撮像素子
【課題】高解像度化した画素を有する撮像素子を提供する。
【解決手段】本発明の撮像素子10は、X,Y軸平面上に正方又は六方配置された各感光部101から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力する積層素子100a,100b,100c,100dと、この積層素子における感光部101を有する素子100aに対して設けられ、それぞれの感光部101に対して一部の領域を遮光するための当該感光部101の面積よりも小さい面積を有する1つの遮光部110を、当該感光部101の領域の範囲内で走査することにより各感光部101を所定の分割数で分割し、当該分割した各領域における遮光による蓄積電荷の変化量によって画素を形成する液晶素子106とを備える。
【解決手段】本発明の撮像素子10は、X,Y軸平面上に正方又は六方配置された各感光部101から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力する積層素子100a,100b,100c,100dと、この積層素子における感光部101を有する素子100aに対して設けられ、それぞれの感光部101に対して一部の領域を遮光するための当該感光部101の面積よりも小さい面積を有する1つの遮光部110を、当該感光部101の領域の範囲内で走査することにより各感光部101を所定の分割数で分割し、当該分割した各領域における遮光による蓄積電荷の変化量によって画素を形成する液晶素子106とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の技術分野に関するものであり、特に高解像度化した画素を有する撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子の高解像度化に対する要求が著しい。これまでに、例えばスーパーハイビジョンに対応した3200万画素を有する撮像素子が実現されている。しかし将来における高解像度化の要求レベルはさらに高く、例えばインテグラルフォトグラフィー(IP)を用いた3次元情報の撮像における解像度の要求基準はこれらのさらに2〜3桁以上にのぼる。この場合、撮像素子の現実的なサイズから考えて、1画素のサイズは1μm角以下になる。
【0003】
撮像素子の高解像度化の従来技法として、感光部、電荷転送部あるいは増幅部などを含め1つの画素のサイズを小さくし、撮像素子平面内に設ける画素数を増やす方法がある。この場合、画素サイズが小さくなるにつれて感光部の面積が小さくなり、単位時間あたりに蓄積できる電荷量が低下してS/N比が低下することになるが、例えばCMOS撮像素子の場合は増幅部等の周辺回路が画素内に設けられており、また画素と画素の間には配線が設けられているため、感光部を十分広くとることが難しかった。これらの理由から画素サイズが1μm角以下になる場合には十分な撮像性能を実現することができなかった。
【0004】
そこで、画素内に設けられた増幅部あるいは配線で占められる面積を小さくして感光部の面積を広げるため、感光部、電荷転送部あるいは増幅部などの機能を別々の素子平面上に作製し、これらをプラズマ処理などの接合技術により積層して、信号を各画素のZ軸方向に並列出力する撮像素子が提案されている(例えば特許文献1、非特許文献1,2参照)。このような接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の例を図10に示す。図10に示す撮像素子100では、感光部101により受けた光を光電変換によって電荷に変換し蓄積する。この蓄積電荷に相当する信号が配線105を介して、増幅部102へ送られ、次いで信号処理部103へ送られ、記憶部104に保存され、最終的に出力部(図示せず)から信号が出力される。このように、感光部101、増幅部102(あるいは電荷転送部)、信号処理部103及び記憶部104などの機能は、それぞれ別々の素子平面上(図示100a,100b,100c,100d)に作製され、接合技術により配線105を形成して各素子100a,100b,100c,100dを積層することにより、撮像素子100を形成する。
【0005】
これによって1画素の面積内に占める感光部の割合を大幅に高くすることが可能となり、画素数が増えて画素が小さくなった場合でもS/N比を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/041174号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kurino et al., Intelligent image sensor chip with three dimensional structure, IEDM Technical Digest. International Washington, DC, USA, Dec. 5-8, 1999, pp. 879-882
【非特許文献2】Lee et al., Development of Three-Dimensional Integration Technology for Highly Parallel Image-Processing Chip, Japanese Journal of Applied Physics (JJAP), Vol. 39 Part1 (2000), No. 4B, pp. 2473-2477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1,2に開示される接合技法により撮像素子の高解像度化を図る場合、各素子100a,100b,100c,100dの接合誤差によって解像度の限界が決まることになる。図11及び図12は、接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の解像度を決める要因についての説明図である。図11を参照するに、例えば感光部101を配置した素子100aと増幅部102を配置した素子100bとを接合する場合を考える。図11における図示Aで示される点線枠の詳細を図12に示している。図12を参照するに、1画素ごとに感光部101及び増幅部102を形成することから、接合誤差が画素サイズを上回ると、感光部101から出た配線105が直下の増幅部102に接続されないことになる。
【0009】
現在最も精度が高いとされる赤外線顕微鏡及び画像処理を併用して、プラズマ処理などの接合処理で各素子100a,100b,100c,100dを接合するとしても、その誤差は最大±0.5μm程度とされる。従って、図11及び図12に示すように、画素サイズが1μm角以下になる場合には、積層時の精度が不足するため作製が難しかった。すなわち、この接合技法を用いても、1μm角以下の画素サイズを有する撮像素子を形成することが困難であった。
【0010】
本発明は、高解像度化した画素(例えば、1μm角以下の画素サイズ)を有する撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の問題を解決するために、本発明の撮像素子は、X,Y軸平面上に正方又は六方配置された各感光部から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力する積層素子と、前記積層素子における感光部を有する素子に対して設けられ、それぞれの感光部に対して一部の領域で遮光するための当該感光部の面積よりも小さい面積を有する1つの遮光部を、当該感光部の領域の範囲内で走査することにより当該感光部を所定の分割数で分割し、当該分割した各領域における遮光による蓄積電荷の変化量によって画素を形成する液晶素子と、を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、積層により作製できる程度の大きさの感光部に対して、より小さいサイズの遮光部を当該感光部の領域の範囲内で走査して画素に相当する信号を抽出するため、既存の撮像素子よりも解像度を高めることができる。また、遮光部の走査を電気的な制御のみで形成することができるため、当該感光部の分割領域のサイズや位置を自由に変更することができ、撮像の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の撮像素子において、前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号を基準にして、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号と当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号との差分とすることを特徴とする。
【0014】
これにより、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号を基準にして画素信号を形成することから、撮像ごとに安定した画素信号を得ることができる。
【0015】
また、本発明の撮像素子において、前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分から得られる蓄積電荷の時間変化量とすることを特徴とする。
【0016】
これにより、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号における蓄積時間と、画素信号として取得する遮光時の蓄積時間とを個別に設定することができるため、撮像モードに応じた撮像素子の制御の自由度を高めることができる。例えば、撮像モードとして、静止画モード、動画モード、多重撮影モード等が考えられる。撮像モード別の制御を例示すると、静止画モードでは、事前に又は撮像の開始時に当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号を取得しておき、遮光による蓄積電荷に相当する信号を連続的に撮像することができる。また、動画モードでは、当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号と遮光による蓄積電荷に相当する信号とを交互に取得して差分することにより撮像することができる。また、多重撮影モードでは、事前に当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号を取得しておき、遮光による蓄積電荷に相当する信号を連続的に取得した後、多重して撮像することができる。
