放射線画像検出装置、及び放射線画像撮影システム
【課題】光電変換素子のバイアス電流量を検出する抵抗器の両端子間に電圧降下が発生して前記光電変換素子の感度が低下した場合においても、適切な出力電気信号を得ることができる放射線画像検出装置及び画質低下が抑制された放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】光電変換素子48の電気信号の読み出しゲインが設定される第1増幅回路71に直列に第2増幅回路72を設け、第2増幅回路72のゲインを、前記電圧降下による光電変換素子48の感度の低下に応じて増加させることにより適切な出力電気信号を得る。
【解決手段】光電変換素子48の電気信号の読み出しゲインが設定される第1増幅回路71に直列に第2増幅回路72を設け、第2増幅回路72のゲインを、前記電圧降下による光電変換素子48の感度の低下に応じて増加させることにより適切な出力電気信号を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体を透過した放射線を検出する放射線画像検出装置、及び放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、人体を透過した放射線の強度を検出することで人体内部の撮像を行うFPD(Flat Panel Detector)等の可搬性の放射線画像検出装置が用いられている。このFPD(以下、電子カセッテという。)は患者をベッド等に乗せたまま撮像することができ、電子カセッテの位置を変更することにより撮像箇所も調整することができるため、動けない患者に対しても柔軟に対処することができる。
【0003】
この場合、放射線画像検出装置として、照射された放射線により光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像検出装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波によりフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像検出装置が種々開発されている。
【0004】
これらの放射線画像検出装置では、通常、ガラス基板あるいはフレキシブル基板等の基板上に複数の走査線と複数の信号線とが互いに交差するように配設され、走査線や信号線で区画された基板上の各領域に光電変換素子を設け、放射線や放射線から変換された電磁波の照射により各光電変換素子に蓄積された電荷を、信号線を介して取り出すことで、各光電変換素子すなわち各画素の電気信号を読み出すようになっている。
【0005】
このようなFPD型の放射線画像検出装置では、照射される放射線の線量に応じて各光電変換素子に蓄積される電荷量が異なり、特に低線量では、前記電気信号の振幅が小さくなり、広いダイナミックレンジを確保することができない。
【0006】
特許文献1に、この問題を解決しようとする技術が開示されている。この技術では、前記光電変換素子にバイアスをかけるバイアス線に前記光電変換素子から流れるバイアス電流量が放射線の線量に応じて変化することに着目し、放射線の線量を算出し、算出した放射線の線量に基づいて、光電変換素子からの電気信号の読み出し時における増幅回路のゲインを設定するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−219538号公報([0038]、[0039]、[0073]、[0079]、図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記のバイアス電流量を算出する際、バイアス電流がμAオーダーと微弱な値であるため、特許文献1では、各光電変換素子の各バイアス電流が流れるバイアス線を合成し、合成した結線に直列に抵抗値が100[kΩ]や1[MΩ]等の大きな抵抗器を挿入し、挿入した抵抗器の両端子間に発生する電圧を差動アンプにより測定する構成を採用している。
【0009】
しかしながら、光電変換素子の受光感度(以下、単に感度という。)は、バイアス電圧により変化するので、前記抵抗器の両端子間に電圧降下が発生すると、光電変換素子の受光感度が低下し、その分、電気信号(電圧信号)が低下し、結局、ダイナミックレンジを確保することができなくなり、改良の余地がある。
【0010】
この発明は、このような従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、光電変換素子のバイアス電流量を検出する抵抗器の両端子間に電圧降下が発生した場合においても、適切な出力電気信号を得ることができる放射線画像検出装置及び画質低下が抑制された放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この項では、理解の容易化のために添付図面中の符号を付けて説明する。したがって、この項に記載した内容がその符号を付けたものに限定して解釈されるものではない。
【0012】
請求項1記載の発明に係る放射線画像検出装置は、例えば、図1、図4、図5に示すように、放射線(16)の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子(48)と、前記各光電変換素子(48)にバイアス電圧を供給するバイアス線(58)と、前記バイアス線(58)を介して前記光電変換素子(48)に前記バイアス電圧を印加する電源(64)と、前記バイアス線(58)を流れるバイアス電流を、前記バイアス線(58)に挿入した抵抗器(62a)に生じる電圧降下により検出する電流検出手段(62)と、信号線(52)を通じて前記光電変換素子(48)から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路(71)と、前記第1増幅回路(71)の出力側に接続される第2増幅回路(72)と、前記第2増幅回路(72)のゲインを、前記電圧降下による前記光電変換素子(48)の感度の低下に応じて増加させることにより前記電気信号を補正する制御手段(66)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合、請求項2に係る発明は、例えば、図5に示すように、前記第2増幅回路(72)は、正相入力側が前記第1増幅回路(71)の出力に接続されるオペアンプと、前記オペアンプの出力と逆相入力側との間に接続される第1抵抗器(72b)と、前記逆相入力側と基準電位との間に接続される第2抵抗器(72c)と、を備える非反転増幅回路(72)であり、前記制御手段(66)は、前記第1及び第2抵抗器(72b、72c)のうち、少なくとも一つの抵抗器の抵抗値を変化させることで前記第2増幅回路(72)のゲインを変化させることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明に係る放射線画像検出装置は、例えば、図4、図9、図10に示すように、放射線(16)の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子(48)と、前記各光電変換素子(48)にバイアス電圧を供給するバイアス線(58)と、前記バイアス線(58)を介して前記光電変換素子(48)に前記バイアス電圧を印加する電源(64)と、前記バイアス線(58)を流れるバイアス電流を、前記バイアス線(58)に挿入した抵抗器(62a)に生じる電圧降下により検出する電流検出手段(62)と、信号線(52)を通じて前記光電変換素子(48)から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される増幅回路(70、71A)と、前記電圧降下による前記光電変換素子(48)の感度の低下に応じて低下する前記電気信号を補正する制御手段(66)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この場合、請求項4に係る発明は、例えば、図9に示すように、前記制御手段(66)は、前記増幅回路(70、71A)の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正することを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、例えば、図10に示すように、前記制御手段(66)は、前記増幅回路(70、71A)により増幅された前記電気信号のAD変換されたデジタル値に対して、前記電圧降下が大きくなるほど、前記デジタル値が大きくなるように補正するデジタル処理手段(85)を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明に係る放射線画像検出装置は、例えば、図11、図12、図13に示すように、放射線(16)の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子(48)と、前記各光電変換素子(48)にバイアス電圧を供給するバイアス線(92、94)と、前記バイアス線(92、94)を介して前記光電変換素子(48)に前記バイアス電圧を印加する電源(64)と、前記バイアス線(92、94)のうち、少なくとも一部のバイアス線(94)を流れるバイアス電流を、当該少なくとも一部のバイアス線(94)に挿入した抵抗器(62a)に生じる電圧降下により検出する電流検出手段(62)と、前記電流検出手段(62)が接続された前記光電変換素子(48)から信号線(52)を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路(第4増幅回路71B)と、前記電流検出手段(62)が接続されていない前記光電変換素子(48)から信号線(52)を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第2増幅回路(第5増幅回路71C)と、前記電圧降下による前記光電変換素子(48)の感度の低下に応じて低下する前記第1増幅回路(第4増幅回路71B)の前記電気信号を補正する制御手段(66)と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この場合、請求項7に係る発明は、例えば、図9、図11に示すように、前記制御手段(66)は、前記第1増幅回路(第4増幅回路71B)の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、例えば、図10、図13に示すように、前記制御手段(66)は、前記第1増幅回路(第4増幅回路71B)の前記電気信号のAD変換されたデジタル値を、前記第2増幅回路(第5増幅回路71C)の前記電気信号の前記AD変換されたデジタル値に基づき補正するデジタル処理手段(85A)を備えることを特徴とする。
【0020】
この場合、請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、例えば、図5、図9、図10に示すように、前記第1増幅回路及び増幅回路(第3増幅回路)(71、71A)は、それぞれ、オペアンプ(71a)と、当該オペアンプ(71a)に並列に接続された容量値可変手段(71b)とを備えるチャージアンプの構成とされることを特徴とする。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、例えば、図4、図7、図11、図13に示すように、前記制御手段(66)は、前記電流検出手段(62)により検出された前記バイアス線(58、94)を流れる電流の増加及び減少に基づいて前記放射線(16)の照射の開始及び/又は終了を検出することを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の発明に係る放射線画像撮影システムは、例えば、図1、図9、図11、図13に示すように、放射線画像検出装置(20、20A、20B、20C、20D)と、前記電気信号の読み出し時に、前記放射線画像検出装置(20、20A、20B、20C、20D)から出力されてきた前記各光電変換素子(48)から読み出され増幅された各電気信号に基づいて放射線画像を形成する画像処理装置(24)と、を備えることを特徴とする。
【0023】
この場合、請求項12に係る発明は、前記放射線画像検出装置(20、20A、20B、20C、20D)と前記画像処理装置(24)とは無線接続により接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、光電変換素子から電気信号を読み出す際に、放射線の照射時に発生するバイアス電流による電圧降下により電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力側に接続される第2増幅回路と、を備え、前記第2増幅回路のゲインを、前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて増加させることにより適切な出力電気信号を得ることができる。
【0025】
また、この発明によれば、光電変換素子のバイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて低下する第1増幅回路の電気信号の振幅を補正する制御手段を備えるので、前記第1増幅回路の電気信号の振幅と、バイアス線に抵抗器を挿入しないので感度低下のない第2増幅回路の電気信号の振幅とを一致させることができ、結果として各光電変換素子に係る適切な出力電気信号を得ることができる。
【0026】
さらに、この発明によれば、この発明に係る放射線画像検出装置と、電気信号の読み出し時に、前記放射線画像検出装置から出力されてきた各光電変換素子から読み出され増幅された各電気信号に基づいて放射線画像を形成する画像処理装置と、を備えるので、画質低下が抑制された良好な放射線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成図である。
【図2】この実施形態に係る放射線画像検出装置を示す一部破断斜視図である。
【図3】図2の基板上の小領域に形成された光電変換素子と薄膜トランジスタ等の構成を示す拡大図である。
【図4】この実施形態に係る放射線画像撮影システムの回路図である。
【図5】この実施形態に係る放射線画像検出装置の1画素分についての回路図である。
【図6】この実施形態に係る放射線画像検出装置の制御手段により実施されるフローチャートである。
【図7】電流検出手段で電流から変換され出力される電圧値の時間変化の一例を表すグラフである。
【図8】増幅回路から出力される電圧値の時間変化の一例を表すグラフである。
【図9】変形例1に係る回路図である。
【図10】変形例2に係る回路図である。
【図11】変形例3に係る回路図である。
【図12】変形例3に係る領域分割を示す説明図である。
【図13】変形例4に係る回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明に係る放射線画像検出装置及び放射線画像撮影システムについて、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、この実施形態の放射線画像撮影システム10の構成図である。放射線画像撮影システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14である患者に対して、放射線16を照射する放射線装置18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ(放射線画像検出装置)20と、画像処理装置として機能するとともに放射線画像撮影システム10全体を制御するシステムコントローラ24と、医師又は技師等(以下、ユーザという)の入力操作を受け付けるコンソール26と、撮影した放射線画像等を表示する表示装置28とを備える。
【0030】
システムコントローラ24と、電子カセッテ20と、表示装置28との間には、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.11.a/b/g/n等の無線LAN、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0031】
