説明

放射線源とルミネッセンス材料を含む照明システム

放射線源と、この放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できる少なくとも1種のリン光体を含むルミネッセンス材料とを含んでなる照明システムであって、前記少なくとも1種のリン光体が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである照明システムは、特に放射線源としての発光ダイオードに関連して高い光度及び高い演色指標を有する光源を提供することができる。一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)の琥珀色から赤色発光セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートは、電磁スペクトルの近UVから青色範囲の一次放射線によって効率的に励起しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の背景〕
本発明は、一般的に、放射線源と、リン光体を含むルミネッセンス材料とを含む照明システムに関する。本発明は、該照明システムで使用するためのリン光体にも関する。
さらに詳細には、本発明は、ルミネッセンスダウン変換と、紫外又は青色放射線を発する放射線源をもとにした加法混色とによって特有の着色光(白色光を含む)を生成するためのリン光体を含む照明システム及びルミネッセンス材料に関する。放射線源としての発光ダイオードを特に熟慮する。
最近、放射線源として発光ダイオードを用いて白色発光照明システムを製造する種々の試みが為されている。
発光ダイオードを用いる白色発光照明システムの第一カテゴリーは、複数の可視発光ダイオードの使用に基づく。これらのシステムでは、少なくとも2種のLED(例えば、青色及び黄色)又は3種のLED(例えば赤色、青色、及び緑色)を組み合わせて使用する。複数の可視発光ダイオードからの光を混ぜて白っぽい光を生じさせる。しかし、赤色、緑色及び青色発光ダイオードのアレンジメントで白色光を生成すると、発光ダイオードの寿命中のその色調、輝度及び他の因子の変動のため、所望の色調の白色光を生成できないという問題が出てくる。複雑な駆動電子工学は、各LEDの差動的エイジングと色のシフトを補償する必要がある。
【0002】
これらの問題を解決するため、可視白色光照明を提供するためのリン光体を含むルミネッセンス材料を用いて発光ダイオードの色を変換する第二カテゴリーの照明システムが以前に開発された。
このようなリン光体-変換白色照明システムは、特に三色(RGB)アプローチ、すなわち三色、つまり赤、緑及び青色の混合に基づき、この場合、青色出力光の成分はリン光体及び/又はLEDの一次発光によって与えられる。或いは二番目の単純な解決法では、二色(BY)アプローチ、すなわち黄色と青色の混合に基づき、この場合、出力光の黄色二次成分は黄色リン光体によって与えられ、青色成分はリン光体により、又は青色LEDの一次発光によって与えられる。これが最も一般的なリン光体-変換システムである。
特に、例えば米国特許第5,998,925号で開示されているような二色アプローチはY3Al5O12:Ce(YAG-Ce)ガーネットリン光体と結合したInGaNベース半導体材料の青色発光ダイオードを使用する。YAG-Ceリン光体をInGaN LED上に被覆し、該LEDから放射された青色光の一部が該リン光体によって黄色に変換される。LEDから放射された青色光の別の部分はリン光体を透過する。こうして、このシステムは、LEDから放射される青色光と、リン光体から放射される黄色光の両方を発する。青色と黄色の混合発光帯は、観察者によって、中間70代の典型的なCRI及び約6,000K〜約8,000Kの範囲の色温度Tcを有する白色光として知覚される。
【0003】
米国特許第5,998,925号のLEDについての関心事は、“白色”出力光が真の演色の望ましくない色バランスを有することである。
真の演色について、示性数は演色指標(CRI)である。CRIは、光源が照らす対象物の色を正確に与える該光源の能力を表す。演色指標を測定することは、照明システムの演色を黒体ラジエーターの演色とどうやって比較するかの相対的な測定である。照明システムによって照らされる1セットの試験色の色座標が、黒体ラジエーターによって照射される同じ試験色の座標と同じ場合、CRIは100に等しい。
一般に色は可視環境の種々の情報をヒトに提供するという役割を有するので、真の演色は重要である。色は、道路上又はトンネル内で運転する車のドライバーが受ける可視情報に関して特に大きな役割を有する。例えば、低CRIのランプが照らす道路上及びトンネル内では、路面上に印を付けている白色及び黄色の車線を識別するのは困難である。
また、色認識で重要な局面は、表面色の赤を赤と認識することである。特に、赤は危険、禁止、停止及び消火の表示などの重要な意味で暗号化されるためである。従って、安全の観点から可視環境の改善で重要な点は、赤色の表面を増強する照明である。
このような状況で前述した二色放射線型の(BY)ベース光源を使用する場合、可視光スペクトルの赤色領域(647〜700nm範囲)における強度の欠如のため、赤色を認識する確率が下がるという問題が生じる。出力白色光中の赤色の不足は、良く調和した色特性を有する白色光下で照明されている赤色対象物が見えるであろう色の強さより低い強度で見えることとなる。
【0004】
〔発明の簡単な概要〕
従って、実質的な色のシフト、寿命、又は差動的エイジングの問題がなく、赤色範囲でも高いCRIを有する白色光を生成できる効率的かつ安価な白色光LEDシステムに対する要望がある。
また、一般的な目的の照明システムの望ましい特性は経済的コストで高い輝度である。
従って、本発明は、放射線源と、この放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できる少なくとも1種のリン光体を含むルミネッセンス材料とを含んでなる照明システムであって、前記少なくとも1種のリン光体が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、照明システムを提供する。
本発明の照明システムは、色に関して良く調和した複合白色出力光を提供することができる。特に、この複合白色出力光は、従来の照明システムより大量の赤色範囲の発光を有する。この特性が、真の演色が必要な用途でこのデバイスを理想的にする。
本発明のこのような用途として、とりわけ、交通照明、街路照明、安全照明及び自動化工場の照明、並びに車及び交通用の信号照明が挙げられる。
