説明

放射線像変換パネル及びその製造方法

【課題】放射線像変換パネルとして輝度、鮮鋭性に優れた放射線像変換パネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】蛍光体原料を含む蒸着源を加熱し、発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体原料の安息角が20°以上90°以下であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いた放射線像変換パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用などの分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう。)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
【0003】
しかしながら、近年ではハロゲン化銀塩を有する感光材料による画像形成方法に代わり、蛍光体層から直接画像を取り出す新たな方法が進展している。この方法は被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめた後、この蛍光体を、例えば、光または熱エネルギーで励起することにより、この蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出し画像化する方法がある。
【0004】
具体的には、例えば、米国特許第3,859,527号明細書及び特開昭55−12144号公報等に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。この方法は輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を用いる放射線像変換パネルを使用するもので、この放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号を感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
【0005】
上記の放射線画像の再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点を有している。
【0006】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰返し使用が可能である。つまり、従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0007】
更に、近年、診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線像変換パネルが要求されている。鮮鋭性改善の為の手段として、例えば、形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし、感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0008】
これらの試みの1つとして、例えば、特開昭61−142497号公報に記載されている、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0009】
また、特開昭61−142500号公報に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して、更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法(例えば、特許文献1参照)、更には支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
更に気相成長法によって、支持体上に支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
最近では、CsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来得られていなかった高いX線変換効率を導き出すことが可能となった。
【0012】
また、蛍光体の母体成分とEuOXまたはEuOXとEuXmの混合物といった賦活剤成分を含む一以上の蒸発源を所定の酸素分圧の雰囲気下で蒸発させることにより感度の向上を意図した技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開昭62−39737号公報
【特許文献2】特開昭62−110200号公報
【特許文献3】特開平2−58000号公報
【特許文献4】特開2004−233134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、放射線像変換パネルとして輝度、鮮鋭性に優れた放射線像変換パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0015】
1蛍光体原料を含む蒸着源を加熱し、発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体原料の安息角が20°以上90°以下であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0016】
2.前記1に記載の放射線像変換パネルの製造方法によって得られることを特徴とする放射線像変換パネル。
【0017】
3.前記放射線像変換パネルにおける蛍光体層が下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする前記2に記載の放射線像変換パネル。
【0018】
一般式(1) M1X・aM2X′・bM3X″:eA
(式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の3価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0≦e≦0.2の範囲の数値を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明により、放射線像変換パネルとして輝度、鮮鋭性に優れた放射線像変換パネルの製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳述する。
【0021】
本発明は、蛍光体原料を含む蒸着源を加熱し、発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体原料の安息角が20°以上90°以下であることを特徴とする。
【0022】
安息角とは粉体の流動性の指標の一つであり、粉体が形成できる斜面の最大傾斜角のことを指す。値が大きい程流動性が低いことを意味する。安息角は粉体の表面形状や吸湿性に依存する。本発明における「蛍光体原料の安息角」は、蛍光体原料が蒸着前の処理(調湿など)後の状態の安息角のことを示す。
【0023】
安息角が高すぎると粉体の流動性が低いため作業性が低下する。また、蒸着時の除湿負荷がかかるうえに、鮮鋭性が低下することがある。これは吸湿により蛍光体の結晶構造に悪影響が及ぼされているためと推定している。一方、安息角が低すぎると流動性が高すぎることになり、静電気の影響を受けやすく、特に乾燥雰囲気化での作業性、工程汚染の観点で不具合が生じることがある。
【0024】
本発明の放射線像変換パネルは、基板上に蛍光体層が形成され、基板を含めた蛍光体層が保護フィルムで覆われ、更に封止された構成となっている。
