具体的には以下のものが例示される。
(直鎖構造) CF3-、CF3CF2-、CF3CF2CF2-、CF3CF2CF2CF2-、CF3CF2CF2CF2CF2-、CF3CF2CF2CF2CF2CF2-、
(分岐構造) (CF3)2CF-、(CF3)3C-、(CF3)2CFCF2-、(CF3)2CFCF2CF2-、(CF3)3CCF2-、(CF32CF CF2CF2CF2-、CF3CF2CF2C(CF3)CF-
【0023】
α位置換アクリレート(a1)のフルオロアルキル基が、炭素原子間にエーテル性酸素原子を含むパーフルオロポリエーテル基である場合は、パーフルオロポリエーテル基を構成するパーフルオロアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、パーフルオロアルキル基の炭素数はC1〜C8、好ましくはC6〜C8であり、前記C1〜C6のパーフルオロアルキル基に加えて、以下のC7〜C8のパーフルオロアルキル基が例示される:
(直鎖構造) CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2-、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2-、
(分岐構造) (CF3)2CFCF2CF2CF2CF2-、(CF3)2CFCF2CF2CF2CF2CF2-、CF3CF2CF2CF2C(CF3)CF-、CF3CF2CF2CF2CF2C(CF3)CF-
【0024】
パーフルオロポリエーテル基において、パーフルオロアルキル基(またはオキシパーフルオロアルキレン基)の数は、2〜200、例えば3〜100、特に4〜50であってよい。
パーフルオロポリエーテル基を構成するオキシパーフルオロアルキレン基(すなわち、パーフルオロポリエーテルセグメント)の具体例は次のとおりである。
−(OCF2)-、
−(OCF2CF2)-、
-(OCF2CF2CF2)-、
−(OCF(CF3)CF2)-、
−(OCF(CF3)CF2CF2)-、
−(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、
−(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、
−(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2CF2)-、
−(OCF(CF3)CF2 CF2CF2CF2CF2CF2)-。
【0025】
パーフルオロアルキル基を含むパーフルオロポリエーテル基:
−(OCF2)a-、
−(OCF2CF2)b-、
-(OCF2CF2CF2)c-、
−(OCF(CF3)CF2)d-、
−(OCF(CF3)CF2CF2)e-、
−(OCF(CF3)CF2CF2CF2)f-、
−(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)g-、
−(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2CF2)h-、および
−(OCF(CF3)CF2 CF2CF2CF2CF2CF2)i-
[式中、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiはそれぞれ0または正の整数であって、2≦a+b+c+d≦200、好ましくは2≦a+b+c+d≦100、さらに好ましくは2≦a+b+c+d≦50を満足する数である。]
から構成されるパーフルオロポリエーテルセグメントを含むものであることが好ましい。
【0026】
パーフルオロポリエーテル基の末端は、CmF2m+1- (m=0〜5、特に1〜3)でキャップされていることが好ましい。
【0027】
パーフルオロポリエーテル基含有α位置換アクリレートの具体例として、式(II):
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2O(C=O)C(X)=CH2 (m=1〜3) (式II)
[式中、α位の置換基Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]
等の化合物が挙げられる。
【0028】
Rfが(炭素原子間に)エーテル性酸素原子を含まないフルオロアルキル基である場合、特に炭素数4〜6のフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)であることが好ましい。
Rfが炭素原子間にエーテル性酸素原子を含むパーフルオロポリエーテル基である場合、特に炭素数6〜8のパーフルオロアルキル基を構成単位とするパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0029】
α位置換アクリレート(a1)の具体例は、次のとおりである。
Rf−CH−O−(O=C)C(CH)=CH
Rf−CHCH−O−(O=C)C(CH)=CH
【化2】

【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
[式中、Rfは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)である。]
【0034】
エポキシ基含有モノマー(a2)は、フッ素原子を含有しないモノマーであることが好ましい。エポキシ基含有モノマー(a2)は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。エポキシ基含有モノマー(a2)の例は、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも本発明においては、グリシジル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0035】
アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)は、フッ素原子を含有しないモノマーであることが好ましい。アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)は、(メタ)アクリレートであることが好ましい。アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)は、アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)のアルキレンオキサイド基の例は、式:
−(RO)
[式中、Rは−(CH)−または−(CH)−、
は水素またはメチル基、
nは1〜10である。]である。
【0036】
アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)としては、
CH=CRCOO(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、RおよびRは水素またはメチル基、nは1〜10である。]
を使用しても良い。
モノマー(a3)は、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、日本油脂製ブレンマーAPシリーズ(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)であるAP-400:n≒6、AP-550:n≒9、AP-800:n≒13、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)であるPE-90:n≒2、PE-200:n≒4.5、PE-350:n≒8、ブレンマーPPシリーズ (ポリプロピレングリコールモノメタクリレート)であるPP-1OOO:n≒4〜6、PP-500:n≒9、PP-800:n≒13、ブレンマーPMEシリーズ(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)であるPME-1OO:n≒2、PME-200:n≒4、PME-400:n≒9、PME-1OOO:n≒23、PME-4000:n≒90 などが例示される。
【0037】
前記フッ素系ポリマー(A)の(a3)のアルキレンオキシ基末端の水酸基にイソシアネート基含有不飽和化合物が反応させてあってよい。これによりラジカル重合可能な不飽和基をフッ素系ポリマー(A)に導入することが可能である。
【0038】
フッ素系ポリマー(A)調製のために共重合される高軟化点モノマー(a4)は、
・ホモポリマーの状態でガラス転移点または溶融点が100℃以上、特に120℃以上のモノマーである。
また、高軟化点モノマー(a4)は、
・CH=C(R)COOR
[RはHまたはCH、Rは、炭素数4〜20で水素原子に対する炭素原子の比率が0.58以上の飽和アルキル基である。]
であることが好ましい。Rの例は、イソボルニル、ボルニル、フェンシル(以上はいずれもC10H17、炭素原子/水素原子=0.58)、アダマンチル(C10H15、炭素原子/水素原子=0.66)、ノルボルニル(C7H12、炭素原子/水素原子=0.58)などの架橋炭化水素環が挙げられる。これらの架橋炭化水素環に水酸基やアルキル基(炭素数が、例えば1〜5)が付いていても良い。
【0039】
高軟化点モノマー(a4)の例は、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、およびアダマンチル(メタ)アクリレート等である。ノルボルニル(メタ)アクリレートの例は、3-メチル-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、1,3,3-トリメチル-ノルボルニル(メタ)アクリレート、ミルタニルメチル(メタ)アクリレート、イソピノカンファニル(メタ)アクリレート、2-{[5-(1’,1’,1’-トリフルオロ-2’-トリフルオロメチル-2’-ヒドロキシ)プロピル]ノルボルニル }(メタ)アクリレート等である。アダマンチル(メタ)アクリレートの例は、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル-α-トリフルオロメチル(メタ)アクリレート等である。
【0040】
ガラス転移点および融点は、それぞれJIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」で規定される補外ガラス転移終了温度(Teg)、融解ピーク温度(Tpm)とする。フッ素系ポリマー(A)の繰り返し単位に、ホモポリマーの状態でガラス転移点あるいは融点が100℃以上の高軟化点モノマー(a4)を用いると、硬化性組成物との相溶性が優れる効果に加え、撥液性硬化性インク組成物の撥液性をさらに向上する効果もある。
【0041】
「フッ素系ポリマー(A)の製造」
フッ素系ポリマー(A)は以下のようにして製造することができる。モノマーおよび必要な成分を溶媒に溶解させ、窒素置換後、重合触媒を加えて20〜120℃、好ましくは50〜90℃の範囲で、1〜20時間、好ましくは3〜8時間、攪拌する方法が採用される。
重合触媒としては特に制限はなく、例えば、通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系ラジカル重合開始剤やベンゾイルパーオキシド(BPO)等の過酸化物系ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
重合反応形式としては特に制限はなく、例えば、乳化重合、溶液重合およびバルク重合等が挙げられる。
重合反応は無溶媒(バルク)重合でもよいが、通常は溶媒の存在下に実施される。重合溶媒は有機溶媒および水溶性有機溶媒などが使用できる。溶媒は重合組成物中に40〜80重量%の範囲で用いられる。
【0042】
