説明

撮像装置、ズーム制御方法

【課題】撮影者がズーム操作を行って撮影したときに、撮影画像が手ブレや被写体ブレにより不鮮明な画像となったり、感度の上昇によりノイズの多い画像となったりすることを防止できる撮像装置、ズーム制御方法を提供する。
【解決手段】撮影者がズーム動作を行う際、光学ズームだけでなく、電子ズームを併用する。これにより望遠側での開放F値の変化を抑えることができ、シャッタースピードを遅くしなくてすむため、撮影者の意図しないブレの発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離に応じて開放絞り値が変化する撮像装置、及びそのズーム制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラの保持が不安定な状態で撮影を行うと、手振れにより露光中にカメラ本体が動き、像ブレが発生し、撮影画像が像ブレにより不鮮明になることがある。また、被写体の動きが速い場合、被写体自身の動きにより、被写体ブレが発生し、撮影画像の一部が不鮮明になることがある。
【0003】
これらの手振れによる像ブレ(以下、手ブレと示す)現象及び被写体ブレ現象は、通常、被写体が暗く、適正露光を保つためにシャッタースピードが遅くなる場合に生じ易い。しかし、望遠側の開放絞り値(開放F値)が広角側の開放F値よりも大きくなるズームレンズを備えたカメラにおいては、光学ズームを用いて望遠側にズームした場合にも、入射する光量が減少する。この場合、適正露光を保つために、シャッタースピードが遅くなり、さらに手ブレや被写体ブレが生じ易くなる。
【0004】
そこで、撮影者が光学ズームを行った際の手ブレを抑制する技術が、特許文献1に提案されている。この提案では、設定したシャッタースピードがその時点における手ブレ限界シャッタースピードより遅い場合には、手ブレが発生する可能性があるため手ブレが発生しない焦点距離までズームレンズを広角側に移動させる。また、設定したシャッタースピードがその時点における手ブレ限界スピードより速い場合に、撮影者によりスイッチが操作され、ズームレンズが望遠側に移動されようとしたときには、ズーム制御部は、ズームレンズを望遠側へ移動させる。ただし、焦点距離が手ブレ限界ライン上の焦点距離になったときには、ズームレンズの移動を強制的に停止させる。
【特許文献1】特開2001−215549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のデジタルカメラに使用されるズームレンズは、広角側よりも望遠側の明るさの低下が著しくなっている場合がある。最近のデジタルカメラに使用されるズームレンズは、カメラ本体の超小型化に応じて小型化が要求された結果、明るさを示すF値は2以上となり、さらに、焦点距離によって大幅に変化するようになっているからである。
したがって、輝度の低い被写体の撮影においては、ズームアップを行うと手ブレや被写体ブレを起こして、不鮮明な画像になったり、また、感度を上げたとしても画像のノイズが多くなり、期待した画質が得られなかったりするという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、フラッシュを内蔵しているカメラにおいて、フラッシュを自動発光させることで、手ブレを防止することも行われている。しかし、人工的な光のため撮影者の意図した画像が得られなかったり、フラッシュの到達距離を超え、露出がアンダーの画像となったりするという問題があった。また、フラッシュ禁止の場所の撮影では、フラッシュを使うことができない。
【0007】
また、特許文献1の技術では、光学ズーム動作の禁止や広角側に自動で光学ズームするといった、光学ズームのみの制限であり、撮影者の意図した画角と違った画角になってしまい、撮影者が違和感を覚えるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、撮影者がズーム操作を行って撮影したときに、撮影画像が手ブレや被写体ブレにより不鮮明な画像となったり、感度の上昇によりノイズの多い画像となったりすることを防止できる撮像装置、ズーム制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面としての撮像装置は、焦点距離に応じて開放絞り値が変化するレンズ鏡筒を介して得た像を撮像する撮像装置であって、前記レンズ鏡筒を介して得た像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像を行うときの露光条件を設定して制御する露光制御手段と、前記レンズ鏡筒の焦点距離を変化させて倍率を変化させる光学ズームと前記レンズ鏡筒を介して得た像の撮影範囲を画像処理により変更する電子ズームとを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、焦点距離に応じて変化する開放絞り値と前記露光制御手段が設定した露光条件とに基づいて光学ズームと電子ズームとを切り換えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の側面としてのズーム制御方法は、焦点距離に応じて開放絞り値が変化するレンズ鏡筒を介して得た像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像を行うときの露光条件を設定して制御する露光制御手段と、前記レンズ鏡筒の焦点距離を変化させて倍率を変化させる光学ズームと前記レンズ鏡筒を介して得た像の撮影範囲を画像処理により変更する電子ズームとを制御する制御手段とを備える撮像装置のズーム制御方法であって、前記制御手段は、焦点距離に応じて変化する開放絞り値と前記露光制御手段が設定した露光条件とに基づいて光学ズームと電子ズームとを切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影者がズーム操作を行っても、手ブレや被写体ブレによる不鮮明な画像となってしまったり、感度を上げ過ぎることによるノイズの多い画像となってしまったりすること防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
なお、以下の説明では、具体的な数値、構成、動作等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明による撮像装置の第1実施形態の構成を示す図である。
撮像装置100は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等であり、レンズ鏡筒に含まれる撮影レンズ10により得られる被写体像を撮像素子14の撮像面に結像させて撮像する。
撮影レンズ10は、不図示の複数の光学レンズからなり、焦点距離を変更するズーム機構と、焦点位置を移動させるフォーカス機構とを有している。撮影レンズ10のズーム機構を駆動することにより、光学的に像の倍率を変化させる光学ズームを行うことができる。