システムコントローラ24には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)30が接続され、RIS30には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)32が接続されている。
【0032】
放射線装置18は、放射線16を照射する放射線源34と、放射線源34を制御する放射線制御装置36と、放射線スイッチ38とを備える。放射線源34は、電子カセッテ20に対して放射線16を照射する。放射線源34が照射する放射線16は、X線、α線、β線、γ線、電子線等であってもよい。放射線スイッチ38は、2段階のストロークを持つように構成され、放射線制御装置36は、放射線スイッチ38がユーザによって半押されると放射線16の照射準備を行い、全押されると放射線源34から放射線16を照射させる。放射線制御装置36は、図示しない入力装置を有し、ユーザは、前記入力装置を操作することで、放射線16の照射時間、管電圧、管電流等の値を設定することができる。放射線制御装置36は、設定された照射時間等に基づいて、放射線源34から放射線16を照射させる。
【0033】
図2は、図1に示す電子カセッテ20の斜視図である。
【0034】
この実施形態に係る電子カセッテ20は、ケーシング42内にシンチレータ44や基板46等が収納されたカセッテ型の装置として構成されている。
【0035】
なお、この実施形態では、照射された放射線16(図1参照)をシンチレータ44で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波により後述する光電変換素子48(放射線検出素子)で電荷を発生させて電気信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出装置について説明する。シンチレータ44を用いず、照射された放射線により光電変換素子(放射線検出素子)で直接電荷を発生させて電気信号に変換する、いわゆる直接型の放射線画像検出装置にも同様に適用可能である。
【0036】
ケーシング42は、少なくとも放射線16の照射を受ける側の面42aが放射線16を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。ケーシング42の内部には、シンチレータ44や基板46の他にも必要な部材や装置が内蔵されている。また、この実施形態では、例えばケーシング42の側壁部に、無線によりシステムコントローラ24との情報の送受信を行うための図示しないアンテナ装置が埋め込まれている。
【0037】
シンチレータ44は、基板46の検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ44は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光線を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0038】
基板46はガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板46のシンチレータ44に対向する側の面46a上には、複数のゲート線(走査線)50と複数の信号線52とが互いに交差するように配設されている。基板46の面46a上の複数のゲート線50と複数の信号線52により区画された各小領域Rには、それぞれ光電変換素子48が設けられている。また、光電変換素子48が設けられた小領域R全体、すなわち図3に一点鎖線で示す領域が検出部Pとされている。光電変換素子48は、基板46に二次元マトリクス状に配列されている。
【0039】
この実施形態では、光電変換素子48としてpin型のフォトダイオードが用いられているが、この他にも、フォトトランジスタ等を用いることも可能である。各光電変換素子48は、図4に示すように、スイッチ素子である薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor;TFT)54に接続されており、TFT54を介して信号線52に接続されている。
【0040】
基板46の面46a上に、AlやCr等からなるTFT54のゲート電極(単に、ゲートともいう。)Gがゲート線50と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極G上及び面46a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層上のゲート電極Gの上方部分に、アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層を介して、光電変換素子48のカソード電極(単に、カソードともいう。)と接続されたソース電極(単に、ソースともいう。)Sと、信号線52と一体的に形成されるドレイン電極(単に、ドレインともいう。)Dと、が積層されて形成されている。なお、光電変換素子48やTFT54の構造は、例えば、特許文献1の段落[0024]〜[0030]に示されるように公知であるので省略する。基板46は、この実施形態ではガラス基板を用いているが、可撓性のある樹脂基板、いわゆるフレキシブル基板を用いることもできる。
【0041】
光電変換素子48のアノード電極の上面には、このアノード電極を介して光電変換素子48に逆バイアス電圧を印加するためのバイアス線56が接続されている。
【0042】
この実施形態では、図4に示すように、それぞれ列状に配置された複数の光電変換素子48に1本のバイアス線56が接続されており、各バイアス線56はそれぞれ信号線52に平行に配設されている。また、各バイアス線56は、基板46の検出部Pの外側の位置で1本の結線(バイアス線又は共通バイアス線ともいう。)58に接続されている。バイアス線56や結線58は電気抵抗が小さい金属線で形成されている。
【0043】
また、各ゲート線50や各信号線52、各バイアス線56の結線58は、それぞれ基板46の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)60に接続されている。各入出力端子60には、基板46上に形成乃至接続された駆動回路等が接続されている。
【0044】
なお、電子カセッテ20は、充電可能な内蔵のバッテリ(蓄電装置)により動作する可搬型の装置として構成されている。
【0045】
ここで、電子カセッテ20の回路構成について説明する。図4はこの実施形態に係る電子カセッテ20の等価回路図であり、図5はその中の基板46の検出部Pを構成する1画素分についての等価回路図である。
【0046】
上述したように、基板46の検出部Pの各光電変換素子48は、アノード電極がそれぞれバイアス線56に接続されており、各バイアス線56は1本の結線58に接続されている。結線58は電流検出手段(電流検出回路)62を介してバイアス電源(単に、電源ともいう。)64に接続されている。バイアス電源64は、電流検出手段62及び各バイアス線56を介して各光電変換素子48に逆方向にバイアス電圧(逆バイアス電圧)Vbiasを印加するようになっている。
【0047】
なお、この実施形態では、pin型の光電変換素子48のp層側にアノード電極を介してバイアス線56が接続されているので、バイアス電源64からは、光電変換素子48のアノード電極にバイアス線56を介して逆バイアス電圧として負の電圧(カソード電極よりも所定電圧以上低い電圧であればよい。)が印加されるようになっている。
【0048】
また、光電変換素子48のpin型の積層順を逆に形成して(光電変換素子48の極性が逆となるように形成して)カソード電極にバイアス線56を接続する場合には、バイアス電源64からはカソード電極に逆バイアス電圧として正の電圧(アノード電極よりも所定電圧以上高い電圧であればよい。)が印加される。その場合には、図4や図5における光電変換素子48のバイアス電源64に対する接続の向きが逆向きになる。
【0049】
図4、図5に示すように、電流検出手段62は、各バイアス線56が接続された結線58内を流れる電流を検出するようになっている。電流検出手段62は、結線58に直列に接続される所定の抵抗値を有する抵抗器62aと、抵抗器62aの両端子間の電圧(電圧降下)Vを測定する差動アンプ62bと、スイッチ62cとを備えて構成されており、差動アンプ62bで抵抗器62aの両端子間の電圧(電圧値又は電圧降下ともいう。)Vを測定することで結線58を流れる電流を電圧値Vに変換して検出するようになっている。
【0050】
各バイアス線56や結線58を流れる電流が微弱であるため、電流検出手段62に備えられる抵抗器62aとして、有効な電圧値Vを得るために抵抗値が100[kΩ]や1[MΩ]等の大きな抵抗値を有する抵抗器62aが用いられるようになっている。電流検出手段62は、このようにして変換して検出した結線58の電流値に相当する電圧値Vを制御手段66に出力するようになっている。
【0051】
制御手段66は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有しており、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、たとえば制御部、演算部、補正部及び処理部等として機能する。
【0052】
抵抗器62aの抵抗値が大きいので、例えば放射線照射によって光電変換素子48に蓄積された電荷を読み出す場合にバイアス線56や結線58等を流れる電流の大きな妨げになることから、電流検出手段62には抵抗器62aの両端子間を電荷を読み出す際に短絡する前記のスイッチ62cが設けられている。
【0053】
各光電変換素子48のカソード電極はTFT54のソース電極Sに接続されており、各TFT54のゲート電極Gはゲート駆動回路(走査駆動回路)65から延びる各ゲート線50にそれぞれ接続されている。また、各TFT54のドレイン電極Dは各信号線52にそれぞれ接続されている。
【0054】
そして、ゲート線50を介してゲート駆動回路65からTFT54のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧が印加されるとTFT54のゲートが開き、光電変換素子48に蓄積された電荷、すなわち電気信号がTFT54のソース電極Sを介してドレイン電極Dから信号線52に読み出されるようになっている。
【0055】
各信号線52は、信号読出回路68に接続されており、信号読出回路68内の増幅回路70に接続されている。この実施形態において、増幅回路70は、各光電変換素子48から読み出された電気信号を増幅する第1増幅回路71と、第1増幅回路71により増幅された電気信号の振幅を補正する第2増幅回路72とから構成されている。
【0056】
第1増幅回路71は、チャージアンプ回路で構成されている。すなわち、第1増幅回路71は、オペアンプ71aと、オペアンプ71aに並列に接続された可変コンデンサ(容量値可変手段)71bとを備えており、さらに、可変コンデンサ71bに並列に電荷リセット用スイッチSW1が接続されて構成されている。可変コンデンサ71bの容量値は制御手段66により設定される。
【0057】
なお、可変コンデンサ71bは、例えば、固定コンデンサとスイッチの直列回路を並列に接続して、スイッチを切り替えるように構成してもよい(例えば、特許文献1の図7参照)。
【0058】
第2増幅回路72は、可変ゲイン非反転増幅回路で構成されている。すなわち、第2増幅回路72は、オペアンプ72aと、オペアンプ72aに並列に接続される可変抵抗器(抵抗値可変手段)72bと、オペアンプ72aの逆相入力と基準電位との間に接続される抵抗器72cとを備えている。可変抵抗器72bの抵抗値は制御手段66により設定される。
【0059】
第1増幅回路71では、電荷リセット用スイッチSW1がオフの状態で光電変換素子48のTFT54のゲートが開かれると(すなわち、TFT54のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧が印加されると)、可変コンデンサ71bに光電変換素子48から読み出された電荷が蓄積され、蓄積される電荷量に応じてオペアンプ71aから出力される電圧値Vが増加するようになっている。
【0060】
第2増幅回路72では、光電変換時に光電変換素子48に流れる電流値Iが制御手段66に記憶され、電荷の読み出し時に、前記電流値Iに比例して、電圧値Vを増幅するゲインが大きくなるように可変抵抗器72bが制御手段66により制御される。
【0061】
なお、電荷リセット用スイッチSW1がオン状態とされると、第1増幅回路71の入力側と出力側とが短絡され、可変コンデンサ71bの電荷が放電される。
【0062】
この実施形態では、制御手段66は、例えば予め電流検出手段62から出力される電圧値の範囲と可変コンデンサ71bの設定量とを対応付けるテーブルを有しており、第1増幅回路71のゲインを設定(可変コンデンサ71bの容量値を設定)することができるようになっている。
【0063】
また、制御手段66は、例えば予め電流検出手段62から出力される電圧値と可変抵抗器72bの調整値との組み合わせとを対応づけるテーブルを有しており、第2増幅回路72のゲインを設定(可変抵抗器72bの抵抗値を設定)することができるようになっている。
【0064】
さらに、制御手段66は、電荷リセット用スイッチSW1に電荷リセット信号を印加して電荷リセット用スイッチSW1のオン/オフを制御するようになっている。
【0065】
なお、第1増幅回路71における可変コンデンサ71bの容量設定値は、電子カセッテ20に求められる性能等に応じて適宜設定される。また、この実施形態では、電荷リセット用スイッチSW1がFETで構成されている。
【0066】
増幅回路70の出力側端子には、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling;以下CDSという。)回路80が接続されている。CDS回路80における相関二重サンプリングは以下のようにして行われるようになっている。
【0067】
すなわち、信号読み出しのために各光電変換素子48のTFT54のゲートが開かれる前の段階で、電荷リセット用スイッチSW1をオン状態として各コンデンサに蓄積された電荷をリセットした後、電荷リセット用スイッチSW1がオフ状態とされて信号読み出しのスタンバイ状態となるが、CDS回路80は、まずその段階で増幅回路70の出力側端子から出力される暗電流等による電圧値(雑音成分)を保持する。
【0068】
そして、各光電変換素子48のTFT54のゲートが開かれて光電変換素子48から電気信号が読み出され、増幅回路70の選択された各コンデンサに電荷が蓄積された後、TFT54のゲートが閉じられた段階で、再度、増幅回路70の出力側端子から出力される電圧値(雑音成分+信号成分)を保持する。CDS回路80は、このようにして保持した2つの電圧値の差を算出して雑音成分を除去し当該光電変換素子48からの電気信号のアナログ値(信号成分)を出力するようになっている。CDS回路80は、このようにして、コンデンサのリセット時の雑音を低減するようになっている。
【0069】
CDS回路80から出力された電気信号は、マルチプレクサ82(図4参照)を介して順次AD変換器84に送出され、AD変換器84でデジタル値に変換されるようになっている。AD変換器84は、デジタル値に変換した各光電変換素子48の電気信号を制御手段66に順次出力するようになっている。
【0070】
制御手段66は、図4や図5では図示が省略されているが、光電変換素子48に逆バイアス電圧を供給するバイアス電源64のオン/オフ制御や図示しない他の装置や回路を含む他の部材の制御を行うようになっている。また、制御手段66には、通信部76が接続されている。
【0071】
次に、基本的には以上のように構成される放射線画像撮影システム10の動作を説明するとともに、制御手段66の制御動作を図6に示すフローチャートに従って説明する。また、それとあわせてこの実施形態に係る電子カセッテ20の作用について説明する。
【0072】
コンソール26は、ユーザの図示しない入力部の操作により撮影部位及び診断部位が選択されたか否かを判断する。このとき、システムコントローラ24は、ユーザが撮影部位及び診断部位を選択するための画像を表示装置28に表示させる。ユーザは、表示された画像を見ながら、これから放射線撮影の対象となる患者(被写体14)の撮影部位及び診断部位を選択することができる。
【0073】