フッ素系ポリマー(A)の分子量を調整するためにメルカプタン類やハロゲン化アルキル類などの連鎖移動剤を添加しても良い。メルカプタン類としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール、メルカプト酸イソオクチル、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸メトキシブチル、シリコーンメルカプタン(信越化学製 KF−2001)などが、ハロゲン化アルキル類としては、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(a3)のような水酸基含有モノマー単体とメルカプタン単体が直接接触すると、溶媒不溶物が生成する場合があるので、これらを併用して重合する場合は予めいずれか一方を溶媒で希釈することが望ましい。
【0043】
フッ素系ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜20,000、より好ましくは5,000〜15,000である。フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(標準ポリスチレン換算)。
【0044】
本発明はまた、本発明の撥液剤を含有してなる撥液性硬化性インクを提供する。即ち本発明は、撥液剤(またはフッ素系ポリマー(A))、多官能モノマー(B)および着色剤(G)を含んでなる撥液性硬化性インクを提供する。本発明は、フッ素系ポリマー(A)、多官能モノマー(B)、光重合開始剤(C)および着色剤(G)を含有してなる撥液性光硬化性インクを提供し、また、フッ素系ポリマー(A)、多官能モノマー(B)、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびシクロペンタジエン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の非フッ素系樹脂(E)、並びに着色剤(G)を含有してなる撥液性熱硬化性インクを提供する。必要により、硬化性インク(特に、撥液性光硬化性インクおよび撥液性熱硬化性インク)は、単官能モノマー(D)、重合禁止剤(F)、および/または界面活性剤(H)を含んでもよい。
【0045】
インクにおいて、フッ素系ポリマー(A)100重量部に対して、
多官能モノマー(B)の量は、100〜400重量部、例えば150〜300重量部、
光重合開始剤(C)の量は、50重量部以下、例えば10〜40重量部、
単官能モノマー(D)の量は、800重量部以下、例えば100〜700重量部、
非フッ素系樹脂(E)の量は、500重量部以下、例えば30〜400重量部、
重合禁止剤(F)の量は、0.4重量部以下、例えば0.01〜0.3重量部、
着色剤(G)の量は、0.001〜20重量部、例えば0.01〜10重量部、
界面活性剤(H)の量は、2重量部以下、例えば0.01〜1重量部であってよい。
【0046】
「撥液性光硬化(UV硬化を含む)インク組成物」
本発明の撥液性光硬化性インクは、前記のフッ素系ポリマー(A)、多官能モノマー(B)および光重合開始剤(C)を含有してなることを特徴とし、さらに、必要に応じて、その他の成分として、単官能モノマー(D)、エポキシ樹脂(E)、重合禁止剤(F)、着色剤(G)および界面活性剤(H)を含んでもよい。
【0047】
〈多官能モノマー(B)〉
本発明における(B)成分の多官能モノマーとしては、光開始剤もしくは熱開始剤によって生成するラジカルまたはイオンにより重合させるものであれば特に限定しない。多官能モノマー(B)は、フッ素原子を含まない、2以上、例えば2〜6の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0048】
多官能モノマー(B)の具体例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アルリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上を併用することもできる。
【0049】
〈光重合開始剤(C)〉
光重合開始剤(C)は、光の照射によりラジカルを発生する性質を有する限り特に限定されない。
【0050】
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンジル(またはジベンゾイル)、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド類およびジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。フッ素系ポリマー中にエポキシ基含有モノマー(a2)が含有される場合は、特開2003-76012号公報に記載されるキノンジアジド基含有化合物を用いても良い。
【0051】
光重合開始剤(C)の市販品としては、
IRGACURE 651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、
IRGACURE 184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、
IRGACURE 2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、
IRGACURE 127:2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、
IRGACURE 907:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、
IRGACURE 369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、
IRGACURE 379:2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、
IRGACURE 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、
IRGACURE 784:ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、
IRGACURE OXE 01:1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、
IRGACURE OXE 02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、
