説明

撮像装置

【課題】より効率よく適切な映像を出力可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】信号取出制御部16を、所定の領域の撮像素子群からのみ電気信号を取り出するように構成する。これにより、信号処理部17は、所定の領域外の影響を受けることなく、露出調整やオートホワイトバランス調整等の信号処理を適切に行うことができる。また、映像信号構成部18も、所定の領域外の撮像素子群から得られる電気信号について処理する必要がないため、従来より処理負荷が低い。そして、映像信号構成部18によって構成される映像には、所定の領域外に対応する撮像素子群から得られる電気信号による情報が含まれないため、撮像装置11から出力された映像信号に対して、他の装置が情報を削除するような追加処理(例えばマスク処理)を行う必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号を出力可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に撮像装置を搭載させ、その撮像装置よって撮影された映像を表示装置に表示させることにより、運転者の運転操作を補助するシステムが実現されている。一般的に表示装置は、車両の中央コンソールやインスツルメントパネル内等の限られた領域に設置されるため小型であることが多く、表示面が長方形状になったものが多い。その一方で、自車の周辺状況を客観的に掴むためには、広範囲を一度に確認することが可能な映像を表示装置に表示させることが好ましい。したがって、多くのシステムでは、広画角のレンズ(いわゆる魚眼レンズ)備えた撮像装置が用いられ、例えば、130度程度の画角の映像を表示装置に表示させるようになっている。
【0003】
しかし、広画角のレンズを備えた撮像装置によって撮影された映像は、映像の周辺部が歪んでおり、運転者は映像を視認しづらい。そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、映像の周辺部や中央部等をマスク処理することによって、視認性を高める技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−262447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスク処理は、映像に対するノイズ補正やエッジ補正等の信号処理が行われた後、最終段階で行われることが一般的であるため、結果として、マスクされた領域の映像信号に対するそれまでの信号処理は無駄となり、CPUの処理負荷やメモリの使用効率の点で問題がある。また、露出調整やオートホワイトバランス調整等の信号処理において、マスクされた領域に相当する映像信号が使用されると、マスクされた領域に存在する対象物の特性によっては、信号処理が適切になされないという問題もある。例えば、マスクされた領域に太陽があると、太陽の明るさを含めて露出調整され、結果として、マスクされない領域が暗くなってしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこのような問題にかんがみなされたものであり、より効率よく適切な映像を出力可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の撮像装置は、レンズと、レンズに入力された光を受けて電気信号に変換する撮像素子群が平面状に並べられたイメージャと、イメージャにおける所定の領域の撮像素子群からのみ電気信号を取り出す電気信号取出手段と、電気信号取出手段により取り出された電気信号に基づいて映像信号を構成する映像信号構成手段と、映像信号構成手段により構成された映像信号を外部に出力する出力手段とを備える。
【0007】
このような撮像装置によれば、電気信号取出手段が、所定の領域の撮像素子群からのみ電気信号を取り出すため、映像信号構成手段は所定の領域外の撮像素子群から得られる電気信号について処理する必要がない。したがって、映像信号構成手段の処理負荷を下げることができる。また、映像信号構成手段によって構成される映像には、所定の領域外の撮像素子群から得られる電気信号による情報が含まれない。したがって、撮像装置から出力された映像信号に対して、他の装置が情報を削除するような追加処理(例えばマスク処理)を行う必要がなく、また、露出調整やオートホワイトバランス調整等の調整も適切にされやすい。
【0008】
ここで、所定の領域は、イメージャの撮像素子のラインに対応させて設定された領域であり、電気信号取出手段は、イメージャの撮像素子のライン単位で、そのラインを構成する撮像素子群から電気信号を取り出すようになっていてもよい(請求項2)。「ラインに対応させて設定」というのは、所定の領域が複数のラインの集まりに対応することを意味する。
