操舵角検出装置および操舵角検出方法
【課題】測定作業の容易化およびコストダウンを図る上で有利な操舵角検出装置および操舵角検出方法を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール2の回転部2Dの外周に沿って被検出部12を設ける。被検出部12は、回転部2Dの外周に沿って設けられ、外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が回転部2Dの外周に沿って単調に増加または減少する。操舵角検出装置10は、予め定められた測定箇所において被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち回転部2Dの外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域24に該当する画像の輝度を検出し、操舵角θと輝度Lとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定し該操舵角θを示す操舵角データを出力し、操舵角θの特定は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいて行う。
【解決手段】ステアリングホイール2の回転部2Dの外周に沿って被検出部12を設ける。被検出部12は、回転部2Dの外周に沿って設けられ、外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が回転部2Dの外周に沿って単調に増加または減少する。操舵角検出装置10は、予め定められた測定箇所において被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち回転部2Dの外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域24に該当する画像の輝度を検出し、操舵角θと輝度Lとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定し該操舵角θを示す操舵角データを出力し、操舵角θの特定は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいて行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置および操舵角検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるタイヤの性能評価を行うための評価項目として操縦安定性や車両の運動特性があり、これら操縦安定性や運動特性を評価する上でステアリングホイールの操舵角は重要な測定項目である。
従来は、専用の操舵角計や操舵角力計が組み込まれ車種毎に開発されたステアリングホイールを用意し、測定対象となる車両に設けられているステアリングホイールをいったん取り外したのち、前記の専用のステアリングホイールを車両に取り付けて使用している。
また、特許文献1に示すような回転角度を測定する角度測定器を操舵機構に組み込んで操舵角を検出することが考えられる。
あるいは、特許文献2に示すように初めから操舵機構に組み込まれた回転角度検出装置を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−166821号公報
【特許文献2】特開2000−065562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した操舵角計や操舵角力計が組み込まれた専用のステアリングホイールを用いる場合には、車両への装着作業が煩雑となり手間が掛かることは無論のこと、車種毎に開発された高価な専用のステアリングホイールを用意しなくてはならず、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で不利がある。
また、特許文献1、2に示される装置を用いる場合であっても、それら装置を車両に装着する作業が煩雑となり手間が掛かることから、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で不利がある。
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、測定作業の容易化およびコストダウンを図る上で有利な操舵角検出装置および操舵角検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置であって、前記回転部の外周に沿って設けられ、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部と、予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出手段と、前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルを記憶するデータテーブル手段と、前記データテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出手段と、前記操舵角検出手段によって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持手段とを備え、前記操舵角検出手段による前記操舵角の特定は、前記変位量検出手段で検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされることを特徴とする。
また本発明は、回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出方法であって、前記回転部の外周に沿って、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部を設け、予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出ステップと、前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出ステップと、前記操舵角検出ステップによって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持ステップとを備え、前記操舵角検出ステップによる前記操舵角の特定は、前記変位量検出ステップで検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ステアリングホイールの回転部の外周に沿って被検出部を設け、被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち回転部の外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出し、操舵角と輝度とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力し、操舵の特定は、検出された輝度と、直近の操舵角とに基づいて行うようにした。
したがって、高価な専用のステアリングホイールを用意する必要がなく、また、専用のステアリングホイールの交換作業や車両の操舵機構に専用の測定装置を組み込むといった煩雑な作業が不要となるため、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の構成を示す説明図である。
【図2】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における被検出部12の一例を示す展開図である。
【図4】第1の実施の形態における被検出部12の他の例を示す展開図である。
【図5】第1の実施の形態におけるステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
【図6】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10におけるデータテーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の動作フローチャートである。
【図8】第2の実施の形態における被検出部12の一例を示す展開図である。
【図9】第2の実施の形態における被検出部12の他の例を示す展開図である。
【図10】第2の実施の形態におけるステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
【図11】光の反射率の変化の向きが図8、図9とは逆になった場合におけるステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明による車両の操舵角検出装置および操舵角検出方法の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して本実施の形態の操舵角検出装置10によって操舵角が検出されるステアリングホイール2について説明する。
ステアリングホイール2は、運転者により操作される円環状のリム部2Aと、リム部2Aの内側の中央に配置された中央ケース部2Bと、リム部2Aと中央ケース部2Bとを接続する複数のスポーク部2Cとを備えている。
中央ケース部2Bの背面に回転部2Dが一体的に設けられ、回転部2Dの背面にボス部2Eが一体的に設けられ、このボス部2Eは不図示のステアリングシャフトに結合されている。
