説明

撮像システム内で流れ領域を識別するセグメンテーション・ツール

体積内の流れ領域を識別する超音波システム及び方法である。システムは、ターゲット画像から動きデータを収集する調査システム、動きデータに基づき画像内の流れの領域を写像するセグメンテーションシステム、画像内の流れ画像データの集合を流れの領域に自動的に制限する流れ獲得システムを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して超音波撮像システムに関連し、より特定的には超音波撮像処理を最適化するシステム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
技術の絶え間ない進歩により、超音波診断は依然として今日の最も重要な医療ツールの1つである。1960年代半ばから、連続的な進歩が超音波の臨床的な価値を高め、その可能性、精度、及び使いやすさを高めてきた。リアルタイム3次元撮像法といった近年の進歩は、比較的短い検査中に、血流や他の動きデータ等の重要な詳細を収集するのに使用されうる。この種類のデータは、心臓全体の血流の異常が心臓病の指標となりうる、心臓学の分野において特に有用である。
【0003】
残念ながら、超音波データは音波を用いて収集されるため、組織内の音の速度の物理的な限界を受ける。特に、超音波データは、見る方向又は視線に沿って音響パルスを送信し、次に同じ線に沿ったエコーを聴くトランスデューサで獲得される。一組の隣接する線から集められた受信されたエコー情報は、例えば、モニタ上に表示されうる画像を形成するために処理及び使用されうる。特定の実施に依存して、線の数及び密度は変化する。2次元(2D)画像の場合、線はフレームを形成し、3次元(3D)画像の場合、線は体積(ボリューム)を形成する。超音波情報は、一般的には、一連のフレーム又は体積としてリアルタイムで表示されるため、画像(即ちフレーム又は体積)を形成するのにかかる時間は、多くの用途において重要である。特に、時間があまりにも長い場合、フレームレート又はボリュームレートは、動く組織(例えば、血液又は胎児の解剖学的構造)の超音波撮像には遅すぎることがある。
【0004】
画像内の任意の流れの速度及び方向を示す色画像を生成するカラーフロードップラは、上述の問題を特に受けやすい。動きは、同じ軸に沿って形成された多数の受信されたエコー線に対する受信されたエコー信号の差を解析することによって検出される。この種類のデータは、血流速度、逆流等を含む重要な解析的な情報を提供しうる。しかしながら、角視線に沿った流れの検出は、多くの送信/受信周期の使用を必要とするため、カラーフロードップラの使用は、画像を形成するのにかかる時間をかなり増加させ、従って、フレーム又は画像レートを更に減少させる。従って、画像体積全体に亘るカラーフロードップラの収集は、ドップラ位相シフト情報を取得するのに必要な送信/受信周期の数による捕捉レートのかなりの減少により、多くの臨床用途で現実的ではない。
【0005】
フレームレートが遅すぎる場合、結果として得られる超音波画像は、画像化アーティファクト及び歪みを導入することにより生理的条件を誤って表わしうる。従って、例えば心臓の僧帽弁を通る逆流を分析すること等の、カラーフロードップラを含む幾つかの用途に対して、不適切な画像レートの副次的な悪影響は、超音波撮像装置の診断上のパフォーマンスを制限しうる。
【0006】
組織中の音速の物理的な限界によって悪影響を受ける超音波に対する他の提案される用途は、続くオフラインの又は遡及的な分析のためのデータの獲得である。このシナリオでは、続く診断が当該データからなされうるよう患者内の領域から十分な超音波データが獲得されうる。かかるアプローチの利益は、数倍である。1つの場合、主治医は、超音波データをそこから収集すべき例えば患者の心臓等の全体的な関心領域の位置を見つけることのみが必要である。3次元体積からデータを獲得することが可能な超音波スキャナの使用により、診断を行う医師は、診断を行うのに必要なデータの特定の成分を取得するよう、獲得されたデータを通じてナビゲートしうる。このように、患者からデータを獲得するのに必要な時間は、検査中ではなく、検査後に診断が行われることを可能とすることにより最小化される。このアプローチは、診断している医師が、患者の検査とは異なる時間及び異なる位置の両方で診断機能を行うことを可能とする。更に、診断が検査中に行われるときに必要とされるよりも少ない技術を有する医師を使うことが可能である。このアプローチの使用は、診断を形成するのに必要な全てのデータが検査中に獲得されることを必要とする。
【0007】
