説明

支持体付極薄銅箔及びその製造方法

【課題】微細配線の形成に適した支持体付銅箔を提供する。
【解決手段】支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面に高さ0.5μm以上の突起が10個/cm以下であることを特徴とする支持体付銅箔である。
また、支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面の表面粗さがRzで0.1〜1.0μm、光沢度が400〜700であることを特徴とする前期の支持体付銅箔であり、極薄銅箔層の厚さは0.1〜5μm、剥離層はモリブデンまたはタングステンを含有する。
この支持体付銅箔は、支持体となる金属箔上に、モリブデンまたはタングステンを含有する金属酸化物からなる剥離層を形成し、剥離層上に極薄銅層を光沢銅めっきにより形成することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細配線の形成に適した支持体付極薄銅箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エッチング加工の対象となる銅箔層が薄いほど微細配線の形成が容易なことから、支持体付銅箔が超高密度微細配線板の形成に使用されている。支持体付銅箔は、支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、基材に極薄銅箔層を積層接着した後、支持体の金属箔を剥離して使用される。厚さ12μm未満の銅箔はシワになりやすく、単体で取り扱うことは困難であるが、支持体を用いることにより、厚さ5μm以下の極薄銅箔を容易に取り扱うことができる。支持体付銅箔は、支持体となる金属箔上に、めっきや蒸着などの方法により、剥離層と極薄銅箔層とを順次形成して製造される。支持体となる金属箔としては一般に電解銅箔が使用される。これは圧延銅箔に比べて幅広であり、また、銅の化学的特性が、剥離層と極薄銅箔層を形成するめっき工程に適しているからである。
【0003】
電解銅箔の表面は平滑なものではなく、いわゆる析出面に析出した銅粒子の結晶成長に基づく微小な凹凸が存在し、一方、電解銅箔の製造時に製箔ドラムに接していた面、すなわち光沢面には、製箔ドラムの研磨傷が転写された微細な凹凸が存在する。このため、形成された極薄銅箔層の露出面の表面粗さは支持体となる金属箔として用いた電解銅箔の形状を反映し、平滑性を欠くものとなる。
【0004】
電子回路の製造工程において極薄銅箔層の露出面は基材と接着されることから、該表面の微細な突起は基材中に埋め込まれることとなり、エッチングの精度を低下させる原因となる。すなわち、基材に埋め込まれた微細突起を除去するために過剰なエッチングが必要となり、微細配線の形状を劣化させることとなる。
【特許文献1】特開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、露出面に微細突起がなく平滑性に優れた極薄銅箔層を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面に高さ0.5μm以上の突起が10個/cm以下であることを特徴とする支持体付銅箔であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の支持体付銅箔は極薄銅箔層の露出面に微細突起がなく平滑性に優れていることから、微細配線の形成に特に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面に高さ0.5μm以上の突起が10個/cm以下であることを特徴とする支持体付銅箔である。
また、本発明は、支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面の表面粗さがRzで0.1〜1.0μm、光沢度が400〜800であることを特徴とする前記の支持体付銅箔であり、極薄銅箔層の厚さは0.1〜5μm、剥離層はモリブデンまたはタングステンを含有する。
【0009】
本発明の支持体付銅箔は、支持体となる金属箔上に、モリブデンまたはタングステンを含有する金属酸化物からなる剥離層を形成し、剥離層上に極薄銅層を光沢銅めっきにより形成することにより製造することができる。
【0010】
本発明で用いる支持体となる金属箔の材質、厚さは特に規定するものではないが、コストや製造工程、機械特性及び化学特性から、厚さ8μm〜35μmの銅箔が好ましい。剥離層及び極薄銅箔を形成する面は、電解銅箔の光沢面と析出面のいずれでもよいが、表面粗さがRzで2.0μm以下であり、かつ異常な突起がないことが好ましい。Rzが大きいと形成された極薄銅箔の表面粗さが大きくなり好ましくない。また、異常な突起部があると同様な異常部が形成されることとなる。
【0011】
本発明の剥離層は、モリブデン化合物またはタングステン化合物を含有する電解液を用いて、支持体となる金属箔上に電気めっきを行うことにより形成することができる。電気めっきを行う前に、支持体金属層の表面を適切な前処理によって清浄化することが好ましい。通常の酸洗処理のほか、アルカリ脱脂や電解洗浄を行ってもよい。
【0012】
モリブデン化合物としては、モリブデン酸ナトリウムなどの金属塩、タングステン化合物としてはタングステン酸カリウムなどの金属塩を用いることができる。また、これらの金属塩に加えて、硫酸ニッケルや硫酸コバルトなどの鉄系金属を含有する化合物を加えてもよい。これらの化合物を添加することにより、極薄銅箔から支持体金属に銅が拡散して剥離が困難となることを防止できる。金属イオンの溶解性や析出状態を安定化させる目的で、電解液にはクエン酸などの多価カルボン酸など配位結合により錯体を形成する配位子となる化合物、また、抵抗値調整の目的で硫酸ナトリウムなどの無機塩を添加してもよい。モリブデン化合物の添加量は、各々金属換算で0.1〜10g/l、好ましくは0.5〜2g/lであり、タングステン化合物の添加量は、各々金属換算で0.1〜10g/l、好ましくは0.5〜2g/lである。また、鉄系金属を含有する化合物については、金属換算で60g/l以下、好ましくは12g/l以下であり、鉄系金属イオンが多いと鉄系金属が優先して析出して剥離層が形成されなくなる。クエン酸の濃度は、ナトリウムイオンを除く金属種に対してモル換算で、0.2〜5倍、より好ましくは0.5〜2倍である。電解液温度は5〜70℃、好ましくは10〜50℃である。電流密度は0.2〜10A/dm、好ましくは0.5〜5A/dmであり、主としてpHは2〜8、好ましくは4〜7の範囲である。