したがって、回転部2Dは、ステアリングシャフト方向、すなわち、回転軸方向から見て回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイール2と一体に回転する。
【0009】
次に、本実施の形態の操舵角検出装置10について説明する。
図1に示すように、操舵角検出装置10は、被検出部12と、輝度検出手段14と、操作部16と、ECU18とを含んで構成されている。
【0010】
被検出部12は、回転部2Dの外周に沿って設けられ、外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が回転部2Dの外周に沿って単調に増加または減少するものである。
図3、図4は、回転部2Dの全周にわたって設けられた被検出部12の展開図である。
本実施の形態では、図3、図4に示すように、被検出部12は、光の反射量が回転部2Dの一周に沿って単調に増加あるいは減少する単一のマーク20を含んで構成されている。
すなわち、図3に示す例では、マーク20は、濃淡が均一であり、外周と直交する方向の幅が外周に沿って単調に変化している。
図4に示す例では、マーク20は、外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化している。なお、図4では、ハッチングによる描画の都合上、マーク20における濃淡が段階的に変化した状態で図示されているが、マーク20における濃淡は無段階に変化しているものとする。
【0011】
本実施の形態では、回転部2Dの外周全周に、帯状の粘着テープ22(図3、図4)が粘着され、被検出部12は、粘着テープ22の表面に形成されている。
このような粘着テープ22を用いることにより、被検出部12を簡単に回転部2Dの外周に設けることができるため、操舵角の測定作業の容易化を図る上で有利となる。
【0012】
輝度検出手段14は、予め定められた測定箇所において被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、図3、図4に示すように、濃淡画像のうち回転部2Dの外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域24に該当する画像の輝度を検出するものである。
輝度検出手段14は、撮像部14Aと、信号処理部14Bとを備えている。
撮像部14Aは、予め定められた測定箇所において被検出部12を撮像して濃淡画像を生成するものである。
このような撮像部14Aとして、複数の受光素子が格子状に配列され2次元の濃淡画像を生成するCCD、C−MOSセンサなど従来公知のさまざまな撮像素子が使用可能である。
信号処理部14Bは、撮像部14Aから供給される濃淡画像のうち検出領域24に該当する画像の輝度を検出するものである。
信号処理部14Bは、図1に示すように後述するECU18と別に設けても、あるいは、ECU18によって実現してもよい。
【0013】
なお、撮像部14Aは、2次元の濃淡画像を生成するものに限定されない。
撮像部14Aとして、複数の受光素子が直線状に配列され1次元の濃淡画像を生成するラインセンサを用いてもよい。
要するに、輝度検出手段14は、被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち検出領域24に該当する画像の輝度を検出するものであればよい。
【0014】
また、輝度検出手段14は、例えば、被検出部12に対向する車室内の箇所に固定すればよく、輝度検出手段14の車室内への固定は、例えば、不図示の取り付け部材を介して運転席前方に位置するインスツルメントパネルに固定すればよく、輝度検出手段14を固定する箇所や固定手段は任意である。
【0015】
また、輝度検出手段14は、検出領域24に該当する画像の輝度Lを検出できればよく、したがって、輝度検出手段14(撮像部14B)と回転部2Dの外周との距離が多少変動してもかまわない。
したがって、回転部2Dは、図1に示すように、回転軸方向から見て回転軸の周りに非円形を呈していても、あるいは、回転軸と同心円を呈していてもよい。
【0016】
図5は、ステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
図5は、ステアリングホイール2を1回転させた場合に、言い換えると、ステアリングホイール2を中立位置である0度から例えば時計回り方向に360度回転させた場合に、輝度検出手段14によって検出される輝度Lを示している。
なお、ステアリングホイール2の中立位置とは、車両を直進させる場合に対応している。
前述したように、被検出部12は、光の反射量が回転部2Dの一周に沿って単調に増加あるいは減少する単一のマーク20を含んで構成されているため、輝度検出手段14で検出される輝度Lは操舵角θに応じて単調に増加あるいは減少している。
したがって、ステアリングホイール2を中立位置から時計方向あるいは反時計方向に360度以上回転させていくと、輝度Lは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形として検出されることになる。
【0017】
図1に示すように、操作部16は、使用者の操作に応じて生成した信号をECU18に供給するものである。
本実施の形態では、操作部16は、基準角度設定スイッチ26を含んで構成されている。
基準角度設定スイッチ26の機能については後述する。
【0018】
図1に示すように、ECU18は、CPU18Aと、制御プログラムなどを格納する第1のROM18Bと、データの再書き込みが可能な第2のROM18Cと、ワーキングエリアを提供するRAM18Dと、インターフェース部18Eなどがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されている。
インターフェース部18Eは、輝度検出手段14、操作部16との間でインターフェースをとるものである。
ECU18は、図2に示すように、データテーブル手段28と、データテーブル作成手段30と、操舵角検出手段32と、直近操舵角保持手段34とを含んで構成されている。
データテーブル手段28は、第2のROM18Cによって構成される。
データテーブル作成手段30と、操舵角検出手段32と、直近操舵角保持手段34とは、CPU18Aが前記制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
【0019】
データテーブル手段28は、ステアリングホイール2の1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して輝度検出手段14で検出された輝度Lとを対応付けたデータテーブルを記憶するものである。
このデータテーブルは、図5に示すように輝度Lと操舵角θとが関連付けられたデータで構成される。
【0020】
データテーブル作成手段30は、前記データテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納するものである。
【0021】
操舵角検出手段32は、データテーブル手段28のデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力するものである。
操舵角検出手段32による操舵角の特定は、輝度検出手段14で検出された輝度Lと、以下に説明する直近操舵角保持手段34で保持される直近の(直前の)操舵角θ0とに基づいてなされる。
出力された操舵角データは、ECU18のインターフェース部18Eを介して接続された不図示の外部装置、例えば、データロガーに供給され、データロガーに蓄積され、さまざまな評価に供される。
出力される操舵角データの形態は、デジタル信号であっても、あるいは、アナログ信号であってもよい。
【0022】
直近操舵角保持手段34は、操舵角検出手段32によって新たな操舵角θが特定される毎に、該操舵角θを直近の操舵角θ0として更新して保持するものである。
【0023】
次に、操舵角検出装置10の動作について図6、図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、図6に示すように、操舵角検出装置10による操舵角θの検出を行うに先立って、予めデータテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納する処理を実行する。
すなわち、使用者は、ステアリングホイール2の操舵角θを実測できるようにステアリングホイール2に分度器を取着する(ステップS10)。
次に、使用者は、データ入力用の外部装置としてのパーソナルコンピュータをインターフェース部18Eに接続する(ステップS12)。
そして、使用者は、分度器を用いてステアリングホイール2を中立位置から例えば時計回り方向に向かって所定角度、例えば2度回転させる毎に、前記パーソナルコンピュータを操作する。これにより、実測された操舵角θは、前記パーソナルコンピュータを介してデータテーブル作成手段30に供給される(ステップS14)。
【0024】
データテーブル作成手段30は、前記の実測された操舵角θを受け付ける毎に、該実測された操舵角θと、そのとき輝度検出手段14で検出された輝度Lとを対応付けたデータをデータテーブル手段28に格納することで中間データテーブルを作成する(ステップS16)。具体的には、中間データテーブルの操舵角θは、所定角度の整数倍となっており、本例では、操舵角θ=0度、5度、10度、15度、20度、25度、30度、……、360度と離散的な値となっている。
