説明

放射線検出器、およびそれを備えた放射線撮影装置

【課題】高速で透視像の読み出しを行いつつ視認性に優れた透視画像を得ることができる放射線検出器、およびそれを備えた放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るX線検出器1において、リーク電流のムラは、比較的長い第1時間の期間中に取得される。これを基にリーク電流マップM1が取得される。一方、第1時間よりも短い第2時間の期間中にコンデンサから電荷を読み出して、これを基に元画像p0が生成される。そして、リーク電流マップを元画像p0に重ねて偽像を除去する。この際、元画像p0に重ねられるリーク電流のムラは、ノイズの少ない状態で取得され、元画像p0におけるリーク電流の模様は確実に除去されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元画像生成用の放射線検出器であって、画像に写りこんだ偽像を補正することができる放射線検出器、およびそれを備えた放射線撮影装置に関する。ここでいう偽像とは、特に、リーク電流に起因するものである。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、被検体の透視像を取得する放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出器とを備えている。
【0003】
この放射線検出器の具体的な構成について説明する。放射線検出器51は、図10に示すように、表面電極層52と、半導体層53と、支持層54と、コンデンサ55を有している。そして、表面電極層52,半導体層53,支持層54は、この順に積層されている。そして、表面電極層52は、バイアス電圧供給端子52aと電気的に接続されている。また、支持層54には、収集電極54aが埋め込まれている。放射線検出器51において、この収集電極54aは、複数個設けられており、収集電極54aは、各層52,53,54の広がる平面に沿って二次元的に配列されている。表面電極層52と、半導体層53と、支持層54と、コンデンサ55は、合わせて、放射線を検出するX線検出マトリックスを形作っている。半導体層53は、本発明の変換手段に相当し、例えばアモルファス・セレン層や CdZnTe層等で構成されている。なお、変換層としては上記の半導体層以外にシンチレータ等を採用することができる。この場合には、シンチレータで一旦光に変換した後,フォトダイオード等で電荷信号に変換してコンデンサ55に蓄積する構成とすればよい。
【0004】
収集電極54aは、半導体層53に接触しているとともに、コンデンサ55に電気的に接続されている。
【0005】
放射線検出器51の動作について説明する。放射線rは、表面電極層52を貫通して半導体層53に進入する。ここで放射線rは、電子とホールからなるキャリア対に変換される。
【0006】
ところで、表面電極層52には、一定のバイアス電圧がかけられており、半導体層53は、所定の電場が生成された状態となっている。つまり、キャリア対は、この生成された電場によって誘導され、収集電極54aによって、いずれか一種類のキャリアが収集電極54aに収集される。この収集されたキャリアは、コンデンサ55によって蓄積される。つまり、コンデンサ55には、電荷が蓄積される。この電荷の蓄積量が放射線の照射強度を示しているのである。コンデンサ55は、図11に示すように、収集電極54aと同様に、二次元的に配列され、コンデンサ行列を形成している。
【0007】
このコンデンサ55に蓄積した電荷の読み出しの具体的な構成について説明する。コンデンサ55の各々には、図12に示すように、蓄積電荷読み取り用のトランジスタTr1〜3と、これを制御する制御電極G1〜3と、コンデンサの蓄積電荷を取り出す出力電極P1〜3とが設けられている。トランジスタTr1〜3が制御電極G1〜3を通じてオンされると、コンデンサ55に蓄積された電荷は、出力電極Pから出力される構成となっている。したがって、トランジスタTr1〜3がオフのとき、出力電極Pには何ら電流は流れないはずである。
【0008】
ところが、図13(a)に示すように、トランジスタTr1〜2がオフとなっていても、出力電極P1〜2にリーク電流Lが流れ続けるのが実際である。しかも、リーク電流の強度は、出力電極P1〜2の全てで一定ではない。例えば、図13(a)において、右側のコンデンサ55が左側のコンデンサ55よりも多くの電荷を蓄積している。この場合、右側のコンデンサ55に係るリーク電流L2は、右側に係るリーク電流L1よりも大きくなる。すなわち、各出力電極P1〜2に流れるリーク電流は、コンデンサ55が蓄積する電荷の大小に応じてバラついたものとなっている。
【0009】
この状態で、トランジスタTr1〜2がオンされると、図13(b)に示すように、コンデンサ55に蓄積された電荷が出力電極P1〜2から出力される。しかし、この状態においても相変わらずリーク電流L1〜2が出力電極Pに向けて流れ続ける。すなわち、出力電極P1からは、シグナル電流S1とリーク電流L1との合計電流L1+S1が出力され、出力電極P2からは、シグナル電流S2とリーク電流L2との合計電流L2+S2が出力される。この様に、出力電極P1〜2から出力される電流には、リーク電流L1〜2が重畳しており、しかも、リーク電流L1〜2の大きさは、出力電極P1〜2によりまちまちである。したがって、各コンデンサ55の出力を2次元的に配列して透視画像を生成すると、透視画像には、リーク電流に起因したムラが写りこんでしまう。
【0010】