【0009】
このようになっていれば、ライン単位で電気信号を取り出すことが可能な撮像素子(例えば、CCD等)をイメージャとして用いることができる。また、ラインを指定する場合は素子を一つ一つ指定する場合よりも指定回数が少なくて済むため、電気信号の取り出し速度も早い。
【0010】
もちろん、所定の領域は、イメージャの撮像素子に対応させて設定された領域であり、電気信号取出手段は、イメージャの撮像素子単位で電気信号を取り出すようになっていてもよい(請求項3)。「撮像素子に対応させて設定」というのは、所定の領域が複数の撮像素子の集まりに対応することを意味する。
【0011】
このような撮像装置であれば、自由に所定の領域を設定することができ、使い勝手よい。
ところで、露出調整、ホワイトバランス調整等の信号処理は、撮像装置とは別の装置によって行われるようになっていてもよいが、撮像装置内で実行されるようになっているとよい。つまり、電気信号取出手段により、所定の領域の撮像素子群から取り出された電気信号に対して所定の信号処理を行う信号処理手段をさらに備えるように撮像装置を構成し、映像信号構成手段は、信号処理手段により信号処理が行われた電気信号に基づいて映像信号を構成するようになっているとよい(請求項4)。なお、信号処理の具体例としては、露出調整、ホワイトバランス調整、色相補正、彩度補正、色補間、ガンマ補正、シェーディング補正、画素欠陥補正、輪郭強調補正、フレア補正、クロマ抑制、ノイズリダクション等が考えられる。
【0012】
このような撮像装置であれば、撮像装置とは別の装置によって信号処理を行う必要がなくなるため、結果として撮像装置の使い勝手が向上する。しかも、信号処理前の信号には所定の領域外の信号が含まれていないため、所定の領域外の信号の影響を受けることなく、適切に信号処理を行うことができる。
【0013】
また、電気信号取出手段が電気信号を取り出す所定の領域は、予め決められた固定領域であってもよいが、変更可能になっていてもよい。つまり、請求項5に記載のように、さらに、所定の領域に関する領域情報を記憶する記憶手段を備えるように撮像装置を構成し、電気信号取出手段は、記憶手段に記憶されている領域情報に基づいて所定の領域から電気信号を取り出すようになっているとよい。
【0014】
このようになっていれば、記憶手段に記憶させる領域情報を変更することにより、電気信号取出手段が取り出す領域を、例えば、ユーザの希望する領域に変更することができる。その結果、さらに適切な映像を出力することが可能になる。
【0015】
なお、このように記憶手段に領域情報を記憶させるようになっている場合、さらに、領域情報を複数備えるように記憶手段を構成し、電気信号取出手段は、記憶手段が記憶する複数の領域情報のうち、外部から指定された領域情報を記憶手段から読み出して用いるようになっているとよい(請求項6)。
【0016】
このようになっていれば、電気信号取出手段が用いる領域情報を変更するために、記憶手段に記憶されている領域情報を入れ替えることなく、電気信号取出手段が用いる領域情報を外部から容易に変更することができる。
【0017】
ところで、電気信号取出手段によって取り出されなかった領域に相当する映像の領域は、固定的に特定の状態、例えば、黒塗りの状態や、白塗りの状態や、ノイズ状態であってもよいが、外部から指定された色によって塗られた状態であるとよい。つまり、映像信号構成手段は、電気信号取出手段によって取り出されなかった領域に相当する映像の領域について、外部から指定された色になるように映像信号を生成するようになっているとよい(請求項7)。
【0018】
このようになっていれば、電気信号取出手段によって取り出されなかった領域に相当する映像の領域の色を容易に外部から指定して変更することができ、撮像装置の使い勝手が向上する。また、電気信号取出手段によって取り出されなかった領域に相当する映像の領域の色を、適切な色(例えば、夜間は暗い色、昼間は明るい色)に変更することが可能になるため、ユーザにとって見やすい映像を出力することができる。
【0019】
なお、ここまでで説明した撮像装置のレンズは、撮影対象を平面として捉えて平面に射影するレンズ(一般的なレンズ)であってもよいが、特に、撮影対象を球面で捉えて平面に射影させる魚眼レンズであるとよい(請求項8)。
【0020】
なぜなら、魚眼レンズは、映像の周辺部が大きく歪むことが一般的であるため、映像を視認しづらいという特徴があり、これを軽減するために映像の周辺部をマスクして利用するケースが多いからである。つまり、レンズが魚眼レンズであれば、上述した撮像装置に効果がより顕著に現れる。
【0021】
また、上述した撮像装置は、携帯電話や、デジタルカメラ等に組み込まれて利用されるようになっていてもよいが、車両に搭載されて用いられると特によい(請求項9)。