撮影レンズ10と撮像素子14との間には、絞り機能を備えるシャッター12が設けられている。撮影レンズ10とシャッター12、及び、後述の保護部102が、本実施形態のレンズ鏡筒に設けられている。
また、本実施形態の撮影レンズ10は、光学ズームを行って焦点距離が変化すると、開放絞り値(以下、開放F値)が変化する。具体的には、望遠側にズームすると、開放F値が大きくなる。
【0014】
撮像素子14は、光学像を電気信号に変換する光電変換手段である。本実施形態の撮像素子14は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを用いている。なお、撮像素子としては、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等、他のタイプのイメージセンサでもよい。
A/D変換器16は、撮像素子14のアナログ信号出力をデジタル信号に変換する。
タイミング発生回路18は、撮像素子14、A/D変換器16、D/A変換器26にクロック信号や制御信号を供給する。また、タイミング発生回路18は、メモリ制御回路22及びシステム制御回路50により制御される。
【0015】
画像処理回路20は、A/D変換器16からのデータ又はメモリ制御回路22からのデータに対して所定の画素補間処理や色変換処理を行う。また、画像処理回路20によって撮影画像から必要な撮影範囲を切り出し、拡大処理を行うことで倍率を変化させる電子ズームが実現される。さらに、画像処理回路20は、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行う。この演算処理により得られた演算結果に基づいてシステム制御回路50が露光制御部40、フォーカス制御部42に対して制御を行う。例えば、システム制御回路50は、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理を行っている。さらにまた、画像処理回路20においては、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理も行っている。
【0016】
メモリ制御回路22は、A/D変換器16、タイミング発生回路18、画像処理回路20、画像表示メモリ24、D/A変換器26、メモリ30、圧縮・伸長回路32を制御する。
A/D変換器16が出力したデジタルデータは、画像処理回路20、メモリ制御回路22を介して、又は、A/D変換器16から直接メモリ制御回路22を介して、画像表示メモリ24又はメモリ30に書き込まれる。
【0017】
画像表示部28は、TFT−LCD(Thin Film Transistor-Liquid
Crystal Display)等から成る。画像表示部28は、画像表示メモリ24に書き込まれた表示用の画像データをメモリ制御回路22及びD/A変換器26を介して表示する。この表示用の画像データは、画像表示部28の画素数と同じ画素数の大きさを有する。
画像表示部28を用いて撮像した画像データを逐次表示すれば、電子ファインダ(EVF:Electronic
View Finder)機能を実現することが可能である。
また、画像表示部28は、システム制御回路50の指示により任意に表示をON/OFFすることが可能であり、表示をOFFにした場合には、撮像装置100の電力消費を大幅に低減することができる。
【0018】
メモリ30は、撮影した静止画像や動画像を格納する記憶部であり、所定枚数の静止画像や所定時間の動画像を格納するのに十分な記憶量を備えている。これにより、複数枚の静止画像を連続して撮影する連写撮影やパノラマ撮影の場合にも、高速かつ大量の画像書き込みをメモリ30に対して行うことが可能となる。また、メモリ30は、システム制御回路50の作業領域としても使用することが可能である。
圧縮・伸長回路32は、適応離散コサイン変換(ADCT:Adaptive Discrete
Cosine Transform)等により画像データの圧縮伸長を行う。圧縮・伸長回路32は、メモリ30に格納された画像を読み込んで圧縮処理又は伸長処理を行い、処理を終えたデータをメモリ30に書き込む。
【0019】
露光制御部40は、露光条件に基づいてシャッター12を制御し、撮像した画像データを画像処理回路20で所定の演算を行い、得られた演算結果に基づいて、AE(自動露出)処理を行っている。露光制御部40は、撮像素子14により被写体像の輝度を検出し、その輝度検出結果に基づいて、露光条件として絞り値とシャッタースピードとを設定して、露光の制御を行う。また、露光制御部40は、操作部70等により撮影者から絞り値、シャッタースピード、感度等を設定された場合には、その設定された露光条件にしたがい露光の制御を行う。また、露光制御部40は、フラッシュ48と連携してフラッシュ48の調光を行うフラッシュ調光機能も有する。
【0020】
フォーカス制御部42は、撮影レンズ10のフォーカシング動作を制御する。
これら露光制御部40及びフォーカス制御部42は、TTL方式を用いて制御されている。すなわち、撮影光学系を介して撮像した画像データを画像処理回路20によって演算した演算結果に基づき、システム制御回路50が露光制御部40、フォーカス制御部42に対して制御を行う。
【0021】
ズーム制御部44は、撮影レンズ10のズーミングを制御する。
バリア制御部46は、いわゆるレンズバリアである保護部102の動作を制御する。
フラッシュ48は、暗い場所などで光量を補うために発光を行う閃光発光部であり、AF補助光の投光機能、フラッシュ調光機能も有する。
システム制御回路50は、撮像装置100全体を制御する制御部であり、マイクロコンピュータによって構成されている。
メモリ52は、システム制御回路50の動作用の定数、変数、プログラム等を記憶する。
【0022】
表示部54は、システム制御回路50でのプログラムの実行に応じて、文字、画像、音声等を用いて動作状態やメッセージ等を表示する。表示部54は、撮像装置100の操作部近辺の視認し易い位置に単数又は複数設置され、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やLED(Light Emitting
Diode)、発音素子等の組み合わせにより構成されている。また、表示部54は、その一部の機能が光学ファインダ104内に設置されている。
表示部54の表示内容のうち、LCD等に表示するものとしては、シングルショット/連写撮影表示、セルフタイマー表示、圧縮率表示、記録画素数表示、記録枚数表示、残撮影可能枚数表示、シャッタースピード表示、絞り値表示、露出補正表示等がある。また、フラッシュ表示、赤目緩和表示、マクロ撮影表示、ブザー設定表示、時計用電池残量表示、電池残量表示、エラー表示、複数桁の数字による情報表示、記録媒体200及び210の着脱状態表示、通信I/F動作表示、日付・時刻表示等もLCD等に表示する。
一方、表示部54の表示内容のうち、光学ファインダ104内に表示するものとしては、合焦表示、手振れ警告表示、フラッシュ充電表示、シャッタースピード表示、絞り値表示、露出補正表示等がある。