IRGACURE261、IRGACURE369、IRGACURE500、
【0052】
DAROCUR 1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、
DAROCUR TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、
DAROCUR1116、DAROCUR2959、DAROCUR1664、DAROCUR4043、
IRGACURE 754 オキシフェニル酢酸:2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、
IRGACURE 500:IRGACURE 184:ベンゾフェノン=1:1の混合物、
IRGACURE 1300:IRGACURE 369:IRGACURE 651= 3:7の混合物、
IRGACURE 1800 :CGI403:IRGACURE 184=1:3の混合物、
IRGACURE 1870:CGI403:IRGACURE 184=7:3の混合物および
DAROCUR 4265:DAROCUR TPO:DAROCUR 1173= 1:1の混合物
などが例示される。ここでIRGACUREはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、DAROCURはメルクジャパン製である。
【0053】
また、増感剤として、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどを、重合促進剤として、DAROCUR EDB(エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート)、DAROCUR EHA(2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート)などを併用しても良い。
【0054】
〈単官能モノマー(D)〉
単官能モノマーは光重合開始剤から生成するラジカルまたはイオンにより重合されるものであれば特に限定しない。単官能モノマー(D)は、(メタ)アクリル酸、またはフッ素原子を含まず1つの(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0055】
単官能モノマー(D)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上を併用することもできる。
【0056】
非フッ素系樹脂(E)
本発明の撥液性光硬化性インク組成物は非フッ素系樹脂(E)を含んでもよい。非フッ素系樹脂(E)は、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシクロペンタジエン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂である。
非フッ素系樹脂(E)は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0057】
〈エポキシ樹脂〉
本発明の撥液性光硬化性インク組成物はエポキシ樹脂を含んでもよい。
エポキシ樹脂を含むと、得られた硬化膜の耐久性が向上するため好ましい。
エポキシ樹脂の具体例としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」、「エピコート1004」、「エピコート1256」(以上、三菱化学(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「EHPE−3150」(以上、ダイセル化学工業(株)製)、商品名「テクモアVG3101」((株)プリンテック製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0058】
メラミン樹脂の例は、メラン265、メラン2650L(以上、日立化成工業(株)製)である。
尿素樹脂の例は、アドブルー(以上、日本化成(株)製)である。
アルキド樹脂の例は、DIC(株)製の各種アルキド樹脂である。
フェノール樹脂の例は、明和化成(株)製のフォトレジスト用ベース樹脂である。
シクロペンタジエン樹脂の例は、日立化成工業(株)製の各種シクロペンタジエンである。
【0059】
〈重合禁止剤(F)〉
本発明の撥液性光硬化性インク組成物は、重合禁止剤を含んでもよい。
重合禁止剤を含むと、保存安定性が向上するので好ましい。
重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ビロガロール、ヒドロキノン、ブチルヒドロキシトルエン、フェノチアジン等が挙げられる。
【0060】
〈着色剤(G)〉
本発明の撥液性光硬化性インク組成物には、本発明の撥液性光硬化性インク組成物の特性を損なわない範囲で、着色剤(G)を含有させてもよい。本発明のインクに着色剤(G)を含有させることにより、本発明の組成物から得られる硬化膜をディスプレイ用のカラーフィルタに用いられるブラックマトリックスなどの隔壁や画素形成などの用途に用いることができる。
【0061】
着色剤(G)は、顔料であっても染料であってもよい。
【0062】
〈界面活性剤(H)〉
本発明の撥液性光硬化性インク組成物に、基材への濡れ性、レベリング性または塗布性向上などを目的として、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、または、フッ素系界面活性剤などを含有してもよい。これらの界面活性剤は1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
〈その他成分〉
・溶媒
本発明の撥液性光硬化性インク組成物には、必要に応じて溶媒、例えば、水溶性有機溶媒、有機溶媒(特に、油溶性有機溶媒)または水)を加えても良い。また、同じ種類の溶媒がフッ素系ポリマー(A)を製造するためにも用いられる。溶媒は、フッ素系ポリマー(A)に不活性でこれを溶解するものである。