多くの検査の1つの重要な要素は、撮像されている解剖学的構造の潜在的に病気の部分から流れデータを獲得することである。かかる領域の検出は、関心となる解剖学的構造及び生理機能に対応する血流条件を検出する超音波スキャナ内のアルゴリズムを用いて達成されうる。これの例は、一般的なカラーフロー・ドップラ・シグナチャを有する僧帽弁逆流を一般的に見つけることである。このような領域が超音波スキャナに基づくアルゴリズムを用いて識別されると、超音波スキャナは、連続(CW)又はパルス波(PW)ドップラといった専門化された獲得を自動的に行うようにされる。
【0008】
心臓学の分野で提案されているこの用途は、短い期間(例えば、数心臓サイクル)内に患者の心臓からスペクトルドップラデータ及びグレースケール・エコー・データを得ることを求める。このようなシステムは、僧帽弁における血流速度等の全ての関心領域からのデータを獲得する。医師は後の時間まで情報を見ないため、検査時間はかなり減少する。残念ながら、体積全体に対してデータを収集するためのスペクトルドップラの適用は、例えばドップラ・サンプル体積の配置(即ち、ドップラデータが獲得される点)が非常に特定的であるため実際的でない。
【0009】
1つの解決策は、技術者が、様々な関心点においてドップラ・サンプル点の配置を選択的に識別し、これらの点からのみデータを収集することを可能とすることである。しかしながら、かかる処理は、ドップラ・サンプル体積を正確に位置決めするための技術者の能力に限られている。技術者が関心点を正確に捕捉することに失敗すれば、結果は、後の時間においてオフラインの分析が行われる時まで知られず、テストは再スケジュールされる必要がある。
【0010】
それでも、リアルタイム・カラー・フロー・ドップラ及びスペクトルドップラといった進んだ超音波技術に対してはかなりの潜在的な利益が存在する。しかしながら、上述の限界が扱われるまで、進んだ超音波技術の使用は制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、関心領域、即ち組織の動き又は血液の流れを含むものを自動的に識別する超音波システムを与えることによって上述の問題を扱う。関心領域がいったん識別されると、進んだ超音波モダリティ、即ちカラーフロー・ドップラ又はスペクトルドップラが、所望の結果を達成するよう関心領域に効果的に印加されうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の面では、本発明は、超音波システムを用いて画像を捕捉する方法であって、動きデータを収集するよう画像を調査する段階と、画像中の流れを識別するよう動きデータを解析する段階と、流れ撮像技術を用いて流れを含む画像の限られた領域を走査する段階とを有する方法を提供する。
【0013】
第2の面では、本発明は、目標画像から動きデータを収集する調査システムであって、動きデータに基づいて画像内の流れの領域を写像するセグメンテーションシステムと、画像内の流れ画像データの集合を流れの領域へ自動的に制限する流れ獲得システムとを有する、超音波システムに関連する。
【0014】
第3の面では、本発明は、画像を流れ領域及び非流れ領域へセグメント化するセグメンテーション・ツールを含む超音波システムであって、画像の調査を実行し、調査は動きデータのサンプルを収集する、システムと、画像内の流れ領域及び非流れ領域を別々に識別するよう動きデータのサンプルを解析するシステムとを有する超音波システムを提供する。
【0015】
第4の面では、本発明は、超音波データを最適化させる記録可能な媒体上に格納されたプログラムプロダクトであって、超音波データの体積内の動きを表わす調査データを受信する手段と、調査データを流れ領域及び非流れ領域を示す動きマップへ写像する手段と、流れデータの集合を流れ領域へ制限する手段とを有するプログラムプロダクトを提供する。
【0016】
第5の面では、遡及的解析を行う超音波方法であって、関心となる点を識別するよう画像を調査する段階と、画像からスペクトル・ドップラ・データの獲得体積を取得し、獲得体積は関心となる点を囲む少なくとも1つのサンプル体積を含む、段階と、スペクトル・ドップラ・データを収集体積から保存し、スペクトル・ドップラ・データは位相情報を含む、段階と、保存されたスペクトル・ドップラ・データを遡及的に解析する段階とを有する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の上述の及び他の特徴については、添付の図面と共に本発明の様々な面についての以下の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【0018】
