説明

撮像素子の欠陥検査方法及び欠陥検査支援プログラム

【課題】複数の撮像素子が作りこまれた半導体ウエハ全体に現われる欠陥の分布や傾向を、煩わしい作業を伴うことなく、簡単且つ直感的に把握可能にする。
【解決手段】半導体ウエハ16に形成された複数の撮像素子14の各々から得られた画像データP,Q,R,Sを、半導体ウエハ16上の位置に対応する仮想上の位置にマッピングして、合成画像データ18を生成し、合成画像データ18に基づく合成画像を表示装置11に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ上に形成された複数の撮像素子に発生している欠陥を検査する撮像素子の欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一定光量の光を撮像素子に当てた状態でこの撮像素子により撮像を行い、この撮像によって得られた画像データをもとに、この撮像素子の欠陥を検査する技術が、例えば特許文献1に開示されている。この検査方法によれば、半導体ウエハ上に作りこまれた多数の撮像素子の各々の欠陥を検査することができる。
【0003】
一方、撮像素子は、半導体ウエハに多数個がまとめて作り込まれるため、この半導体ウエハ全体に現われる欠陥の分布や傾向を捉えることも、製造工程上においては重要となる。例えば、半導体ウエハ上にカラーフィルタ層を形成する場合には、この半導体ウエハの中心にカラーフィルタ材料のスポットを滴下した後、半導体ウエハを高速で回転させることで、そのカラーフィルタ材料を半導体ウエハ上に薄く拡げていくといったスピンコート工程が実施される。
【0004】
このスピンコート工程では、半導体ウエハ上の全体にカラーフィルタ材料が均一に拡がらず、ムラが出てしまうことがあり、このムラが半導体ウエハ全体に現われる欠陥となってしまう。このような欠陥の分布や傾向が把握できれば、この欠陥の原因となった製造工程を特定することができ、製造工程における問題点を修正することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開平05‐030540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多数の撮像素子の各々から取得した画像データを見ただけでは、その画像データに現れる輝度ムラが、その撮像素子だけに発生しているものなのか、複数の撮像素子に亘って発生しているものなのかの区別ができない。多数の撮像素子の各々に発生している輝度ムラの情報を総合して判断すれば、半導体ウエハ全体に現われる欠陥の分布や傾向を捉えることは可能であるが、その作業には時間や手間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撮像素子が作りこまれた半導体ウエハ全体に現われる欠陥の分布や傾向を簡単且つ直感的に把握可能にすることができる撮像素子の欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像素子の欠陥検査方法は、半導体ウエハ上に形成された複数の撮像素子に発生している欠陥を検査する撮像素子の欠陥検査方法であって、前記複数の撮像素子の各々から同一撮像条件で撮像して得られる画像データを記録媒体から取得する画像データ取得ステップと、前記画像データを、前記画像データの取得元の撮像素子の前記半導体ウエハ上の位置に対応する仮想位置に、前記画像データを構成する画素データの位置が前記画素データに対応する前記撮像素子に含まれる光電変換素子の位置と対応するように配置して、前記複数の撮像素子の各々から得られた画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成ステップと、前記合成画像データに基づく合成画像を目視して前記撮像素子の欠陥を検査する検査ステップとを含む。
【0009】
本発明の撮像素子の欠陥検査方法は、前記合成画像データの生成前に、前記記録媒体から取得した各画像データに対し同一の強調処理を施す強調処理ステップを含む。
【0010】
本発明の撮像素子の欠陥検査方法は、前記合成画像データに基づく合成画像を表示装置に表示させる制御を行う表示制御ステップを含む。
【0011】
本発明の撮像素子の欠陥検査支援プログラムは、コンピュータに、上記いずれか記載の前記検査ステップを除く各ステップを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像素子が作りこまれた半導体ウエハ全体に現われる欠陥の分布や傾向を簡単且つ直感的に把握可能にすることができる撮像素子の欠陥検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である撮像素子の欠陥検査を行うための欠陥検査システムの概略構成を示す図である。
図1に示す欠陥検査システム10は、CCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサ等の撮像素子14の検査に用いられるテスター等の検査装置12と、撮像素子14の検査時に撮像素子14に対して一定光量の光を照明する光源13と、検査装置12に接続されたコンピュータ15と、コンピュータ15に接続されたCRTやLCD等の表示装置11とを備える。
【0015】