特に、放射線源として発光ダイオードの使用が熟考される。
【0005】
本発明の第一局面により、放射線源としての420〜480nmの範囲のピーク発光波長を有する青色発光ダイオードと、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである少なくとも1種のリン光体を含むルミネッセンス材料とを含む、白色光照明システムが提供される。
このような照明システムは、操業中に白色光を提供するだろう。LEDによって放射された青色光がリン光体を励起させ、該リン光体に琥珀色から赤色の光を放射させる。LEDによって放射された青色光は該リン光体を透過し、該リン光体によって放射された琥珀色から赤色の光と混ざる。見る人は、この青色と琥珀色から赤色の混合光を白色光として知覚する。
このような照明システムは設計上簡単でありながら、低い製造コストと高い収率で高い効率と高い演色指標の両方を達成する。
本発明のリン光体は望ましい励起特性と発光特性を提供するので、望ましいスペクトルがさらに精密に達成される。
本リン光体は、高エネルギーの青色光子の低エネルギーの赤色光子への変換による有意なエネルギー(ストーク)損失を受けないので、高い変換効率を有する。
【0006】
必須因子は、前記セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート型の琥珀色から赤色のリン光体の励起スペクトルが、400〜490nmの範囲で非常に広帯域なので、市販されているすべての青色から紫色の発光ダイオードで十分に励起されることである。本発明のリン光体の励起スペクトルは460〜480nmに集中しているので、当該波長範囲で発光する青色LEDが好ましい。
第一局面の一実施形態により、本発明は、放射線源としての460〜480nmの範囲のピーク発光波長を有する青色発光ダイオードと、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート及び少なくとも1種の第2のリン光体を含むルミネッセンス材料とを含んでなる白色光照明システムを提供する。
前記ルミネッセンス材料がセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート型のリン光体と少なくとも1種の第2のリン光体のリン光体ブレンドを含む場合、本発明の白色光照明システムの演色がさらに改良される。
特に、この実施形態のルミネッセンス材料は、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートと、赤色リン光体とを含むリン光体ブレンドでよい。
該赤色リン光体は、(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)、及び(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz(式中、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1かつ0<z≦1)の群から選択されるEu(II)-活性化リン光体の群から選択される。
或いは、ルミネッセンス材料は、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートと、黄色から緑色のリン光体とを含むリン光体ブレンドでよい。このような黄色から緑色のリン光体は、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu、SrSi2N2O2:Eu、Ln3Al5O12:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)、及びY3Al5O12:Ceを含む群から選択される。
このような追加のリン光体を含むルミネッセンス材料の発光スペクトルは、LEDの青色光及び本発明のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート型のリン光体の琥珀色から赤色の光と共に、必要な色温度で良い演色の高品質白色光を得るために適した波長を有する。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、白色光照明システムであって、放射線源が、200〜400nmのUV範囲のピーク波長の発光を生成する発光ダイオードから選択され、かつルミネッセンス材料が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである少なくとも1種のリン光体と第2のリン光体とを含む、白色光照明システムが提供される。
特に、この実施形態のルミネッセンス材料は、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートと、青色リン光体とを含む白色発光リン光体ブレンドを含みうる。
このような青色リン光体は、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)及び(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Euを含む群から選択される。
【0008】
本発明の第ニ局面は、赤色から琥珀色の光を放射する照明システムを提供する。本発明の用途として、安全照明並びに車及び交通用の信号照明が挙げられる。
特に琥珀色から赤色の光の照明システムであって、放射線源が400〜490nmの範囲のピーク波長の発光を有する青色発光ダイオードから選択され、かつルミネッセンス材料が一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである少なくとも1種のリン光体を含む、照明システムが熟考される。
また、琥珀色から赤色の光の照明システムであって、放射線源が200〜400nmのUV範囲のピーク波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつルミネッセンス材料が一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである少なくとも1種のリン光体を含む、照明システムも熟考される。
【0009】
本発明の別の局面は、放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できるリン光体であって、前記リン光体が一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、リン光体を提供する。