なぜなら、運転者に提示される映像は特に見やすさが要求されるため、運転者にとって不要な映像領域をマスクする必要性が高いため、上述した撮像装置の効果が発揮されやすいからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0023】
[構成の説明]
図1は、実施形態の撮像装置11及び撮像装置11に接続される各種装置類を説明するためのブロック図である。撮像装置11には、表示装置21が接続されると共に図示しない他の装置等からマスク情報の切り替え信号等を入力する。
【0024】
(1)撮像装置11
撮像装置11は、車両の後方を撮影可能なように車両の後端中央部に設けられている。撮像装置11は、魚眼レンズ12、イメージャ13、マスク情報記憶部14、外部信号入力部15、信号取出制御部16、信号処理部17、映像信号構成部18、及び、映像出力インタフェース19を備える。
【0025】
魚眼レンズ12は、撮影対象を球面で捉えて平面に射影させるレンズであり、画角が180度程度あるレンズである。
イメージャ13は、魚眼レンズ12より入力された光を電気信号に変換するデバイスである。ここで、図2の回路図を用いてイメージャ13の動作について説明する。イメージャ13は、後述するセル56を指定するためにY方向のアドレス信号(制御信号)を出力するYアドレス回路51と、後述するセル56を指定するためにX方向のアドレス信号(制御信号)を出力するXアドレス回路52とを備える。また、イメージャ13は、光起電力効果を有するフォトダイオード53と、フォトダイオード53から得られた信号を増幅する増幅素子54と、増幅素子54から得られる信号の出力可否をYアドレス回路51からの制御信号に基づいて制御する行選択スイッチ55とを一組とするセル56を複数組備える。このセル56は平面状に並べられており、魚眼レンズ12を介して入力した光を平面状に並べられたセル56で受けるようになっている。
【0026】
また、行選択スイッチ55から出力された信号を伝達するための信号線57は、Y方向に並べられた各セル56で共用されている。そして、その信号線57には、CDS(Correlated Double Sampling)回路58が接続され、CDS回路58の出力側には列選択スイッチ59が設けられ、列選択スイッチ59によって信号の出力可否が決定される。なお、この列選択スイッチ59は、Xアドレス回路52からの制御信号によって制御される。
【0027】
また、列選択スイッチ59より出力された信号を伝達するための信号線60は、X方向に並べられた各列選択スイッチ59で共用されており、その信号線60には、AD変換を行うADC61が設けられており、入力した信号をデジタル信号として出力できるようになっている。
【0028】
このように構成されたイメージャ13は、Yアドレス回路51とXアドレス回路52が協調してそれぞれが制御信号を出力することにより、任意のセル56のフォトダイオード53が得た光信号の値を個別にデジタル信号として得ることができる。
【0029】
説明を図1に戻し、マスク情報記憶部14は、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性のメモリからなり、マスク情報を複数記憶する。マスク情報は、信号取出制御部16が取り出す対象の撮像素子(フォトダイオード53)を特定するために利用する情報であると共に、映像信号構成部18が映像信号を構成する際に映像以外の領域(マスク領域)の色を特定するために利用する情報である。ここで、マスク情報の一例を図3に示すマスク情報ファイル70を用いて説明する。
【0030】
マスク情報ファイル70は、マスクのID、マスクのR値、マスクのG値、マスクのB値、及び、マスクの輝度値からなるヘッダ部分と、マスクをかけるかかけないかを、映像を構成するドットに対応させたビット集合からなるデータ部分とから構成される。マスクのIDは、マスク情報ファイルを特定するための識別情報(ID)である。マスクのR値は、マスクをかけるドットのRGBカラー表現におけるR(レッド)の値である。マスクのG値は、マスクをかけるドットのRGBカラー表現におけるG(グリーン)の値である。マスクのB値は、マスクをかけるドットのRGBカラー表現におけるB(ブルー)の値である。
【0031】
データ部分における各ビットの配置は、実際の映像におけるドット位置と対応しており、”0”がマスクをかける意味(つまり、撮像素子から電気信号を取得しない意味)のビットを表し、”1”がマスクをかけない意味(つまり、撮像素子から電気信号を取得する意味)のビットを表す。したがって、ビット値が”0”である箇所に対応する映像のドットについては、R値,G値,B値にしたがった色によってマスクされることになる。
【0032】