ここで図面を参照するに、図1は、ターゲット体積32を撮像する超音波システム10を示し、より特定的には、ターゲット体積32中の関心領域(ROI)33に対する超音波モダリティの適用を可能とする。本願に記載の実施例では、適用は、一般的には、カラーフローデータを収集する何らかの種類の「流れ」撮像を与え、カラーフロー・ドップラ及びスペクトル・ドップラを含む。しかしながら、任意の他の種類の超音波モダリティが同様に使用されえ、例えば、(登録商標)B−FLOW、時間領域相関、スペックル追跡、歪み撮像、他のドップラ技術等が使用されえ、本願に記載しない方法で実施されうる。本発明は、血流、組織の動き、ターゲットの動き等を含む任意の種類の動きを示すために「流れ」の用語を用い、本願でのかかる用語の特定の使用は本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0019】
本発明は、ターゲット体積32をまず流れ領域及び非流れ領域へセグメント化することにより、スペクトル・ドップラ及びカラーフロー・ドップラを含む超音波モダリティの使用を容易とする。これを達成するために、超音波システム10は、調査システム12、セグメンテーション・システム18、及び1つ又はそれ以上のアプリケーション20を具備する。超音波システム10は、撮像獲得システム11を用いて画像32から超音波データを獲得する。撮像獲得システム11は、1つ又はそれ以上のトランスデューサ、関連するハードウエア、ソフトウエア、入力装置、モニタ等の超音波データを収集及び処理するための従来技術で公知の任意の機構を含みうる。更に、超音波システムは出力34を形成しうる。出力34は、例えば、リアルタイムで見られ得る画像のストリーム、走査された画像を医師が遡及的に調べることを可能とする等の、画像データを格納する電子/ディジタルファイルを含みうる。画像は、2次元スライス(即ちフレーム)又は3次元体積として収集及び/又は処理されえ、本願に記載の概念は両方に適用可能である。
【0020】
上述のように、しばしば、走査されているターゲット体積32は1つ又はそれ以上の特定の関心領域33、例えば、心臓内の僧帽弁、大動脈の壁、幾つかの他の重要な血管分布像、点等を有することとなる。しかしながら、上述の制限が与えられていると、カラーフロー・ドップラ又はスペクトル・ドップラといった撮像技術を用いて体積全体32を走査するのは実際的ではない。関心領域33は、一般的には幾らかの動き又は流れを含むため、本発明は、自動的に流れ領域を非流れ領域からセグメンテーションする。領域は、3次元パイ・スライス、立方体、任意の形状、及び形状の集合等を含むが、これらに限られるものではない。流れ領域がいったん識別されると、流れ撮像技術は、関心領域に制限的に適用されうる。
【0021】
上述のことを実現するために、本発明の超音波システム10は、動きデータを収集するために体積を「調べる(survey)」調査システム12を含む。調査システム12は、関心領域33、即ち動き又は流れを示すのを支援しうる任意の種類の「調査」データを収集するよう実施されうる。識別されると、セグメンテーション・システム18は、流れ領域22を非流れ領域24から線引きする動きマップ20中に情報を格納するよう実施されうる。この情報は、以下更に詳述するように、1つ又はそれ以上のアプリケーション25によって使用されうる。本発明は、一般的には、動き又は流れを識別することに関して説明されるが、本発明は更に、動き又は流れがないことを検出するために実施されてもよく、かかる実施例は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0022】
[リアルタイム流れ撮像]
上述のように、カラーフロー・ドップラ・データといったリアルタイム流れ撮像データを効果的に収集及び表示する可能性は、生理学的構造を適切にサンプリングするのに必要な最小の獲得フレーム又は体積レート(例えば、15乃至100Hz)によって制限される。しかしながら、このような必要とされる獲得率は、画像全体が流れ撮像を用いて走査されれば、達成可能ではないことがある。例えば、図2に示す体積32を考える。体積32は、一般的には、流れ領域42及び非流れ領域44を有する。流れ領域42は、例えば頸動脈等の血管を有し、非流れ領域は例えば筋肉、脂肪、結合組織等を有する。画像全体が、各線に対する送信/受信サイクルの集合(例えば、5−12)を必要とするカラーフロードップラを用いて走査されるとき、有効なフレームレートは維持されず、エイリアシング誤差等が表示に導入されうる。従って、血管を通る血流の速度及び方向に関する正確な情報は取得されえない。