【0017】
また、本発明の撮像素子において、前記1つの遮光部の面積は、前記1つの感光部の面積の1/2以下であることを特徴とする。
【0018】
これにより、感光部の大きさで決まる既存の撮像素子よりも解像度を少なくとも2倍以上に高めることができる。
【0019】
また、本発明の撮像素子において、前記積層素子は、前記感光部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第1の素子と、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号についてそれぞれの画素信号として記憶する記憶部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第2の素子と、前記記憶部に記憶した各画素信号について、前記所定の領域の行方向の配列順に読み出して出力する信号処理部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第3の素子と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、遮光部の走査順に得られた画素信号について、当該感光部の分割領域の行方向の配列順に読み出して出力することができるため、撮像素子から出力される画素信号の後処理が容易になる。
【0021】
また、本発明の撮像素子において、前記信号処理部は、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号に関して、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分を行ない、当該遮光による蓄積電荷の時間変化量を画素信号として前記記憶部に記憶する手段を有することを特徴とする。
【0022】
ここで、当該第1の蓄積時間と当該第2の蓄積時間について、いずれも同じ一定の時間とすることができるし、異なる時間としてもよい。遮光による蓄積電荷に相当する信号を得る際の当該第2の蓄積時間についても個別に異なる蓄積時間としてもよく、例えば、蓄積電荷に相当する信号をその蓄積時間で除算することで正規化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高解像度の画素(例えば、1μm角以下の画素サイズ)を有する撮像素子を提供することができる。特に、従来の撮像素子で生じていた画素間の不感領域を大幅に低減させ、同一の画素サイズ比較でS/Nを改善することができる。さらに当該感光部の分割領域や当該感光部における画素信号の読み出し順序について用途に応じた撮像の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による一実施形態の撮像素子の概略図である。
【図2】本発明による一実施形態の撮像素子における、任意の隣り合う4つの感光部の各々について、それぞれ遮光部が走査する際の位置関係と動作を説明する図である。
【図3】(a),(b),(c),(d),(e)は、本発明による一実施例の撮像素子における動作例を示す図である。
【図4】本発明による一実施例の撮像素子における1つの感光部を分割して得られた領域ごとの出力信号の一例を示す図である。
【図5】本発明による一実施例の撮像素子における1つの感光部を分割して得られた領域ごとの出力信号の正規化処理を説明する図である。
【図6】本発明による一実施例の撮像素子における、任意の隣り合う4つの感光部の各々について、感光部を分割して得られた領域ごとの信号を行方向の信号出力となるように並び替えを行う例を説明する図である。
【図7】本発明による一実施形態の撮像素子における信号処理部の一例を示すブロック図である。
【図8】本発明による一実施形態の撮像素子における信号処理部の動作例を示す図である。
【図9】本発明による一実施形態の撮像素子における信号処理部の別の動作例を示す図である。
【図10】従来技術における接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の例を示す図である。
【図11】従来技術における接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の解像度を決める要因についての説明図である。
【図12】従来技術における接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の解像度を決める要因としての接合誤差の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の撮像素子を説明する。尚、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
【0026】
図1に、本発明による一実施形態の撮像素子10の概略図を示す。本実施形態の撮像素子10は、図10に例示したような積層素子100a,100b,100c,100dと、液晶素子106とを備える。
【0027】
素子100aは、受光して得られる蓄積電荷に相当する信号を出力する感光部101をX,Y軸平面上に正方配置している。素子100bは、当該感光部101の各々で受光して得られる蓄積電荷に相当する信号について増幅する増幅部102をX,Y軸平面上に正方配置している。素子100dは、素子100cの信号処理部103を介して当該増幅した信号についてそれぞれの画素信号として記憶する記憶部104をX,Y軸平面上に正方配置している。素子100cは、記憶部104に記憶した各画素信号について、後述する遮光部110により感光部101を分割した所定の領域の行方向の配列順に読み出して出力する信号処理部103をX,Y軸平面上に正方配置している。積層素子100a,100b,100c,100dの各素子にそれぞれ正方配置された感光部101、増幅部102、信号処理部103及び記憶部104は、配線105を介して接続される(図10参照)。尚、感光部101、増幅部102、信号処理部103及び記憶部104について、Z軸方向に並列に抽出して出力するように構成するものであればX,Y軸平面上に六方配置(すなわち、ハニカム状の配置)とする構成にしてもよい。また、増幅部102の素子100bは、用途によっては必ずしも設けなくともよい。したがって、「蓄積電荷に相当する信号」として、感光部101から出力された信号を増幅してもよいし、非増幅としてもよい。
【0028】
したがって、図10に例示した構成と同様に、これらの積層素子100a,100b,100c,100dは、各感光部101から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力するように構成される。ただし、従来技術として図10を用いて説明した例とは異なり、本発明では、接合技法を用いるか否かに関わらず積層可能な精度内で作成した比較的大きなサイズの感光部101を有する積層素子であっても、当該感光部101のサイズで決まる解像度よりも高い解像度を得ることができ、すなわち撮像素子における積層素子100a,100b,100c,100dの接合精度の限界を超える高解像度化を可能とする点で相違する。
【0029】
すなわち、本実施形態では、撮像素子10は、液晶パネル等で代表される液晶素子106を用い、液晶素子106の偏光機能を司る偏光素子の制御によって遮光部110の走査を行う。図2は、任意の隣り合う4つの感光部101‐1,101‐2,101‐3,101‐4の各々について、それぞれ遮光部110‐1,110‐2,110‐3,110‐4が走査する際の位置関係と動作を説明する図である。本実施形態では、1つの遮光部110が1つの感光部101の領域の範囲内で走査する液晶素子106によって1つの感光部101の領域を所定の分割領域に分割して画素を形成する。通常、液晶素子106は、垂直用偏光板、特定の小領域ごとの個別電極基板、液晶、全領域の共通電極基板及び水平用偏光板からなり、特定の小領域における光の透過・不透過を制御することができる。このため、本実施形態の撮像素子10では、遮光部110の走査を液晶素子106で実現することができる。
【0030】
例えば1μm角以下の画素サイズに相当する高解像度の撮像素子10を得るため、積層素子の積層により作製できる程度の感光部101のサイズ(例えば、4μm角のサイズ)でも、本実施形態の撮像素子10では、液晶素子106が感光部101の一部を遮光部110で遮光し、その遮光による信号出力の減衰からその部分に照射される光量を算出し、遮光部110を走査して感光部101の領域を分割した各分割領域の蓄積電荷の変化量を画素信号とすることから、感光部101のサイズで決まる解像度よりも画像情報として得られる解像度を増加させることができる。
【0031】
したがって、本実施形態の撮像素子10では、1つの感光部101に対して数nmの分解能で数μm〜数十μmの変位量の遮光部110を実現することができる。
【0032】
より具体的に、感光部101と遮光部110の位置関係と動作について説明する。図2では、遮光部110‐1,110‐2,110‐3,110‐4の各々が感光部101‐1,101‐2,101‐3,101‐4の各々におけるぞれぞれの面上を矢印で示す順に走査する様子を示している。感光部101‐1に着目するに、遮光部110‐1は、感光部101‐1の面上を走査するように動き、遮光部110‐1が感光部101‐1の或る場所に位置する時間内にその遮光部110‐1以外の領域を通過した光を感光部101‐1において光電変換し、その蓄積電荷に相当する信号を増幅部102によって増幅して信号出力する。その後、感光部101‐1における蓄積電荷をリセットし、次に遮光部110‐1が感光部101‐1の面上の別の場所へ移動され、そこで遮光部110‐1がその場所に位置する時間内にその遮光部110‐1以外の領域を通過した光を感光部101‐1において光電変換し、その蓄積電荷に相当する信号を増幅部102によって増幅して信号出力する。これを繰り返すことにより、4つの感光部101‐1,101‐2,101‐3,101‐4で決まる解像度よりも、撮像時の解像度を高めることが可能となる。図2に示す例では、1つの感光部101を64分割する遮光部110の走査例を示していることから、64倍の高解像度化を実現することができ、従来技術における接合精度の問題で構成することができなかった高解像度の撮像素子10を実現することができる。