なお、本例では、マスクの形式、マスクの大きさ毎にマスク情報が存在する。また、マスク領域のないマスク情報(つまり、ビット値が全て”1”であるマスク情報)もマスク情報記憶部14に記憶されている。また、マスク情報は、図3に示した形式のものに限らず、例えば、”0”と”1”の意味を逆にした形式や、マスクのR値,G値,B値のない形式であってもよい。また、マスク情報は圧縮されたファイル形式でマスク情報記憶部14に記憶されていてもよい。
【0033】
説明を図2に戻し、外部信号入力部15は、マスク情報の切り替え信号及びマスク領域の色の変更信号を入力するインタフェースである。なお、マスク情報の切り替え信号には切り替え後のマスクのIDが含まれており、マスク領域の色の変更信号には変更後のマスクの色情報(R値、G値、B値)が含まれている。また、マスク情報の切り替え信号は、図示しないHMIシステムに対してユーザがマスク情報の切り替え指示を出した場合や、図示しない映像分析システム(撮像装置11が撮像して出力した映像を分析するシステム)が太陽や街路灯等の高輝度物体の映像内位置から使用中のマスク情報が適切でないと判定した場合に、各システムから出力される信号である。なお、いずれの場合も、マスクされるべきでない領域(例えば、ユーザが認識すべき障害物が含まれている領域)にマスクがかかるようなマスク情報切り替え信号が発せられないようになっているとよい。また、マスク領域の色の変更信号は、図示しないHMIシステムに対してユーザがマスク領域の色の変更指示を出した場合や、図示しない車室内照度制御システムが車室内の照度の変化を検知した場合に、各システムから出力される信号である。
【0034】
信号取出制御部16は、周知のマイコンから構成され、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。具体的には、マスク情報記憶部14に記憶されているマスク情報に基づき、イメージャ13を構成する撮像素子から選択的に電気信号を取得し、信号処理部17へ送る処理等を実行する。
【0035】
信号処理部17は、周知のマイコンから構成され、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。具体的には、信号取出制御部16から渡された電気信号に対して、例えば、露出調整、ホワイトバランス調整、色相補正、彩度補正、色補間、ガンマ補正、シェーディング補正、画素欠陥補正、輪郭強調補正、フレア補正、クロマ抑制、ノイズリダクション等の信号処理を行い、映像信号構成部18へ送る処理等を行う。
【0036】
映像信号構成部18は、周知のマイコンから構成され、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。具体的には、信号処理部17によって信号処理された電気信号を所定の映像方式の映像信号に変換して構成する処理等を実行する。
【0037】
映像出力インタフェース19は、映像信号構成部18によって構成された映像の映像信号を表示装置21へ出力するインタフェースである。
(2)表示装置21
表示装置21は、液晶パネル等からなるカラー画像表示部(図示せず)を有し、撮像装置11から入力された映像信号に基づいて映像を表示する。
【0038】
[動作の説明]
次に撮像装置11の動作について説明する。
(1)初期化処理
撮像装置11は、電力の供給が開始された際に初期化処理を実行する。この初期化処理について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
撮像装置11は、まず信号取出制御部16及び映像信号構成部18がマスク情報記憶部14から所定のマスク情報を読み出す(S105)。ここで読み出すマスク情報は、予め定められた典型的なマスク情報であってもよいし、記憶しておいた前回使用したマスク情報であってもよい。
【0040】
マスク情報を読み出した信号取出制御部16は、イメージャ13からマスク外領域の電気信号の読み出しを開始する(S110)。つまり、マスク情報において”1”であるデータに対応するイメージャ13の撮像素子(フォトダイオード53)から順に信号の読み出しを開始する。
【0041】
続いて、信号処理部17が、信号取出制御部16の読み出した電気信号に対する信号処理を開始する(S115)。
続いて、映像信号構成部18が、信号処理部17が信号処理した電気信号と、S105で読み出したマスク情報とに基づいて、マスク領域が所定の色で塗りつぶされた映像の映像信号の構成を開始する(S120)。つまり、マスク情報において”0”であるデータに対応するドットの電気信号がマスク情報のヘッダ部分で指定された色になるように変更した後、所定の映像方式の映像信号に変換することである。所定の映像方式としては、例えば、NTSC、PAL、SDTV、HDTV等が考えられる。
【0042】
