説明

改質ガスを利用するシステム及び方法

【課題】転炉と別置のガス改質炉を用いて改質ガス中の一酸化炭素ガス、水素ガスを化学原料に有効利用可能にし、かつ改質ガス中の二酸化炭素を大気に放出することなく有効利用し得るようにする。
【解決手段】ガス改質炉1において、可燃性廃棄物及び/又はその乾留副生成物8、及び石炭10を酸素9と反応させてCOガス、Hガス、COガス、Nガスを含む改質ガスを生成する。改質ガス中のCOガス、COガス、及びHガスは、分離装置2,3,4を解して順次分離回収される。回収されたCOガス及びHガスの少なくとも一つを化学原料として化学物質合成設備6、7に送られる。COガス14は、COガスの分離工程の前工程で改質ガスから分離回収され、ガス改質炉1に還流される。還流されるCOガスは、ガス改質炉へ搬送される石炭の搬送用及び炉シール用のNガスの代替として利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の転炉ガスと別置きのガス改質炉設備で生成される改質ガスを、化学品(例えば酢酸等)の製造原料として有効利用するための改質ガス利用システムと、この改質ガス利用システムを転炉ガスシステムと結合させたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の転炉で副生成される一酸化炭素(CO)ガスを、化学品製造所(化学物質合成設備)に送って酢酸などの化学品の原料として利用可能にする産業間連携のエネルギーシステムや、転炉の代替方式として、製鉄所に転炉と別置のガス改質炉設備を設置して一酸化炭素ガスや水素(H)ガスを生成し、化学品の原料として利用するエネルギーシステムが提案されている。
【0003】
ここで、従来における、転炉で副生成されるガス(「転炉ガス」と称することもある)の有効利用と、別置ガス改質炉で生成される改質ガスの有効利用について説明する。
(転炉ガスの有効利用について)
(1)製鉄所の転炉から副生成される転炉ガスエネルギーの有効利用については、回収ボイラーによる蒸気回収や燃焼設備の燃料ガスとして利用されていることが知られている。転炉内発生ガス温度は1000℃を超える高温であり、煙道部ガス温度も千数百度に達する場合がある。高温ガス顕熱は、通常は、水冷ジャケットによるガス冷却により熱交換される。循環冷却水によって持ち出される熱は冷却塔にて大気放散される。また、炉頂部に顕熱回収設備を設置し、蒸気回収して有効利用を図る方策も一部で行われている。
【0004】
転炉ガスは、一酸化炭素ガス、水素ガスのような有用ガス以外にも不可避的に二酸化炭素(CO)、窒素(N)を含む。さらに酸素吹き込みに伴う鉄ダスト類を含む。
【0005】
ダスト類ならびに水溶性ガスについては、湿式集塵機にて除去され、清浄化された転炉ガスが回収対象のガスとしてガスホルダーに送られる。転炉は、挿入・溶解・吹錬・出湯を順次繰り返すバッチシステムであるので、通常複数基の運転で若干の平準化はされる。しかしながら、発生ガスは大きな流量変動を伴うので、ガスホルダーが発生ガス量変動のバッファーとして設置される。
【0006】
回収される転炉ガスは、一酸化炭素、水素などの可燃成分を50%以上含んでいることから、製鉄所内の加熱炉や発電設備等の補助燃料として利用できる。ガスホルダー容量以上の転炉ガス発生の場合に対応して、複数の設備の補助燃料として使用することでバッファー機能を持たせることも選択肢のひとつである。例えば、高炉設備を持たない製鉄所では、高炉ガスやコークス炉ガスの発生が無いため、副生成ガスとしては転炉ガスに頼らざるを得ず、バッファー機能の必要性や所要規模は大きなものとなる。
【0007】
また、転炉ガス中には一酸化炭素成分が過半を占めている点に着目して、隣接する化学物質合成設備に原料ガスとして回収転炉ガスを供給する方法も特許文献1に示されている。この有効利用法は、転炉ガス回収系統の下流に酢酸を合成する設備を配設して一酸化炭素ガスをメタノールと反応させて酢酸を製造する方法が示されている。
【0008】