上記の条件で電気めっきを行うと、鉄系金属が共存する場合には、まず、主として鉄系金属とモリブデンまたはタングステンが金属として析出し、電気めっきの進行とともにモリブデンまたはタングステンの酸化物が主として析出する。これは、鉄系金属イオンが消費される一方で、その供給が拡散律則により制限されるために、鉄系金属イオンの濃度が低下することによる。鉄系金属濃度が十分に低下した段階で、低電流密度で電気分解を継続することにより、主としてモリブデンまたはタングステンと酸素からなる層が析出する。鉄系金属が共存しない場合には、モリブデンまたはタングステンの酸化物が主として析出する。
【0013】
本発明の薄銅層は特に限定するものではないが、ピロ燐酸銅を主体とする電解液を用いた場合には緻密な銅めっき層が形成されることから、ピンホールが減少する。また、硫酸銅を主体とする電解液を用いた場合は、高速めっきが可能となり、薄銅層を効率よく形成することができる。両方のめっき方法を組み合わせることにより、所望の厚さを有し、ピンホールの少ない薄銅層を効率よく形成することができる。薄銅層の厚さは、用途に応じて任意に設定してよい。いずれの電解液を用いた場合も、いわゆる光沢剤の添加が必須であり、光沢剤を添加することにより、本発明の、支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面の表面粗さがRzで0.1〜1.0μm、光沢度が400〜800である支持体付銅箔が得られる。
光沢剤としては、一般的に用いられる市販の光沢剤が使用できるが、硫黄を含む光沢剤が好適に用いられ、特にメルカプト基を有する光沢剤がもっとも好適であり、このような光沢剤としては、たとえば、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸がある。また、複数の水酸基を有する有機化合物ないし線状重合体を添加することにより、光沢剤の作用を向上させることができ、さらに平滑で光沢に優れ、異常な突起部がない表面を形成することができる。このような化合物としては、たとえば平均分子量(重量平均)が500〜5,000,000のポリエチレングリコールがある。
【0014】
薄銅層の表面には、公知の方法で、クロメート処理などの方法により防錆処理を行うことができる。また、必要に応じて、基材樹脂との接着性を向上させる目的で、シランカップリング剤等による接着強化処理を行ってもよい。
【実施例】
【0015】
以下に実施例により、本発明を説明する。
(実施例1〜4)
厚さ18μm、光沢面の表面粗さRz0.8μm電解銅箔を支持体として用いた。光沢面の形状を倍率1000倍の電子顕微鏡で観察し、表面に高さ1.0μm以上の突起がないことを確認した。この電解銅箔を10%硫酸中、温度:30℃、電流密度:5A/dm2、処理時間:20秒の条件で陰極処理により表面を清浄化した後、純水で20秒洗浄した。ついで、表1に記載の組成で調製した電解液(剥離層用)で、表1記載の条件で電気分解することにより、光沢面に剥離層を形成した。ついで、この電解銅箔を流水で20秒洗浄した後、ピロリン酸銅めっき浴により温度:30℃、pH:6.0、電流密度:0.5A/dm2、処理時間:20秒、陰極処理を行った後、純水で20秒洗浄した。さらに、表1記載の電解液(極薄銅箔層用)中、表1記載の条件で電気分解することにより、2μmの極薄銅箔層を形成した。流水で20秒洗浄した後、公知の方法で防錆処理とシランカップリング剤処理を行った。重量変換により求めた極薄銅箔層の厚さと表面粗さ、光沢度、高さ0.5μm以上の突起の発生状況を表1にあわせて示した。なお、高さ0.5μm以上の突起の発生状況は、キーエンス社製レーザ顕微鏡VK8510を用いて測定を行なった。また、光沢度は日本電色工業製の光沢計PG−1Mを用いて60度で測定し、他の測定は通常の方法で行った。
(比較例1〜2)
比較例1はモリブデンまたはタングステンを含有しない剥離層用いたほかは、実施例1と同様にして支持体付銅箔を作成した。
比較例2は光沢剤を添加しないほかは、実施例1と同様にして支持体付銅箔を作成した。
【0016】
【表1】

【0017】
上表からあきらかなように本発明の支持体付銅箔は、極薄銅箔層の露出面に高さ0.5μm以上の突起が10個/cm以下であり、平滑性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
露出面に微細凹凸がないことからエッチング性に優れ、微細配線の形成に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面に高さ0.5μm以上の突起が10個/cm以下であることを特徴とする支持体付銅箔。
【請求項2】
支持体となる金属箔と剥離層と極薄銅箔層とからなり、極薄銅箔層の露出面の表面粗さがRzで0.1〜1.0μm、光沢度が400〜800であることを特徴とする請求項1の支持体付銅箔。
【請求項3】
極薄銅箔層の厚さが0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1ないし2の支持体付銅箔。
【請求項4】
剥離層が、モリブデンまたはタングステンを含有することを特徴とする請求項1ないし3の支持体付銅箔。
【請求項5】
支持体となる金属箔上に、モリブデンまたはタングステンを含有する金属酸化物からなる剥離層を形成し、剥離層上に極薄銅層を光沢銅めっきにより形成することを特徴とする請求項1ないし4の支持体付銅箔の製造方法。

【公開番号】特開2009−293103(P2009−293103A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150118(P2008−150118)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000232014)日本電解株式会社 (11)
【Fターム(参考)】