続いて、映像出力インタフェース19が、映像信号構成部18によって構成された映像信号の出力を開始する(S125)。そして、本処理(初期化処理)を終了する。
(2)変更処理
撮像装置11は、外部信号入力部15を介して所定の信号を入力した際に変更処理を実行する。この変更処理について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、所定の信号というのは、マスク情報の切り替え変更及びマスク領域の色の変更信号である。
【0043】
撮像装置11は、まず、信号取出制御部16は外部信号入力部15を介してマスク情報の切り替え信号を入力したか否かを判定する(S205)。この判定の結果、マスク情報の切り替え信号を入力したと判定した場合は(S205:Yes)、S210へ処理を移行し、マスク情報の切り替え信号を入力していないと判定した場合は(S205:No)、S220へ処理を移行する。
【0044】
マスク情報の切り替え信号を入力したと判定した場合に進むS210では、信号取出制御部16は、その切り替え信号に基づいてマスク情報記憶部14からマスク情報を選択して読み込み、その読み込んだマスク情報に基づき、電気信号を読み出す対象の撮像素子(フォトダイオード53)を変更する。そして、S215へ処理を移行する。
【0045】
S215では、映像信号構成部18が、マスク情報の切り替え信号に基づいてマスク情報記憶部14からマスク情報を選択して読み込み、その読み込んだマスク情報に基づき、マスク領域の色を変更して映像信号を構成する。そして、本処理(変更処理)を終了する。
【0046】
マスク情報の切り替え信号を入力していないと判定した場合に進むS220では、映像信号構成部18が外部信号入力部15を介してマスク領域の色の変更信号を入力したか否かを判定する。この判定の結果、マスク領域の色の変更信号を入力したと判定した場合は(S220:Yes)、S225へ処理を移行し、マスク領域の色の変更信号を入力していないと判定した場合は(S220:No)、本処理(変更処理)を終了する。
【0047】
マスク領域の色の変更信号を入力したと判定した場合に進むS225では、映像信号構成部18が、現在使用しているマスク情報において”0”であるデータに対応するドットの電気信号を変更信号によって指定された色になるように変更して映像信号に変換する。
【0048】
[表示される映像例]
次に、実際に表示装置21に表示される映像例について説明する。
図6(a)に示す映像例は、表示状態における映像の上辺に沿ったマスク領域である上側マスク領域401と、表示状態における映像の下辺に沿ったマスク領域である下側マスク領域402と、上側マスク領域401及び下側マスク領域402に挟まれた領域であって実際の映像を表示するための領域である映像領域403とからなる。
【0049】
上側マスク領域401は、映像の下方向に凹形状になっており、その凹形状部分の形状は、映像の歪曲線に沿った形状になっている。映像の歪曲線というのは、直交する格子を撮影対象として撮影したときの映像中に映る格子に沿った曲線であり、映像の歪み具合を表す曲線である。また、下側マスク領域402は、映像の上方向に凹形状になっており、その凹形状部分の形状は、略V字形状になっている。
【0050】
これらの上側マスク領域401及び下側マスク領域402については、イメージャ13の撮像素子(フォトダイオード53)から電気信号が読み出されておらず、映像信号構成部18によって所定の色によって塗りつぶされている。
【0051】
図6(b)に示す映像例は、表示状態における映像の上辺に沿ったマスク領域である上側マスク領域405と、表示状態における映像の下辺に沿ったマスク領域である下側マスク領域406と、上側マスク領域405及び下側マスク領域406に挟まれた領域である映像領域407とからなる。
【0052】
上側マスク領域405は、映像の下方向に凹形状になっており、その凹形状部分の形状は、映像の歪曲線に沿った形状になっている。また、下側マスク領域402は、映像の上方向に凹形状になっており、その凹形状部分の形状は、映像の歪曲線に沿った形状になっている。
【0053】
これらの上側マスク領域405及び下側マスク領域406については、これらの領域に対応するイメージャ13の撮像素子(フォトダイオード53)から電気信号が読み出されておらず、映像信号構成部18によって所定の色によって塗りつぶされている。
【0054】
図7(a)に示す映像例は、表示状態における映像の上側に位置する領域であって実際の映像を表示する領域である映像領域411と、表示状態における映像の下側に位置する領域であって報知情報を表示するための領域である報知領域412とからなる。
【0055】
このうち報知領域412は、対応するイメージャ13の撮像素子(フォトダイオード53)から電気信号が読み出されておらず、映像信号構成部18によって所定の色に塗りつぶされている。そして、その塗りつぶされた領域に文字が重畳表示されている。
