説明

放射線撮影装置、及び放射線撮影システム

【課題】残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えた放射線撮影装置、及び放射線撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線検出器のTFT基板66に複数のセンサ部72が形成された検出領域を複数に区分し、残像を消去する光を個別に照射可能な複数の発光部162を区分毎に設け、撮影実績及び撮影条件の少なくとも一方に応じて、残像消去が必要な区分に必要な光量を各発光部162から光照射することで、消費電力を抑え、残像を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、及び放射線撮影システムに係り、特に、放射線源から射出されて被検者を透過した放射線により示される放射線画像の撮影を行う放射線撮影装置、及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、X線などの放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線撮影装置が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線撮影装置は、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。
【0003】
この種の放射線検出器は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を一度CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光をフォトダイオードなどのセンサ部で電荷に変換して蓄積する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等がある。放射線撮影装置では、放射線検出器に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号をアンプで増幅した後にA/D(アナログ/デジタル)変換部でデジタルデータに変換している。
【0004】
ところで、間接変換方式及び直接変換方式の放射線検出器では、フォトダイオードなどのセンサ部内や半導体層内の不純物電位に電荷がトラップされてしまい、残像を生じる場合がある。
【0005】
この残像を消去する技術として、放射線検出器の基板を光透過性を有する材料で形成し、基板側に導光板を配置して基板側から光を照射して放射線検出器の各センサ部の不純物電位を撮影前に埋めておくことでノイズを低下させる光キャリブレーション法が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、放射線を電荷に変換可能な変換素子を含む画素が行列状に複数配置された変換部を含む平面検出器の一方の面に対して光の放出が可能な複数の光源を配置し、平面検出器から所定の周期で取得された信号と予め設定された基準値とを比較し、比較した結果に基づいて複数の光源から平面検出器の一方の面、全面に対して光を放出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−256675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしならが、特許文献1の技術では、残像の発生を抑制できるものの、光源から平面検出器の一方の面、全面に対して光を照射するため、電力消費を抑えることができない、という問題点があった。
【0009】
近年、放射線検出器と、画像メモリを含む制御部およびバッテリなどの電源部を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線撮像装置(以下、「電子カセッテ」ともいう。)も実用化されている。この電子カセッテは、バッテリなどの電源部からの電力により動作するため、バッテリの容量を大きくした場合、重量が重くなって可搬性が低下し、また、装置のサイズも大型化してしまう。このため、特に、電子カセッテでは、電力消費を抑えることは重要である。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えた放射線撮影装置、及び放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線撮影装置は、放射線又は放射線が変換された光を検出するセンサ部が検出領域に複数形成され、放射線又は放射線が変換された光により表わされる放射線画像を撮影する撮影パネルと、前記検出領域を複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部が設けられた光照射手段と、前記撮影パネルにより撮影された過去の撮影実績を示す撮影実績情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された撮影実績情報により示される撮影実績及び撮影条件の少なくとも一方に応じて、前記光照射手段の各発光部からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
請求項1によれば、撮影パネルは、放射線又は放射線が変換された光を検出するセンサ部が検出領域に複数形成され、放射線又は放射線が変換された光により表わされる放射線画像を撮影する。また、光照射手段は、検出領域を複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部が設けられている。さらに、撮影パネルにより撮影された過去の撮影実績を示す撮影実績情報が記憶手段に記憶されている。
【0013】
そして、制御手段により、記憶手段に記憶された撮影実績情報により示される撮影実績及び撮影条件の少なくとも一方に応じて、前記光照射手段の各発光部からの光の照射の有無、光量、照射期間が制御される。
【0014】
このように、請求項1に記載の発明によれば、撮影パネルの放射線又は放射線が変換された光を検出する複数のセンサ部が形成された検出領域を複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部を設け、撮影実績及び撮影条件の少なくとも一方に応じて、各発光部からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御することにより、残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えることができる。
【0015】
なお、本発明は、請求項2記載の発明のように、前記撮影条件に、1回ずつ撮影を行う静止画撮影及び連続的に撮影を行う透視撮影の何れを行うか指定する情報が含まれ、前記制御手段が、前記撮影条件として透視撮影が指定された場合、撮影に同期して前記光照射手段の各発光部から光を照射させるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明は、請求項3記載の発明のように、前記撮影条件に、透視撮影のフレームレートを指定する情報が含まれ、前記制御手段が、前記撮影条件として指定された透視撮影のフレームレートが所定の閾値以上である場合、撮影に同期して前記光照射手段の各発光部から光を照射させようにしてもよい。
【0017】
また、本発明は、請求項4記載の発明のように、前記検出領域内における撮影領域の位置を取得する取得手段をさらに備え、前記制御手段が、前記取得手段により取得された前記撮影領域に対応する前記発光部から光を照射させるように前記光照射手段を制御してもよい。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、請求項5記載の発明のように、前記制御手段が、前記撮影領域に対応する発光部よりも光量を低下させて非撮影領域に対応する少なくとも一部の前記発光部も発光させてもよい。
【0019】
また、請求項4又は請求項5記載の発明は、請求項6記載の発明のように、前記撮影領域を、前記前記検出領域に対して放射線が照射される照射領域としてもよい。
【0020】
また、請求項4〜請求項6記載の発明は、請求項7記載の発明のように、前記撮影パネルの非照射領域の各センサ部に発生する暗電流による電荷量を検出する検出手段をさらに有し、前記制御手段が、前記検出により検出される暗電流による電荷量が少ないほど光量、照射期間が少なくなるように前記光照射手段を制御してもよい。
【0021】
また、本発明は、請求項8記載の発明のように、前記撮影パネルを駆動させる電力及び前記光照射手段の各発光部を発光させる電力を少なくとも供給するバッテリをさらに備え、前記前記制御手段が、前記バッテリに蓄積された電力の残量が所定の許容量よりも少ない場合、光の照射の停止、光量の低下、照射期間の短縮の何れかを行うように前記光照射手段を制御してもよい。
【0022】
また、本発明は、請求項9記載の発明のように、前記前記制御手段が、連続的に撮影を行う透視撮影中に静止画撮影を行う場合、当該静止画撮影の直前、直後の少なくとも一方、全ての発光部を発光させるように前記光照射手段を制御してもよい。
【0023】
また、本発明は、請求項10記載の発明のように、前記撮影実績を、過去の撮影において前記検出領域内で被検者を透過せず放射線が照射された部分を示すものとし、前記制御手段が、前記検出領域内の被検者を透過せず放射線が照射された部分に対して光が多く照射されるように前記光照射手段を制御してもよい。
【0024】
一方、上記目的を達成するために、請求項11記載の放射線撮影システムは、放射線又は放射線が変換された光を検出するセンサ部が検出領域に複数形成され、放射線又は放射線が変換された光により表わされる放射線画像を撮影する撮影パネルと、前記撮影領域を複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部が設けられた光照射手段と、撮影条件に応じて、前記光照射手段の各発光部からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御する制御手段と、を有している。
【0025】
従って、本発明によれば、請求項1同様に作用するため、残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る電子カセッテの内部構成を示す透過斜視図である。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図5】実施の形態に係る放射線検出器の薄膜トランジスタ及びコンデンサの構成を示した断面図である。
【図6】実施の形態に係るTFT基板の構成を示す平面図である。
【図7】実施の形態に係る電子カセッテ内部の構成を示す側面図である。
【図8】表面読取方式と裏面読取方式を説明するための断面側面図である。
【図9】実施の形態に係る発光パネルの構成を模式的に示した断面図である。
【図10】実施の形態に係る発光パネルの発光部の配置構成を示す平面図である。
【図11】(A)は各発光部の境界がTFT基板のセンサ部の間に位置するように発光パネルを配置した配置構成を示す断面図であり、(B)は各発光部の境界がTFT基板のセンサ部上に位置するように発光パネルを配置した配置構成を示す断面図である。