そこで、従来の構成によれば、このリーク電流のムラを透視画像に写りこませない工夫が施されている。すなわち、第1過程として、トランジスタTrがオフのときに[すなわち、図13(a)の状態のときに]予めリーク電流Lの大きさを各出力電極Pについて測定しておく。この様にすることで、リーク電流のムラが取得されることになる。このあと、第2過程として、蓄積電荷を取り出して、被検体の投影像が写りこんだ2次元画像を生成する。リーク電流Lのムラは、この透視画像に写りこむが、第1過程で既に取得されているムラと同一のパターンとなっている。そこで、透視画像に、第1過程で取得されたムラの反転パターンを重ねることで、重畳したムラの除去を行う。このような構成の放射線検出器は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3979165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来構成によれば、以下のような問題点がある。
すなわち、従来構成によれば、コンデンサ55の読み出しを高速で行うことができないという問題点がある。2次元画像を経時的に結合させて動画を生成しようとするときなどのように、各コンデンサ55の読み出しを高速で行う必要がある場合、放射線検出器の動作周波数を高める必要がある。これにともなって、リーク電流のムラの取得動作も高速で行われることになる。すると、リーク電流の取得に際し、高クロック化に伴うノイズが発生する。このノイズは、例えば、放射線検出器の電気回路を構成する素子同士が電磁気的に干渉することなどに起因する。
【0013】
つまり、上述の第1過程において、出力電極Pからリーク電流を取得しようとしても、このリーク電流Lにノイズ成分が重畳することになる。従来構成では、このノイズ成分を含んだままリーク電流のムラを取得できたものと見なし、これを被検体の透視像が写りこんだ2次元画像に重ね合わせる。すると、透視画像にノイズ成分も余計に重ね合わせられることになり、結局、透視画像にノイズ成分が重畳してしまう。この様に、従来構成によれば、高速で透視像の読み出しを行いながらも視認性に優れた画像を提供するのは困難なのである。
【0014】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高速で透視像の読み出しを行いつつ視認性に優れた透視画像を得ることができる放射線検出器、およびそれを備えた放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、この様な目的を達成するために次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る発明は、放射線を電荷に変換する変換手段と、第1方向、および第2方向に沿って2次元的に配列された電荷を蓄積する蓄積手段と、蓄積手段の各々に設けられた出力電極と、蓄積手段の各々に設けられて第1方向、および第2方向に沿って2次元的に配列されるとともに、蓄積手段の各々に蓄積された電荷を出力電極の各々に出力させるスイッチング手段と、スイッチング手段のうち、第1方向に沿って配列されたスイッチング手段を一括にオン・オフするスイッチング制御手段と、第2方向に沿って配列された出力電極の各々に電気的に接続された電荷読み出し電極とを備えた放射線検出器において、電荷読み出し電極の出力を増幅して増幅データを出力するとともに、制御信号の入力に従ってオン・オフが可能となっている増幅手段と、増幅手段をオン・オフする増幅制御手段と、増幅データを2次元的に配列することで電荷読み出し電極に流れるリーク電流のムラと被検体の放射線像とが写りこんだ元画像を生成する元画像生成手段と、元画像の取得を指示する元画像取得指示手段と、リーク電流のムラを取得するムラ取得手段と、リーク電流のムラの取得を指示するムラ取得指示手段と、リーク電流のムラを放射線画像に重ね合わせる重ね合わせ手段とを備え、ムラ取得指示手段が指示を行うと、増幅制御手段は、リーク電流のムラの取得に際し、ノイズを発生させない程度に十分に長い第1時間の間、増幅手段をオンして、リーク電流のムラを増幅させることにより生成したムラの増幅データがムラ取得手段に送出され、元画像取得指示手段が指示を行うと、スイッチング制御手段は、第1時間よりも短い第2時間の間、スイッチング手段を一括にオンすることを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]本発明に係る放射線検出器は、リーク電流のムラを取得するムラ取得手段を備えている。リーク電流とは、スイッチング手段のオフ状態に係らず電荷読み出し電極に流れる電流のことである。電荷読み出し電極から蓄積電荷が読み出されるとき、電荷読み出し電極には、蓄積電荷の流れであるシグナル電流と、リーク電流との合計電流が流れ、これが増幅手段に入力される。増幅手段の出力(増幅データ)を2次元的に並べると、被検体の放射線像が写りこんだ元画像が生成される。しかしこの元画像には、リーク電流に由来する偽像(リーク電流のムラ)をも写し込んでいる。そこで、本発明は、ムラ取得手段がリーク電流のムラを取得する構成となっている。これにより、リーク電流のムラがどのような模様となって元画像に表れているかを知ることができる。そして、本発明に係る放射線検出器は、リーク電流のムラを放射線画像に重ね合わせる重ね合わせ手段を備えている。これにより、リーク電流のムラは元画像から除去される。
【0017】
しかも、本発明によれば、リーク電流のムラを忠実に取得しつつ、電荷を高速に読み出すことが可能である。すなわち、リーク電流のムラは、第1時間の期間中に取得される。第1時間は長い期間であり、ノイズの少ない状態でリーク電流のムラが取得されるのである。一方、スイッチング手段は、第1時間よりも短い第2時間の期間中一括にオンされる。すなわち、蓄積電荷は、第2時間の期間中に電荷読み出し電極を通じて高速で読み出される(正確には、第1方向に沿って配列されたスイッチング手段は、第2時間の期間中に読み出される。)したがって、元画像に重ねられるリーク電流のムラは、ノイズの少ない状態で取得され、元画像に出現するリーク電流の模様を忠実に表すことになる。つまり、元画像におけるリーク電流の模様は確実に除去されることになる。
【0018】