【0025】
次に、データテーブル作成手段30は、前記パーソナルコンピュータから供給される前記の実測された操舵角θが360度に到達したか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18の判定結果が否定であれば、データテーブル作成手段30はステップS14に戻る。
ステップS18の判定結果が肯定であれば、データテーブル作成手段30は中間データテーブルの作成を終了する。
中間データテーブルでは、操舵角θが離散的な値、本例では操舵角θが5度毎であるため、操舵角θの分解能が低いものに留まっている。
そこで、より分解能の高い操舵角θの検出を行うため、データテーブル作成手段30は、中間データテーブルの操舵角θおよび輝度Lについて補間処理を行うことにより操舵角θおよび輝度Lの分解能をより高くした、例えば、操舵角θの分解能を1度としたデータテーブルを作成する(ステップS20)。なお、前記の補間処理としては従来公知のさまざまな補間方法が使用可能である。
【0026】
次に、補間された操舵角θおよび輝度Lに基づいて以下のようにデータテーブルを作成する(ステップS22)。
すなわち、通常、ステアリングホイール2は中立位置に対して時計回りに1回転以上しかつ中立位置に対して反時計回りにも1回転以上回転する。
したがって、中立位置に対応する操舵角θを0度とし、時計回り方向における操舵角θを正の値、反時計回り方向における操舵角θを負の値とすると、操舵角θは−180度〜180度の範囲を超えて変化する。
そのため、データテーブルを構成する操舵角θおよび輝度Lは、ステアリングホイール2の回転範囲の全域に対応したものとする必要がある。
前述したように輝度Lは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形となるので、操舵角θが0度を下回る範囲および360度を上回る範囲については、操舵角θ=0度〜360度に対応する輝度Lのデータを繰り返して使用してデータテーブルを作成すればよい。
ステアリングホイール2の回転範囲の全域に対応したデータテーブルが作成されたならば、データテーブルをデータテーブル手段28に格納する(ステップS24)。
ここで、データテーブルは、図8に示すように輝度Lと操舵角θとが関連付けられたデータとなっている。
以上でデータテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納する処理が終了する。
【0027】
次に、操舵角検出装置10による操舵角θの検出動作について説明する。
予めステアリングホイール2がほぼ中立位置に位置し、したがって、操舵角θは0度近傍の値であるものとする。
この状態で、使用者が基準角度設定スイッチ26を操作することで、基準角度設定信号が操舵角検出手段32に供給される(ステップS30)。
【0028】
操舵角検出手段32は、基準角度設定信号を受け付けると、データテーブル手段28のデータテーブルを参照し、操舵角θ=0度近傍で、輝度検出手段14から供給される輝度Lと合致するデータテーブル上の輝度Lを特定する。そして、特定した輝度Lに対応する操舵角θをデータテーブルから特定し、この特定した操舵角θ(基準角度)を示す操舵角データを出力する(ステップS32:輝度検出ステップ)。
【0029】
直近操舵角保持手段34は、ステップS32で特定された操舵角θを直近の操舵角θ0として更新して保持する(ステップS34:直近操舵角保持ステップ)。
操舵角検出手段32は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいてデータテーブルを参照して現時点での操舵角dを特定し、該特定した操舵角dに対応する操舵角データを出力する(ステップS36:操舵角検出ステップ)。
より詳細に説明すると、図5に示すように、輝度Lは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形となるため、データテーブル上においては、同一の輝度Lに対して複数の操舵角θが対応するため、輝度Lが特定されただけでは真の操舵角θは特定されない。
そこで、操舵角検出手段32は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいてデータテーブルを参照して現時点での操舵角dを特定するため、真の操舵角θを特定でき、該特定した真の操舵角dに対応する操舵角データを出力することができる。
以下、ステップS34に戻って同様の処理を繰り返して行う。
【0030】
以上説明したように本実施の形態によれば、ステアリングホイール2の回転部2Dの外周に沿って被検出部12を設け、被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち回転部2Dの外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域24に該当する画像の輝度Lを検出し、操舵角θと輝度Lとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定し該操舵角θを示す操舵角データを出力し、操舵角θの特定は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいて行うようにした。
したがって、輝度検出手段14を、例えば車室内に装着すれば足りるため、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
すなわち、従来は、車両のステアリングホイールを操舵角計や操舵角力計を有する専用のステアリングホイールに交換したり、あるいは、車両の操舵機構に専用の測定装置を組み込んだりする必要がある。
そのため、前者の場合は、ステアリングの交換作業が煩雑なものとなることは無論のこと、高価な専用のステアリングホイールを用意するためにコストが掛かる不都合がある。また、後者の場合も、煩雑でコストがかかる作業が必要となる不都合がある。これに対して本実施の形態では、作業の容易化およびコストダウンを図る上で極めて有利となる。
【0031】
また、ステアリングホイール2の回転部2Dに被検出部12を設ければ、どのような車両であっても煩雑な作業を行うことなく的確に操舵角データを得ることができるため、さまざまな車両を用いた評価試験を行う上で有利となる。
また、本実施の形態の装置および方法で得られる操舵角データの分解能と精度は、輝度検出手段14が検出する輝度Lの分解能と精度に依存する。
したがって、輝度検出手段14を適宜選択することにより必要な分解能と精度を有する操舵角データを得ることができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態に係る操舵角検出装置は、被検出部12の構成が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、第1の実施の形態では、回転部2Dの外周に設けられる被検出部12のマーク20が単一であったが、第2の実施の形態では、被検出部12が複数のマーク40を含んで構成されている。
第2の実施の形態では、図8、図9に示すように、被検出部12は、光の反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少する複数のマーク40を含んで構成されている。
すなわち、図8に示す例では、マーク40は、濃淡が均一であり、外周と直交する方向の幅が外周に沿って単調に変化している。
また、図9に示す例では、マーク40は、外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化している。なお、図9では、ハッチングによる描画の都合上、1つのマーク40における濃淡が段階的に変化した状態で図示されているが、1つのマーク40における濃淡は無段階に変化しているものとする。
また、被検出部12は、反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少するマーク40の部分で構成される変化部42と、複数のマーク40の境の箇所によって構成され、光の反射量が最小値から最大値に、あるいは、最大値から最小値に遷移する遷移部44とで構成されている。
【0033】
図10は、ステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
図10は、ステアリングホイール2を1回転させた場合に、言い換えると、ステアリングホイール2を中立位置である0度から例えば時計回り方向に360度回転させた場合に、輝度検出手段14によって検出される輝度Lを示している。
前述したように、被検出部12は、反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少する変化部42と、光の反射量が最小値から最大値に、あるいは、最大値から最小値に遷移する遷移部44とで構成されている。
したがって、輝度Lと操舵角θとの関係を示す波形S0は、被検出部12の変化部42と遷移部44とに対応した形状を呈している。
すなわち、波形S1は、傾斜部αと直線部βとからなる単位波形Wが繰り返されることで構成されている。
すなわち、傾斜部αは、操舵角θが増加するに従って輝度Lが最小値から単調に増加する部分である。
直線部βは、隣接する傾斜部αの最小値と傾斜部αの最大値とを結び輝度Lを示す縦軸と平行する部分である。