転炉ガスから一酸化炭素ガスを分離する方法としては、2段圧力スイング吸着(PSA)法が知られている。これは、まず第1段の圧力スイング吸着(PSA)で二酸化炭素を吸着除去し、第2段の圧力スイング吸着(PSA)で一酸化炭素を吸着する方法である。この方法によれば、吸着された一酸化炭素の脱着回収を減圧下で行うので、高純度の一酸化炭素ガスを回収することができる(非特許文献1)。転炉ガスを構成するガス分子の吸着特性は、一般には分子量の重い順となり、また一酸化炭素と窒素は吸着特性が類似している。かような状況の下で、経済的に高純度の一酸化炭素を得るためには、一酸化炭素分離装置の前段で一酸化炭素分圧を高めることが有効であることが知られている(非特許文献2)。二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素のモル分子量は、それぞれ44、28、28、2である。
(2)転炉ガス発生時の時間あたりのガス量変動は膨大なものになる。その理由としては、(イ)転炉のサイクル時間内における炉の挙動が溶解・脱炭・吹錬などであり、炉の停止・起動が断続的であること、(ロ)かつ複数炉設備の場合でも各炉が独立して稼動していることが挙げられる。またガス組成についても、前述のような溶解・吹錬の起動・停止時のガス燃焼制御から、一定の一酸化炭素濃度を維持することは困難である。炉内からは燃焼で生成される一酸化炭素と二酸化炭素、底吹きに使用している窒素等の混合ガスが発生する。また、石炭を投入している場合には、熱分解により水素も生成する。スクラップや型銑を原料にする転炉においては、副原料に、微粉炭や廃タイヤ・チップを含ませる場合もある。廃タイヤ中のスチールコードは鉄原料として、ゴム他可燃成分は底吹き微粉炭代替として活用できるが硫黄(S)分もガス中に含まれる。
【0009】
転炉ガスの宿命であるバッチ操業に起因するガス発生変動に対しては、ガス貯蔵タンク等のバッファー機能も設けることが知られている。化学原料としての一酸化炭素や水素の需要増加に対して、バッチ操業に伴うガス量変動を均一化することが要求される。また、冷鉄源溶解法を採用した転炉の運転では、発生ガスのカロリー変動を伴う場合もある。したがって、ガス貯蔵タンクの容量は、上記のガス量変動の均一化に、カロリー変動の均一化まで含めると膨大なものなることは容易に推察できる。
(改質ガスの有効利用について)
ガス改質炉は、製鉄所内に集積された廃棄物(廃タイヤ、廃プラスチックなどの炭素含有品)及び/又はその副生成物(乾留化された炭素、ガス、油)および石炭などの原料を酸素と反応(部分燃焼)させて、一酸化炭素ガス、水素ガスを生成するものであり、これらのガスは、補助燃料、化学原料として利用可能である。
【0010】
改質ガスシステムとは、転炉ガスシステムとは別置のガス改質炉設備を設置することにより、製鉄所内に存在する廃棄物あるいはその副生成物(乾留化された炭素、油、ガス)をより付加価値の高い化学原料として利用可能な形態に改質するシステムである。このシステムによれば、エネルギー余力を捻出し、また、転炉間欠運転による流量変動に対するバッファー機能の装備などを可能にする。
【0011】
ガス改質炉では、製鉄所内に保有するエネルギー生成原料、例えば廃タイヤや廃プラスチック等の廃棄物処理後の副生成物質(乾留された炭素、油、ガス)ならびに石炭に酸素を反応させる。ガス改質炉への石炭および乾留チャーの搬送とガス化炉内のシールガスに、窒素が使用される。
【0012】
ガス改質炉で生成した改質ガスは、熱交換器で冷却される。その後、ガス精製設備で改質ガス中のダスト類が除去され、また硫化水素(HS)や硫化カルボニル(COS)などの硫黄系化合物などの不純物が除去される。精製された改質ガスは、例えば鉄鋼側の用途としては、熱間圧延工場の加熱炉用補助燃料ならび発電設備向け補助燃料に使用される。また、改質ガスは、化学側の用途としては、一酸化炭素分離装置および水素分離装置を介して原料供給ガスとして使用可能である。
(その他の一酸化炭素生成法)
化学原料用の一酸化炭素を製造するためには、重質油を原料とするガス化炉を使用する方法が従来から知られている。アスファルト等の重質油は石油精製プラント等からの供給となり、製鉄所内で使用する原料の範疇には入っておらず、専用の原料確保が必要となる。したがって、製鉄所内のエネルギー需給条件からは好ましいとはいえない。この場合には、一酸化炭素を必要とする化学会社自身が重質油ガス化炉を設置するのが一般的である。
【特許文献1】特開2000−283658号公報
【非特許文献1】小泉進著 「COガス回収精製装置の設備概要と操業実績」川崎製鉄技報1986年Vol.18 No.3.