【図12】実施の形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態に係るコンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図14】実施の形態に係る可動絞り装置の構成を示す斜視図である。
【図15】第1の実施の形態に係る光キャリブレーション処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】第2の実施の形態に係る光キャリブレーション処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】他の実施の形態に係る天板を水平移動可能に構成された臥位撮影台を概略的に示した斜視図である。
【図18】(A)は実施の形態に係る放射線検出器と発光パネルの配置構成を示す断面図であり、(B)は他の形態に係る放射線検出器と発光パネルの配置構成を示す断面図である。
【図19】(A)(B)は他の形態に係る放射線検出器と発光パネルの配置構成を示す断面図である。
【図20】(A)(B)は他の形態に係る放射線検出器と発光パネルの配置構成を示す断面図である。
【図21】発光パネルの発光部を有機EL素子を構成した場合を示す断面図である。
【図22】(A)〜(D)は他の形態に係る発光パネルの発光部の配置構成を示す平面図である。
【図23】他の形態に係る直接変換方式の放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、電子カセッテを用いて放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影システムに適用した場合の形態例について説明する。
【0029】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」と称する。)10の構成について説明する。
【0030】
RIS10は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS(Hospital Information System)」と称する。)の一部を構成する。
【0031】
RIS10は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」と称する。)12、RISサーバ14、及び病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」と称する。)18を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク16に各々接続されて構成されている。なお、RIS10は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク16には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0032】
端末装置12は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置12を介して行われる。各端末装置12は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ14と病院内ネットワーク16を介して相互通信が可能とされている。
【0033】
RISサーバ14は、各端末装置12からの撮影依頼を受け付け、撮影システム18における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース14Aを含んで構成されている。
【0034】
データベース14Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)等の患者に関する情報、撮影システム18で用いられる、後述する電子カセッテ32の識別番号(ID情報)、型式、サイズ等の電子カセッテ32に関する情報、及び電子カセッテ32を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ32を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
【0035】
撮影システム18は、RISサーバ14からの指示に応じて医師や放射線技師などの撮影者の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム18は、放射線源130(図2も参照。)から曝射条件に従った線量とされた放射線X(図3も参照。)を被検者に照射する放射線発生装置34と、被検者の撮影部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器60(図3も参照。)を内蔵する電子カセッテ32と、電子カセッテ32に内蔵されているバッテリを充電するクレードル40と、電子カセッテ32,放射線発生装置34,及びクレードル40を制御するコンソール42と、を備えている。
【0036】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム18の放射線撮影室44における各装置の配置状態の一例が示されている。
【0037】
同図に示すように、放射線撮影室44には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台45と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台46とが設置されており、立位台45の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置48とされ、臥位台46の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置50とされている。
【0038】
立位台45には電子カセッテ32を保持する保持部150が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ32が保持部150に保持される。同様に、臥位台46には電子カセッテ32を保持する保持部152が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ32が保持部152に保持される。
【0039】
また、放射線撮影室44には、単一の放射線源130からの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線源130を、水平な軸回り(図2の矢印A方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印B方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印C方向)に移動可能に支持する支持移動機構52が設けられている。ここで、支持移動機構52は、放射線源130を水平な軸回りに回動させる駆動源と、放射線源130を鉛直方向に移動させる駆動源と、放射線源130を水平方向に移動させる駆動源を各々備えている(何れも図示省略。)。
【0040】
一方、クレードル40には、電子カセッテ32を収納可能な収容部40Aが形成されている。
【0041】
電子カセッテ32は、未使用時にはクレードル40の収容部40Aに収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル40から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台45の保持部150に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台46の保持部152に保持される。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る撮影システム18では、放射線発生装置34とコンソール42とをそれぞれケーブルで接続して有線通信によって各種情報の送受信を行うが、図2では、放射線発生装置34とコンソール42を接続するケーブルを省略している。また、電子カセッテ32とコンソール42との間は、無線通信によって各種情報の送受信を行う。なお、放射線発生装置34とコンソール42の間の通信も無線通信によって通信を行うものとしてもよい。
【0043】
なお、電子カセッテ32は、立位台45の保持部150や臥位台46の保持部152で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、保持部に保持されていない状態で使用することもできる。
【0044】
図3には、本実施の形態に係る電子カセッテ32の内部構成が示されている。
【0045】
同図に示すように、電子カセッテ32は、放射線Xを透過させる材料からなる筐体54を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ32は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ32を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ32を繰り返し続けて使用することができる。
【0046】
筐体54の内部には、被検者を透過した放射線Xが照射される筐体54の撮影面56側から順に、放射線Xによる放射線画像を撮影する放射線検出器60、放射線検出器60の残像を消去する光を発生する発光パネル61が配設されている。
【0047】
また、筐体54の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能で、かつ着脱可能なバッテリ96Aを収容するケース31が配置されている。放射線検出器60、及び電子回路は、ケース31に配置されたバッテリ96Aから供給される電力によって作動する。ケース31内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース31の撮影面56側には鉛板等を配設しておくことが望ましい。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32は、撮影面56の形状が長方形とされた直方体とされており、その長手方向一端部にケース31が配置されている。
【0048】
また、筐体54の外壁の所定位置には、‘レディ状態’,‘データ送信中’といった動作モード、バッテリ96Aの残容量の状態等の電子カセッテ32の動作状態を示す表示を行う表示部56Aが設けられている。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、表示部56Aとして、発光ダイオードを適用しているが、これに限らず、発光ダイオード以外の発光素子や、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の他の表示手段としてもよい。
【0049】
図4には、本実施形態に係る放射線検出器60の構成を模式的に示した断面図が示されている。
【0050】
放射線検出器60は、絶縁性基板64に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor、以下「TFT」という)70、及び蓄積容量68が形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)66を備えている。