該ルミネッセンス材料は、200nm〜400nmの範囲の波長を有するUV-A放射で励起しうるが、およそ400〜490nm、特に450〜490nmの波長を有する青色発光ダイオードによって放射された可視青色光によって、より高効率で励起される。
本発明のリン光体材料は、吸収された光の多くがダウン変換光として再放射されるので、変換効率が向上し、低い“変換損失”という結果になる。
一般に、より低エネルギー(例えば黄色)の光子に変換される(例えば、青色又はUV)光子のエネルギーが高いほど、光エネルギーは多く失われ(ストーク損失)、白色LED効率の全体的な低下という結果になる。吸収光と再放射光の波長間のギャップが少いほど変換効率が高い。
多くの酸化物リン光体は、400nmを超える波長範囲で発光する放射線源によっては励起しえない。本発明のルミネッセンス材料は、窒化物半導体発光成分の、相対的に低いエネルギーの青色光の白色光への変換について理想的な特性を有する。
吸収された一次放射線と比較した放射される二次放射線の周波数の減少と関係するエネルギー損失は最小限で保たれる。全変換効率は90%まででありうる。
【0010】
リン光体のさらなる重要な特徴として以下のものが挙げられる:1)典型的デバイスの操作温度(例えば80℃)におけるルミネッセンスの熱的クエンチングに対する耐性;2)デバイス製作で使う封入樹脂を妨害する反応性の非存在;3)可視スペクトル内のデッド吸収を最小限にするのに適した吸収プロフィール;4)デバイスの操作寿命にわたって時間的に安定した発光出力;5)リン光体の励起及び発光特性の組成的に制御されるチューニング。
これらセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート型リン光体は、コアクチベーターとしてユーロピウムをも含みうる。
さらに、これらセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート型リン光体は、コアクチベーターとしてユーロピウム、プラセオジム、サマリウム、テルビウム、ツリウム、ジスプロシウム、ホルミウム及びエルビウムの群から選択される他のカチオン(カチオンの混合物を含む)をも含みうる。
アルミニウムを部分的にホウ素、ガリウム及びスカンジウムによって50モル%までの量で置き換えることもできる。
特に、本発明は特有のリン光体組成物:Y3-xAl4SiO11N:Cex(式中、0.002≦x≦0.2)にも関し、この組成物は、80〜90%という高い量子効率、450nm〜490nmの範囲での60〜80%という高い吸光度、約580〜625nmのピーク波長の発光スペクトル及び低損失、すなわち室温から100℃の熱的クエンチングによる10%未満のルミネッセンスのルーメン出力を示す。
本発明は以下の特有のリン光体組成物:Lu3Al4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)及びY2GdAl4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)にも関し、この組成物は450〜500nmでの高い吸光度及び約580〜625nmのピーク波長の発光スペクトル及び低損失、すなわち室温から100℃の熱的クエンチングによる10%未満のルミネッセンスのルーメン出力を示す。
これら特有のリン光体組成物は、低い色温度と改良された演色を有する白色発光リン光体変換LEDにおけるリン光体として特に有益である。
本発明のリン光体は、元素アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムルテチウムのフッ化物及び正リン酸塩、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物、並びにアルミニウムの窒化物の群から選択されるコーティングを有してよい。
【0011】
〔発明の詳細な説明〕
〔セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体〕
本発明は、放射線源を含有するいずれの構成でもよい照明システムにおけるリン光体としてのセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートに焦点を合わせる。前記放射線源としては、限定するものではないが、放電ランプ、蛍光ランプ、LED、LD及びX線管が挙げられる。本明細書では、用語“放射線”は、好ましくは電磁スペクトルのUV及び可視領域の放射線を包含する。
本リン光体の使用は広アレイの照明目的で考えられるが、本発明は、発光ダイオード、特にUV発光ダイオード及び青色発光ダイオードに特に言及して記載し、かつその特定の用途を見出す。
本発明のルミネッセンス材料は、セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートを含む。該リン光体は一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)に一致する。この分類のリン光体材料は、置換オキシニトリドアルミネートシリケートの活性化ルミネッセンスに基づく。
一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のリン光体は、主成分としてアルミニウム、ケイ素、酸素及び窒素を有するガーネット型のホスト格子を含む。このガーネット構造A[8]3B[6]2C[4]3O12中、大きいA原子はO原子によって十二面体的に配位結合され、より小さいB原子はO原子によって八面体的に配位結合され、さらに小さいC原子はO原子によって四面体的に配位結合されている。Al原子とSi原子の同様の大きさ及びAl-OとSi-Nの同様の結合長のため、等量のO原子がN原子によって置換されて電荷の中性を維持する場合、四面体的に配位結合したAl原子の一部をSi原子で置き換えることができる。
ケイ素-窒素結合は、より長い波長の発光を得、580nmでCe(III)の遷移を引き起こすこことを意図した、オキソニトリアルミネートシリケート組成物中における有利な重要成分である。
【0012】
有意な比率でケイ素と窒素を含むと、さらに共有結合が生じる。相対的に共有結合性の組成物では、配位子場がその発光を電磁スペクトルの赤色範囲のより長い波長に移す。これは、ランタニドイオンで周知の電子雲膨張効果(nephelauxetic effect)である。相対的に共有結合性の組成物では発光断面積の値も増し、遷移の振動子強度と該イオン部位における配位子場との関係を反映している。