なお、第1方向に沿ったスイッチング手段の配列を「スイッチング手段アレイ」と呼ぶと、放射線検出器を全体的に眺めれば、スイッチング手段アレイは、第2方向に沿って、例えばn本だけ並べられていることになる。放射線検出器においては、スイッチング手段アレイ毎に蓄積電荷を読み出す構成となっているから、放射線検出器が有する蓄積手段のすべてについて読み出しを行うには、少なくとも第2時間×nだけの期間が必要となる。上述のような効果を得るには、第1時間を第2時間より長くすれば足り、第2時間×nよりも長くすることを要しない。
【0019】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射線検出器において、ムラ取得指示手段の指示は、スイッチング手段がオフの状態のとき行われることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]上述の構成によれば、より確実にリーク電流のムラを取得することができる。すなわち、リーク電流のムラを取得する場合、これのみを増幅手段から出力させる必要があり、第1時間の期間中は電荷読み出し電極にシグナル電流が流れては都合がよくない。上述の構成によれば、ムラ取得指示手段が指示を与えている間は、電荷読み出し電極にはシグナル電流が流れることはない。したがって、上述の構成によれば、リーク電流のムラの取得を確実に行うことが担保される。
【0021】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の放射線検出器において、ムラ取得指示手段の指示は、放射線が変換手段に照射された後に行われることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]上述の構成によれば、リーク電流のムラの取得は、放射線が変換手段に照射された後に行われる。電荷読み出し電極に流れるリーク電流は、蓄積手段が蓄積する電荷の量によって変動する。蓄積手段に電荷が蓄積されるのは、放射線が変換手段に照射された後であることからすれば、リーク電流のムラの取得を放射線照射後に行えば、元画像に写りこんだリーク電流の模様をより忠実に知ることができる。
【0023】
また、請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線検出器において、ムラ取得指示手段の指示は、元画像取得指示手段の指示の前に行われることを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]上述の構成によれば、リーク電流のムラは、電荷を読み出す前に行われる。つまり、電荷が蓄積手段に保存されている状態でリーク電流のムラが取得されるのである。こうして、蓄積手段が蓄積している電荷に応じてリーク電流が変化しても、リーク電流のムラを元画像に写りこんだリーク電流の模様と同様のパターンとすることができる。
【0025】
また、請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線検出器において、増幅制御手段、およびスイッチング制御手段の動作周波数を出力する動作周波数決定手段を更に備え、ムラ取得指示手段が指示を行うと、動作周波数決定手段は、動作周波数を低いものとし、元画像取得指示手段が指示を行うと、動作周波数決定手段は、動作周波数を高いものとすることを特徴とするものである。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、第1時間と、第2時間との間隔を違える構成についての具体的な態様を表したものである。すなわち、第1時間にしたがって動作する増幅手段と、第2時間にしたがって動作するスイッチング制御手段とは、異なる動作周波数で動作する。しかも、動作周波数の変更は、動作周波数決定手段によって統括的に行われる。したがって、上述の構成によれば、放射線検出器の制御をより単純にすることができる。
【0027】
また、請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線検出器において、リーク電流のムラの取得は、前記元画像を取得する度ごとに実行されることを特徴とするものである。
【0028】
[作用・効果]上述の構成によれば、偽像が確実に除去された放射線画像を取得することができる。放射線検出器は、放射線を検出するたびに異なった放射線透視像を写しこむ。これに伴って、元画像に重畳するリーク電流の模様も変化する。上述の構成によればリーク電流のムラは前記元画像を取得する度ごとに更新される。したがって、元画像に写りこんだリーク電流の模様は、より確実に除去される。
【0029】
また、請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線検出器を搭載した放射線撮影装置であって、放射線を照射する放射線源と、放射線源を制御する放射線制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]上述の構成は、本発明に係る放射線検出器は、放射線撮影装置に搭載することができることを表す。この様な放射線撮影装置によれば、偽像が写りこんでいない放射線画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る放射線検出器は、リーク電流のムラを取得するムラ取得手段を備えている。電荷読み出し電極から蓄積電荷が読み出されるとき、電荷読み出し電極には、蓄積電荷の流れであるシグナル電流と、リーク電流との合計電流が流れ、これが増幅手段に入力される。したがって、被検体の放射線像が写りこんだ元画像には、リーク電流に由来する偽像(リーク電流のムラ)をも写し込んでいる。そこで、本発明は、ムラ取得手段がリーク電流のムラを取得する構成となっている。しかも、本発明によれば、リーク電流のムラを忠実に取得しつつ、電荷を高速に読み出すことが可能である。すなわち、リーク電流のムラは、比較的長い第1時間の期間中に取得される。一方、スイッチング手段は、第1時間よりも短い第2時間の期間中一括にオンされる。したがって、元画像に重ねられるリーク電流のムラは、ノイズの少ない状態で取得され、元画像におけるリーク電流の模様は確実に除去されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係るX線検出器の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線検出マトリクスの構成を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るアンプについて説明する模式図である。