したがって、ステアリングホイール2を中立位置から時計方向あるいは反時計方向に回転させていくと、輝度Lは単位波形W1の繰り返しの波形として検出されることになる。
【0034】
次に、図1、図2を流用しつつ第2の実施の形態の操舵角検出装置10について説明する。なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同一または同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略あるいは簡単に行う。
【0035】
図2に示すように、データテーブル手段28は、第1の実施の形態と同様に、ステアリングホイール2の1回転にわたって実測された複数の操舵角θと、該複数の操舵角θのそれぞれに対応して輝度検出手段14で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルを記憶するものである。
このデータテーブルは、図10に示すように輝度Lと操舵角θとが関連付けられたデータで構成される。
【0036】
データテーブル作成手段30は、前記データテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納するものである。
【0037】
操舵角検出手段32がデータテーブル手段28のデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力し、操舵角検出手段32による操舵角の特定が、輝度検出手段14で検出された輝度Lと、以下に説明する直近操舵角保持手段34で保持される直近の(直前の)操舵角θ0とに基づいてなされる点は第1の実施の形態と同様である。
また、直近操舵角保持手段34は、操舵角検出手段32によって新たな操舵角θが特定される毎に、該操舵角θを直近の操舵角θ0として更新して保持する点も第1の実施の形態と同様である。
【0038】
データテーブル作成手段30によるデータテーブルの作成処理およびデータテーブル手段28への格納処理は、第1の実施の形態の図6と同様であるため説明を省略する。
【0039】
次に、操舵角検出装置10による操舵角θの検出動作について説明するが、この検出動作についても第1の実施の形態における図7と同様であるため、第1の実施の形態と異なるステップS36の動作について重点的に説明する。
ステアリングホイール2が時計方向あるいは反時計方向に回転され、操舵角θが変化すると、輝度検出手段14から供給される輝度Lは、図10に示す波形S0に沿って増加し、あるいは、減少する。
本実施の形態では、ステアリングホイール2が時計方向に回転された場合、操舵角θが正の方向に変化することから、輝度Lは傾斜部αに沿って増加する方向に連続的に変化し、やがて輝度Lは最大値に至ると直線部βに沿って最小値に瞬間的に遷移し、再び輝度Lは傾斜部αに沿って増加する方向に連続的に変化する。
この場合、ステアリングホイール2の時計方向への回転が続く限り、輝度Lは上述のような変化を繰り返す。
これに対して、ステアリングホイール2が反時計方向に回転されると、操舵角θが負の方向に変化することから、輝度Lは傾斜部αに沿って減少する方向に連続的に変化し、やがて輝度Lは最小値に至ると直線部βに沿って最大値に瞬間的に遷移し、再び輝度Lは減少する方向に連続的に変化する。
この場合、ステアリングホイール2の反時計方向への回転が続く限り、輝度Lは上述のような変化を繰り返す。
上述のことを言い換えると、1つの傾斜部α上においては、操舵角θが増加すると輝度Lは増加し、操舵角θが減少すると輝度Lは減少する関係となる。
【0040】
一方、図10から明らかなように、同一の輝度Lに対して複数の操舵角θが対応することになるため、輝度Lが特定されただけでは真の操舵角θは特定されない。
そこで、本実施の形態では、操舵角検出手段32は、現在検出されている輝度Lが、データテーブル上の波形S0を構成する複数の傾斜部αのうち、どの傾斜部αに対応しているかを、直近の操舵角θ0に基づいて特定する。
そして、操舵角検出手段32は、波形S0のうちこの特定した傾斜部αを用いて、現在検出されている輝度Lに対応する操舵角θを真の操舵角θとして特定するようにしている。
また、本実施の形態では、上述したように、1つの傾斜部α上においては、操舵角θが増加すると輝度Lは連続的に増加し、操舵角θが減少すると輝度Lは連続的に減少する関係となる。
したがって、傾斜部αが特定されている限り、1つの輝度Lに2つ以上の操舵角θが対応するといったことがなく、輝度Lと操舵角θとが必ず一対一の関係となる。
そのため、輝度Lに基づいて真の操舵角θを的確に特定することができる。
【0041】
なお、被検出部12の各マーク40は、光の反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少するが、光の反射率の変化の向きが図8、図9とは逆になった場合は、波形S0の傾斜部αと直線部βとの位置関係も図10とは逆になり、具体的には図11に示すような位置関係となる。
この場合は、1つの傾斜部α上においては、操舵角θが増加すると輝度Lは連続的に減少し、操舵角θが減少すると輝度Lは連続的に増大する関係となる。
したがって、傾斜部αが特定されている限り、1つの輝度Lに2つ以上の操舵角θが対応するといったことがなく、輝度Lと操舵角θとが必ず一対一の関係となることは、図10の場合と同様である。
【0042】
以上説明したように第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ステアリングホイール2の回転部2Dの外周に沿って被検出部12を設け、輝度Lを検出し、操舵角θと輝度Lとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定し該操舵角θを示す操舵角データを出力し、操舵角θの特定は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいて行うようにした。
したがって、第1の実施の形態と同様に、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0043】
2……ステアリングホイール、2D……回転部、10……操舵角検出装置、12……被検出部、14……輝度検出手段、20……マーク、22……粘着テープ、24……検出領域、28……データテーブル手段、32……操舵角検出手段、34……直近操舵角保持手段、θ……操舵角、θ0……直近の操舵角、L……輝度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置および操舵角検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるタイヤの性能評価を行うための評価項目として操縦安定性や車両の運動特性があり、これら操縦安定性や運動特性を評価する上でステアリングホイールの操舵角は重要な測定項目である。
従来は、専用の操舵角計や操舵角力計が組み込まれ車種毎に開発されたステアリングホイールを用意し、測定対象となる車両に設けられているステアリングホイールをいったん取り外したのち、前記の専用のステアリングホイールを車両に取り付けて使用している。
また、特許文献1に示すような回転角度を測定する角度測定器を操舵機構に組み込んで操舵角を検出することが考えられる。
あるいは、特許文献2に示すように初めから操舵機構に組み込まれた回転角度検出装置を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−166821号公報
【特許文献2】特開2000−065562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した操舵角計や操舵角力計が組み込まれた専用のステアリングホイールを用いる場合には、車両への装着作業が煩雑となり手間が掛かることは無論のこと、車種毎に開発された高価な専用のステアリングホイールを用意しなくてはならず、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で不利がある。
また、特許文献1、2に示される装置を用いる場合であっても、それら装置を車両に装着する作業が煩雑となり手間が掛かることから、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で不利がある。
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、測定作業の容易化およびコストダウンを図る上で有利な操舵角検出装置および操舵角検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置であって、前記回転部の外周に沿って設けられ、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部と、予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出手段と、前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルを記憶するデータテーブル手段と、前記データテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出手段と、前記操舵角検出手段によって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持手段とを備え、前記操舵角検出手段による前記操舵角の特定は、前記変位量検出手段で検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされることを特徴とする。