【0025】
本発明に係る前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0026】
1はNa、K、Rb及びCsなどの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表し、中でもRb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、更に好ましくはCs原子である。
【0027】
2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiなどの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはBe、Mg、Ca、Sr及びBaなどの各原子から選ばれる2価の金属原子である。
【0028】
3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びIn等の各原子から選ばれる少なくとも1種の3価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びIn等の各原子から選ばれる3価の金属原子である。
【0029】
AはEu、Tb、In、Ga、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。
【0030】
一般式(1)で表される化合物の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子を表すが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましく、Br原子が更に好ましい。
【0031】
一般式(1)において、e>0のとき、一般式(1)で表される化合物そのものが蛍光体であり、これが蛍光体原料となる。
【0032】
一般式(1)において、e=0のとき、本発明に係る一般式(1)で表される化合物について、その具体例を挙げる。
【0033】
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の化合物が用いられる。
【0034】
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCI2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種または2種以上の化合物が用いられる。
【0035】
一般式(1)においてe=0のとき、前記蛍光体原料として一般式(1)で表される化合物と下記化合物(2)との混合物を用いるのが好ましい。
【0036】
化合物(2):Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の原子を有する化合物。化合物(2)として好ましいのは、ユーロピウム化合物が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるユーロピウム化合物としては、EuX2、EuX3、EuOX(XはF、Cl、Br、I及びそれらの組み合わせより成る群)が挙げられる。この中で、特にEuBr3、EuBr2、EuCl2、EuOBrが優れた結果を与えた。
【0038】
(基板)
本発明に用いられる放射線像変換パネルの基板について説明する。
【0039】
本発明の放射線像変換パネルに用いられる基板としては、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられ、例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラス、またセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の有機樹脂フィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シートまたは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが挙げられる。
【0040】
中でも有機樹脂フィルムが好ましい。有機樹脂フィルムは軟化点以上に基板温度を制御し、蒸着することで蒸着結晶が基板内部に入り込むことができる。また、入り込む量は基板温度だけでなく、蒸気の入射速度、蒸気温度等によっても制御できる。これらの入射速度や温度は蒸着原料を蒸発させる時の温度により制御することができる。
【0041】
(蛍光体の気相成長法)
また、本発明に係る蛍光体層は気相成長法によって形成される。蛍光体の気相成長法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0042】
本発明においては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0043】
第1の方法の蒸着法は、まず基板を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とする。次いで、前記蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記基板表面に蛍光体を所望の厚さに成長させる。この結果、結着剤を含有しない蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて蛍光体層を形成することも可能である。
【0044】
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器、あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、基板上で目的とする蛍光体を合成すると同時に蛍光体層を形成することも可能である。
【0045】
蒸着終了後、必要に応じて前記蛍光体層の基板側とは反対の側に保護層を設けることにより、本発明に係る放射線像変換パネルが製造される。なお、保護層上に蛍光体層を形成した後、基板を設ける手順をとってもよい。
【0046】
更に前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体(基板、保護層または中間層)を冷却あるいは加熱してもよい。また、蒸着終了後、蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法においては、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0047】
第2の方法としてのスパッタリング法は、蒸着法と同様、保護層または中間層を有する基板をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いで、スパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより前記基板上に蛍光体層を所望の厚さに成長させる。前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0048】
第3の方法としてCVD法があり、また第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0049】
また、前記気相成長における蛍光体層の成長速度は0.05〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には、本発明に係る放射線像変換パネルの生産性が悪く好ましくない。また、成長速度が300μm/分を越える場合には、成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。