【0033】
次に、本発明に係る撮像素子10について、より具体的な実施例を説明する。
【0034】
(実施例)
まず、本発明による一実施例の撮像素子10について説明する。本実施例の撮像素子10は、感光部101のサイズを4μm角とした。また、0.5μm角の部分的な遮光が可能な液晶素子106を用いた。本実施例の撮像素子10の感光部101の数は、横240、縦135とした。液晶素子106と積層素子における感光部101を配列した素子100aまでの距離は、遮光部110を透過した光が散乱しない程度の距離として0.5μmとした。液晶素子106は感光部101の一部を遮光部110によって遮光しながら走査する。図3に、一実施例の撮像素子10における動作例を示す。図3では、図2に示した感光部101‐1について遮光部110‐1の走査によって64分割して得られる分割領域の一例を示している。撮像時の画素に相当する64分割された各領域は、X軸の進み方向(図面上で左から右)に分割領域を順次割り当て、さらに、Y軸の進み方向(図面上で上から下)に分割領域を順次割り当てている。したがって、図3(a)には、撮像時の画素に相当する領域1が示され、図3(b)には、撮像時の画素に相当する領域2が示され、図3(c)には、撮像時の画素に相当する領域3が示され、図3(d)には、撮像時の画素に相当する領域16が示され、図3(e)には、撮像時の画素に相当する領域57が示されている。このようにして、液晶素子106によって1つの遮光部110を1つの感光部101の領域の範囲内で走査することで、1つの感光部101の領域を所定の分割領域に分割して画素を形成する。実効的な画素数は、感光部101の面積と遮光部110の遮光面積の比だけ増加し、図3では64倍の高解像度化の例である。例えば、現在の技術レベルにおいても、10μm角の感光部101に0.5μm角の遮光部110を組み合わせることにより、実効的な画素数は400倍に増え、高解像度化を図ることができる。
【0035】
次に、本発明による一実施例の撮像素子10の動作の概略を説明する。図4は、本実施例の撮像素子10における1つの感光部101を分割して得られた領域ごとの出力信号の一例を示す図である。はじめに各感光部101について遮光せずに感光部101全体で受光し、光電変換によって感光部101に徐々に蓄積される電荷量の時間変化量X(グラフの傾き)を信号処理部103で測定して、基準とする蓄積電荷に相当する信号とする。その後、液晶素子106を駆動し、感光部101の一部(領域1)を一定時間遮光する。この遮光によって、蓄積電荷量の増加傾向が変化しX−ΔX1となる。この変化分ΔX1は本来領域1における受光量に等しいため、領域1における出力をΔX1として記憶部104に蓄積する。次に、感光部101の一部(領域2)を一定時間遮光する。この遮光によって、蓄積電荷量の増加傾向が変化しX−ΔX2となる。この変化分ΔX2は本来領域2における受光量に等しいため、領域2における出力をΔX2として記憶部104に蓄積する。これを例えば図3に示すように64回繰り返すことによって、各遮光部110における受光量を測定することで縦8倍、横8倍の高解像度化を図ることができる。尚、図4では、説明の便宜のために、感光部101を所定の領域数ごとにリセットする例として、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」における蓄積電荷量を累積する例を図示しているが、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」の走査ごとに感光部101をリセットしてもよいことは勿論である。
【0036】
液晶素子109を用いた場合、物理的に素子を移動させることなく遮光部110の走査を行うことができる。また、基準とする蓄積電荷に相当する信号に対する時間変化量として一定の形状を有する遮光部110の走査によって画素を形成するため、遮光部110における厳密な遮光能力に起因した画素形状を問題にすることなく安定した撮像画像を得ることができる。
【0037】
図5は、本実施例の撮像素子10における1つの感光部101を分割して得られた領域ごとの出力信号の正規化処理を説明する図である。図5では、説明の便宜のために、感光部101を所定の領域数ごとにリセットする例として、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」における蓄積電荷量を累積する例を図示しているが、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」の走査ごとに感光部101をリセットしてもよいことは勿論である。図5において、時間T1からT2にかけては遮光を行わず、この時間に蓄積された電荷量Yから、感光部101全体の時間変化をY/(T2−T1)として、信号処理部103が測定する。次に、液晶素子106が時間T2からT3にかけて領域1を遮光する。この時間T2からT3の間に蓄積された電荷量をY1とすれば、時間変化はY1/(T3−T2)となる。すなわち、本来領域1において感光部101が受光して蓄積する電荷量はY/(T2−T1)−Y1/(T3−T2)となり、この電荷量に相当する信号値を記憶部104に保存する。次に、液晶素子106が時間T3からT4にかけて領域2を遮光する。この時間T3からT4の間に蓄積された電荷量をY2とすれば、時間変化はY2/(T4−T3)となる。すなわち、本来領域2において感光部101が受光して蓄積する電荷量はY/(T2−T1)−Y2/(T4−T3)となり、この電荷量に相当する信号値を記憶部104に保存する。これを繰り返すことで、領域1から64における各蓄積電荷の時間変化量に相当する信号が記憶部104に保存される。図6は、本実施例の撮像素子10における蓄積電荷に相当する信号について行方向の信号出力に並び替えを行う説明図である。図6に示すように、信号処理部103は、記憶部104に保存された各蓄積電荷の時間変化量に相当する信号について、従来の撮像素子と同様な行方向の信号出力に直して、最終的に出力部(図示せず)へ出力する。これにより、各感光部101は全て64分割されるので、各感光部101の数(横240、縦135)は高解像度化され、横1920、縦1080のハイビジョン出力を得ることができる。別の例として、各感光部101を全て1024分割した場合、感光部101の数(横240、縦135)は全て1024分割され、スーパーハイビジョンの画素数(横7680、縦4320)の信号出力を得ることができる。
【0038】
本実施例の撮像素子10であれば、電荷の蓄積と転送を合わせた時間は、最終的に出力される映像の1フレームの時間を1/30秒とすれば、(1/30)÷64分割=1/1920秒となる。1つの感光部101を分割して得られた領域ごとの出力信号は、個別の画素位置の出力信号として得られる。各感光部101から得られる時系列の蓄積電荷に相当する信号は、それぞれの増幅部102で増幅された後、それぞれの信号処理部103を介してそれぞれの記憶部104に記憶される。さらに、図6に例示するように、それぞれの信号処理部103は、それぞれの記憶部104に記憶した信号を、従来の撮像素子100と同様な行方向の信号出力に直すように読み出して出力部(図示せず)に出力する。信号処理部103では、記憶部104における予め定めた領域ごとの信号の記憶及び読み出しに関して、従来の撮像素子100と同様な行方向の信号出力となるように予め外部クロック(CLK)に同期したレジスタ回路を構成してもよい。
【0039】
ここで、上述の実施例について、以下に示すような構成とすることができる。
【0040】
(1)感光部101として、一般にシリコンフォトファイオードを用いるが、例えばアモルファスセレンやアモルファスシリコンの様な光増感作用のある光電変換材料を用いても構わない。
【0041】
(2)感光部101と増幅部102及び信号処理部103は、1つの感光部101につき各1個ずつとした画素完全並列型でも、例えば4つの感光部101毎に1つの増幅部102及び信号処理部103とする部分並列型でも構わない。
【0042】
(3)撮像素子10として、CMOS撮像素子に限らずCCD撮像素子でも構わない。CCD撮像素子の場合は、例えば、前述した感光部101、増幅部102、信号処理部103及び記憶部104を配置した積層素子を、それぞれ感光部、電荷転送部、フレームメモリ及び信号処理部を配置した積層素子とすることができる。
【0043】
(4)遮光部110は静止と移動を繰り返さず、常に移動していても構わない。常に移動する構成とする場合、解像度は電荷を転送する周期によって決まる。例えば、4μm角の感光部101の面上で遮光部110をX軸方向やY軸方向に移動させ、その移動期間に蓄積電荷を4回転送する場合は、この感光部101で決まる4μm角の解像度に対して縦、横ともに2μmの解像度を得ることができる。
【0044】
(5)領域毎に蓄積された電荷は、その都度リセットしても構わないし、所定数の領域分までリセットせずに蓄積し続けても構わない。一般に電荷蓄積量の総和が大きい方がS/Nが高くなり、後者の方が有利となる場合がある。
【0045】
(6)液晶素子106と感光部101の素子100aとの間の距離は、光の回り込みよる影響を抑えるため、近い方が良い。より好ましくは、接触している方が良い。
【0046】
(7)本発明の係る撮像素子10において、それぞれの感光部101と液晶素子106との間に、遮光部110が走査して感光部101の面を分割した領域に対応する位置に、カラーフィルタを設けてもよい。したがって、多色用や単色用に関わらず本発明の係る撮像素子10を構成することができる。
【0047】
(8)本発明の係る撮像素子10において、遮光部110の形状は、正方形、長方形、円形、楕円形、菱形又は多角形とすることができる。
【0048】
次に、図7から図9を参照して、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の構成と動作の一例を説明する。
【0049】