【図4】実施例1のX線検出器の動作を説明するフローチャートである。
【図5】実施例1のX線検出器の動作を説明する模式図である。
【図6】実施例1のX線検出器の動作を説明する模式図である。
【図7】実施例1のX線検出器の動作を説明する模式図である。
【図8】実施例2のX線撮影装置の較正を説明する機能ブロック図である。
【図9】本発明の1変形例に係るX線検出器の構成を説明する機能ブロック図である。
【図10】従来構成を説明する断面図である。
【図11】従来構成を説明する平面図である。
【図12】従来構成を説明する等価回路図である。
【図13】従来構成を説明する等価回路図である。
【実施例1】
【0033】
以下、実施例1の構成に係る放射線検出器について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明のX線は、本発明における放射線の一例である。
【0034】
<全体構成の説明>
まず、実施例1の構成について説明する。図1に示すように、実施例1に係るX線検出器1は、放射線を検出するX線検出マトリックス2と、X線検出マトリックス2に接続されたゲートドライブ3を備えている。また、X線検出器1は、X線検出マトリックス2に接続されたアンプアレイ4と、これを制御するアンプアレイ制御部14とを備えている。なお、X線検出マトリックス2は、従来の構成と同様である。アンプアレイは、本発明の増幅手段に相当する。また、アンプアレイ制御部は、本発明の増幅制御手段に相当する。
【0035】
X線検出器1は、マップ取得指示部11と、元画像取得指示部12と、アンプアレイ4の出力から画像を生成する画像生成部21と、リーク電流マップM1を生成するマップ生成部23と、画像、およびマップを重ね合わせる画像処理を行う重ね合わせ部22とを備えている。動作周波数決定部15は、ゲートドライブ3,およびアンプアレイ4の動作周波数を決定するものであり、これを設けた意義については後述する。マップ取得指示部は、本発明のムラ取得指示手段に相当し、画像生成部は、本発明の元画像生成手段に相当する。また、マップ生成部は、本発明のムラ取得手段に相当し、重ね合わせ部は、本発明の重ね合わせ手段に相当する。そして、元画像取得指示部は、本発明の元画像取得指示手段に相当する。
【0036】
なお、マップ取得指示部11,元画像取得指示部12,アンプアレイ制御部14,画像生成部21,および重ね合わせ部22を統括的に制御する主制御部25を備えている。この主制御部25は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。
【0037】
X線検出マトリックス2の具体的な構成について説明する。X線検出マトリックス2は、図2に示すように、コンデンサD11〜D36が2次元的に配列されている第1領域Dと、コンデンサE11〜E36が2次元的に配列されている第2領域Eとを有している。第1領域Dについて、図2における横方向に配列されたコンデンサD11〜D16の各々は、制御電極G1に接続されており、コンデンサの行毎に制御電極G1〜G3が設けられている。アンプアレイ4は、横方向に配列されており、アンプアレイ4を構成するアンプA1〜A6は、その縦方向に同一な位置となっているコンデンサの出力電極Pの各々に接続されている。例えば、アンプA1は、コンデンサD11,D21,D31が有する出力電極Pに接続されている。すなわち、縦方向に配列された出力電極Pの各々は、電荷読み出し電極Q1に接続されており、この電荷読み出し電極Q1は、アンプA1に電気的に接続されている。なお、縦方向は、本発明の第1方向に、横方向は、本発明の第2方向に相当する。また、各コンデンサD11〜E36に設けられたトランジスタTr(具体的な構成については、図12を参照)は、本発明のスイッチング手段に相当し、コンデンサは、本発明の蓄積手段に相当する。
【0038】
ゲートドライブ3は、トランジスタを制御する制御素子が縦方向に一列に配置されて構成される。制御素子は、本発明のスイッチング制御手段に相当する。
【0039】
なお、第2領域Eは、第1領域Dと同等の構成となっている。すなわち、第2領域Eについて、図2における横方向に配列されたコンデンサE11〜E16の各々は、制御電極H1に接続されており、コンデンサの行毎に制御電極H1〜H3が設けられている。アンプアレイ4は、横方向に配列されており、アンプアレイ4を構成するアンプB1〜B6は、その縦方向に同一な位置となっているコンデンサの出力電極Pの各々に接続されている。例えば、アンプB1は、コンデンサE11,E21,E31が有する出力電極Pに接続されている。
【0040】
X線がX線検出器1に照射されると、コンデンサD11〜E36に電荷が蓄積する。これを読み出してX線透視画像を生成する動作について説明する。まず、ゲートドライブ3は、制御電極G1をオンし、コンデンサD11〜D16に蓄積された電荷は、一括に電荷見出し電極Q1〜Q6を通過して、アンプA1〜A6の各々に入力される。このアンプの出力である増幅データは、画像生成部21に送出される。コンデンサD11〜D16に関する読み出しが完了すると、ゲートドライブ3は、制御電極G2をオンし、これに接続されたコンデンサの電荷を読み出す。この様にゲートドライブ3は、時間をずらして制御電極G1〜G3を次々とオンしていき、コンデンサの電荷を行毎に読み出す。画像生成部21は、入力された増幅データを2次元的に配列して、元画像p0を生成するのである。この様な動作は、第2領域Eにおいても同様である。
