放射線撮像装置
【課題】 放射線撮像装置において、半導体放射線検出器の電極間の寄生容量の影響を抑制し、放射線検出信号の波高値を正しく補正する。
【解決手段】 放射線検出部101は、4行×4列に配置された半導体検出器1を備える。半導体検出器1は、半導体母材4、および半導体母材4を挟んで互いに対峙するアノードの電極膜(第1電極膜)およびカソードの電極膜(第2電極膜)を備える。各第1電極膜には、第1導電部材が別々に設置される。行内の4個の半導体検出器1の各第2電極膜は1つの第2導電部材で接続される。列内の4個の半導体検出器1に設けられる各第1導電部材と配線14で接続されるシェイピングアンプ12Bは、第2導電部材に配線13で接続されるシェイピングアンプ12Aのシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムで波形整形処理を行う。
【解決手段】 放射線検出部101は、4行×4列に配置された半導体検出器1を備える。半導体検出器1は、半導体母材4、および半導体母材4を挟んで互いに対峙するアノードの電極膜(第1電極膜)およびカソードの電極膜(第2電極膜)を備える。各第1電極膜には、第1導電部材が別々に設置される。行内の4個の半導体検出器1の各第2電極膜は1つの第2導電部材で接続される。列内の4個の半導体検出器1に設けられる各第1導電部材と配線14で接続されるシェイピングアンプ12Bは、第2導電部材に配線13で接続されるシェイピングアンプ12Aのシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムで波形整形処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射された放射線を検出し、その検出信号を出力する半導体放射線検出器を備えた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Si、Ge、CdTeなどを用いた半導体放射線検出器では、放射線が検出器物質に対して起こす電離作用で発生する複数の電子と正孔の両方を収集し、電気信号(一般に電圧パルス)とすることで、放射線のエネルギー、入射タイミング、入射個数、入射位置などの情報を得る。
信号誘起電荷は半導体内での電荷の移動とともに信号読出電極に生成するため、半導体内部の不純物準位などによる電荷の捕獲や再結合が起これば、その電荷は電荷を生成した放射線の信号に寄与しなくなる。この捕獲や再結合による信号の欠損現象を捕獲欠損とする。
CdTeやHgI2などの化合物半導体素子を用いた半導体放射線検出器では、一般に正孔の移動度が電子の移動度と比較して著しく小さく、正孔が収集されるまでの時間は捕獲までの平均寿命に対し不充分な短さとなる。捕獲までの平均寿命には従って、正孔が長時間で収集されるときに捕獲欠損が大きい。
電子はアノードに、正孔はカソードに収集されるため、放射線反応位置がアノードに近いときに正孔が長距離(長時間)をかけて収集され、捕獲欠損が最も顕著となる。逆に、放射線反応位置がカソードに近いときには、電子の収集は長距離でも移動度が大きいため、ほぼ捕獲欠損を起こさず、正孔も短距離で収集されるため捕獲欠損が小さい。
従って、出力信号は半導体内での放射線の相互作用位置に依存して変化し、同じ入力エネルギーに対して、異なる出力信号が得られることとなり、エネルギー分解能劣化の大きな原因となる。
【0003】
エネルギー分解能の劣化を解消するために、半導体放射線検出器に2つのシェイピングアンプをそれぞれ接続し、1つの放射線入射事象に対し、それぞれのシェイピングアンプの出力信号を用いることによって捕獲欠損を補正する方法がある。すなわち、一方のシェイピングアンプに電荷収集時間に対し不十分な長さのシェイピングタイムを持たせ、一般に弾道欠損と呼ばれる捕獲欠損と強い相関を持つ信号欠損を意図的に発生させることで、各事象ごとにシェイピングアンプの出力信号の波高値を補正する(例えば特許文献1参照)。これによって、ある移動度、寿命、アノード・カソード電極間距離の組み合わせに対し、捕獲欠損が顕著になる低い印加電圧で高いエネルギー分解能を得ることが可能となる。
また、特許文献2は、複数の半導体放射線検出器を複数列、複数行に配置し、各列毎に、列に含まれた各半導体放射線検出器の第1電極を第1配線で接続し、各行毎に、行に含まれた各半導体放射線検出器の第2電極を第2配線で接続した放射線撮像装置を記載する。複数の第1配線および複数の第2配線にそれぞれシェイピングアンプを接続し、これらのシェイピングアンプの出力を同時性判定装置に入力する。また、第1配線に接続されたシェイピングアンプの出力を、積分回路および増幅器を含み波形整形を行う主増幅器、および微分回路を含み波形整形を行う補助増幅器(時定数は主増幅器のそれよりも短い)にそれぞれ入力する。特許文献2に記載された放射線撮像装置は、主増幅器および補助増幅器のそれぞれの出力信号の波高を比較して弾道欠損を推測し、この弾道欠損を用いて主増幅器の出力信号の波高を補正する。
【特許文献1】特開昭61−14590号公報(第5頁、第1図)
【特許文献2】特開昭61−14591号公報(第2図(a)、第2図(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体放射線検出器を実際の装置、例えば、放射線撮像装置などに設置する場合には、高位置分解能と高感度を兼ね備える必要があるために、半導体放射線検出器の稠密な実装が必須となる。これにより、隣接する半導体放射線検出器の電極間に十分な間隔を設けることが困難になり、大きな寄生容量が発生してしまうという新たな問題の発生を発明者らは見出した。そして、その電極に接続されるシェイピングアンプにおける波形整形処理の特性が劣化してしまい、放射線検出信号の波高値を正しく補正することができなくなる。
【0005】
本発明の目的は、半導体放射線検出器の電極間に発生する寄生容量の影響を抑制でき、半導体放射線検出器をより稠密に配置できる放射線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、半導体部材を挟むようにして半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有する複数の半導体放射線検出器が、ある一方向の配列内で、第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置され、
その一方向の配列内において互いに電気的に接続されている複数の半導体放射線検出器の第2電極に接続されて第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置の、波形整形処理を行うシェイピングタイムが、第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されていることにある。
【0007】
本発明は、発明者らが、その一方向の配列内において電気的に接続されていなくて向き合っている第1電極間で大きな寄生容量が発生すること、および波形整形装置はシェイピングタイムが短くなるにつれ寄生容量の影響を急激に受け、大きな電気的ノイズを発生することを発見し、この課題の解決案を見出すことによってなされたものである。
その一方向の配列内で互いに電気的に接続されている第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置の、波形整形処理を行うシェイピングタイムが、第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定することで電気的ノイズの増加を回避し、、第1出力信号および第2出力信号の各波高値に基づいて第1出力信号の波高値を補正することによって、第1出力信号の波高値の精度を高めることができ、エネルギー分解能を向上させることができる。
【0008】
本発明は、このように電気的に接続されない状態で向き合っている第1電極間に発生する寄生容量の影響を抑制できるため、半導体放射線検出器をより稠密に配置することができる。
第1出力信号の波高値の補正は、具体的には、第1出力信号の波高値と第2出力信号の波高値の差である弾道欠損に基づいて捕獲欠損を求め、この捕獲欠損を用いて第1出力信号の波高値を補正することによって行われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隣り合う半導体放射線検出器で電気的に接続されない状態で向かい合っている第1電極間に発生する寄生容量の影響を抑制できるため、複数の半導体放射線検出器をより稠密に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1ないし図3を参照して、半導体放射線検出器(以下、「半導体検出器」という)の原理について説明する。次に、図4ないし図8を参照して、半導体検出器を備えた半導体放射線検出装置(以下、「半導体検出装置」という)における増幅および波形整形の処理について説明する。そして、図9ないし図11を参照して、本発明の好適な一実施形態である放射線撮像装置について説明する。
【0011】
≪半導体検出器の原理≫
図1に示すように、半導体検出器1は、半導体母材4、および半導体母材4に取り付けられたアノード電極23(以下、電極23という)、カソード電極24(以下、電極24という)を備え、更に、電極23および電極24が高圧電源5に接続されて構成される。電極23は、高圧電源5のプラス側に接続される。電極24は、高圧電源5のマイナス側に接続される。半導体母材4は、電極23と電極24との間に介在しており、高圧電源5によって2つの電極間に所定の電圧が印加されている。なお、電極23および電極24は、例えば、数mm×数mmの導電性金属板である。半導体母材4は、例えば、約1mmの厚さを持つ素子である。また、図2以降では、高圧電源5の図示を省略する。
【0012】
電極23と電極24との間に電圧が印加された状態で半導体母材4に放射線の1種であるγ線6が入射されて、相互作用(光電効果、コンプトン散乱、電子対生成のいずれか)が生じると、発生した電子が半導体母材4を電離し、その反応箇所近傍に複数の電子7や正孔8を発生させる。電子7は電極23に向かって移動し、正孔8は電極24に向かって移動する。このとき、電子7と正孔8が離れるに従い、電極23、電極24に誘起電荷が生成される。この誘起電荷を後段回路の処理により信号として用いる。平行平板型半導体検出器(平板の電極23および電極24が平行に配置された半導体検出器)の場合、理想的には誘起電荷総量は生成電荷に等しく、電子7と正孔8の寄与率はその移動距離に比例する。実際には、高圧電源5の電圧の大きさ、半導体母材4の厚さ、γ線6の入射位置によって発生する誘起電荷に損失が起きるため、後段の回路の出力信号電圧に損失が発生する。この出力信号電圧の損失を捕獲欠損という。以下、半導体母材4に対するγ線6の相互作用のことを単に入射という。
【0013】
図2は、半導体母材におけるγ線の入射位置による電荷収集の様子を示している。ここで、半導体母材4の厚さをd[mm]とする。また、電極24とγ線6の入射位置との間の距離をxとする。
x≒0、すなわち、γ線6が電極24の直近に入射した場合は、電子7は電極23まで長距離を移動する。正孔8は発生するが、すぐに電極24に到達し、移動距離は非常に小さい。
0<x<d、すなわち、γ線6が電極24と電極23との中間に入射した場合は、電子7および正孔8が発生し、電子7が電極23まで移動し、正孔8が電極24まで移動する。
x≒d、すなわち、γ線6が電極23の直近に入射した場合は、正孔8は電極24まで長距離を移動する。電子7は発生するが、すぐに電極23に到達し、移動距離は非常に小さい。
【0014】
図3は、半導体母材4におけるγ線の入射位置によるγ線検出信号の違いを示している。図3(a)〜(c)の各グラフは、横軸を時間、縦軸を出力信号電圧とし、γ線検出信号(誘起電荷信号)の時間的変化を示す。生成電荷数と等量の誘起電荷信号が得られたとき、すなわち、捕獲欠損のない出力信号電荷が得られたとき、その電荷に比例する後段回路の出力信号電圧を100Eと表すこととする。ただし、生成電荷数は入力エネルギーを単純に平均電子正孔対生成エネルギーで割った値とし、生成電荷数の統計的ばらつきや電気的ノイズは十分小さい場合を考える。
【0015】
図3(a)は、x≒0の場合を示す。x≒0のケースでは、正孔8はごく短距離で電極24に収集されるため、誘起電荷は電子7の移動に伴ってのみ発生する。電子7の移動度が大きいため、信号電圧の立ち上がり時間は短い値(例えば、30nsec)になる。従って、信号電圧はほぼ100Eまで上昇する。
図3(b)は、x≒dの場合を示す。x≒dのケースでは、出力信号電圧の大部分が正孔8によって発生するので、正孔8の移動速度が遅い分、出力信号電圧の立ち上がり時間が長い値(例えば、300nsec)になる。また、正孔8の移動度が低いため、収集経路において一部の正孔8が捕獲され、その一部の正孔8は誘起電荷の生成に寄与しなくなる。言い換えれば捕獲欠損が発生する。例えば誘起電荷に5%の捕獲欠損があった場合、後段回路の出力信号電圧も5%の捕獲欠損を受け、95Eとなる。
図3(c)は、0<x<dの場合を示す。0<x<dのケースでは、電子7による信号と、正孔8による信号の加算となるため、立ち上がりの開始から終了までの出力信号電圧が2つの傾きを持つ。また、捕獲欠損はx≒0のケースおよびx≒dのケースの中間の値となり、立ち上がった後の出力信号電圧もx≒0のケースおよびx≒dのケースの中間の値となる。
実際には移動度のみではなく、移動度μと寿命τの積(μτ積)を考えるべきであるが、移動度が異なれば上記シェイピングタイム長短によるエネルギー補正を用いることができるため、簡単のため移動度の違いのみで同様の議論を行う。逆に言えば、電子と正孔で移動度が非常に近く、寿命のみが大きく異なる場合には以下の補正方法は適用できない。
【0016】
図3(b)に示すような捕獲欠損を補正するには、立ち上がり時間を用いるのが一般的である。ノイズなどの影響を避けるため、実際に計測する立ち上がり時間としては、その信号電圧の最大値(波高値)に対する割合が10%から90%になるまでの時間を用いることが多い。
例えば、立ち上がり時間が30[nsec]であれば、電子7の信号に対する寄与率が100%であり、捕獲欠損が1%であるとみなして、波高値を(100%/99%)倍する補正処理を行う。また、立ち上がり時間が300[nsec]であれば、正孔子8の寄与率が100%の信号であり、捕獲欠損が10%であるとみなして、波高値を(100%/90%)倍する補正処理を行う。このような補正処理により、真の信号値に近い値が得られる。
【0017】
CdTeのような電子と正孔の移動度および捕獲寿命を持つとき、図3(a)および(b)で説明した半導体検出器1の特性によれば、出力信号電圧の立ち上がり時間が短いときは捕獲欠損が小さく、逆に、出力信号電圧の立ち上がり時間が長いときは捕獲欠損が大きくなる。
しかしながら、立ち上がり時間を得るためには複雑な後段回路が必要となり、立ち上がり時間を取得する方法に比べて、以下に説明する方法では簡便な回路構成で同等以上の効果が得られる。
【0018】
≪半導体検出装置における増幅および波形整形の処理≫
図4に示すように、半導体検出装置10は、半導体検出器1、チャージアンプ11,11、シェイピングアンプ12,12、信号処理装置20を含んでいる。半導体検出器1の電極23および電極24のそれぞれにチャージアンプ11が接続される。それぞれのチャージアンプ11にシェイピングアンプ12がそれぞれ接続されている。
チャージアンプ11は、半導体検出器1が出力するγ線検出信号(誘起電荷信号)を受けて、その電荷量に比例する信号電圧を出力する増幅器である。シェイピングアンプ12は、チャージアンプ11の出力信号電圧を入力し、所定の波形整形処理を行った出力信号電圧を出力する回路である。