図7に、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の構成例を示す。また、図8に、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の動作例を示す。また、図9に、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の別の動作例を示す。尚、図7から図9は、本発明に係る特定の部分のみを示したものであることに留意する。図7を参照するに、信号処理部103は、リセット信号発生部1031と、走査制御信号発生部1032と、出力信号配列制御部1033と、サンプリング信号発生部1034と、サンプル/ホールド(S/H)部1035,1036と、減算部1037とを備える。
【0050】
リセット信号発生部1031は、外部クロック(CLK)に同期して、それぞれの感光部101における電荷蓄積をリセットするリセット信号RSを発生し、感光部101に供給する。
【0051】
走査制御信号発生部1032は、外部クロック(CLK)に同期して、感光部101の面上の遮光部110の走査を行うための走査制御信号SCを発生し、液晶素子106に供給する。
【0052】
出力信号配列制御部1033は、外部クロック(CLK)に同期して、記憶部104に記憶された各感光部101から得られる時系列の蓄積電荷に相当する信号について、従来の撮像素子100と同様な行方向の信号出力に直すように読み出して出力部(図示せず)に出力するように、出力信号の配列を制御する。
【0053】
サンプリング信号発生部1034は、外部クロック(CLK)に同期して、感光部101を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号を基準としてサンプリングするためのサンプリング信号SPrと、感光部101を遮光部110により遮光して第2の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号をサンプリングするためのサンプリング信号SPsとを発生し、それぞれサンプル/ホールド(S/H)部1035,1036に供給する。
【0054】
サンプル/ホールド(S/H)部1035は、サンプリング信号SPrにより、感光部101を遮光することなく予め定めた蓄積時間(第1の蓄積時間)で得られる基準の蓄積電荷に相当する信号をサンプリングしてホールドする。
【0055】
サンプル/ホールド(S/H)部1036は、サンプリング信号SPsにより、遮光部110によって予め定めた蓄積時間(第2の蓄積時間)で当該遮光部110により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号をサンプリングしてホールドする。
【0056】
減算部1037は、サンプル/ホールド(S/H)部1035から得られる当該基準にした蓄積電荷に相当する信号を上記の第1の蓄積時間で除算することで正規化するとともに、サンプル/ホールド(S/H)部1036から得られる当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号を上記の第2の蓄積時間で正規化し、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号について正規化した信号と、当該遮光部110により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について正規化した信号との差分を演算し、この差分から得られる蓄積電荷の時間変化量を出力信号(画素信号)として、記憶部104に一時記憶する。この一時記憶された出力信号は出力信号配列制御部1033によって出力部(図示せず)へ出力する際に並び替えられる(図6参照)。
【0057】
図8には、事前に又は撮像の開始時に当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号を取得しておき、遮光による蓄積電荷に相当する信号を連続的に取得する際の図7に示す信号処理部103の動作タイミングの一例を示している。リセット信号RSの間隔について等間隔にする例を示しており、走査制御信号SCの発生に起因して感光部101の面上で遮光部110の走査が分割領域ごとに行われる。サンプリング信号SPrの発生後、連続して発生するサンプリング信号SPsによってそれぞれサンプリングしてホールドされた感光部101から得られる蓄積電荷に相当する各信号について差分した差分信号は、減算部1037によって分割領域ごとの出力信号(画素信号)として得ることができる。
【0058】
図9には、当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号と遮光による蓄積電荷に相当する信号とを交互に連続的に取得する際の図7に示す信号処理部103の動作タイミングの一例を示している。リセット信号RSの間隔について等間隔にする例を示しており、走査制御信号SCの発生に起因して感光部101の面上で遮光部110の走査が分割領域ごとに行われる。交互に発生するサンプリング信号SPr,SPsによってそれぞれサンプリングしてホールドされた感光部101から得られる蓄積電荷に相当する各信号について差分した差分信号は、減算部1037によって分割領域ごとの出力信号(画素信号)として得ることができる。
【0059】
尚、図8及び図9に示す例では、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号について正規化するための蓄積時間と、当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について正規化するための蓄積時間に関して、いずれも同じ一定の時間としていることから、時間の関数として正規化演算する必要がない。このため、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号と当該遮光部110により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号との差分を、遮光による蓄積電荷の変化量で定義される画素信号として扱うことができる。
【0060】
また、図8及び図9で示した例では、リセット信号RSの間隔について等間隔にする例を示したが、必ずしも等間隔とする必要はなく、アパーチャ110の走査とリセットタイミングを関連付けた予め定めた時間パターンに従って、感光部101のリセットを間欠的に行うようにしてもよい。ただし、この場合、分割領域ごとに得られる出力信号に対してこの時間パターンに従うアパーチャ110の走査に対応した蓄積時間で除算して、画素信号を正規化するように構成するのが好適である。このような時間パターンに従う除算機能は、撮像素子10,10bにおける信号処理部103の一部として構成してもよいし、撮像素子10,10bからの出力信号に対する後段の処理として実現することもできる。
【0061】
上記の実施形態では特定の例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、感光部や信号処理部の素子を積層した積層素子を例に説明したが、感光部101と他の機能部(増幅部102や信号処理部103等)とを平面上に配置した素子に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、従来技術では製造が困難であった高解像度の画素(例えば、1μm角以下の画素サイズ)を有する撮像素子を提供することができるので、特に、ハイビジョン又はスーパーハイビジョン、さらには立体視用の撮像カメラの用途に有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 本発明に係る撮像素子
100 従来の撮像素子
100a,100b,100c,100d 積層素子の各素子
101,101‐1,101‐2,101‐3,101‐4 感光部
102 増幅部
103 信号処理部
104 記憶部
105 配線
106 液晶素子
110,110‐1,110‐2,110‐3,110‐4 遮光部
1031 リセット信号発生部
1032 走査制御信号発生部
1033 出力信号配列制御部
1034 サンプリング信号発生部
1035,1036 サンプル/ホールド(S/H)部
1037 減算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の技術分野に関するものであり、特に高解像度化した画素を有する撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子の高解像度化に対する要求が著しい。これまでに、例えばスーパーハイビジョンに対応した3200万画素を有する撮像素子が実現されている。しかし将来における高解像度化の要求レベルはさらに高く、例えばインテグラルフォトグラフィー(IP)を用いた3次元情報の撮像における解像度の要求基準はこれらのさらに2〜3桁以上にのぼる。この場合、撮像素子の現実的なサイズから考えて、1画素のサイズは1μm角以下になる。
【0003】
撮像素子の高解像度化の従来技法として、感光部、電荷転送部あるいは増幅部などを含め1つの画素のサイズを小さくし、撮像素子平面内に設ける画素数を増やす方法がある。この場合、画素サイズが小さくなるにつれて感光部の面積が小さくなり、単位時間あたりに蓄積できる電荷量が低下してS/N比が低下することになるが、例えばCMOS撮像素子の場合は増幅部等の周辺回路が画素内に設けられており、また画素と画素の間には配線が設けられているため、感光部を十分広くとることが難しかった。これらの理由から画素サイズが1μm角以下になる場合には十分な撮像性能を実現することができなかった。
【0004】
そこで、画素内に設けられた増幅部あるいは配線で占められる面積を小さくして感光部の面積を広げるため、感光部、電荷転送部あるいは増幅部などの機能を別々の素子平面上に作製し、これらをプラズマ処理などの接合技術により積層して、信号を各画素のZ軸方向に並列出力する撮像素子が提案されている(例えば特許文献1、非特許文献1,2参照)。このような接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の例を図10に示す。図10に示す撮像素子100では、感光部101により受けた光を光電変換によって電荷に変換し蓄積する。この蓄積電荷に相当する信号が配線105を介して、増幅部102へ送られ、次いで信号処理部103へ送られ、記憶部104に保存され、最終的に出力部(図示せず)から信号が出力される。このように、感光部101、増幅部102(あるいは電荷転送部)、信号処理部103及び記憶部104などの機能は、それぞれ別々の素子平面上(図示100a,100b,100c,100d)に作製され、接合技術により配線105を形成して各素子100a,100b,100c,100dを積層することにより、撮像素子100を形成する。