コンソール26が、撮影部位及び診断部位がユーザに選択されたと判断すると、システムコントローラ24は、ユーザによって選択された撮影部位及び診断部位に応じた撮影条件を自身のデータベースのテーブルから読み出し、該読み出した撮影条件をこれから行う放射線撮影の撮影条件として設定する。このとき、システムコントローラ24は、該設定した撮影条件を、表示装置28に表示させてもよい。これにより、ユーザは、設定された撮影条件の内容を視認することができる。
【0074】
ユーザは、設定した撮影条件で放射線源34から放射線16が照射されるようにするために、放射線制御装置36に設けられた図示しない入力装置を操作することで、システムコントローラ24側で設定した撮影条件と同一の撮影条件を放射線制御装置36にも設定させる。例えば、放射線装置18に、前記テーブルと同一のテーブルを持たせて、ユーザが撮影部位及び診断部位を選択することで、同一の撮影条件を設定しても良く、ユーザが直接、管電圧、照射時間、管電流、mAs値等を入力してもよい。
【0075】
撮影条件を設定すると、システムコントローラ24は、自身の通信部(不図示)を介して、電子カセッテ20の通信部76に起動信号を送信することで、電子カセッテ20を起動させる。
【0076】
電子カセッテ20の制御手段66は、放射線装置18からの放射線16の照射に先立って、まず、全ての増幅回路70の電荷リセット用スイッチSW1をオン状態とし、また、各ゲート線50を介してゲート駆動回路65から全ての光電変換素子48のTFT54のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧を印加して全TFT54をオン状態とする。
【0077】
また、制御手段66は、同時に、電流検出手段62内の抵抗器62aの両端子間を短絡するスイッチ62cもオン状態とする。この処理により、光電変換素子48の内部や各信号線52、増幅回路70の可変コンデンサ71b、バイアス線56、電流検出手段62等に蓄積されている不要な電荷を放電して取り除き、初期状態に設定する(ステップS1)。
【0078】
続いて、制御手段66は、全ての光電変換素子48のTFT54のゲート電極Gに対する信号読み出し用の電圧の印加を停止して、全TFT54をオフ状態とするとともに、電流検出手段62内のスイッチ62cもオフ状態とする(ステップS2)。
【0079】
この状態で、制御手段66は、電流検出手段62の状態を監視し、ユーザによる放射線スイッチ38の押下に基づく放射線16の照射開始を検出し(ステップS3)、予め撮影部位及び診断部位に応じて定められている照射時間に応じた放射線16の照射終了を検出する(ステップS4)。この放射線16の照射開始から照射終了までの間に被写体14に対する放射線画像撮影が行われる。
【0080】
なお、人体等の被写体14を介して電子カセッテ20に放射線16を照射する放射線源34やそれを制御する放射線制御装置36からこの放射線16の照射開始や照射終了に関する情報や信号を入手してそれらを利用するように構成することも可能である。このように構成された放射線画像検出装置やそれを用いた放射線画像撮影システムにも本発明を適用することができる。
【0081】
しかし、この実施形態では、以下に述べる増幅回路70のゲイン調整に用いられる電流検出手段62からの電流値Iの情報を用いて、電子カセッテ20が自ら放射線16の照射開始や照射終了を検出するように構成されている。以下、放射線16の照射開始、終了の検出及び増幅回路70のゲイン調整について説明する。
【0082】
この実施形態では、図4に示した光電変換素子48のアノード電極に、バイアス線56を介して逆バイアス電圧である負の電圧が印加されると、光電変換素子48内に電位勾配が生じる。この状態で、放射線源34から放射線16が照射され、放射線16の照射を受けたシンチレータ44により放射線16から変換された電磁波が光電変換素子48に入射すると、電子正孔対が発生する。
【0083】
そして、発生した電子正孔対のうち、電子は電位勾配に従って高電位であるカソード電極側に移動するが、TFT54のゲートが閉じているため、電子はカソード電極近傍に蓄積される。したがって、光電変換素子48内には、入射した電磁波の量に応じた量の電子が蓄積される。
【0084】
一方、発生した電子正孔対のうち、正孔は電位勾配に従って低電位であるアノード電極側に移動し、アノード電極を通ってバイアス線56に流れ出る。図4や図5に示すように、この光電変換素子48から流れ出てバイアス線56を流れる正孔が電流として電流検出手段62で検出される。
【0085】
すなわち、入射した電磁波の量に応じて光電変換素子48内に蓄積された電子の量と同量の正孔がバイアス線56内を流れるようになる。各バイアス線56を流れる電流は結線58に集められ、結線58中を電流検出手段62に向かって流れる。
【0086】
放射線16又は電磁波が光電変換素子48に入射しない放射線照射の前段階では、理想的にはバイアス線56や結線58内には電流は流れないが、実際には光電変換素子48で暗電流が発生し、電流検出手段62で微量の電流が検出される。
【0087】
前述したように、この実施形態では、電流検出手段62は結線58を流れる電流を電圧値に変換して出力するため、放射線16又は電磁波が光電変換素子48に入射されない放射線照射の前段階においても、図7における時点taに示されるように、電流検出手段62から制御手段66に微量ではあるが0ではない電圧値Vaが入力される。
【0088】
そして、放射線源34からの放射線16の照射が開始されると、各光電変換素子48内で電子正孔対が発生し、バイアス線56や結線58を通じて正孔が電流検出手段62に運ばれる。そのため、図7における時点tbに示されるように、電流検出手段62から出力される電圧値Vが増加する。そこで、この実施形態では、制御手段66は、電流検出手段62から出力される電圧値Vが大きく増加し始めたことを検出することで、放射線16の照射開始を検出するようになっている(ステップS3)。
【0089】
電圧値Vの増加による放射線16の照射開始については、電圧値Vが所定の閾値Vthを越えた時点tcに放射線照射が開始されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の閾値を越えた時点tdに放射線照射が開始されたとして検出するように構成することも可能である。
【0090】
また、放射線源34からの放射線16の照射が終了すると、今度は、各光電変換素子48内での電子正孔対の発生が停止し、バイアス線56に正孔が供給されなくなる。そのため、図7における時点teに示されるように、電流検出手段62から出力される電圧値Vが減少し始める。そこで、この実施形態では、制御手段66は、電流検出手段62から出力される電圧値Vが減少したことを検出することで、放射線16の照射終了を検出するようになっている(ステップS4)。
【0091】
電圧値Vの減少による放射線16の照射終了については、電圧値Vが前述した所定の閾値Vthを下回った時点tfに放射線照射が終了されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の負の値の閾値をより負側に越えた時点tgに放射線照射が終了されたとして検出するように構成することも可能である。なお、以下、放射線16の照射開始時点が時点tcであり、放射線16の照射終了時点が時点tfであるものとして説明する。
【0092】
一方、前述したように、光電変換素子48に入射した放射線16や電磁波の光子の数に比例して電子正孔対が発生し、入射した電磁波の量に応じた正孔が光電変換素子48からバイアス線56に流れ出るため、結線58を流れた電流値の総量を測ることで、放射線16の照射開始から照射終了までに電子カセッテ20に照射された放射線16の線量を算出することができる。
【0093】
この実施形態では、より簡単に放射線16の線量を算出するために、制御手段66がピークホールド機能を有するように構成されている。そして、制御手段66は、放射線16の照射の開始及び終了の時間間隔tf−tcと、電流検出手段62で検出された結線58を流れる電流のピーク値とに基づいて、照射された放射線16の線量を算出するように構成されている(ステップS5)。
【0094】
具体的には、制御手段66は、照射開始時点tcから照射終了時点tfまでに検出される電圧値のピーク値Vpを検出し、下記(1)式に従って、ピーク値Vpに、放射線16の照射開始から終了までの時間間隔tf−tcから定数αを減じた値を乗じた値に基づいて、電子カセッテ20に照射された放射線16の線量の近似値Mを算出するようになっている。なお、上記(1)式においてaは定数である。
M=a×Vp×(tf−tc−α) …(1)
【0095】
この放射線16の線量の近似値Mは、図7における照射開始時点tc以後の立ち上がり部分から照射終了時点tf以前の立ち下がり部分までの電圧値Vを矩形状に近似してその面積に比例する値として求めるものであり、照射開始時点tc及び照射終了時点tfを検出し、ピーク値Vpを検出するだけで簡単に算出できるという利点を有するものである。
【0096】
なお、積分回路等を用いて、図7に示した照射開始時点tcから照射終了時点tfまでの電圧値V(あるいは電圧値Vからノイズに相当する一定値を減じた値)の積分値を算出して、電子カセッテ20に照射された放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。このように構成すれば、より正確な放射線16の線量を算出することが可能となる。
【0097】
また、ノイズ成分をより的確に除去するため、積分回路等に、所定の範囲の周波数帯のデータのみを通過させて他の周波数のデータは減衰させて通さないバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)を構成し、電流検出手段62から出力される電流値に相当する電圧値にバンドパスフィルタ処理を施して積分して放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。
【0098】
制御手段66は、続いて、算出した放射線16の線量(近似値Mである場合を含む。)に基づいて、各光電変換素子48からの電気信号の読み出し時における第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを設定するようになっている(ステップS6)。
【0099】
この実施形態では、制御手段66は、上記のようにして算出した放射線16の線量と、第1増幅回路71のゲインすなわち第1増幅回路71の可変コンデンサ71bの容量の合計値とを対応付けるテーブルを図示しないメモリ中に保持している。例えば、0.5[pF]〜4[pF]まで0.5pF刻み(8段階)で設定する。
【0100】
そのため、テーブルは、放射線16の線量をその大きさに応じて8段階に区分し、各段階に対して可変コンデンサ71bの容量値を設定している。テーブルでは、放射線16の線量が大きくなるに従って設定する第1増幅回路71のゲインが低くなるように対応付けられている。
【0101】
制御手段66は、放射線16の線量を算出すると、このテーブルを参照して第1増幅回路71のゲイン調整を行うようになっている。
【0102】
その一方、制御手段66は、第1増幅回路71のゲイン調整と同時に、第2増幅回路72のゲイン調整を行う。
【0103】
この第2増幅回路72のゲイン調整では、例えば、バイアス電源64のバイアス電圧値をVbiasとすれば、感度補正値Scは、感度(蓄積電荷量/放射線照射量)がバイアス電圧値Vbiasに略比例することを考慮すれば、次の(2)式により求めることができる。
Sc=Vbias/(Vbias−Vp) …(2)
【0104】
すなわち、第2増幅回路72のゲイン調整は、感度調整(感度補正)であるので、測定したピーク値Vpに基づき、ゲインをVbias/(Vbias−Vp)倍に設定すればよい。
【0105】
制御手段66は、上述のように設定した第1及び第2増幅回路71、72のゲインの情報を、通信部76(図4参照)を介してシステムコントローラ24に送信するようになっている(ステップS6)。
【0106】
続いて、制御手段66は、各光電変換素子48からの電気信号の通常の読み出し処理を行う。読み出しに先立って、電流検出手段62のスイッチ62cをオン状態とする。これにより、電流検出手段62の抵抗器62aの影響を取り除いて読み出すことが可能となる。
【0107】
この状態で、制御手段66は、まず、各増幅回路70の電荷リセット用スイッチSW1をオフ状態とした後(ステップS7)、CDS回路80に信号を送信する。信号の送信を受けたCDS回路80は、図8に示すように、この段階で増幅回路70から出力される電圧値Vinを保持する。
【0108】
そして、制御手段66は、ゲート駆動回路65(図4参照)から1本のゲート線50に信号読み出し用の電圧を印加して、そのゲート線50にゲート電極Gが接続されているTFT54のゲートを開く。そして、これらのTFT54が接続されている各光電変換素子48から蓄積された電荷(この実施形態の場合は電子)が電気信号として各信号線52にそれぞれ読み出され、上記のようにゲインが設定された第1増幅回路71で電気信号が増幅され、増幅電気信号の振幅が第2増幅回路72で補正される(前記増幅電気信号がさらに増幅される)(ステップS8)。
【0109】
続いて、第1増幅回路71の可変コンデンサ71bに電荷が蓄積された後、制御手段66は、ゲート駆動回路65に信号の読み出しを行わない(すなわち信号を保持する)電圧をゲート線50に印加する信号を出力して各TFT54のゲートを閉じる。CDS回路80にもこの信号が送信され、信号の送信を受けたCDS回路80は、図8に示すように、この段階で増幅回路70から出力される電圧値Voutを保持する。そして、それらの差Vout−Vin(相関二重サンプリング処理)を算出して出力する(ステップS9)。
【0110】
各CDS回路80から出力された電気信号、すなわち前記差Vout−Vinは、マルチプレクサ82(図4参照)を介して順次AD変換器84に送信され、すなわち各光電変換素子48の各電気信号ごとにAD変換器84に送信され、AD変換器84で順次デジタル値に変換される(ステップS10)。
【0111】
そして、AD変換器84から各光電変換素子48ごとの電気信号が送信されてくると、制御手段66はそれらを順次通信部76を介してシステムコントローラ24に送信する(ステップS11)。その際、各光電変換素子48ごとの電気信号を電子カセッテ20内又は電子カセッテ20に接続された図示しないメモリに保存するように構成してもよい。また、全てのデータをメモリに保存し、終了処理時に一括して送信するように構成してもよい。
【0112】
続いて、制御手段66は、全ての光電変換素子48について電気信号の読み出しを終了していなければ(ステップS12;NO)、第1増幅回路71の電荷リセット用スイッチSW1をオン状態として(ステップS13)、第1増幅回路71の可変コンデンサ71bに蓄積されている電荷を放電して除去した後、再び各増幅回路70の電荷リセット用スイッチSW1をオフ状態とし、ゲート駆動回路65から信号読み出し用の電圧を印加するゲート線50を替えてステップS7以降の処理を繰り返す。
【0113】
また、全てのゲート線50に対して信号読み出し用の電圧の印加を終えて、全ての光電変換素子48について電気信号の読み出しが終了していれば(ステップS12;YES)、制御手段66は、各光電変換素子48や各増幅回路70等に残っている電荷を放電する等の必要な処理を行って(ステップS14)、処理を終了する。
【0114】
[放射線画像撮影システム]
この実施形態に係る放射線画像撮影システム10は、図1、図4に示すように、上記の電子カセッテ20と、システムコントローラ24とを備えて構成されている。
【0115】
電子カセッテ20で放射線画像撮影が終了し、第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインが設定されて、各光電変換素子48からそれぞれ電気信号が読み出され、各電気信号の情報が順次通信部76を介して送信されてくると、それらの情報がシステムコントローラ24に入力されるようになっている。
【0116】