シェイピングアンプ12には、シェイピングアンプ12の出力信号電圧を入力して、この出力信号電圧に対して所定の信号処理を行う信号処理装置20が接続される。また、同時性判定装置21が信号処理装置20に内蔵されている。図4は、信号処理装置20が内蔵された場合を示す。同時性判定装置21は、信号処理装置20の外部に配置して信号処理装置20に接続することも可能である。
【0019】
同時性判定装置21は、電極23および電極24から出力されたγ線検出信号が同一のγ線6によるものであることを、2つのγ線検出信号が設定された時間幅内に入っていることで確認する。同時性判定装置21は、リアルタイムに同時であるか否かを判定するハードウェア(同時計測回路、コインシデンス(coincidence)回路などと呼ぶ)を設けたり、トリガ検出時刻情報をすべての信号に付加し、ソフトウェアで時刻情報を参照して同時性を判定したりすることによって実現される。同時性判定の基準となる時間幅は、異なるγ線6がランダムに(非周期的に)入射するときには、偶発的に狭い時間幅に入る確率を考慮して十分小さくする必要がある。具体的には、例えば1ピクセル(γ線を検出する半導体母材の単位)に1000[カウント/sec]の計数率の場合、時間幅は平均入射間隔である1/1000[sec]の更に1/100以下程度に設定する。
【0020】
シェイピングアンプ12は、良いSN比(信号対雑音比)で増幅および波形整形を行う回路である。指定の時定数で積分と微分を行うことができるが、多くのケースでは積分時定数と微分時定数は同じ値とする。以下、両者の等しい時定数をシェイピングタイムと呼ぶ。シェイピングアンプ12の他の役割を以下に示す。
第1に、入射時刻から数えてシェイピングタイムの数倍程度の短時間で信号電圧をベースライン(例えば信号電圧≒0)に戻すことである。これにより、入射時刻が異なる他のγ線による信号電圧の影響を受ける時間を短くすることができ、高頻度の放射線入射に対応することができる。
第2に、出力信号電圧の波高値を増幅する(例えば、数十mVを数Vにする)ことである。これにより、信号処理装置20が容易に取り扱える出力信号電圧を得る。
第3に、出力信号電圧をそのピークの前後において、平滑にすることである。これは、信号処理装置20が波高値を精確に把握できるようにするためである。
シェイピングアンプ12も入力信号電圧に比例した信号電圧を出力し、理想的にはシェイピング出力電圧信号∝チャージアンプ出力電圧信号∝(誘起電荷量=生成電荷量)∝入射エネルギーとなる。
【0021】
図5(a)は、チャージアンプ11の出力信号電圧である。チャージアンプ11は信号電荷を積分し電圧信号に変換するものであり、その時間変化は理想的には入力された誘起電荷信号と同じになる。実際には若干の積分時定数で立ち上がりが鈍り、また、出力信号電圧の飽和を防ぐため、ある程度の時定数で放電(discharge)が行われる。このため、チャージアンプ11の出力信号電圧は、時間経過と共にベースラインに戻っていく。シェイピングタイムに対して十分長い時定数を持たせることによって、図5(a)の範囲内では出力信号電圧の減少を無視することができる。
図5(b)は、シェイピングアンプ12の出力信号電圧である。これは、図5(a)のチャージアンプ11が出力する出力信号電圧に対して、前記波形整形処理を行ったものである。一般的なセミガウシアンフィルタでは、シェイピングタイム程度の立ち上がり時間を持ち、その数倍程度でベースラインに復帰する。
【0022】
複数のシェイピングアンプを利用することによって、捕獲欠損の量を推定する方法について述べる。推定した捕獲欠損量に基づき補正処理を行えば、入射エネルギーに対し比例性の良い、すなわちエネルギー分解能の良い出力信号を得ることができる。その捕獲欠損の量を推定する方法について説明する。
【0023】
図6(a)は、異なるシェイピングタイムに対する、シェイピングアンプ12の出力信号電圧の最大値(以下、波高値)の違いを示している。チャージアンプ11の出力信号電圧の立ち上がり時間(≒電荷収集時間)に対して、シェイピングタイムが十分に長い(〜数倍以上)場合には、シェイピングアンプ12の波高値は、チャージアンプ11の波高値、すなわち、入射したγ線のエネルギー(入射エネルギーという)にほぼ比例した値になる。
しかし、シェイピングタイムが立ち上がり時間より短くなるに従って、そのときのシェイピングアンプ12の出力信号電圧の波高値は、前記の入射エネルギーに比例した波高値よりも低い値となる。この、シェイピングタイムを早くすることで信号を伝達しきれずに起きる信号の欠損を弾道欠損という。
【0024】
図6(b)は、シェイピングタイムが長い場合(L)およびシェイピングタイムが短い場合(S)におけるそれぞれのγ線6の入射位置とシェイピングアンプ12の出力信号電圧との関係を示している。このグラフは、横軸をγ線6の入射位置として電極24からの距離(図2に示すx)とし、縦軸をシェイピングアンプ12の出力信号電圧の波高値とする。また、損失のない場合のシェイピングアンプ12の出力信号電圧を100Eとする。
x≒0(電極24の直近)では捕獲欠損も弾道欠損も非常に小さく、信号電圧がほぼ100Eとなる。
【0025】
従来法の計測では図4に示す2つのシェイピングアンプ12のそれぞれのシェイピングタイムを弾道欠損が無視できるほど長くとっている。この場合には、特性L(図6(b))に示すように、γ線6の入射位置がx≒d(電極23の直近)に近付くにしたがって捕獲欠損が大きくなる。これがエネルギー分解能の劣化の原因である。
これに対し、図4の構成において、例えば、電極23につながるシェイピングアンプ12のシェイピングタイムを弾道欠損が無視できるほど長くとり、電極24につながるシェイピングアンプ12のシェイピングタイムを弾道欠損が顕著になるほど短くし、捕獲欠損に弾道欠損を加えた出力信号電圧を考える。γ線6の入射位置がx≒dに近付くにしたがって、出力信号電圧は、特性S(図6(b))に示すように、捕獲欠損および弾道欠損を合わせた分、下降する。このように、意図的に弾道欠損を起こさせた、短いシェイピングタイムによる出力信号電圧を用いることで捕獲欠損を補正することができる。以下に2つの同エネルギーに見える信号の上記補正による見分け方の具体例を示す。
【0026】
図7に捕獲欠損の分布を持つエネルギースペクトルを示す。横軸をシェイピングアンプの出力信号電圧、縦軸をその出力信号電圧をとる頻度とする。横軸の出力信号電圧の値は、例えば、ADC(Analog-to-Digital Converter)によって0〜10Vのアナログ値を4096段階にデジタル化したものである。理想的にはこの出力信号電圧の値は、γ線6の入射エネルギーに比例する。縦軸の検出回数の値は、デジタル化された各段階に対応するアナログ値の範囲ごとに、その範囲の出力信号電圧を検出した回数を示すものである。
【0027】
ここで、例えば、95Eという出力信号電圧を検出したときに、2つのケースが考えられる。第1のケースは、入力エネルギーが100Eであったが、捕獲欠損が5Eであったため、100−5=95Eとなったものである。第2のケースは、入力エネルギーが95Eであり、捕獲欠損がほぼ0Eであったものである。ところが、1つのシェイピングアンプ12の出力信号電圧だけでは、第1のケースであるのか、第2のケースであるのかを見分けることができない。
【0028】
そこで、シェイピングタイムが異なる2つのシェイピングアンプ12でそれぞれ波形整形処理を行い、それぞれの処理で得られた2つの信号電圧を比較することによって、捕獲欠損の量を推定する。2つのシェイピングタイムは、次のように設定する。1つのシェイピングアンプ12には、長いシェイピングタイム(第1シェイピングタイム)、すなわち、正孔8が電極23から電極24まで移動したときの収集時間(≒立ち上がり時間)の数倍(具体的には4倍程度)となるシェイピングタイムを設定する。これは、弾道欠損を無視できる程度に抑えるためである。また、他の1つのシェイピングアンプ12には、短いシェイピングタイム(第2シェイピングタイム)、すなわち、前記収集時間の1倍以下(具体的には0.3〜1倍)となるシェイピングタイムを設定する。これは、弾道欠損を数十%発生させるためである。第2シェイピングタイムは第1シェイピングタイムよりも短くなっている。なお、これらのシェイピングタイムの設定値は、半導体母材4の種類と電気的に接続された状態にない電極間の距離および高圧電源5の電圧値によって特定することができる。
【0029】
図8(a)に示すように、上記のようにシェイピングタイムが異なる2つのシェイピングアンプ12のそれぞれで得られた出力信号電圧の波高値H1,H2に差が生じる。この波高値の差は弾道欠損によるものである。弾道欠損の量はシェイピングアンプ12の特性から計算することができる。算出された弾道欠損の量と設定した2つのシェイピングタイムに基づいて、γ線検出信号(誘起電荷信号)の立ち上がり時間を推定できる。その立ち上がり時間が分かれば、γ線検出信号(誘起電荷信号)に対する電子と正孔の寄与率の推定が可能であり(図3参照)、従って捕獲欠損の量を計算することができる。先の例の図8(a)では弾道欠損が大きいことから捕獲欠損が大きい、第1の場合であることを推定できる。
一方、図8(b)では、2つのシェイピングタイムによって得られた2つの出力信号電圧のそれぞれの波高値H1に差がなく、すなわち、弾道欠損がないことが分かる。このことから、信号が速く、電子7の寄与率が非常に大きく、従って捕獲欠損が非常に少ない信号出力であることが分かる。これによって、図8(b)は、捕獲欠損のない第2の場合であると推定することができる。
【0030】
実際には、図12に示すようにシェイピングタイムが異なるシェイピングアンプ12の特性から出力比曲線を計算し、近似曲線群(代表として100E、75E、50Eを図示したが、その他の部分にも連続的に存在する)を用いてソフトウェア的に補正した入力エネルギー値を得られる。また、ハードウェアで簡易的に例えば回転に相当するような処理のみで補正を行っても良い。
簡便のため、複数の欠損は和として表した。実際には複合欠損は1−(1−捕獲欠損)×(1−弾道欠損)のように表される。捕獲欠損および弾道欠損が小さいとき、その式で得られる複合欠損は捕獲欠損と弾道欠損の和にほぼ等しくなる。
このように短いシェイピングタイムの出力を利用することで、未知の値であった捕獲欠損量を計算し補正を行うことができる。しかし、問題はその補正を行うとき、シェイピングタイムを短くするとき、寄生容量の影響でシェイピングアンプ12のノイズが非常に大きくなることである。この寄生容量の影響を抑制できる波高値の補正を適用した放射線撮像装置の実施形態を以下に述べる。
【0031】
≪放射線撮像装置への適用≫
図9は、本発明の好適な実施の形態に係る放射線撮像装置の一種である核医学診断装置の一例のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置を、図9、図10および図11を用いて以下に説明する。ここで、放射線撮像装置とは、患者などの被検体にRI(Radio Isotope、放射性同位元素)によって標識された放射性薬剤を投入し、そのRIから放出されるγ線を検出して、被検体内のRI分布を取得する装置である。SPECT装置100は、支持部材11に旋回可能に設置された回転支持台105、回転支持台105に向き合うように設置された一対のカメラヘッド部109、長手方向に移動可能なベッド106、複数の半導体検出装置10、複数の信号処理装置20、データ収集解析装置103および表示装置50を備える。カメラヘッド部109は、回転支持台105から、ベッド106の長手方向に突出している。被検体である被検者Pを載せるベッド106は対向する2つのカメラヘッド部109の間に挿入される。カメラヘッド部109は、回転支持台105に設置されて回転支持台105の半径方向に移動可能な支持部材(図示せず)、複数セットの半導体検出装置10、複数の信号処理装置20およびコリメータCMを有する。複数セットの半導体検出装置10、複数の信号処理装置20およびコリメータCMは、その支持部材に設置される。コリメータCMは、多数の貫通孔(放射線通路)を有し、ベッド106に面して配置される。半導体検出装置10(図10参照)に含まれる放射線検出部101の各半導体検出器1は、コリメータCMの後段に配置され、コリメータCMの貫通孔を通過する放射線(γ線)を入射する。
【0032】
カメラヘッド部109は遮光・電磁シールド104を有している。コリメータCM、半導体検出装置10および信号処理装置20は、遮光・電磁シールド104内に収められている。放射線以外の電磁波、およびコリメータ以外の方向から来る放射線は、遮光・電磁シールド104で遮断されるため、半導体検出器1で検出されず、信号処理装置20、後述のチャージアンプおよびシェイピングアンプに対してノイズとして入力されない。遮光・電磁シールド104は、コリメータCMの交換、取り外しの際には開閉することができる。
【0033】
それぞれの半導体検出装置10は、放射線検出部101、4個ずつのチャージアンプ11A,11B、および4個ずつのシェイピングアンプ12A,12Bを有している。放射線検出部101は、4行×4列に配置された16個の半導体検出器1を含んでいる。
【0034】
放射線検出部101の構成を、図11を用いて詳細に説明する。半導体検出器1は、半導体母材4、アノードの導電部材2、アノードの電極膜15およびカソードの電極膜17を有する。電極膜(アノード電極)15および電極膜(カソード電極)17が半導体母材(半導体部材)4を間に挟んで向き合うように半導体母材4に形成される。電極膜15、17は、導電性の金属(例えば、インジウム等)を半導体母材4の表面に蒸着することにより形成される。このように構成された16個の半導体検出器1が4行4列の正方格子状に配置される。すなわち、図10に示すように、左右方向に複数列の半導体検出器1の配列が、上下方向に複数行の半導体検出器1の配列が存在する。各列内で、隣り合う半導体検出器1同士は電極膜15が向き合うように配置される。導電性接着剤により向き合っている2つの電極膜15が、導電性接着剤によりアノードの1つの導電部材2にそれぞれ取り付けられる。カソードの導電部材3が行内の4個の半導体検出器1のそれぞれの電極膜17に導電性接着剤により取り付けられる。放射線検出部101では、導電部材2は半導体検出器1二個ずつに別々に設けられているが、導電部材3は行内の4個の半導体検出器1で共有されている。放射線検出部101の中央部に位置する一対の導電部材3は、非常に狭い間隔(例えば、200μm)を持って互いに向き合っている。導電部材2、3は、導電性の金属(例えば、銅)で構成される。絶縁材16が各導電部材3を被覆している。これによって、隣接する導電部材3の相互間が絶縁される。図1に示す高圧電源5のプラス側がそれぞれの導電部材2に接続され、高圧電源5のマイナス側がそれぞれの導電部材3に接続される。半導体検出器1の電極膜15と電極膜17の間に200Vの電圧が、高圧電源5より印加される。導電部材2および導電部材3のいずれをグランドにしてもよい。非グランド側(高圧側)の導電部材にチャージアンプ11を接続するときには耐圧性のよい容量器でAC結合させ、導電部材2と高圧電源5との間には容量結合の抵抗成分に比べて十分大きい抵抗を入れる。
【0035】
放射線検出部101に含まれる各半導体検出器1は、半導体検出器1の一面(図10の紙面に直交する方向で裏側になる面)で支持基板(図示せず)に取り付けられる。電極膜15,17および導電部材2,3が、その支持基板に対して垂直になるように、支持基板に取り付けられている。この支持基板は、カメラヘッド部109の前述の支持部材に設置される。支持基板に設けられた配線13A,13B,13C,13Dが、各行の半導体検出器1の配列に設けられたそれぞれの導電部材3に別々に接続される。支持基板に設けられた配線14A,14B,14C,14Dが、各列の4個の半導体検出器1に設けられた各導電部材2に接続される。