撥液性光硬化性インク組成物に含まれる溶媒としては、吐出安定性の観点から沸点が100℃以上の溶媒が好ましく、さらに、沸点が200℃以上の溶剤であることがより好ましい。溶剤は1種類の化合物であっても、2種類以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0064】
沸点が100℃以上である溶媒の具体例としては、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(=ブチルカルビトールアセテート)(BCA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコール、3−メトキシブチルアセテート(MBA)、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、クロロホルム、HFC141b、HCHC225、ハイドロフルオロエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、メシチレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。
【0065】
これらの溶媒の中でも、フッ素系ポリマーおよび撥液性光硬化性インク組成物の溶解性、吐出安定性の観点から、特にPGMEA、BCA、またはMBAが好ましい。
溶媒は撥液性光硬化性インク組成物中に、0〜80重量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは、0〜70重量%、例えば5〜60重量%である。
【0066】
本発明の撥液性熱硬化性インク組成物は、カラーフィルタ用熱硬化性インク組成物にフッ素系ポリマー(A)を添加したものであって良い。具体的には、多官能性モノマー、バインダー樹脂、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を含有するカラーフィルタ用熱硬化性インクに(国際公開公報WO/2010/137702号、WO/2010/137702号及び特開平9-21910号)、本発明のフッ素系ポリマー(A)を添加したものであってよい。また、赤、緑、青、各色の顔料、界面活性剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂などの少なくとも1種を含有するカラーフィルタ用熱硬化性インク組成物(特開平9-21910号)に本発明のフッ素系ポリマー(A)を添加したものであってよい。例えば、前述の光硬化性インク組成物から光重合開始剤(C)を除いたものに、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂などの少なくとも1種の樹脂を加え、更に本発明のフッ素系ポリマー(A)を添加したものである。
【0067】
本発明はまた、撥液性光硬化性インクを微量吐出法で基材に吐出して、基材上に光硬化組成物の塗膜を形成した後、塗膜に光を照射して硬化させることにより硬化膜を形成する工程を含む、硬化膜の形成方法を提供する。
本発明はまた、本発明の撥液性熱硬化性インクを微量吐出法で基材に吐出して、基材上に熱硬化組成物の塗膜を形成した後、塗膜を熱処理して硬化させることにより硬化膜を形成する工程を含む、硬化膜の形成方法を提供する。
【0068】
本発明において、撥液性光硬化性インクまたは熱硬化性インクを微量吐出法で基材に吐出して、基材上に硬化組成物の塗膜を形成させる際に光照射と熱処理を併用しても良い。その順番は、光照射→熱処理であっても、熱処理→光照射であっても良い。
本発明はまた、上記微量吐出法として、インクジェット法、ノズルプリンティング法またはマイクロディスペンサー法のいずれかである硬化膜の形成方法を提供する。
本発明はまた、前記の硬化膜の形成方法を用いて少なくとも1つの撥液領域と少なくとも1つの親液領域を得る、パターン基板の形成方法を提供する。
【0069】
本発明の撥液性硬化性インクは、前述のとおり微量吐出法により基板に塗布されることが望ましい。微量吐出法は特に限定されないが、インクジェット法(例えば、特開平10−153967号公報)、ノズルプリンティング法(例えば、特開2002−75640号公報)、ディスペンサ法のいずれかの方法が好ましい。ノズルプリンティングは数十個の微細ノズルを設けたヘッドをマルチ化し、一筆書きでインクを微量吐出する方法である。
また、ディスペンサ法とは液体定量吐出装置を用いた方法であり、材料の定量供給方式は、流量制御方式、加圧ON/OFF型、流路ON/OFF型、容積計量方式、計量室固定型、計量室変化型のように分類される。
【0070】
本発明はまた、それぞれ独立に赤、緑および青の各三色に着色した本発明のインク3種を、微量吐出法で基材に吐出して、基材上に光硬化もしくは熱硬化組成物の塗膜を形成した後、光硬化もしくは熱効果に応じてそれぞれ塗膜に光照射もしくは熱処理して硬化させることにより硬化膜を形成する工程を含むことを特徴とする、ディスプレイ用カラーフィルタの製造方法を提供する。この方法において、硬化膜の形成工程が、少なくとも1つの撥液領域と少なくとも1つの親液領域とからなるパターン基板を形成することを特徴とする。
【0071】
本発明はまた、それぞれ独立に赤、緑および青の三色のインクに、さらに、黄色に着色したインクを加えた4種のインクを用いたディスプレイ用カラーフィルタの製造方法を提供する。
本発明はまた、さらに、ブラックマトリックス用の黒色に着色したインクを加えた4種もしくは5種のインクを用いることを特徴とする、ディスプレイ用カラーフィルタの製造方法を提供する。
本発明はまた、前記の製造方法で製造された、ディスプレイ用カラーフィルタを提供する。
本発明で製造されたディスプレイ用カラーフィルタの用途は、電子看板(デジタルサイネージ)が特に好ましい。電子看板用のカラーフィルタはテレビ用の高精細カラーフィルタと比べて、画素が粗いために、微量吐出法による製造が容易である。
【0072】