【0023】
不揮発性メモリ56は、電気的に消去・記録可能な不揮発性記憶手段であり、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等が用いられる。
モードダイアルスイッチ60、シャッタースイッチ62,64、画像表示ON/OFFスイッチ66、単写/連写スイッチ68、及び操作部70は、システム制御回路50の各種の動作指示を入力するための操作手段である。これらは、スイッチやダイアル、タッチパネル、視線検知によるポインティング、音声認識装置等の単数又は複数の組み合わせで構成される。
【0024】
ここで、これらの操作手段の具体的な説明を行う。
モードダイアルスイッチ60は、電源オフ、自動撮影モード、撮影モード、パノラマ撮影モード、再生モード、マルチ画面再生・消去モード、PC接続モード等の各機能モードを切り換え設定するときに操作される。
シャッタースイッチ62は、不図示のシャッターボタンの操作途中のいわゆる半押し状態でONとなるスイッチ(SW1)である。シャッタースイッチ62(SW1)がONすることにより、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の動作開始をシステム制御回路50が指示する。
【0025】
シャッタースイッチ64は、不図示のシャッターボタンの操作完了のいわゆる全押し状態でONとなるスイッチ(SW2)である。シャッタースイッチ64(SW2)がONすることにより、システム制御回路50が露光処理、現像処理、記録処理という一連の処理の動作開始を指示する。
この露光処理では、撮像素子14から読み出した信号をA/D変換器16、メモリ制御回路22を介してメモリ30に画像データを書き込む。
また、現像処理では、画像処理回路20やメモリ制御回路22での演算を行う。
さらに、記録処理では、メモリ30から画像データを読み出し、圧縮・伸長回路32で圧縮を行い、記録媒体200,210に画像データを書き込む。
【0026】
画像表示ON/OFFスイッチ66は、画像表示部28のON/OFFを設定することができる。この機能により、光学ファインダ104を用いて撮影を行うときに、LCD等からなる画像表示部28への電流供給を遮断することにより、省電力を図ることが可能となる。
【0027】
単写/連写スイッチ68は、シャッタースイッチ64(SW2)がONした場合に1駒の撮影を行って待機状態とする単写モードと、シャッタースイッチ64(SW2)がONしている間は連続して撮影を行い続ける連写モードとを設定することができる。
【0028】
操作部70は、各種ボタンやタッチパネル等からなり、メニューボタン、セットボタン、マクロボタン、マルチ画面再生改ページボタン、フラッシュ設定ボタン、単写/連写/セルフタイマー切り換えボタン等の機能を持つ。また、操作部70は、メニュー移動+(プラス)ボタン、メニュー移動−(マイナス)ボタン、再生画像移動+(プラス)ボタン、再生画像−(マイナス)ボタン、撮影画質選択ボタン、露出補正ボタン、日付/時間設定ボタン等の機能を持つ。さらに、操作部70は、プリント出力ボタン、記録ボタン、ズームレバー(望遠・広角)、十字ボタン(上、下、左、右)、カーソル表示ボタン等の機能も持っている。
【0029】
電源制御手段80は、電池検出回路、DC−DCコンバータ、通電するブロックを切り換えるスイッチ回路等により構成されている。電源制御手段80は、電池の有無、電池の種類、電池残量の検出を行い、検出結果及びシステム制御回路50の指示に基づいてDC−DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体200,210を含む各部へ供給する。
コネクタ82、84は、撮像装置100の内部と電池収容部に収容された電池又はACアダプター等の電源86とを接続する。
電源86は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、Li電池等の二次電池、ACアダプター等である。
【0030】
インタフェース90,94は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体200,210との接続を仲介する。
コネクタ92,96は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体200,210との接続を行う。
記録媒体着脱検知手段98は、コネクタ92,96の少なくとも一方に記録媒体200,210が装着されているか否かを検知する。
【0031】
なお、本実施形態では記録媒体を取り付けるインタフェース及びコネクタを2系統持つものとして説明している。これに限らず、記録媒体を取り付けるインタフェース及びコネクタは、単数又は複数、いずれの系統数を備える構成としてもよい。また、異なる規格のインタフェース及びコネクタを組み合わせて備える構成としてもよい。インタフェース及びコネクタとしては、PCMCIAカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)カード等の規格に準拠したものを用いることができる。
【0032】
さらに、インタフェース90,94、そしてコネクタ92,96をPCMCIAカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)カード等の規格に準拠したものを用いて構成した場合、データの通信に利用可能である。すなわち、この部分に各種通信カードを接続することにより、他のコンピュータやプリンタ等の周辺機器との間で画像データや画像データに付属した管理情報を転送し合うことができる。通信カードとしては、例えば、LANカードやモデムカード、USBカード、IEEE1394カード、P1284カード、SCSIカード、PHS等の通信カード等を用いることができる。
【0033】
保護部102は、撮像装置100の撮影レンズ10を含む撮像部を覆うことにより、撮像部の汚れや破損を防止するバリアである。
光学ファインダ104は、画像表示部28による電子ファインダ機能を使用すること無しに、光学像のみを用いて構図確認を行うことが可能である。また、光学ファインダ104内には、表示部54の一部の機能、例えば、合焦表示、手振れ警告表示、フラッシュ充電表示、シャッタースピード表示、絞り値表示、露出補正表示等を行う小型の表示部が設置されている。
【0034】
通信部110は、RS232CやUSB、IEEE1394、P1284、SCSI、モデム、LAN、無線通信等の各種通信機能を有する。
コネクタ112は、通信部110により撮像装置100を他の機器と接続する。なお、無線通信の場合は、コネクタ112の代わりにアンテナを用いるとよい。
【0035】
記録媒体200は、メモリカードやハードディスク等である。記録媒体200は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録部202と、撮像装置100とのインタフェース204と、撮像装置100と接続を行うコネクタ206とを備えている。