【0005】
これによって1画素の面積内に占める感光部の割合を大幅に高くすることが可能となり、画素数が増えて画素が小さくなった場合でもS/N比を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/041174号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kurino et al., Intelligent image sensor chip with three dimensional structure, IEDM Technical Digest. International Washington, DC, USA, Dec. 5-8, 1999, pp. 879-882
【非特許文献2】Lee et al., Development of Three-Dimensional Integration Technology for Highly Parallel Image-Processing Chip, Japanese Journal of Applied Physics (JJAP), Vol. 39 Part1 (2000), No. 4B, pp. 2473-2477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1,2に開示される接合技法により撮像素子の高解像度化を図る場合、各素子100a,100b,100c,100dの接合誤差によって解像度の限界が決まることになる。図11及び図12は、接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の解像度を決める要因についての説明図である。図11を参照するに、例えば感光部101を配置した素子100aと増幅部102を配置した素子100bとを接合する場合を考える。図11における図示Aで示される点線枠の詳細を図12に示している。図12を参照するに、1画素ごとに感光部101及び増幅部102を形成することから、接合誤差が画素サイズを上回ると、感光部101から出た配線105が直下の増幅部102に接続されないことになる。
【0009】
現在最も精度が高いとされる赤外線顕微鏡及び画像処理を併用して、プラズマ処理などの接合処理で各素子100a,100b,100c,100dを接合するとしても、その誤差は最大±0.5μm程度とされる。従って、図11及び図12に示すように、画素サイズが1μm角以下になる場合には、積層時の精度が不足するため作製が難しかった。すなわち、この接合技法を用いても、1μm角以下の画素サイズを有する撮像素子を形成することが困難であった。
【0010】
本発明は、高解像度化した画素(例えば、1μm角以下の画素サイズ)を有する撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の問題を解決するために、本発明の撮像素子は、X,Y軸平面上に正方又は六方配置された各感光部から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力する積層素子と、前記積層素子における感光部を有する素子に対して設けられ、それぞれの感光部に対して一部の領域で遮光するための当該感光部の面積よりも小さい面積を有する1つの遮光部を、当該感光部の領域の範囲内で走査することにより当該感光部を所定の分割数で分割し、当該分割した各領域における遮光による蓄積電荷の変化量によって画素を形成する液晶素子と、を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、積層により作製できる程度の大きさの感光部に対して、より小さいサイズの遮光部を当該感光部の領域の範囲内で走査して画素に相当する信号を抽出するため、既存の撮像素子よりも解像度を高めることができる。また、遮光部の走査を電気的な制御のみで形成することができるため、当該感光部の分割領域のサイズや位置を自由に変更することができ、撮像の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の撮像素子において、前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号を基準にして、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号と当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号との差分とすることを特徴とする。
【0014】
これにより、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号を基準にして画素信号を形成することから、撮像ごとに安定した画素信号を得ることができる。
【0015】
また、本発明の撮像素子において、前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分から得られる蓄積電荷の時間変化量とすることを特徴とする。
【0016】
これにより、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号における蓄積時間と、画素信号として取得する遮光時の蓄積時間とを個別に設定することができるため、撮像モードに応じた撮像素子の制御の自由度を高めることができる。例えば、撮像モードとして、静止画モード、動画モード、多重撮影モード等が考えられる。撮像モード別の制御を例示すると、静止画モードでは、事前に又は撮像の開始時に当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号を取得しておき、遮光による蓄積電荷に相当する信号を連続的に撮像することができる。また、動画モードでは、当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号と遮光による蓄積電荷に相当する信号とを交互に取得して差分することにより撮像することができる。また、多重撮影モードでは、事前に当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号を取得しておき、遮光による蓄積電荷に相当する信号を連続的に取得した後、多重して撮像することができる。
【0017】
また、本発明の撮像素子において、前記1つの遮光部の面積は、前記1つの感光部の面積の1/2以下であることを特徴とする。
【0018】
これにより、感光部の大きさで決まる既存の撮像素子よりも解像度を少なくとも2倍以上に高めることができる。
【0019】
また、本発明の撮像素子において、前記積層素子は、前記感光部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第1の素子と、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号についてそれぞれの画素信号として記憶する記憶部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第2の素子と、前記記憶部に記憶した各画素信号について、前記所定の領域の行方向の配列順に読み出して出力する信号処理部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第3の素子と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、遮光部の走査順に得られた画素信号について、当該感光部の分割領域の行方向の配列順に読み出して出力することができるため、撮像素子から出力される画素信号の後処理が容易になる。
【0021】
また、本発明の撮像素子において、前記信号処理部は、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号に関して、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分を行ない、当該遮光による蓄積電荷の時間変化量を画素信号として前記記憶部に記憶する手段を有することを特徴とする。
【0022】
ここで、当該第1の蓄積時間と当該第2の蓄積時間について、いずれも同じ一定の時間とすることができるし、異なる時間としてもよい。遮光による蓄積電荷に相当する信号を得る際の当該第2の蓄積時間についても個別に異なる蓄積時間としてもよく、例えば、蓄積電荷に相当する信号をその蓄積時間で除算することで正規化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高解像度の画素(例えば、1μm角以下の画素サイズ)を有する撮像素子を提供することができる。特に、従来の撮像素子で生じていた画素間の不感領域を大幅に低減させ、同一の画素サイズ比較でS/Nを改善することができる。さらに当該感光部の分割領域や当該感光部における画素信号の読み出し順序について用途に応じた撮像の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による一実施形態の撮像素子の概略図である。
【図2】本発明による一実施形態の撮像素子における、任意の隣り合う4つの感光部の各々について、それぞれ遮光部が走査する際の位置関係と動作を説明する図である。
【図3】(a),(b),(c),(d),(e)は、本発明による一実施例の撮像素子における動作例を示す図である。
【図4】本発明による一実施例の撮像素子における1つの感光部を分割して得られた領域ごとの出力信号の一例を示す図である。
【図5】本発明による一実施例の撮像素子における1つの感光部を分割して得られた領域ごとの出力信号の正規化処理を説明する図である。
【図6】本発明による一実施例の撮像素子における、任意の隣り合う4つの感光部の各々について、感光部を分割して得られた領域ごとの信号を行方向の信号出力となるように並び替えを行う例を説明する図である。