同じ結晶部位上の酸素配位子に比べ、Ce(III)アクチベーターカチオンを取り囲む窒素配位子の強い電子雲膨張効果のため、RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)の励起及び発光は先行技術のY3-xAl5O12:Cexに比べて赤色シフトする(図3)。
塩基性のホスト格子内では、10モル%までの量で、三価のアルミニウム金属イオンのホウ素、ガリウム及びスカンジウムによる部分的又は完全な置換が可能である。
セリウム(III)の比率xは、好ましくは0.002<x<0.2である。セリウム(III)の比率xが0.002以下の場合、セリウム(III)-カチオンによる光ルミネッセンスの励起発光中心の数が減少するので、輝度が低下する。xが0.2を超えると濃度クエンチングが起こる。濃度クエンチングは、発光強度の低減を意味し、ルミネッセンス材料の輝度を増加するために添加される活性化剤の濃度が最適レベルを超えて増加すると起こる。
セリウム-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート中のセリウムのいくつかのセリウムをコアクチベーターとしてのユーロピウムで置き換えると、一般的に可視スペクトルの琥珀色領域に集中するセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体由来の典型的な広帯域の二次発光の代わりに、可視スペクトルの深赤色領域に集中する二次発光を該ユーロピウムが生成するという効果がある。
プラセオジム、サマリウム、テルビウム、ツリウム、ジスプロシウム、ホルミウム及びエルビウム等のコアクチベーターを使用してもよい。
【0013】
本発明の微結晶性リン光体粉末の製造方法については特に限定されず、すなわち、本発明のリン光体を提供できるいずれの方法によっても前記微結晶性リン光体粉末を製造できる。一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)の一連の組成物を製造することができる。
本発明のリン光体の好ましい製造方法は、ソリッドステート法と呼ばれる。この方法では、リン光体前駆物質をソリッドステートで混合し、該前駆物質が反応して該リン光体材料の粉末を形成するように加熱する。
特有の実施形態では、以下の方法を用いてこれら琥珀色から赤色の発光リン光体がリン光体粉末として調製される:三価金属の混合酸化物を調製するため、25〜30mlの脱イオン水中で撹拌することによって、イットリウム、アルミニウム及びセリウム(III)の高純度硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩及び酢酸塩を溶かした。溶液を緩衝剤で処理し、酸化物をアンモニアで沈殿させる。この懸濁液を撹拌し、ホットプレート上で24時間加熱してからろ過する。
固体を120℃で一晩(12時間)乾燥させる。結果として生じた固体を微細に粉砕し、高純度アルミナのるつぼに入れる。るつぼを木炭含有洗面器に装填してから管状炉に装填し、数時間一酸化炭素を流してパージする。炉パラメーターは900℃まで10℃/分で、次に900℃で4時間のドエル後、炉を消して室温に冷ます。
これら金属酸化物を所定の割合で窒化ケイ素Si3N4及び融剤と混合する。
混合物を高純度るつぼに入れる。るつぼを木炭含有洗面器に装填してから管状炉に装填し、数時間窒素/水素を流してパージする。炉パラメーターは1650℃まで10℃/分で、次に1650℃で4時間のドエル後、炉をゆっくり室温に冷ます。
サンプルを再び微細に粉砕後1600℃で第2のアニーリング工程を行う。
わずかに低温でアルゴンを流しながらさらに第3アニールを行うことによって発光出力を改良することができる。
【0014】
液体沈殿反応によってリン光体粉末材料を製造することもできる。この方法では、可溶性リン光体前駆物質を含む溶液を化学的に処理してリン光体粒子又はリン光体粒子前駆物質を沈殿させる。典型的には、これら粒子を高温でか焼してリン光体化合物を生成する。
さらに別の方法では、リン光体粉末粒子前駆物質又はリン光体粒子をスラリーに分散させてから噴霧乾燥して液体を蒸発させる。引き続き粒子をソリッドステートで高温にて焼結して粉末を結晶化し、リン光体を形成する。次に、高温で焼結して粉末を結晶化してリン光体を形成することによって噴霧乾燥粉末をオキソニトリドアルミネートシリケートリン光体に変換する。次いで、この焼成粉末を軽く粉砕し、製粉し、ふるって所望粒径のリン光体粒子を回収する。
燃焼後、該粉末を粉末X線回折(Cu、Kα-線)で特徴づけすると、所望の相が生じたことを示した。
UV及び青色励起下で効率的に発光する黄色から琥珀色の粉末が得られる。
470nmの波長の放射線で励起すると、特定組成物Lu3Al4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)は、ピーク波長が586nmで、780nmにテイルアウトする広帯域発光を与えることが分かる。
色点はx=0.427及びy=0.522である。量子効率は80%ある。
この明細書の添付図面の図4には、特定組成物Y2GdAl4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)の励起、発光及び反射スペクトルが示される。
励起スペクトルから、本発明のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体材料が450nm〜490nmの波長の放射線で効率的に励起しうることも明白である。
好ましくは、本発明のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケート型リン光体は、元素アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムのフッ化物及び正リン酸塩、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物並びにアルミニウムの窒化物で形成される群から選択される1種以上の化合物の薄い均一な保護層でコーティングされる。
保護層の厚さは、通例0.001〜0.2μmの範囲であり、このように非常に薄いので、保護層はエネルギーの実質的な損失なしで放射線源の放射によって透過されうる。例えば、気相からの蒸着又は湿式コーティング法によって、リン光体粒子上にこれら材料のコーティングを施すことができる。
【0015】
〔照明システム〕