【0023】
これを克服するために、本発明はまず、画像を流れ領域及び非流れ領域へセグメンテーションし、次に、流れ撮像の使用を流れ領域、即ち関心領域へ制限する。図1に示す超音波システム10を用いて、調査システム12はまず、動き又は流れを示すのを支援するよう「動き」データを収集するために適用される。動きを示す任意の種類のデータが収集されうることが認識されるべきである。1つの典型的な実施例では、幾らかの所定の時間間隔、例えばn番目のフレーム毎に、体積全体32からカラーフローデータを収集するカラーフロー・ドップラ・サンプル化システム14が与えられる。他の典型的な実施例では、その回りで又はそれを通って流れ又は動きが典型的である特徴(例えば僧帽弁)を識別するために輪郭分析システム16が実施されうる。個々に参照として組み入れる米国特許第6,447,453号明細書は、かかるシステムを開示する。この場合、動きデータは、画像内の1つ又はそれ以上の識別された輪郭又はパターンを有しうる。
【0024】
いったん収集されると、動きデータは、体積32内のどの領域が流れを含むかを特に識別するようセグメンテーション・システム18によって分析される。流れの存在は、任意の公知の方法で識別されうる。例えば、従来のカラーフロー技術は、画像内の速度を決定するのに使用されえ、流れ領域を非流れ領域から分離する速度閾値が定められ得る。或いは、流れを識別するために画像信号のパワーが解析されえ、流れ領域を非流れ領域から分離するパワー閾値が定められ得る。更に、輪郭分析システム16の場合、セグメンテーション・システム18はパターン認識システムを含みうる。従って、ある識別された輪郭は、流れに関連するものとして認識されえ、他の輪郭は非流れに関連するものに関連するものとして認識されうる。
【0025】
セグメンテーション・システム18は、流れ領域22及び非流れ領域24を示す2次元フレーム又は3次元体積の形の動きマップ20を生成しうる。この動きマップ20は、様々なアプリケーション25によって使用されうる。この典型的なアプリケーションでは、動きマップは、流れの撮像を体積32内の識別された関心領域33に制限するよう、流れ撮像獲得システム26によって使用されうる。画像の非流れ部分は、標準グレースケール撮像で走査されうる。
【0026】
1つの典型的な実施例では、流れ獲得システム26は、画像獲得システム11に、画像32内の関心領域33に対してのみカラーフロー・ドップラ走査を用い、非流れ領域に対してグレースケールを使用するよう画像獲得システム11に伝える。制御システム27は、例えば、カラーフローデータに基づいて焦点ゾーン位置を自動的に設定するシステム、並びに、高い密度のデータの集合を関心領域33に制限するようカラーデータ内のピーク動き信号の位置に基づいて画像の奥行きを自動的に設定するシステムを有する。この実施例では、カラーフロードップラ走査を参照して説明したが、例えばカラー、B−FLOW、パワー動き撮像、組織ドップラ撮像、パルス波、連続波等の任意の撮像技術が使用されうる。流れデータ収集は、比較的小さい関心領域33に限られているため、当該の測定の領域に対するリアルタイム2次元又は3次元カラー撮像は有効に達成されうる(即ち、適切な獲得レートが維持されうる)。
【0027】
流れ獲得システム26は、関心領域33を有効に走査するよう一組の獲得パラメータを調整しうる。かかるパラメータは、例えば、bモード線密度、カラーフロー線密度、パルス繰り返し頻度、及び集合長さを含みうる。
【0028】
これからわかるように、調査システム12は、例えば速度の正確な推定を行うのではなく、動きの存在を検出することに関連する。1つの実施例では、調査システムは、(1)画像32内に存在する空間周波数の比較的低いサンプリング、(2)走査線の比較的低い密度(即ち、1ミリメートル又は1度当たりの線)、及び/又は、(3)1つの線当たりの送信/受信サイクルの通常の集合又は数よりも低い(例えば、2又は3)。従って、調査システム12は、一般的には、比較的定量的でない分析を使用しうるものであり、その性質は潜在的には臨床的な流れ撮像に適していない。
【0029】
或いは、調査システム12は、動きデータを収集する手段として、比較的高い空間密度走査及び/又は高い感度走査を用いうる。かかる処理には更なる時間がかかるが、画像内の流れの場を正確に捕捉するために一回だけ(又は比較的頻繁でなく)行われればよい。
【0030】
