説明

撮像装置、その撮像方法及びプログラム

【課題】
入力画像全体のフレームレートを維持したまま、各部分領域の画像の露出を良好にできるようにした撮像装置、その撮像方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】
撮像素子を有する撮像装置は、撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出し、入力画像に対して複数の部分領域を設定し、当該設定された部分領域各々における露光状態を検出し、入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御するとともに、入力画像全体の露光状態の検出結果と部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により入力画像の明るさを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を有する撮像装置、その撮像方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子を備えた撮像装置が知られている。このような撮像装置においては、同一画像から複数の領域を切り出して、その領域毎に輝度補正などの処理を施した後、一枚の画像に合成することで、画像全体と切り出し画像の各々とで適正な露出の画像を得る技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、分割画像毎の測光値に対して重み付け平均処理を施して画像全体の測光値を導出することで、画像全体の露出を得る技術が提案されている(特許文献2参照)。また、画像内における所定レベル以上の信号に対してレベル抑圧を施すことで、部分領域においても適正な露出の画像を得る技術が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−142680号公報
【特許文献2】特開2002−320137号公報
【特許文献3】特開昭60−242776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した技術には、種々の課題がある。例えば、特許文献1に記載された技術では、切り出しや合成処理などに負荷がかかるため、リアルタイムでの処理が困難になる。また仮に、リアルタイム処理が行なえたとしても、処理負荷が膨大となる。また、特許文献2に記載された技術では、画像全体に対する露出値のみが得られ、部分画像では最適な画像が得られない。更に、特許文献3に記載された技術では、指定した部分領域毎に適正な露出の画像を得ることはできない。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、入力画像全体のフレームレートを維持したまま、各部分領域の画像の露出を良好にできるようにした撮像装置、その撮像方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、撮像素子を有する撮像装置であって、前記撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出する第1の検出手段と、前記入力画像に対して複数の部分領域を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された部分領域各々における露光状態を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御する絞り制御手段と、前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により前記入力画像の明るさを制御する明るさ制御手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様は、撮像素子を有する撮像装置の撮像方法であって、前記撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出する第1の検出工程と、前記入力画像に対して設定された部分領域各々における露光状態を検出する第2の検出工程と、前記第1の検出工程における入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御する絞り制御工程と、前記第1の検出工程での入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出工程での部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により前記入力画像の明るさを制御する明るさ制御工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様によるプログラムは、撮像素子を有する撮像装置に内蔵されたコンピュータを、前記撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出する第1の検出手段、前記入力画像に対して複数の部分領域を設定する設定手段、前記設定手段により設定された部分領域各々における露光状態を検出する第2の検出手段、前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御する絞り制御手段、前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により前記入力画像の明るさを制御する明るさ制御手段として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入力画像全体のフレームレートを維持したまま、各部分領域の画像の露出を良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係わる撮像装置、その撮像方法及びプログラムの一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係わる撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【0012】