本発明は、放射線源と、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)の少なくとも1種のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートを含むルミネッセンス材料とを含んでなる照明システムにも関する。
放射線源として、半導体光放射エミッター及び電気的励起に応じて光線を発する他のデバイスが挙げられる。半導体光放射エミッターとして、発光ダイオードLEDチップ、発光ポリマー(LEP)、有機発光デバイス(OLED)、高分子発光デバイス(PLED)等が挙げられる。
さらに、本発明のリン光体組成物と共に放射線源として使うため、放電ランプ及び蛍光ランプ、例えば低圧放電及び高圧放電水銀ランプ、イオウ放電ランプ、並びに分子ラジエーターをもとにした放電ランプ等で見られる発光成分のような発光成分も考慮される。
本発明の好ましい実施形態において、放射線源は発光ダイオード(LED)である。
本発明では、LEDとセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体組成物を含むいずれの構成の照明システムも考えられるが、好ましくは、上述したように一次UV又は青色光を発するLEDによって照射されると、組み合わせて特有の色又は白色の光を達成できる他の周知のリン光体を追加する。
【0016】
ここで、図1に示される放射線源とルミネッセンス材料とを含んでなるこのような照明システムの一実施形態の詳細な構成について説明する。
図1はルミネッセンス材料を含むコーティングを有するチップ型発光ダイオードの概略図を示す。このデバイスは、放射線源としてチップ型発光ダイオード(LED)1を含む。発光ダイオードダイスは反射カップ鉛フレーム2内に配置される。ダイス1は、結合ワイヤー7を介して第1端子6に連結され、かつ第2電気端子6に直接結合されている。反射カップの凹所は、本発明のルミネッセンス材料を含むコーティング材料で充填され、反射カップ内に埋め込まれたコーティング層を形成している。リン光体は別々に、又は混合物で適用される。
コーティング材料は典型的にリン光体又はリン光体ブレンドを封入するためのポリマーを含む。この実施形態では、リン光体4又はリン光体ブレンド4、5は、封入体に対して高い安定特性を示すべきである。好ましくは、ポリマーは有意な光散乱を防止するため光学的にクリアである。LED業界ではLED照明システムを製造するための種々のポリマーが知られている。
一実施形態では、ポリマーはエポキシ及びシリコーン樹脂から成る群より選択される。ポリマー前駆体である液体にリン光体混合物を添加して封入を達成することができる。例えば、リン光体混合物は顆粒状粉末でよい。ポリマー前駆液体中にリン光体粒子を導入すると、スラリー(すなわち、粒子の懸濁液)が形成される。重合すると、リン光体混合物は、封入によって適所に強固に固定される。一実施形態では、ルミネッセンス材料とLEDダイスを両方ともポリマーに封入する。
透明なコーティング材料は、光拡散性粒子、有利にはいわゆるディフューザーを含みうる。このようなディフューザーの例は、鉱物フィラー、特にCaF2、TiO2、SiO2、CaCO3若しくはBaSO4又はいずれかの他の有機顔料である。これら材料を簡単なやり方で上記樹脂に添加することができる。
【0017】
操作中、電力をダイスに供給してダイスを活性化する。活性化されると、ダイスは一次光、例えば青色光を放射する。放射された一次光の一部が完全又は部分的に、コーティング層内のルミネッセンス材料によって吸収される。すると、ルミネッセンス材料が二次光、すなわち一次光の吸収に応じて、十分に広帯域の長いピーク波長を有する変換された光、主に琥珀色の光(特に赤色の有意な比率を有する)を放射する。放射された一次光の残りの未吸収部分は、二次光と共にルミネッセンス層を透過する。封入は、出力光として一般的な方向に未吸収一次光と二次光を方向づける。従って、出力光は、ダイスから放射された一次光と、ルミネッセンス層から放射された二次光とで構成される複合光である。
本発明の照明システムの出力光の色温度又は色点は、スペクトル分布及び一次光と比較した二次光の強度によって変化するだろう。
第一に、一次光の色温度又は色点は発光ダイオードの適切な選択によって変化しうる。
第二に、二次光の色温度又は色点はルミネッセンス材料中のリン光体の適切な選択、リン光体粒子の粒径とその濃度によって変化しうる。さらに、これらの取り決めは有利には、ルミネッセンス材料にリン光体ブレンドを使用する可能性を与え、結果として、有利には所望の色相をさらに正確に設定することができる。
【0018】
〔白色リン光体変換発光デバイス〕
本発明の一局面によれば、照明システムの出力光は“白色”光に見えるようなスペクトル分布を有しうる。最も一般的な白色LEDは、青色放射線のいくらかを補色、例えば黄色から琥珀色の発光に変換するリン光体でコーティングされている青色発光LEDチップから成る。青色の発光と黄色の発光が一緒に白色光を生成する。
UV発光チップと、該UV放射線を可視光に変換するように設計されたリン光体とを利用する白色LEDもある。典型的に、2以上のリン光体発光帯が必要である。
【0019】
〔青色/リン光体白色LED〕
(青色発光ダイオードを用いる二色白色光リン光体変換発光デバイス)
第一実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、青色発光ダイオードによって放射された青色放射線を補色の波長範囲に変換して二色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。
この場合、セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体を含むルミネッセンス材料によって琥珀色から赤色の光が生成される。さらに、第2のルミネッセンス材料によってこの照明システムの演色を改良することもできる。
特に良い結果は、その発光最大値が400〜490nmにある青色LEDで達成される。特にセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートの励起スペクトルを考慮すると、470nmが最適であることが分かった。
【0020】
本発明の白色発光照明システムは、特に好ましくは無機ルミネッセンス材料Y3-xAl4SiO11N:Cex(式中、0.002≦x≦0.2)を、ルミネッセンス変換封入又は層を生成するために用いられるケイ素樹脂と混合することによって実現されうる。
470nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線の一部が、この無機ルミネッセンス材料Y3-xAl4SiO11N:Cex(式中、0.002≦x≦0.2)によって橙色スペクトル領域にシフトされ、結果として青色について補色である波長範囲にシフトされる。ヒト観察者は、青色一次光と、該琥珀色発光リン光体の二次光との組合せを白色光として知覚する。
【0021】
表1:
Y2.94SiAl4O11N:Ce0.06リン光体を有する照明グレードの白色pcLEDの比色分析データ

【0022】
図2は、ルミネッセンス材料として、470nmでの一次発光とY3-xAl4SiO11N:Cex(x=0.06)を有する青色発光InGaNダイスを含み、一緒に、高品質の白色感覚を伝える全体的なスペクトルを形成する、該照明システムの発光スペクトルを示す。
そのスペクトル分布を先行技術のLEDによって生成される白色出力光のスペクトル分布と比べると、スペクトル分布の明白な差異は、可視スペクトルの赤色領域内にあるピーク波長のシフトである。従って、本照明システムによって生成される白色出力光は、先行技術のLEDによって生成される出力光に比し、有意な追加量の赤色を有する。
【0023】
(青色発光ダイオードを用いる多色白色光リン光体変換発光デバイス)
第二実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、青色発光ダイオードによって放射された青色放射線を補色の波長範囲に変換して多色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。この場合、セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と第2のリン光体を含むリン光体ブレンドを含むルミネッセンス材料によって琥珀色から赤色の光が生成される。
青色発光LED及び琥珀色から赤色発光セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と共に、全スペクトル範囲をカバーする赤色及び緑色の広帯域エミッターリン光体をさらに使用することで、さらに高い演色の白色光を放射させることができる。
有用な第2のリン光体とその光学特性を表2にまとめる。
表2:

【0024】
ルミネッセンス材料は、2種のリン光体、すなわち琥珀色から赤色のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Eu(式中、0≦a≦5、0<x≦1及び0≦y≦1)から選択される赤色リン光体とのブレンドでよい。
ルミネッセンス材料は、2種のリン光体、例えば、琥珀色から赤色のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と、(Ba1-xSrx)SiO4:Eu(式中、0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu及びSrSi2N2O2:Euを含む群から選択される緑色リン光体とのブレンドでよい。
ルミネッセンス材料は、3種のリン光体、例えば、琥珀色から赤色のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)、及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Eu(式中、0≦a<5、0<x≦1かつ0≦y≦1)から選択される赤色リン光体、及び(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu及びSrSi2N2O2:Euを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体とのブレンドでよい。
本発明の白色発光照明システムは、特に好ましくは、3種のリン光体の混合物を含む無機ルミネッセンス材料を、ルミネッセンス変換封入又は層を生成するために用いられるケイ素樹脂と混合することによって実現される。第1のリン光体(1)は、琥珀色発光オキソニトリドアルミネートシリケートY2.94SiAl4O11N:Ce0.06であり、第2のリン光体(2)は、赤色発光CaS:Euであり、第3リン光体(3)は、SrSi2N2O2:Eu型の緑色発光リン光体である。
470nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線の一部が、この無機ルミネッセンス材料Y2.94SiAl4O11N:Ce0.06によって琥珀色スペクトル領域にシフトされ、結果として青色について補色である波長範囲にシフトされる。470nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線の別の部分は、無機ルミネッセンス材料CaS:Euによって赤色スペクトル領域にシフトされる。470nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線のさらに別の部分は、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Euによって緑色スペクトル領域にシフトされる。ヒト観察者は、青色一次光と、該リン光体ブレンドの多色二次光との組合せを白色光として知覚する。
この場合、このようにして生成される白色光の色相(CIE色度図における色点)は、混合と濃度について適切なリン光体を選択することによって変化しうる。
【0025】
〔UV/リン光体白色LED〕
(UV放射線を用いる二色白色リン光体変換発光デバイス)
第三実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線を補色の波長範囲に変換して二色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。この場合、前記ルミネッセンス材料によって琥珀色及び青色の光が生成される。琥珀色光は、セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体を含むルミネッセンス材料によって生成される。青色光は、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce及び(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Euを含む群から選択される青色リン光体を含むルミネッセンス材料によって生成される。