【0041】
また、ゲートドライブ3は、2つの制御電極を同時にオンする。すなわち、第1領域Dにおける制御電極G1をオンするのと同時に、第2領域Eにおける制御電極H1をオンする。この様に、X線検出マトリックス2の上半分と下半分の領域に分割されており、各領域に写りこんだX線透視画像を同時に読み出すことにより、ゲートドライブ3が全ての制御電極G,Hをオンし終えるまでの時間を約半分に短縮する構成となっている。
【0042】
アンプB1は、制御信号を入力させる入力端子を備えている(図2参照)。アンプB1は、この制御信号の入力に従って、オン・オフされる構成となっている。すなわち、アンプB1がオンの状態のとき、電荷読み出し電極R1より電流が入力されれば、アンプB1は、画像生成部21に増幅信号を出力するのであり、逆にオフの状態のとき、電荷読み出し電極R1より電流が入力さても、アンプB1は、画像生成部21に増幅信号を出力しないのである。図2において、入力端子は、アンプB1のみ設けられているように描かれているが、実際は、X線検出器1が有するアンプA1〜B6の全てに備えられている。
【0043】
アンプアレイ制御部14は、各アンプの制御信号の供給の調節することでアンプの機能を中止・再開させるものである。図2においては、便宜上、アンプアレイ制御部14は、アンプの1つにしか接続されていない。実際は、アンプアレイ制御部14は、アンプアレイ4を構成するアンプの全てに接続されている。この様に、アンプA1〜B6は、制御信号の入力に従ってオン・オフされることが可能となっている。
【0044】
このアンプA1〜B6の具体的な構成について説明する。実施例1に係るアンプAは、図3(a)に示すように、信号を増幅する増幅器a1と、増幅器a1の出力をデジタルデータに変換するAD変換器a2とを備えている。AD変換器a2の出力が増幅信号である。アンプAの第1端子n1は、電荷読み出し電極Pに接続されたアンプAにとっての入力端子であり、第3端子n3は、画像生成部21に接続されたアンプAにとっての出力端子である。第2端子n2は、アンプアレイ制御部14に接続されたアンプAを制御するための端子である。アンプアレイ制御部14は、第2端子n2は、制御信号をアンプAに送出する。具体的には、アンプAを初期状態にリセットさせるリセット信号s1と、増幅信号を出力を指示する出力指示信号s2がペアとなったシークエンスである。アンプAは、制御信号にしたがって、リセットと出力を実行する。これがアンプAのオン状態である。
【0045】
一方、図3(b)に示すように、アンプアレイ制御部14がリセット信号s1,および出力指示信号s2のいずれも送出しなかった場合、アンプAは、第1端子n1の入力にもかかわらず、第3端子n3に何ら出力を行わない。これがアンプAのオフ状態である。
【0046】
なお、AD変換器a2を高速で動作させると、制御信号にノイズが重畳する。これが実施例1においてX線透視画像の取得の邪魔となるノイズの主体ある。
【0047】
なお、図2において、便宜上、X線検出マトリックス2には、コンデンサが6×6のマトリックス状に配列されている。実際のX線検出器1においては、コンデンサが例えば、1,024×1,024のマトリックス状に配列されている。
【0048】
<動作の説明>
この様な構成となっているX線検出器1における動作を説明する。図4は、実施例1のX線検出器の動作を説明するフローチャートである。まず、X線ビームがX線検出器1に放射される。こうして、X線検出器1は、X線を受光する(ステップS1)。このX線ビームは、被写体の透視像を写し込んでいる。X線検出器1に入射したX線は、電荷に変換され、各コンデンサーD11〜E36に蓄積される。
【0049】
次に、各コンデンサD11〜E36に電荷が蓄積された状態でリーク電流マップM1の指示を行う(ステップS2)。マップ取得指示部11は、動作周波数決定部15を操作して、動作周波数をリーク電流取得用の低い周波数に設定する。この周波数は、後述の電荷読み出し用の周波数と比べて低いものとなっている。なお、この時点で、蓄積された電荷が読み出されるのではない。動作周波数決定部は、本発明の動作周波数決定手段に相当する。
【0050】
アンプアレイ制御部14は、マップ取得指示部11の指示にしたがって、アンプアレイ4を構成するアンプA1〜B6の各々を一括にオンする。すると、マップ生成部23に、アンプアレイ4が出力した増幅データが送信される。この増幅データは、各電荷読み出し電極Q1〜R6に流れているリーク電流Lが増幅されたものである。これを基に、マップ生成部23は、X線検出マトリックス2におけるリーク電流Lのムラを示したリーク電流マップM1を生成する。
【0051】
次に、元画像取得指示部12は、被検体の透視像とリーク電流Lのムラとが写りこんでいる元画像の取得の指示を行う(ステップS3)。元画像取得指示部12は、動作周波数決定部15を操作して、動作周波数を画像読み出し用の高い周波数に設定する。この周波数は、上述のリーク電流取得用の周波数と比べて高いものとなっている。
【0052】
ゲートドライブ3は、上述の高い動作周波数に基づいて、制御電極G,Hを次々とオンし、コンデンサD11〜E36が蓄積する電荷は、電荷読み出し電極Q1〜R6を流れてアンプアレイ4に入力される。この電荷の流れをシグナル電流Sと呼ぶことにする。アンプアレイ4を構成するアンプは、シグナル電流Sを増幅して、増幅データを画像生成部21に送出する。このときの増幅データは、リーク電流Lとシグナル電流Sとが合計された合計電流L+Sが増幅されたものである。これを基に、画像生成部21は、X線検出マトリックス2が写しこんだX線透視画像にリーク電流Lのムラが重畳した元画像p0を生成する。