【0051】
このTFT基板66上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ71が配置される。
【0052】
シンチレータ71としては、例えば、CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)を用いることができる。なお、シンチレータ71は、これらの材料に限られるものではない。
【0053】
絶縁性基板64としては、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであれば何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板64は、これらの材料に限られるものではない。
【0054】
シンチレータ71が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器60によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0055】
シンチレータ71に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0056】
シンチレータ71は、例えば、CsI(Tl)等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板への蒸着によって形成されてもよい。このように蒸着によってシンチレータ71を形成する場合、蒸着基板は、X線の透過率、コストの面からAlの板がよく使用されるがこれに限定されるものではない。なお、シンチレータ71としてGOSを用いる場合、蒸着基板を用いずにTFT基板66の表面にGOSを塗布することにより、シンチレータ71を形成してもよい。
【0057】
TFT基板66には、シンチレータ71によって変換された光が入射されることにより電荷を発生するセンサ部72が形成されている。また、TFT基板66には、TFT基板66上を平坦化するための平坦化層67が形成されている。また、TFT基板66とシンチレータ71との間であって、平坦化層67上には、シンチレータ71をTFT基板66に接着するための接着層69が形成されている。
【0058】
センサ部72は、上部電極72A、下部電極72B、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜72Cを有している。
【0059】
上部電極72A、及び下部電極72BはITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いて形成しており、光透過性を有する。
【0060】
光電変換膜72Cは、シンチレータ71から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cは、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光電変換膜72Cであれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光電変換膜72Cであれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光以外の電磁波が光電変換膜72Cに吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0061】
光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ71で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ71の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ71の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ71から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ71の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0062】
本実施の形態では、光電変換膜72Cに有機光電変換材料を含んで構成する。有機光電変換材料としては、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えば、キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ71の材料としてCsI(Ti)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。この光電変換膜72Cとして適用可能な有機光電変換材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0063】
図5には、本実施の形態に係るTFT基板66に形成されたTFT70及び蓄積容量68の構成が概略的に示されている。
【0064】
絶縁性基板64上には、下部電極72Bに対応して、下部電極72Bに移動した電荷を蓄積する蓄積容量68と、蓄積容量68に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力するTFT70が形成されている。蓄積容量68及びTFT70の形成された領域は、平面視において下部電極72Bと重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72とが厚さ方向で重なりを有することとなり、少なく面積で蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72を配置できる。
【0065】
蓄積容量68は、絶縁性基板64と下部電極72Bとの間に設けられた絶縁膜65Aを貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極72Bと電気的に接続されている。これにより、下部電極72Bで捕集された電荷を蓄積容量68に移動させることができる。
【0066】
TFT70は、ゲート電極70A、ゲート絶縁膜65B、及び活性層(チャネル層)70Bが積層され、さらに、活性層70B上にソース電極70Cとドレイン電極70Dが所定の間隔を開けて形成されている。
【0067】
活性層70Bは、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層70Bを構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0068】
活性層70Bを構成する非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えば、In−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えば、In−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0069】
活性層70Bを構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0070】
TFT70の活性層70Bを非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、TFT70におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0071】
また、活性層70Bをカーボンナノチューブで形成した場合、TFT70のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低いTFT70を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層70Bを形成する場合、活性層70Bに極微量の金属性不純物が混入するだけで、TFT70の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0072】
ここで、上述した非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば、持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0073】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0074】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く絶縁性基板64を形成できる。
【0075】
図6には、本実施の形態に係るTFT基板66の構成を示す平面図が示されている。
【0076】
TFT基板66には、上述のセンサ部72、蓄積容量68、TFT70と、を含んで構成される画素74が一定方向(図6の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図6の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0077】
また、TFT基板66には、一定方向(行方向)に延設され各TFT70をオン・オフさせるための複数本のゲート配線76と、交差方向(列方向)に延設されオン状態のTFT70を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。
【0078】
放射線検出器60は、平板状で平面視において外縁に4辺を有する四辺形状をしている。具体的には矩形状に形成されている。
【0079】
本実施形態に係る放射線検出器60は、図4に示すように、このようなTFT基板66の表面にシンチレータ71が貼り付けられて形成される。
【0080】
シンチレータ71は、例えば、CsI:Tl等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板73への蒸着によって形成される。なお、シンチレータ71としてGOSを用いる場合、蒸着基板73を用いずにTFT基板66の表面にGOSを塗布することにより、シンチレータ71を形成してもよい。
【0081】
図7には、本実施の形態に係る電子カセッテ32内部の放射線検出器60の配置構成を示す側面図が示されている。なお、図7では、TFT基板66の画素74が2次元状に複数設けられた検出領域66Aを識別しやすくするため、検出領域66Aを層として示している。
【0082】
電子カセッテ32内部には、筐体54の撮影面56を構成する天板部分にTFT基板66側が天板側となるように放射線検出器60が貼付けられている。
【0083】