また本発明は、回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出方法であって、前記回転部の外周に沿って、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部を設け、予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出ステップと、前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出ステップと、前記操舵角検出ステップによって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持ステップとを備え、前記操舵角検出ステップによる前記操舵角の特定は、前記変位量検出ステップで検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ステアリングホイールの回転部の外周に沿って被検出部を設け、被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち回転部の外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出し、操舵角と輝度とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力し、操舵の特定は、検出された輝度と、直近の操舵角とに基づいて行うようにした。
したがって、高価な専用のステアリングホイールを用意する必要がなく、また、専用のステアリングホイールの交換作業や車両の操舵機構に専用の測定装置を組み込むといった煩雑な作業が不要となるため、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の構成を示す説明図である。
【図2】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における被検出部12の一例を示す展開図である。
【図4】第1の実施の形態における被検出部12の他の例を示す展開図である。
【図5】第1の実施の形態におけるステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
【図6】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10におけるデータテーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の動作フローチャートである。
【図8】第2の実施の形態における被検出部12の一例を示す展開図である。
【図9】第2の実施の形態における被検出部12の他の例を示す展開図である。
【図10】第2の実施の形態におけるステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
【図11】光の反射率の変化の向きが図8、図9とは逆になった場合におけるステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明による車両の操舵角検出装置および操舵角検出方法の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して本実施の形態の操舵角検出装置10によって操舵角が検出されるステアリングホイール2について説明する。
ステアリングホイール2は、運転者により操作される円環状のリム部2Aと、リム部2Aの内側の中央に配置された中央ケース部2Bと、リム部2Aと中央ケース部2Bとを接続する複数のスポーク部2Cとを備えている。
中央ケース部2Bの背面に回転部2Dが一体的に設けられ、回転部2Dの背面にボス部2Eが一体的に設けられ、このボス部2Eは不図示のステアリングシャフトに結合されている。
したがって、回転部2Dは、ステアリングシャフト方向、すなわち、回転軸方向から見て回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイール2と一体に回転する。
【0009】
次に、本実施の形態の操舵角検出装置10について説明する。
図1に示すように、操舵角検出装置10は、被検出部12と、輝度検出手段14と、操作部16と、ECU18とを含んで構成されている。
【0010】
被検出部12は、回転部2Dの外周に沿って設けられ、外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が回転部2Dの外周に沿って単調に増加または減少するものである。
図3、図4は、回転部2Dの全周にわたって設けられた被検出部12の展開図である。
本実施の形態では、図3、図4に示すように、被検出部12は、光の反射量が回転部2Dの一周に沿って単調に増加あるいは減少する単一のマーク20を含んで構成されている。
すなわち、図3に示す例では、マーク20は、濃淡が均一であり、外周と直交する方向の幅が外周に沿って単調に変化している。
図4に示す例では、マーク20は、外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化している。なお、図4では、ハッチングによる描画の都合上、マーク20における濃淡が段階的に変化した状態で図示されているが、マーク20における濃淡は無段階に変化しているものとする。
【0011】
本実施の形態では、回転部2Dの外周全周に、帯状の粘着テープ22(図3、図4)が粘着され、被検出部12は、粘着テープ22の表面に形成されている。
このような粘着テープ22を用いることにより、被検出部12を簡単に回転部2Dの外周に設けることができるため、操舵角の測定作業の容易化を図る上で有利となる。
【0012】
輝度検出手段14は、予め定められた測定箇所において被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、図3、図4に示すように、濃淡画像のうち回転部2Dの外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域24に該当する画像の輝度を検出するものである。
輝度検出手段14は、撮像部14Aと、信号処理部14Bとを備えている。
撮像部14Aは、予め定められた測定箇所において被検出部12を撮像して濃淡画像を生成するものである。
このような撮像部14Aとして、複数の受光素子が格子状に配列され2次元の濃淡画像を生成するCCD、C−MOSセンサなど従来公知のさまざまな撮像素子が使用可能である。
信号処理部14Bは、撮像部14Aから供給される濃淡画像のうち検出領域24に該当する画像の輝度を検出するものである。
信号処理部14Bは、図1に示すように後述するECU18と別に設けても、あるいは、ECU18によって実現してもよい。
【0013】
なお、撮像部14Aは、2次元の濃淡画像を生成するものに限定されない。
撮像部14Aとして、複数の受光素子が直線状に配列され1次元の濃淡画像を生成するラインセンサを用いてもよい。
要するに、輝度検出手段14は、被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち検出領域24に該当する画像の輝度を検出するものであればよい。
【0014】
また、輝度検出手段14は、例えば、被検出部12に対向する車室内の箇所に固定すればよく、輝度検出手段14の車室内への固定は、例えば、不図示の取り付け部材を介して運転席前方に位置するインスツルメントパネルに固定すればよく、輝度検出手段14を固定する箇所や固定手段は任意である。
【0015】
また、輝度検出手段14は、検出領域24に該当する画像の輝度Lを検出できればよく、したがって、輝度検出手段14(撮像部14B)と回転部2Dの外周との距離が多少変動してもかまわない。
したがって、回転部2Dは、図1に示すように、回転軸方向から見て回転軸の周りに非円形を呈していても、あるいは、回転軸と同心円を呈していてもよい。
【0016】
図5は、ステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
図5は、ステアリングホイール2を1回転させた場合に、言い換えると、ステアリングホイール2を中立位置である0度から例えば時計回り方向に360度回転させた場合に、輝度検出手段14によって検出される輝度Lを示している。
なお、ステアリングホイール2の中立位置とは、車両を直進させる場合に対応している。
前述したように、被検出部12は、光の反射量が回転部2Dの一周に沿って単調に増加あるいは減少する単一のマーク20を含んで構成されているため、輝度検出手段14で検出される輝度Lは操舵角θに応じて単調に増加あるいは減少している。
したがって、ステアリングホイール2を中立位置から時計方向あるいは反時計方向に360度以上回転させていくと、輝度Lは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形として検出されることになる。
【0017】
図1に示すように、操作部16は、使用者の操作に応じて生成した信号をECU18に供給するものである。
本実施の形態では、操作部16は、基準角度設定スイッチ26を含んで構成されている。
基準角度設定スイッチ26の機能については後述する。