制御システム27はまた、調査システム18が、撮像されているものの動き、トランスデューサの動き等を考慮に入れるために連続モードで画像を自動的に再調査することを可能とする追跡システムを含みうる。即ち、流れ領域及び非流れ領域の正しい追跡を確実とするよう、例えばn番目のフレーム毎に、リアルタイム調整がなされうる。或いは、いつ動きデータが収集されるべきであるかを技術者が手動で決定することを可能とするよう、1ボタン・プッシュ・システムが使用されうる。
【0031】
更に、ターゲット体積32がいったんセグメンテーションされると、例えば一般的な非流れ領域を標準bモード走査で撮像し、脈管系流れ領域をターゲットされたカラーフローで撮像するために更なる撮像が適用されうる。このアプローチの最終的な結果は、フレームレートのかなりの改善である。更に、見ることができる画像は不必要な流れパルスの伝送が減少することにより利益を受け、ユーザは流れ領域の自動的な孤立により利益を受ける。
【0032】
セグメンテーションされたデータを使用する更なるアプリケーションは、撮像獲得システム11の利得を自動的に調整するプラーク/クラッタ分析システム28を有しうる。幾つかの低レベルエコーで血管を撮像するとき、かかるエコーが柔らかいプラークから、又はクラッタ(即ち残響)から生ずるかを判定することが有利であり得る。エコーがプラークから生ずる場合、プラークをよりよく見えるようにするために2次元利得を自動的に増加させることが有用である。他方で、低レベルエコーがクラッタから生ずる場合、全体利得を自動的に減少させることが有用であり得る。グレースケールデータのみを用いると、これらの低レベルエコーの性質を決定することは困難である。
【0033】
これを扱うために、本発明はプラーク/クラッタ分析システム28を提供する。低レベルエコーが血管内部にあるときにプラークをクラッタと区別するために、低レベルエコーと同じ場所に存在する動き信号が分析されうる。流れ信号がなければ、低レベルエコーはプラークである可能性が高く、これらのエコーをハイライトするために利得の増加が行われる。或いは、低レベルエコーが存在するときに流れが存在する場合、エコーはクラッタ又は残響である可能性が高く、自動クラッタ抑制を行うために利得の減少は自動的に伝搬される。
【0034】
更に、セグメンテーションされたデータは、任意の他の撮像最適化30によって使用されうる。例えば、血管撮像等の領域では、内部が無エコー性の血管である場合、超音波は囲む筋肉組織を離しておく傾向がある。これは、筋肉層が適切に利得な利得とされているときに、血管の壁が過大利得又は過小利得とされることを意味する。更に、過大利得とされた状況では、ルーメンにクラッタが導入される。超音波技師は、一般的には筋肉組織の表現に関心を持たないが、血管の壁及び内部にのみ注目する。この場合、マップ20は、最適化アルゴリズムに入力されうる正規の2次元フレーム上で、血管を中心とする、厳密な関心領域を画成するのに使用されうる。この厳密な領域に対して最適化が作用すると、血管を超える外側筋肉層からのエコーが除外されえ、従って筋肉組織からの明るい又は暗いエコーが血管の壁及び内部の2次元エコーの最適化に不適切に影響を与えるという場合を減少させる。
【0035】
[遡及的分析]
上述のように、遡及的分析の重要な潜在的なアプリケーションは心臓学の分野を含み、問題は、心臓の弁の回りのスペクトル・ドップラ・データといったデータを正確に獲得することである。上述のように、関心データが正確且つ精密に獲得されるよう、例えば典型的なドップラ・サンプル体積は、直径が1mmであり長さ3mmであるよう、関心となる点に配置されることが重要である。この処理は、一般的には時間のかかる検査中に行われ、なぜならば、サンプル体積の配置は、調べられている弁に特定的であり、患者に対しても特定的であるからである。遡及的分析を用いたアプリケーションの典型的な実施例は、更に図3乃至5を参照して説明され、これは3次元体積62内の心臓40の走査を示す。
【0036】
本発明は、遡及的分析のためにスペクトル・ドップラ・データのサンプル体積を収集する処理を自動的に実施する。これを達成するために、超音波システム10の調査システム12は、動きデータを収集するために使用される。収集されると、セグメンテーション・システム18は、流れの位置、即ち関心点を識別及び写像しうる。最後に、流れ獲得システム26は、後の分析のために格納されうる、関心となる点におけるスペクトル・ドップラ・データを含むサンプル体積を取得するのに使用されうる。
【0037】
本発明の1つの実施例では、関心点の識別に基づいて、体積獲得中の見る方向が自動的に決定され、スペクトル・ドップラ・データは、その見る方向に沿って軸方向に多くのレンジで獲得される。更に、同じ点の回りに又は潜在的に任意の見る方向に多数の見る方向を与えるためのマルチラインビーム形成の使用もまた組み込まれうる。この技術を示すために、図3は、リアルタイム超音波撮像を用いて体積62として撮像される心臓40を示す。