ここで、放射線検出器60は、図8に示すように、シンチレータ71が形成された側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の裏面側に設けられたTFT基板66により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式(所謂PSS(Penetration Side Sampling)方式)とされた場合、シンチレータ71の同図上面側(TFT基板66の反対側)でより強く発光し、TFT基板66側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の表面側に設けられたTFT基板66により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式(所謂ISS(Irradiation Side Sampling)方式)とされた場合、TFT基板66を透過した放射線がシンチレータ71に入射してシンチレータ71のTFT基板66側がより強く発光する。TFT基板66に設けられた各センサ部72には、シンチレータ71で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器60は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板66に対するシンチレータ71の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0084】
本実施の形態では、図7に示すように、筐体54の撮影面56を構成する天板部分にTFT基板66側が天板側となるように放射線検出器60を貼付けている。これにより、高い分解能の放射線画像を撮影できる。
【0085】
このような放射線検出器60のシンチレータ71側の面には、発光パネル61が配置されている。
【0086】
図9には、本実施の形態に係る発光パネル61の構成を模式的に示した断面図が示されている。
【0087】
発光パネル61は、例えば、支持基板160上に、個別に発光が可能な複数の発光部162が配置されている。各発光部162には、平板矩形状の導光板164と、導光板164へ光を照射する発光ダイオードなどの発光素子166と、が設けられている。
【0088】
導光板164は、一方の側面168A側が厚く、側面168Aの反対側の側面168B側が薄くなるように一方の面170Aを傾斜させて形成されている。また、導光板164は、側面168Aの他方の面170B側の角部が窪んでおり、側面168Aの面170B側に段差が設けてられている。各導光板164は、薄い側面168Bが隣の導光板164の側面168Aの段差の窪み部分に重なるように配置されている。各発光素子166は、各導光板164の段差の凸部分に、隣りの導光板164と重なるように配置されている。各導光板164には、側面168Aに設けられた各発光素子166からの光が入射する。
【0089】
発光パネル61の発光部162は、放射線検出器60の各画素74に設けられたセンサ部72ほど細かく形成する必要はなく、センサ部72よりも大きく、放射線検出器60の数十から数百画素のサイズで形成すればよい。
【0090】
図10には、本実施の形態に係る発光パネル61の発光部162の配置構成を示す平面図が示されている。
【0091】
発光パネル61には、発光部162が一定方向(図10の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図10の列方向)に多数配置されており、例えば、発光部162を行方向及び列方向に4個ずつマトリクス状に配置する。
【0092】
発光パネル61の複数の発光部162による発光エリアは、TFT基板66の画素74が2次元状に複数設けられた矩形状の検出領域66Aよりも大きいサイズとされている。
【0093】
本実施の形態では、シンチレータ71の蒸着基板73をガラスなどの光透過性を有する基板としている。そして、発光パネル61を、図11(A)に示すように、放射線検出器60の蒸着基板73側に発光部162が対向するように配置している。
【0094】
なお、発光パネル61の各発光部162は、図11(A)に示すように、各発光部162の境界がTFT基板66のセンサ部72の間に位置するように配置してもよいが、図11(B)に示すように、各発光部162の境界がTFT基板66のセンサ部72上になるように配置してもよい。各発光部162の境界がTFT基板66のセンサ部72上になるように配置することにより、各発光部162の境界のセンサ部72に2つの発光部162からの光が照射されるため、放射線検出器60により撮影される放射線画像で発光部162の境界となる位置に段差が発生することを抑制できる。
【0095】
図12には、第1の実施の形態に係る電子カセッテ32の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0096】
放射線検出器60は、上述したように、センサ部72、蓄積容量68、TFT70を備えた画素74がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ32への放射線Xの照射に伴ってセンサ部72で発生された電荷は、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ32に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0097】
また、放射線検出器60の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ80に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部82に接続されている。個々の画素74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素74のTFT70は、ゲート線ドライバ80からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部82に入力される。従って、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0098】
信号処理部82は、個々のデータ配線78毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線78を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルデータへ変換される。
【0099】
信号処理部82には画像メモリ90が接続されており、信号処理部82のA/D変換器から出力されたデジタルデータは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、放射線検出器60の各画素74のデジタルデータが画像データとして画像メモリ90に順次記憶される。
【0100】
画像メモリ90は電子カセッテ32全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU(中央処理装置)92A、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ92B、HDD(ハードディスク・ドライブ)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0101】
一方、発光パネル61には、各発光部162に対応して複数の発光素子166が設けられている。また、発光パネル61には、発光素子166とそれぞれ個別に接続された複数の配線172が設けられている。各配線172はカセッテ制御部92に接続されている。よって、カセッテ制御部92は各発光素子166の発光を制御することができる。
【0102】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。本実施の形態に係る無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介してコンソール42と無線通信が可能とされており、コンソール42との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0103】
また、電子カセッテ32には電源部96が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ80、信号処理部82、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92、発光素子166等)は、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ32の可搬性を損なわないように、前述したバッテリ(二次電池)96Aを内蔵しており、充電されたバッテリ96Aから各種回路や各素子へ電力を供給する。なお、図12では、電源部96と各種回路や各素子を接続する配線の図示を省略している。
【0104】
図13には、本実施の形態に係るコンソール42及び放射線発生装置34の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0105】
コンソール42は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ100と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル102と、を備えている。
【0106】
また、本実施の形態に係るコンソール42は、装置全体の動作を司るCPU104と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106と、各種データを一時的に記憶するRAM108と、各種データを記憶して保持するHDD110と、ディスプレイ100への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ112と、操作パネル102に対する操作状態を検出する操作入力検出部114と、を備えている。また、コンソール42は、接続端子42A及び通信ケーブル35を介して放射線発生装置34との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部116と、電子カセッテ32との間で無線通信により撮影条件や画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部118と、を備えている。
【0107】
CPU104、ROM106、RAM108、HDD110、ディスプレイドライバ112、操作入力検出部114、通信インタフェース部116、及び無線通信部118は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU104は、ROM106、RAM108、HDD110へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ112を介したディスプレイ100への各種情報の表示の制御、通信I/F部116を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御、及び無線通信部118を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU104は、操作入力検出部114を介して操作パネル102に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0108】