【0056】
図7(b)に示す映像例は、映像領域413のみによって構成される映像例である。このように、全てのイメージャ13の撮像装置(フォトダイオード53)から電気信号を読み出して映像を構成するようになっていてもよい。
【0057】
図8(a)に示す映像例は、表示状態における映像の上辺に沿ったマスク領域である上側マスク領域421と、実際の映像を表示するための領域である映像領域422とからなる。映像領域422の上部に太陽423が映っていることが確認できる。
【0058】
図8(b)に示す映像例は、表示状態における映像の上辺に沿ったマスク領域である上側マスク領域425と、実際の映像を表示するための領域である映像領域426とからなる。図8(a)の映像例と比較して、図8(b)の映像例の上側マスク領域245は、映像の下方向にせり出していることが確認できる。これは、映像領域426に映っている太陽427の影響を軽減させる目的であり、その目的が達成できるマスク情報が映像分析システムによって選ばれ、その選ばれたマスク情報に切り替えるような切り替え信号を映像分析システムから受けた結果得られた映像例である。
【0059】
[実施形態の効果]
上記実施形態の撮像装置11によれば、信号取出制御部16が、所定の領域(マスク領域外)の撮像素子群(フォトダイオード53)からのみ電気信号を取り出すため、信号処理部17は、所定の領域外の影響を受けることなく、露出調整やオートホワイトバランス調整等の信号処理を適切に行うことができる。また、映像信号構成部18も、所定の領域外の撮像素子群から得られる電気信号について処理する必要がないため、従来より処理負荷が低い。そして、映像信号構成部18によって構成される映像には、所定の領域外に対応する撮像素子群から得られる電気信号による情報が含まれないため、撮像装置11から出力された映像信号に対して、他の装置が情報を削除するような追加処理(例えばマスク処理)を行う必要がない。
【0060】
また、撮像装置11のマスク情報記憶部14には、マスク領域に関する情報をマスク情報として複数記憶しており、外部からの切り替え信号により信号取出制御部16が利用するマスク情報を切り替えるようになっている(S210)。このため、容易にマスク領域を変更することができる。
【0061】
また、外部から送られたマスク領域の色の変更信号により、映像信号構成部18が映像信号を構成する際のマスク領域の色を変更するようになっている(S220)。このため、容易にマスク領域の色を変更することができる。
【0062】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態の撮像装置11では、撮像素子単位で電気信号を読み出す素子(フォトダイオード53)を指定できるイメージャ13を備えていたが、撮像素子のライン単位で電気信号を読み出す素子を指定できるイメージャを用いても良い。このようなイメージャを用いることにより、マスク領域の形状の自由度は制限されるが、電気信号の取り出し速度が早くなるため、高速撮影が可能になる。
【0063】
(2)上記実施形態の撮像装置11は、外部よりマスク情報の切り替え信号及びマスク領域の色の変更信号を入力し、入力した信号に応じてマスク情報を切り替えたりマスク領域の色を変更するようになっていたが、撮像装置11の内部で自律的に適切なマスク情報やマスク領域の色を決定し、その決定に基づいてマスク情報を切り替えたりマスク領域の色を変更するようになっていてもよい。具体的には、信号取出制御部16や信号処理部17等の出力信号から映像を解析し、所定のアルゴリズムに基づき、適切なマスク情報を選択したりマスク領域の色を決定したりするようになっているとよい。なお、その際、ユーザに提示しなければならない映像領域(例えば、障害物が映っている領域)についてはマスクされないようにマスク情報を選択するようになっているとよい。また、これらの決定を行うにあたり、決定を補助する情報(例えば、表示装置21の設置場所付近の照度情報等)を、外部信号入力部15を介して入力して利用するようになっているとよい。
【0064】
このような撮像装置であれば、撮像装置を制御する装置を簡略化することができる。
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲に記載した用語との対応を示す。
【0065】
信号取出制御部16が電気信号取出手段に相当し、映像信号構成部18が映像信号構成手段に相当し、映像出力インタフェース19が出力手段に相当し、マスク情報記憶部14が記憶手段に相当し、マスク情報が領域情報に相当し、フォトダイオード53が撮像素子に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態の撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】イメージャの詳細を説明するための回路図である。