【0036】
信号処理装置20は、図示していないアナログデジタル変換器(ADC)、および同時性判定装置21を含んでいる。配線13A,13B,13C,13Dは、チャージアンプ11A、及びシェイピングアンプ12Aをそれぞれ介して信号処理装置20のADCに接続される。ADCは同時性判定装置21に接続されている。配線14A,14B,14C,14Dは、チャージアンプ11B、及びシェイピングアンプ12Bをそれぞれ介して信号処理装置20のADCに接続される。ADCは同時性判定装置21に接続される。導電部材3は、ある一方向に配置された複数の半導体検出器1(具体的には行に配置された4個の半導体検出器1)を接続し、配線14Aはその一方向と交差する方向(具体的には直交する方向)に配置された複数の半導体検出器1(具体的には列に配置された4個の半導体検出器1)を接続する。配線14B,14C,14Dも、その一方向と交差する他の列の4個の半導体検出器1を接続している。
各行の半導体検出器1の配列において、隣接する電極膜15同士、および導電部材2同士をそれぞれ絶縁する。本実施形態では、カソードの導電部材3側をグランドとしている。しかし、アノードの導電部材2側をグランドとしてもよい。
【0037】
数百セットの半導体検出装置10の各放射線検出部101のそれぞれの配線13A,13B,13C,13D、および配線14A,14B,14C,14Dは、上記したように、1つの信号処理装置20の同時性判定装置21に接続される。その信号処理装置20の同時性判定装置21は、データ収集処理装置30aに接続される。データ処理装置30aには、数百セットの半導体検出装置10が接続される信号処理装置20が数百個接続される。他のデータ処理装置30bにも、数百セットの半導体検出装置10が接続される信号処理装置20が数百個接続される。データ収集処理装置30a、30b等の複数のデータ収集処理装置は、画像データ作成装置40に接続される。表示装置50が画像データ作成装置40に接続される。前述のデータ収集解析装置103は、データ収集処理装置30a、30b等の複数のデータ収集処理装置、および画像データ作成装置40を含んでいる。チャージアンプ11A,11Bは前置増幅装置であり、波形整形増幅装置であるシェイピングアンプ12A,12Bは波形整形装置である。
ちなみに、カメラヘッド部109に設けられた多数の放射線検出部101はマトリックス状に配置される。列方向において隣り合う放射線検出部101同士は、電極膜17同士、具体的には導電部材3同士が向き合うように配置される。これらの導電部材3同士は、互いに電気的に接続されていない。
【0038】
チャージアンプ11A、11Bおよびシェイピングアンプ12A,12Bは、前述したように半導体検出器1が出力したγ線検出信号(誘起電荷信号)を電圧信号に変換し、増幅、整形する機能を有する。導電部材3に接続されたシェイピングアンプ12Aと、導電部材2に接続されたシェイピングアンプ12Bとは、シェイピングタイムが異なっている。すなわち、図6(a)に示すように、シェイピングアンプ12Aのシェイピングタイムは半導体検出器1から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)の立ち上がり時間(≒電荷収集時間)よりも長く設定される。この設定値は前述の第1シェイピングタイムに相当する。また、シェイピングアンプ12Bのシェイピングタイムはその立ち上がり時間よりも短く設定されている。この設定値は前述の第2シェイピングタイムに相当する。このため、シェイピングアンプ12Bのシェイピングタイムは、シェイピングアンプ12Aのそれよりも短い。
【0039】
シェイピングアンプ12Bのシェイピングタイムをシェイピングアンプ12Aのそれよりも短くしている理由を、以下に説明する。
放射線検出部101における各半導体検出器1は、γ線の検出感度を高めるために稠密に配置する必要がある。このため、列内で隣り合う導電部材3の相互間の間隔は、数10〜300μmと狭くしなければならない。これらの導電部材3同士は、相互に電気的に接続されていなく、互いに面と面を向かい合わせるように配置することになる。したがって、その間隔は十分な間隔であるとは言えず、それらの導電部材3間に大きな寄生容量が発生してしまう。導電部材3間に発生する寄生容量は、例えば約5〜20[pF]である。その寄生容量によって、導電部材3に接続されたシェイピングアンプ12Aにおける波形整形処理の特性が劣化してしまう。その特性の劣化は、特に短いシェイピングタイムによる波形整形処理において顕著になるため、同じシェイピングタイムを有する12A,12Bを用いた場合における捕獲欠損補正において特に問題となる。それらの導電部材3間で寄生容量が発生することは、それらの導電部材3が取り付けられて互いに向き合っている2つの電極膜17間でも寄生容量が発生していることになる。
列内で向き合っている2つの電極膜15は導電部材2で互いに直流的に接続されているため、それらの電極膜15間では寄生容量は発生しない。なお、行において隣接する導電部材2同士は電極膜15の端部で向かい合っており半導体母材4に対向する面で向き合わないため、それらの導電部材2間で発生する寄生容量は非常に小さい。
【0040】
発明者らは、導電部材3間で発生する大きな寄生容量の影響を抑制できる手法を、種々、検討した。その結果、発明者らは、導電部材2に接続されるシェイピングアンプ12Bに設定されたシェイピングタイムをシェイピングアンプ12Aに設定されたそれよりも短くすることによって、導電部材3間で発生する寄生容量の影響を抑制でき、放射線撮像装置におけるエネルギー分解能を向上できることを発見した。この新たな知見を適用することによって、導電部材2に接続されたシェイピングアンプ12Bは、シェイピングアンプ12Aに設定されたシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムで波形整形処理を行う。
【0041】
SPECT装置100を用いた被検者Pの検査について、以下に説明する。放射性薬剤を投与された被検者Pを載せたベッド106は、長手方向に移動される。このベッド106の移動は、SPECT装置100が設置された部屋内で操作パネル107を操作することによって行われる。被検者Pは、対向するカメラヘッド部109間に位置される。また、操作パネル107より、カメラヘッド部109を回転支持台105の半径方向に移動させ、カメラヘッド部109と被検者Pとの距離を調整する。ベッド106の移動および半径方向におけるカメラヘッド部109の移動は、データ入出力装置108を用いて遠距離から行うことも可能である。検査時においては、回転支持台105がモーター(図示せず)の駆動により回転される。このため、一対のカメラヘッド部109は、ベッド106に載っている被検者Pの回りを旋回する。被検者Pに投与された放射性薬剤は、集積部(例えば、がんの患部)Cに集まりγ線6を放出する。
【0042】
このγ線6は、旋回しているカメラヘッド部109に設けられたある半導体検出器1にコリメータCMの貫通孔を通して入射される。γ線6は、半導体検出器1における、図10の紙面に直交する方向で表側になる面より、半導体母材4に入射される。電極膜15と電極膜17の間に300Vの電圧が印加されている。γ線6と半導体母材4との相互作用により発生した電子が電極膜15に向かって移動し、正孔が電極膜17に向かって移動する。電極膜15から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)は、導電部材2を経て、該当する配線14によりチャージアンプ11B、シェイピングアンプ12Bおよび信号処理装置20の同時性判定装置21に順次入力される。電極膜17から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)は、導電部材3を経て、該当する配線13によりチャージアンプ11A、シェイピングアンプ12Aおよび信号処理装置20の同時性判定装置21に順次入力される。
【0043】
チャージアンプ11Aは、導電部材2から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)を増幅して得られた出力信号電圧を出力する。シェイピングアンプ12Aは、チャージアンプ11Aの出力信号電圧を入力し、所定の波形整形処理を行って得られた出力信号電圧を出力する。この出力信号電圧は、信号処理装置20のADCにおいてデジタル信号に変換されて同時性判定装置21に入力される。このデジタル信号の波高値は、例えば、図8(a)に示すH2(または図8(b)に示すH1等)である。チャージアンプ11Bは、導電部材3から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)を増幅して得られた出力信号電圧を出力する。シェイピングアンプ12Aのシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムが設定されたシェイピングアンプ12Bは、チャージアンプ11Bの出力信号電圧を入力し、所定の波形整形処理を行って得られた出力信号電圧を出力する。この出力信号電圧も、信号処理装置20のADCにおいてデジタル信号に変換されて同時性判定装置21に入力される。このデジタル信号の波高値は、例えば、図8(a) (または図8(b))に示すH1である。
【0044】
信号処理装置20の同時性判定装置21は、数百セットの半導体検出部101の半導体検出器1に接続されるそれぞれのシェイピングアンプ12A,12Bの各出力信号電圧を入力し、各セット(放射線検出部101)ごとにγ線を検出した半導体検出器1の位置を特定する。例えば、16個の半導体検出器1のうち、図10において上から1行目で右から1列目に位置する半導体検出器1がγ線6を検出したとき、配線14Dおよび配線13Aにそれぞれ出力信号電圧が出力される。同時性判定装置21は、その2つの出力信号電圧が設定時間(例えば、1μs)内に到達したか否かを判定する。「設定時間内に到達した」と判定された場合は、その2つの出力信号電圧は、1つのγ線6の入射により同時に発生したγ線検出信号(誘起電荷信号)に基づいて発生したものである。そのγ線6を検出した半導体検出器1は、放射線検出部101において上記した上から1行目で右から1列目に位置する半導体検出器1であることが特定される。同時性判定装置21は、同時性判定で特定した、γ線6を検出した半導体検出器1の位置データ(位置情報)、この半導体検出器1の電極膜17からのγ線検出信号(誘起電荷信号)を配線13Aを介して入力したシェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値(ADCで変換されたデジタル値)、およびこの半導体検出器1の電極膜15からのγ線検出信号(誘起電荷信号)を配線14Dを介して入力したシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値(ADCで変換されたデジタル値)をデータ収集処理装置30aに送信する。この位置データは第1位置データという。なお、同時性判定装置21は信号処理装置20に外部接続されていてもよい。
【0045】
データ収集処理装置30aは、入力した、γ線を検出した半導体検出器1の第1位置データ、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を蓄積する。データ収集処理装置30aは、信号処理装置20に接続され、各信号処理装置20からのデータを収集する。そして、データ収集処理装置30aは、設定されたタイミングで、蓄積されている位置データ、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を画像データ作成装置40に送信する。なお、データ収集処理装置30bも、データ収集処理装置30aと同様の処理を行う。
【0046】
画像データ作成装置40は、データ収集処理装置30a,30bから第1位置データ、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を入力し、それらのデータに基づいて、被検者Pに対するRI分布の断層像データを作成する。すなわち、画像データ作成装置40は、γ線を検出したときにおける、旋回しているカメラヘッド部109の位置を、時刻データに基づいて、求める。このカメラヘッド部109の位置を示す位置データを、第2位置データという。第1および第2位置データ基づいて、γ線を検出したときにおける半導体検出器1の、被検者Pの周囲における位置(γ線検出位置という)を正確に算出することができる。γ線検出位置の算出は画像データ作成装置40で行われる。γ線検出位置が分ると、γ線が通過した、コリメータCMの貫通穴との関係で、γ線の入射方向を正確に把握することができる。画像データ作成装置40は、γ線検出信号(誘起電荷信号)を検出した多数の半導体検出器1のγ線検出位置、およびこれらの位置でのγ線入射方向の各データに基づいて、被検者Pに対する断層像データ(RI分布の画像データ)を作成する。この断層像データは、表示装置50に表示される。
【0047】
画像データ作成装置40は、図12に示す情報をメモリ(図示せず)に記憶している。図12に示す情報は、短いシェイピングタイムが設定されたシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値と長いシェイピングタイムが設定されたシェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値との関係で波高値の較正用曲線を示したものである。例えば、画像データ作成装置40が、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値yE、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値xEを入力したとする。図12において、波高値xEと波高値yEの交点Qは、入力75Eの較正用曲線上に位置する。この75Eが半導体検出器12入射されたγ線の波高値、すなわち、そのγ線のエネルギーとなる。このようにして、半導体検出器12入射されたγ線のエネルギーを、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値をシェイピングアンプ12Bから出力された出力信号電圧の波高値によって補正することによって精度良く求めることができる。SPECT撮像装置100のエネルギー分解能が向上する。なお、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を基にし、前述したような簡易的な処理(例えば、回転に相当する処理)を用いた前者の波高値の補正を、信号処理装置20で行うことも可能である。これによっても、半導体検出器12入射されたγ線のエネルギー分解能が求められる。
【0048】
画像データ作成装置40は、補正によって得られた、半導体検出器12に入射されたγ線の波高値に基づいて、被検体P内で散乱したγ線を検出したデータを除外し、設定された波高値以上の波高値を有するγ線検出信号(誘起電荷信号)を出力した半導体検出器1のγ線検出位置に基づいて、上記したように断層像データを作成する。直達線データとして認める、設定された波高値(エネルギーウィンドウ)は、使用する放射性薬剤に含まれる放射性同位体に対応して定められる。被検体Pの体内で散乱したγ線は、半導体検出器1に入射するときのエネルギーが低くなるので、そのγ線の検出信号の波高値は、設定された波高値よりも小さくなる。SPECT撮像装置100は、上記した補正により入射したγ線のエネルギー分解能を向上できる。