一方、放射線発生装置34は、放射線Xを射出する放射線源130と、放射線源130による放射線Xの照射領域を制限する可動絞り装置131と、コンソール42との間で曝射条件等の各種情報を送受信する通信I/F部132と、受信した曝射条件に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、支持移動機構52に備えられた各駆動源への電力供給を制御することにより放射線源130の垂直方向への移動を制御する線源駆動制御部140を備えている。
【0109】
線源制御部134もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件や姿勢情報を記憶する。このコンソール42から受信する曝射条件には管電圧、管電流、照射期間等の情報が含まれている。線源制御部134は、曝射開始が指示されると、受信した曝射条件に基づいて放射線源130から放射線Xを照射させる。放射線源130から照射された放射線Xは、可動絞り装置131を通過して患者に照射される。
【0110】
可動絞り装置131は、図14に示すように、スリット板135,136と、スリット板137,138と、が設けられている。スリット板135,136及びスリット板137,138は、不図示のモータまたはソレノイドの駆動力により移動可能とされている。可動絞り装置131は、スリット板135,136が一方向(X方向)にそれぞれ個別に移動することにより放射線源130による放射線Xの照射領域をX方向に変更し、スリット板137,138が一方向に対する交差方向(Y方向)にそれぞれ個別に移動することにより放射線源130による放射線Xの照射領域をY方向に変更する。
【0111】
放射線発生装置34には、スリット板135,136及びスリット板137,138の操作や支持移動機構52の操作を行うための操作パネル133が設けられている。撮影者は操作パネル133を操作して、支持移動機構52により放射線源130の位置やスリット板135,136及びスリット板137,138の配置関係を調整することにより、放射線Xの照射領域を変更することが可能とされている。なお、放射線Xの照射領域は、例えば、放射線源130の近傍に撮像カメラを設け、放射線によって撮影される撮影部位を撮像して、コンソール42のディスプレイ100に表示させることによって、操作者に確認させてもよい。また、放射線源130の近傍に可視光を照射する可視光ランプを設け、被検者の身体の撮影部位を照射させることによって、操作者に確認させてもよい。
【0112】
次に、本実施の形態に係る撮影システム18の作用を説明する。
【0113】
本実施の形態に係る撮影システム18は、1回ずつ撮影を行う静止画撮影と、連続的に撮影を行う透視撮影が可能とされており、撮影モードとして静止画撮影又は透視撮影が選択可能とされている。
【0114】
端末装置12(図1参照。)は、放射線画像の撮影する場合、医師又は放射線技師からの撮影依頼を受け付ける。当該撮影依頼では、撮影対象とする患者、撮影対象とする撮影部位、撮影モードが指定され、管電圧、管電流、照射期間などが必要に応じて指定される。
【0115】
端末装置12は、受け付けた撮影依頼の内容をRISサーバ14に通知する。RISサーバ14は、端末装置12から通知された撮影依頼の内容をデータベース14Aに記憶する。
【0116】
コンソール42は、RISサーバ14にアクセスすることにより、RISサーバ14から撮影依頼の内容及び撮影対象とする患者の属性情報を取得し、撮影依頼の内容及び患者の属性情報をディスプレイ100(図9参照。)に表示する。
【0117】
撮影者は、ディスプレイ100に表示された撮影依頼の内容に基づいて放射線画像の撮影を開始する。
【0118】
コンソール42は、放射線画像の撮影が指示されると、ディスプレイ100に撮影条件等を入力するための図示しない撮影メニュー入力画面を表示し、オペレータに入力させる。撮影メニュー入力画面では、これから行う放射線画像の撮影のための撮影条件としての撮影メューの入力を促すメッセージと、各種の情報の入力領域が表示される。撮影メニューには、例えば、放射線画像の撮影を行う被検者の氏名、撮影部位、撮影時の姿勢(本実施の形態では、臥位または立位)、撮影時の放射線Xの曝射条件(本実施の形態では、放射線Xを曝射する際の管電圧、管電流、及び照射期間)、撮影モード、フレームレート等が含まれる。
【0119】
例えば、図2に示すように、臥位台46上に横臥した被検者の患部の撮影を行う際、撮影者は、臥位台46の保持部152に電子カセッテ32を収納する。また、撮影者は、操作パネル133を操作して、撮影部位上方に放射線発生装置34を配置し、操作パネル133を操作して撮影部位および周辺のみに放射線Xが照射されるように可動絞り装置131により放射線Xの照射領域を限定する。線源制御部134は、操作パネル133が操作されて線源駆動制御部140及び可動絞り装置131が動作すると、線源駆動制御部140及び可動絞り装置131の動作状態に基づいて放射線源130から臥位台46に対して放射線Xが照射される照射領域を特定し、特定した照射領域をコンソール42へ通知する。
【0120】
また、撮影者は、操作パネル102に対して撮影モードとして静止画撮影又は透視撮影を指定し、さらに、静止画撮影を指定した場合、操作パネル102に対して放射線Xを照射する際の管電圧、管電流、照射期間等を指定し、透視撮影を指定した場合、操作パネル102に対して放射線Xを照射する際の管電圧、管電流、透視撮影のフレームレートを指定する。
【0121】
コンソール42は、撮影モードとして静止画撮影が指定された場合、管電圧、管電流、照射期間等の各種情報を曝射条件として放射線発生装置34へ送信し、撮影モードとして透視撮影が指定された場合、管電圧、管電流等の各種情報を曝射条件として放射線発生装置34へ送信する。また、コンソール42は、撮影モードとして静止画撮影が指定された場合、撮影モード、曝射条件、及び放射線発生装置34から通知された照射領域等の各種情報を撮影条件として電子カセッテ32へ送信し、撮影モードとして透視撮影が指定された場合、撮影モード、曝射条件、放射線発生装置34から通知された照射領域、及び透視撮影のフレームレート等の各種情報を撮影条件として電子カセッテ32へ送信する。
【0122】
放射線発生装置34の線源制御部134は、コンソール42から曝射条件を受信すると、受信した曝射条件を記憶し、電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から撮影条件を受信すると、受信した撮影条件を記憶部92Cに記憶する。
【0123】
そして、撮影者は、撮影準備完了すると、コンソール42の操作パネル102に対して撮影開始を指示する指示操作を行う。
【0124】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始を指示する指示操作が行なわれた場合、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0125】
放射線発生装置34は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線の発生・射出を開始する。
【0126】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、記憶部92Cに撮影条件として記憶された撮影モードに応じて撮影制御を行う。
【0127】
具体的に、撮影モードが静止画撮影モードの場合、カセッテ制御部92は、撮影条件に含まれる曝射条件で指定された照射期間経過した後に、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させる。
【0128】
一方、撮影モードが透視撮影モードの場合、カセッテ制御部92は、撮影条件に含まれる曝射条件で指定されたフレームレートに応じた撮影周期を求め、撮影周期毎に、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させる。
【0129】
TFT基板66は、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出す。各データ配線78に流れ出した電気信号は信号処理部82でデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ90に記憶される。
【0130】
カセッテ制御部92は、画像メモリ90に記憶された画像情報を無線通信によりコンソール42へ随時送信する。
【0131】
透視撮影の場合、撮影者は、撮影を終了する際にコンソール42の操作パネル102に対して撮影終了を指示する指示操作を行う。
【0132】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影終了を指示する指示操作が行なわれた場合、曝射終了を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。これにより、放射線発生装置34は、放射線の照射を停止し、電子カセッテ32は、透視撮影を終了する。
【0133】
ところで、放射線検出器60は、センサ部72内の不純物電位に一部の電荷がトラップされてしまう場合がある。この不純物電位にトラップされることによるラグ信号は、照射された放射線量が多いと信号レベルが高くなる。このため、大線量の放射線を照射して撮影を行った場合、被検者を透過して放射線が照射された部分と被検者を透過せず放射線がそのまま照射された部分(所謂、素抜部分)とでラグ信号の信号レベルに段差が発生する。
【0134】
また、ラグ信号は、撮影直後、多く発生するが時間の経過と共に低下し、速やかに消える。
【0135】
そこで、本実施の形態では、撮影条件として透視撮影が指定された場合、撮影周期に合わせて発光パネル61の各発光部162を発光させて放射線検出器60の各画素74のセンサ部72に光を照射し、各センサ部72の不純物電位を埋める光キャリブレーション処理を行う。
【0136】
図15には、曝射開始を指示する指示情報を受信した際に、カセッテ制御部92のCPU92Aにより実行される光キャリブレーション処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはメモリ92B(ROM)の所定の領域に予め記憶されている。
【0137】
同図のステップS10では、撮影条件により示される撮影モードが透視撮影モードであるか否か判定、肯定判定となった場合はステップS12へ移行し、否定判定(撮影モードが静止画撮影モード)となった場合は処理終了となる。
【0138】
ステップS12では、撮影条件により示されるフレームレートが所定の閾値以上であるか否か判定し、肯定判定となった場合はステップS14へ移行し、否定判定(撮影モードが静止画撮影モード)となった場合は処理終了となる。
【0139】
ここで、放射線検出器60の各センサ部72内の不純物電位にトラップされる電荷は、撮影後、数msec〜数十msecの間に頻繁にリリースされ、撮影後、数百msec程度経過すると画像に影響がないレベルまで低下する。このため、透視撮影のフレームレートが高い場合、各データ配線78に流れ出した電気信号にラグ信号が多く含まれ、各フレームの画像に残像が発生する。また、ラグ信号の量は、各フレームでばらつきがあり、各フレームの画像に発生する残像には、ばらつきがある。
【0140】