検査装置12は、光源13を駆動して光を照明させている状態で、撮像素子14の電極パッドにプローブを当て、撮像素子14を駆動して撮像を行わせると共に、この撮像によって撮像素子14から出力される撮像データを取り込み、取り込んだ撮像データから画像データを生成し、この画像データを図示しない記録媒体に記録する。なお、検査装置12で生成される画像データを構成する多数の画素データは、それぞれ、その画像データの取得元の撮像素子14を構成する多数の光電変換素子のいずれかに対応している。
【0016】
ここで言う画像データとは、例えば、撮像素子14に含まれる1つの光電変換素子に対応する画素データにR(赤色),G(緑色),B(青色)の情報を持たせたカラー画像データや、カラー画像データを色分離して、撮像素子14に含まれる1つの光電変換素子に対応する画素データにGの情報だけを持たせたG画像データ等である。
【0017】
コンピュータ15は、本発明の欠陥検査支援プログラムが予めインストールされており、このプログラムを実行することで、撮像素子14の欠陥を検査するための支援を行う。
【0018】
次に、このシステムを用いて撮像素子14の欠陥を検査する方法を説明する。
図2は、撮像素子の欠陥を検査する方法を説明するためのフローチャートである。
まず、1枚の半導体ウエハに設定された複数のチップ領域(後のダイシング工程で1チップになる領域)の各々に撮像素子を1つ形成したものを製造する。ここでは説明を簡単にするため、図3に示すように、半導体ウエハ16に設定された4つのチップ領域A,B,C,Dの各々に撮像素子を形成したものを製造する。以下では、チップ領域Aに形成された撮像素子を14A、チップ領域Bに形成された撮像素子を14B、チップ領域Cに形成された撮像素子を14C、チップ領域Dに形成された撮像素子を14Dとする。
【0019】
次に、検査装置12が、撮像素子14Aに光源13から一定光量の光を当てた状態で、当該撮像素子14Aに撮像を行わせ、撮像によって得られた撮像データから画像データを生成して記録媒体に記録する。検査装置12は、このような処理を、撮像素子14B〜14Dに対しても同様に行う(ステップS1)。これにより、検査装置12の記録媒体には、撮像素子14Aから得られた画像データPと、撮像素子14Bから得られた画像データQと、撮像素子14Cから得られた画像データRと、撮像素子14Dから得られた画像データSとが記録される。
【0020】
次に、コンピュータ15が、検査装置12の記録媒体から画像データP,Q,R,Sを取得する(ステップS2)。
【0021】
次に、コンピュータ15が、半導体ウエハ16を仮想的に表すための画像データであるウエハマップデータ17を生成する(ステップS3)。
【0022】
次に、コンピュータ15が、ステップS2で取得した画像データPを、画像データPの取得元の撮像素子14Aの半導体ウエハ16上の位置(チップ領域A)に対応するウエハマップデータ17上の仮想位置に、画像データPを構成する画素データの位置が、該画素データに対応する撮像素子14Aに含まれる光電変換素子の位置と対応するように配置する。
【0023】
例えば、図4に示すように、撮像素子14Aが、図示したような配列の4つの光電変換素子21〜24を含むものとし、画像データPを構成する画素データ31が光電変換素子21に対応し、画素データ32が光電変換素子22に対応し、画素データ33が光電変換素子23に対応し、画素データ34が光電変換素子24に対応するものとする。
【0024】
図4に示すような画素データの配列で画像データPが検査装置12に記録されていた場合は、画像データPを構成する画素データ31〜34の位置が、画素データ31〜34に対応する撮像素子14Aに含まれる光電変換素子21〜24の位置と対応するため、コンピュータ15は、画像データPを、そのまま仮想位置に配置すれば良い。
【0025】
一方、図5(a)に示すような画素データの配列で画像データPが検査装置12に記録されていた場合は、この画像データPを構成する画素データ31〜34の位置が、画素データ31〜34に対応する撮像素子14Aに含まれる光電変換素子21〜24の位置と対応していない。このため、コンピュータ15は、画像データPを、上下反転させて図5(b)に示すような状態にしてから、図5(c)に示すように、仮想位置に配置すれば良い。
【0026】
コンピュータ15は、同様に、ステップS2で取得した画像データQを、画像データQの取得元の撮像素子14Bの半導体ウエハ16上の位置(チップ領域B)に対応する仮想位置に、画像データQを構成する画素データの位置が、該画素データに対応する撮像素子14Bに含まれる光電変換素子の位置と対応するように配置する。同様に、ステップS2で取得した画像データRを、画像データRの取得元の撮像素子14Cの半導体ウエハ16上の位置(チップ領域C)に対応する仮想位置に、画像データRを構成する画素データの位置が、該画素データに対応する撮像素子14Cに含まれる光電変換素子の位置と対応するように配置する。同様に、ステップS2で取得した画像データSを、画像データSの取得元の撮像素子14Dの半導体ウエハ16上の位置(チップ領域D)に対応する仮想位置に、画像データSを構成する画素データの位置が、該画素データに対応する撮像素子14Dに含まれる光電変換素子の位置と対応するように配置する。
【0027】
このようにして、コンピュータ15は、ウエハマップデータ17に画像データP〜Sを合成した図5(c)に示したような合成画像データ18を生成する(ステップS4)。
【0028】
次に、コンピュータ15は、合成画像データ18に基づく合成画像を、表示装置11に表示させる制御を行う(ステップS5)。この制御により、表示装置11には、図6に示したような画像が表示される。