【0038】
一般的には、技術者は、頭の中で3次元ビューを再構成するのを支援するために様々な視点から一連の2次元画像を獲得する。3次元の目的は、比較的短い時間でのサンプル体積の完全な獲得である。しかしながら、高い流れ感度及び時間解像度が必要とされる場合に、超音波検査の重要な部分でありつづけるスペクトル・ドップラについての3次元の同等のものはない。スペクトル・ドップラは、空間内で(本質的に)点について調べることを行うため、特定のデータを得るためには技術者による技能及び時間が必要である。本発明は、これを、単一の関心点よりも大きい領域を網羅するスペクトル・ドップラ・データ(位相情報を含む)の「獲得体積」を自動的に獲得することによって扱う。これは、技術者があまり技能を有していなくともよく、それでも依然として獲得体積内の関心点を獲得することを可能とする。すると、遡及的に、技術者又は制御システム27は、獲得体積内のサンプル体積を識別し、関心となるサンプル体積に対してスペクトル・ドップラを発生する。これを達成する1つの方法は、いくつかの「レンジ・ゲート」から受信データを獲得し、関連付けられるスペクトルデータを導出するために夫々を独立に分析することを含む。かかる方法は、ここに参照として組み入れられる米国特許第5,365,929号明細書に記載されている。スペクトルデータが所望であるサンプル体積の正確な範囲/奥行きが不確実であるため、データは通常よりも広い範囲に亘って獲得される。実際のサンプル体積は、後に遡及的に定義されうる。
【0039】
正しい見る方向を決定するために、例えば弁である関心領域は自動的に識別されねばならない。弁を識別する1つの方法は、高い速度の流れの領域として動きデータを識別するために調査システム12を使用することである。これは、どこで流れが生じたかを示す動きマップ20を生成する3次元カラー・ドップラ画像を達成しうる。米国特許第6,447,453号明細書を参照して上述された他の方法は、例えば僧帽弁を検出するためにパターン認識を用いて、動きデータを識別するよう輪郭分析システムを使用する。識別されると、走査線の見る方向及び範囲は、制御システム27によって自動的に決定されうる。
【0040】
図4は、自動的に配置された獲得の線48とともに僧帽弁46を示す。この場合、遡及的な解析に十分なデータが利用可能であることを確実とするよう左心室及び左心房を含む獲得体積50に対するデータが獲得される。尚、心臓が心臓サイクルに従って動くと、ドップラ・撮像視線の位置は、制御システム27の追跡特徴によって自動的に再配置されうる。
【0041】
更なる実施例では、ドップラ・データの獲得体積は、図5に示すようにマルチライン・ビーム成形を用いることにより円錐ゾーン52へと拡張されうる。マルチライン・ビーム成形は、一回の送信イベント(例えばビーム)から1つ以上の受信ビームを受信する(フォーカシング及びステアリングする)技術である。かかる処理を、ここに参照として組み入れられる米国特許第6,471,650号明細書に記載する。この場合、マルチライン束(例えば、2×2又は4×4)は、オリフィス46の回りの関心となる限られた値を網羅する。獲得は、位相データが保存されるよう受信データを格納し、例えば無線周波データ又はベースバンドIQデータ等、獲得体積全体の自由度の高い遡及的レビューを可能とする。
【0042】
本願に記載のシステム、機能、機構、方法、及び、モジュールは、ハードウエア、ソフトウエア、又は、ハードウエアとソフトウエアの組合せとして実施されうると理解される。これらは、本願に記載の方法を実行するのに適用される任意の種類のコンピュータシステム又は他の装置によって実施されうる。典型的なハードウエアとソフトウエアの組合せは、ロードされ実行されると、本願に記載の方法を実行するようコンピュータシステムを制御するコンピュータプログラムを有する汎用コンピュータシステムでありうる。或いは、本発明の1又はそれ以上の機能的なタスクを実行する専用ハードウエアを含む特定用途コンピュータが使用されうる。本発明はまた、本願に記載の方法及び機能の実施を可能とする全ての特徴を有し、コンピュータシステムにロードされると、これらの方法及び機能を実行することが可能であるコンピュータプログラムプロダクトに埋め込まれうる。本願では、コンピュータプログラム、ソフトウエアプログラム、プログラム、プログラムプロダクト、又はソフトウエアは、いかなる言語、コード、又は表記法でも、(a)他の言語、コード、又は表記法への変換、及び/又は、(b)異なる素材の形式での再現のいずれか又は両方に対して直接、又は、その後に、情報処理能力を有するシステムに特定の機能を実行させることを意図した一組の命令のいかなる表現をも意味する。