システムコントローラ24は、受信した各電気信号の情報に必要な画像処理を施して、電子カセッテ20における各光電変換素子48の配列に相当するようにそれらの各電気信号の情報を配列して放射線画像を得るようになっている。得られた放射線画像は、コンソール26から入力された操作内容に従って、表示装置28に表示されたり、あるいは例えば図示しないイメージャによりフィルム等の画像記録媒体に記録されたりするようになっている。
【0117】
以上のように、この実施形態に係る電子カセッテ20によれば、放射線16や放射線16から変換された電磁波の照射を受けると、各光電変換素子48中では電子正孔対が発生し、一方の電荷は光電変換素子48内に蓄積されるが、他方の電荷はバイアス線56に流れ出す。その際、各光電変換素子48からは放射線16や電磁波の照射を受けた分だけ電荷が流れ出す。
【0118】
そのため、このバイアス線56に流れ出す電荷による電流を測定することで、電子カセッテ20に照射された実際の放射線16の線量を的確に把握することが可能となる。そして、的確に把握された放射線16の線量に基づいて第1増幅回路71のゲインを的確に設定し、且つ第2増幅回路72の補正ゲインを的確に設定することが可能となる。
【0119】
また、非破壊読み出しのように事前の電気信号の読み出しを必要とせず、放射線16の照射と同時にその線量を検出して第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを設定するため、放射線16の照射後、直ちに電気信号の読み出しを開始することが可能となる。そのため、時間が経過するに従って増加する暗電流等によるノイズの増加を抑制することが可能となり、SN比の低下を抑制することが可能となる。
【0120】
さらに、非破壊読み出しのように事前の電気信号の読み出しを必要とせず、直ちに放射線画像の撮影を開始することが可能となるため、事前の電気信号の読み出し等で余分な電力が消費されてしまうということも防止できる。
【0121】
また、電流検出手段62により検出された電流の減少に基づいて放射線16の照射の終了を検出することができるため、放射線16の照射の終了の情報を外部から入力しなくても、電子カセッテ20が自ら放射線16の照射の終了を検出して、放射線16の照射後、直ちに電気信号の読み出しを開始することが可能となる。
【0122】
一方、この実施形態に係る放射線画像撮影システム10によれば、上記のように、電子カセッテ20で、撮影開始までの時間がかからず撮影後も直ちに電気信号の読み出しを開始できることでSN比の低下が抑制され、しかも、得られた電気信号が増幅回路70(第1増幅回路71及び第2増幅回路72)のゲインが的確に設定された状態で増幅されるため、ノイズが低減されてダイナミックレンジが確保され画質低下が抑制された良好な放射線画像を得ることが可能となる。
【0123】
また、電子カセッテ20において、第1増幅回路71をオペアンプ71aとそれに並列に接続された可変コンデンサ71bで構成し、第1増幅回路71のゲインを設定することで、第1増幅回路71のゲインを容易且つ適切に設定することが可能となる。同様に、第2増幅回路72をオペアンプ72aとそれに並列に接続された可変抵抗器72bと基準電位と逆相入力間に接続された抵抗器72cで構成し、第2増幅回路72のゲインを設定することで、第2増幅回路72のゲインを容易且つ適切に設定することが可能となる。
【0124】
しかも、第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを容易に設定することができるため、放射線撮影後、直ちに第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを設定することが可能となる。
【0125】
また、CDS回路80で相関二重サンプリングの手法によりノイズ成分を除去することで、少なくとも増幅回路70のコンデンサの熱雑音等のノイズを適切に除去することが可能となり、得られる放射線画像のSN比をより良好にすることが可能となる。
【0126】
また、バイアス線56を流れる電流の増加や減少に基づいて放射線16の照射開始や照射終了を検出することで、放射線画像検出装置が放射線源等から放射線16の照射開始や照射終了の情報が得られない場合でも的確にそれらのタイミングを検出することが可能となり、照射された放射線16の線量等を適切に検出することが可能となる。
【0127】
[変形例1]
上記の実施形態に係る電子カセッテ20では、バイアス電流により電流検出手段62の抵抗器62aに発生する電圧降下に基づき光電変換素子48に印加されるバイアス電圧が低下し、それにより光電変換素子48の感度が低下する補正を、非反転増幅回路型とした第2増幅回路72のゲインを上記(2)式に応じて設定することで補正する技術について説明した。
【0128】
この場合、図9の電子カセッテ20Aに示すように、図5に示した第1増幅回路71のゲインと第2増幅回路72のゲインとは同時に設定されることを考慮して、これら第1増幅回路71及び第2増幅回路72を、一つの第3増幅回路71A(第1増幅回路71と同一の回路構成)にまとめ、制御手段66により両方のゲインを掛け算したゲインを第3増幅回路71Aに設定する(可変コンデンサ71bの容量値を可変設定する。)ように構成を変更することもできる。
【0129】
[変形例2]
上述した実施形態のように、光電変換素子48の感度が低下する補正を図5に示したアナログ回路(第2増幅回路72)による処理で行うことなく、図10の電子カセッテ20Bに示すように、第2増幅回路72を省略して第3増幅回路71A(第1増幅回路71と同一の回路構成)とCDS回路80を直結に接続し、AD変換器84の後段に第1デジタル乗算器85(この変形例2では、制御手段66の一機能として実現しているが、別途設けてもよい。)を配設する構成とする。
【0130】
この図10例の構成においては、図5に示した第2増幅回路72による補正処理に代替して、制御手段66内の第1デジタル乗算器85において、AD変換器84の出力画像データに対し上記(2)式に基づく感度補正値Scをデジタル的に乗算して振幅を増加させる(デジタル値を大きくする)補正を行えばよい。
【0131】
[変形例3]
上記の実施形態及び変形例1、2では、光電変換素子48の感度がバイアス電圧値Vbiasに略比例することを前提として補正(感度補正)するようにしていたが、これらの技術に限らず、図11に示す電子カセッテ20Cのように検出部Pの領域を領域A、Bに分割した構成に変形して対応することもできる。
【0132】
この変形例3において、上記の実施形態に係る電子カセッテ20と同じ構成や機能を有する部材については同じ符号を付けて説明する。
【0133】
電子カセッテ20Cの基板46の検出部Pの中央の領域Aに配設された各光電変換素子48に接続された各バイアス線88と、基板46の検出部Pの両側部の領域B(図12参照)に配設された各光電変換素子48に接続された各バイアス線90は、それぞれ別の結線(それぞれバイアス線又は共通バイアス線ともいう。)92、94に接続されている。結線92は、バイアス電源64に直接接続され、結線94は、電流検出手段62を介してバイアス電源64に接続されている。
【0134】
このように構成すれば、結線92及び各バイアス線88を通じてバイアス電源64に直接接続された光電変換素子48、換言すれば、電流検出手段62が接続されていない中央の領域Aに配設された光電変換素子48については、放射線16の照射時にバイアス電流が流れても電圧降下が発生せず、したがって感度の低下が発生しない。
【0135】
この場合、図5に示した増幅回路70を、図11に示すように、電流検出手段62が接続された光電変換素子48から信号線52を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、放射線16の照射時に電流検出手段62で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第4増幅回路71B(例えば、第3増幅回路71Aと同一の回路構成)と、電流検出手段62が接続されていない光電変換素子48から前記電荷による電気信号を読み出す際に、放射線16の照射時に電流検出手段62で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第5増幅回路71C(例えば、第3増幅回路71Aと同一の回路構成)と、に分ける。
【0136】
制御手段66は、電流検出手段62による電圧降下が大きくなるほど、電流検出手段62が接続されていてバイアス電流を検出する両側部の領域Bに配設された第4増幅回路71Bの補正ゲインが大きくなるように設定する。電流検出手段62が接続されていない中央部の領域Aに配設された光電変換素子48の電気信号を増幅する第5増幅回路71Cのゲインは補正しない。
【0137】
[変形例4]
この場合にも、図10と同様に、図13の電子カセッテ20Dに示すように、全ての増幅回路を同一の回路構成(例えば、第3増幅回路71Aと同一の回路構成)で同一ゲインの第4増幅回路71B及び第5増幅回路71Cとする。
【0138】
そして、電流検出手段62が接続されていてバイアス電流を検出する両側部の領域Bに配設された光電変換素子48についての第4増幅回路71B及びCDS回路80を通じAD変換器84によるAD変換後の出力画像データの振幅(Abという。)が、バイアス電流を検出していない中央の領域Aの光電変換素子48についての第5増幅回路71CのAD変換器84によるAD変換後の出力画像データの振幅(Aaという。)と同一の振幅となるように第2デジタル乗算器85Aを備えるようにしてもよい。
【0139】
第2デジタル乗算器85Aは、電流検出手段62が接続されている光電変換素子48の電荷を増幅した第4増幅回路71Bの出力画像データの振幅Abに対し、係数Aa/Abを乗算するように構成すれば、バイアス電流が流れて電圧降下が発生し電圧が低下したバイアス電圧がかかっている光電変換素子48の感度低下を補正することができる。
【0140】
以上、この発明を実施の形態を用いて説明したが、この発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。
【0141】
例えば、上述したように、この発明では、シンチレータ44を用いず、照射された放射線16により光電変換素子で直接電荷を発生させて電気信号に変換する、いわゆる直接型の放射線画像検出装置にも同様に適用可能である。
【0142】
直接型の放射線画像検出装置に適用される光電変換素子としては、アモルファスセレン(a−Se)等の半導体の他、CdTe、CdZnTe、CdxZn1−xTe、例えば、Cd0.8Zn0.2Te、HgI2、PbI2、PbO、TlBr(臭化タリウム)、GaAs、GaP、BixMOy{ただし、Mは、Ge、Si、Ti中の少なくとも1種であり、xは10≦x≦14の条件を満たす数、yは上記M及びxにより定められる化学量論的な酸素原子数を表す。例として、Bi12MO20(但し、MはGe、Si、Ti中の少なくとも1種)}等の半導体を挙げることができる。
【0143】
これらの直接型の光電変換素子では、公知のように、ガラス基板等上に形成された多数の画素電極と共通のバイアス電極との間に光電変換素子が挟持された構成とされ、各前記画素電極にTFTと、一端が接地された蓄積容量と、が接続される。前記共通のバイアス電極にバイアス線の一端が接続され、他端がカレントミラーからなる電流検出手段を通じて、高電圧のバイアス電源に接続される。このバイアス電源から前記カレントミラー及び前記バイアス線を通じて前記共通のバイアス電極に正の高電圧を順方向に、いわゆる順バイアス電圧として印加して、使用に供する。
【0144】
また、上述した実施形態では、図5に示したように、第2増幅回路72は、可変ゲイン非反転増幅回路で構成しているが、これに代替して、反転増幅回路を2段(前段と後段)従属接続する構成の可変ゲイン非反転増幅回路としても良い。例えば、前段の増幅回路は、第1増幅回路71から出力される電圧値Vを電流に変換するために抵抗器の一端を接続し、該抵抗器の他端をオペアンプ72aの逆相入力に接続する。オペアンプ72aの正相入力は、基準電位に接続する。オペアンプ72aの出力とオペアンプ72aの前記逆相入力との間に、前記制御手段66により抵抗値が設定される可変抵抗器(抵抗値可変手段)72b(第2抵抗器)を接続する。このように構成される前段の可変ゲイン反転増幅回路の出力に、ゲインが固定の反転増幅回路である後段の増幅回路を接続すれば、第2増幅回路72は、反転増幅回路の2段従属構成に代替できる。
【0145】
このように、上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態もこの発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0146】
10…放射線画像撮像システム 16…放射線
20、20A〜20D…電子カセッテ(放射線画像検出装置)
24…システムコントローラ(画像処理装置)
48…光電変換素子 56、88、90…バイアス線
62…電流検出手段 62a…抵抗器
64…電源(バイアス電源) 66…制御手段
70…増幅回路 71…第1増幅回路
71A…第3増幅回路 71B…第4増幅回路
71C…第5増幅回路 72…第2増幅回路
85…第1デジタル乗算器 85A…第2デジタル乗算器
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体を透過した放射線を検出する放射線画像検出装置、及び放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、人体を透過した放射線の強度を検出することで人体内部の撮像を行うFPD(Flat Panel Detector)等の可搬性の放射線画像検出装置が用いられている。このFPD(以下、電子カセッテという。)は患者をベッド等に乗せたまま撮像することができ、電子カセッテの位置を変更することにより撮像箇所も調整することができるため、動けない患者に対しても柔軟に対処することができる。
【0003】
この場合、放射線画像検出装置として、照射された放射線により光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像検出装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波によりフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像検出装置が種々開発されている。
【0004】
これらの放射線画像検出装置では、通常、ガラス基板あるいはフレキシブル基板等の基板上に複数の走査線と複数の信号線とが互いに交差するように配設され、走査線や信号線で区画された基板上の各領域に光電変換素子を設け、放射線や放射線から変換された電磁波の照射により各光電変換素子に蓄積された電荷を、信号線を介して取り出すことで、各光電変換素子すなわち各画素の電気信号を読み出すようになっている。
【0005】
このようなFPD型の放射線画像検出装置では、照射される放射線の線量に応じて各光電変換素子に蓄積される電荷量が異なり、特に低線量では、前記電気信号の振幅が小さくなり、広いダイナミックレンジを確保することができない。
【0006】
特許文献1に、この問題を解決しようとする技術が開示されている。この技術では、前記光電変換素子にバイアスをかけるバイアス線に前記光電変換素子から流れるバイアス電流量が放射線の線量に応じて変化することに着目し、放射線の線量を算出し、算出した放射線の線量に基づいて、光電変換素子からの電気信号の読み出し時における増幅回路のゲインを設定するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−219538号公報([0038]、[0039]、[0073]、[0079]、図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記のバイアス電流量を算出する際、バイアス電流がμAオーダーと微弱な値であるため、特許文献1では、各光電変換素子の各バイアス電流が流れるバイアス線を合成し、合成した結線に直列に抵抗値が100[kΩ]や1[MΩ]等の大きな抵抗器を挿入し、挿入した抵抗器の両端子間に発生する電圧を差動アンプにより測定する構成を採用している。
【0009】