【0049】
このような本実施形態によれば、エネルギー分解能が良いため散乱線の除去を精度良く行うことができる。このため、γ線のエネルギー情報を用いて、被検体P内の放射性薬剤が集積した位置から曲がらずに半導体検出器1に入射されたγ線に基づく出力信号か、被検体Pの体内で曲がったγ線に基づく出力信号かを見分けることができる。従って、被検体Pの体内における放射性薬剤、すなわち放射性同位体の分布から広がりの小さい断層像データを得ることができる。
【0050】
本実施形態では、電気的に互いに接続され寄生容量が発生しない電極膜15に取り付けられた導電部材2に接続されたシェイピングアンプ12B(第2シェイピングアンプという)は、電気的に接続されていない状態で向き合っている電極膜17に接続されたシェイピングアンプ12A(第1シェイピングアンプという)に設定されたシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムで波形整形処理を行っている。このため、第1シェイピングアンプの出力信号電圧(第1出力信号という)の波高値および第2シェイピングアンプの出力信号電圧(第2出力信号という)の波高値に基づいて第1出力信号の波高値を補正することによって、第1出力信号の波高値の補正精度を高めることができ、エネルギー分解能を向上させることができる。本実施形態は、このように電気的に接続されない状態で向き合っている電極膜17間に発生する寄生容量の影響を抑制できるため、半導体検出器1をカメラヘッド部109により稠密に配置することができる。半導体検出器1のより稠密な配置は、被検者Pより放出されるγ線の検出感度を高めることになり、検査時間を短縮することにつながる。半導体検出器1のより稠密な配置は空間分解能の向上にもつながる。
【0051】
半導体母材4へのγ線の入射によって半導体母材4内で発生する電荷の収集時間は、半導体検出器1の電極膜15と電極膜17の間に印加する印加電圧を高めるか、それらの電極膜間の距離を短くすることによって、短縮される。リーク電流ノイズおよび基板絶縁寿命などの観点から、その印加電圧を低くすることが望まれる。本実施形態は、第2シェイピングアンプに設定されるシェイピングタイムを、第1シェイピングアンプに設定されるそのタイムよりも短くしているので、印加電圧(バイアス電圧)を200Vに低減できる。
印加電圧を下げると捕獲欠損が増え、通常のシェイピングアンプ一個の測定ではエネルギー分解能が悪くなる。しかしながら、本実施形態により、シェイピングアンプ二個(第1及び第2シェイピングアンプ)での補正が稠密配置でも実際に使えるものになるため、シェイピングアンプ一個での測定に比べて低い印加電圧で高いエネルギー分解能を得ることができる。ちなみに、従来の印加電圧は例えば600Vであり、本実施形態では150Vである。この差により実装上の線間距離などの制約が大幅に改善される。このように、本実施形態は、印加電圧を低減できて、エネルギー分解能を向上できる。その印加電圧の低減は、放射線検出部101の絶縁を緩和することができる。
【0052】
本実施形態は、行内に配列された4つの半導体検出器1の電極膜17が互いに電気的に接続され(導電部材3によって)、また、列内に配列された4個の半導体検出器1の電極膜15が互いに電気的に接続されているため、マトリクス状の4×4=16ピクセルに対し信号読出しチャンネル数が8となり、信号読出しチャンネル数が低減される。説明の都合上4×4ピクセルとしたが、これに限らずN×Nピクセルのときに2N個となり、計数率および検出器静電容量が許す範囲でNを大きくすれば信号読出しチャンネル数が大幅に低減される。これにより、支持基板に設ける信号取り出し用配線の数を著しく低減できる。このような効果を得ることができるSPECT装置100は、前述したように、寄生容量の影響の抑制により半導体検出器1をより稠密に配置できるが、信号読出しチャンネル数が著しく少ないので、支持基板における配線の設置は混雑しなく容易に設置することができる。
【0053】
本実施形態は、半導体検出器1の電極膜15、17を支持基板に垂直に配置しているため、それらの支持基板に対して水平に配置した場合に比べて、半導体検出器1を更に稠密に配置することができる。これは、前者の垂直配置では、それぞれの電極膜と支持基板に設けた配線とを接続する配線等の導電部材を配置するために必要とする、隣り合う半導体検出器1相互間の間隔を狭くすることができるからである。
また、導電性の金属板で構成された導電部材2で2つの半導体検出器1の電極膜15同士を接続し、また、行内の4個の半導体検出器1の電極膜17を導電性の金属板で構成された導電部材3で接続し、配線の最初期段階で上記マトリクス状配線を行うことで、その接続作業を容易に行うことができる。導電部材2,3で接続した複数の半導体検出器1を支持基板上に配置し、導電部材2,3と支持基板に設けた該当する配線(配線14,13)を接続すればよいので、半導体検出器1の電極膜15,17と支持基板の配線との接続を短時間に完了することができる。
【0054】
≪その他の実施の形態≫
以上に本発明の好適な一実施形態である放射線撮像装置について説明したが、本発明は前記実施の形態やその説明上記載した数値に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、以下のような実施形態が考えられる。
(1)図10に示す実施形態は、半導体検出器1が4×4のマトリックス状に配置された放射線検出部101の構成を有している。これに限定されることなく、半導体検出器1をm×n(m≧2、n≧2、m、nは自然数)のマトリックス状に配置した放射線検出部を用いてもよい。
【0055】
(2)半導体検出器1の電極膜15,17の替りに、図1に示すように、導電性金属板の電極23,24を互いに向き合うように半導体母材4に設置し、導電部材2、3を削除しても良い。電極23は、放射線検出部に含まれる4行4列に配置された半導体検出器1のそれぞれの半導体母材4に導電性接着剤により取り付けられる。電極24は、各行内の4個の半導体検出器1で共用される。すなわち、1つの電極24が、行内の4個の半導体検出器1のそれぞれの半導体母材4に導電性接着剤により取り付けられる。列内で隣り合う2つの電極24は電気的に接続されない状態で向き合っている。また、列内で隣り合う2つの電極23は、導電性接着剤で接合され、電気的に接続されている。これらの電極23は配線で接続しても良い。2つのシェイピングアンプ12Aに接続される配線13が電極24に接続され、シェイピングアンプ12Bに接続される配線14が列内の4個の半導体検出器1の各電極23に接続される。半導体母材4および電極23,24は、それぞれ垂直状態で前述の他の支持部材に取り付けられる。なお、電極24は、各行内で4個の半導体検出器4に対する共通電極としてではなく、それぞれの半導体検出器1に個別に設けてもよい。この場合には、行内の4個の半導体検出器1のそれぞれの電極24は、配線13によって接続される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に用いる半導体検出器の構成図である。
【図2】図1の半導体検出器の半導体母材においてγ線の入射位置による発生した電荷の動作を示す図である。
【図3】半導体検出器の半導体母材におけるγ線の入射位置によるγ線検出信号の違いを示す図であり、(a)はγ線の入射位置がカソード電極直近である場合でのγ線検出信号を示す説明図、(b)はγ線の入射位置がアノード電極直近である場合でのγ線検出信号を示す説明図、(c)はγ線の入射位置がアノード電極とカソード電極との中間である場合でのγ線検出信号を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に用いる半導体検出装置の基本構成図である。
【図5】図5に示す半導体検出装置のチャージアンプおよびシェイピングアンプが出力する出力信号電圧を示す特性図であり、(a)はチャージアンプの出力信号電圧を示す特性図、(b)はシェイピングアンプの出力信号電圧を示す特性図である。
【図6】シェイピングアンプの欠損を示す説明図であり、(a)はシェイピングタイムの違いによるシェイピングアンプの出力信号電圧の波高値の違いを示す説明図、(b)は異なるシェイピングタイムごとにγ線の入射位置とシェイピングアンプの出力信号電圧との関係を示す特性図である。
【図7】シェイピングアンプの出力信号電圧と、その検出回数との関係を示すヒストグラム(エネルギースペクトル)である。
【図8】異なる2つのシェイピングタイムによって得られた2つの出力信号電圧を示す特性図であり、(a)は波高値に差がある、得られた2つの出力信号電圧の時間的な変化を示す特性図、(b)は波高値に差がない、得られた2つの出力信号電圧の時間的な変化を示す特性図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る放射線撮像装置の好適な一例であるSPECT装置の構成図である。
【図10】図9のSPECT装置に用いられた放射線検出装置の詳細構成図である。
【図11】図10に示された放射線検出装置の放射線検出部の詳細構成図である。
【図12】シェイピングタイムが短いシェイピングアンプの出力信号電圧の波高とシェイピングタイムが長いシェイピングアンプの出力信号電圧の波高との関係で較正用曲線を示した特性図である。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体検出器(半導体放射線検出器)
2,3 導電部材
4 半導体母材
5 高圧電源
6 γ線(放射線)
7 電子
8 正孔
10 半導体検出装置(半導体放射線検出装置)
11,11A,11B チャージアンプ(増幅装置)
12,12A,12B シェイピングアンプ(増幅装置)
15 電極膜(電極)
17 電極膜(電極)
20 信号処理装置
21 同時性判定装置
40 画像データ作成装置
100 SPECT装置
101 放射線検出部
103 データ収集解析装置
105 回転支持台
109 カメラヘッド部
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射された放射線を検出し、その検出信号を出力する半導体放射線検出器を備えた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Si、Ge、CdTeなどを用いた半導体放射線検出器では、放射線が検出器物質に対して起こす電離作用で発生する複数の電子と正孔の両方を収集し、電気信号(一般に電圧パルス)とすることで、放射線のエネルギー、入射タイミング、入射個数、入射位置などの情報を得る。
信号誘起電荷は半導体内での電荷の移動とともに信号読出電極に生成するため、半導体内部の不純物準位などによる電荷の捕獲や再結合が起これば、その電荷は電荷を生成した放射線の信号に寄与しなくなる。この捕獲や再結合による信号の欠損現象を捕獲欠損とする。
CdTeやHgI2などの化合物半導体素子を用いた半導体放射線検出器では、一般に正孔の移動度が電子の移動度と比較して著しく小さく、正孔が収集されるまでの時間は捕獲までの平均寿命に対し不充分な短さとなる。捕獲までの平均寿命には従って、正孔が長時間で収集されるときに捕獲欠損が大きい。
電子はアノードに、正孔はカソードに収集されるため、放射線反応位置がアノードに近いときに正孔が長距離(長時間)をかけて収集され、捕獲欠損が最も顕著となる。逆に、放射線反応位置がカソードに近いときには、電子の収集は長距離でも移動度が大きいため、ほぼ捕獲欠損を起こさず、正孔も短距離で収集されるため捕獲欠損が小さい。
従って、出力信号は半導体内での放射線の相互作用位置に依存して変化し、同じ入力エネルギーに対して、異なる出力信号が得られることとなり、エネルギー分解能劣化の大きな原因となる。
【0003】
エネルギー分解能の劣化を解消するために、半導体放射線検出器に2つのシェイピングアンプをそれぞれ接続し、1つの放射線入射事象に対し、それぞれのシェイピングアンプの出力信号を用いることによって捕獲欠損を補正する方法がある。すなわち、一方のシェイピングアンプに電荷収集時間に対し不十分な長さのシェイピングタイムを持たせ、一般に弾道欠損と呼ばれる捕獲欠損と強い相関を持つ信号欠損を意図的に発生させることで、各事象ごとにシェイピングアンプの出力信号の波高値を補正する(例えば特許文献1参照)。これによって、ある移動度、寿命、アノード・カソード電極間距離の組み合わせに対し、捕獲欠損が顕著になる低い印加電圧で高いエネルギー分解能を得ることが可能となる。
また、特許文献2は、複数の半導体放射線検出器を複数列、複数行に配置し、各列毎に、列に含まれた各半導体放射線検出器の第1電極を第1配線で接続し、各行毎に、行に含まれた各半導体放射線検出器の第2電極を第2配線で接続した放射線撮像装置を記載する。複数の第1配線および複数の第2配線にそれぞれシェイピングアンプを接続し、これらのシェイピングアンプの出力を同時性判定装置に入力する。また、第1配線に接続されたシェイピングアンプの出力を、積分回路および増幅器を含み波形整形を行う主増幅器、および微分回路を含み波形整形を行う補助増幅器(時定数は主増幅器のそれよりも短い)にそれぞれ入力する。特許文献2に記載された放射線撮像装置は、主増幅器および補助増幅器のそれぞれの出力信号の波高を比較して弾道欠損を推測し、この弾道欠損を用いて主増幅器の出力信号の波高を補正する。
【特許文献1】特開昭61−14590号公報(第5頁、第1図)
【特許文献2】特開昭61−14591号公報(第2図(a)、第2図(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体放射線検出器を実際の装置、例えば、放射線撮像装置などに設置する場合には、高位置分解能と高感度を兼ね備える必要があるために、半導体放射線検出器の稠密な実装が必須となる。これにより、隣接する半導体放射線検出器の電極間に十分な間隔を設けることが困難になり、大きな寄生容量が発生してしまうという新たな問題の発生を発明者らは見出した。そして、その電極に接続されるシェイピングアンプにおける波形整形処理の特性が劣化してしまい、放射線検出信号の波高値を正しく補正することができなくなる。
【0005】
本発明の目的は、半導体放射線検出器の電極間に発生する寄生容量の影響を抑制でき、半導体放射線検出器をより稠密に配置できる放射線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、半導体部材を挟むようにして半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有する複数の半導体放射線検出器が、ある一方向の配列内で、第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置され、
その一方向の配列内において互いに電気的に接続されている複数の半導体放射線検出器の第2電極に接続されて第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置の、波形整形処理を行うシェイピングタイムが、第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されていることにある。
【0007】
本発明は、発明者らが、その一方向の配列内において電気的に接続されていなくて向き合っている第1電極間で大きな寄生容量が発生すること、および波形整形装置はシェイピングタイムが短くなるにつれ寄生容量の影響を急激に受け、大きな電気的ノイズを発生することを発見し、この課題の解決案を見出すことによってなされたものである。