【非特許文献2】桜谷敏和著 「転炉ガスからの高純度COガス生成分離システムの開発」川崎製鉄技報1985年Vol.17 No.2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
転炉ガス回収系と別置のガス改質炉設備により一酸化炭素を主成分とする改質ガスの生成を行う方式によれば、転炉ガス回収系で課題とされていた一酸化炭素流量変動に対するバッファー機能の装備を可能にする。また、転炉ガスエネルギーの化学原料としての不足体質の脱却、未利用エネルギー活用によるエネルギー余力の捻出等の問題点を解消することができる。しかしながら、この方式においても、一酸化炭素分離回収の前段階処理で分離した二酸化炭素の有効利用が図れない点や、改質ガス中の窒素成分の残存により一酸化炭素ガス成分の純度に対する制約があり、経済的向上のためにはなお課題が残されている。
すなわち、転炉ガス回収系統とは別置のガス改質炉系統による化学原料ガスの供給において、二酸化炭素、一酸化炭素、水素を順次、分離回収する方法の場合には、以下の技術的課題がある。
【0014】
第1の課題は、分離した二酸化炭素は、オフガスとして大気放出するか、所外への搬出等の措置が必要となる。二酸化炭素排出削減の地球環境問題対策の観点からすれば、製鉄所内で二酸化炭素を有効利用できることが望まれる。
【0015】
第2の課題は、二酸化炭素を除去した回収ガス中には、なお窒素成分がそのまま残っており、一酸化炭素分圧を高める観点からも窒素低減を図ることが望まれる。第3の課題は、化学原料ガスの安定供給のための、バックアップ機能が必要なことがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記改質ガス利用システムの課題を解決するために、基本的には、次のように構成される。
【0017】
本発明の改質ガス利用システムは、ガス改質炉によって、可燃廃棄物(例えば廃タイヤ,廃プラスチック等)及び/又はその副生物質(乾留炭素,ガス)や石炭に酸素を反応させ、それにより、転炉ガスと類似の一酸化炭素,水素,二酸化炭素、窒素成分で構成される改質ガスを発生させることを前提とする。そして、一酸化炭素分離の前段で二酸化炭素ガスを分離し回収し、その二酸化炭素ガスを改質炉に還流させる系統を備える。
【0018】
この場合、ガス改質炉に還流される二酸化炭素ガスは、石炭搬送や炉シール用の窒素ガスの代替として利用することができる。二酸化炭素をガス改質炉に還流させた場合、その一部がガス改質炉内で水素と反応し、次化学式により一酸化炭素が精製されるので、改質ガス中の二酸化炭素濃度の増大を抑制し、反面一酸化炭素濃度の低下を抑えることができる。
【0019】
[化1]
CO+H→CO+H
また、化学物質合成設備(化学品製造設備)の改質精製ガス(COやH)供給系に、転炉で回収された精製ガス供給系統を接続すれば、化学原料の確実なバックアップ機能が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガス改質炉において、石炭搬送や炉シール用の窒素ガスの代替ガスとして、分離回収した二酸化炭素を利用することができる。それにより、製鉄所内での回収二酸化炭素の有効利用とあわせて、搬送・シール用窒素ガスの使用量節減,一酸化炭素分離装置のフィード一酸化炭素濃度を高め、PSAによる一酸化炭素回収率を高めることができる。
【0021】
化学物質合成設備においては、改質ガスの精製ガスの供給系と転炉回収ガスの供給系統とを接続することにより、化学原料ガスの安定供給のためのバックアップ機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施例1)
図1は、本発明に係る第1実施例の改質ガス利用システムの構成図である。
【0023】
本システムは、上流側から下流側に向けて、ガス改質炉設備1、ガス精製装置2、二酸化炭素分離装置3、一酸化炭素分離装置4、水素分離装置5を備える。これらの構成要素は、製鉄所内に配置される。また、一酸化炭素分離装置4は、一酸化炭素供給ライン16を介して化学物質製造所の酢酸製造設備6に接続される。水素分離装置5は、シクロヘキサン製造設備7に水素供給ラインを介して接続される。