更に、本発明の撥液性硬化性インク組成物を微量吐出法によってパターニングするとき、隣接するパターンが硬化前に接触しても、混じり合わずにパターン形状が維持される特徴を有することから、3色(赤、緑、青)もしくは4色(赤、緑、青、黄)、又は、これらにそれぞれブラックマトリックス用の黒を加えた4色(赤、緑、青、黒)もしくは5色(赤、緑、青、黄、黒)の撥液性硬化性インクを同時に基板にパターニングした後、まとめて硬化させることで、撥液バンクを必要としない工程数の少ないカラーフィルタの製造方法を提供することができる。この際、使用するすべての色のインクに撥液剤を添加しても良いし、特定の色のみに撥液剤を添加しても良い。例えば、赤、緑、青の三色を用いる場合、これら三色のすべてに撥液剤を添加しても良いし、赤/緑、赤/青、緑/青の二色に撥液剤を添加しても良いし、三色のいずれか一色に撥液剤を添加しても良い。
本発明で撥液バンクを形成せずに、カラーフィルタを製造する場合は、インクが基板上で濡れ拡がることを防止するために、基板上に受像層を設けても良い。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。以下において、「部」および「%」は、特記しない限り、「重量部」および「重量%」を表す。
【0074】
「フッ素系ポリマー(A)を含む撥液剤の組成」
以下の実施例および比較例で用いるフッ素系ポリマー(A)を含む撥液剤の組成を以下に示す:
〈撥液剤A−1〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA/iBMA=45/10/35/10(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:BCA 50重量%
〈撥液剤A−2〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA/ iBMA=45/10/30/15(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:BCA 50重量%
〈撥液剤A−3〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA/ iBMA=45/10/20/25(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:BCA 50重量%
〈撥液剤A−4〉:
・ポリマー:PFPE(C8)メタクリレート/GMA/HEMA/iBMA=45/10/20/25(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:BCA 50重量%
〈撥液剤A−5〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA/iBMA=60/10/20/10(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:BCA 50重量%
【0075】
〈撥液剤A−6〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/MAA/GMA/HEMA=45/15/25/15(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:MBA 50重量%
〈撥液剤A−7〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/MAA/GMA/HEMA=60/15/5/20(重量比)から成る共重合体 50重量%
・溶剤:MBA 50重量%
〈撥液剤A−8〉:
・フッ素系モノマー:Rf(C4)α-Cl アクリレート
〈撥液剤A−9〉:
・フッ素系モノマー:Rf(C6)α-Cl アクリレート
〈撥液剤A−10〉:
・ポリマー:Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA/iBMA=45/10/35/10(重量比)から成る共重合体 30重量%
・溶剤:PGMEA 70重量%
【0076】
各撥液剤の撥液性ポリマーのフッ素濃度を後述の表2に示した。
含フッ素ポリマーのフッ素濃度は燃焼法によるFイオンメーターで測定した。用いたFイオンメーターは、Thermo Electron Corporation 社製 ORION 720Aである。
【0077】
上記式中の略称は以下のとおりである:
Rf(C4)α-Clアクリレート: C4F9-CH2CH2-O(C=O)C(Cl)=CH2
Rf(C6)α-Clアクリレート: C6F13-CH2CH2-O(C=O)C(Cl)=CH2
PFPE(C8) メタクリレート: C3F9-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)-CH2-O(C=O)C(CH3)=CH2
MAA:メタクリル酸
GMA:グリシジルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
iBMA:イソボルニルメタクリレート
BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(=ブチルカルビトールアセテート)
MBA:3−メトキシブチルアセテート
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0078】
「UV硬化組成物の成分」
<多官能モノマー(B)>
B−1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
B−2:1, 6−ヘキサンジオールジアクリレート
B−3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0079】
<光重合開始剤(C)>
C−1:Irgacure 907 [商品名:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
<熱重合開始剤(C)>
C−2:AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)
【0080】
<単官能モノマー(D)>