101は、レンズであり、102は、メカ的に制御(機械的制御)される絞り部である。103は、撮像素子であり、例えば、CMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)センサなどで構成される。
【0013】
104は、撮像素子103からの信号を処理し画像信号(入力画像)として出力するCDS(Correllated Double Sampling:相関二重サンプリング)である。105は、絞り部102を制御する絞りモータであり、106は、絞りモータ105を駆動制御する絞りモータ駆動部であり、107は、撮像素子103のタイミング制御を行なうTG(Timing Generator)である。
【0014】
108は、電子シャッターの速度を制御するシャッター速度制御部である。シャッター速度の制御は、TG107を制御することで行なわれる。なお、電子シャッターは、撮像素子103が光を取り込む時間を調整する機能を果たす。109は、入力画像全体の露光状態を検出(第1の検出)する第1の露光状態検出部であり、110は、画像内における部分領域の露光状態を検出(第2の検出)する第2の露光状態検出部である。111は、入力画像を分割し一つ以上の部分領域を入力画像に対して設定する領域設定部である。112は、画像信号に対してゲイン調整を行なうゲイン調整部であり、113は、各種撮像処理を行なう撮像処理部である。
【0015】
ここで、撮像装置10における画像信号の出力処理の手順について説明する。
【0016】
撮像装置10は、まず、レンズ101を介して被写体を撮像する。すると、レンズ101及び絞り部102を通して光が入射し、その被写体光が撮像素子103上に結像する。結像した被写体光は、撮像素子103により電気信号として出力され、CDS104に入力される。その後、この電気信号は、ゲイン調整部112及び撮像処理部113を経て画像信号として出力される。
【0017】
また、撮像装置10は、領域設定部111において、部分領域読出し、或いは間引き読出し(以下、全画素領域読出しと呼ぶ)が設定されている場合、その設定情報をシャッター速度制御部108へ送る。このとき、撮像装置10は、TG107を介して撮像素子103を制御し、設定領域の信号のみを出力する。撮像装置10では、以上の処理を一定時間毎に繰り返し行なう。これにより、動画像を生成する。なお、本実施形態においては、図2に示すように、間引き読出し、複数の部分領域(領域A、B)読出しを繰り返して行なう場合を例に挙げて説明する。
【0018】
以上が、撮像装置10の構成の一例についての説明である。なお、撮像装置10には、1又は複数のコンピュータが組み込まれている。コンピュータには、CPU等の主制御手段、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段が具備される。また、コンピュータにはその他、操作ボタンやディスプレイ又はタッチパネル等の入出力手段、ネットワークカード等の通信部手段、等も具備される。なお、これら各構成手段は、バス等により接続され、主制御手段が記憶手段に記憶されたプログラムを実行することで制御される。
【0019】
図3は、図1に示す撮像装置10における動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0020】
撮像装置10は、全画素領域(入力画像全体)に対する処理と、部分領域に対する処理とをブランキング期間を挟みながら繰り返し行なう。図中の点線は、制御に用いる値の関係を示している。この場合、全画素領域の測光期間において算出された測光値を、次回の絞り制御に用いる旨が示されている。
【0021】
ここで、図4、図5を用いて、図1に示す撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例について説明する。
【0022】
まず、図4を用いて、絞り制御動作の処理の流れについて説明する。この処理は、例えば、図3のタイミングチャートに示す全画素領域期間中に行なわれる。
【0023】
レンズ101及び絞り部102を通して入射した被写体光に基づく電気信号が撮像素子103から出力され、CDS104に入力される。そして、入力された電気信号に基づく出力信号がCDS104から出力されると、この処理は開始する。なお、CDS104からの出力信号は、ゲイン調整部112及び第1の露光状態検出部109に入力される。
【0024】
この処理が開始すると、第1の露光状態検出部109は、まず、入力信号を適宜積算し、全画素領域における測光値(露光状態検出値)を算出する(ステップS401)。測光値の算出には、公知の方法を用いればよいので、その説明については省略する。算出された測光値は、絞りモータ駆動部106に通知される(ステップS402)。
【0025】
これを受けた絞りモータ駆動部106は、測光値を記憶手段(不図示)に記憶するとともに、その測光値と既に記憶済みの前回の測光値とを比較する(ステップS403)。そして、今回と前回との測光値の差異を比較する。この結果、両者の差が予め決められた所定の値以上であれば(ステップS404でYES)、絞りモータ駆動部106は、部分領域読出し後のブランキング期間まで待機する(ステップS405でNO)。ブランキング期間になると(ステップS405でYES)、絞り制御を行なう。すなわち、ブランキング期間になると、絞りモータ駆動部106は、算出された測光値に応じて適正な露光状態となるように絞りモータ105を制御し、絞り部102を移動させる(ステップS406)。これにより、露光状態が修正される。
【0026】