【0024】
ガス改質炉設備1は、その上流に接続される廃棄物処理装置(例えば乾留ガス化装置)30から廃棄物副生成物8が供給され、また、酸素ガス供給系から酸素ガス9が供給され、石炭供給系から石炭10が供給され、窒素ガス供給系から窒素ガス11が供給される。
【0025】
廃棄物副生成物8は、例えば廃タイヤを乾留ガス化処理して生じた乾留炭素、油、ガスなどで、改質により利便性の高いガスとして用途が拡大する。石炭10は、コークスの原料や転炉原料、微粉炭火力等の自家発電設備の原料として製鉄所内で調達できる原料である。酸素ガス9は転炉への吹き込み剤として通常所内に製造設備を有している。窒素ガス11は、微粉炭搬送用およびガス改質炉の圧力容器内部のシール用に使用される。ただし、本実施例では、後述するように、改質ガス12が生成されてその中の二酸化炭素ガス14がガス改質炉1に還流されると、この還流二酸化炭素が窒素ガスに替わる機能(微粉炭搬送用及び炉内シール用)をなす。
【0026】
ガス改質炉設備1に供給される原料類は、製鉄所内に製造設備または貯蔵設備を有しており、転炉への供給原料類と同様である。
【0027】
ガス改質炉設備1は、廃棄物副生成物8(乾留された炭素、油、ガス)及び石炭10に酸素を反応させることにより、炭素,水素,二酸化炭素,窒素を含む改質ガス12を生成する設備であり、その設備自体は既知の構造物であるので、詳細構造は省略する。ガス改質炉への微粉石炭の搬送と、ガス化炉内のシールドガスに、窒素が使用される。
【0028】
改質ガス12は、一酸化炭素を主成分としており、また既述したように、転炉ガスと同じく水素,二酸化炭素,窒素を成分としている。石炭中の硫黄(S)分や不純物はガス精製装置2の脱塵プロセス、脱硫プロセスなどで除去される。
【0029】
ガス改質炉1の運転圧力は、ガスの利用先の運転圧力を考慮して加圧システムとすることが一般的であり、通常1.5〜3MPa程度が選択される。
【0030】
ガス精製装置2も加圧システムとなり、製鉄所内の副生成ガス用の精製設備とは運転圧力の点で異なる。またガス改質炉原料の物質・性状・不純物含有によって影響を受けるため、ガス精製装置2はガス改質炉設備1と合わせて仕様を計画する必要がある。
【0031】
脱硫プロセスは、常温以下の反応温度が経済的と一般にいわれており、ガス改質炉設備1には顕熱熱回収のボイラ設備を設けてガス顕熱を冷却し、通常蒸気回収する方法が取られる。精製されたガス13は、加圧されたガスである。精製ガス13に含まれる化学原料ガスとしての有効成分である一酸化炭素や水素の分圧を上げる目的で、二酸化炭素分離装置3で二酸化炭素14を分離回収する。
【0032】
二酸化炭素の分離は、例えば、公知の化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、圧力スイング法などが採用される。
【0033】
二酸化炭素分離後のフィードガス15に含まれる一酸化炭素は、圧力スイング吸着(PSA)などの一酸化炭素分離装置4にて高純度の一酸化炭素ガス16として分離され、酢酸を合成する原料として、酢酸製造設備6にラインを介して供給される。酢酸の合成プロセスについては(公知例文献1)にも記載があり、ここでは詳しい説明は省略する。
【0034】
一酸化炭素分離後のオフガス17は、一酸化炭素、二酸化炭素の大部分を分離して、結果として水素分圧が高くなっており、水素分離装置5で水素ガス18を経済的に分離可能となる。分離した水素ガス18は、例えばシクロヘキサン製造装置7へ供給して化学原料として利用される。精製ガス13は、二酸化炭素ガス14、一酸化炭素ガス16、水素ガス18と順次分離回収することにより、一酸化炭素回収後はフィードガスの水素分圧が高い状態で、水素分離装置5において経済的に回収することが可能となる。
【0035】
なお、図1に示す本実施例では、一酸化炭素分離装置4で回収した一酸化炭素ガスと、水素分離装置5で回収した水素ガスの両方を化学原料として利用するようにした系統を例示しているが、分離回収した少なくとも一方のガスを化学原料として利用するように系統を構成しても良い。
【0036】