【図7】本発明による一実施形態の撮像素子における信号処理部の一例を示すブロック図である。
【図8】本発明による一実施形態の撮像素子における信号処理部の動作例を示す図である。
【図9】本発明による一実施形態の撮像素子における信号処理部の別の動作例を示す図である。
【図10】従来技術における接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の例を示す図である。
【図11】従来技術における接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の解像度を決める要因についての説明図である。
【図12】従来技術における接合技法を用いて作製する積層型の撮像素子の解像度を決める要因としての接合誤差の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の撮像素子を説明する。尚、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
【0026】
図1に、本発明による一実施形態の撮像素子10の概略図を示す。本実施形態の撮像素子10は、図10に例示したような積層素子100a,100b,100c,100dと、液晶素子106とを備える。
【0027】
素子100aは、受光して得られる蓄積電荷に相当する信号を出力する感光部101をX,Y軸平面上に正方配置している。素子100bは、当該感光部101の各々で受光して得られる蓄積電荷に相当する信号について増幅する増幅部102をX,Y軸平面上に正方配置している。素子100dは、素子100cの信号処理部103を介して当該増幅した信号についてそれぞれの画素信号として記憶する記憶部104をX,Y軸平面上に正方配置している。素子100cは、記憶部104に記憶した各画素信号について、後述する遮光部110により感光部101を分割した所定の領域の行方向の配列順に読み出して出力する信号処理部103をX,Y軸平面上に正方配置している。積層素子100a,100b,100c,100dの各素子にそれぞれ正方配置された感光部101、増幅部102、信号処理部103及び記憶部104は、配線105を介して接続される(図10参照)。尚、感光部101、増幅部102、信号処理部103及び記憶部104について、Z軸方向に並列に抽出して出力するように構成するものであればX,Y軸平面上に六方配置(すなわち、ハニカム状の配置)とする構成にしてもよい。また、増幅部102の素子100bは、用途によっては必ずしも設けなくともよい。したがって、「蓄積電荷に相当する信号」として、感光部101から出力された信号を増幅してもよいし、非増幅としてもよい。
【0028】
したがって、図10に例示した構成と同様に、これらの積層素子100a,100b,100c,100dは、各感光部101から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力するように構成される。ただし、従来技術として図10を用いて説明した例とは異なり、本発明では、接合技法を用いるか否かに関わらず積層可能な精度内で作成した比較的大きなサイズの感光部101を有する積層素子であっても、当該感光部101のサイズで決まる解像度よりも高い解像度を得ることができ、すなわち撮像素子における積層素子100a,100b,100c,100dの接合精度の限界を超える高解像度化を可能とする点で相違する。
【0029】
すなわち、本実施形態では、撮像素子10は、液晶パネル等で代表される液晶素子106を用い、液晶素子106の偏光機能を司る偏光素子の制御によって遮光部110の走査を行う。図2は、任意の隣り合う4つの感光部101‐1,101‐2,101‐3,101‐4の各々について、それぞれ遮光部110‐1,110‐2,110‐3,110‐4が走査する際の位置関係と動作を説明する図である。本実施形態では、1つの遮光部110が1つの感光部101の領域の範囲内で走査する液晶素子106によって1つの感光部101の領域を所定の分割領域に分割して画素を形成する。通常、液晶素子106は、垂直用偏光板、特定の小領域ごとの個別電極基板、液晶、全領域の共通電極基板及び水平用偏光板からなり、特定の小領域における光の透過・不透過を制御することができる。このため、本実施形態の撮像素子10では、遮光部110の走査を液晶素子106で実現することができる。
【0030】
例えば1μm角以下の画素サイズに相当する高解像度の撮像素子10を得るため、積層素子の積層により作製できる程度の感光部101のサイズ(例えば、4μm角のサイズ)でも、本実施形態の撮像素子10では、液晶素子106が感光部101の一部を遮光部110で遮光し、その遮光による信号出力の減衰からその部分に照射される光量を算出し、遮光部110を走査して感光部101の領域を分割した各分割領域の蓄積電荷の変化量を画素信号とすることから、感光部101のサイズで決まる解像度よりも画像情報として得られる解像度を増加させることができる。
【0031】
したがって、本実施形態の撮像素子10では、1つの感光部101に対して数nmの分解能で数μm〜数十μmの変位量の遮光部110を実現することができる。
【0032】
より具体的に、感光部101と遮光部110の位置関係と動作について説明する。図2では、遮光部110‐1,110‐2,110‐3,110‐4の各々が感光部101‐1,101‐2,101‐3,101‐4の各々におけるぞれぞれの面上を矢印で示す順に走査する様子を示している。感光部101‐1に着目するに、遮光部110‐1は、感光部101‐1の面上を走査するように動き、遮光部110‐1が感光部101‐1の或る場所に位置する時間内にその遮光部110‐1以外の領域を通過した光を感光部101‐1において光電変換し、その蓄積電荷に相当する信号を増幅部102によって増幅して信号出力する。その後、感光部101‐1における蓄積電荷をリセットし、次に遮光部110‐1が感光部101‐1の面上の別の場所へ移動され、そこで遮光部110‐1がその場所に位置する時間内にその遮光部110‐1以外の領域を通過した光を感光部101‐1において光電変換し、その蓄積電荷に相当する信号を増幅部102によって増幅して信号出力する。これを繰り返すことにより、4つの感光部101‐1,101‐2,101‐3,101‐4で決まる解像度よりも、撮像時の解像度を高めることが可能となる。図2に示す例では、1つの感光部101を64分割する遮光部110の走査例を示していることから、64倍の高解像度化を実現することができ、従来技術における接合精度の問題で構成することができなかった高解像度の撮像素子10を実現することができる。
【0033】
次に、本発明に係る撮像素子10について、より具体的な実施例を説明する。
【0034】
(実施例)
まず、本発明による一実施例の撮像素子10について説明する。本実施例の撮像素子10は、感光部101のサイズを4μm角とした。また、0.5μm角の部分的な遮光が可能な液晶素子106を用いた。本実施例の撮像素子10の感光部101の数は、横240、縦135とした。液晶素子106と積層素子における感光部101を配列した素子100aまでの距離は、遮光部110を透過した光が散乱しない程度の距離として0.5μmとした。液晶素子106は感光部101の一部を遮光部110によって遮光しながら走査する。図3に、一実施例の撮像素子10における動作例を示す。図3では、図2に示した感光部101‐1について遮光部110‐1の走査によって64分割して得られる分割領域の一例を示している。撮像時の画素に相当する64分割された各領域は、X軸の進み方向(図面上で左から右)に分割領域を順次割り当て、さらに、Y軸の進み方向(図面上で上から下)に分割領域を順次割り当てている。したがって、図3(a)には、撮像時の画素に相当する領域1が示され、図3(b)には、撮像時の画素に相当する領域2が示され、図3(c)には、撮像時の画素に相当する領域3が示され、図3(d)には、撮像時の画素に相当する領域16が示され、図3(e)には、撮像時の画素に相当する領域57が示されている。このようにして、液晶素子106によって1つの遮光部110を1つの感光部101の領域の範囲内で走査することで、1つの感光部101の領域を所定の分割領域に分割して画素を形成する。実効的な画素数は、感光部101の面積と遮光部110の遮光面積の比だけ増加し、図3では64倍の高解像度化の例である。例えば、現在の技術レベルにおいても、10μm角の感光部101に0.5μm角の遮光部110を組み合わせることにより、実効的な画素数は400倍に増え、高解像度化を図ることができる。
【0035】
次に、本発明による一実施例の撮像素子10の動作の概略を説明する。図4は、本実施例の撮像素子10における1つの感光部101を分割して得られた領域ごとの出力信号の一例を示す図である。はじめに各感光部101について遮光せずに感光部101全体で受光し、光電変換によって感光部101に徐々に蓄積される電荷量の時間変化量X(グラフの傾き)を信号処理部103で測定して、基準とする蓄積電荷に相当する信号とする。その後、液晶素子106を駆動し、感光部101の一部(領域1)を一定時間遮光する。この遮光によって、蓄積電荷量の増加傾向が変化しX−ΔX1となる。この変化分ΔX1は本来領域1における受光量に等しいため、領域1における出力をΔX1として記憶部104に蓄積する。次に、感光部101の一部(領域2)を一定時間遮光する。この遮光によって、蓄積電荷量の増加傾向が変化しX−ΔX2となる。この変化分ΔX2は本来領域2における受光量に等しいため、領域2における出力をΔX2として記憶部104に蓄積する。これを例えば図3に示すように64回繰り返すことによって、各遮光部110における受光量を測定することで縦8倍、横8倍の高解像度化を図ることができる。尚、図4では、説明の便宜のために、感光部101を所定の領域数ごとにリセットする例として、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」における蓄積電荷量を累積する例を図示しているが、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」の走査ごとに感光部101をリセットしてもよいことは勿論である。
【0036】