また、ステップS404において、今回と前回との測光値の差異が予め決められた所定の値よりも小さかった場合には(ステップS404でNO)、絞りモータ制御は行わず、この処理を終了する。
【0027】
次に、図5を用いて、画像の明るさ制御動作の処理の流れについて説明する。この処理は、例えば、図3のタイミングチャートに示す部分領域期間中に行なわれる。
【0028】
レンズ101及び絞り部102を通して入射した被写体光に基づく電気信号が撮像素子103から出力され、CDS104に入力される。そして、入力された電気信号に基づく出力信号がCDS104から出力されると、この処理は開始する。なお、CDS104からの出力信号は、ゲイン調整部112及び第2の露光状態検出部110に入力される。
【0029】
この処理が開始すると、第2の露光状態検出部110は、まず、領域設定部111により設定された部分領域毎に入力信号を適宜積算する。そして、部分領域毎の露光状態の検出結果として当該部分領域毎の測光値(露光状態検出値)を算出する(ステップS501)。その後、第2の露光状態検出部110は、第1の露光状態検出部109での測光値を参照し、その測光値との差分値を算出する(ステップS502)。そして、その差分値を記憶手段(不図示)に記憶する(ステップS503)。この測光値は、部分領域毎に記憶する。更に、第2の露光状態検出部110は、各部分領域における次の画像読出しタイミングに合わせて(ステップS504でYES)、シャッター速度制御部108、ゲイン調整部112の少なくともいずれかを制御する(ステップS505)。このような電子的制御(シャッター速度やゲイン調整等)により、画像の明るさが調整される。
【0030】
なお、第2の露光状態検出部110では、ステップS502で算出した差分値が、記憶手段(不図示)に記憶されている閾値に達していなければ、差分値に比例してステップS505における画像の明るさ調整を行なう。一方、閾値を超えている場合は、比例して明るさ調整を行なうのではなく、調整の限度を設け、ある一定までの調整しか行なわない。これは、電子的な調整による画質劣化を防止するためである。このことについて、図6を用いて詳しく説明する。図6には、差分値と露出調整値の関係の一例が示される。図6において、差分値が−方向の閾値A、+方向の閾値Bに達していない場合、すなわち、差分値が両閾値の範囲内にある場合には、差分値に比例して露出調整値の調整が行なわれる。また、閾値A以下或いは閾値B以上になった場合は、閾値Aに対応する調整限度値A、閾値Bに対応する調整限度値Bに相当する分の調整が行なわれる。
【0031】
以上のように実施形態1によれば、従来と同等のフレームレートを保ったまま、各部分領域の画像の露出を良好にできるとともに、また、画質劣化を防止できる。
【0032】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態1では、絞りモータ駆動部106による絞り制御は、第1の露光状態検出部109における測光値のみに基づいて行なっていた。これに対して実施形態2では、第2の露光状態検出部110における算出値(差分値)をフィードバックして絞り制御を行なう場合について説明する。なお、実施形態2においては、説明の重複を防ぐため、実施形態1との相違点を重点的に説明し、同一部分の説明については省略する場合もある。
【0033】
図7は、実施形態2に係わる撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【0034】
ここで、実施形態1を説明した図1との相違点としては、絞りモータ駆動部106と第2の露光状態検出部110との間で情報の授受を行なう点であり、そのことを示す実線が追加されている。この情報の授受により、絞りモータ駆動部106においては、第2の露光状態検出部110における算出値(差分値)をフィードバックして絞り制御を行なうことになる。
【0035】
ここで、実施形態2に係わる撮像装置10における動作タイミングを図8に示す。実施形態1を説明した図3のタイミングチャートとの相違点としては、絞り制御に差分値を用いることを示す点線が追加されている点である。
【0036】
次に、図9、図10を用いて、実施形態2に係わる露出制御動作の処理の流れの一例について説明する。
【0037】
まず、図9を用いて、絞り制御動作の処理の流れについて説明する。
【0038】
撮像装置10は、まず、第1の露光状態検出部109において、全画素領域の測光値を算出する(ステップS901)。算出した測光値は、絞りモータ駆動部106へ通知される。絞りモータ駆動部106では、通知された測光値を記憶手段(不図示)に記憶する(ステップS902)。
【0039】
次に、撮像装置10は、第2の露光状態検出部110において、部分領域毎の測光値を算出する(ステップS903)。その後、第2の露光状態検出部110は、第1の露光状態検出部109での測光値を参照し、その測光値との差分値を算出する(ステップS904)。第2の露光状態検出部110は、この算出した差分値を記憶手段(不図示)に記憶するとともに、絞りモータ駆動部106へ通知する(ステップS905)。第2の露光状態検出部110では、全ての部分領域に対して上記算出処理が完了するまで、ステップS903からステップS905までの処理を繰り返し行なう(ステップS906でNO)。
【0040】
全ての部分領域に対して上記算出処理が完了すると(ステップS906でYES)、絞りモータ駆動部106は、記憶手段(不図示)に記憶された全ての差分値が、予め決められた閾値の範囲内にあるか否かを判定する。一つでも閾値を超えていた場合には(ステップS907でNO)、全画素領域に対する露出調整値を算出する(ステップS908)。なお、この露出調整値は、差分値全てを閾値の範囲内に収める役割を果たすものである。
【0041】