【0043】
本発明の望ましい実施例の上述の説明は、例示及び説明のために提示された。これらは、網羅的なもの又は開示されたそのものの形で本発明を制限するものを意図したものではなく、明らかに、上述の記載により多くの変更及び変形が可能である。当業者に対して明らかなかかる変更及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による超音波システムを示す図である。
【図2】流れ領域及び非流れ領域を有する血管を含む体積を示す図である。
【図3】心臓を含む体積を示す図である。
【図4】本発明により走査線を用いて僧帽弁が自動的に検出及び画像化されている、心臓を含む体積を示す図である。
【図5】本発明によるマルチライン走査ビームを用いて僧帽弁が自動的に検出及び顔増加されている、心臓を含む体積を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波システムを用いて画像を捕捉する方法であって、
動きデータを収集するよう前記画像を調査する段階と、
前記画像中の流れを識別するよう前記動きデータを解析する段階と、
流れ撮像技術を用いて前記流れを含む前記画像の限られた領域を走査する段階とを有する、方法。
【請求項2】
前記調査する段階は、カラーフローデータのサンプルを収集する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記調査する段階は、輪郭データを収集する段階を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記解析する段階は、流れ領域及び非流れ領域を識別する動きマップを作成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記流れ撮像技術は、カラーフロー、時間領域相関、スペックル追跡、歪み撮像、パルス波ドップラ、及び連続波ドップラからなる群から選択される技術を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記流れは心臓内の弁に関連付けられる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記流れは血管を示す、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記走査する段階は、マルチライン・ビーム形成法を用いる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記流れは定期的に追跡され、前記流れを含む前記画像の限られた領域は自動的に調整される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
獲得のための前記限られた領域は、3次元パイ・スライス、立方体、任意の形状、及び形状の集合からなる群から選択された領域である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記走査する段階は、bモード線密度、カラーフロー線密度、パルス繰り返し頻度、及び集合の長さからなる群から選択される一組の獲得パラメータを調整する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
目標画像から動きデータを収集する調査システムと、
前記動きデータに基づいて前記画像内の流れの領域を写像するセグメンテーションシステムと、
前記画像内の流れ画像データの集合を前記流れの領域へ自動的に制限する流れ獲得システムとを有する、
超音波システム。
【請求項13】
前記動きデータはカラーフローデータを含む、請求項12記載の超音波システム。
【請求項14】
前記動きデータは輪郭データを含む、請求項13記載の超音波システム。
【請求項15】
前記流れ獲得システムは、カラーフロー、時間領域相関、スペックル追跡、歪み撮像、パルス波ドップラ、及び連続波ドップラからなる群から選択される撮像技術を用いてデータを収集する、請求項12記載の超音波システム。
【請求項16】
前記流れ獲得システムは、マルチライン・ビーム形成法を用いる、請求項12記載の超音波システム。
【請求項17】
前記流れの領域は定期的に追跡され、自動的に調整される、請求項12記載の超音波システム。
【請求項18】