【0053】
元画像p0は、重ね合わせ部22に送出される。重ね合わせ部22は、元画像p0を取得すると、マップ生成部23からリーク電流マップM1を取得する。重ね合わせ部22は、リーク電流マップM1の反転パターンを元画像p0に重ね合わせる(ステップS4)。これにより、元画像p0に重畳していたリーク電流Lのムラはキャンセルされることになる。
【0054】
重ね合わせ部22にて行われる動作について説明する。画像生成部21が出力する元画像p0には、図5に示すように、楕円形の透視像が写りこんでいるものとする。この楕円形の像は、X線を透過しやすい被写体を写しこんでいるものである。いいかえれば、X線検出マトリックス2における楕円形の領域に位置するコンデンサは、周りのコンデンサよりも多くの電荷を蓄積している。蓄積された電荷が大きくなると、図13で説明したように、リーク電流Lも大きくなる。すると、元画像p0には、楕円形の像に重なって帯状の明部領域が出現する。これが、リーク電流Lのムラに起因する偽像である。
【0055】
元画像p0において、リーク電流Lのムラが帯状に現れる理由について説明する。コンデンサD11〜E36に蓄積された電荷は、それぞれ異なっている。つまり、出力電極Pに流れるリーク電流Lは各コンデンサによってまちまちである。しかし、例えば、図2におけるコンデンサD11,D21,D31の場合、各々の出力電極Pから出力されるリーク電流Lは合計されて単一の電荷読み出し電極Q1に出力される。コンデンサD11,D21,D31に接続された出力電極Pは、電荷読み出し電極Q1に並列につながれているからである。つまり、コンデンサD11,D21,D31において、リーク電流Lの大きさに違いはない。むしろ、コンデンサD11〜D16の間でリーク電流Lの大きさはバラついたものとなっている。コンデンサD11〜D16に係るリーク電流Lは、それぞれ独立した電荷読み出し電極Q1〜Q6から出力されるからである。したがって、元画像p0のx方向をアンプの配列方向とすると、リーク電流Lの大きさは、元画像p0のy方向については一定であり、x方向についてはバラついたものとなっている。このようにして、元画像p0には、y方向に延伸した帯状の偽像が現れるのである。このリーク電流Lの分布は、図5に示すd0のようになっている。すなわち、リーク電流Lは、元画像p0の中央部において大きくなっている。
【0056】
マップ取得指示部11が動作周波数が高い状態でこのリーク電流Lの分布を読み出すと、図5に示すd1のように、リーク電流Lの分布にノイズが重畳してしまう。この状態でリーク電流マップM1を生成して、これを元画像p0に重ね合わせると、図6に示す画像p1のように、元画像p0に表れていた帯状の偽像は、消去される。しかし、画像p1には、リーク電流マップM1に重畳していたノイズ成分が転写されてしまい、線状の偽像となって写りこんでしまう。このような線状の偽像は、画像を見た者の目に止まり易く、画像p1を視認する上で邪魔となる。
【0057】
実施例1の構成によれば、画像に線状の偽像が出現することを抑制することができる。つまり、実施例1によれば、動作周波数が低い状態でリーク電流Lの分布を読み出す構成となっているのである。このようにして得られるリーク電流Lの分布は、図7におけるd2に示すようにノイズ成分を含まず、図5におけるリーク電流Lの分布d0と同様となっている。これを用いてリーク電流マップM1を生成して、これを元画像p0に重ね合わせると、図7に示す画像p2のように、線状の偽像が表れていない画像が取得できる。しかも、元画像p0に表れていた帯状の偽像も消去される。
【0058】
なお、X線検出マトリックス2には、図2に示すように、制御が独立した第1領域Dと、第2領域Eとを有している。したがって、元画像p0における偽像の表れ方は、元画像p0の上半分と、下半分とで同一であると限らない。しかしながら、図5,図6,図7においては、簡単のため、X線検出マトリックス2は、第1領域Dしか有しないものとして、説明している。
【0059】
以上のように、実施例1に係るX線検出器1は、リーク電流Lのムラを取得するマップ生成部23を備えている。リーク電流Lとは、トランジスタTrのオフ状態に係らず電荷読み出し電極Q,Rに流れる電流のことである(図2参照)。電荷読み出し電極Q,Rから蓄積電荷が読み出されるとき、電荷読み出し電極Q,Rには、蓄積電荷の流れであるシグナル電流Sと、リーク電流Lとの合計電流L+Sが流れ、これがアンプアレイ4に入力される。アンプアレイ4の出力(増幅データ)を2次元的に並べると、被検体のX線像が写りこんだ元画像p0が生成される。しかしこの元画像p0には、リーク電流Lに由来する偽像(リーク電流Lのムラ)をも写し込んでいる(図6参照)。そこで、実施例1は、マップ生成部23がリーク電流Lのムラを取得する構成となっている。これにより、リーク電流Lのムラがどのような模様となって元画像p0に表れているかを知ることができる。そして、実施例1に係るX線検出器1は、リーク電流LのムラをX線画像に重ね合わせる重ね合わせ部22を備えている。これにより、リーク電流Lのムラは元画像p0から除去されることになる。
【0060】
しかも、実施例1によれば、リーク電流Lのムラを忠実に取得しつつ、電荷を高速に読み出すことが可能である。すなわち、リーク電流Lのムラは、第1時間の期間中に取得される。第1時間は、リーク電流Lのムラの取得に際し、ノイズを発生させない程度に十分に長い期間(具体的には、1.7ms〜2ms程度)であり、ノイズの少ない状態でリーク電流Lのムラが取得されるのである。一方、トランジスタTrの各々は、第1時間よりも短い第2時間の期間中一括にオンされる。すなわち、蓄積電荷は、第2時間の期間中に電荷読み出し電極Q,Rを通じて高速で読み出される(正確には、第1方向に沿って配列されたトランジスタTrは、一括して第2時間の期間中に読み出される。)したがって、元画像p0に重ねられるリーク電流Lのムラは、ノイズの少ない状態で取得され、元画像p0に出現するリーク電流Lの模様を忠実に表している。つまり、元画像p0におけるリーク電流Lの模様は確実に除去されることになる。