上記の別置のガス改質炉方式において、回収された二酸化炭素ガス14はガス改質炉設備1へ還流され、石炭(粉体)10の搬送用窒素11の代替として使用される。また、二酸化炭素14は、窒素に代わる炉内シールドガスとして使用される。
【0037】
ガス改質炉において、回収二酸化炭素14を、窒素11に代えて改質炉の原料搬送やシールガスとして利用した場合の効果試算結果を表1に示す。
【0038】
従来のように搬送とシール用に窒素を使用した場合の試算例では、CO:Nの成分割合は65:9であったのが、搬送・シール窒素を二酸化炭素に代えた場合には、その比は67:6となり、窒素分圧は2/3に低減すると共に、窒素と一酸化炭素の分圧割合比は1/7から1/11へと大幅に低減される結果を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
以上のように、本実施例による改質ガス利用システムによれば、石炭等の原料搬送用およびシール用の窒素を二酸化炭素で代替することから、一酸化炭素分離装置4のフィードガス15の一酸化炭素濃度を2%以上高くすると共に、分子量の等しい窒素の一酸化炭素に対する成分割合を2/3以下とする利点がある。このことは圧力スイング吸着(PSA)における一酸化炭素回収率20に貢献し(図2のフィードCO濃度とCO回収率の関係を参照)、経済的な回収純度アップを可能とする。二酸化炭素をガス改質炉に還流させた場合、その一部がガス改質炉内で水素と反応し、既述した化学式1により一酸化炭素が精製されるので、改質ガス中の二酸化炭素濃度の増大は、抑制され、反面一酸化炭素濃度の低下を抑えることができる。
【0041】
なお、ガス改質炉1中には、廃タイヤ、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物を直接投入してこれを酸素と反応させて改質ガスを生成するようにしてもよい。
(実施例2)
図3は、本発明の第2実施例に関する改質ガス利用システムである。本実施例では、既述した第1の実施例の改質ガス利用システムに、さらに転炉ガス利用システムが結合したものである。酢酸製造設備6の原料供給系統を、転炉別置のガス改質炉からのフィードガス15から回収した一酸化炭素ガス16と回収転炉ガス24から回収した一酸化炭素ガス26のそれぞれを接続する系統を設けると共に、切替え装置によって何れのガスからも酢酸製造設備6への一酸化炭素原料供給可能とする方法を示したものである。
転炉(図示省略)で生成された転炉ガスは、精製後にガス貯蔵ホルダー21で貯蔵される。貯蔵ホルダーから送られる転炉ガス24は、二酸化炭素分離装置22にて二酸化炭素ガス28が分離され、一酸化炭素分圧を高めたフィードガス25として、一酸化炭素分離装置23に送られる。ここで一酸化炭素ガス26が分離回収され、その一酸化炭素は、化学原料として酢酸製造設備6の一酸化炭素ガス16の供給系統に接続される。改質ガスと転炉ガスの両系統の一酸化炭素ガスは切り替えて使用が可能とする切替え装置を有する。一酸化炭素分離装置23からはオフガス27として可燃分を含んでおり、一部は燃焼用他に使うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
鉄鋼産業と化学産業の隣接する工場間のエネルギー連携によって、鉄鋼の産業の未利用・余剰エネルギーを化学産業の原料として供給しつつ、製鉄所内のエネルギー利用の高度化を図ることができる。更に、将来は周辺地域へのエネルギー供給にも拡張適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1実施例のシステム構成図である。(実施例1)
【図2】本発明の効果を示す説明図
【図3】本発明の他の実施例を示すシステム構成図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0044】
1:ガス改質炉設備、2:ガス精製装置、3:二酸化炭素分離装置、4:一酸化炭素分離装置、5:水素分離装置、6:酢酸製造設備、7:シクロヘキサン製造設備、8:廃棄物副生成物、9:酸素ガス、10:石炭供給、11:窒素ガス、12:改質ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤ,廃プラスチック等の廃棄物及び/又はその乾留副生成物、石炭、および酸素などが供給され、それらの供給原料の一部又は全てをガス化物質に改質するガス改質炉設備と、