D−1:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
D−2:メチルメタクリレート
【0081】
<エポキシ樹脂(E)>
E−1:テクモアVG3101
<メラミン樹脂>
E−2:スミテックレジンM-3
E−3:アクセレレータACX(メラミン樹脂硬化剤)
【0082】
<重合禁止剤(F)>
F-1:フェノチアジン
【0083】
実施例1〜10および比較例1〜3
表1に示す配合割合で各配合成分を混合溶解して、撥液性UV硬化および熱硬化性インク組成物を調製した(表1内の数値は「重量%」を表わす)。実施例1〜9および比較例1〜3が撥液性UV硬化性インク組成物であり、実施例10が撥液性熱硬化性インク組成物である。なお、本例においては、実験を簡略化するために着色剤を配合していないが、着色剤を配合しても本質的な効果に違いはない。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例1〜10または比較例1〜3で得られた撥液性UV硬化および熱硬化性インク組成物、および硬化膜の評価方法は以下の通りである。
【0086】
「フッ素系ポリマー(A)を含む撥液剤単独膜の撥液性」
撥液剤の静的接触角を全自動接触角計DropMaster701(協和界面科学製)を用いて次の方法で測定した。本発明の撥液剤をシリコンウエハ(3cm×3cm)上にスピンコート法(2000rpm、30秒)により均一に塗布し、ホットプレートで110℃、3分加熱することにより、測定サンプルを作成した。サンプル上にマイクロシリンジから水、n-ヘキサデカン、または、ブチルカルビトールアセテート(BCA)をそれぞれ2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求めた。
【0087】
「撥液剤のUV硬化または熱硬化性インク組成物に対する相溶性」
インク組成物に撥液剤を配合させて調製した撥液性UV硬化または熱硬化性インクの外観を観察し、撥液剤のインク組成物に対する相溶性を観察した。
相溶性が良好なものから順に
◎>○>△>×
と評価した。
【0088】
「UV硬化または熱硬化膜の撥液性(UVまたは熱照射後)」
本発明の撥液領域は微小な面積であるので、そのままでは接触角を測定することができない。そこで、接触角を測定するために次の方法で大面積の撥液領域を作製した。本発明の撥液性UV硬化または熱硬化性インク組成物をシリコンウエハ(3cm×3cm)上にスピンコート法(2000rpm、30秒)により均一に塗布し、撥液性UV硬化性インク組成物(実施例1〜9、比較例1〜3)の場合は窒素雰囲気下で積算照度1000mJ/cmの紫外線(g線、h線、i線から成る混合スペクトル)を照射することにより塗膜を硬化させた。撥液性熱硬化性インク組成物(実施例10)の場合はホットプレート上で80℃で3分間、熱処理することにより塗膜を硬化させた。接触角は、水平に置いた基材に、マイクロシリンジからBCAを2μL滴下し、全自動接触角計で滴下5分後の接触角を測定し、結果を以下のように評価した。
○:接触角が30°以上を維持、△:20°以上を維持、×:20°以下に低下
【0089】
「UV硬化前のラインパターン形状保持特性」
フッ素系シランカップリング剤(パーフルオロヘキシルエチルトリメトキシシラン)で疎水化したガラス基板上に、インクジェット法により撥液性UV硬化性または熱硬化性インクを、ドット密度40μmの間隔で基板に吐出することにより、隣接した複数のラインパターン(線幅40μm)を描画した。インクジェット装置はLitrex 70(Litrex社製)を用い、一滴当たりの容量15pLとした。描画5分後のラインパターンの形状保持性を光学顕微鏡で観察し、結果を以下のように評価した。
○:完全に維持
△:隣接するラインと混じり合う箇所が存在する
×:隣接するラインと完全に混じり合う
【0090】
撥液剤中のフッ素系ポリマー(A)のフッ素濃度(重量%)、重量平均分子量および撥液剤単独膜の静的接触角を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
また、表1で示した実施例1〜10および比較例1〜3の撥液性UV硬化性および熱硬化性インク組成物の評価結果を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
表3に示すように、実施例1〜10では、撥液剤のUVまたは熱硬化組成物への良好な相溶性を示すとともに、UV照射または熱処理後の硬化膜は高い撥液性を示した。一方、比較例1では、撥液剤がUV硬化組成物に溶解しなかった。
【0095】
比較例1のフッ素系ポリマーをフッ素系モノマーに置き換えた比較例2および3において、UV硬化組成物との相溶性は良好であったが、UV照射後の硬化膜の撥液性は低い値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る特定構成の含フッ素ポリマーを有して成る撥液性硬化性インク組成物用撥液剤、並びに該撥液剤を含有する光または熱硬化性インク組成物は、ディスプレイ用の画素や回路などのデバイス及びディスプレイ用カラーフィルタ等を、インクジェットに代表される印刷技術で製造する方法として利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の繰り返し単位(a1)、(a2)および(a3):
(a1)炭素数1〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレートから誘導された繰り返し単位 100重量部
[α位の置換基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]、
(a2)エポキシ基含有モノマーから誘導された繰り返し単位 5〜60重量部、および
(a3)アルキレンオキサイド基を含有するモノマーから誘導された繰り返し単位 10〜100重量部
を有してなるフッ素系ポリマー(A)を含有する撥液性硬化性インク用撥液剤。
【請求項2】
フッ素系ポリマー(A)のフッ素濃度が10〜40重量%である、請求項1に記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項3】