記録媒体210は、メモリカードやハードディスク等である。記録媒体210は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録部212と、撮像装置100とのインタフェース214と、撮像装置100と接続を行うコネクタ216とを備えている。
【0036】
次に、光学ズームと電子ズームについて説明する。
光学ズームとは、複数の光学レンズからなる撮影レンズ10の駆動によって、撮像素子に結像させる画像の倍率を変化させる、即ち、光学レンズと撮像素子の間の焦点距離を変化させることである。
一方、電子ズームとは、撮像素子で撮像した画像の一部にデジタル処理を施すことによって、画像を拡大させることである。
【0037】
図2は、撮影レンズ10の焦点距離を変化させた場合の明るさ、つまり、開放F値の変化を示すグラフである。図2の縦軸は、撮影レンズ10の開放F値を示し、横軸は、撮影レンズ10の焦点距離を示している。なお、縦軸は、1目盛りが絞り1段分を示している。
図2に示すように、撮影レンズ10は、広角端ではF=2.8あるが、望遠端ではF=5.6となり、明るさが約4倍程度、つまり、絞り2段相当変化している。このように、撮影レンズ10は、広角側に対して望遠側が非常に暗い特性を有している。ここで、F値とは、以下の式(1)で表され、レンズの透過光量、即ち、レンズの明るさを示す数値である。
【0038】
F=f/D ・・・式(1)
f:焦点距離、D:レンズの有効口径
【0039】
図3は、図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズームのみを用いて広角側から望遠側へズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
図3において、表示画像300は、ズーム前の広角端での表示画像を示し、表示画像301は、光学ズーム6倍を行ったときの表示画像を示している。
【0040】
図4は、図3に対応した広角側から望遠側にズームするときの撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
図4中の実線は、撮影時のF値を示し、破線は、開放F値を示している。図4よりズーム倍率が大きくなるにつれ、開放F値が大きくなっていることがわかる。
【0041】
ズーム動作前の広角端でAE(自動露出)を行ったときの適正露光値に対するシャッタースピード及びF値が、それぞれ1/125秒(以下、秒を省略)、及び、F4.0であったとする。光学ズーム倍率が6倍で広角側から望遠側へズーム動作を行ったとき、広角側で得た適正露光値が望遠側でも変わらなければ、倍率が2倍以上のところで開放F値に伴って撮影時のF値が上がる。この場合、適正露光値を維持するため、撮影時のF値が上がる代わりにシャッタースピードが遅くなり、シャッタースピード及びF値はそれぞれ1/60及びF5.6となる。光学ズームを行うと開放F値がF2.8からF5.6へと変化するのに伴って、撮影時のF値がF4.0からF5.6へと絞り1段分暗くなり、適正露光にするのに、絞り1段分明るくするため、シャッタースピードは遅くなり、1/60となるのである。シャッタースピードが遅くなることで、手ブレ及び被写体ブレが発生する原因となる。
【0042】
これに対して、本実施形態では、電子ズームを併用する。
図5は、図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズーム及び電子ズームを用いてズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例である。
【0043】
図5において、表示画像500は、ズーム前の広角端での表示画像を示し、表示画像501は、光学ズーム2倍を行ったときの表示画像を示し、表示画像502は、光学ズーム2倍を行ったあとに、さらに電子ズーム3倍を行ったときの表示画像を示している。また、枠503は、光学ズームから電子ズームへ切り替わる境界の枠を示している。
【0044】
図6は、図5に対応した広角側から望遠側にズームするときの撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
図6中の実線は、撮影時のF値を示し、破線は、開放F値を示している。
ズーム動作前の広角端でAEを行ったときの適正露光値に対するシャッタースピード及びF値が、それぞれ1/125及びF4.0であったとする。光学ズーム倍率が6倍で広角側から望遠側へズーム動作を行ったとき、適正露光値が変わらなければ、倍率が2倍以上のところで開放F値に伴って撮影時のF値が上がってしまう。そこで、本実施形態では、ズーム倍率が2倍以上のところでは電子ズームに切り換える。電子ズームによりズーム動作を行っても、F値は変化しないため、シャッタースピードを遅くする必要がない。よって、ズーム倍率が6倍の望遠側においてもズーム動作前のシャッタースピード及びF値が変わらず、シャッタースピード及びF値はそれぞれ1/125及びF4.0となる。このように、望遠側においてもシャッタースピードを変える必要がないため、光学ズームのみを用いた場合に比べ、手ブレや被写体ブレの発生を防ぐことができる。
【0045】
図7は、第1実施形態の広角側から望遠側へズームするときの撮像装置100における処理を表すフローチャートである。
まず、ステップ(以下、Sとする)700において、撮影モードが選択される。
S701では、露光制御部40がAE制御を行い、撮像している被写体の輝度情報から適正露光値を得る。
S702では、露光制御部40が適正露出となるF値とシャッタースピードを設定する。
S703では、S702で設定したF値からシステム制御回路50が光学ズームと電子ズームとの切り換え境界を設定する。これにより光学ズームを行う最大倍率(光学ズームから電子ズームへと切り換えるときの光学ズームの倍率)が設定される。ここで設定される光学ズームと電子ズームとの切り換え境界は、一定間隔ごとにAEを行い、被写体の輝度が変わって適正露光値が変化するたびに変化する。
【0046】
S704では、撮像装置100の画像表示部28に切り換え境界の枠503を表示する。ここで表示する枠503は、一定間隔ごとにAEを行い、被写体の輝度が変わって適正露光値が変化するたびに大きさが変化する。
S705では、撮影者により、操作部70のズームレバーが望遠側に操作されたか否かを判断する。ズームレバーが望遠側に操作された場合には、S706へ進み、ズームレバーが望遠側に操作されていない場合には、S701へ戻る。
S706では、光学ズームと電子ズームの切り換え境界まで光学ズームを行う。
S707では、光学ズームと電子ズームの切り換え境界から先は電子ズームへと切り換えて電子ズームを行う。
なお、望遠端に達するか、又は、撮影者の希望する倍率までズームを行い、撮影者がズームレバーの操作を止めたときは、ズーム動作が停止する。
【0047】