次に、絞りモータ駆動部106は、ステップS901で算出された全画素領域の測光値と当該算出した露出調整値とを加算し(ステップS909)、それを新たな測光値として記憶手段(不図示)に記憶する。更に、絞りモータ駆動部106は、この算出された今回の測光値と既に記憶済みの前回の測光値とを比較する(ステップS910)。ここで、両者の差が予め決められた所定の値以上であれば(ステップS911でYES)、絞りモータ駆動部106は、部分領域読出し後のブランキング期間まで待機する(ステップS912)。ブランキング期間になると、絞り制御を行なう。すなわち、ブランキング期間になると、絞りモータ駆動部106は、算出された測光値に応じて適正な露光状態となるように絞りモータ105を制御し、絞り部102を移動させる(ステップS913)。これにより、露光状態が修正される。例えば、ステップS907における判定結果により、−側に閾値を超えていた差分値があった場合は、絞りを+方向へ制御し、+側に超えていた差分値があった場合は、絞りを−方向へ制御する。
【0042】
また、ステップS911において、今回と前回との測光値の差異が予め決められた所定の値よりも少なかった場合には(ステップS911でNO)、絞りモータ制御は行わず、この処理を終了する。
【0043】
次に、図10を用いて、画像の明るさ制御動作の処理の流れについて説明する。ここで、実施形態2に係わる画像の明るさ制御は、全画素領域と部分領域各々との両方に対して行なうことになる。すなわち、全画素領域については、上述した露出調整値分の調整が必要となる。なお、各部分領域に対する処理については、実施形態1を説明した図5と同様の処理になる。そのため、ここでは、全画素領域に対してなされる処理についてのみ説明する。
【0044】
この処理は、全画素領域の読出しとなれば(ステップS1001でYES)、開始される。この処理が開始すると、第2の露光状態検出部110は、絞りモータ駆動部106による絞り制御に際して露出調整値による調整が行なわれたか否かを判定する。調整が行なわれた場合(ステップS1002でYES)、第2の露光状態検出部110は、その調整値分をキャンセルすべくシャッター速度制御部108、ゲイン調整部112の少なくともいずれかを制御し、露出を調整する(ステップS1003)。一方、調整が行なわれていない場合は(ステップS1002でNO)、そのままこの処理を終了する。
【0045】
図11には、実施形態2に係わる露出制御の概要の一例が示される。
【0046】
ここで、図11(a)は、絞り制御を行なう前の(全体画素領域からの)差分値を示している。この場合、領域Aにおける差分値は閾値A内に収まっているが、領域Bにおける差分値は閾値Bを超えてしまっている。また、図11(b)は、絞り制御を行なった後の差分値を示している。この場合、全画素領域の露出値を+方向へ制御した結果、領域Bにおける差分値が閾値B内に収まっている。
【0047】
以上のように実施形態2によれば、全体領域の測光値と各部分領域の測光値との差分を求め、いずれかの差分値が閾値を超えた場合には、全画素領域の露出を補正する。これにより、実施形態1同様に、画質の劣化を防止しつつ、かつ最適な露出の画像を得ることができる。
【0048】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。実施形態2では、第2の露光状態検出部109により算出された差分値が閾値を超えていた場合に、その差分値を閾値内に収めるように露出調整値を算出していたが、これ以外の方法を採ってもよい。実施形態3では、実施形態2の変形例として、複数の部分領域に対して算出された差分値の絶対値の合計を最小とするような露出調整値を算出する場合について説明する。
【0049】
ここで、図12を用いて、実施形態3に係わる露出制御動作の処理の流れの一例について説明する。なお、ステップS901〜ステップS906までの処理は、実施形態2を説明した図9と同様であるため、その説明については省略し、ここでは、ステップS1201以降の処理について説明する。
【0050】
ステップS906までの処理により、全画素領域に対する測光値、各部分領域の差分値とが算出されると、絞りモータ駆動部106は、露出調整値を算出する(ステップS1201)。この算出により、部分領域各々で算出された差分値の絶対値の合計を最小(小さく)にできる露出調整値が求められる。例えば、図13(a)に示すような部分領域の差分値が得られたとする。同図では、部分領域A、B、Cに対する差分値が各々−0.3、+0.3、+0.7となっており、差分値の絶対値の合計は、|−0.3|+|+0.3|+|+0.7|=1.3となる。この差分値の絶対値の合計を最小にするには、図13(b)に示すように全画素領域に対する露出値を+0.3ずらせばよい。すると、差分値の絶対値の合計は、|−0.6|+|0.0|+|+0.4|=1.0となる。すなわち、この場合における調整値は、+0.3となる。
【0051】
次に、絞りモータ駆動部106は、ステップS902で算出された測光値と露出調整値とを加算した値が予め決められた所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS1202)。所定の範囲内であった場合は(ステップS1202でYES)、ステップS902で算出された測光値とステップ1201で算出された露出調整値とを加算し、それを新たな測光値とする(ステップS1203)。また、所定の範囲外、すなわち、所定の範囲を超えていた場合は(ステップS1202でNO)、ステップS902で算出された測光値と所定の値とを加算し、それを新たな測光値とする(ステップS1204)。このステップS1202〜ステップS1204までの処理は、全画素領域に対する画像の明るさ調整動作で一定以上の調整が行われ、画質が劣化するのを防止するために行なう。なお、次ステップステップS910以降の処理は、実施形態2と同様であるので、その説明については省略する。また、画像の明るさ制御動作についても実施形態2と同様であるので、その説明については省略する。
【0052】