しかしながら、光電変換素子の受光感度(以下、単に感度という。)は、バイアス電圧により変化するので、前記抵抗器の両端子間に電圧降下が発生すると、光電変換素子の受光感度が低下し、その分、電気信号(電圧信号)が低下し、結局、ダイナミックレンジを確保することができなくなり、改良の余地がある。
【0010】
この発明は、このような従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、光電変換素子のバイアス電流量を検出する抵抗器の両端子間に電圧降下が発生した場合においても、適切な出力電気信号を得ることができる放射線画像検出装置及び画質低下が抑制された放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この項では、理解の容易化のために添付図面中の符号を付けて説明する。したがって、この項に記載した内容がその符号を付けたものに限定して解釈されるものではない。
【0012】
請求項1記載の発明に係る放射線画像検出装置は、例えば、図1、図4、図5に示すように、放射線(16)の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子(48)と、前記各光電変換素子(48)にバイアス電圧を供給するバイアス線(58)と、前記バイアス線(58)を介して前記光電変換素子(48)に前記バイアス電圧を印加する電源(64)と、前記バイアス線(58)を流れるバイアス電流を、前記バイアス線(58)に挿入した抵抗器(62a)に生じる電圧降下により検出する電流検出手段(62)と、信号線(52)を通じて前記光電変換素子(48)から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路(71)と、前記第1増幅回路(71)の出力側に接続される第2増幅回路(72)と、前記第2増幅回路(72)のゲインを、前記電圧降下による前記光電変換素子(48)の感度の低下に応じて増加させることにより前記電気信号を補正する制御手段(66)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合、請求項2に係る発明は、例えば、図5に示すように、前記第2増幅回路(72)は、正相入力側が前記第1増幅回路(71)の出力に接続されるオペアンプと、前記オペアンプの出力と逆相入力側との間に接続される第1抵抗器(72b)と、前記逆相入力側と基準電位との間に接続される第2抵抗器(72c)と、を備える非反転増幅回路(72)であり、前記制御手段(66)は、前記第1及び第2抵抗器(72b、72c)のうち、少なくとも一つの抵抗器の抵抗値を変化させることで前記第2増幅回路(72)のゲインを変化させることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明に係る放射線画像検出装置は、例えば、図4、図9、図10に示すように、放射線(16)の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子(48)と、前記各光電変換素子(48)にバイアス電圧を供給するバイアス線(58)と、前記バイアス線(58)を介して前記光電変換素子(48)に前記バイアス電圧を印加する電源(64)と、前記バイアス線(58)を流れるバイアス電流を、前記バイアス線(58)に挿入した抵抗器(62a)に生じる電圧降下により検出する電流検出手段(62)と、信号線(52)を通じて前記光電変換素子(48)から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される増幅回路(70、71A)と、前記電圧降下による前記光電変換素子(48)の感度の低下に応じて低下する前記電気信号を補正する制御手段(66)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この場合、請求項4に係る発明は、例えば、図9に示すように、前記制御手段(66)は、前記増幅回路(70、71A)の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正することを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、例えば、図10に示すように、前記制御手段(66)は、前記増幅回路(70、71A)により増幅された前記電気信号のAD変換されたデジタル値に対して、前記電圧降下が大きくなるほど、前記デジタル値が大きくなるように補正するデジタル処理手段(85)を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明に係る放射線画像検出装置は、例えば、図11、図12、図13に示すように、放射線(16)の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子(48)と、前記各光電変換素子(48)にバイアス電圧を供給するバイアス線(92、94)と、前記バイアス線(92、94)を介して前記光電変換素子(48)に前記バイアス電圧を印加する電源(64)と、前記バイアス線(92、94)のうち、少なくとも一部のバイアス線(94)を流れるバイアス電流を、当該少なくとも一部のバイアス線(94)に挿入した抵抗器(62a)に生じる電圧降下により検出する電流検出手段(62)と、前記電流検出手段(62)が接続された前記光電変換素子(48)から信号線(52)を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路(第4増幅回路71B)と、前記電流検出手段(62)が接続されていない前記光電変換素子(48)から信号線(52)を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線(16)の照射時に前記電流検出手段(62)で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第2増幅回路(第5増幅回路71C)と、前記電圧降下による前記光電変換素子(48)の感度の低下に応じて低下する前記第1増幅回路(第4増幅回路71B)の前記電気信号を補正する制御手段(66)と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この場合、請求項7に係る発明は、例えば、図9、図11に示すように、前記制御手段(66)は、前記第1増幅回路(第4増幅回路71B)の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、例えば、図10、図13に示すように、前記制御手段(66)は、前記第1増幅回路(第4増幅回路71B)の前記電気信号のAD変換されたデジタル値を、前記第2増幅回路(第5増幅回路71C)の前記電気信号の前記AD変換されたデジタル値に基づき補正するデジタル処理手段(85A)を備えることを特徴とする。
【0020】
この場合、請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、例えば、図5、図9、図10に示すように、前記第1増幅回路及び増幅回路(第3増幅回路)(71、71A)は、それぞれ、オペアンプ(71a)と、当該オペアンプ(71a)に並列に接続された容量値可変手段(71b)とを備えるチャージアンプの構成とされることを特徴とする。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、例えば、図4、図7、図11、図13に示すように、前記制御手段(66)は、前記電流検出手段(62)により検出された前記バイアス線(58、94)を流れる電流の増加及び減少に基づいて前記放射線(16)の照射の開始及び/又は終了を検出することを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の発明に係る放射線画像撮影システムは、例えば、図1、図9、図11、図13に示すように、放射線画像検出装置(20、20A、20B、20C、20D)と、前記電気信号の読み出し時に、前記放射線画像検出装置(20、20A、20B、20C、20D)から出力されてきた前記各光電変換素子(48)から読み出され増幅された各電気信号に基づいて放射線画像を形成する画像処理装置(24)と、を備えることを特徴とする。
【0023】
この場合、請求項12に係る発明は、前記放射線画像検出装置(20、20A、20B、20C、20D)と前記画像処理装置(24)とは無線接続により接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、光電変換素子から電気信号を読み出す際に、放射線の照射時に発生するバイアス電流による電圧降下により電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力側に接続される第2増幅回路と、を備え、前記第2増幅回路のゲインを、前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて増加させることにより適切な出力電気信号を得ることができる。
【0025】
また、この発明によれば、光電変換素子のバイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて低下する第1増幅回路の電気信号の振幅を補正する制御手段を備えるので、前記第1増幅回路の電気信号の振幅と、バイアス線に抵抗器を挿入しないので感度低下のない第2増幅回路の電気信号の振幅とを一致させることができ、結果として各光電変換素子に係る適切な出力電気信号を得ることができる。
【0026】
さらに、この発明によれば、この発明に係る放射線画像検出装置と、電気信号の読み出し時に、前記放射線画像検出装置から出力されてきた各光電変換素子から読み出され増幅された各電気信号に基づいて放射線画像を形成する画像処理装置と、を備えるので、画質低下が抑制された良好な放射線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成図である。
【図2】この実施形態に係る放射線画像検出装置を示す一部破断斜視図である。
【図3】図2の基板上の小領域に形成された光電変換素子と薄膜トランジスタ等の構成を示す拡大図である。
【図4】この実施形態に係る放射線画像撮影システムの回路図である。
【図5】この実施形態に係る放射線画像検出装置の1画素分についての回路図である。
【図6】この実施形態に係る放射線画像検出装置の制御手段により実施されるフローチャートである。
【図7】電流検出手段で電流から変換され出力される電圧値の時間変化の一例を表すグラフである。
【図8】増幅回路から出力される電圧値の時間変化の一例を表すグラフである。
【図9】変形例1に係る回路図である。
【図10】変形例2に係る回路図である。
【図11】変形例3に係る回路図である。
【図12】変形例3に係る領域分割を示す説明図である。
【図13】変形例4に係る回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明に係る放射線画像検出装置及び放射線画像撮影システムについて、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、この実施形態の放射線画像撮影システム10の構成図である。放射線画像撮影システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14である患者に対して、放射線16を照射する放射線装置18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ(放射線画像検出装置)20と、画像処理装置として機能するとともに放射線画像撮影システム10全体を制御するシステムコントローラ24と、医師又は技師等(以下、ユーザという)の入力操作を受け付けるコンソール26と、撮影した放射線画像等を表示する表示装置28とを備える。
【0030】
システムコントローラ24と、電子カセッテ20と、表示装置28との間には、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.11.a/b/g/n等の無線LAN、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0031】
システムコントローラ24には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)30が接続され、RIS30には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)32が接続されている。
【0032】
放射線装置18は、放射線16を照射する放射線源34と、放射線源34を制御する放射線制御装置36と、放射線スイッチ38とを備える。放射線源34は、電子カセッテ20に対して放射線16を照射する。放射線源34が照射する放射線16は、X線、α線、β線、γ線、電子線等であってもよい。放射線スイッチ38は、2段階のストロークを持つように構成され、放射線制御装置36は、放射線スイッチ38がユーザによって半押されると放射線16の照射準備を行い、全押されると放射線源34から放射線16を照射させる。放射線制御装置36は、図示しない入力装置を有し、ユーザは、前記入力装置を操作することで、放射線16の照射時間、管電圧、管電流等の値を設定することができる。放射線制御装置36は、設定された照射時間等に基づいて、放射線源34から放射線16を照射させる。
【0033】
図2は、図1に示す電子カセッテ20の斜視図である。
【0034】
この実施形態に係る電子カセッテ20は、ケーシング42内にシンチレータ44や基板46等が収納されたカセッテ型の装置として構成されている。
【0035】
なお、この実施形態では、照射された放射線16(図1参照)をシンチレータ44で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波により後述する光電変換素子48(放射線検出素子)で電荷を発生させて電気信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出装置について説明する。シンチレータ44を用いず、照射された放射線により光電変換素子(放射線検出素子)で直接電荷を発生させて電気信号に変換する、いわゆる直接型の放射線画像検出装置にも同様に適用可能である。
【0036】
ケーシング42は、少なくとも放射線16の照射を受ける側の面42aが放射線16を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。ケーシング42の内部には、シンチレータ44や基板46の他にも必要な部材や装置が内蔵されている。また、この実施形態では、例えばケーシング42の側壁部に、無線によりシステムコントローラ24との情報の送受信を行うための図示しないアンテナ装置が埋め込まれている。
【0037】
シンチレータ44は、基板46の検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ44は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光線を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0038】
基板46はガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板46のシンチレータ44に対向する側の面46a上には、複数のゲート線(走査線)50と複数の信号線52とが互いに交差するように配設されている。基板46の面46a上の複数のゲート線50と複数の信号線52により区画された各小領域Rには、それぞれ光電変換素子48が設けられている。また、光電変換素子48が設けられた小領域R全体、すなわち図3に一点鎖線で示す領域が検出部Pとされている。光電変換素子48は、基板46に二次元マトリクス状に配列されている。
【0039】
この実施形態では、光電変換素子48としてpin型のフォトダイオードが用いられているが、この他にも、フォトトランジスタ等を用いることも可能である。各光電変換素子48は、図4に示すように、スイッチ素子である薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor;TFT)54に接続されており、TFT54を介して信号線52に接続されている。