特に良い結果は、その発光最大値が200〜400nmにあるUVA発光ダイオードと共に達成される。特にセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートの励起スペクトルを考慮すると、365nmが最適であることが分かった。
【0026】
〔UV発光LEDを用いる多色白色リン光体変換発光デバイス〕
第四実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線を、例えば追加の三つ組の色、例えば青色、緑色及び赤色によって、補色の波長範囲に変換して多色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。
この場合、前記ルミネッセンス材料によって、赤色、緑色及び青色の光が生成される。
さらに、第2の赤色ルミネッセンス材料を用いて、この照明システムの演色を改良することもできる。
UV発光LED及び赤色発光セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と共に、全スペクトル範囲をカバーする青色及び緑色の広帯域エミッターリン光体を使用することによって、さらに高い演色の白色光を放射させることができる。
ルミネッセンス材料は、3種のリン光体、すなわち赤色セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体と、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce及び(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Euを含む群から選択される青色リン光体と、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu及びSrSi2N2O2:Euを含む群から選択される黄色から緑色リン光体とのブレンドでよい。
この場合、このようにして生成される白色光の色相(CIE色度図における色点)は、混合と濃度について適切なリン光体を選択することによって変化しうる。
【0027】
〔琥珀色から赤色のリン光体変換発光デバイス〕
本発明のさらなる局面により、“琥珀色から赤色”の光に見えるようなスペクトル分布を有する出力光を放射する照明システムが提供される。
リン光体としての本発明のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートを含むルミネッセンス材料は、例えば、UVA-発光LED又は青色発光LED等の一次UVA又は青色放射線源による刺激用の琥珀色又は赤色成分として特によく適合する。
この関係で、電磁スペクトルの琥珀色から赤色の領域で発光する照明システムを実施することができる。
第五実施形態では、本発明の琥珀色光を放射する照明システムは、有利には、青色発光ダイオードによって放射された青色放射線を補色の波長に変換して、琥珀色から赤色の光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。
この場合、琥珀色から赤色の光は、セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体を含むルミネッセンス材料によって生成される。
LED-リン光体システムの色出力は、リン光体層の厚さに非常に敏感である。すなわち、リン光体層が厚く、過剰の琥珀色セリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートリン光体を含む場合、より少量の青色LED光がその厚いリン光体層を透過するだろう。そして、該リン光体の琥珀色から赤色の二次光が複合LED-リン光体システムを支配するので、該システムは琥珀色から赤色に見えるだろう。従って、リン光体層の厚さは、該システムの色出力に影響を与える重要な変量である。
この場合、このようにして生成される琥珀色から赤色の光の色相(CIE色度図における色点)は、混合と濃度について適切なリン光体を選択することによって変化しうる。
第六実施形態では、本発明の琥珀色から赤色発光照明システムは、有利には、UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線を単色の琥珀色から赤色の光に完全に変換するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。この場合、琥珀色から赤色の光は、該ルミネッセンス材料によって生成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】LED構造によって放射された光の経路に配置された本発明のリン光体を含む二色白色LEDランプの概略図を示す。
【図2】ルミネッセンス材料として青色LEDとY3-xAl4SiO11N:Cex(x=0.06)を含んでなる照明システムのスペクトルラジアンス(radiance)を示す。
【図3】YAG:Ceと比較したLu3Al4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)の発光スペクトルを示す。
【図4】YAG:Ceの発光と比較したY2GdAl4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)の励起、反射及び発光スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、この放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できる少なくとも1種のリン光体を含むルミネッセンス材料とを含んでなる照明システムであって、前記少なくとも1種のリン光体が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、照明システム。
【請求項2】
前記放射線源が発光ダイオードである、請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記放射線源が、400〜490nmの範囲のピーク波長の発光を有する青色発光ダイオードから選択され、かつ前記ルミネッセンス材料が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートを含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項4】