図8は、図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズーム及び電子ズームを用いて望遠側から広角側へ向かってズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
図8において、表示画像800は、望遠端での表示画像を示し、表示画像801は、光学ズーム3/4倍を行ったときの表示画像を示し、表示画像802は、光学ズーム3/4倍を行ったあとに、電子ズーム1/3倍を行ったときの表示画像を示している。また、表示画像803は、光学ズーム3/4倍を行い、電子ズーム1/3倍を行ったあとに、光学ズーム2/3倍を行ったときの表示画像を示している。
図9は、図8に対応した望遠側から広角側にズームするときの撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
これら図8と図9では、被写体の輝度が低くなった場合を示している。
【0048】
図8及び図9に示す例において、ズーム位置が望遠側にあり、AEを行ったときの適正露光値に対するシャッタースピード及びF値はそれぞれ1/80及びF4.0である。ズーム動作前に望遠端でAEを行ったときより被写体が暗くなり、適正露光とするために必要な露光量が多くなったと判断されると、切り換え境界Aまでは光学ズームが広角側へ優先的に動作する。
光学ズームが広角側に動作することで開放F値が小さくなり、それに伴って撮影時のF値が小さくなる。切り換え境界Aにおける適正露光値に対するシャッタースピード及びF値はそれぞれ1/125及びF3.5なり、F値が小さくなった分、シャッタースピードを上げることができる。
【0049】
そして、切り換え境界Aよりも広角側となると、光学ズームが停止し、切り換え境界Bまで電子ズームが動作する。適正露光値が変わらなければ、切り換え境界Bにおける適正露光値に対するシャッタースピード及びF値は、切り換え境界Aと変わらず、それぞれ1/125及びF3.5となる。その後、切り換え境界Bで電子ズーム倍率は等倍となり、広角端までは再び光学ズームが動作する。広角端における適正露光値に対するシャッタースピード及びF値はそれぞれ1/125及びF3.5となる。被写体が暗くなった場合にこのような制御を行うことで、手ブレや被写体ブレを抑えつつ、電子ズームによる解像度の劣化を抑えた画像を撮影することができる。
【0050】
図10は、図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズーム及び電子ズームを用いて望遠側から広角側へ向かってズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
図10において、表示画像900は、ズーム動作前の望遠端での表示画像を示し、表示画像901は、電子ズーム1/3倍を行ったときの表示画像を示している。また、表示画像902は、電子ズーム1/3倍を行ったあとに、光学ズーム1/2倍を行ったときの表示画像を示している。
図11は、図10に対応した望遠側から広角側にズームするときの撮像装置のズーム倍率とF値を表すグラフである。
これら図10と図11では、被写体の輝度が高くなった場合、又は、輝度が変わらない場合を示している。
【0051】
図10及び図11に示す例において、ズーム位置が望遠側にあり、AEを行ったときの適正露光値に対するシャッタースピード及びF値はそれぞれ1/125及びF5.4である。ズーム動作前に望遠端でAEを行ったときより被写体が明るくなり、適正露光の値が小さくなったと判断されると、切り換え境界Cまでは電子ズームが広角側へ優先的に動作する。電子ズームが広角側に動作することで解像度の劣化を抑えることができる。適正露光値が変わらなければ、切り換え境界Cにおける適正露光値に対するシャッタースピード及びF値は望遠端と変わらず、それぞれ1/125及びF5.4となる。そして、切り換え境界Cを超えると、電子ズームが停止し、広角端まで光学ズームが動作する。光学ズームが動作すると、開放F値が小さくなる。
【0052】
図12は、望遠側から光学側へズームするときの撮像装置100における処理を表すフローチャートである。
まず、S1200では、撮影モードが選択される。なお、この時点では、ズーム位置が望遠側にあるとする。
S1201では、露光制御部40がAE制御を行い、撮像している被写体の輝度情報から適正露光値を得る。
S1202では、露光制御部40が適正露出となるF値とシャッタースピードを設定する。
S1203では、S1202で設定したF値からシステム制御回路50が光学ズームと電子ズームとの切り換え境界を設定する。
【0053】
S1204では、撮影者により、操作部70のズームレバーが広角側に操作されたか否かを判断する。ズームレバーが広角側に操作された場合には、S1205へ進み、ズームレバーが広角側に操作されていない場合には、S1201へ戻り、撮影者によりズームレバーが広角側に動かされるまでS1201からS1203までを繰り返す。
S1205では、再度AEを行い、S1201において望遠端でAEを行ったときと現在とを比較する。被写体が暗くなった場合には、S1206へ進む。一方、被写体が暗くなっていない、すなわち、被写体が明るくなった場合、又は、被写体の輝度が変わらない場合には、S1209へ進む。
【0054】
S1206では、切り換え境界Aまでは光学ズームが優先的に動作する。そして、切り換え境界Aまでくると、S1207へ進む。
S1207では、光学ズームが停止し、切り換え境界Bまで電子ズームが動作する。切り換え境界Bまでくると、S1208へ進む。
S1208では、電子ズームは停止し、広角端まで光学ズームが動作する。
【0055】
S1209では、切り換え境界Cまでは電子ズームが優先的に動作する。そして、切り換え境界Cまでくると、S1210へ進む。
S1210では、電子ズームが停止し、広角端まで光学ズームが動作する。
【0056】
次に、第1実施形態において、ズーム位置が望遠側にあり、ズーム動作がない場合に、被写体の輝度が変化したときの動作について説明する。
ズーム位置が望遠側にある場合は、シャッタースピードを変更することで適正露光となるようにする。ここで光学ズーム及び電子ズーム、F値、感度などは変更しない。被写体の輝度が低くなり、AEの結果から適正露光とするために必要な露光量が多くなった場合は、シャッタースピードを遅くすることで、適正露光となるように制御する。一方、被写体の輝度が高くなり、AEの結果から適正露光とするために必要な露光量が少なくなった場合は、シャッタースピードを速くすることで、適正露光となるように制御する。
【0057】
ここで、第1実施形態における撮像装置のもつ光学ズーム及び電子ズームのそれぞれの最大ズーム倍率の能力に対するズーム可能な最大ズーム倍率について説明する。
本実施形態では、被写体の輝度によって光学ズームから電子ズームに切り替わる倍率が変化することで、電子ズームと光学ズームを合わせた最大倍率が変化してしまう。そこで、本実施形態では、最大ズーム倍率を電子ズームの最大ズーム倍率と同じ倍率で制限を設ける。
【0058】