その一方向の配列内で互いに電気的に接続されている第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置の、波形整形処理を行うシェイピングタイムが、第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定することで電気的ノイズの増加を回避し、、第1出力信号および第2出力信号の各波高値に基づいて第1出力信号の波高値を補正することによって、第1出力信号の波高値の精度を高めることができ、エネルギー分解能を向上させることができる。
【0008】
本発明は、このように電気的に接続されない状態で向き合っている第1電極間に発生する寄生容量の影響を抑制できるため、半導体放射線検出器をより稠密に配置することができる。
第1出力信号の波高値の補正は、具体的には、第1出力信号の波高値と第2出力信号の波高値の差である弾道欠損に基づいて捕獲欠損を求め、この捕獲欠損を用いて第1出力信号の波高値を補正することによって行われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隣り合う半導体放射線検出器で電気的に接続されない状態で向かい合っている第1電極間に発生する寄生容量の影響を抑制できるため、複数の半導体放射線検出器をより稠密に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1ないし図3を参照して、半導体放射線検出器(以下、「半導体検出器」という)の原理について説明する。次に、図4ないし図8を参照して、半導体検出器を備えた半導体放射線検出装置(以下、「半導体検出装置」という)における増幅および波形整形の処理について説明する。そして、図9ないし図11を参照して、本発明の好適な一実施形態である放射線撮像装置について説明する。
【0011】
≪半導体検出器の原理≫
図1に示すように、半導体検出器1は、半導体母材4、および半導体母材4に取り付けられたアノード電極23(以下、電極23という)、カソード電極24(以下、電極24という)を備え、更に、電極23および電極24が高圧電源5に接続されて構成される。電極23は、高圧電源5のプラス側に接続される。電極24は、高圧電源5のマイナス側に接続される。半導体母材4は、電極23と電極24との間に介在しており、高圧電源5によって2つの電極間に所定の電圧が印加されている。なお、電極23および電極24は、例えば、数mm×数mmの導電性金属板である。半導体母材4は、例えば、約1mmの厚さを持つ素子である。また、図2以降では、高圧電源5の図示を省略する。
【0012】
電極23と電極24との間に電圧が印加された状態で半導体母材4に放射線の1種であるγ線6が入射されて、相互作用(光電効果、コンプトン散乱、電子対生成のいずれか)が生じると、発生した電子が半導体母材4を電離し、その反応箇所近傍に複数の電子7や正孔8を発生させる。電子7は電極23に向かって移動し、正孔8は電極24に向かって移動する。このとき、電子7と正孔8が離れるに従い、電極23、電極24に誘起電荷が生成される。この誘起電荷を後段回路の処理により信号として用いる。平行平板型半導体検出器(平板の電極23および電極24が平行に配置された半導体検出器)の場合、理想的には誘起電荷総量は生成電荷に等しく、電子7と正孔8の寄与率はその移動距離に比例する。実際には、高圧電源5の電圧の大きさ、半導体母材4の厚さ、γ線6の入射位置によって発生する誘起電荷に損失が起きるため、後段の回路の出力信号電圧に損失が発生する。この出力信号電圧の損失を捕獲欠損という。以下、半導体母材4に対するγ線6の相互作用のことを単に入射という。
【0013】
図2は、半導体母材におけるγ線の入射位置による電荷収集の様子を示している。ここで、半導体母材4の厚さをd[mm]とする。また、電極24とγ線6の入射位置との間の距離をxとする。
x≒0、すなわち、γ線6が電極24の直近に入射した場合は、電子7は電極23まで長距離を移動する。正孔8は発生するが、すぐに電極24に到達し、移動距離は非常に小さい。
0<x<d、すなわち、γ線6が電極24と電極23との中間に入射した場合は、電子7および正孔8が発生し、電子7が電極23まで移動し、正孔8が電極24まで移動する。
x≒d、すなわち、γ線6が電極23の直近に入射した場合は、正孔8は電極24まで長距離を移動する。電子7は発生するが、すぐに電極23に到達し、移動距離は非常に小さい。
【0014】
図3は、半導体母材4におけるγ線の入射位置によるγ線検出信号の違いを示している。図3(a)〜(c)の各グラフは、横軸を時間、縦軸を出力信号電圧とし、γ線検出信号(誘起電荷信号)の時間的変化を示す。生成電荷数と等量の誘起電荷信号が得られたとき、すなわち、捕獲欠損のない出力信号電荷が得られたとき、その電荷に比例する後段回路の出力信号電圧を100Eと表すこととする。ただし、生成電荷数は入力エネルギーを単純に平均電子正孔対生成エネルギーで割った値とし、生成電荷数の統計的ばらつきや電気的ノイズは十分小さい場合を考える。
【0015】
図3(a)は、x≒0の場合を示す。x≒0のケースでは、正孔8はごく短距離で電極24に収集されるため、誘起電荷は電子7の移動に伴ってのみ発生する。電子7の移動度が大きいため、信号電圧の立ち上がり時間は短い値(例えば、30nsec)になる。従って、信号電圧はほぼ100Eまで上昇する。
図3(b)は、x≒dの場合を示す。x≒dのケースでは、出力信号電圧の大部分が正孔8によって発生するので、正孔8の移動速度が遅い分、出力信号電圧の立ち上がり時間が長い値(例えば、300nsec)になる。また、正孔8の移動度が低いため、収集経路において一部の正孔8が捕獲され、その一部の正孔8は誘起電荷の生成に寄与しなくなる。言い換えれば捕獲欠損が発生する。例えば誘起電荷に5%の捕獲欠損があった場合、後段回路の出力信号電圧も5%の捕獲欠損を受け、95Eとなる。
図3(c)は、0<x<dの場合を示す。0<x<dのケースでは、電子7による信号と、正孔8による信号の加算となるため、立ち上がりの開始から終了までの出力信号電圧が2つの傾きを持つ。また、捕獲欠損はx≒0のケースおよびx≒dのケースの中間の値となり、立ち上がった後の出力信号電圧もx≒0のケースおよびx≒dのケースの中間の値となる。
実際には移動度のみではなく、移動度μと寿命τの積(μτ積)を考えるべきであるが、移動度が異なれば上記シェイピングタイム長短によるエネルギー補正を用いることができるため、簡単のため移動度の違いのみで同様の議論を行う。逆に言えば、電子と正孔で移動度が非常に近く、寿命のみが大きく異なる場合には以下の補正方法は適用できない。
【0016】
図3(b)に示すような捕獲欠損を補正するには、立ち上がり時間を用いるのが一般的である。ノイズなどの影響を避けるため、実際に計測する立ち上がり時間としては、その信号電圧の最大値(波高値)に対する割合が10%から90%になるまでの時間を用いることが多い。
例えば、立ち上がり時間が30[nsec]であれば、電子7の信号に対する寄与率が100%であり、捕獲欠損が1%であるとみなして、波高値を(100%/99%)倍する補正処理を行う。また、立ち上がり時間が300[nsec]であれば、正孔子8の寄与率が100%の信号であり、捕獲欠損が10%であるとみなして、波高値を(100%/90%)倍する補正処理を行う。このような補正処理により、真の信号値に近い値が得られる。
【0017】
CdTeのような電子と正孔の移動度および捕獲寿命を持つとき、図3(a)および(b)で説明した半導体検出器1の特性によれば、出力信号電圧の立ち上がり時間が短いときは捕獲欠損が小さく、逆に、出力信号電圧の立ち上がり時間が長いときは捕獲欠損が大きくなる。
しかしながら、立ち上がり時間を得るためには複雑な後段回路が必要となり、立ち上がり時間を取得する方法に比べて、以下に説明する方法では簡便な回路構成で同等以上の効果が得られる。
【0018】
≪半導体検出装置における増幅および波形整形の処理≫
図4に示すように、半導体検出装置10は、半導体検出器1、チャージアンプ11,11、シェイピングアンプ12,12、信号処理装置20を含んでいる。半導体検出器1の電極23および電極24のそれぞれにチャージアンプ11が接続される。それぞれのチャージアンプ11にシェイピングアンプ12がそれぞれ接続されている。
チャージアンプ11は、半導体検出器1が出力するγ線検出信号(誘起電荷信号)を受けて、その電荷量に比例する信号電圧を出力する増幅器である。シェイピングアンプ12は、チャージアンプ11の出力信号電圧を入力し、所定の波形整形処理を行った出力信号電圧を出力する回路である。
シェイピングアンプ12には、シェイピングアンプ12の出力信号電圧を入力して、この出力信号電圧に対して所定の信号処理を行う信号処理装置20が接続される。また、同時性判定装置21が信号処理装置20に内蔵されている。図4は、信号処理装置20が内蔵された場合を示す。同時性判定装置21は、信号処理装置20の外部に配置して信号処理装置20に接続することも可能である。
【0019】
同時性判定装置21は、電極23および電極24から出力されたγ線検出信号が同一のγ線6によるものであることを、2つのγ線検出信号が設定された時間幅内に入っていることで確認する。同時性判定装置21は、リアルタイムに同時であるか否かを判定するハードウェア(同時計測回路、コインシデンス(coincidence)回路などと呼ぶ)を設けたり、トリガ検出時刻情報をすべての信号に付加し、ソフトウェアで時刻情報を参照して同時性を判定したりすることによって実現される。同時性判定の基準となる時間幅は、異なるγ線6がランダムに(非周期的に)入射するときには、偶発的に狭い時間幅に入る確率を考慮して十分小さくする必要がある。具体的には、例えば1ピクセル(γ線を検出する半導体母材の単位)に1000[カウント/sec]の計数率の場合、時間幅は平均入射間隔である1/1000[sec]の更に1/100以下程度に設定する。
【0020】
シェイピングアンプ12は、良いSN比(信号対雑音比)で増幅および波形整形を行う回路である。指定の時定数で積分と微分を行うことができるが、多くのケースでは積分時定数と微分時定数は同じ値とする。以下、両者の等しい時定数をシェイピングタイムと呼ぶ。シェイピングアンプ12の他の役割を以下に示す。
第1に、入射時刻から数えてシェイピングタイムの数倍程度の短時間で信号電圧をベースライン(例えば信号電圧≒0)に戻すことである。これにより、入射時刻が異なる他のγ線による信号電圧の影響を受ける時間を短くすることができ、高頻度の放射線入射に対応することができる。
第2に、出力信号電圧の波高値を増幅する(例えば、数十mVを数Vにする)ことである。これにより、信号処理装置20が容易に取り扱える出力信号電圧を得る。
第3に、出力信号電圧をそのピークの前後において、平滑にすることである。これは、信号処理装置20が波高値を精確に把握できるようにするためである。
シェイピングアンプ12も入力信号電圧に比例した信号電圧を出力し、理想的にはシェイピング出力電圧信号∝チャージアンプ出力電圧信号∝(誘起電荷量=生成電荷量)∝入射エネルギーとなる。
【0021】
図5(a)は、チャージアンプ11の出力信号電圧である。チャージアンプ11は信号電荷を積分し電圧信号に変換するものであり、その時間変化は理想的には入力された誘起電荷信号と同じになる。実際には若干の積分時定数で立ち上がりが鈍り、また、出力信号電圧の飽和を防ぐため、ある程度の時定数で放電(discharge)が行われる。このため、チャージアンプ11の出力信号電圧は、時間経過と共にベースラインに戻っていく。シェイピングタイムに対して十分長い時定数を持たせることによって、図5(a)の範囲内では出力信号電圧の減少を無視することができる。
図5(b)は、シェイピングアンプ12の出力信号電圧である。これは、図5(a)のチャージアンプ11が出力する出力信号電圧に対して、前記波形整形処理を行ったものである。一般的なセミガウシアンフィルタでは、シェイピングタイム程度の立ち上がり時間を持ち、その数倍程度でベースラインに復帰する。
【0022】
複数のシェイピングアンプを利用することによって、捕獲欠損の量を推定する方法について述べる。推定した捕獲欠損量に基づき補正処理を行えば、入射エネルギーに対し比例性の良い、すなわちエネルギー分解能の良い出力信号を得ることができる。その捕獲欠損の量を推定する方法について説明する。
【0023】
図6(a)は、異なるシェイピングタイムに対する、シェイピングアンプ12の出力信号電圧の最大値(以下、波高値)の違いを示している。チャージアンプ11の出力信号電圧の立ち上がり時間(≒電荷収集時間)に対して、シェイピングタイムが十分に長い(〜数倍以上)場合には、シェイピングアンプ12の波高値は、チャージアンプ11の波高値、すなわち、入射したγ線のエネルギー(入射エネルギーという)にほぼ比例した値になる。
しかし、シェイピングタイムが立ち上がり時間より短くなるに従って、そのときのシェイピングアンプ12の出力信号電圧の波高値は、前記の入射エネルギーに比例した波高値よりも低い値となる。この、シェイピングタイムを早くすることで信号を伝達しきれずに起きる信号の欠損を弾道欠損という。
【0024】
図6(b)は、シェイピングタイムが長い場合(L)およびシェイピングタイムが短い場合(S)におけるそれぞれのγ線6の入射位置とシェイピングアンプ12の出力信号電圧との関係を示している。このグラフは、横軸をγ線6の入射位置として電極24からの距離(図2に示すx)とし、縦軸をシェイピングアンプ12の出力信号電圧の波高値とする。また、損失のない場合のシェイピングアンプ12の出力信号電圧を100Eとする。
x≒0(電極24の直近)では捕獲欠損も弾道欠損も非常に小さく、信号電圧がほぼ100Eとなる。
【0025】
従来法の計測では図4に示す2つのシェイピングアンプ12のそれぞれのシェイピングタイムを弾道欠損が無視できるほど長くとっている。この場合には、特性L(図6(b))に示すように、γ線6の入射位置がx≒d(電極23の直近)に近付くにしたがって捕獲欠損が大きくなる。これがエネルギー分解能の劣化の原因である。
これに対し、図4の構成において、例えば、電極23につながるシェイピングアンプ12のシェイピングタイムを弾道欠損が無視できるほど長くとり、電極24につながるシェイピングアンプ12のシェイピングタイムを弾道欠損が顕著になるほど短くし、捕獲欠損に弾道欠損を加えた出力信号電圧を考える。γ線6の入射位置がx≒dに近付くにしたがって、出力信号電圧は、特性S(図6(b))に示すように、捕獲欠損および弾道欠損を合わせた分、下降する。このように、意図的に弾道欠損を起こさせた、短いシェイピングタイムによる出力信号電圧を用いることで捕獲欠損を補正することができる。以下に2つの同エネルギーに見える信号の上記補正による見分け方の具体例を示す。
【0026】
図7に捕獲欠損の分布を持つエネルギースペクトルを示す。横軸をシェイピングアンプの出力信号電圧、縦軸をその出力信号電圧をとる頻度とする。横軸の出力信号電圧の値は、例えば、ADC(Analog-to-Digital Converter)によって0〜10Vのアナログ値を4096段階にデジタル化したものである。理想的にはこの出力信号電圧の値は、γ線6の入射エネルギーに比例する。縦軸の検出回数の値は、デジタル化された各段階に対応するアナログ値の範囲ごとに、その範囲の出力信号電圧を検出した回数を示すものである。
【0027】
ここで、例えば、95Eという出力信号電圧を検出したときに、2つのケースが考えられる。第1のケースは、入力エネルギーが100Eであったが、捕獲欠損が5Eであったため、100−5=95Eとなったものである。第2のケースは、入力エネルギーが95Eであり、捕獲欠損がほぼ0Eであったものである。ところが、1つのシェイピングアンプ12の出力信号電圧だけでは、第1のケースであるのか、第2のケースであるのかを見分けることができない。