液晶素子109を用いた場合、物理的に素子を移動させることなく遮光部110の走査を行うことができる。また、基準とする蓄積電荷に相当する信号に対する時間変化量として一定の形状を有する遮光部110の走査によって画素を形成するため、遮光部110における厳密な遮光能力に起因した画素形状を問題にすることなく安定した撮像画像を得ることができる。
【0037】
図5は、本実施例の撮像素子10における1つの感光部101を分割して得られた領域ごとの出力信号の正規化処理を説明する図である。図5では、説明の便宜のために、感光部101を所定の領域数ごとにリセットする例として、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」における蓄積電荷量を累積する例を図示しているが、「遮光なし」、「領域1」及び「領域2」の走査ごとに感光部101をリセットしてもよいことは勿論である。図5において、時間T1からT2にかけては遮光を行わず、この時間に蓄積された電荷量Yから、感光部101全体の時間変化をY/(T2−T1)として、信号処理部103が測定する。次に、液晶素子106が時間T2からT3にかけて領域1を遮光する。この時間T2からT3の間に蓄積された電荷量をY1とすれば、時間変化はY1/(T3−T2)となる。すなわち、本来領域1において感光部101が受光して蓄積する電荷量はY/(T2−T1)−Y1/(T3−T2)となり、この電荷量に相当する信号値を記憶部104に保存する。次に、液晶素子106が時間T3からT4にかけて領域2を遮光する。この時間T3からT4の間に蓄積された電荷量をY2とすれば、時間変化はY2/(T4−T3)となる。すなわち、本来領域2において感光部101が受光して蓄積する電荷量はY/(T2−T1)−Y2/(T4−T3)となり、この電荷量に相当する信号値を記憶部104に保存する。これを繰り返すことで、領域1から64における各蓄積電荷の時間変化量に相当する信号が記憶部104に保存される。図6は、本実施例の撮像素子10における蓄積電荷に相当する信号について行方向の信号出力に並び替えを行う説明図である。図6に示すように、信号処理部103は、記憶部104に保存された各蓄積電荷の時間変化量に相当する信号について、従来の撮像素子と同様な行方向の信号出力に直して、最終的に出力部(図示せず)へ出力する。これにより、各感光部101は全て64分割されるので、各感光部101の数(横240、縦135)は高解像度化され、横1920、縦1080のハイビジョン出力を得ることができる。別の例として、各感光部101を全て1024分割した場合、感光部101の数(横240、縦135)は全て1024分割され、スーパーハイビジョンの画素数(横7680、縦4320)の信号出力を得ることができる。
【0038】
本実施例の撮像素子10であれば、電荷の蓄積と転送を合わせた時間は、最終的に出力される映像の1フレームの時間を1/30秒とすれば、(1/30)÷64分割=1/1920秒となる。1つの感光部101を分割して得られた領域ごとの出力信号は、個別の画素位置の出力信号として得られる。各感光部101から得られる時系列の蓄積電荷に相当する信号は、それぞれの増幅部102で増幅された後、それぞれの信号処理部103を介してそれぞれの記憶部104に記憶される。さらに、図6に例示するように、それぞれの信号処理部103は、それぞれの記憶部104に記憶した信号を、従来の撮像素子100と同様な行方向の信号出力に直すように読み出して出力部(図示せず)に出力する。信号処理部103では、記憶部104における予め定めた領域ごとの信号の記憶及び読み出しに関して、従来の撮像素子100と同様な行方向の信号出力となるように予め外部クロック(CLK)に同期したレジスタ回路を構成してもよい。
【0039】
ここで、上述の実施例について、以下に示すような構成とすることができる。
【0040】
(1)感光部101として、一般にシリコンフォトファイオードを用いるが、例えばアモルファスセレンやアモルファスシリコンの様な光増感作用のある光電変換材料を用いても構わない。
【0041】
(2)感光部101と増幅部102及び信号処理部103は、1つの感光部101につき各1個ずつとした画素完全並列型でも、例えば4つの感光部101毎に1つの増幅部102及び信号処理部103とする部分並列型でも構わない。
【0042】
(3)撮像素子10として、CMOS撮像素子に限らずCCD撮像素子でも構わない。CCD撮像素子の場合は、例えば、前述した感光部101、増幅部102、信号処理部103及び記憶部104を配置した積層素子を、それぞれ感光部、電荷転送部、フレームメモリ及び信号処理部を配置した積層素子とすることができる。
【0043】
(4)遮光部110は静止と移動を繰り返さず、常に移動していても構わない。常に移動する構成とする場合、解像度は電荷を転送する周期によって決まる。例えば、4μm角の感光部101の面上で遮光部110をX軸方向やY軸方向に移動させ、その移動期間に蓄積電荷を4回転送する場合は、この感光部101で決まる4μm角の解像度に対して縦、横ともに2μmの解像度を得ることができる。
【0044】
(5)領域毎に蓄積された電荷は、その都度リセットしても構わないし、所定数の領域分までリセットせずに蓄積し続けても構わない。一般に電荷蓄積量の総和が大きい方がS/Nが高くなり、後者の方が有利となる場合がある。
【0045】
(6)液晶素子106と感光部101の素子100aとの間の距離は、光の回り込みよる影響を抑えるため、近い方が良い。より好ましくは、接触している方が良い。
【0046】
(7)本発明の係る撮像素子10において、それぞれの感光部101と液晶素子106との間に、遮光部110が走査して感光部101の面を分割した領域に対応する位置に、カラーフィルタを設けてもよい。したがって、多色用や単色用に関わらず本発明の係る撮像素子10を構成することができる。
【0047】
(8)本発明の係る撮像素子10において、遮光部110の形状は、正方形、長方形、円形、楕円形、菱形又は多角形とすることができる。
【0048】
次に、図7から図9を参照して、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の構成と動作の一例を説明する。
【0049】
図7に、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の構成例を示す。また、図8に、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の動作例を示す。また、図9に、本実施形態の撮像素子10における信号処理部103の別の動作例を示す。尚、図7から図9は、本発明に係る特定の部分のみを示したものであることに留意する。図7を参照するに、信号処理部103は、リセット信号発生部1031と、走査制御信号発生部1032と、出力信号配列制御部1033と、サンプリング信号発生部1034と、サンプル/ホールド(S/H)部1035,1036と、減算部1037とを備える。
【0050】
リセット信号発生部1031は、外部クロック(CLK)に同期して、それぞれの感光部101における電荷蓄積をリセットするリセット信号RSを発生し、感光部101に供給する。
【0051】
走査制御信号発生部1032は、外部クロック(CLK)に同期して、感光部101の面上の遮光部110の走査を行うための走査制御信号SCを発生し、液晶素子106に供給する。
【0052】
出力信号配列制御部1033は、外部クロック(CLK)に同期して、記憶部104に記憶された各感光部101から得られる時系列の蓄積電荷に相当する信号について、従来の撮像素子100と同様な行方向の信号出力に直すように読み出して出力部(図示せず)に出力するように、出力信号の配列を制御する。
【0053】
サンプリング信号発生部1034は、外部クロック(CLK)に同期して、感光部101を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号を基準としてサンプリングするためのサンプリング信号SPrと、感光部101を遮光部110により遮光して第2の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号をサンプリングするためのサンプリング信号SPsとを発生し、それぞれサンプル/ホールド(S/H)部1035,1036に供給する。
【0054】
サンプル/ホールド(S/H)部1035は、サンプリング信号SPrにより、感光部101を遮光することなく予め定めた蓄積時間(第1の蓄積時間)で得られる基準の蓄積電荷に相当する信号をサンプリングしてホールドする。
【0055】
サンプル/ホールド(S/H)部1036は、サンプリング信号SPsにより、遮光部110によって予め定めた蓄積時間(第2の蓄積時間)で当該遮光部110により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号をサンプリングしてホールドする。
【0056】
減算部1037は、サンプル/ホールド(S/H)部1035から得られる当該基準にした蓄積電荷に相当する信号を上記の第1の蓄積時間で除算することで正規化するとともに、サンプル/ホールド(S/H)部1036から得られる当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号を上記の第2の蓄積時間で正規化し、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号について正規化した信号と、当該遮光部110により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について正規化した信号との差分を演算し、この差分から得られる蓄積電荷の時間変化量を出力信号(画素信号)として、記憶部104に一時記憶する。この一時記憶された出力信号は出力信号配列制御部1033によって出力部(図示せず)へ出力する際に並び替えられる(図6参照)。
【0057】
図8には、事前に又は撮像の開始時に当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号を取得しておき、遮光による蓄積電荷に相当する信号を連続的に取得する際の図7に示す信号処理部103の動作タイミングの一例を示している。リセット信号RSの間隔について等間隔にする例を示しており、走査制御信号SCの発生に起因して感光部101の面上で遮光部110の走査が分割領域ごとに行われる。サンプリング信号SPrの発生後、連続して発生するサンプリング信号SPsによってそれぞれサンプリングしてホールドされた感光部101から得られる蓄積電荷に相当する各信号について差分した差分信号は、減算部1037によって分割領域ごとの出力信号(画素信号)として得ることができる。