【図3】マスク情報を説明するための説明図である。
【図4】初期化処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】変更処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】表示装置に表示される映像例である。
【図7】表示装置に表示される映像例である。
【図8】表示装置に表示される映像例である。
【符号の説明】
【0067】
11…撮像装置、12…魚眼レンズ、13…イメージャ、14…マスク情報記憶部、15…外部信号入力部、16…信号取出制御部、17…信号処理部、18…映像信号構成部、19…映像出力インタフェース、21…表示装置、51…Yアドレス回路、52…Xアドレス回路、53…フォトダイオード、54…増幅素子、55…行選択スイッチ、56…セル、57…信号線、58…CDS回路、59…列選択スイッチ、60…信号線、61…ADC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
前記レンズに入力された光を受けて電気信号に変換する撮像素子群が平面状に並べられたイメージャと、
前記イメージャにおける所定の領域の前記撮像素子群からのみ電気信号を取り出す電気信号取出手段と、
前記電気信号取出手段により取り出された電気信号に基づいて映像信号を構成する映像信号構成手段と、
前記映像信号構成手段により構成された映像信号を外部に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記所定の領域は、前記イメージャの撮像素子のラインに対応させて設定された領域であり、
前記電気信号取出手段は、前記イメージャの撮像素子のライン単位で、そのラインを構成する前記撮像素子群から電気信号を取り出すこと、
を特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記所定の領域は、前記イメージャの撮像素子に対応させて設定された領域であり、
前記電気信号取出手段は、前記イメージャの撮像素子単位で電気信号を取り出すこと、
を特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載された撮像装置において
前記電気信号取出手段により、前記所定の領域の撮像素子群から取り出された電気信号に対して所定の信号処理を行う信号処理手段をさらに備え、
前記映像信号構成手段は、前記信号処理手段により信号処理が行われた電気信号に基づいて映像信号を構成すること、
を特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載された撮像装置において、
さらに、所定の領域に関する領域情報を記憶する記憶手段を備え、
前記電気信号取出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記領域情報に基づいて前記所定の領域から電気信号を取り出すこと、
を特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像装置において、
前記記憶手段は、前記領域情報を複数備え、
前記電気信号取出手段は、前記記憶手段が記憶する複数の前記領域情報のうち、外部から指定された前記領域情報を前記記憶手段から読み出して用いること、
を特徴とする映像処理装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載された撮像装置において、
前記映像信号構成手段は、前記電気信号取出手段によって取り出されなかった領域に相当する映像の領域について、外部から指定された色になるように映像信号を生成すること、
を特徴とする映像処理装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載された撮像装置において、
前記レンズは、撮影対象を球面で捉えて平面に射影させる魚眼レンズであること、
を特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載された撮像装置において、
当該撮像装置は、車両に搭載されて用いられること、
を特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−77129(P2009−77129A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243826(P2007−243826)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】