【0018】
図1に示すように、ECU18は、CPU18Aと、制御プログラムなどを格納する第1のROM18Bと、データの再書き込みが可能な第2のROM18Cと、ワーキングエリアを提供するRAM18Dと、インターフェース部18Eなどがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されている。
インターフェース部18Eは、輝度検出手段14、操作部16との間でインターフェースをとるものである。
ECU18は、図2に示すように、データテーブル手段28と、データテーブル作成手段30と、操舵角検出手段32と、直近操舵角保持手段34とを含んで構成されている。
データテーブル手段28は、第2のROM18Cによって構成される。
データテーブル作成手段30と、操舵角検出手段32と、直近操舵角保持手段34とは、CPU18Aが前記制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
【0019】
データテーブル手段28は、ステアリングホイール2の1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して輝度検出手段14で検出された輝度Lとを対応付けたデータテーブルを記憶するものである。
このデータテーブルは、図5に示すように輝度Lと操舵角θとが関連付けられたデータで構成される。
【0020】
データテーブル作成手段30は、前記データテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納するものである。
【0021】
操舵角検出手段32は、データテーブル手段28のデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力するものである。
操舵角検出手段32による操舵角の特定は、輝度検出手段14で検出された輝度Lと、以下に説明する直近操舵角保持手段34で保持される直近の(直前の)操舵角θ0とに基づいてなされる。
出力された操舵角データは、ECU18のインターフェース部18Eを介して接続された不図示の外部装置、例えば、データロガーに供給され、データロガーに蓄積され、さまざまな評価に供される。
出力される操舵角データの形態は、デジタル信号であっても、あるいは、アナログ信号であってもよい。
【0022】
直近操舵角保持手段34は、操舵角検出手段32によって新たな操舵角θが特定される毎に、該操舵角θを直近の操舵角θ0として更新して保持するものである。
【0023】
次に、操舵角検出装置10の動作について図6、図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、図6に示すように、操舵角検出装置10による操舵角θの検出を行うに先立って、予めデータテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納する処理を実行する。
すなわち、使用者は、ステアリングホイール2の操舵角θを実測できるようにステアリングホイール2に分度器を取着する(ステップS10)。
次に、使用者は、データ入力用の外部装置としてのパーソナルコンピュータをインターフェース部18Eに接続する(ステップS12)。
そして、使用者は、分度器を用いてステアリングホイール2を中立位置から例えば時計回り方向に向かって所定角度、例えば2度回転させる毎に、前記パーソナルコンピュータを操作する。これにより、実測された操舵角θは、前記パーソナルコンピュータを介してデータテーブル作成手段30に供給される(ステップS14)。
【0024】
データテーブル作成手段30は、前記の実測された操舵角θを受け付ける毎に、該実測された操舵角θと、そのとき輝度検出手段14で検出された輝度Lとを対応付けたデータをデータテーブル手段28に格納することで中間データテーブルを作成する(ステップS16)。具体的には、中間データテーブルの操舵角θは、所定角度の整数倍となっており、本例では、操舵角θ=0度、5度、10度、15度、20度、25度、30度、……、360度と離散的な値となっている。
【0025】
次に、データテーブル作成手段30は、前記パーソナルコンピュータから供給される前記の実測された操舵角θが360度に到達したか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18の判定結果が否定であれば、データテーブル作成手段30はステップS14に戻る。
ステップS18の判定結果が肯定であれば、データテーブル作成手段30は中間データテーブルの作成を終了する。
中間データテーブルでは、操舵角θが離散的な値、本例では操舵角θが5度毎であるため、操舵角θの分解能が低いものに留まっている。
そこで、より分解能の高い操舵角θの検出を行うため、データテーブル作成手段30は、中間データテーブルの操舵角θおよび輝度Lについて補間処理を行うことにより操舵角θおよび輝度Lの分解能をより高くした、例えば、操舵角θの分解能を1度としたデータテーブルを作成する(ステップS20)。なお、前記の補間処理としては従来公知のさまざまな補間方法が使用可能である。
【0026】
次に、補間された操舵角θおよび輝度Lに基づいて以下のようにデータテーブルを作成する(ステップS22)。
すなわち、通常、ステアリングホイール2は中立位置に対して時計回りに1回転以上しかつ中立位置に対して反時計回りにも1回転以上回転する。
したがって、中立位置に対応する操舵角θを0度とし、時計回り方向における操舵角θを正の値、反時計回り方向における操舵角θを負の値とすると、操舵角θは−180度〜180度の範囲を超えて変化する。
そのため、データテーブルを構成する操舵角θおよび輝度Lは、ステアリングホイール2の回転範囲の全域に対応したものとする必要がある。
前述したように輝度Lは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形となるので、操舵角θが0度を下回る範囲および360度を上回る範囲については、操舵角θ=0度〜360度に対応する輝度Lのデータを繰り返して使用してデータテーブルを作成すればよい。
ステアリングホイール2の回転範囲の全域に対応したデータテーブルが作成されたならば、データテーブルをデータテーブル手段28に格納する(ステップS24)。
ここで、データテーブルは、図8に示すように輝度Lと操舵角θとが関連付けられたデータとなっている。
以上でデータテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納する処理が終了する。
【0027】
次に、操舵角検出装置10による操舵角θの検出動作について説明する。
予めステアリングホイール2がほぼ中立位置に位置し、したがって、操舵角θは0度近傍の値であるものとする。
この状態で、使用者が基準角度設定スイッチ26を操作することで、基準角度設定信号が操舵角検出手段32に供給される(ステップS30)。
【0028】
操舵角検出手段32は、基準角度設定信号を受け付けると、データテーブル手段28のデータテーブルを参照し、操舵角θ=0度近傍で、輝度検出手段14から供給される輝度Lと合致するデータテーブル上の輝度Lを特定する。そして、特定した輝度Lに対応する操舵角θをデータテーブルから特定し、この特定した操舵角θ(基準角度)を示す操舵角データを出力する(ステップS32:輝度検出ステップ)。
【0029】
直近操舵角保持手段34は、ステップS32で特定された操舵角θを直近の操舵角θ0として更新して保持する(ステップS34:直近操舵角保持ステップ)。
操舵角検出手段32は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいてデータテーブルを参照して現時点での操舵角dを特定し、該特定した操舵角dに対応する操舵角データを出力する(ステップS36:操舵角検出ステップ)。
より詳細に説明すると、図5に示すように、輝度Lは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形となるため、データテーブル上においては、同一の輝度Lに対して複数の操舵角θが対応するため、輝度Lが特定されただけでは真の操舵角θは特定されない。
そこで、操舵角検出手段32は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいてデータテーブルを参照して現時点での操舵角dを特定するため、真の操舵角θを特定でき、該特定した真の操舵角dに対応する操舵角データを出力することができる。
以下、ステップS34に戻って同様の処理を繰り返して行う。
【0030】
以上説明したように本実施の形態によれば、ステアリングホイール2の回転部2Dの外周に沿って被検出部12を設け、被検出部12を撮像して濃淡画像を生成すると共に、濃淡画像のうち回転部2Dの外周方向に沿った一定幅の濃淡画像の領域である検出領域24に該当する画像の輝度Lを検出し、操舵角θと輝度Lとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定し該操舵角θを示す操舵角データを出力し、操舵角θの特定は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいて行うようにした。
したがって、輝度検出手段14を、例えば車室内に装着すれば足りるため、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