【0028】
そこで、シェイピングタイムが異なる2つのシェイピングアンプ12でそれぞれ波形整形処理を行い、それぞれの処理で得られた2つの信号電圧を比較することによって、捕獲欠損の量を推定する。2つのシェイピングタイムは、次のように設定する。1つのシェイピングアンプ12には、長いシェイピングタイム(第1シェイピングタイム)、すなわち、正孔8が電極23から電極24まで移動したときの収集時間(≒立ち上がり時間)の数倍(具体的には4倍程度)となるシェイピングタイムを設定する。これは、弾道欠損を無視できる程度に抑えるためである。また、他の1つのシェイピングアンプ12には、短いシェイピングタイム(第2シェイピングタイム)、すなわち、前記収集時間の1倍以下(具体的には0.3〜1倍)となるシェイピングタイムを設定する。これは、弾道欠損を数十%発生させるためである。第2シェイピングタイムは第1シェイピングタイムよりも短くなっている。なお、これらのシェイピングタイムの設定値は、半導体母材4の種類と電気的に接続された状態にない電極間の距離および高圧電源5の電圧値によって特定することができる。
【0029】
図8(a)に示すように、上記のようにシェイピングタイムが異なる2つのシェイピングアンプ12のそれぞれで得られた出力信号電圧の波高値H1,H2に差が生じる。この波高値の差は弾道欠損によるものである。弾道欠損の量はシェイピングアンプ12の特性から計算することができる。算出された弾道欠損の量と設定した2つのシェイピングタイムに基づいて、γ線検出信号(誘起電荷信号)の立ち上がり時間を推定できる。その立ち上がり時間が分かれば、γ線検出信号(誘起電荷信号)に対する電子と正孔の寄与率の推定が可能であり(図3参照)、従って捕獲欠損の量を計算することができる。先の例の図8(a)では弾道欠損が大きいことから捕獲欠損が大きい、第1の場合であることを推定できる。
一方、図8(b)では、2つのシェイピングタイムによって得られた2つの出力信号電圧のそれぞれの波高値H1に差がなく、すなわち、弾道欠損がないことが分かる。このことから、信号が速く、電子7の寄与率が非常に大きく、従って捕獲欠損が非常に少ない信号出力であることが分かる。これによって、図8(b)は、捕獲欠損のない第2の場合であると推定することができる。
【0030】
実際には、図12に示すようにシェイピングタイムが異なるシェイピングアンプ12の特性から出力比曲線を計算し、近似曲線群(代表として100E、75E、50Eを図示したが、その他の部分にも連続的に存在する)を用いてソフトウェア的に補正した入力エネルギー値を得られる。また、ハードウェアで簡易的に例えば回転に相当するような処理のみで補正を行っても良い。
簡便のため、複数の欠損は和として表した。実際には複合欠損は1−(1−捕獲欠損)×(1−弾道欠損)のように表される。捕獲欠損および弾道欠損が小さいとき、その式で得られる複合欠損は捕獲欠損と弾道欠損の和にほぼ等しくなる。
このように短いシェイピングタイムの出力を利用することで、未知の値であった捕獲欠損量を計算し補正を行うことができる。しかし、問題はその補正を行うとき、シェイピングタイムを短くするとき、寄生容量の影響でシェイピングアンプ12のノイズが非常に大きくなることである。この寄生容量の影響を抑制できる波高値の補正を適用した放射線撮像装置の実施形態を以下に述べる。
【0031】
≪放射線撮像装置への適用≫
図9は、本発明の好適な実施の形態に係る放射線撮像装置の一種である核医学診断装置の一例のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置を、図9、図10および図11を用いて以下に説明する。ここで、放射線撮像装置とは、患者などの被検体にRI(Radio Isotope、放射性同位元素)によって標識された放射性薬剤を投入し、そのRIから放出されるγ線を検出して、被検体内のRI分布を取得する装置である。SPECT装置100は、支持部材11に旋回可能に設置された回転支持台105、回転支持台105に向き合うように設置された一対のカメラヘッド部109、長手方向に移動可能なベッド106、複数の半導体検出装置10、複数の信号処理装置20、データ収集解析装置103および表示装置50を備える。カメラヘッド部109は、回転支持台105から、ベッド106の長手方向に突出している。被検体である被検者Pを載せるベッド106は対向する2つのカメラヘッド部109の間に挿入される。カメラヘッド部109は、回転支持台105に設置されて回転支持台105の半径方向に移動可能な支持部材(図示せず)、複数セットの半導体検出装置10、複数の信号処理装置20およびコリメータCMを有する。複数セットの半導体検出装置10、複数の信号処理装置20およびコリメータCMは、その支持部材に設置される。コリメータCMは、多数の貫通孔(放射線通路)を有し、ベッド106に面して配置される。半導体検出装置10(図10参照)に含まれる放射線検出部101の各半導体検出器1は、コリメータCMの後段に配置され、コリメータCMの貫通孔を通過する放射線(γ線)を入射する。
【0032】
カメラヘッド部109は遮光・電磁シールド104を有している。コリメータCM、半導体検出装置10および信号処理装置20は、遮光・電磁シールド104内に収められている。放射線以外の電磁波、およびコリメータ以外の方向から来る放射線は、遮光・電磁シールド104で遮断されるため、半導体検出器1で検出されず、信号処理装置20、後述のチャージアンプおよびシェイピングアンプに対してノイズとして入力されない。遮光・電磁シールド104は、コリメータCMの交換、取り外しの際には開閉することができる。
【0033】
それぞれの半導体検出装置10は、放射線検出部101、4個ずつのチャージアンプ11A,11B、および4個ずつのシェイピングアンプ12A,12Bを有している。放射線検出部101は、4行×4列に配置された16個の半導体検出器1を含んでいる。
【0034】
放射線検出部101の構成を、図11を用いて詳細に説明する。半導体検出器1は、半導体母材4、アノードの導電部材2、アノードの電極膜15およびカソードの電極膜17を有する。電極膜(アノード電極)15および電極膜(カソード電極)17が半導体母材(半導体部材)4を間に挟んで向き合うように半導体母材4に形成される。電極膜15、17は、導電性の金属(例えば、インジウム等)を半導体母材4の表面に蒸着することにより形成される。このように構成された16個の半導体検出器1が4行4列の正方格子状に配置される。すなわち、図10に示すように、左右方向に複数列の半導体検出器1の配列が、上下方向に複数行の半導体検出器1の配列が存在する。各列内で、隣り合う半導体検出器1同士は電極膜15が向き合うように配置される。導電性接着剤により向き合っている2つの電極膜15が、導電性接着剤によりアノードの1つの導電部材2にそれぞれ取り付けられる。カソードの導電部材3が行内の4個の半導体検出器1のそれぞれの電極膜17に導電性接着剤により取り付けられる。放射線検出部101では、導電部材2は半導体検出器1二個ずつに別々に設けられているが、導電部材3は行内の4個の半導体検出器1で共有されている。放射線検出部101の中央部に位置する一対の導電部材3は、非常に狭い間隔(例えば、200μm)を持って互いに向き合っている。導電部材2、3は、導電性の金属(例えば、銅)で構成される。絶縁材16が各導電部材3を被覆している。これによって、隣接する導電部材3の相互間が絶縁される。図1に示す高圧電源5のプラス側がそれぞれの導電部材2に接続され、高圧電源5のマイナス側がそれぞれの導電部材3に接続される。半導体検出器1の電極膜15と電極膜17の間に200Vの電圧が、高圧電源5より印加される。導電部材2および導電部材3のいずれをグランドにしてもよい。非グランド側(高圧側)の導電部材にチャージアンプ11を接続するときには耐圧性のよい容量器でAC結合させ、導電部材2と高圧電源5との間には容量結合の抵抗成分に比べて十分大きい抵抗を入れる。
【0035】
放射線検出部101に含まれる各半導体検出器1は、半導体検出器1の一面(図10の紙面に直交する方向で裏側になる面)で支持基板(図示せず)に取り付けられる。電極膜15,17および導電部材2,3が、その支持基板に対して垂直になるように、支持基板に取り付けられている。この支持基板は、カメラヘッド部109の前述の支持部材に設置される。支持基板に設けられた配線13A,13B,13C,13Dが、各行の半導体検出器1の配列に設けられたそれぞれの導電部材3に別々に接続される。支持基板に設けられた配線14A,14B,14C,14Dが、各列の4個の半導体検出器1に設けられた各導電部材2に接続される。
【0036】
信号処理装置20は、図示していないアナログデジタル変換器(ADC)、および同時性判定装置21を含んでいる。配線13A,13B,13C,13Dは、チャージアンプ11A、及びシェイピングアンプ12Aをそれぞれ介して信号処理装置20のADCに接続される。ADCは同時性判定装置21に接続されている。配線14A,14B,14C,14Dは、チャージアンプ11B、及びシェイピングアンプ12Bをそれぞれ介して信号処理装置20のADCに接続される。ADCは同時性判定装置21に接続される。導電部材3は、ある一方向に配置された複数の半導体検出器1(具体的には行に配置された4個の半導体検出器1)を接続し、配線14Aはその一方向と交差する方向(具体的には直交する方向)に配置された複数の半導体検出器1(具体的には列に配置された4個の半導体検出器1)を接続する。配線14B,14C,14Dも、その一方向と交差する他の列の4個の半導体検出器1を接続している。
各行の半導体検出器1の配列において、隣接する電極膜15同士、および導電部材2同士をそれぞれ絶縁する。本実施形態では、カソードの導電部材3側をグランドとしている。しかし、アノードの導電部材2側をグランドとしてもよい。
【0037】
数百セットの半導体検出装置10の各放射線検出部101のそれぞれの配線13A,13B,13C,13D、および配線14A,14B,14C,14Dは、上記したように、1つの信号処理装置20の同時性判定装置21に接続される。その信号処理装置20の同時性判定装置21は、データ収集処理装置30aに接続される。データ処理装置30aには、数百セットの半導体検出装置10が接続される信号処理装置20が数百個接続される。他のデータ処理装置30bにも、数百セットの半導体検出装置10が接続される信号処理装置20が数百個接続される。データ収集処理装置30a、30b等の複数のデータ収集処理装置は、画像データ作成装置40に接続される。表示装置50が画像データ作成装置40に接続される。前述のデータ収集解析装置103は、データ収集処理装置30a、30b等の複数のデータ収集処理装置、および画像データ作成装置40を含んでいる。チャージアンプ11A,11Bは前置増幅装置であり、波形整形増幅装置であるシェイピングアンプ12A,12Bは波形整形装置である。
ちなみに、カメラヘッド部109に設けられた多数の放射線検出部101はマトリックス状に配置される。列方向において隣り合う放射線検出部101同士は、電極膜17同士、具体的には導電部材3同士が向き合うように配置される。これらの導電部材3同士は、互いに電気的に接続されていない。
【0038】
チャージアンプ11A、11Bおよびシェイピングアンプ12A,12Bは、前述したように半導体検出器1が出力したγ線検出信号(誘起電荷信号)を電圧信号に変換し、増幅、整形する機能を有する。導電部材3に接続されたシェイピングアンプ12Aと、導電部材2に接続されたシェイピングアンプ12Bとは、シェイピングタイムが異なっている。すなわち、図6(a)に示すように、シェイピングアンプ12Aのシェイピングタイムは半導体検出器1から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)の立ち上がり時間(≒電荷収集時間)よりも長く設定される。この設定値は前述の第1シェイピングタイムに相当する。また、シェイピングアンプ12Bのシェイピングタイムはその立ち上がり時間よりも短く設定されている。この設定値は前述の第2シェイピングタイムに相当する。このため、シェイピングアンプ12Bのシェイピングタイムは、シェイピングアンプ12Aのそれよりも短い。
【0039】
シェイピングアンプ12Bのシェイピングタイムをシェイピングアンプ12Aのそれよりも短くしている理由を、以下に説明する。
放射線検出部101における各半導体検出器1は、γ線の検出感度を高めるために稠密に配置する必要がある。このため、列内で隣り合う導電部材3の相互間の間隔は、数10〜300μmと狭くしなければならない。これらの導電部材3同士は、相互に電気的に接続されていなく、互いに面と面を向かい合わせるように配置することになる。したがって、その間隔は十分な間隔であるとは言えず、それらの導電部材3間に大きな寄生容量が発生してしまう。導電部材3間に発生する寄生容量は、例えば約5〜20[pF]である。その寄生容量によって、導電部材3に接続されたシェイピングアンプ12Aにおける波形整形処理の特性が劣化してしまう。その特性の劣化は、特に短いシェイピングタイムによる波形整形処理において顕著になるため、同じシェイピングタイムを有する12A,12Bを用いた場合における捕獲欠損補正において特に問題となる。それらの導電部材3間で寄生容量が発生することは、それらの導電部材3が取り付けられて互いに向き合っている2つの電極膜17間でも寄生容量が発生していることになる。
列内で向き合っている2つの電極膜15は導電部材2で互いに直流的に接続されているため、それらの電極膜15間では寄生容量は発生しない。なお、行において隣接する導電部材2同士は電極膜15の端部で向かい合っており半導体母材4に対向する面で向き合わないため、それらの導電部材2間で発生する寄生容量は非常に小さい。
【0040】
発明者らは、導電部材3間で発生する大きな寄生容量の影響を抑制できる手法を、種々、検討した。その結果、発明者らは、導電部材2に接続されるシェイピングアンプ12Bに設定されたシェイピングタイムをシェイピングアンプ12Aに設定されたそれよりも短くすることによって、導電部材3間で発生する寄生容量の影響を抑制でき、放射線撮像装置におけるエネルギー分解能を向上できることを発見した。この新たな知見を適用することによって、導電部材2に接続されたシェイピングアンプ12Bは、シェイピングアンプ12Aに設定されたシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムで波形整形処理を行う。
【0041】
SPECT装置100を用いた被検者Pの検査について、以下に説明する。放射性薬剤を投与された被検者Pを載せたベッド106は、長手方向に移動される。このベッド106の移動は、SPECT装置100が設置された部屋内で操作パネル107を操作することによって行われる。被検者Pは、対向するカメラヘッド部109間に位置される。また、操作パネル107より、カメラヘッド部109を回転支持台105の半径方向に移動させ、カメラヘッド部109と被検者Pとの距離を調整する。ベッド106の移動および半径方向におけるカメラヘッド部109の移動は、データ入出力装置108を用いて遠距離から行うことも可能である。検査時においては、回転支持台105がモーター(図示せず)の駆動により回転される。このため、一対のカメラヘッド部109は、ベッド106に載っている被検者Pの回りを旋回する。被検者Pに投与された放射性薬剤は、集積部(例えば、がんの患部)Cに集まりγ線6を放出する。
【0042】