このため、本実施の形態では、撮影条件として指定された透視撮影のフレームレートが、放射線検出器60の各センサ部72内の不純物電位にトラップされる電荷によって残像が発生する所定の閾値(例えば、30fps)以上の場合に光キャリブレーションを行うものとしている。この光キャリブレーションでは、各フレームの撮影の間の期間に、放射線検出器60に光を照射して各センサ部72内の不純物電位を電荷で埋めている。これにより、各センサ部72に不純物電位にトラップされる電荷量が多くなり、各データ配線78に流れ出す電気信号に含まれるラグ信号の量が多くなるが、各データ配線78に流れ出すラグ信号の量はそれぞれ略一定量となるため、以前の撮影の影響による残像を消去できる。また、各センサ部72内の不純物電位を前もって埋めておくことで、各フレームで発生するラグ信号のばらつきを抑えることもできる。
【0141】
ステップS14では、発光パネル61の各発光部162を発光させる光量Aを所定の初期光量とする。この初期光量は、各センサ部72内の不純物電位を十分に電荷で埋めて放射線検出器60に発生する残像をばらつきが少なく、画像の残像補正が容易なレベルに抑えることができる値に定められている。
【0142】
ステップS16では、透視撮影が終了したか否かを判定し、肯定判定となった場合は処理終了となり、否定判定となった場合はステップS18へ移行する。
【0143】
ステップS18では、撮影条件に含まれる照射領域を撮影領域として、放射線検出器60による撮影周期毎の各撮影の間の期間に、発光パネル61の各発光部162のうち撮影領域に対応する発光部162を光量Aで発光させる。
【0144】
放射線検出器60には、撮影に同期して撮影領域に対応する各画素74のセンサ部72に発光パネル61から光を照射される。
【0145】
これにより、透視撮影で撮影される動画像において撮影領域に対応する部分での残像の発生が抑制される。また、発光パネル61の各発光部162のうち、撮影領域に対応する発光部162を発光させるため、全ての発光部162を発光させて光キャリブレーションを行う場合と比較して、電力消費を抑えることができる。
【0146】
ところで、放射線検出器60の各センサ部72の不純物電位にトラップされることによるラグ信号は、放射線検出器60の温度が高いほど増加する。また、放射線検出器60の各センサ部72には、暗電流により電荷も発生し、発生する電荷量も温度が高いほど増加する。この暗電流による電荷は、放射線が照射されていない画素74のセンサ部72にも発生する。
【0147】
そこで、ステップS20では、放射線検出器60により直近に撮影された放射線画像のうち、非撮影領域の画素の画素値が所定の基準値以下か否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS22へ移行し、否定判定となった場合はステップS16へ移行する。この非撮影領域の画素は、何れとしてもよく、例えば、撮影領域から最も離れた画素(最も離れた画素が複数ある場合は、何れかを選択)としてもよく、非撮影領域の端部に位置する何れかの画素としてもよく、予め候補となる画素を複数定めておき、候補となる複数の画素のうち非撮影領域内となった何れか画素としてもよく、非撮影領域の何れかの画素を適宜選択するものとしてもよい。また、非撮影領域の画素の画素値の代わりに、非撮影領域の全画素の画素値の平均値や非撮影領域のうち特定の画素の平均値が基準値以下か否かを判定としてもよく。
【0148】
ステップS22では、光量Aの値を所定値だけ小さく変更し、ステップS16へ移行する。
【0149】
放射線画像の非撮影領域の画像の画素値には、暗電流によるものが含まれる。このため、放射線画像の非撮影領域の画像の画素値が所定の基準値以下の場合、温度が低くセンサ部72の不純物電位でのトラップも減少するため、発光パネル61の各発光部162で発生させる光量Aを減少させることにより、消費電力を抑えることができる。
【0150】
なお、本実施の形態では、各発光部162で発生させる光量Aを減少させる場合について説明したが、各発光部162で発生させる光量は一定のまま、照射期間を短く変えるようにしてもよく、光量を減少させる共に照射期間を短く変えるものとしてもよい。
【0151】
以上のように、本実施の形態によれば、放射線検出器60の複数のセンサ部72が形成された検出領域66Aを複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部162を設け、撮影条件として静止画撮影が指定された場合、各発光部162からの光の照射を行わず、撮影条件として透視撮影が指定され、かつ透視撮影のフレームレートが所定の閾値以上である場合に、各発光部162からの光の照射のさせて光キャリブレーションを行うことにより、残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えることができる。
【0152】
また、本実施の形態によれば、発光パネル61の各発光部162のうち撮影領域に対応する発光部162を発光させるため、全ての発光部162を発光させて光キャリブレーションを行う場合と比較して、電力消費を抑えることができる。
【0153】
また、本実施の形態によれば、放射線検出器60の非照射領域の各センサ部72に発生する暗電流による電荷量が少ないほど発光部162から照射する光量を低下させることにより、電力消費を抑えることができる。
【0154】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0155】
第2の実施の形態に係るRIS10、撮影システム18、電子カセッテ32、放射線検出器60の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜図14参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0156】
本実施の形態に係る電子カセッテ32は、透視撮影中に静止画撮影が可能とされている。
【0157】
コンソール42では、透視撮影中、ディスプレイ100に静止画撮影の撮影を指示可能な操作画像が表示され、撮影者により操作パネル102から静止画撮影をする場合の管電圧、管電流、照射期間等が入力される。入力された管電圧、管電流、照射期間は、透視撮影中の静止画撮影の曝射条件として放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信される。放射線発生装置34の線源制御部134は、コンソール42から透視撮影中の静止画撮影の曝射条件を受信すると、受信した当該曝射条件を記憶し、電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から透視撮影中の静止画撮影の曝射条件を受信すると、受信した当該曝射条件を記憶部92Cに記憶する。
【0158】
撮影者は、透視撮影中に静止画撮影の撮影を行う場合、コンソール42の操作パネル102に対して静止画撮影を指示する指示操作を行う。
【0159】
コンソール42は、透視撮影中に操作パネル102に対して静止画撮影を指示する指示操作が行なわれた場合、透視撮影中の静止画撮影を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0160】
放射線発生装置34は、透視撮影中の静止画撮影を指示する指示情報を受信すると、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線の発生・射出を開始する。
【0161】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、透視撮影中の静止画撮影を指示する指示情報を受信すると、記憶部92Cに記憶された透視撮影中の静止画撮影の曝射条件で指定された照射期間経過した後に、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させて画像の読み出しを行う。
【0162】
ところで、静止画撮影では、高精細な放射線画像を得るため、単位時間当たりに照射される放射線量が大きく、透視撮影の場合と比較して単位時間当たりに照射される放射線量が10倍から100倍程度となる。このため、透視撮影中の静止画撮影を行った場合、その後の透視撮影の放射線画像に残像が発生しやすい。
【0163】
また、透視撮影中の静止画撮影であっても、静止画撮影の放射線画像は、残像が無いことが好ましい。
【0164】
そこで、本実施の形態に係る電子カセッテ32では、透視撮影中の静止画撮影を行う場合、静止画撮影の直前、直後に、発光パネル61の全ての発光部162をそれぞれ発光させて光キャリブレーションを行う。
【0165】
図16には、第2の実施の形態に係る光キャリブレーション処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、上記第1の実施の形態(図15参照)と同一の処理については、同一の符号をしてここでの説明は省略する。
【0166】
ステップS17では、透視撮影中の静止画撮影を指示する指示情報を受信したか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS30へ移行し、否定判定となった場合はステップS18へ移行する。
【0167】
ステップS30では、発光パネル61の全ての発光部162を所定の初期光量で発光させる。
【0168】
次のステップS32では、静止画撮影が終了したか否か判定し、肯定判定となった場合はステップS34へ移行し、否定判定となった場合は再度ステップS32へ移行して静止画撮影の終了待ちを行う。
【0169】
次のステップS34では、発光パネル61の全ての発光部162を所定の初期光量で発光させ、その後、ステップS16へ移行する。
【0170】
このように、透視撮影中の静止画撮影を行う場合、静止画撮影の直前に、発光パネル61の全ての発光部162をそれぞれ発光させて光キャリブレーションを行うことにより、静止画撮影で撮影される画像に透視撮影時の残像が生じることを抑制できる。
【0171】
また、透視撮影中の静止画撮影を行う場合、静止画撮影の直後に、発光パネル61の全ての発光部162をそれぞれ発光させて光キャリブレーションを行うことにより、静止画撮影時に大量の放射線量が照射された場合でも、その後の透視撮影で残像が生じることを抑制できる。
【0172】
また、このように静止画撮影の直前、直後に発光パネル61の全ての発光部162をそれぞれ発光させて光キャリブレーションを行うことにより、例えば、静止画撮影と透視撮影で撮影領域の大きさを異なるせる場合ににおいても、被検者を透過せず放射線がそのまま照射された素抜部分の残像の影響を低減できる。
【0173】
以上のように、本実施の形態によれば、連続的に撮影を行う透視撮影中に静止画撮影を行う場合、当該静止画撮影の直前に全ての発光部162を発光させるように制御しているので、静止画撮影で撮影される画像に透視撮影時の残像が生じることを抑制できる。
【0174】
また、本実施の形態によれば、連続的に撮影を行う透視撮影中に静止画撮影を行う場合、当該静止画撮影の直後に全ての発光部162を発光させるように制御しているので、透視撮影で静止画撮影の残像が生じることを抑制できる。
【0175】