図13は、第1実施形態における最大倍率の制限に関してのF値とズーム倍率、焦点距離の関係を示す図である。
図13において、縦軸はF値を示し、横軸はズーム倍率とともに得られる画像に対応する画角から換算した計算上の焦点距離を示している。最大ズーム倍率を電子ズームの最大ズーム倍率に制限しない場合、被写体が明るく、F値をF5.6以上にするときは、光学ズームと電子ズームの最大倍率をあわせた12倍までズームできる。しかし、被写体が暗く、広角端の開放F値であるF2.8にするときは、ズーム倍率が4倍以上だとF値をF2.8にすることができないため、電子ズームの最大倍率4倍までしかズームできない。そこで、電子ズームの最大ズーム倍率の4倍で最大ズーム倍率に制限を設ける。最大ズーム倍率に制限を設けることで、被写体の輝度によらずに、ズーム可能な倍率が一定となり、撮影者に違和感を与えない。
【0059】
以上説明したように、第1実施形態によれば、被写体の輝度に応じて光学ズームと電子ズームとを適宜切り換えてズームを行うので、シャッタースピードの低下による手ブレや被写体ブレを生じにくく、良好な画像を得ることができる。また、感度を上げすぎる必要もないので、ノイズの少ない画像を得ることができる。
【0060】
なお、上述した第1実施形態において説明した本発明は、広角側よりも望遠側の明るさの低下が著しくなっているズームレンズからなる撮影レンズを有する撮像装置及び高画素の撮像素子を有する撮像装置に対して特に有効である。これは、以下に説明する第2実施形態から第4実施形態において説明する本発明についても同様である。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明による撮像装置の第2実施形態について説明する。
なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態における撮像装置の光学ズーム及び電子ズームのそれぞれの最大ズーム倍率の能力に対するズーム可能な最大ズーム倍率について説明する。第1実施形態で説明したように、被写体の輝度によって光学ズームから電子ズームに切り替わる倍率が変化することにより、電子ズームと光学ズームを合わせた最大倍率が変化してしまう。そこで、第2実施形態では、感度を上げることで、光学ズームの最大ズーム倍率と電子ズームの最大ズーム倍率を合わせた倍率まで制限をせず、ズーム動作できるようにする。
【0062】
図14は、広角側から望遠側に光学ズーム及び電子ズームを用いてズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
図14において、表示画像1400は、ズーム前の広角端での表示画像を示し、表示画像1401は、光学ズーム1.5倍を行ったときの表示画像を示し、表示画像1402は、光学ズーム1.5倍を行ったあとに、電子ズーム4倍を行ったときの表示画像を示す。また、表示画像1403は、光学ズーム1.5倍を行い、電子ズーム4倍を行ったあとに、光学ズーム2倍を行ったときの表示画像を示している。
【0063】
図15は、図14に対応した広角側から望遠側に光学ズーム及び電子ズームを用いてズーム動作した場合の撮像装置のズーム倍率とF値を表すグラフである。
図15中の実線は、撮影時のF値を示し、破線は、開放F値を示している。ここで、光学ズームの最大ズーム倍率は3倍、電子ズームの最大ズーム倍率は4倍、光学ズームと電子ズームとを合わせた最大ズーム倍率は12倍である。
【0064】
ズーム動作前の広角端でAEを行ったときの適正露光値に対するシャッタースピード及びF値が、それぞれ1/125及びF4.0であったとする。適正露光値が変わらなければ、光学ズームのみを行うと倍率が1.5倍以上のところで開放F値に伴って撮影時のF値が上がってしまうため、ズーム倍率が1.5倍以上のところでは電子ズームに切り換える。
電子ズームによりズーム動作を行っても、F値は変化しないため、シャッタースピードを遅くする必要がない。よって、ズーム倍率が6倍までの望遠側においてはズーム動作前のシャッタースピード及びF値が変わらず、シャッタースピード及びF値はそれぞれ1/125及びF4.0となる。
【0065】
ズーム倍率6倍のとき、電子ズームは望遠端であり、ここで、撮影者がズームレバーを離さなければ、再び、光学ズーム動作へ切り替わり、感度を上げながら、光学ズームの望遠端まで、光学ズームが動作する。ここで、光学ズームを行うと開放F値の値が大きくなってしまい、適正露光値を保つためには、シャッタースピードが遅くなってしまう。そこで、本実施形態では、感度を上げて、シャッタースピードを変化させることなく、光学ズーム動作が行えるようにしている。望遠端であるズーム倍率12倍のときのシャッタースピード及びF値は、それぞれ1/125及びF5.6となる。
このように、本実施形態では、望遠側においてもシャッタースピードを変える必要がないため、光学ズームのみを用いた場合に比べ、手ブレや被写体ブレが発生を防ぐことができる。
【0066】
図16は、第2実施形態の広角側から望遠側へズームするときの撮像装置100における処理を表すフローチャートである。
図16のフローにおけるS1500からS1507までは、第1実施形態の図7のS700からS707までと同じ動作であるので、この部分については説明を省略する。
S1507では、電子ズームの望遠端まで電子ズームを行う。
S1508では、光学ズームが望遠端になっているか否かを判断する。光学ズームの望遠端であれば、S1510へ進みズーム動作を終了する。一方、光学ズームの望遠端でない場合は、S1509へ進む。
S1509では、撮影の感度を上げ、光学ズームを行う。ここで、光学ズームを行うと、開放F値が上がり、適正露光値に対するシャッタースピードが遅くなってしまうが、感度を上げることで、F値は上がっても、光学ズーム前のシャッタースピードを維持できる。これにより、光学ズームを行っても手ブレや被写体ブレを防ぐことができる。S1509の処理が終わったらS1508へ戻り、光学ズームの望遠端になるまで、S1509の動作を繰り返す。
なお、撮影者がS1507でズームレバーを離すと、ズーム動作を停止し、第1実施形態と同様の動作となる。
【0067】
第2実施形態によれば、感度上昇を行うことにより、第1実施形態により得られる効果に加えて、光学ズームの最大ズーム倍率と電子ズームの最大ズーム倍率を合わせた倍率まで制限をせず、ズーム動作を行える。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明による撮像装置の第3実施形態について説明する。
なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第3実施形態は、ズーム位置が望遠側にあり、ズーム動作がない場合に被写体の輝度が変化したときの動作が第1実施形態と異なっている。以下、このときの動作について説明する。