【0050】
放射線像変換パネルを前記の真空蒸着法、スパッタリング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線像変換パネルが得られ好ましい。
【0051】
前記蛍光体層の膜厚は放射線像変換パネルの使用目的によって、また蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50μm〜1mmであり、好ましくは100〜800μmであり、更に好ましくは100〜700μmである。
【0052】
上記の気相成長法による蛍光体層の作製にあたり、蛍光体層が形成される基板の温度は40℃以上に設定することが好ましく、更に好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは100〜400℃である。
【0053】
(封止−保護フィルム)
保護フィルムは蛍光体層を防湿し、蛍光体層の劣化を抑制するためのもので、透湿度の低いフィルムから構成される。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いることができる。PETの他には、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等を用いることができる。また、必要とされる防湿性に合わせて、これらフィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層した構成とすることもできる。
【0054】
また、放射線像変換パネルの基板側と蛍光体層側の互いに対向する面には、互いを融着して封止するための融着層が形成されている。融着層としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムを使用できる。例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロペレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられるが、これに限られたものではない。
【0055】
放射線像変換パネルを上下の保護フィルムで挟み、減圧雰囲気中で上下の保護フィルムが接触する端部を融着することにより封止することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0057】
実施例1
〔放射線像変換パネル1の作製〕
蛍光体原料として、酸化臭化ユーロピウム(EuOBr)粉末1.7g、及び臭化セシウム(CsBr)粉末1000gをそれぞれ秤量し、相対湿度25%の環境下で混合した。このときの蛍光体原料CsBrの安息角は51°であった。
【0058】
次に、このように混合した蛍光体原料を抵抗加熱ルツボに取り、蒸着装置内を真空排気して高真空度にした後、Arガスを導入して、1.0×10-2Paになるように真空度を調整した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して2μm/分の速度で蛍光体原料を蒸着し、CsBr:Eu蛍光体を堆積させた。蒸着終了後、装置内を大気圧に戻し、装置から基板を取り出した。アルミ基板上には、蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蛍光体層(層厚:150μm)が形成されていた。
【0059】
このようにして得られた蛍光体プレートを防湿性保護フィルムを用いて覆い、減圧下で前記防湿生保護フィルム周辺部をインパルスシーラーにより融着、封止して、放射線像変換パネル1を作製した。
【0060】
〔放射線像変換パネル2の作製〕
放射線像変換パネル1の作製において、臭化セシウム(CsBr)に代えて、ヨウ化セシウム(CsI)を用い、蛍光体原料の安息角が表1に記載の値になるように、蛍光体原料を混合時の相対湿度、調湿時間を調整した以外は、同様にして放射線像変換パネル2を作製した。
【0061】
〔放射線像変換パネル3〜7の作製〕
放射線像変換パネル1の作製において、蛍光体原料の安息角が表1に記載の値になるよう、蛍光体原料混合時の相対湿度、調湿時間を調整した以外は、同様にして放射線像変換パネル3〜7を作製した。
【0062】
〔評価〕
(安息角)
1)円筒形ガラスサンプル管(以下「サンプル管」と称す)に試料を充填後、サンプル管を平面台上に横たえ、サンプル管内の粉体表面(サンプル管壁面と接していない面)と平面台が平行になるよう調整する。
【0063】
2)4秒/回転の速度でサンプル管を転がし、粉体表面が崩れた瞬間の平面台と粉体表面との角度を分度器を用いて計測し、表1に記載した。
【0064】
放射線像変換パネル1〜7について、下記のように評価した。
【0065】
(鮮鋭性)
各々作製した放射線像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。MTFは放射線像変換パネル試料にCTFチャートを貼付した後、放射線像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は2.0lp/mmのMTF値を足し合わせた値で示す。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(輝度)
輝度はコニカミノルタ(株)製Regius350を用いて評価を行った。鮮鋭性評価と同様にX線をタングステン管球にて80kVp、10mAsで爆射線源とプレート間距離2mで照射した後、Regius350にプレートを設置して読みとった。得られたフォトマルからの電気信号を元に相対評価を行った。放射線像変換パネル7の輝度1.0とし、その他の試料はその相対値で表した。
【0067】
【表1】

【0068】
表1より、本発明の製造方法による放射線像変換パネルは、輝度、鮮鋭性ともに比較の放射線像変換パネルより優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体原料を含む蒸着源を加熱し、発生する物質を基板上に蒸着させることにより蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体原料の安息角が20°以上90°以下であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法によって得られることを特徴とする放射線像変換パネル。
【請求項3】
前記放射線像変換パネルにおける蛍光体層が下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の放射線像変換パネル。
一般式(1) M1X・aM2X′・bM3X″:eA
(式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の3価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0≦e≦0.2の範囲の数値を表す。)

【公開番号】特開2008−298577(P2008−298577A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144903(P2007−144903)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】