以上のように実施形態3によれば、(複数の部分領域に対して算出された全画素領域との測光値の)差分値の絶対値の合計を最小とするような露出調整値を求め、その調整値を用いて実施形態2同様の制御を行なう。これにより、実施形態2同様に、画質の劣化を防止しつつ、かつ最適な露出の画像を得ることができる。
【0053】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4では、実施形態2の変形例として、複数の部分領域に対して算出された差分値の2つの値(本実施形態においては最大値、最小値とする)の中間値を露出調整値として算出する場合について説明する。
【0054】
ここで、図14を用いて、実施形態4に係わる絞り制御動作の処理の流れの一例について説明する。なお、ステップS1401以外の処理は、実施形態3を説明した図13と同様であるため、その説明については省略し、ここでは、ステップS1401の処理について説明する。
【0055】
ステップS1401の処理では、差分値の最大値と最小値の中間点となる値を露出調整値として算出する。すなわち、全画素領域の測光値と各部分領域の測光値との差分から求められる複数の差分値の最小値と最大値との中間値を求める。
【0056】
図15には、実施形態4に係わる露出制御の概要の一例が示される。
【0057】
ここで、図15(a)は、絞り制御を行なう前の(全体画素領域からの)差分値を示している。領域A、B、Cに対する差分値各々は、−0.3、+0.3、+0.7である。このとき、差分値の最大値と最小値との中間値は、{(+0.7)−(−0.3)}=1.0となる。従って、その中間値は、1.0/2=0.5となり、(−0.3)+(+0.5)から露出調整値は、+0.2となる。図15(a)から+方向に0.2ずらすことで、図15(b)のようになる。
【0058】
以上のように実施形態4によれば、画像の明るさを調整する露出調整値を小さな値にできる。これにより、実施形態2同様に、画質の劣化を防止しつつ、かつ最適な露出の画像を得ることができる。
【0059】
(実施形態5)
次に、実施形態5について説明する。実施形態1〜4では、複数の部分領域に対して算出された差分値に着目して露出制御を行なっていたが、実施形態5では、この差分値に加えて、部分領域における電子シャッター速度にも着目して制御を行なう場合について説明する。
【0060】
図16は、実施形態5に係わる撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【0061】
ここで、実施形態2を説明した図7との相違点としては、絞りモータ駆動部106とシャッター速度制御部108との間で情報の授受を行なう点であり、そのことを示す実線が追加されている。この情報の授受により、絞りモータ駆動部106においては、電子シャッター速度を考慮して絞り制御を行なうことになる。
【0062】
次に、図17を用いて、実施形態5に係わる露出制御動作の処理の流れの一例について説明する。なお、ステップS1701〜ステップS1703以外の処理は、実施形態2を説明した図9と同様であるため、その説明については省略し、ここでは、ステップS1701〜ステップS1703の処理について説明する。
【0063】
ステップS907において、全画素領域の測光値と複数の部分領域の測光値との差分値が、予め決められた閾値の範囲内にあるか否かの判定が行なわれる。この結果、一つでも閾値を超えていた場合(ステップS907でNO)、絞りモータ駆動部106は、閾値を超えた差分値が、+側と−側の両方で存在するか否かを判定する。存在していれば(ステップS1701でYES)、長秒時側に対して露出調整値を算出し(ステップS1702)、短秒時側に対しては調整後においても閾値以内に収まるようなシャッター速度を算出する(ステップS1703)。一方、+側と−側の両方で存在しなければ(ステップS1701でNO)、実施形態2を説明した図7のステップS908と同様にして露出調整値を算出する。なお、長秒時側の領域は、一方の領域よりも長いシャッター時間で撮像された領域を指し、短秒時側の領域は、一方の領域よりも短いシャッター時間で撮像された領域を指す。また、ステップS1703で算出したシャッター速度は、部分領域読出し行なう画像に対する明るさ制御動作時(図5参照)に使用される。
【0064】
図18には、実施形態5に係わる露出制御の概要の一例が示される。
【0065】
ここで、図18(a)は、絞り制御を行なう前の(全体画素領域からの)差分値及びシャッター速度が示される。この場合、領域A、Bでともに閾値を超えている。領域A、Bに対するシャッター速度は各々1/30、1/100である。ここで、長秒時側である領域Aを優先して全画素領域の露出を+側へ調整する。このとき、領域Bはシャッター速度を変えなければ、閾値外のままとなるが、図18(b)に示すように、シャッター速度を1/250と短くすることで閾値内に収めることができる。
【0066】
以上のように実施形態5によれば、複数の部分領域に対して算出された全画素領域との測光値の差分値が+、−の両方で閾値を超えていた場合にも対応することができる。これにより、上述した実施形態同様に、画質の劣化を防止しつつ、かつ最適な露出の画像を得ることができる。
【0067】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。例えば、実施形態1〜実施形態5の一部若しくはその全てを組み合わせて実施してもよい。
【0068】
なお、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体等としての実施態様を採ることもできる。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0069】