以上、本発明を第1及び第2の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0176】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0177】
例えば、上記各実施の形態では、可搬型の放射線撮影装置である電子カセッテ32に本発明を適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0178】
また、上記各実施の形態では、電子カセッテ32のカセッテ制御部92において発光パネル61の発光の制御を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電子カセッテ32とコンソール42を有線接続し、コンソール42において発光パネル61の発光の制御を行うものとしてもよい。
【0179】
また、上記各実施の形態では、放射線発生装置34の可動絞り装置131により放射線の照射領域を限定し、コンソール42が当該照射領域を撮影領域として電子カセッテ32に通知することにより、電子カセッテ32は撮影領域の位置情報を取得する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電子カセッテ32が透視撮影の初期段階で撮影された放射線画像から放射線が照射された照射領域を特定することにより、撮影領域の位置情報を取得してもよい。照射領域は、放射線画像の各画素の画素値を放射線が照射されたことを示す所定のしきい値と比較することにより特定してもよい。また、コンソール42において、撮影条件として撮影部位が指定される場合は、記憶部92Cに各種の撮影部位の特徴を示すパターン画像を予め記憶させておき、カセッテ制御部92は撮影された放射線画像と指定された撮影部位に応じたパターン画像とのパターンマッチングを行って撮影部位が位置する領域を特定し、特定した領域を撮影領域としてもよい。さらに、透視撮影を指定した場合、電子カセッテ32の撮影面56のうち、撮影部位が配置される撮影領域を撮影者がコンソール42の操作パネル102から入力するものとしてもよい。
【0180】
また、電子カセッテ32は、撮影領域が移動するものとした場合、撮影領域の移動に合わせて、発光パネル61の発光させる発光部162を変更させるようにしてもよい。例えば、先端に様々な器具を取り付けたカテーテルを患者の体内に挿入し、モニタに表示される放射線動画像により患者の体内の状態を透視撮影でリアルタイムで観察しながら、カテーテルの先端を病変部にまで到達させ、カテーテルを体外で操作して治療を行うIVR(Interventional Radiology)の場合、カテーテルの先端を検出し、カテーテルの先端から所定の範囲を撮影領域としてもよい。カテーテルの先端の検出方法は、様々手法を用いることができる。カテーテルのガイドワイヤは放射線の吸収率が人体の各部と大きく相違するため、放射線画像上において、カテーテルのガイドワイヤに相当する画像部は、他の画像部と明確に濃度が相違している。従って、例えば、放射線画像上におけるカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置は、例えばカテーテルのガイドワイヤに相当する画像部とその他の画像部を弁別可能な閾値により放射線画像を二値化し、二値化後の放射線画像上でカテーテルのガイドワイヤに相当する画像部を細線化し、細線化によって得られた曲線の端部の位置をガイドワイヤの先端部の位置と認識する等の画像処理を行うことで検出することができる。また、例えば、カテーテルの先端部分にICタグや磁性体を設けて、センサ等でICタグや磁性体を検出することにより、カテーテルの先端を検出してもよい。
【0181】
また、例えば、臥位台46において、図17に示すように、被検者30が横臥する天板46Aを水平移動可能に構成し、透視撮影中に放射線源130と天板46Aを同期させて水平移動させて電子カセッテ32の撮影領域が特定の一部に偏らないようにを移動させるものとした場合、撮影領域の移動に合わせて発光パネル61の発光させる発光部162を変更すればよい。このように、電子カセッテ32の撮影領域を移動させることにより、特定の一部分で劣化が進行することを抑制でき、また、特定の一部分のみが発光パネル61からの光や駆動により熱が高くなることを抑制できる。なお、撮影領域は、連続的に移動させるものとしてもよく、放射線が所定量照射される毎に移動させるものとしてもよく、検出領域66Aに複数の温度センサを配置してカセッテ制御部92に接続し、温度センサにより検出領域66Aの各部分の温度を検出するものとし、検出領域66Aのうち撮影領域となった部分の温度が許容値となった場合に移動させるものとしてもよい。
【0182】
また、上記各実施の形態では、図18(A)に示すように、シンチレータ71を柱状結晶とし、蒸着基板73をガラスなどの光透過性を有する基板として、放射線検出器60の蒸着基板73側に発光パネル61を配置し、放射線検出器60をTFT基板66側から放射線Xが入射する表面読取方式となるように配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図18(B)に示すように、蒸着基板73を用いずにTFT基板66を蒸着基板として、TFT基板66上に柱状結晶(シンチレータ71)を形成し、放射線検出器60をTFT基板66側から放射線Xが入射する表面読取方式となるように配置してもよい。また、例えば、図19(A)に示すように、蒸着基板73を用いずにTFT基板66を蒸着基板として、TFT基板66上に柱状結晶(シンチレータ71)を形成し、放射線検出器60をシンチレータ71側から放射線Xが入射する裏面読取方式となるように配置し、TFT基板66を構成する絶縁性基板64を光透過性を有する基板として、TFT基板66のシンチレータ71と反対側の面に発光パネル61を配置してもよい。また、例えば、図19(B)に示すように、蒸着基板73上に柱状結晶(シンチレータ71)を形成し、放射線検出器60をシンチレータ71側から放射線Xが入射する裏面読取方式となるように配置し、TFT基板66を構成する絶縁性基板64を光透過性を有する基板として、TFT基板66のシンチレータ71と反対側の面に発光パネル61を配置してもよい。また、例えば、図20(A)に示すように、蒸着基板73を用いずにTFT基板66を蒸着基板として、TFT基板66上に柱状結晶(シンチレータ71)を形成し、放射線検出器60をTFT基板66側から放射線Xが入射する表面読取方式となるように配置し、TFT基板66を構成する絶縁性基板64を光透過性を有する基板として、TFT基板66のシンチレータ71と反対側の面に発光パネル61を配置してもよい。また、例えば、図20(B)に示すように、蒸着基板73上に柱状結晶(シンチレータ71)を形成し、放射線検出器60をTFT基板66側から放射線Xが入射する表面読取方式となるように配置し、TFT基板66を構成する絶縁性基板64を光透過性を有する基板として、TFT基板66のシンチレータ71と反対側の面に発光パネル61を配置してもよい。
【0183】
また、上記各実施の形態では、各発光部162毎に平板矩形状の導光板164と発光素子166とを設けて発光パネル61を構成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各発光部162をそれぞれ有機EL(Electro Luminescence)素子などの発光素子で構成してもよい。有機EL素子は、2つの電極190A、190Bに有機物192を挟んで形成するが、図21に示すように、有機EL素子を構成する2つの電極190A、190Bのうち一方の電極(図21では電極190A)を発光パネル61全体で共通化し、他方の電極(図21では電極190B)を発光部162毎に形成してもよい。
【0184】
また、上記各実施の形態では、撮影領域に対応する発光部162のみを発光させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、撮影領域に対応する発光部162は所定光量(例えば、光量A)で発光させ、撮影領域に対応する発光部162よりも光量を低下させて非撮影領域に対応する少なくとも一部の発光部162も発光させるようにしてもよい。例えば、図9に示す3つの発光部162(162A〜162C)において、発光部162Bが撮影領域に対応する場合、発光部162Bを所定光量で発光させ、発光部162A、発光部162Cを所定光量の5%となる光量で発光させるものとしてもよい。非撮影領域の発光部162を複数発光させる場合は、撮影領域から離れるほど光量を低下させるようにしてもよい。これにより、放射線画像の撮影領域と非撮影領域に対応する部分で残像による画質の差が発生することを抑制できる。
【0185】
また、上記各実施の形態では、撮影条件に応じて発光パネル61の各発光部162からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、過去の放射線画像の撮影実績を示す撮影実績情報を記憶部92Cに記憶しておき、カセッテ制御部92は、記憶部92Cに記憶された撮影実績情報により示される撮影実績に応じて発光パネル61の各発光部162からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御するものとしてもよい。
【0186】
この撮影実績は、例えば、検出領域66A内で被検者を透過せず放射線がそのまま照射された素抜部分の位置としてもよい。カセッテ制御部92は、撮影された放射線画像の各画素の画素値から検出領域66A内で被検者を透過せず放射線がそのまま照射された素抜部分を判別して素抜部分の位置や撮影時期を記憶部92Cに記憶する。そして、カセッテ制御部92は、撮影を行う場合、記憶部92Cに記憶された撮影実績情報に基づき、素抜部分に対して光量や照射期間が多くなるように発光パネル61の各発光部162を発光させるものとしてもよい。これにより、発光パネル61の全発光部162を発光させる場合と比較して、残像の発生を抑制しつつ電力消費を抑えることができる。
【0187】
また、撮影実績は、例えば、撮影時の放射線検出器60の温度としてもよい。放射線検出器60は、前撮影と今回の撮影で温度変化が大きい場合(例えば、前撮影が寒冷地などでの撮影)、今回の撮影で発生する残像に影響がある場合がある。このため、例えば、カセッテ制御部92は、前回の撮影から所定の温度以上の温度変化があった場合、発光パネル61の全ての発光部162を発光させて放射線検出器60の光キャリブレーションを行うものとしてもよい。
【0188】
撮影実績は、例えば、直前の実績や直前の所定回の撮影としてもよく、撮影当日の全撮影の実績としてもよく。複数の撮影の撮影実績を記憶する場合は、撮影時期が近いものほど重み付けを重くしてもよい。複数の撮影の撮影実績を記憶する場合は、撮影時期が近いものほど重み付けを重くしてもよい。
【0189】
また、撮影実績及び撮影条件に応じた制御を組み合わせて行ってもよい。例えば、撮影領域内でも素抜部分について光量や照射期間が多くなるように発光パネル61の各発光部162を発光させるものとしてもよい。
【0190】