【0029】
そして、撮像素子14を検査する人間は、表示装置11に表示された合成画像を目視して官能検査を行うことにより、欠陥の有無や評価等を行う。
【0030】
表示装置11に表示された合成画像によれば、撮像素子14A〜14Dの各々から得られた画像データP〜Sに基づく画像により、撮像素子14A〜14Dの各々に発生している欠陥を目視で確認して検査することができる。又、図3に示したように、撮像素子14A〜14Dを全て跨いで発生している円状の欠陥Kがあった場合にも、この欠陥Kの全体像を目視で確認することができる。このように、表示装置11に表示された合成画像によれば、半導体ウエハ16全体に亘って発生している欠陥の分布や傾向を直感的に捉えることができるため、この分布や傾向を基に、欠陥の原因となった製造工程を容易に特定することができ、製造ラインへのフィードバックが可能となる。
【0031】
又、上記合成画像は、全てコンピュータ15によって自動的に生成されるため、煩雑な作業を行うことなく、上記効果を得ることができる。
【0032】
又、検査装置12には、半導体ウエハに形成された複数の撮像素子の各々から得られる画像データを記録する機能が従来から備わっているため、本実施形態のシステムは、従来からある検査システムにおいてコンピュータ15と表示装置11を追加するだけで実現することができ、設備コストを抑えることができる。
【0033】
尚、以上の説明では、コンピュータ15が欠陥検査支援プログラムを実行するものとしたが、検査装置12内のコンピュータに欠陥検査支援プログラムをインストールしておき、検査装置12が合成画像を生成して表示装置11に表示させるようにしても良い。
【0034】
又、以上の説明では、合成画像データに基づく合成画像を表示装置11に表示させることで、作業者に確認させるものとしたが、合成画像データに基づく合成画像を印刷媒体に印刷して出力することで、作業者に合成画像を確認させることも可能である。
【0035】
又、以上の実施の形態において、コンピュータ15が、画像データP〜Sをウエハマップデータ17上に配置する前(図2のステップS3とS4の間)に、画像データP〜Sの各々に対して同一の強調処理を施すことで、合成画像により、半導体ウエハ16全体における各撮像素子14A〜14Dの感度分布の観察も同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態である撮像素子の欠陥検査を行うためのシステムの概略構成を示す図
【図2】図1に示すシステムを用いて撮像素子の欠陥を検査する方法を説明するためのフローチャート
【図3】本発明の実施の形態で説明する半導体ウエハの平面模式図
【図4】本発明の実施の形態で説明する撮像素子の光電変換素子の配列と、その撮像素子から得られる画像データの画素データの配列を示す図
【図5】(a)は検査装置に記録されている画像データの画素データの配列を示す図、(b)はウエハマップの仮想位置に配置させる画像データの画素データの配列を示す図、(c)は合成画像データを示す図
【符号の説明】
【0037】
10 欠陥検査システム
11 表示装置
12 検査装置
13 光源
14,14A,14B,14C,14 撮像素子
15 コンピュータ
16 半導体ウエハ
17 ウエハマップデータ
18 合成画像データ
A,B,C,D チップ領域
P,Q、R、S 画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ上に形成された複数の撮像素子に発生している欠陥を検査する撮像素子の欠陥検査方法であって、
前記複数の撮像素子の各々から同一撮像条件で撮像して得られる画像データを記録媒体から取得する画像データ取得ステップと、
前記画像データを、前記画像データの取得元の撮像素子の前記半導体ウエハ上の位置に対応する仮想位置に、前記画像データを構成する画素データの位置が前記画素データに対応する前記撮像素子に含まれる光電変換素子の位置と対応するように配置して、前記複数の撮像素子の各々から得られた画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成ステップと、
前記合成画像データに基づく画像を目視して前記撮像素子の欠陥を検査する検査ステップとを含む撮像素子の欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の撮像素子の欠陥検査方法であって、
前記合成画像データの生成前に、前記記録媒体から取得した各画像データに対し同一の強調処理を施す強調処理ステップを含む撮像素子の欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の撮像素子の欠陥検査方法であって、
前記合成画像データに基づく合成画像を表示装置に表示させる制御を行う表示制御ステップを含む撮像素子の欠陥検査方法。
【請求項4】
コンピュータに、請求項1〜3のいずれか1項記載の前記検査ステップを除く各ステップを実行させるための撮像素子の欠陥検査支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−28180(P2008−28180A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199610(P2006−199610)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】