流れの領域は、3次元パイ・スライス、立方体、任意の形状、及び形状の集合からなる群から選択された領域である、請求項12記載の超音波システム。
【請求項19】
前記流れ獲得システムは、bモード線密度、カラーフロー線密度、パルス繰り返し頻度、及び集合の長さからなる群から選択される一組の獲得パラメータを含む、請求項12記載の超音波システム。
【請求項20】
画像を流れ領域及び非流れ領域へセグメント化するセグメンテーション・ツールを含む超音波システムであって、
前記画像の調査を実行し、前記調査は動きデータのサンプルを収集する、システムと、
前記画像内の流れ領域及び非流れ領域を別々に識別するよう前記動きデータのサンプルを解析するシステムとを有する、超音波システム。
【請求項21】
流れ画像技術を用いて前記流れ領域から画像データを自動的に収集する制御システムを更に有する、請求項20記載の超音波システム。
【請求項22】
前記流れ画像技術は、カラーフロー、時間領域相関、スペックル追跡、歪み撮像、パルス波ドップラ、及び連続波ドップラからなる群から選択される、請求項12記載の超音波システム。
【請求項23】
前記制御システムは、
前記流れ領域の位置に基づいて焦点ゾーン位置を自動的に設定するシステムと、
前記流れ領域内のピーク動き信号の位置に基づいて画像奥行きを自動的に設定するシステムとを有する、請求項21記載の超音波システム。
【請求項24】
前記非流れ領域はグレースケール・データを用いて捕捉される、請求項21記載の超音波システム。
【請求項25】
選択された領域内で、前記選択された領域における低レベルエコー及び流れの量を解析することにより、プラークをクラッタと区別するシステムを更に有する、請求項20記載の超音波システム。
【請求項26】
前記クラッタの検出に基づいて前記選択された領域において撮像利得を自動的に減少させるシステムを更に有する、請求項25記載の超音波システム。
【請求項27】
前記プラークの検出に基づいて前記選択された領域において撮像利得を自動的に増加させるシステムを更に有する、請求項25記載の超音波システム。
【請求項28】
超音波データを最適化させる記録可能な媒体上に格納されたプログラムプロダクトであって、
超音波データの体積内の動きを表わす調査データを受信する手段と、
前記調査データを流れ領域及び非流れ領域を示す動きマップへ写像する手段と、
前記流れデータの集合を前記流れ領域へ制限する手段とを有する、プログラムプロダクト。
【請求項29】
流れデータが散在するグレースケールデータを収集する更なる手段を含む、請求項28記載のプログラムプロダクト。
【請求項30】
前記流れデータの収集は、カラーフロー、時間領域相関、スペックル追跡、歪み撮像、パルス波ドップラ、及び連続波ドップラからなる群から選択される技術によって達成される、請求項28記載のプログラムプロダクト。
【請求項31】
遡及的解析を行う超音波方法であって、
関心となる点を識別するよう画像を調査する段階と、
前記画像からスペクトル・ドップラ・データの獲得体積を取得し、前記獲得体積は前記関心となる点を囲む少なくとも1つのサンプル体積を含む、段階と、
前記スペクトル・ドップラ・データを前記収集体積から保存し、前記スペクトル・ドップラ・データは位相情報を含む、段階と、
前記保存されたスペクトル・ドップラ・データを遡及的に解析する段階とを有する、方法。
【請求項32】
前記獲得体積は、パルス波ドップラ及び連続波ドップラからなる群から選択される、スペクトル・ドップラ技術を用いて取得される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記画像はカラーフローデータを用いて調査される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記画像は輪郭データを用いて調査される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記獲得体積はマルチライン・ビーム形成法を用いて取得される、請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−507883(P2006−507883A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556620(P2004−556620)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005306
【国際公開番号】WO2004/051310
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】