【0040】
基板46の面46a上に、AlやCr等からなるTFT54のゲート電極(単に、ゲートともいう。)Gがゲート線50と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極G上及び面46a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層上のゲート電極Gの上方部分に、アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層を介して、光電変換素子48のカソード電極(単に、カソードともいう。)と接続されたソース電極(単に、ソースともいう。)Sと、信号線52と一体的に形成されるドレイン電極(単に、ドレインともいう。)Dと、が積層されて形成されている。なお、光電変換素子48やTFT54の構造は、例えば、特許文献1の段落[0024]〜[0030]に示されるように公知であるので省略する。基板46は、この実施形態ではガラス基板を用いているが、可撓性のある樹脂基板、いわゆるフレキシブル基板を用いることもできる。
【0041】
光電変換素子48のアノード電極の上面には、このアノード電極を介して光電変換素子48に逆バイアス電圧を印加するためのバイアス線56が接続されている。
【0042】
この実施形態では、図4に示すように、それぞれ列状に配置された複数の光電変換素子48に1本のバイアス線56が接続されており、各バイアス線56はそれぞれ信号線52に平行に配設されている。また、各バイアス線56は、基板46の検出部Pの外側の位置で1本の結線(バイアス線又は共通バイアス線ともいう。)58に接続されている。バイアス線56や結線58は電気抵抗が小さい金属線で形成されている。
【0043】
また、各ゲート線50や各信号線52、各バイアス線56の結線58は、それぞれ基板46の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)60に接続されている。各入出力端子60には、基板46上に形成乃至接続された駆動回路等が接続されている。
【0044】
なお、電子カセッテ20は、充電可能な内蔵のバッテリ(蓄電装置)により動作する可搬型の装置として構成されている。
【0045】
ここで、電子カセッテ20の回路構成について説明する。図4はこの実施形態に係る電子カセッテ20の等価回路図であり、図5はその中の基板46の検出部Pを構成する1画素分についての等価回路図である。
【0046】
上述したように、基板46の検出部Pの各光電変換素子48は、アノード電極がそれぞれバイアス線56に接続されており、各バイアス線56は1本の結線58に接続されている。結線58は電流検出手段(電流検出回路)62を介してバイアス電源(単に、電源ともいう。)64に接続されている。バイアス電源64は、電流検出手段62及び各バイアス線56を介して各光電変換素子48に逆方向にバイアス電圧(逆バイアス電圧)Vbiasを印加するようになっている。
【0047】
なお、この実施形態では、pin型の光電変換素子48のp層側にアノード電極を介してバイアス線56が接続されているので、バイアス電源64からは、光電変換素子48のアノード電極にバイアス線56を介して逆バイアス電圧として負の電圧(カソード電極よりも所定電圧以上低い電圧であればよい。)が印加されるようになっている。
【0048】
また、光電変換素子48のpin型の積層順を逆に形成して(光電変換素子48の極性が逆となるように形成して)カソード電極にバイアス線56を接続する場合には、バイアス電源64からはカソード電極に逆バイアス電圧として正の電圧(アノード電極よりも所定電圧以上高い電圧であればよい。)が印加される。その場合には、図4や図5における光電変換素子48のバイアス電源64に対する接続の向きが逆向きになる。
【0049】
図4、図5に示すように、電流検出手段62は、各バイアス線56が接続された結線58内を流れる電流を検出するようになっている。電流検出手段62は、結線58に直列に接続される所定の抵抗値を有する抵抗器62aと、抵抗器62aの両端子間の電圧(電圧降下)Vを測定する差動アンプ62bと、スイッチ62cとを備えて構成されており、差動アンプ62bで抵抗器62aの両端子間の電圧(電圧値又は電圧降下ともいう。)Vを測定することで結線58を流れる電流を電圧値Vに変換して検出するようになっている。
【0050】
各バイアス線56や結線58を流れる電流が微弱であるため、電流検出手段62に備えられる抵抗器62aとして、有効な電圧値Vを得るために抵抗値が100[kΩ]や1[MΩ]等の大きな抵抗値を有する抵抗器62aが用いられるようになっている。電流検出手段62は、このようにして変換して検出した結線58の電流値に相当する電圧値Vを制御手段66に出力するようになっている。
【0051】
制御手段66は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有しており、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、たとえば制御部、演算部、補正部及び処理部等として機能する。
【0052】
抵抗器62aの抵抗値が大きいので、例えば放射線照射によって光電変換素子48に蓄積された電荷を読み出す場合にバイアス線56や結線58等を流れる電流の大きな妨げになることから、電流検出手段62には抵抗器62aの両端子間を電荷を読み出す際に短絡する前記のスイッチ62cが設けられている。
【0053】
各光電変換素子48のカソード電極はTFT54のソース電極Sに接続されており、各TFT54のゲート電極Gはゲート駆動回路(走査駆動回路)65から延びる各ゲート線50にそれぞれ接続されている。また、各TFT54のドレイン電極Dは各信号線52にそれぞれ接続されている。
【0054】
そして、ゲート線50を介してゲート駆動回路65からTFT54のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧が印加されるとTFT54のゲートが開き、光電変換素子48に蓄積された電荷、すなわち電気信号がTFT54のソース電極Sを介してドレイン電極Dから信号線52に読み出されるようになっている。
【0055】
各信号線52は、信号読出回路68に接続されており、信号読出回路68内の増幅回路70に接続されている。この実施形態において、増幅回路70は、各光電変換素子48から読み出された電気信号を増幅する第1増幅回路71と、第1増幅回路71により増幅された電気信号の振幅を補正する第2増幅回路72とから構成されている。
【0056】
第1増幅回路71は、チャージアンプ回路で構成されている。すなわち、第1増幅回路71は、オペアンプ71aと、オペアンプ71aに並列に接続された可変コンデンサ(容量値可変手段)71bとを備えており、さらに、可変コンデンサ71bに並列に電荷リセット用スイッチSW1が接続されて構成されている。可変コンデンサ71bの容量値は制御手段66により設定される。
【0057】
なお、可変コンデンサ71bは、例えば、固定コンデンサとスイッチの直列回路を並列に接続して、スイッチを切り替えるように構成してもよい(例えば、特許文献1の図7参照)。
【0058】
第2増幅回路72は、可変ゲイン非反転増幅回路で構成されている。すなわち、第2増幅回路72は、オペアンプ72aと、オペアンプ72aに並列に接続される可変抵抗器(抵抗値可変手段)72bと、オペアンプ72aの逆相入力と基準電位との間に接続される抵抗器72cとを備えている。可変抵抗器72bの抵抗値は制御手段66により設定される。
【0059】
第1増幅回路71では、電荷リセット用スイッチSW1がオフの状態で光電変換素子48のTFT54のゲートが開かれると(すなわち、TFT54のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧が印加されると)、可変コンデンサ71bに光電変換素子48から読み出された電荷が蓄積され、蓄積される電荷量に応じてオペアンプ71aから出力される電圧値Vが増加するようになっている。
【0060】
第2増幅回路72では、光電変換時に光電変換素子48に流れる電流値Iが制御手段66に記憶され、電荷の読み出し時に、前記電流値Iに比例して、電圧値Vを増幅するゲインが大きくなるように可変抵抗器72bが制御手段66により制御される。
【0061】
なお、電荷リセット用スイッチSW1がオン状態とされると、第1増幅回路71の入力側と出力側とが短絡され、可変コンデンサ71bの電荷が放電される。
【0062】
この実施形態では、制御手段66は、例えば予め電流検出手段62から出力される電圧値の範囲と可変コンデンサ71bの設定量とを対応付けるテーブルを有しており、第1増幅回路71のゲインを設定(可変コンデンサ71bの容量値を設定)することができるようになっている。
【0063】
また、制御手段66は、例えば予め電流検出手段62から出力される電圧値と可変抵抗器72bの調整値との組み合わせとを対応づけるテーブルを有しており、第2増幅回路72のゲインを設定(可変抵抗器72bの抵抗値を設定)することができるようになっている。
【0064】
さらに、制御手段66は、電荷リセット用スイッチSW1に電荷リセット信号を印加して電荷リセット用スイッチSW1のオン/オフを制御するようになっている。
【0065】
なお、第1増幅回路71における可変コンデンサ71bの容量設定値は、電子カセッテ20に求められる性能等に応じて適宜設定される。また、この実施形態では、電荷リセット用スイッチSW1がFETで構成されている。
【0066】
増幅回路70の出力側端子には、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling;以下CDSという。)回路80が接続されている。CDS回路80における相関二重サンプリングは以下のようにして行われるようになっている。
【0067】
すなわち、信号読み出しのために各光電変換素子48のTFT54のゲートが開かれる前の段階で、電荷リセット用スイッチSW1をオン状態として各コンデンサに蓄積された電荷をリセットした後、電荷リセット用スイッチSW1がオフ状態とされて信号読み出しのスタンバイ状態となるが、CDS回路80は、まずその段階で増幅回路70の出力側端子から出力される暗電流等による電圧値(雑音成分)を保持する。
【0068】
そして、各光電変換素子48のTFT54のゲートが開かれて光電変換素子48から電気信号が読み出され、増幅回路70の選択された各コンデンサに電荷が蓄積された後、TFT54のゲートが閉じられた段階で、再度、増幅回路70の出力側端子から出力される電圧値(雑音成分+信号成分)を保持する。CDS回路80は、このようにして保持した2つの電圧値の差を算出して雑音成分を除去し当該光電変換素子48からの電気信号のアナログ値(信号成分)を出力するようになっている。CDS回路80は、このようにして、コンデンサのリセット時の雑音を低減するようになっている。
【0069】
CDS回路80から出力された電気信号は、マルチプレクサ82(図4参照)を介して順次AD変換器84に送出され、AD変換器84でデジタル値に変換されるようになっている。AD変換器84は、デジタル値に変換した各光電変換素子48の電気信号を制御手段66に順次出力するようになっている。
【0070】
制御手段66は、図4や図5では図示が省略されているが、光電変換素子48に逆バイアス電圧を供給するバイアス電源64のオン/オフ制御や図示しない他の装置や回路を含む他の部材の制御を行うようになっている。また、制御手段66には、通信部76が接続されている。
【0071】
次に、基本的には以上のように構成される放射線画像撮影システム10の動作を説明するとともに、制御手段66の制御動作を図6に示すフローチャートに従って説明する。また、それとあわせてこの実施形態に係る電子カセッテ20の作用について説明する。
【0072】
コンソール26は、ユーザの図示しない入力部の操作により撮影部位及び診断部位が選択されたか否かを判断する。このとき、システムコントローラ24は、ユーザが撮影部位及び診断部位を選択するための画像を表示装置28に表示させる。ユーザは、表示された画像を見ながら、これから放射線撮影の対象となる患者(被写体14)の撮影部位及び診断部位を選択することができる。
【0073】
コンソール26が、撮影部位及び診断部位がユーザに選択されたと判断すると、システムコントローラ24は、ユーザによって選択された撮影部位及び診断部位に応じた撮影条件を自身のデータベースのテーブルから読み出し、該読み出した撮影条件をこれから行う放射線撮影の撮影条件として設定する。このとき、システムコントローラ24は、該設定した撮影条件を、表示装置28に表示させてもよい。これにより、ユーザは、設定された撮影条件の内容を視認することができる。
【0074】
ユーザは、設定した撮影条件で放射線源34から放射線16が照射されるようにするために、放射線制御装置36に設けられた図示しない入力装置を操作することで、システムコントローラ24側で設定した撮影条件と同一の撮影条件を放射線制御装置36にも設定させる。例えば、放射線装置18に、前記テーブルと同一のテーブルを持たせて、ユーザが撮影部位及び診断部位を選択することで、同一の撮影条件を設定しても良く、ユーザが直接、管電圧、照射時間、管電流、mAs値等を入力してもよい。
【0075】
撮影条件を設定すると、システムコントローラ24は、自身の通信部(不図示)を介して、電子カセッテ20の通信部76に起動信号を送信することで、電子カセッテ20を起動させる。
【0076】
電子カセッテ20の制御手段66は、放射線装置18からの放射線16の照射に先立って、まず、全ての増幅回路70の電荷リセット用スイッチSW1をオン状態とし、また、各ゲート線50を介してゲート駆動回路65から全ての光電変換素子48のTFT54のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧を印加して全TFT54をオン状態とする。
【0077】
また、制御手段66は、同時に、電流検出手段62内の抵抗器62aの両端子間を短絡するスイッチ62cもオン状態とする。この処理により、光電変換素子48の内部や各信号線52、増幅回路70の可変コンデンサ71b、バイアス線56、電流検出手段62等に蓄積されている不要な電荷を放電して取り除き、初期状態に設定する(ステップS1)。
【0078】
続いて、制御手段66は、全ての光電変換素子48のTFT54のゲート電極Gに対する信号読み出し用の電圧の印加を停止して、全TFT54をオフ状態とするとともに、電流検出手段62内のスイッチ62cもオフ状態とする(ステップS2)。
【0079】
この状態で、制御手段66は、電流検出手段62の状態を監視し、ユーザによる放射線スイッチ38の押下に基づく放射線16の照射開始を検出し(ステップS3)、予め撮影部位及び診断部位に応じて定められている照射時間に応じた放射線16の照射終了を検出する(ステップS4)。この放射線16の照射開始から照射終了までの間に被写体14に対する放射線画像撮影が行われる。
【0080】
なお、人体等の被写体14を介して電子カセッテ20に放射線16を照射する放射線源34やそれを制御する放射線制御装置36からこの放射線16の照射開始や照射終了に関する情報や信号を入手してそれらを利用するように構成することも可能である。このように構成された放射線画像検出装置やそれを用いた放射線画像撮影システムにも本発明を適用することができる。
【0081】
しかし、この実施形態では、以下に述べる増幅回路70のゲイン調整に用いられる電流検出手段62からの電流値Iの情報を用いて、電子カセッテ20が自ら放射線16の照射開始や照射終了を検出するように構成されている。以下、放射線16の照射開始、終了の検出及び増幅回路70のゲイン調整について説明する。
【0082】
この実施形態では、図4に示した光電変換素子48のアノード電極に、バイアス線56を介して逆バイアス電圧である負の電圧が印加されると、光電変換素子48内に電位勾配が生じる。この状態で、放射線源34から放射線16が照射され、放射線16の照射を受けたシンチレータ44により放射線16から変換された電磁波が光電変換素子48に入射すると、電子正孔対が発生する。