第3実施形態では、ズーム位置が広角端にない場合に被写体の輝度が変化したときは、感度を変更することで適正露光となるようにする。このとき、光学ズーム及び電子ズーム、F値、シャッタースピードは変更しない。被写体の輝度が低くなり、AEの結果、適正露光とするために必要な露光量が多くなった場合は、感度を上げることで、適正露光となるように制御する。被写体の輝度が高くなり、AEの結果、適正露光とするために必要な露光量が少なくなった場合は、感度を下げることで、適正露光となるように制御する。
【0069】
また、第3実施形態において、任意のシャッタースピードを設定してもよい。
例えば、予め手ブレしないシャッタースピードを任意に設定する、又は、予め手ブレ限界シャッタースピードを設定することで、設定したシャッタースピードよりも遅くならないように制御する。ここで、手ブレ限界シャッタースピードとは、一般的には1/fで表される。ただし、手ブレ限界シャッタースピードは、これに限るものではなく、撮影者が任意に設定してもよいし、撮像装置100が演算により撮影状況に合わせて適宜設定してもよい。予め手ブレしないシャッタースピードを任意に設定する、又は、予め手ブレ限界シャッタースピードを設定することで、手ブレや被写体ブレを抑えることを重視した制御が可能となる。
【0070】
第3実施形態によれば、感度の変更も行うので、撮影者の意図する倍率を維持したまま、手ブレや被写体ブレを生じにくく、良好な画像を得ることができる。
【0071】
(第4実施形態)
次に、本発明による撮像装置の第4実施形態について説明する。
なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第4実施形態は、ズーム位置が望遠側にあり、ズーム動作がない場合に被写体の輝度が変化したときの動作が第1実施形態と異なっている。以下、このときの動作について説明する。
第4実施形態では、ズーム位置が望遠側にある場合に被写体の輝度が低くなり、AEの結果、適正露光とするために必要な露光量が多くなったときは、ズームレンズを広角側に自動で移動させることでF値を小さくし、適正露光となるようにする。
【0072】
図17は、図13と同じ特性のズームレンズを持つ撮像装置において、被写体の輝度が低くなったときにズームレンズを広角側に自動で移動させる場合の撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
図17中の実線は、あるズーム位置から広角側に自動で移動させる場合のズーム倍率とF値の変化を表している。この例では、光学ズームの最大ズーム倍率は3倍、電子ズームの最大ズーム倍率は4倍、光学ズームと電子ズームとを合わせた最大ズーム倍率は12倍である。
また、光学ズームと電子ズームとを合わせた最大ズーム倍率の制限はしない。図17において、任意の各ズーム位置から、被写体の輝度が低くなったときにズームレンズを広角側に自動で移動させることで、開放F値が小さくなり、撮影時のF値も小さくすることができる。結果として、シャッタースピードを変更することなく、適正露出の撮影を行うことができる。
【0073】
本実施形態によれば、被写体の輝度が低くなったときに広角側に自動でズームを行うので、シャッタースピードの低下による手ブレや被写体ブレを生じにくく、良好な画像を得ることができる。また、感度を上げすぎる必要もないので、ノイズの少ない画像を得ることができる。
【0074】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
例えば、各実施形態において、撮影レンズ10が撮像装置100に対して交換できない形態を例に挙げて説明したが、これに限らず、着脱自在な交換レンズを装着して使用する撮像装置であってもよい。
【0075】
なお、第1実施形態〜第4実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明による撮像装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】撮影レンズ10の焦点距離を変化させた場合の明るさ、つまり、開放F値の変化を示すグラフである。
【図3】図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズームのみを用いて広角側から望遠側へズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
【図4】図3に対応した広角側から望遠側にズームするときの撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
【図5】図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズーム及び電子ズームを用いてズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例である。
【図6】図5に対応した広角側から望遠側にズームするときの撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
【図7】第1実施形態の広角側から望遠側へズームするときの撮像装置100における処理を表すフローチャートである。
【図8】図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズーム及び電子ズームを用いて望遠側から広角側へ向かってズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
【図9】図8に対応した望遠側から広角側にズームするときの撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
【図10】図2のような特性のズームレンズを持つ撮像装置100において、光学ズーム及び電子ズームを用いて望遠側から広角側へ向かってズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
【図11】図10に対応した望遠側から広角側にズームするときの撮像装置のズーム倍率とF値を表すグラフである。
【図12】望遠側から光学側へズームするときの撮像装置100における処理を表すフローチャートである。
【図13】第1実施形態における最大倍率の制限に関してのF値とズーム倍率、焦点距離の関係を示す図である。
【図14】広角側から望遠側に光学ズーム及び電子ズームを用いてズーム動作した場合の画像表示部28に表示される画像及びそのときのシャッタースピードとF値の例を示す図である。
【図15】図14に対応した広角側から望遠側に光学ズーム及び電子ズームを用いてズーム動作した場合の撮像装置のズーム倍率とF値を表すグラフである。
【図16】第2実施形態の広角側から望遠側へズームするときの撮像装置100における処理を表すフローチャートである。
【図17】図13と同じ特性のズームレンズを持つ撮像装置において、被写体の輝度が低くなったときにズームレンズを広角側に自動で移動させる場合の撮像装置100のズーム倍率とF値を表すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