【0061】
なお、実施例1によれば、より確実にリーク電流Lのムラを取得することができる。すなわち、リーク電流Lのムラを取得する場合、これのみをアンプアレイ4から出力させる必要があり、第1時間の期間中は電荷読み出し電極Q,Rにシグナル電流Sが流れては都合がよくない。上述の構成によれば、マップ取得指示部11が指示を与えている間は、電荷読み出し電極Q,Rにはシグナル電流Sが流れない。したがって、上述の構成によれば、リーク電流Lのムラの取得を確実に行うことが担保される。
【0062】
また、実施例1によれば、リーク電流Lのムラの取得は、X線が半導体層に照射された後に行われる。電荷読み出し電極Q,Rに流れるリーク電流Lは、コンデンサD11〜E36が蓄積する電荷の量によって変動する。コンデンサD11〜E36に電荷が蓄積されるのは、X線が半導体層に照射された後であることからすれば、リーク電流Lのムラの取得をX線照射後に行えば、元画像p0に写りこんだリーク電流Lの模様をより忠実に知ることができる。
【0063】
実施例1によれば、リーク電流Lのムラは、電荷を読み出す前に行われる。つまり、電荷がコンデンサD11〜E36に保存されている状態でリーク電流Lのムラが取得されるのである。コンデンサD11〜E36が蓄積している電荷に応じてリーク電流Lが変化しても、リーク電流Lのムラを元画像p0に写りこんだリーク電流Lの模様と同様のパターンとすることができる。
【0064】
また、実施例1に係る第1時間にしたがって動作するアンプアレイ4と、第2時間にしたがって動作するゲートドライブ3とは、異なる動作周波数で動作する。しかも、動作周波数の変更は、動作周波数決定部15によって統括的に行われる。したがって、上述の構成によれば、X線検出器1の制御をより単純にすることができる。
【実施例2】
【0065】
次に、実施例2に係る放射線撮影装置について説明する。この放射線撮影装置は、実施例1に係るX線検出器1を搭載したものである。
【0066】
まず、実施例2に係るX線撮影装置31の構成について説明する。図8は、実施例2に係るX線撮影装置31の構成を説明する機能ブロック図である。図8に示すように、実施例2に係るX線撮影装置31には、被検体Mを載置する天板32と、その天板32の上部に設けられているパルス状のX線ビームを照射するX線管33と、被検体Mを透過したX線を検出するX線検出器10と、X線検出器10に入射する散乱X線を除去するX線グリッド35とが設けられている。また、実施例2の構成は、X線管33の管電圧、管電流やX線ビームの時間的なパルス幅を制御するX線管制御部36と、X線管33を移動させるX線管移動機構37と、これを制御するX線管移動制御部38とを備えている。また、実施例2に係るX線撮影装置31は、X線検出器10を移動させる検出器移動機構39と、これを制御する検出器移動制御部34とを備えている。
【0067】
そして、図8においては、実施例1で説明した画像生成部21,および重ね合わせ部22を再び示している。なお、X線管は、本発明の放射線源に相当する。
【0068】
また、X線撮影装置31は、オペレータの指示を受け付ける操作卓43と、X線透視画像、または動画が表示される表示部44とを備えている。
【0069】
さらにまた、X線撮影装置31は、X線管制御部36,X線管移動制御部38,画像生成部21,および重ね合わせ部22を統括的に制御する主制御部45を備えている。この主制御部45は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。なお、実施例1における主制御部25は、この実施例2における主制御部45に統合されている。
【0070】
X線管33は、X線管制御部36の制御にしたがって、所定の管電流、管電圧、照射時間でX線を被検体に向けて照射される。
【0071】
この様な構成のX線撮影装置31の動作について説明する。まず、被検体Mを天板32に載置する。オペレータは、X線管制御部36を通じて、X線管33を制御し、X線を被検体Mに向けて照射させる。被検体Mを透過したX線は、X線検出器10によって検出され、検出データ(増幅データ)は、画像生成部21に送出され、リーク電流マップM1と、被検体Mの透視像が写りこんでいる元画像p0が生成される。そして、重ね合わせ部22は、図7に示すようなリーク電流Lのムラが写りこんでいないX線透視画像を生成する。このX線透視画像が表示部44で表示されて実施例2に係るX線撮影装置31によるX線透視画像の取得は終了となる。
【0072】
なお、リーク電流マップM1は、X線透視撮影を行う度ごとに(すなわち、X線が照射される度ごとに)生成される。X線透視画像に写りこんでいる像が異なれば、リーク電流Lの分布のパターンも変化する。したがって、リーク電流Lのムラを確実に除去する目的で、X線透視画像を取得するたびにリーク電流マップM1の生成が実行されるのである。
【0073】
以上のように、実施例2の構成によれば、実施例1に係るX線検出器1は、X線撮影装置31に搭載することができることを表している。この様なX線撮影装置31によれば、偽像が写りこんでいないX線画像を取得することができる。
【0074】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0075】