【0083】
そして、発生した電子正孔対のうち、電子は電位勾配に従って高電位であるカソード電極側に移動するが、TFT54のゲートが閉じているため、電子はカソード電極近傍に蓄積される。したがって、光電変換素子48内には、入射した電磁波の量に応じた量の電子が蓄積される。
【0084】
一方、発生した電子正孔対のうち、正孔は電位勾配に従って低電位であるアノード電極側に移動し、アノード電極を通ってバイアス線56に流れ出る。図4や図5に示すように、この光電変換素子48から流れ出てバイアス線56を流れる正孔が電流として電流検出手段62で検出される。
【0085】
すなわち、入射した電磁波の量に応じて光電変換素子48内に蓄積された電子の量と同量の正孔がバイアス線56内を流れるようになる。各バイアス線56を流れる電流は結線58に集められ、結線58中を電流検出手段62に向かって流れる。
【0086】
放射線16又は電磁波が光電変換素子48に入射しない放射線照射の前段階では、理想的にはバイアス線56や結線58内には電流は流れないが、実際には光電変換素子48で暗電流が発生し、電流検出手段62で微量の電流が検出される。
【0087】
前述したように、この実施形態では、電流検出手段62は結線58を流れる電流を電圧値に変換して出力するため、放射線16又は電磁波が光電変換素子48に入射されない放射線照射の前段階においても、図7における時点taに示されるように、電流検出手段62から制御手段66に微量ではあるが0ではない電圧値Vaが入力される。
【0088】
そして、放射線源34からの放射線16の照射が開始されると、各光電変換素子48内で電子正孔対が発生し、バイアス線56や結線58を通じて正孔が電流検出手段62に運ばれる。そのため、図7における時点tbに示されるように、電流検出手段62から出力される電圧値Vが増加する。そこで、この実施形態では、制御手段66は、電流検出手段62から出力される電圧値Vが大きく増加し始めたことを検出することで、放射線16の照射開始を検出するようになっている(ステップS3)。
【0089】
電圧値Vの増加による放射線16の照射開始については、電圧値Vが所定の閾値Vthを越えた時点tcに放射線照射が開始されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の閾値を越えた時点tdに放射線照射が開始されたとして検出するように構成することも可能である。
【0090】
また、放射線源34からの放射線16の照射が終了すると、今度は、各光電変換素子48内での電子正孔対の発生が停止し、バイアス線56に正孔が供給されなくなる。そのため、図7における時点teに示されるように、電流検出手段62から出力される電圧値Vが減少し始める。そこで、この実施形態では、制御手段66は、電流検出手段62から出力される電圧値Vが減少したことを検出することで、放射線16の照射終了を検出するようになっている(ステップS4)。
【0091】
電圧値Vの減少による放射線16の照射終了については、電圧値Vが前述した所定の閾値Vthを下回った時点tfに放射線照射が終了されたとして検出するように構成してもよく、また、電圧値Vの時間微分値が所定の負の値の閾値をより負側に越えた時点tgに放射線照射が終了されたとして検出するように構成することも可能である。なお、以下、放射線16の照射開始時点が時点tcであり、放射線16の照射終了時点が時点tfであるものとして説明する。
【0092】
一方、前述したように、光電変換素子48に入射した放射線16や電磁波の光子の数に比例して電子正孔対が発生し、入射した電磁波の量に応じた正孔が光電変換素子48からバイアス線56に流れ出るため、結線58を流れた電流値の総量を測ることで、放射線16の照射開始から照射終了までに電子カセッテ20に照射された放射線16の線量を算出することができる。
【0093】
この実施形態では、より簡単に放射線16の線量を算出するために、制御手段66がピークホールド機能を有するように構成されている。そして、制御手段66は、放射線16の照射の開始及び終了の時間間隔tf−tcと、電流検出手段62で検出された結線58を流れる電流のピーク値とに基づいて、照射された放射線16の線量を算出するように構成されている(ステップS5)。
【0094】
具体的には、制御手段66は、照射開始時点tcから照射終了時点tfまでに検出される電圧値のピーク値Vpを検出し、下記(1)式に従って、ピーク値Vpに、放射線16の照射開始から終了までの時間間隔tf−tcから定数αを減じた値を乗じた値に基づいて、電子カセッテ20に照射された放射線16の線量の近似値Mを算出するようになっている。なお、上記(1)式においてaは定数である。
M=a×Vp×(tf−tc−α) …(1)
【0095】
この放射線16の線量の近似値Mは、図7における照射開始時点tc以後の立ち上がり部分から照射終了時点tf以前の立ち下がり部分までの電圧値Vを矩形状に近似してその面積に比例する値として求めるものであり、照射開始時点tc及び照射終了時点tfを検出し、ピーク値Vpを検出するだけで簡単に算出できるという利点を有するものである。
【0096】
なお、積分回路等を用いて、図7に示した照射開始時点tcから照射終了時点tfまでの電圧値V(あるいは電圧値Vからノイズに相当する一定値を減じた値)の積分値を算出して、電子カセッテ20に照射された放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。このように構成すれば、より正確な放射線16の線量を算出することが可能となる。
【0097】
また、ノイズ成分をより的確に除去するため、積分回路等に、所定の範囲の周波数帯のデータのみを通過させて他の周波数のデータは減衰させて通さないバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)を構成し、電流検出手段62から出力される電流値に相当する電圧値にバンドパスフィルタ処理を施して積分して放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。
【0098】
制御手段66は、続いて、算出した放射線16の線量(近似値Mである場合を含む。)に基づいて、各光電変換素子48からの電気信号の読み出し時における第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを設定するようになっている(ステップS6)。
【0099】
この実施形態では、制御手段66は、上記のようにして算出した放射線16の線量と、第1増幅回路71のゲインすなわち第1増幅回路71の可変コンデンサ71bの容量の合計値とを対応付けるテーブルを図示しないメモリ中に保持している。例えば、0.5[pF]〜4[pF]まで0.5pF刻み(8段階)で設定する。
【0100】
そのため、テーブルは、放射線16の線量をその大きさに応じて8段階に区分し、各段階に対して可変コンデンサ71bの容量値を設定している。テーブルでは、放射線16の線量が大きくなるに従って設定する第1増幅回路71のゲインが低くなるように対応付けられている。
【0101】
制御手段66は、放射線16の線量を算出すると、このテーブルを参照して第1増幅回路71のゲイン調整を行うようになっている。
【0102】
その一方、制御手段66は、第1増幅回路71のゲイン調整と同時に、第2増幅回路72のゲイン調整を行う。
【0103】
この第2増幅回路72のゲイン調整では、例えば、バイアス電源64のバイアス電圧値をVbiasとすれば、感度補正値Scは、感度(蓄積電荷量/放射線照射量)がバイアス電圧値Vbiasに略比例することを考慮すれば、次の(2)式により求めることができる。
Sc=Vbias/(Vbias−Vp) …(2)
【0104】
すなわち、第2増幅回路72のゲイン調整は、感度調整(感度補正)であるので、測定したピーク値Vpに基づき、ゲインをVbias/(Vbias−Vp)倍に設定すればよい。
【0105】
制御手段66は、上述のように設定した第1及び第2増幅回路71、72のゲインの情報を、通信部76(図4参照)を介してシステムコントローラ24に送信するようになっている(ステップS6)。
【0106】
続いて、制御手段66は、各光電変換素子48からの電気信号の通常の読み出し処理を行う。読み出しに先立って、電流検出手段62のスイッチ62cをオン状態とする。これにより、電流検出手段62の抵抗器62aの影響を取り除いて読み出すことが可能となる。
【0107】
この状態で、制御手段66は、まず、各増幅回路70の電荷リセット用スイッチSW1をオフ状態とした後(ステップS7)、CDS回路80に信号を送信する。信号の送信を受けたCDS回路80は、図8に示すように、この段階で増幅回路70から出力される電圧値Vinを保持する。
【0108】
そして、制御手段66は、ゲート駆動回路65(図4参照)から1本のゲート線50に信号読み出し用の電圧を印加して、そのゲート線50にゲート電極Gが接続されているTFT54のゲートを開く。そして、これらのTFT54が接続されている各光電変換素子48から蓄積された電荷(この実施形態の場合は電子)が電気信号として各信号線52にそれぞれ読み出され、上記のようにゲインが設定された第1増幅回路71で電気信号が増幅され、増幅電気信号の振幅が第2増幅回路72で補正される(前記増幅電気信号がさらに増幅される)(ステップS8)。
【0109】
続いて、第1増幅回路71の可変コンデンサ71bに電荷が蓄積された後、制御手段66は、ゲート駆動回路65に信号の読み出しを行わない(すなわち信号を保持する)電圧をゲート線50に印加する信号を出力して各TFT54のゲートを閉じる。CDS回路80にもこの信号が送信され、信号の送信を受けたCDS回路80は、図8に示すように、この段階で増幅回路70から出力される電圧値Voutを保持する。そして、それらの差Vout−Vin(相関二重サンプリング処理)を算出して出力する(ステップS9)。
【0110】
各CDS回路80から出力された電気信号、すなわち前記差Vout−Vinは、マルチプレクサ82(図4参照)を介して順次AD変換器84に送信され、すなわち各光電変換素子48の各電気信号ごとにAD変換器84に送信され、AD変換器84で順次デジタル値に変換される(ステップS10)。
【0111】
そして、AD変換器84から各光電変換素子48ごとの電気信号が送信されてくると、制御手段66はそれらを順次通信部76を介してシステムコントローラ24に送信する(ステップS11)。その際、各光電変換素子48ごとの電気信号を電子カセッテ20内又は電子カセッテ20に接続された図示しないメモリに保存するように構成してもよい。また、全てのデータをメモリに保存し、終了処理時に一括して送信するように構成してもよい。
【0112】
続いて、制御手段66は、全ての光電変換素子48について電気信号の読み出しを終了していなければ(ステップS12;NO)、第1増幅回路71の電荷リセット用スイッチSW1をオン状態として(ステップS13)、第1増幅回路71の可変コンデンサ71bに蓄積されている電荷を放電して除去した後、再び各増幅回路70の電荷リセット用スイッチSW1をオフ状態とし、ゲート駆動回路65から信号読み出し用の電圧を印加するゲート線50を替えてステップS7以降の処理を繰り返す。
【0113】
また、全てのゲート線50に対して信号読み出し用の電圧の印加を終えて、全ての光電変換素子48について電気信号の読み出しが終了していれば(ステップS12;YES)、制御手段66は、各光電変換素子48や各増幅回路70等に残っている電荷を放電する等の必要な処理を行って(ステップS14)、処理を終了する。
【0114】
[放射線画像撮影システム]
この実施形態に係る放射線画像撮影システム10は、図1、図4に示すように、上記の電子カセッテ20と、システムコントローラ24とを備えて構成されている。
【0115】
電子カセッテ20で放射線画像撮影が終了し、第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインが設定されて、各光電変換素子48からそれぞれ電気信号が読み出され、各電気信号の情報が順次通信部76を介して送信されてくると、それらの情報がシステムコントローラ24に入力されるようになっている。
【0116】
システムコントローラ24は、受信した各電気信号の情報に必要な画像処理を施して、電子カセッテ20における各光電変換素子48の配列に相当するようにそれらの各電気信号の情報を配列して放射線画像を得るようになっている。得られた放射線画像は、コンソール26から入力された操作内容に従って、表示装置28に表示されたり、あるいは例えば図示しないイメージャによりフィルム等の画像記録媒体に記録されたりするようになっている。
【0117】
以上のように、この実施形態に係る電子カセッテ20によれば、放射線16や放射線16から変換された電磁波の照射を受けると、各光電変換素子48中では電子正孔対が発生し、一方の電荷は光電変換素子48内に蓄積されるが、他方の電荷はバイアス線56に流れ出す。その際、各光電変換素子48からは放射線16や電磁波の照射を受けた分だけ電荷が流れ出す。
【0118】
そのため、このバイアス線56に流れ出す電荷による電流を測定することで、電子カセッテ20に照射された実際の放射線16の線量を的確に把握することが可能となる。そして、的確に把握された放射線16の線量に基づいて第1増幅回路71のゲインを的確に設定し、且つ第2増幅回路72の補正ゲインを的確に設定することが可能となる。
【0119】
また、非破壊読み出しのように事前の電気信号の読み出しを必要とせず、放射線16の照射と同時にその線量を検出して第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを設定するため、放射線16の照射後、直ちに電気信号の読み出しを開始することが可能となる。そのため、時間が経過するに従って増加する暗電流等によるノイズの増加を抑制することが可能となり、SN比の低下を抑制することが可能となる。
【0120】
さらに、非破壊読み出しのように事前の電気信号の読み出しを必要とせず、直ちに放射線画像の撮影を開始することが可能となるため、事前の電気信号の読み出し等で余分な電力が消費されてしまうということも防止できる。
【0121】
また、電流検出手段62により検出された電流の減少に基づいて放射線16の照射の終了を検出することができるため、放射線16の照射の終了の情報を外部から入力しなくても、電子カセッテ20が自ら放射線16の照射の終了を検出して、放射線16の照射後、直ちに電気信号の読み出しを開始することが可能となる。
【0122】
一方、この実施形態に係る放射線画像撮影システム10によれば、上記のように、電子カセッテ20で、撮影開始までの時間がかからず撮影後も直ちに電気信号の読み出しを開始できることでSN比の低下が抑制され、しかも、得られた電気信号が増幅回路70(第1増幅回路71及び第2増幅回路72)のゲインが的確に設定された状態で増幅されるため、ノイズが低減されてダイナミックレンジが確保され画質低下が抑制された良好な放射線画像を得ることが可能となる。
【0123】
また、電子カセッテ20において、第1増幅回路71をオペアンプ71aとそれに並列に接続された可変コンデンサ71bで構成し、第1増幅回路71のゲインを設定することで、第1増幅回路71のゲインを容易且つ適切に設定することが可能となる。同様に、第2増幅回路72をオペアンプ72aとそれに並列に接続された可変抵抗器72bと基準電位と逆相入力間に接続された抵抗器72cで構成し、第2増幅回路72のゲインを設定することで、第2増幅回路72のゲインを容易且つ適切に設定することが可能となる。
【0124】
しかも、第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを容易に設定することができるため、放射線撮影後、直ちに第1増幅回路71及び第2増幅回路72のゲインを設定することが可能となる。
【0125】
また、CDS回路80で相関二重サンプリングの手法によりノイズ成分を除去することで、少なくとも増幅回路70のコンデンサの熱雑音等のノイズを適切に除去することが可能となり、得られる放射線画像のSN比をより良好にすることが可能となる。
【0126】