すなわち、従来は、車両のステアリングホイールを操舵角計や操舵角力計を有する専用のステアリングホイールに交換したり、あるいは、車両の操舵機構に専用の測定装置を組み込んだりする必要がある。
そのため、前者の場合は、ステアリングの交換作業が煩雑なものとなることは無論のこと、高価な専用のステアリングホイールを用意するためにコストが掛かる不都合がある。また、後者の場合も、煩雑でコストがかかる作業が必要となる不都合がある。これに対して本実施の形態では、作業の容易化およびコストダウンを図る上で極めて有利となる。
【0031】
また、ステアリングホイール2の回転部2Dに被検出部12を設ければ、どのような車両であっても煩雑な作業を行うことなく的確に操舵角データを得ることができるため、さまざまな車両を用いた評価試験を行う上で有利となる。
また、本実施の形態の装置および方法で得られる操舵角データの分解能と精度は、輝度検出手段14が検出する輝度Lの分解能と精度に依存する。
したがって、輝度検出手段14を適宜選択することにより必要な分解能と精度を有する操舵角データを得ることができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態に係る操舵角検出装置は、被検出部12の構成が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、第1の実施の形態では、回転部2Dの外周に設けられる被検出部12のマーク20が単一であったが、第2の実施の形態では、被検出部12が複数のマーク40を含んで構成されている。
第2の実施の形態では、図8、図9に示すように、被検出部12は、光の反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少する複数のマーク40を含んで構成されている。
すなわち、図8に示す例では、マーク40は、濃淡が均一であり、外周と直交する方向の幅が外周に沿って単調に変化している。
また、図9に示す例では、マーク40は、外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化している。なお、図9では、ハッチングによる描画の都合上、1つのマーク40における濃淡が段階的に変化した状態で図示されているが、1つのマーク40における濃淡は無段階に変化しているものとする。
また、被検出部12は、反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少するマーク40の部分で構成される変化部42と、複数のマーク40の境の箇所によって構成され、光の反射量が最小値から最大値に、あるいは、最大値から最小値に遷移する遷移部44とで構成されている。
【0033】
図10は、ステアリングホイール2の操舵角θと、輝度検出手段14によって検出された輝度Lとの関係を示す説明図である。
図10は、ステアリングホイール2を1回転させた場合に、言い換えると、ステアリングホイール2を中立位置である0度から例えば時計回り方向に360度回転させた場合に、輝度検出手段14によって検出される輝度Lを示している。
前述したように、被検出部12は、反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少する変化部42と、光の反射量が最小値から最大値に、あるいは、最大値から最小値に遷移する遷移部44とで構成されている。
したがって、輝度Lと操舵角θとの関係を示す波形S0は、被検出部12の変化部42と遷移部44とに対応した形状を呈している。
すなわち、波形S1は、傾斜部αと直線部βとからなる単位波形Wが繰り返されることで構成されている。
すなわち、傾斜部αは、操舵角θが増加するに従って輝度Lが最小値から単調に増加する部分である。
直線部βは、隣接する傾斜部αの最小値と傾斜部αの最大値とを結び輝度Lを示す縦軸と平行する部分である。
したがって、ステアリングホイール2を中立位置から時計方向あるいは反時計方向に回転させていくと、輝度Lは単位波形W1の繰り返しの波形として検出されることになる。
【0034】
次に、図1、図2を流用しつつ第2の実施の形態の操舵角検出装置10について説明する。なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同一または同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略あるいは簡単に行う。
【0035】
図2に示すように、データテーブル手段28は、第1の実施の形態と同様に、ステアリングホイール2の1回転にわたって実測された複数の操舵角θと、該複数の操舵角θのそれぞれに対応して輝度検出手段14で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルを記憶するものである。
このデータテーブルは、図10に示すように輝度Lと操舵角θとが関連付けられたデータで構成される。
【0036】
データテーブル作成手段30は、前記データテーブルを作成してデータテーブル手段28に格納するものである。
【0037】
操舵角検出手段32がデータテーブル手段28のデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力し、操舵角検出手段32による操舵角の特定が、輝度検出手段14で検出された輝度Lと、以下に説明する直近操舵角保持手段34で保持される直近の(直前の)操舵角θ0とに基づいてなされる点は第1の実施の形態と同様である。
また、直近操舵角保持手段34は、操舵角検出手段32によって新たな操舵角θが特定される毎に、該操舵角θを直近の操舵角θ0として更新して保持する点も第1の実施の形態と同様である。
【0038】
データテーブル作成手段30によるデータテーブルの作成処理およびデータテーブル手段28への格納処理は、第1の実施の形態の図6と同様であるため説明を省略する。
【0039】
次に、操舵角検出装置10による操舵角θの検出動作について説明するが、この検出動作についても第1の実施の形態における図7と同様であるため、第1の実施の形態と異なるステップS36の動作について重点的に説明する。
ステアリングホイール2が時計方向あるいは反時計方向に回転され、操舵角θが変化すると、輝度検出手段14から供給される輝度Lは、図10に示す波形S0に沿って増加し、あるいは、減少する。
本実施の形態では、ステアリングホイール2が時計方向に回転された場合、操舵角θが正の方向に変化することから、輝度Lは傾斜部αに沿って増加する方向に連続的に変化し、やがて輝度Lは最大値に至ると直線部βに沿って最小値に瞬間的に遷移し、再び輝度Lは傾斜部αに沿って増加する方向に連続的に変化する。
この場合、ステアリングホイール2の時計方向への回転が続く限り、輝度Lは上述のような変化を繰り返す。
これに対して、ステアリングホイール2が反時計方向に回転されると、操舵角θが負の方向に変化することから、輝度Lは傾斜部αに沿って減少する方向に連続的に変化し、やがて輝度Lは最小値に至ると直線部βに沿って最大値に瞬間的に遷移し、再び輝度Lは減少する方向に連続的に変化する。
この場合、ステアリングホイール2の反時計方向への回転が続く限り、輝度Lは上述のような変化を繰り返す。
上述のことを言い換えると、1つの傾斜部α上においては、操舵角θが増加すると輝度Lは増加し、操舵角θが減少すると輝度Lは減少する関係となる。
【0040】
一方、図10から明らかなように、同一の輝度Lに対して複数の操舵角θが対応することになるため、輝度Lが特定されただけでは真の操舵角θは特定されない。
そこで、本実施の形態では、操舵角検出手段32は、現在検出されている輝度Lが、データテーブル上の波形S0を構成する複数の傾斜部αのうち、どの傾斜部αに対応しているかを、直近の操舵角θ0に基づいて特定する。
そして、操舵角検出手段32は、波形S0のうちこの特定した傾斜部αを用いて、現在検出されている輝度Lに対応する操舵角θを真の操舵角θとして特定するようにしている。
また、本実施の形態では、上述したように、1つの傾斜部α上においては、操舵角θが増加すると輝度Lは連続的に増加し、操舵角θが減少すると輝度Lは連続的に減少する関係となる。
したがって、傾斜部αが特定されている限り、1つの輝度Lに2つ以上の操舵角θが対応するといったことがなく、輝度Lと操舵角θとが必ず一対一の関係となる。
そのため、輝度Lに基づいて真の操舵角θを的確に特定することができる。
【0041】
なお、被検出部12の各マーク40は、光の反射量が回転部2Dの外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少するが、光の反射率の変化の向きが図8、図9とは逆になった場合は、波形S0の傾斜部αと直線部βとの位置関係も図10とは逆になり、具体的には図11に示すような位置関係となる。
この場合は、1つの傾斜部α上においては、操舵角θが増加すると輝度Lは連続的に減少し、操舵角θが減少すると輝度Lは連続的に増大する関係となる。
したがって、傾斜部αが特定されている限り、1つの輝度Lに2つ以上の操舵角θが対応するといったことがなく、輝度Lと操舵角θとが必ず一対一の関係となることは、図10の場合と同様である。
【0042】