10 撮影レンズ
12 シャッター
14 撮像素子
16 A/D変換器
18 タイミング発生回路
20 画像処理回路
22 メモリ制御回路
24 画像表示メモリ
26 D/A変換器
28 画像表示部
30 メモリ
32 圧縮・伸長回路
40 露光制御部
42 フォーカス制御部
44 ズーム制御部
46 バリア制御部
48 フラッシュ
50 システム制御回路
52 メモリ
54 表示部
56 不揮発性メモリ
60 モードダイアルスイッチ
62 シャッタースイッチ(SW1)
64 シャッタースイッチ(SW2)
66 画像表示ON/OFFスイッチ
68 単写/連写スイッチ
70 操作部
100 撮像装置
102 表示部
104 光学ファインダ
110 通信部
112 コネクタ
200 記録媒体
210 記録媒体
300 ズーム前の広角端での表示画像
301 光学ズーム6倍を行ったときの表示画像
500 ズーム前の広角端での表示画像
501 光学ズーム2倍を行ったときの表示画像
502 光学ズーム2倍を行ったあとに、電子ズーム3倍を行ったときの表示画像
503 光学ズームから電子ズームへ切り替わる境界の枠
800 ズーム動作前の望遠端での表示画像
801 光学ズーム3/4倍を行ったときの表示画像
802 光学ズーム3/4倍を行ったあとに、電子ズーム1/3倍を行ったときの表示画像
803 光学ズーム3/4倍を行い、電子ズーム1/3倍を行ったあとに、光学ズーム2/3倍を行ったときの表示画像
900 ズーム動作前の望遠端での表示画像
901 電子ズーム1/3倍を行ったときの表示画像
902 電子ズーム1/3倍を行ったあとに、光学ズーム1/2倍を行ったときの表示画像
1400 ズーム前の広角端での表示画像
1401 光学ズーム1.5倍を行ったときの表示画像
1402 光学ズーム1.5倍を行ったあとに、電子ズーム4倍を行ったときの表示画像
1403 光学ズーム1.5倍を行い、電子ズーム4倍を行ったあとに、光学ズーム2倍を行ったときの表示画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点距離に応じて開放絞り値が変化するレンズ鏡筒を介して得た像を撮像する撮像装置であって、
前記レンズ鏡筒を介して得た像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像を行うときの露光条件を設定して制御する露光制御手段と、
前記レンズ鏡筒の焦点距離を変化させて倍率を変化させる光学ズームと前記レンズ鏡筒を介して得た像の撮影範囲を画像処理により変更する電子ズームとを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、焦点距離に応じて変化する開放絞り値と前記露光制御手段が設定した露光条件とに基づいて光学ズームと電子ズームとを切り換えること、
を特徴とする撮像装置。
【請求項2】
被写体の輝度を検出する輝度検出手段を有し、
前記制御手段は、前記輝度検出手段による輝度の検出結果に基づいて光学ズームと電子ズームとを切り換えること、
を特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記露光制御手段は、被写体の輝度に基づいて、又は、撮影者の指示にしたがって、露光条件としてシャッタースピードと絞り値と感度とのうちの少なくともひとつを設定すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、広角側から望遠側へズームを行うとき、前記露光制御手段が設定した絞り値よりも開放絞り値が大きくならないように光学ズームから電子ズームに切り換えること、
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、望遠側から広角側へズームを行うとき、前記露光制御手段が設定した絞り値よりも開放絞り値が大きくならないように電子ズームから光学ズームに切り換えること、
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、電子ズームを行っているとき、前記露光制御手段が設定した絞り値と開放絞り値とを比較した結果に基づいて光学ズームと電子ズームとを切り換えること、
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、被写体の輝度が低くなったとき、前記露光制御手段が設定した絞り値と開放絞り値とを比較した結果に基づいて光学ズームを広角側に動作させること、
を特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
画像を表示する表示部を有し、
前記制御手段は、光学ズームと電子ズームとを切り換える境界を前記表示部に表示させること、
を特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記露光制御手段は、撮影者が指示したシャッタースピードを露光条件として設定し、
前記制御手段は、撮影者が指示したシャッタースピードを維持できるように光学ズームと電子ズームとを切り換えること、
を特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、手振れによる像ブレを防止するように設定された手ブレ限界シャッタースピードより遅いシャッタースピードとならないように光学ズームと電子ズームとを切り換えること、
を特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、電子ズームが最大ズーム倍率の場合に、撮影者が望遠側にズーム操作を行ったとき、光学ズームを動作させながら前記露光制御手段が設定したシャッタースピードを変えずに適正露光となるように感度を高くすること、
を特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
焦点距離に応じて開放絞り値が変化するレンズ鏡筒を介して得た像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像を行うときの露光条件を設定して制御する露光制御手段と、
前記レンズ鏡筒の焦点距離を変化させて倍率を変化させる光学ズームと前記レンズ鏡筒を介して得た像の撮影範囲を画像処理により変更する電子ズームとを制御する制御手段と、
を備える撮像装置のズーム制御方法であって、
前記制御手段は、焦点距離に応じて変化する開放絞り値と前記露光制御手段が設定した露光条件とに基づいて光学ズームと電子ズームとを切り換えること、
を特徴とするズーム制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−119042(P2010−119042A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292450(P2008−292450)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】