【0058】
図9には、当該基準の蓄積電荷に相当する正規化した信号と遮光による蓄積電荷に相当する信号とを交互に連続的に取得する際の図7に示す信号処理部103の動作タイミングの一例を示している。リセット信号RSの間隔について等間隔にする例を示しており、走査制御信号SCの発生に起因して感光部101の面上で遮光部110の走査が分割領域ごとに行われる。交互に発生するサンプリング信号SPr,SPsによってそれぞれサンプリングしてホールドされた感光部101から得られる蓄積電荷に相当する各信号について差分した差分信号は、減算部1037によって分割領域ごとの出力信号(画素信号)として得ることができる。
【0059】
尚、図8及び図9に示す例では、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号について正規化するための蓄積時間と、当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について正規化するための蓄積時間に関して、いずれも同じ一定の時間としていることから、時間の関数として正規化演算する必要がない。このため、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号と当該遮光部110により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号との差分を、遮光による蓄積電荷の変化量で定義される画素信号として扱うことができる。
【0060】
また、図8及び図9で示した例では、リセット信号RSの間隔について等間隔にする例を示したが、必ずしも等間隔とする必要はなく、アパーチャ110の走査とリセットタイミングを関連付けた予め定めた時間パターンに従って、感光部101のリセットを間欠的に行うようにしてもよい。ただし、この場合、分割領域ごとに得られる出力信号に対してこの時間パターンに従うアパーチャ110の走査に対応した蓄積時間で除算して、画素信号を正規化するように構成するのが好適である。このような時間パターンに従う除算機能は、撮像素子10,10bにおける信号処理部103の一部として構成してもよいし、撮像素子10,10bからの出力信号に対する後段の処理として実現することもできる。
【0061】
上記の実施形態では特定の例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、感光部や信号処理部の素子を積層した積層素子を例に説明したが、感光部101と他の機能部(増幅部102や信号処理部103等)とを平面上に配置した素子に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、従来技術では製造が困難であった高解像度の画素(例えば、1μm角以下の画素サイズ)を有する撮像素子を提供することができるので、特に、ハイビジョン又はスーパーハイビジョン、さらには立体視用の撮像カメラの用途に有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 本発明に係る撮像素子
100 従来の撮像素子
100a,100b,100c,100d 積層素子の各素子
101,101‐1,101‐2,101‐3,101‐4 感光部
102 増幅部
103 信号処理部
104 記憶部
105 配線
106 液晶素子
110,110‐1,110‐2,110‐3,110‐4 遮光部
1031 リセット信号発生部
1032 走査制御信号発生部
1033 出力信号配列制御部
1034 サンプリング信号発生部
1035,1036 サンプル/ホールド(S/H)部
1037 減算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X,Y軸平面上に正方又は六方配置された各感光部から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力する積層素子と、
前記積層素子における感光部を有する素子に対して設けられ、それぞれの感光部に対して一部の領域で遮光するための当該感光部の面積よりも小さい面積を有する1つの遮光部を、当該感光部の領域の範囲内で走査することにより当該感光部を所定の分割数で分割し、当該分割した各領域における遮光による蓄積電荷の変化量によって画素を形成する液晶素子と、
を備えることを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号を基準にして、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号と当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号との差分とすることを特徴とする、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分から得られる蓄積電荷の時間変化量とすることを特徴とする、請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記1つの遮光部の面積は、前記1つの感光部の面積の1/2以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記積層素子は、前記感光部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第1の素子と、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号についてそれぞれの画素信号として記憶する記憶部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第2の素子と、前記記憶部に記憶した各画素信号について、前記所定の領域の行方向の配列順に読み出して出力する信号処理部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第3の素子と、を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号に関して、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分を行ない、当該遮光による蓄積電荷の時間変化量を画素信号として前記記憶部に記憶する手段を有することを特徴とする、請求項5に記載の撮像素子。
【請求項1】
X,Y軸平面上に正方又は六方配置された各感光部から蓄積電荷に相当する信号をZ軸方向に並列に抽出して出力する積層素子と、
前記積層素子における感光部を有する素子に対して設けられ、それぞれの感光部に対して一部の領域で遮光するための当該感光部の面積よりも小さい面積を有する1つの遮光部を、当該感光部の領域の範囲内で走査することにより当該感光部を所定の分割数で分割し、当該分割した各領域における遮光による蓄積電荷の変化量によって画素を形成する液晶素子と、
を備えることを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく得られる蓄積電荷に相当する信号を基準にして、当該基準にした蓄積電荷に相当する信号と当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号との差分とすることを特徴とする、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記遮光による蓄積電荷の変化量は、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分から得られる蓄積電荷の時間変化量とすることを特徴とする、請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記1つの遮光部の面積は、前記1つの感光部の面積の1/2以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記積層素子は、前記感光部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第1の素子と、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号についてそれぞれの画素信号として記憶する記憶部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第2の素子と、前記記憶部に記憶した各画素信号について、前記所定の領域の行方向の配列順に読み出して出力する信号処理部をX,Y軸平面上に正方又は六方配置した第3の素子と、を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記遮光部の走査を介して当該感光部の各々で受光して得られる前記蓄積電荷に相当する信号に関して、当該感光部を遮光することなく第1の蓄積時間で得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第1の蓄積時間で正規化した信号を基準とし、当該基準にした蓄積電荷に相当する正規化した信号と、第2の蓄積時間で当該遮光部により遮光して得られる蓄積電荷に相当する信号について当該第2の蓄積時間で正規化した信号との差分を行ない、当該遮光による蓄積電荷の時間変化量を画素信号として前記記憶部に記憶する手段を有することを特徴とする、請求項5に記載の撮像素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−110538(P2013−110538A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253313(P2011−253313)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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