このγ線6は、旋回しているカメラヘッド部109に設けられたある半導体検出器1にコリメータCMの貫通孔を通して入射される。γ線6は、半導体検出器1における、図10の紙面に直交する方向で表側になる面より、半導体母材4に入射される。電極膜15と電極膜17の間に300Vの電圧が印加されている。γ線6と半導体母材4との相互作用により発生した電子が電極膜15に向かって移動し、正孔が電極膜17に向かって移動する。電極膜15から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)は、導電部材2を経て、該当する配線14によりチャージアンプ11B、シェイピングアンプ12Bおよび信号処理装置20の同時性判定装置21に順次入力される。電極膜17から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)は、導電部材3を経て、該当する配線13によりチャージアンプ11A、シェイピングアンプ12Aおよび信号処理装置20の同時性判定装置21に順次入力される。
【0043】
チャージアンプ11Aは、導電部材2から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)を増幅して得られた出力信号電圧を出力する。シェイピングアンプ12Aは、チャージアンプ11Aの出力信号電圧を入力し、所定の波形整形処理を行って得られた出力信号電圧を出力する。この出力信号電圧は、信号処理装置20のADCにおいてデジタル信号に変換されて同時性判定装置21に入力される。このデジタル信号の波高値は、例えば、図8(a)に示すH2(または図8(b)に示すH1等)である。チャージアンプ11Bは、導電部材3から出力されたγ線検出信号(誘起電荷信号)を増幅して得られた出力信号電圧を出力する。シェイピングアンプ12Aのシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムが設定されたシェイピングアンプ12Bは、チャージアンプ11Bの出力信号電圧を入力し、所定の波形整形処理を行って得られた出力信号電圧を出力する。この出力信号電圧も、信号処理装置20のADCにおいてデジタル信号に変換されて同時性判定装置21に入力される。このデジタル信号の波高値は、例えば、図8(a) (または図8(b))に示すH1である。
【0044】
信号処理装置20の同時性判定装置21は、数百セットの半導体検出部101の半導体検出器1に接続されるそれぞれのシェイピングアンプ12A,12Bの各出力信号電圧を入力し、各セット(放射線検出部101)ごとにγ線を検出した半導体検出器1の位置を特定する。例えば、16個の半導体検出器1のうち、図10において上から1行目で右から1列目に位置する半導体検出器1がγ線6を検出したとき、配線14Dおよび配線13Aにそれぞれ出力信号電圧が出力される。同時性判定装置21は、その2つの出力信号電圧が設定時間(例えば、1μs)内に到達したか否かを判定する。「設定時間内に到達した」と判定された場合は、その2つの出力信号電圧は、1つのγ線6の入射により同時に発生したγ線検出信号(誘起電荷信号)に基づいて発生したものである。そのγ線6を検出した半導体検出器1は、放射線検出部101において上記した上から1行目で右から1列目に位置する半導体検出器1であることが特定される。同時性判定装置21は、同時性判定で特定した、γ線6を検出した半導体検出器1の位置データ(位置情報)、この半導体検出器1の電極膜17からのγ線検出信号(誘起電荷信号)を配線13Aを介して入力したシェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値(ADCで変換されたデジタル値)、およびこの半導体検出器1の電極膜15からのγ線検出信号(誘起電荷信号)を配線14Dを介して入力したシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値(ADCで変換されたデジタル値)をデータ収集処理装置30aに送信する。この位置データは第1位置データという。なお、同時性判定装置21は信号処理装置20に外部接続されていてもよい。
【0045】
データ収集処理装置30aは、入力した、γ線を検出した半導体検出器1の第1位置データ、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を蓄積する。データ収集処理装置30aは、信号処理装置20に接続され、各信号処理装置20からのデータを収集する。そして、データ収集処理装置30aは、設定されたタイミングで、蓄積されている位置データ、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を画像データ作成装置40に送信する。なお、データ収集処理装置30bも、データ収集処理装置30aと同様の処理を行う。
【0046】
画像データ作成装置40は、データ収集処理装置30a,30bから第1位置データ、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を入力し、それらのデータに基づいて、被検者Pに対するRI分布の断層像データを作成する。すなわち、画像データ作成装置40は、γ線を検出したときにおける、旋回しているカメラヘッド部109の位置を、時刻データに基づいて、求める。このカメラヘッド部109の位置を示す位置データを、第2位置データという。第1および第2位置データ基づいて、γ線を検出したときにおける半導体検出器1の、被検者Pの周囲における位置(γ線検出位置という)を正確に算出することができる。γ線検出位置の算出は画像データ作成装置40で行われる。γ線検出位置が分ると、γ線が通過した、コリメータCMの貫通穴との関係で、γ線の入射方向を正確に把握することができる。画像データ作成装置40は、γ線検出信号(誘起電荷信号)を検出した多数の半導体検出器1のγ線検出位置、およびこれらの位置でのγ線入射方向の各データに基づいて、被検者Pに対する断層像データ(RI分布の画像データ)を作成する。この断層像データは、表示装置50に表示される。
【0047】
画像データ作成装置40は、図12に示す情報をメモリ(図示せず)に記憶している。図12に示す情報は、短いシェイピングタイムが設定されたシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値と長いシェイピングタイムが設定されたシェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値との関係で波高値の較正用曲線を示したものである。例えば、画像データ作成装置40が、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値yE、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値xEを入力したとする。図12において、波高値xEと波高値yEの交点Qは、入力75Eの較正用曲線上に位置する。この75Eが半導体検出器12入射されたγ線の波高値、すなわち、そのγ線のエネルギーとなる。このようにして、半導体検出器12入射されたγ線のエネルギーを、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値をシェイピングアンプ12Bから出力された出力信号電圧の波高値によって補正することによって精度良く求めることができる。SPECT撮像装置100のエネルギー分解能が向上する。なお、シェイピングアンプ12Aの出力信号電圧の波高値、およびシェイピングアンプ12Bの出力信号電圧の波高値を基にし、前述したような簡易的な処理(例えば、回転に相当する処理)を用いた前者の波高値の補正を、信号処理装置20で行うことも可能である。これによっても、半導体検出器12入射されたγ線のエネルギー分解能が求められる。
【0048】
画像データ作成装置40は、補正によって得られた、半導体検出器12に入射されたγ線の波高値に基づいて、被検体P内で散乱したγ線を検出したデータを除外し、設定された波高値以上の波高値を有するγ線検出信号(誘起電荷信号)を出力した半導体検出器1のγ線検出位置に基づいて、上記したように断層像データを作成する。直達線データとして認める、設定された波高値(エネルギーウィンドウ)は、使用する放射性薬剤に含まれる放射性同位体に対応して定められる。被検体Pの体内で散乱したγ線は、半導体検出器1に入射するときのエネルギーが低くなるので、そのγ線の検出信号の波高値は、設定された波高値よりも小さくなる。SPECT撮像装置100は、上記した補正により入射したγ線のエネルギー分解能を向上できる。
【0049】
このような本実施形態によれば、エネルギー分解能が良いため散乱線の除去を精度良く行うことができる。このため、γ線のエネルギー情報を用いて、被検体P内の放射性薬剤が集積した位置から曲がらずに半導体検出器1に入射されたγ線に基づく出力信号か、被検体Pの体内で曲がったγ線に基づく出力信号かを見分けることができる。従って、被検体Pの体内における放射性薬剤、すなわち放射性同位体の分布から広がりの小さい断層像データを得ることができる。
【0050】
本実施形態では、電気的に互いに接続され寄生容量が発生しない電極膜15に取り付けられた導電部材2に接続されたシェイピングアンプ12B(第2シェイピングアンプという)は、電気的に接続されていない状態で向き合っている電極膜17に接続されたシェイピングアンプ12A(第1シェイピングアンプという)に設定されたシェイピングタイムよりも短いシェイピングタイムで波形整形処理を行っている。このため、第1シェイピングアンプの出力信号電圧(第1出力信号という)の波高値および第2シェイピングアンプの出力信号電圧(第2出力信号という)の波高値に基づいて第1出力信号の波高値を補正することによって、第1出力信号の波高値の補正精度を高めることができ、エネルギー分解能を向上させることができる。本実施形態は、このように電気的に接続されない状態で向き合っている電極膜17間に発生する寄生容量の影響を抑制できるため、半導体検出器1をカメラヘッド部109により稠密に配置することができる。半導体検出器1のより稠密な配置は、被検者Pより放出されるγ線の検出感度を高めることになり、検査時間を短縮することにつながる。半導体検出器1のより稠密な配置は空間分解能の向上にもつながる。
【0051】
半導体母材4へのγ線の入射によって半導体母材4内で発生する電荷の収集時間は、半導体検出器1の電極膜15と電極膜17の間に印加する印加電圧を高めるか、それらの電極膜間の距離を短くすることによって、短縮される。リーク電流ノイズおよび基板絶縁寿命などの観点から、その印加電圧を低くすることが望まれる。本実施形態は、第2シェイピングアンプに設定されるシェイピングタイムを、第1シェイピングアンプに設定されるそのタイムよりも短くしているので、印加電圧(バイアス電圧)を200Vに低減できる。
印加電圧を下げると捕獲欠損が増え、通常のシェイピングアンプ一個の測定ではエネルギー分解能が悪くなる。しかしながら、本実施形態により、シェイピングアンプ二個(第1及び第2シェイピングアンプ)での補正が稠密配置でも実際に使えるものになるため、シェイピングアンプ一個での測定に比べて低い印加電圧で高いエネルギー分解能を得ることができる。ちなみに、従来の印加電圧は例えば600Vであり、本実施形態では150Vである。この差により実装上の線間距離などの制約が大幅に改善される。このように、本実施形態は、印加電圧を低減できて、エネルギー分解能を向上できる。その印加電圧の低減は、放射線検出部101の絶縁を緩和することができる。
【0052】
本実施形態は、行内に配列された4つの半導体検出器1の電極膜17が互いに電気的に接続され(導電部材3によって)、また、列内に配列された4個の半導体検出器1の電極膜15が互いに電気的に接続されているため、マトリクス状の4×4=16ピクセルに対し信号読出しチャンネル数が8となり、信号読出しチャンネル数が低減される。説明の都合上4×4ピクセルとしたが、これに限らずN×Nピクセルのときに2N個となり、計数率および検出器静電容量が許す範囲でNを大きくすれば信号読出しチャンネル数が大幅に低減される。これにより、支持基板に設ける信号取り出し用配線の数を著しく低減できる。このような効果を得ることができるSPECT装置100は、前述したように、寄生容量の影響の抑制により半導体検出器1をより稠密に配置できるが、信号読出しチャンネル数が著しく少ないので、支持基板における配線の設置は混雑しなく容易に設置することができる。
【0053】
本実施形態は、半導体検出器1の電極膜15、17を支持基板に垂直に配置しているため、それらの支持基板に対して水平に配置した場合に比べて、半導体検出器1を更に稠密に配置することができる。これは、前者の垂直配置では、それぞれの電極膜と支持基板に設けた配線とを接続する配線等の導電部材を配置するために必要とする、隣り合う半導体検出器1相互間の間隔を狭くすることができるからである。
また、導電性の金属板で構成された導電部材2で2つの半導体検出器1の電極膜15同士を接続し、また、行内の4個の半導体検出器1の電極膜17を導電性の金属板で構成された導電部材3で接続し、配線の最初期段階で上記マトリクス状配線を行うことで、その接続作業を容易に行うことができる。導電部材2,3で接続した複数の半導体検出器1を支持基板上に配置し、導電部材2,3と支持基板に設けた該当する配線(配線14,13)を接続すればよいので、半導体検出器1の電極膜15,17と支持基板の配線との接続を短時間に完了することができる。
【0054】
≪その他の実施の形態≫
以上に本発明の好適な一実施形態である放射線撮像装置について説明したが、本発明は前記実施の形態やその説明上記載した数値に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、以下のような実施形態が考えられる。
(1)図10に示す実施形態は、半導体検出器1が4×4のマトリックス状に配置された放射線検出部101の構成を有している。これに限定されることなく、半導体検出器1をm×n(m≧2、n≧2、m、nは自然数)のマトリックス状に配置した放射線検出部を用いてもよい。
【0055】
(2)半導体検出器1の電極膜15,17の替りに、図1に示すように、導電性金属板の電極23,24を互いに向き合うように半導体母材4に設置し、導電部材2、3を削除しても良い。電極23は、放射線検出部に含まれる4行4列に配置された半導体検出器1のそれぞれの半導体母材4に導電性接着剤により取り付けられる。電極24は、各行内の4個の半導体検出器1で共用される。すなわち、1つの電極24が、行内の4個の半導体検出器1のそれぞれの半導体母材4に導電性接着剤により取り付けられる。列内で隣り合う2つの電極24は電気的に接続されない状態で向き合っている。また、列内で隣り合う2つの電極23は、導電性接着剤で接合され、電気的に接続されている。これらの電極23は配線で接続しても良い。2つのシェイピングアンプ12Aに接続される配線13が電極24に接続され、シェイピングアンプ12Bに接続される配線14が列内の4個の半導体検出器1の各電極23に接続される。半導体母材4および電極23,24は、それぞれ垂直状態で前述の他の支持部材に取り付けられる。なお、電極24は、各行内で4個の半導体検出器4に対する共通電極としてではなく、それぞれの半導体検出器1に個別に設けてもよい。この場合には、行内の4個の半導体検出器1のそれぞれの電極24は、配線13によって接続される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に用いる半導体検出器の構成図である。
【図2】図1の半導体検出器の半導体母材においてγ線の入射位置による発生した電荷の動作を示す図である。