また、バイアス線56を流れる電流の増加や減少に基づいて放射線16の照射開始や照射終了を検出することで、放射線画像検出装置が放射線源等から放射線16の照射開始や照射終了の情報が得られない場合でも的確にそれらのタイミングを検出することが可能となり、照射された放射線16の線量等を適切に検出することが可能となる。
【0127】
[変形例1]
上記の実施形態に係る電子カセッテ20では、バイアス電流により電流検出手段62の抵抗器62aに発生する電圧降下に基づき光電変換素子48に印加されるバイアス電圧が低下し、それにより光電変換素子48の感度が低下する補正を、非反転増幅回路型とした第2増幅回路72のゲインを上記(2)式に応じて設定することで補正する技術について説明した。
【0128】
この場合、図9の電子カセッテ20Aに示すように、図5に示した第1増幅回路71のゲインと第2増幅回路72のゲインとは同時に設定されることを考慮して、これら第1増幅回路71及び第2増幅回路72を、一つの第3増幅回路71A(第1増幅回路71と同一の回路構成)にまとめ、制御手段66により両方のゲインを掛け算したゲインを第3増幅回路71Aに設定する(可変コンデンサ71bの容量値を可変設定する。)ように構成を変更することもできる。
【0129】
[変形例2]
上述した実施形態のように、光電変換素子48の感度が低下する補正を図5に示したアナログ回路(第2増幅回路72)による処理で行うことなく、図10の電子カセッテ20Bに示すように、第2増幅回路72を省略して第3増幅回路71A(第1増幅回路71と同一の回路構成)とCDS回路80を直結に接続し、AD変換器84の後段に第1デジタル乗算器85(この変形例2では、制御手段66の一機能として実現しているが、別途設けてもよい。)を配設する構成とする。
【0130】
この図10例の構成においては、図5に示した第2増幅回路72による補正処理に代替して、制御手段66内の第1デジタル乗算器85において、AD変換器84の出力画像データに対し上記(2)式に基づく感度補正値Scをデジタル的に乗算して振幅を増加させる(デジタル値を大きくする)補正を行えばよい。
【0131】
[変形例3]
上記の実施形態及び変形例1、2では、光電変換素子48の感度がバイアス電圧値Vbiasに略比例することを前提として補正(感度補正)するようにしていたが、これらの技術に限らず、図11に示す電子カセッテ20Cのように検出部Pの領域を領域A、Bに分割した構成に変形して対応することもできる。
【0132】
この変形例3において、上記の実施形態に係る電子カセッテ20と同じ構成や機能を有する部材については同じ符号を付けて説明する。
【0133】
電子カセッテ20Cの基板46の検出部Pの中央の領域Aに配設された各光電変換素子48に接続された各バイアス線88と、基板46の検出部Pの両側部の領域B(図12参照)に配設された各光電変換素子48に接続された各バイアス線90は、それぞれ別の結線(それぞれバイアス線又は共通バイアス線ともいう。)92、94に接続されている。結線92は、バイアス電源64に直接接続され、結線94は、電流検出手段62を介してバイアス電源64に接続されている。
【0134】
このように構成すれば、結線92及び各バイアス線88を通じてバイアス電源64に直接接続された光電変換素子48、換言すれば、電流検出手段62が接続されていない中央の領域Aに配設された光電変換素子48については、放射線16の照射時にバイアス電流が流れても電圧降下が発生せず、したがって感度の低下が発生しない。
【0135】
この場合、図5に示した増幅回路70を、図11に示すように、電流検出手段62が接続された光電変換素子48から信号線52を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、放射線16の照射時に電流検出手段62で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第4増幅回路71B(例えば、第3増幅回路71Aと同一の回路構成)と、電流検出手段62が接続されていない光電変換素子48から前記電荷による電気信号を読み出す際に、放射線16の照射時に電流検出手段62で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第5増幅回路71C(例えば、第3増幅回路71Aと同一の回路構成)と、に分ける。
【0136】
制御手段66は、電流検出手段62による電圧降下が大きくなるほど、電流検出手段62が接続されていてバイアス電流を検出する両側部の領域Bに配設された第4増幅回路71Bの補正ゲインが大きくなるように設定する。電流検出手段62が接続されていない中央部の領域Aに配設された光電変換素子48の電気信号を増幅する第5増幅回路71Cのゲインは補正しない。
【0137】
[変形例4]
この場合にも、図10と同様に、図13の電子カセッテ20Dに示すように、全ての増幅回路を同一の回路構成(例えば、第3増幅回路71Aと同一の回路構成)で同一ゲインの第4増幅回路71B及び第5増幅回路71Cとする。
【0138】
そして、電流検出手段62が接続されていてバイアス電流を検出する両側部の領域Bに配設された光電変換素子48についての第4増幅回路71B及びCDS回路80を通じAD変換器84によるAD変換後の出力画像データの振幅(Abという。)が、バイアス電流を検出していない中央の領域Aの光電変換素子48についての第5増幅回路71CのAD変換器84によるAD変換後の出力画像データの振幅(Aaという。)と同一の振幅となるように第2デジタル乗算器85Aを備えるようにしてもよい。
【0139】
第2デジタル乗算器85Aは、電流検出手段62が接続されている光電変換素子48の電荷を増幅した第4増幅回路71Bの出力画像データの振幅Abに対し、係数Aa/Abを乗算するように構成すれば、バイアス電流が流れて電圧降下が発生し電圧が低下したバイアス電圧がかかっている光電変換素子48の感度低下を補正することができる。
【0140】
以上、この発明を実施の形態を用いて説明したが、この発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。
【0141】
例えば、上述したように、この発明では、シンチレータ44を用いず、照射された放射線16により光電変換素子で直接電荷を発生させて電気信号に変換する、いわゆる直接型の放射線画像検出装置にも同様に適用可能である。
【0142】
直接型の放射線画像検出装置に適用される光電変換素子としては、アモルファスセレン(a−Se)等の半導体の他、CdTe、CdZnTe、CdxZn1−xTe、例えば、Cd0.8Zn0.2Te、HgI2、PbI2、PbO、TlBr(臭化タリウム)、GaAs、GaP、BixMOy{ただし、Mは、Ge、Si、Ti中の少なくとも1種であり、xは10≦x≦14の条件を満たす数、yは上記M及びxにより定められる化学量論的な酸素原子数を表す。例として、Bi12MO20(但し、MはGe、Si、Ti中の少なくとも1種)}等の半導体を挙げることができる。
【0143】
これらの直接型の光電変換素子では、公知のように、ガラス基板等上に形成された多数の画素電極と共通のバイアス電極との間に光電変換素子が挟持された構成とされ、各前記画素電極にTFTと、一端が接地された蓄積容量と、が接続される。前記共通のバイアス電極にバイアス線の一端が接続され、他端がカレントミラーからなる電流検出手段を通じて、高電圧のバイアス電源に接続される。このバイアス電源から前記カレントミラー及び前記バイアス線を通じて前記共通のバイアス電極に正の高電圧を順方向に、いわゆる順バイアス電圧として印加して、使用に供する。
【0144】
また、上述した実施形態では、図5に示したように、第2増幅回路72は、可変ゲイン非反転増幅回路で構成しているが、これに代替して、反転増幅回路を2段(前段と後段)従属接続する構成の可変ゲイン非反転増幅回路としても良い。例えば、前段の増幅回路は、第1増幅回路71から出力される電圧値Vを電流に変換するために抵抗器の一端を接続し、該抵抗器の他端をオペアンプ72aの逆相入力に接続する。オペアンプ72aの正相入力は、基準電位に接続する。オペアンプ72aの出力とオペアンプ72aの前記逆相入力との間に、前記制御手段66により抵抗値が設定される可変抵抗器(抵抗値可変手段)72b(第2抵抗器)を接続する。このように構成される前段の可変ゲイン反転増幅回路の出力に、ゲインが固定の反転増幅回路である後段の増幅回路を接続すれば、第2増幅回路72は、反転増幅回路の2段従属構成に代替できる。
【0145】
このように、上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態もこの発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0146】
10…放射線画像撮像システム 16…放射線
20、20A〜20D…電子カセッテ(放射線画像検出装置)
24…システムコントローラ(画像処理装置)
48…光電変換素子 56、88、90…バイアス線
62…電流検出手段 62a…抵抗器
64…電源(バイアス電源) 66…制御手段
70…増幅回路 71…第1増幅回路
71A…第3増幅回路 71B…第4増幅回路
71C…第5増幅回路 72…第2増幅回路
85…第1デジタル乗算器 85A…第2デジタル乗算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子と、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記光電変換素子に前記バイアス電圧を印加する電源と、
前記バイアス線を流れるバイアス電流を、前記バイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下により検出する電流検出手段と、
信号線を通じて前記光電変換素子から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力側に接続される第2増幅回路と、
前記第2増幅回路のゲインを、前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて増加させることにより前記電気信号を補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像検出装置において、
前記第2増幅回路は、正相入力側が前記第1増幅回路の出力に接続されるオペアンプと、前記オペアンプの出力と逆相入力側との間に接続される第1抵抗器と、前記逆相入力側と基準電位との間に接続される第2抵抗器と、を備える非反転増幅回路であり、
前記制御手段は、前記第1及び第2抵抗器のうち、少なくとも一つの抵抗器の抵抗値を変化させることで前記第2増幅回路のゲインを変化させる
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項3】
放射線の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子と、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記光電変換素子に前記バイアス電圧を印加する電源と、
前記バイアス線を流れるバイアス電流を、前記各バイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下により検出する電流検出手段と、
信号線を通じて前記光電変換素子から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される増幅回路と、
前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて低下する前記電気信号を補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記増幅回路の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正する
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記増幅回路により増幅された前記電気信号のAD変換されたデジタル値に対して、前記電圧降下が大きくなるほど、前記デジタル値が大きくなるように補正するデジタル処理手段を備える
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項6】
放射線の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子と、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記光電変換素子に前記バイアス電圧を印加する電源と、
前記バイアス線のうち、少なくとも一部のバイアス線を流れるバイアス電流を、当該少なくとも一部のバイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下により検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段が接続された前記光電変換素子から信号線を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路と、
前記電流検出手段が接続されていない前記光電変換素子から信号線を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第2増幅回路と、
前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて低下する前記第1増幅回路の前記電気信号を補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記第1増幅回路の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正する
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項8】
請求項6記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記第1増幅回路の前記電気信号のAD変換されたデジタル値を、前記第2増幅回路の前記電気信号の前記AD変換されたデジタル値に基づき補正するデジタル処理手段を備える
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置において、
前記第1増幅回路及び前記増幅回路は、それぞれ、オペアンプと、当該オペアンプに並列に接続された容量値可変手段とを備えるチャージアンプの構成とされる
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、前記電流検出手段により検出された前記バイアス線を流れる電流の増加及び減少に基づいて前記放射線の照射の開始及び/又は終了を検出する
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置と、
前記電気信号の読み出し時に、前記放射線画像検出装置から出力されてきた前記各光電変換素子から読み出され増幅された各電気信号に基づいて放射線画像を形成する画像処理装置と、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項12】
請求項11記載の放射線画像撮影システムにおいて、
前記放射線画像検出装置と前記画像処理装置とは無線接続により接続される
ことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項1】
放射線の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子と、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記光電変換素子に前記バイアス電圧を印加する電源と、
前記バイアス線を流れるバイアス電流を、前記バイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下により検出する電流検出手段と、
信号線を通じて前記光電変換素子から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力側に接続される第2増幅回路と、
前記第2増幅回路のