説明

攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置

【課題】液体の攪拌効率を更に向上させることが可能な攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置を提供すること。
【解決手段】液体の保持手段に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置。攪拌装置20は、音波を発生する音波発生素子21を駆動する駆動回路22を備え、駆動回路は、音波発生素子の駆動周波数を共振周波数と反共振周波数との間に制御する制御部23を有する。音波発生素子21は、櫛歯電極を備えた振動子を有する表面弾性波素子を用い、共振周波数と反共振周波数との間の周波数で駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の保持手段に保持した液体を音波によって攪拌する攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器等の液体の保持手段に保持した液体を攪拌する場合に用いられる櫛歯電極からなる振動子を有する表面弾性波素子は、振動子の共振周波数で駆動することが効率的であると考えられていた。このため、この種の表面弾性波素子には、駆動周波数を振動子の共振周波数に追尾させながら駆動するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第3398870号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が表面弾性波素子の振動子の駆動周波数に関して種々の実験を行い、駆動周波数と効率について鋭意検討を行った結果、表面弾性波素子は、振動子を共振周波数で駆動する場合の電気的な効率は良いが、振動の効率,即ち、液体を攪拌する際の攪拌効率は最適ではなく、攪拌効率に改善の余地があることが分かった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体の攪拌効率を更に向上させることが可能な攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る攪拌装置は、液体の保持手段に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌装置であって、前記音波を発生する音波発生素子を駆動する駆動手段を備え、前記駆動手段は、前記音波発生素子の駆動周波数を共振周波数と反共振周波数との間に制御する制御部を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生素子は、櫛歯電極を備えた振動子を有する表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記表面弾性波素子が発する音波の位相の半値幅内の駆動周波数で前記表面弾性波素子を駆動することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記表面弾性波素子の共振周波数をfr、反共振周波数をfa、中心周波数をfc=(fr+fa)/2、反共振周波数と共振周波数との差をΔf=fa−frとしたとき、前記表面弾性波素子をfc−Δf/4〜fc+Δf/4の間の駆動周波数で駆動することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生素子は、前記液体の保持手段に保持される液体と非接触に設けられることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項6に係る攪拌方法は液体の保持手段に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌方法であって、前記音波を発生する音波発生手段を、共振周波数と反共振周波数との間の駆動周波数で駆動することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る攪拌方法は、上記の発明において、前記音波発生手段を、当該音波発生手段の位相の半値幅内の駆動周波数で駆動することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る攪拌方法は、上記の発明において、前記共振周波数をfr、前記反共振周波数をfa、中心周波数をfc=(fr+fa)/2、反共振周波数と共振周波数との差をΔf=fa−frとしたとき、前記音波発生手段をfc−Δf/4〜fc+Δf/4の間の駆動周波数で駆動することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る攪拌方法は、上記の発明において、前記液体の保持手段に保持された液体を、当該液体と非接触に設けた前記音波発生手段により攪拌することを特徴とする。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項10に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、前記攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置は、音波発生素子の駆動周波数を共振周波数と反共振周波数との間に制御する制御部を有する駆動手段を備えたので、共振周波数で音波発生素子を駆動する場合に比べて液体の攪拌効率を更に向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の攪拌装置、攪拌方法及び攪拌装置を備えた分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の分析装置の実施の形態を示す自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で用いる反応容器を示す斜視図である。図3は、表面弾性波素子を取り付けた図2の反応容器を示す平面図である。図4は、図1の自動分析装置で用いる本発明の攪拌装置の概略構成を示す図である。
【0018】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応テーブル6及び試薬テーブル13が互いに離間してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられている。また、自動分析装置1は、検体テーブル3と反応テーブル6との間に検体分注機構5が設けられ、反応テーブル6と試薬テーブル13との間には試薬分注機構12が設けられている。
【0019】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0020】
検体分注機構5は、検体を後述する反応容器7に分注する手段であり、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次後述する反応容器7に分注する。
【0021】
反応テーブル6は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室6aが複数設けられている。各収納室6aは、攪拌容器として検体を試薬と反応させる反応容器7が着脱自在に収納される。また、反応テーブル6には、光源8及び排出装置11が設けられている。光源8は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射する。光源8から出射された分析用の光ビームは、反応容器7内の液体試料を透過し、光源8と対向する位置に設けた受光素子9によって受光される。一方、排出装置11は、図示しない排出ノズルを備えており、反応容器7から反応終了後の液体試料を前記排出ノズルによって吸引し、排出容器(図示せず)に排出する。ここで、排出装置11を通過した反応容器7は、図示しない洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0022】
試薬分注機構12は、試薬を反応容器7に分注する手段であり、後述する試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0023】
試薬テーブル13は、図1に示すように、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0024】
ここで、試薬テーブル13の外周には、試薬容器14に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。制御部16は、受光素子9、排出装置11、読取装置15、分析部17、入力部18及び表示部19と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記バーコードラベルの記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0025】
分析部17は、制御部16を介して受光素子9に接続され、受光素子9が受光した光量に基づく反応容器7内の液体試料の吸光度から検体の成分や濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0026】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応テーブル6によって周方向に沿って搬送されてくる反応容器7に検体分注機構5が検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次分注する。検体が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって試薬分注機構12の近傍へ搬送されて所定の試薬容器14から試薬が分注される。そして、試薬が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって周方向に沿って搬送される間に試薬と検体とが攪拌されて反応し、光源8と受光素子9との間を通過する。このとき、反応容器7内の液体試料は、受光素子9によって測光され、分析部17によって成分や濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、排出装置11によって反応終了後の液体試料が排出されて図示しない洗浄装置によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0027】
このとき、自動分析装置1は、反応テーブル6によって周方向に沿って搬送される反応容器7内の液体試料を攪拌装置によって攪拌し、試薬と検体とを反応させる。この液体試料の攪拌に用いる攪拌装置20を反応容器7及び攪拌方法と共に以下に説明する。
【0028】
反応容器7は、図2に示すように、側壁7aと底壁7b(図4参照)とによって上部に開口7cを有する四角筒状に成形され、内面の側壁7aと底壁7bとが接する部分は湾曲面に成形されている。反応容器7は、後述する表面弾性波素子21が発する超音波の位相整合条件及び振幅整合条件を満たし、光源8から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器7は、互いに平行な一組の側壁7bの下部が、光源8から出射された分析用の光ビームが透過し、液体試料を光学測定する測光部として利用される。反応容器7は、図3及び図4に示すように、底壁7bの下面に表面弾性波素子21が取り付けられている。反応容器7は、自動分析装置1に組み込まれた図4に示す攪拌装置20によって保持した液体試料が攪拌される。
【0029】
攪拌装置20は、試薬分注機構12が反応容器7に試薬を分注する位置と互いに対向配置される光源8,受光素子9との間の収納室6a下部に配置されており、図4に示すように、表面弾性波素子21と駆動回路22とを備えている。
【0030】
表面弾性波素子21は、図3に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電基板21aの表面に金等の櫛型電極(IDT)からなる振動子21bを設けた音波発生素子である。振動子21bは、櫛歯状に形成された複数の電極指を有し、駆動回路22から送信された駆動信号を表面弾性波(音波)に変換する発音部である。振動子21bは、電気端子21cとの間が共通電極であるバスバー21dによって接続されている。表面弾性波素子21は、図4に示すように、振動子21bを底壁7bの中央に配置し、音響整合層27を介して底壁7bの下面に取り付けられている。
【0031】
駆動回路22は、表面弾性波素子21に駆動信号を供給して駆動する駆動手段であり、図4に示すように、攪拌制御部23、発振部24及び増幅部25を備え、電気端子21cとの間が配線26によって接続されている。
【0032】
攪拌制御部23は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(ECU)が使用され、表面弾性波素子21の駆動信号を制御する。攪拌制御部23は、発振部24を制御し、例えば、表面弾性波素子21が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、攪拌制御部23は、内蔵したタイマに従って発振部24が発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0033】
発振部24は、攪拌制御部23からの制御信号に基づいて発振周波数をプログラマブルに変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号を増幅部25へ出力する。
【0034】
増幅部25は、発振部24から入力される発振信号を増幅し、駆動信号として表面弾性波素子21に出力する他、攪拌制御部23からの制御信号に基づいて駆動信号の駆動周波数を段階的に切り替えることができる。
【0035】
ここで、駆動回路22は、発振部24に代えて信号発生器と電圧制御発振器(VCO)を使用し、信号発生器の発振信号を電圧制御発振器に入力することにより、周波数の切り替えや周波数の変調等の操作を行ってもよい。この場合、電圧制御発振器による周波数変調に加えて増幅部25の出力を切り替えることにより、表面弾性波素子21に出力する駆動信号の振幅を変動させれば、反応容器7に保持した液体試料に脈動を生じさせることができる。
【0036】
音響整合層27は、反応容器7と表面弾性波素子21との間の音響インピーダンスを最適化するもので、エポキシ樹脂等の接着剤やシェラック等の他、ジェルや液体等を使用することができる。音響整合層27は、音波の伝達効率を上げるため、表面弾性波素子21が発する周波数の波長λに対して厚みは、n・λ/4(nは奇数)となるように、または、できるだけ薄くなるように調整する。
【0037】
本発明の自動分析装置1及び攪拌装置20は、以上のように構成され、反応容器7に保持された液体試料を以下に説明する攪拌方法によって攪拌する。先ず、攪拌装置20は、攪拌制御部23による制御の下に駆動回路22から供給される駆動信号によって表面弾性波素子21を共振周波数と反共振周波数との間の駆動周波数で駆動する。これにより、振動子21bが、複数の電極指の配列方向に沿った両側へ音波を出射する。振動子21bの両側へ出射した音波は、圧電基板21aの表面を振動子21bの両側へ伝搬すると共に、音響整合層27を通って反応容器7の底壁7b内を伝搬し、音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ漏れ出す。このため、反応容器7においては、図4に示すように、振動子21bの中心から等距離の位置にある底壁7bの内面から斜め上方に音波Waが出射される。
【0038】
この結果、反応容器7には、底壁7bの内面から斜め上方に出射する音波Waによって液体試料Lsを巻き上げる音響流が生じる。このため、液体試料Lsは、音響流によって底部から液面に至る広範囲に亘って非接触の下に攪拌される。このとき、本発明者が行った実験によれば、振動子21bの駆動周波数が異なると攪拌効率も異なり、攪拌時間に長短が生ずることが分かっている。
【0039】
例えば、振動子21bが図5に実線で示すインピーダンスの周波数特性を有する攪拌装置20において、振動子21bの駆動周波数を変化させ、駆動周波数と液体の攪拌に要する攪拌時間との関係を測定したところ、図6に示す結果が得られた。ここで、図5において、一点鎖線は、位相の周波数特性を示しており、実線で示すインピーダンスの周波数特性より、振動子21bの共振周波数frは94.3MHz、反共振周波数faは101.5MHzであり、中心周波数fc(=(fr+fa)/2)は97.9MHzと算出される。
【0040】
また、この測定に用いた反応容器7は、内法が2×3×5(縦×横×高さ)mmであり、底壁7bの厚さ0.5mm、内面の側壁7aと底壁7bとが接する部分は半径R=0.5mmの湾曲面に成形されている。一方、表面弾性波素子21は、振動子21bを形成する櫛型電極(IDT)の交差幅が2.15mm、対数が19対、隣接する電極指の間隔(=λ/2)が9.9μmであり、振動子21bを0.25Wで駆動した。そして、測定に当たっては、反応容器7に保持した蒸留水10μLに青色色素(エバンスブルー)液(比重>1)を1μL滴下して攪拌し、反応容器7内の色素液を伴った蒸留水をビデオ撮影して画像処理し、攪拌開始から色素液と蒸留水の色の分布が均一になるまでに要した時間(秒)を攪拌時間とした。
【0041】
図6に示す結果から、攪拌装置20は、共振周波数frよりも中心周波数fcで振動子21bを駆動した方が攪拌効率に優れ、攪拌時間が短縮されることが分かる。例えば、攪拌装置20は、振動子21bを共振周波数fr又は反共振周波数faで駆動した場合の攪拌時間は、約40秒であった。しかし、振動子21bを中心周波数fcで駆動した場合、攪拌時間は最短の約15秒であった。従って、図6に示す結果から、攪拌装置20は、攪拌制御部23の制御の下に、振動子21bを共振周波数frと反共振周波数faとの間の周波数で駆動することが好ましい。
【0042】
このとき、共振周波数frと反共振周波数faとの間の駆動周波数であれば、攪拌制御部23は、振動子21bの位相の半値幅Wh内の周波数、即ち、図5から94.6〜101.2(MHz)の駆動周波数で振動子21bを駆動してもよい。同様に、攪拌制御部23は、反共振周波数と共振周波数との差をΔf=fa−frとしたとき、振動子21bをfc−Δf/4〜fc+Δf/4の間、即ち、Δf/4=7.2/4=1.8(MHz)より、96.1〜99.7(MHz)の駆動周波数で駆動してもよい。
【0043】
ここで、自動分析装置1は、攪拌装置20が振動子21bを複数有する場合や、複数の自動分析装置1間で振動子21bに関する共振周波数や反共振周波数のばらつきが問題となる可能性がある。このため、共振周波数や反共振周波数のばらつきが大きい場合には、分析開始前に複数の振動子21bに関するインピーダンスの周波数特性を自動測定し、改めて中心周波数を求めてもよい。
【0044】