フッ素系ポリマー(A)の重量平均分子量が3,000〜20,000である、請求項1または2に記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項4】
フッ素系ポリマー(A)の繰返し単位が、さらに、
(a4)高軟化点モノマー 5〜110重量部
を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項5】
フルオロアルキル基が炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項6】
フルオロアルキル基が炭素数6〜8のパーフルオロポリエーテル基である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項7】
フッ素系ポリマー(A)が20〜60重量%の濃度でグリコール系溶剤に溶解した形態を有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項8】
α位置換アクリレート(a1)は、
式:
【化1】

[式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基もしくは芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、または、−(CHSO−基(nは1〜10)である。
Rfは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)である。]
で示される、請求項1〜7のいずれか1つの記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項9】
エポキシ基含有モノマー(a2)は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリレートである、請求項1〜8のいずれか1つの記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項10】
アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)において、アルキレンオキサイド基が、式:
−(RO)
[式中、Rは−(CH)−または−(CH)−、
は水素またはメチル基、
nは1〜10である。]
で示される、請求項1〜9のいずれか1つの記載の硬化性インク用撥液剤。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1つに記載の撥液剤を含有してなる硬化性インク。
【請求項12】
多官能モノマー(B)、光重合開始剤(C)および着色剤(G)をさらに含有してなる、請求項11に記載の撥液性光硬化性インク。
【請求項13】
多官能モノマー(B)、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびシクロペンタジエン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の非フッ素系樹脂(E)、並びに着色剤(G)をさらに含有してなる、請求項11に記載の撥液性熱硬化性インク。
【請求項14】
請求項11または12に記載の撥液性光硬化性インクを微量吐出法で基材に吐出して、基材上に光硬化組成物の塗膜を形成した後、塗膜に光を照射して硬化させることにより硬化膜を形成する工程を含む、硬化膜の形成方法。
【請求項15】
請求項11または13に記載の撥液性熱硬化性インクを微量吐出法で基材に吐出して、基材上に熱硬化組成物の塗膜を形成した後、塗膜を熱処理して硬化させることにより硬化膜を形成する工程を含む、硬化膜の形成方法。
【請求項16】
微量吐出法がインクジェット法、ノズルプリンティング法またはマイクロディスペンサー法のいずれかである、請求項14または15に記載の硬化膜の形成方法。
【請求項17】
請求項14または15に記載の硬化膜の形成方法を用いて少なくとも1つの撥液領域と少なくとも1つの親液領域を得る、パターン基板の形成方法。
【請求項18】
それぞれ独立に赤、緑および青の各三色に着色した請求項11〜13のいずれか1つに記載のインク3種を、微量吐出法で基材に吐出して、基材上に光硬化もしくは熱硬化組成物の塗膜を形成した後、光硬化もしくは熱効果に応じてそれぞれ塗膜に光照射もしくは熱処理して硬化させることにより硬化膜を形成する工程を含むことを特徴とする、ディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項19】
硬化膜の形成工程が、少なくとも1つの撥液領域と少なくとも1つの親液領域とからなるパターン基板を形成するものである、請求項18に記載のディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項20】
それぞれ独立に赤、緑および青の三色のインクに、さらに、黄色に着色したインクを加えた4種のインクを用いた、請求項18または19に記載のディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項21】
さらに、ブラックマトリックス用の黒色に着色したインクを加えた4種もしくは5種のインクを用いた、請求項18〜20のいずれか1つに記載のディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか1つに記載の製造方法で製造された、ディスプレイ用カラーフィルタ。
【請求項23】
請求項18〜21のいずれか1つに記載の製造方法で製造された、電子看板用途で使用されるディスプレイ用カラーフィルタ。

【公開番号】特開2013−57059(P2013−57059A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175503(P2012−175503)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】