また、上記各実施の形態では、図10に示すように、発光パネル61の発光部162をマトリクス状に配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図22(A)(B)に示すように、一定方向(図21の行方向)又は一定方向に対する交差方向(図21の列方向)に短冊状に複数の発光部162を設けてもよい。このように発光部162を設けることにより、撮影領域が移動する場合でも、撮影領域の移動に連動させて発光させる発光部162を変更する制御が容易となる。また、例えば、図22(C)に示すように、発光パネル61の発光エリアの中心部分を周辺部分よりも細分化するように複数の発光部162を設けてもよい。電子カセッテ32は撮影面56の中心部分に撮影部位が配置されて放射線画像の撮影が行われることが多い。このため、発光パネル61の発光エリアの中心部分を周辺部分よりも細分化することにより、撮影部位の大きさに応じて発光させる発光部162を細かく制御できるため、電力消費を抑えることができる。また、例えば、図22(D)に示すように、発光パネル61の発光エリアの中心部分と周辺部分に分けて発光部162を設けてもよい。図22(D)では、発光エリアの周辺部分をそれぞれ角部を含むように複数の発光部162を設けているが、これに限定されるものではない。このように、中心部分と周辺部分に分けて発光部162を設けることにより、発光させる発光部162の制御が容易となる。
【0191】
また、上記各実施の形態では、放射線検出器60の非照射領域の各センサ部72に発生する暗電流による電荷量を検出し、検出される暗電流による電荷量が少ないほど光量Aが少なくなるように制御する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、カセッテ制御部92がバッテリ96Aの検出を行い、バッテリ96Aに蓄積された電力の残量が所定の許容量(例えば、バッテリ96Aが蓄積可能な電力の20%)よりも少ない場合、光キャリブレーションのための光の照射の停止、光量の低下、照射期間の短縮の何れかを行うように制御するものとしてもよい。このようにバッテリ96Aに蓄積された電力の残量が少ない場合に光の照射の停止、光量の低下、照射期間の短縮の何れかを行うことにより、光キャリブレーションに用いられる電力が抑制されるため、透視撮影の場合より長く、静止画撮影の場合より多く撮影を行うことができる。
【0192】
また、上記第2の実施の形態では、連続的に撮影を行う透視撮影中に静止画撮影を行う場合、当該静止画撮影の直前、直後に全ての発光部162を発光させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、静止画撮影の直前、直後の何れか一方のみ全ての発光部162を発光させるものとしてもよい。
【0193】
また、上記実施の形態では、放射線検出器60を、放射線を一度シンチレータ71で光に変換し、変換した光を光導電層30で電荷に変換して蓄積する間接変換方式の構成とした場合について説明したが、放射線を直接、アモルファスセレン等を用いたセンサ部で電荷に変換して蓄積する直接変換方式の放射線検出器としてもよい。
【0194】
直接変換方式の放射線検出器200は、図23に示すように、入射される放射線を変換する放射線変換層の一例として、入射される放射線を電荷に変換する半導体層202が、TFT基板66上に形成されている。
【0195】
半導体層202としては、アモルファスSe、Bi12MO20(M:Ti、Si、Ge)、Bi4M3O12(M:Ti、Si、Ge)、Bi2O3、BiMO4(M:Nb、Ta、V)、Bi2WO6、Bi24B2O39、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、MNbO3(M:Li、Na、K)、PbO、HgI2、PbI2、CdS、CdSe、CdTe、BiI3、GaAs等のうち少なくとも1つを主成分とする化合物などが用いられるが、暗抵抗が高く、X線照射に対して良好な光導電性を示し、真空蒸着法により低温で大面積成膜が可能な非晶質(アモルファス)材料が好まれる。
【0196】
半導体層202上には、半導体層202の表面側に形成され、半導体層202へバイアス電圧を印加するためのバイアス電極204が形成されている。
【0197】
直接変換方式の放射線検出器200では、間接変換方式の放射線検出器60と同様に、半導体層202で発生した電荷を収集する電荷収集電極206がTFT基板66に形成されている。
【0198】
また、直接変換方式の放射線検出器200におけるTFT基板66は、各電荷収集電極206で収集された電荷を蓄積する電荷蓄積容量208を備えている。この各電荷蓄積容量208に蓄積された電荷が、TFT70によって読み出される。
【0199】
このような直接変換方式の放射線検出器200においても半導体層202内の不純物電位に電荷がトラップされてしまい、残像を生じる場合があり、光キャリブレーションが行われる場合があるが、本発明を適用することにより電力消費を抑えることができる。
【0200】
また、上記各実施の形態では、放射線としてX線を検出することにより放射線画像を撮影する放射線撮影装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、検出対象とする放射線は、X線の他、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0201】
その他、上記各実施の形態で説明した構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0202】
さらに、上記各実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0203】
18 撮影システム
32 電子カセッテ
34 放射線発生装置
42 コンソール
60、200 放射線検出器(撮影パネル)
61 発光パネル(光照射手段)
66 TFT基板
66A 検出領域
71 シンチレータ
72 センサ部
73 蒸着基板
74 画素
92 カセッテ制御部(制御手段)
92A CPU
92C 記憶部(記憶手段)
96A バッテリ
130 放射線源
131 可動絞り装置
162 発光部
164 導光板
166 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線又は放射線が変換された光を検出するセンサ部が検出領域に複数形成され、放射線又は放射線が変換された光により表わされる放射線画像を撮影する撮影パネルと、
前記検出領域を複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部が設けられた光照射手段と、
前記撮影パネルにより撮影された過去の撮影実績を示す撮影実績情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された撮影実績情報により示される撮影実績及び撮影条件の少なくとも一方に応じて、前記光照射手段の各発光部からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御する制御手段と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影条件は、1回ずつ撮影を行う静止画撮影及び連続的に撮影を行う透視撮影の何れを行うか指定する情報が含まれ、
前記制御手段は、前記撮影条件として透視撮影が指定された場合、撮影に同期して前記光照射手段の各発光部から光を照射させる
請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影条件は、透視撮影のフレームレートを指定する情報が含まれ、
前記制御手段は、前記撮影条件として指定された透視撮影のフレームレートが所定の閾値以上である場合、撮影に同期して前記光照射手段の各発光部から光を照射させる
請求項1又は請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記検出領域内における撮影領域の位置を取得する取得手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記取得手段により取得された前記撮影領域に対応する前記発光部から光を照射させるように前記光照射手段を制御する
請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記撮影領域に対応する発光部よりも光量を低下させて非撮影領域に対応する少なくとも一部の前記発光部も発光させる
請求項4記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記撮影領域を、前記前記検出領域に対して放射線が照射される照射領域とした
請求項4又は請求項5記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記撮影パネルの非照射領域の各センサ部に発生する暗電流による電荷量を検出する検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記検出により検出される暗電流による電荷量が少ないほど光量、照射期間が少なくなるように前記光照射手段を制御する
請求項4〜請求項6の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記撮影パネルを駆動させる電力及び前記光照射手段の各発光部を発光させる電力を少なくとも供給するバッテリをさらに備え、
前記前記制御手段は、前記バッテリに蓄積された電力の残量が所定の許容量よりも少ない場合、光の照射の停止、光量の低下、照射期間の短縮の何れかを行うように前記光照射手段を制御する
請求項1〜請求項7の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記前記制御手段は、連続的に撮影を行う透視撮影中に静止画撮影を行う場合、当該静止画撮影の直前、直後の少なくとも一方、全ての発光部を発光させるように前記光照射手段を制御する
請求項1〜請求項8の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記撮影実績を、過去の撮影において前記検出領域内で被検者を透過せず放射線が照射された部分を示すものとし、
前記制御手段は、前記検出領域内の被検者を透過せず放射線が照射された部分に対して光が多く照射されるように前記光照射手段を制御する
請求項1〜請求項9の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
放射線又は放射線が変換された光を検出するセンサ部が検出領域に複数形成され、放射線又は放射線が変換された光により表わされる放射線画像を撮影する撮影パネルと、
前記撮影領域を複数に区分した各区分領域毎に残像を消去するための光を個別に照射可能な複数の発光部が設けられた光照射手段と、
撮影条件に応じて、前記光照射手段の各発光部からの光の照射の有無、光量、照射期間を制御する制御手段と、
を有する放射線撮影システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−107886(P2012−107886A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254886(P2010−254886)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】