【図3】半導体検出器の半導体母材におけるγ線の入射位置によるγ線検出信号の違いを示す図であり、(a)はγ線の入射位置がカソード電極直近である場合でのγ線検出信号を示す説明図、(b)はγ線の入射位置がアノード電極直近である場合でのγ線検出信号を示す説明図、(c)はγ線の入射位置がアノード電極とカソード電極との中間である場合でのγ線検出信号を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に用いる半導体検出装置の基本構成図である。
【図5】図5に示す半導体検出装置のチャージアンプおよびシェイピングアンプが出力する出力信号電圧を示す特性図であり、(a)はチャージアンプの出力信号電圧を示す特性図、(b)はシェイピングアンプの出力信号電圧を示す特性図である。
【図6】シェイピングアンプの欠損を示す説明図であり、(a)はシェイピングタイムの違いによるシェイピングアンプの出力信号電圧の波高値の違いを示す説明図、(b)は異なるシェイピングタイムごとにγ線の入射位置とシェイピングアンプの出力信号電圧との関係を示す特性図である。
【図7】シェイピングアンプの出力信号電圧と、その検出回数との関係を示すヒストグラム(エネルギースペクトル)である。
【図8】異なる2つのシェイピングタイムによって得られた2つの出力信号電圧を示す特性図であり、(a)は波高値に差がある、得られた2つの出力信号電圧の時間的な変化を示す特性図、(b)は波高値に差がない、得られた2つの出力信号電圧の時間的な変化を示す特性図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る放射線撮像装置の好適な一例であるSPECT装置の構成図である。
【図10】図9のSPECT装置に用いられた放射線検出装置の詳細構成図である。
【図11】図10に示された放射線検出装置の放射線検出部の詳細構成図である。
【図12】シェイピングタイムが短いシェイピングアンプの出力信号電圧の波高とシェイピングタイムが長いシェイピングアンプの出力信号電圧の波高との関係で較正用曲線を示した特性図である。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体検出器(半導体放射線検出器)
2,3 導電部材
4 半導体母材
5 高圧電源
6 γ線(放射線)
7 電子
8 正孔
10 半導体検出装置(半導体放射線検出装置)
11,11A,11B チャージアンプ(増幅装置)
12,12A,12B シェイピングアンプ(増幅装置)
15 電極膜(電極)
17 電極膜(電極)
20 信号処理装置
21 同時性判定装置
40 画像データ作成装置
100 SPECT装置
101 放射線検出部
103 データ収集解析装置
105 回転支持台
109 カメラヘッド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、およびある一方向の配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記配列内の複数の前記放射線検出器の前記第1電極に別々に設けられ、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からのそれぞれの出力を入力する信号処理装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器毎に別々に設けられ、前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記他の方向の前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極が一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極に取り付けられ、これらの半導体放射線検出器を一体化する第1導電部材と、
前記複数の半導体放射線検出器の前記第2電極にそれぞれ取り付けられた第2導電部材と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
前記第1導電部材毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内のそれぞれの前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記第1電極、前記第2電極、前記第2導電部材および前記第1導電部材が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は導電性の金属板であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記半導体放射線検出器を前記一方向に複数個並べた前記配列を、前記一方向と直交する前記他の方向に複数列並べて配置したことを特徴とする請求項3または請求項8のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、およびある一方向の配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器の前記第1電極に別々に設けられ、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からのそれぞれの出力を入力する信号処理装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器毎に別々に設けられ、前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記他の方向の前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極が一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極に取り付けられ、これらの半導体放射線検出器を一体化する第1導電部材と、
前記複数の半導体放射線検出器の前記第2電極にそれぞれ取り付けられた第2導電部材と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
前記第1導電部材毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内のそれぞれの前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記第1電極、前記第2電極、前記第2導電部材および前記第1導電部材が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は導電性の金属板であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記半導体放射線検出器を前記一方向に複数個並べた前記配列を、前記一方向と直交する前記他の方向に複数列並べて配置したことを特徴とする請求項3ないし請求項8のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
前記第1電極および前記第2電極が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項1】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、およびある一方向の配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記配列内の複数の前記放射線検出器の前記第1電極に別々に設けられ、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からのそれぞれの出力を入力する信号処理装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器毎に別々に設けられ、前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記他の方向の前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極が一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極に取り付けられ、これらの半導体放射線検出器を一体化する第1導電部材と、
前記複数の半導体放射線検出器の前記第2電極にそれぞれ取り付けられた第2導電部材と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
前記第1導電部材毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内のそれぞれの前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記第1電極、前記第2電極、前記第2導電部材および前記第1導電部材が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は導電性の金属板であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記半導体放射線検出器を前記一方向に複数個並べた前記配列を、前記一方向と直交する前記他の方向に複数列並べて配置したことを特徴とする請求項3または請求項8のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、およびある一方向の配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器の前記第1電極に別々に設けられ、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からのそれぞれの出力を入力する信号処理装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器毎に別々に設けられ、前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている複数の前記半導体放射線検出器の前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記他の方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第1電極に接続され、前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内の複数の前記半導体放射線検出器のそれぞれの前記第2電極に接続され、前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記他の方向の前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極が一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
半導体部材、および間に前記半導体部材を挟むようにして前記半導体部材に設けられた第1電極および第2電極を有し、ある一方向に複数配列、その一方向と交差する他の方向に複数配列となるように配置され、および前記一方向の各配列内で、前記第1電極同士が電気的に接続されない状態で向き合うように配置された複数の半導体放射線検出器と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記配列内のそれぞれの前記半導体放射線検出器の第1電極に取り付けられ、これらの半導体放射線検出器を一体化する第1導電部材と、
前記複数の半導体放射線検出器の前記第2電極にそれぞれ取り付けられた第2導電部材と、
前記他の方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力の波形整形処理を行う第1波形整形装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内において互いに電気的に接続されている前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力の波形整形処理を行う第2波形整形装置と、
前記第1波形整形装置および前記第2波形整形装置からの出力に基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を特定する同時性判定装置とを備え、
前記第2波形整形装置の、前記波形整形処理を行うシェイピングタイムが、前記第1波形整形装置のそのシェイピングタイムよりも短く設定されている
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
前記第1導電部材毎に別々に設けられ、前記第1導電部材を介して入力される前記第1電極からの出力を増幅する第1前置増幅装置と、
前記一方向の前記複数配列毎に別々に設けられ、前記一方向の前記配列内のそれぞれの前記第2導電部材に接続され、前記第2導電部材を介して入力される前記第2電極からの出力を増幅する第2前置増幅装置とを備え、
前記第1波形整形装置は前記第1前置増幅装置の出力を入力する第1波形整形増幅装置であり、
前記第2波形整形装置は前記第2前置増幅装置の出力を入力する第2波形整形増幅装置である
ことを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記一方向の前記配列内で複数の前記半導体放射線検出器は、前記第1電極同士が向き合い、前記第2電極同士が向き合うように配置され、互いに向き合って配置された2つの前記第2電極は互いに電気的に接続され、これらの第2電極は前記一方の前記配列内で向き合っていない他の前記第2電極とも電気的に接続されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記第1電極、前記第2電極、前記第2導電部材および前記第1導電部材が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は導電性の金属板であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記半導体放射線検出器を前記一方向に複数個並べた前記配列を、前記一方向と直交する前記他の方向に複数列並べて配置したことを特徴とする請求項3ないし請求項8のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
前記第1電極および前記第2電極が、支持部材に垂直に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の放射線撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−71463(P2006−71463A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255297(P2004−255297)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【特許番号】特許第3622967号(P3622967)
【特許公報発行日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【特許番号】特許第3622967号(P3622967)
【特許公報発行日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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