なお、本発明の攪拌装置の使用対象となる液体の保持手段は、複数の液体を攪拌することができれば特に限定はなく、壁面と底面とを有した容器であれば、攪拌対象の液体を保持し、或いは所望の位置に移送することができるので好ましい。具体的な容器として、例えば、試験管,キュベット,マイクロプレート,ビーカー等が挙げられる。この場合、図7に示す容器30のように、壁を形成する四角筒状の筒体31の下部に表面弾性波素子32を液密に取り付けることにより、表面弾性波素子32を容器30の一部として用いてもよい。このとき、表面弾性波素子32は、圧電基板32aの表面に振動子32bが設けられ、振動子32bを外側に向けて筒体31の下部に取り付ける。このように構成すると、容器30は、振動子32bが出射する音波が音響整合層を介することなく直接液体Lへ作用し、エネルギー損失が非常に少なくなると共に、攪拌効率が高くなるので好ましい。但し、表面弾性波素子32は、振動子32bを内側に向けて筒体31の下部に取り付けてもよいし、図8に示す表面弾性波素子34のような配置とすることもできる。このようにすると、振動子と液体とが直接接触するので、表面弾性波素子からの音波は、図7や図9に示す構成の表面弾性波素子32,37よりも、更に、直接液体に作用し、エネルギー損失の低減や攪拌効率の向上の点でより好ましい。ここで、表面弾性波素子34は、圧電基板34aの上面に振動子34bが設けられている。
【0045】
また、容器は、必ずしも反応容器に限られるものではなく、保持した複数の液体を攪拌することができれば、図9に示す容器36のように、底壁36aの下面に表面弾性波素子37を取り付けてもよい。このとき、表面弾性波素子37は、圧電基板37aの下面に振動子37bが設けられている。このように構成すると、容器36は、図4に示す反応容器7と同様に、容器36それ自体が液密であることから、表面弾性波素子37を液密に取り付ける必要がなくなるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の分析装置の実施の形態を示す自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で用いる反応容器を示す斜視図である。
【図3】表面弾性波素子を取り付けた図2の反応容器を示す平面図である。
【図4】図1の自動分析装置で用いる本発明の攪拌装置の概略構成を示す図である。
【図5】振動子が有するインピーダンスの周波数特性の一例と、共振周波数、反共振周波数及び中心周波数を示す図である。
【図6】攪拌装置の攪拌効率を示す図であり、駆動周波数と液体の攪拌に要する攪拌時間との関係を示す図である。
【図7】液体の保持手段である容器の第一の変形例を示す断面図である。
【図8】液体の保持手段である容器の第二の変形例を示す断面図である。
【図9】液体の保持手段である表面弾性波素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応テーブル
7 反応容器
7a 側壁
7b 底壁
7c 開口
8 光源
9 受光素子
11 排出装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 攪拌装置
21 表面弾性波素子
21a 圧電基板
21b 振動子
21c 電気端子
21d バスバー
22 駆動回路
23 攪拌制御部
24 発振部
25 増幅部
26 配線
27 音響整合層
30 容器
31 筒体
32,34 表面弾性波素子
32a,34a 圧電基板
32b,34b 振動子
36 容器
36a 底壁
37 表面弾性波素子
37a 圧電基板
37b 振動子
fa 反共振周波数
fc 中心周波数
fr 共振周波数
L 液体
Ls 液体試料
Wa 音波
Wh 半値幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の保持手段に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌装置であって、
前記音波を発生する音波発生素子を駆動する駆動手段を備え、
前記駆動手段は、前記音波発生素子の駆動周波数を共振周波数と反共振周波数との間に制御する制御部を有することを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記音波発生素子は、櫛歯電極を備えた振動子を有する表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記表面弾性波素子が発する音波の位相の半値幅内の駆動周波数で前記表面弾性波素子を駆動することを特徴とする請求項1および2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記表面弾性波素子の共振周波数をfr、反共振周波数をfa、中心周波数をfc=(fr+fa)/2、反共振周波数と共振周波数との差をΔf=fa−frとしたとき、前記表面弾性波素子をfc−Δf/4〜fc+Δf/4の間の駆動周波数で駆動することを特徴とする請求項1および2に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記音波発生素子は、前記液体の保持手段に保持される液体と非接触に設けられることを特徴とする請求項1および2に記載の攪拌装置。
【請求項6】
液体の保持手段に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌方法であって、
前記音波を発生する音波発生手段を、共振周波数と反共振周波数との間の駆動周波数で駆動することを特徴とする攪拌方法。
【請求項7】
前記音波発生手段を、当該音波発生手段の位相の半値幅内の駆動周波数で駆動することを特徴とする請求項6に記載の攪拌方法。
【請求項8】
前記共振周波数をfr、前記反共振周波数をfa、中心周波数をfc=(fr+fa)/2、反共振周波数と共振周波数との差をΔf=fa−frとしたとき、前記音波発生手段をfc−Δf/4〜fc+Δf/4の間の駆動周波数で駆動することを特徴とする請求項6に記載の攪拌方法。
【請求項9】
前記液体の保持手段に保持された液体を、当該液体と非接触に設けた前記音波発生手段により攪拌することを特徴とする請求項6に記載の攪拌方法。
【請求項10】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、請求項1〜5のいずれか一つに記載の攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−349379(P2006−349379A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172764(P2005−172764)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】