以上説明したように第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ステアリングホイール2の回転部2Dの外周に沿って被検出部12を設け、輝度Lを検出し、操舵角θと輝度Lとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定し該操舵角θを示す操舵角データを出力し、操舵角θの特定は、検出された輝度Lと、直近の操舵角θ0とに基づいて行うようにした。
したがって、第1の実施の形態と同様に、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0043】
2……ステアリングホイール、2D……回転部、10……操舵角検出装置、12……被検出部、14……輝度検出手段、20……マーク、22……粘着テープ、24……検出領域、28……データテーブル手段、32……操舵角検出手段、34……直近操舵角保持手段、θ……操舵角、θ0……直近の操舵角、L……輝度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置であって、
前記回転部の外周に沿って設けられ、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部と、
予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出手段と、
前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルを記憶するデータテーブル手段と、
前記データテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持手段とを備え、
前記操舵角検出手段による前記操舵角の特定は、前記変位量検出手段で検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされる、
ことを特徴とする操舵角検出装置。
【請求項2】
前記被検出部は、前記光の反射量が前記回転部の一周に沿って単調に増加あるいは減少する単一のマークを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の操舵角検出装置。
【請求項3】
前記マークは、濃淡が均一であり、前記外周と直交する方向の幅が前記外周に沿って単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項4】
前記マークは、前記外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項5】
前記被検出部は、前記光の反射量が前記回転部の前記外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少する複数のマークを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の操舵角検出装置。
【請求項6】
前記マークは、濃淡が均一であり、前記外周と直交する方向の幅が前記外周に沿って単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項7】
前記マークは、前記外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項8】
前記複数のマークの境の箇所は、前記光の反射量が最小値から最大値に、あるいは、最大値から最小値に遷移する遷移部として形成されている、
請求項5乃至7に何れか1項記載の操舵角検出装置。
【請求項9】
前記回転部の外周全周に帯状の粘着テープが粘着され、
前記被検出部は、前記粘着テープの表面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8に何れか1項記載の操舵角検出装置。
【請求項10】
回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出方法であって、
前記回転部の外周に沿って、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部を設け、
予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出ステップと、
前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出ステップと、
前記操舵角検出ステップによって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持ステップとを備え、
前記操舵角検出ステップによる前記操舵角の特定は、前記変位量検出ステップで検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされる、
ことを特徴とする操舵角検出方法。
【請求項1】
回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置であって、
前記回転部の外周に沿って設けられ、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部と、
予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出手段と、
前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルを記憶するデータテーブル手段と、
前記データテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持手段とを備え、
前記操舵角検出手段による前記操舵角の特定は、前記変位量検出手段で検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされる、
ことを特徴とする操舵角検出装置。
【請求項2】
前記被検出部は、前記光の反射量が前記回転部の一周に沿って単調に増加あるいは減少する単一のマークを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の操舵角検出装置。
【請求項3】
前記マークは、濃淡が均一であり、前記外周と直交する方向の幅が前記外周に沿って単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項4】
前記マークは、前記外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項5】
前記被検出部は、前記光の反射量が前記回転部の前記外周の一定の長さ毎に単調に増加あるいは減少する複数のマークを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の操舵角検出装置。
【請求項6】
前記マークは、濃淡が均一であり、前記外周と直交する方向の幅が前記外周に沿って単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項7】
前記マークは、前記外周の延在方向に沿って濃淡が単調に変化する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵角検出装置。
【請求項8】
前記複数のマークの境の箇所は、前記光の反射量が最小値から最大値に、あるいは、最大値から最小値に遷移する遷移部として形成されている、
請求項5乃至7に何れか1項記載の操舵角検出装置。
【請求項9】
前記回転部の外周全周に帯状の粘着テープが粘着され、
前記被検出部は、前記粘着テープの表面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8に何れか1項記載の操舵角検出装置。
【請求項10】
回転軸方向から見て前記回転軸の周りに沿って延在しステアリングホイールと一体に回転する回転部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出方法であって、
前記回転部の外周に沿って、前記外周の延在方向に沿った一定の長さの領域の光の反射量が前記回転部の外周に沿って単調に増加または減少する被検出部を設け、
予め定められた測定箇所において前記被検出部を撮像して濃淡画像を生成すると共に、前記濃淡画像のうち前記回転部の外周方向に沿った一定幅の前記濃淡画像の領域である検出領域に該当する画像の輝度を検出する輝度検出ステップと、
前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記輝度検出手段で検出された輝度とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出ステップと、
前記操舵角検出ステップによって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持ステップとを備え、
前記操舵角検出ステップによる前記操舵角の特定は、前記変位量検出ステップで検出された変位量と、前記直近の操舵角とに基づいてなされる、
ことを特徴とする操舵角検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−257270(P2011−257270A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132124(P2010−132124)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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