(1)実施例1の構成では、マップ生成部23を有する構成となっていたが、本発明は、この構成に限られない。図9に示すように、マップ生成部23,マップ取得指示部11の代わりにリーク電流分布取得部24,分布データ取得指示部11aを設ける構成としてもよい。本変形例によれば、リーク電流マップM1を作成せずして実施例1と同様の構成が実現できる。リーク電流分布取得部24は、リーク電流Lが増幅された増幅データをアンプアレイ4から受信し、これを基に、リーク電流Lの強度が1次元的に配列したリーク電流配列を生成する。リーク電流配列は、リーク電流マップM1と同じく、X線検出マトリックス2におけるリーク電流Lのムラを表している。重ね合わせ部22は、このリーク電流配列を参照して画像生成部21から出力された元画像p0に写りこんだリーク電流Lのムラを消去する。この様に構成することで、本変形例は、リーク電流マップM1を生成しなくとも、実施例1と同等の効果を有するのである。また、分布データ取得指示部11aは、リーク電流分布取得部24に対して分布データの取得の開始を指示するものであり、その動作の詳細は、マップ取得指示部11と同様である。なお、図9においては、ゲートドライブ3に係る各部を省略している。
【0076】
(2)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0077】
(3)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【符号の説明】
【0078】
D11〜E36 コンデンサ(蓄積手段)
P 出力電極
Q,R 電荷読み出し電極
Tr トランジスタ(スイッチング手段)
1,10 X線検出器(放射線検出器)
3 ゲートドライブ(スイッチング制御手段)
4 アンプアレイ(増幅手段)
11 マップ取得指示部(ムラ取得指示手段)
12 元画像取得指示部(元画像取得指示手段)
14 アンプアレイ制御部(増幅制御手段)
15 動作周波数決定部(動作周波数決定手段)
21 画像生成部(元画像生成手段)
22 重ね合わせ部(重ね合わせ手段)
23 マップ生成部(ムラ取得手段)
31 X線撮影装置(放射線撮影装置)
33 X線管(放射線源)
36 X線管制御部(放射線源制御部)
53 半導体層(変換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を電荷に変換する変換手段と、第1方向、および第2方向に沿って2次元的に配列された電荷を蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段の各々に設けられた出力電極と、前記蓄積手段の各々に設けられて前記第1方向、および前記第2方向に沿って2次元的に配列されるとともに、前記蓄積手段の各々に蓄積された電荷を前記出力電極の各々に出力させるスイッチング手段と、前記スイッチング手段のうち、前記第1方向に沿って配列されたスイッチング手段を一括にオン・オフするスイッチング制御手段と、前記第2方向に沿って配列された前記出力電極の各々に電気的に接続された電荷読み出し電極とを備えた放射線検出器において、
前記電荷読み出し電極の出力を増幅して増幅データを出力するとともに、制御信号の入力に従ってオン・オフが可能となっている増幅手段と、
前記増幅手段をオン・オフする増幅制御手段と、
前記増幅データを2次元的に配列することで電荷読み出し電極に流れるリーク電流のムラと被検体の放射線像とが写りこんだ元画像を生成する元画像生成手段と、
前記元画像の取得を指示する元画像取得指示手段と、
前記リーク電流のムラを取得するムラ取得手段と、
前記リーク電流のムラの取得を指示するムラ取得指示手段と、
前記リーク電流のムラを前記放射線画像に重ね合わせる重ね合わせ手段とを備え、
前記ムラ取得指示手段が指示を行うと、前記増幅制御手段は、前記リーク電流のムラの取得に際し、ノイズを発生させない程度に十分に長い第1時間の間、前記増幅手段をオンして、前記リーク電流のムラを増幅させることにより生成したムラの増幅データが前記ムラ取得手段に送出され、
前記元画像取得指示手段が指示を行うと、前記スイッチング制御手段は、前記第1時間よりも短い第2時間の間、前記スイッチング手段を一括にオンすることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線検出器において、
前記ムラ取得指示手段の指示は、前記スイッチング手段がオフの状態のとき行われることを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線検出器において、
前記ムラ取得指示手段の指示は、放射線が前記変換手段に照射された後に行われることを特徴とする放射線検出器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線検出器において、
前記ムラ取得指示手段の指示は、前記元画像取得指示手段の指示の前に行われることを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線検出器において、
前記増幅制御手段、および前記スイッチング制御手段の動作周波数を出力する動作周波数決定手段を更に備え、
前記ムラ取得指示手段が指示を行うと、前記動作周波数決定手段は、動作周波数を低いものとし、
前記元画像取得指示手段が指示を行うと、前記動作周波数決定手段は、動作周波数を高いものとすることを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線検出器において、
リーク電流のムラの取得は、前記元画像を取得する度ごとに実行されることを特徴とする放射線検出器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線検出器を搭載した放射線撮影装置であって、
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源を制御する放射線制御手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−177855(P2010−177855A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16444(P2009−16444)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】