また、本発明は、ソフトウェアのプログラムをシステム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置に内蔵されたコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することにより実施形態の機能が達成される場合をも含む。この場合、供給されるプログラムは実施形態で図に示したフローチャートに対応したコンピュータプログラムである。
【0070】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OS(Operating System)に供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0071】
コンピュータプログラムを供給するためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては以下が挙げられる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などである。
【0072】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、該ホームページから本発明のコンピュータプログラムをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることが挙げられる。この場合、ダウンロードされるプログラムは、圧縮され自動インストール機能を含むファイルであってもよい。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0073】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記録媒体に格納してユーザに配布するという形態をとることもできる。この場合、所定の条件をクリアしたユーザに、インターネットを介してホームページから暗号を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用して暗号化されたプログラムを実行し、プログラムをコンピュータにインストールさせるようにもできる。
【0074】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどとの協働で実施形態の機能が実現されてもよい。この場合、OSなどが、実際の処理の一部又は全部を行ない、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【0075】
更に、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれて前述の実施形態の機能の一部或いは全てが実現されてもよい。この場合、機能拡張ボードや機能拡張ユニットにプログラムが書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU(Central Processing Unit)などが実際の処理の一部又は全部を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態に係わる撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示す撮像装置10における画像読出し動作の一例を示す図である。
【図3】図1に示す撮像装置10における動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図4】図1に示す撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示す第1のフローチャートである。
【図5】図1に示す撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示す第2のフローチャートである。
【図6】図1に示す撮像装置10における露出制御の概要の一例を示す図である。
【図7】実施形態2に係わる撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【図8】実施形態2に係わる撮像装置10における動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図9】実施形態2に係わる撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示す第1のフローチャートである。
【図10】実施形態2に係わる撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示す第2のフローチャートである。
【図11】実施形態2に係わる露出制御の概要の一例を示す図である。
【図12】実施形態3に係わる撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】実施形態3に係わる露出制御の概要の一例を示す図である。
【図14】実施形態4に係わる撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図15】実施形態4に係わる露出制御の概要の一例を示す図である。
【図16】実施形態5に係わる撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【図17】実施形態5に係わる撮像装置10における露出制御動作の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図18】実施形態5に係わる露出制御の概要の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
10 撮像装置
101 レンズ
102 絞り部
103 撮像素子
104 CDS
105 絞りモータ
106 絞りモータ駆動部
107 TG
108 シャッター速度制御部
109 第1の露光状態検出部
110 第2の露光状態検出部
111 領域設定部
112 ゲイン調整部
113 撮像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有する撮像装置であって、
前記撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出する第1の検出手段と、
前記入力画像に対して複数の部分領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された部分領域各々における露光状態を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御する絞り制御手段と、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により前記入力画像の明るさを制御する明るさ制御手段と
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記絞り制御手段は、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々における露光状態の検出結果とに基づいて前記絞りを制御し、
前記明るさ制御手段は、
前記絞り制御手段による絞り制御の結果に基づいて前記入力画像の明るさを制御する
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記絞り制御手段は、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々の露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の複数の差分値が、予め決められた閾値の範囲内に収まるように前記絞りを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記部分領域各々は、異なるシャッター時間で撮像され、
前記絞り制御手段は、
前記露光状態検出値の複数の差分値のいくつかが前記閾値の範囲外にある場合、該閾値の範囲外にある差分値のうち最も長いシャッター時間で撮像された部分領域に基づいて求めらた差分値を、それ以外の部分領域に基づいて求められた差分値よりも優先させて小さくするように前記絞りを制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記絞り制御手段は、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々の露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の複数の差分値の絶対値の合計を小さくするように前記絞りを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記絞り制御手段は、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々の露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の複数の差分値の最大値と最小値との中間値に応じて前記絞りを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記明るさ制御手段は、
ゲインの調整、電子シャッターの速度、の少なくともいずれかを制御することにより前記入力画像の明るさを制御する
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記明るさ制御手段は、
予め決められた所定の値を限度として前記入力画像の明るさを制御する
ことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像素子を有する撮像装置の撮像方法であって、
前記撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出する第1の検出工程と、
前記入力画像に対して設定された部分領域各々における露光状態を検出する第2の検出工程と、
前記第1の検出工程における入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御する絞り制御工程と、
前記第1の検出工程での入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出工程での部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により前記入力画像の明るさを制御する明るさ制御工程と
を含むことを特徴とする撮像装置の撮像方法。
【請求項10】
撮像素子を有する撮像装置に内蔵されたコンピュータを、
前記撮像素子を介して入力される入力画像全体の露光状態を検出する第1の検出手段、
前記入力画像に対して複数の部分領域を設定する設定手段、
前記設定手段により設定された部分領域各々における露光状態を検出する第2の検出手段、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果に基づいて機械的制御により絞りを制御する絞り制御手段、
前記第1の検出手段による入力画像全体の露光状態の検出結果と前記第2の検出手段による部分領域各々における露光状態の検出結果とから求められる露光状態検出値の差分に基づいて電子的制御により前記入力画像の明るさを制御する明るさ制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−28319(P2010−28319A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185290(P2008−185290)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】