前記ガス改質炉設備で生成された改質ガス中に含まれる不純物を除去するガス精製装置と、
改質ガス中の二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離装置と、
二酸化炭素分離後に改質ガス中の一酸化炭素を分離回収する一酸化炭素分離装置と、
一酸化炭素分離後に改質ガス中の水素を分離回収する水素分離装置と、を含む改質ガス利用システムにおいて、
前記一酸化炭素分離装置で回収した一酸化炭素ガス及び前記水素分離装置で回収した水素ガスのうち少なくとも一方を、化学原料ガスとして利用するための系統と、
前記二酸化炭素分離装置で除去した二酸化炭素ガスを前記ガス改質炉設備に還流させる系統と、を有することを特徴とする改質ガス利用システム。
【請求項2】
請求項1において、前記ガス改質炉設備に還流される二酸化炭素ガスの系統は、ガス改質炉へ搬送される石炭の搬送用及び炉シール用の少なくとも一つの窒素ガスの代替として利用されるように構成されている改質ガス利用システム。
【請求項3】
請求項1において、前記一酸化炭素分離装置で改質ガスから回収した一酸化炭素ガスを化学物質合成設備に供給するための第1の一酸化炭素ガス供給ラインを有し、
さらに、前記ガス改質炉と別系統の一酸化炭素供給系統として、転炉によって生じた転炉ガス中の一酸化炭素を分離回収する転炉系一酸化炭素分離装置と、この回収された一酸化炭素ガスを前記化学物質合成設備に送るために、該化学物質合成設備或いは前記第1の一酸化炭素ガスラインに接続される第2の一酸化炭素ガス供給ラインと、を備える改質ガス利用システム。
【請求項4】
請求項3において、前記化学物質合成設備には、改質ガスから分離回収した一酸化炭素ガスと転炉ガスから分離回収した一酸化炭素ガスとが切り替え可能に供給できるように構成されている改質ガス利用システム。
【請求項5】
ガス改質炉において可燃性廃棄物及び/又はその乾留副生成物、及び石炭を酸素と反応させて一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガスを含む改質ガスを生成する工程と、
前記二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、及び水素ガスを順次分離回収する工程と、
回収された一酸化炭素ガス及び水素ガスの少なくとも一つを化学原料として化学物質合成設備に送る工程と、を含む改質ガス利用方法において、
前記二酸化炭素ガスを前記一酸化炭素ガスの分離工程の前工程で前記改質ガスから分離回収して前記ガス改質炉に還流させる工程を有することを特徴とする改質ガス利用方法。
【請求項6】
請求項5において、前記ガス改質炉設備に二酸化炭素ガスを還流する工程では、還流二酸化炭素ガスを、前記ガス改質炉へ搬送される石炭の搬送用及び炉シール用の少なくとも一つの窒素ガスの代替として使用する改質ガス利用方法。
【請求項7】
請求項5において、転炉によって生じた転炉ガス中の一酸化炭素を分離回収する工程と、この回収された一酸化炭素ガスの搬送ラインを、化学物質合成設備に直接接続するか或いは前記改質ガスから分離回収した一酸化炭素ガスの供給ラインに接続して前記化学物質合成設備に送る工程と、を有する改質ガス利用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−9068(P2007−9068A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191820(P2005−191820)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「産業間連携に係る個別連携事業に関する調査 産業間連携により期待される具体的効果とそれを達成するための課題抽出」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】