前記放射線源が、400〜490nmの範囲のピーク波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ前記ルミネッセンス材料が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートと第2のリン光体を含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項5】
前記第2のリン光体が、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz(式中、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1かつ0<z≦0.09)から選択される赤色リン光体である、請求項4に記載の照明システム。
【請求項6】
前記第2のリン光体が、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu、SrSi2N2O2:Eu、Ln3Al5O12:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)、及びY3Al5O12 :Ceを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体である、請求項4に記載の照明システム。
【請求項7】
前記放射線源が、200〜400nmのUV範囲のピーク波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ前記ルミネッセンス材料が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートを含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項8】
前記放射線源が、200〜400nmのUV範囲のピーク波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ前記ルミネッセンス材料が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートと第2のリン光体を含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項9】
前記第2のリン光体が、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu及びLaSi3N5:Ceの群から選択される青色リン光体である、請求項8に記載の照明システム。
【請求項10】
前記第2のリン光体が、(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)、及び(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz(式中、0≦a≦5.0、0<x≦1、0≦y≦1かつ0<z≦0.09)の群から選択される赤色リン光体である、請求項8に記載の照明システム。
【請求項11】
前記第2のリン光体が、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu、SrSi2N2O2:Eu、Ln3Al5O12:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)及びY3Al5O12:Ceを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体である、請求項8に記載の照明システム。
【請求項12】
放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できるリン光体であって、前記リン光体が、一般式RE3-xAl2Al3-ySiyO12-yNy:Cex(式中、REは、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、テルビウム、スカンジウム及びランタンの群から選択される希土類金属であり、0.002≦x≦0.2かつ0<y≦3)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、リン光体。
【請求項13】
前記リン光体中、アルミニウムが、50モル%までの量でホウ素、ガリウム及びスカンジウムによって部分的に置換されている、請求項12に記載のリン光体。
【請求項14】
前記リン光体が、コアクチベーターとしてユーロピウムをさらに含む、請求項12に記載のリン光体。
【請求項15】
前記リン光体が、プラセオジム、サマリウム、テルビウム、ツリウム、ジスプロシウム、ホルミウム及びエルビウムの群から選択されるコアクチベーターをさらに含む、請求項12に記載のリン光体。
【請求項16】
前記リン光体が、一般式Y3-xAl4SiO11N:Cex(式中、0.002≦x≦0.2)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、請求項12に記載のリン光体。
【請求項17】
前記リン光体が、一般式Lu3Al4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、請求項12に記載のリン光体。
【請求項18】
前記リン光体が、一般式Y2GdAl4.5Si0.5O11.5N0.5:Ce(2%)のセリウム(III)-活性化オキソニトリドアルミネートシリケートである、請求項12に記載のリン光体。
【請求項19】
前記リン光体が、元素アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムのフッ化物及び正リン酸塩、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物、並びにアルミニウムの窒化物の群から選択されるコーティングを有する、請求項12に記載のリン光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−533233(P2008−533233A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500303(P2008−500303)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050645
【国際公開番号】WO2006/095284
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】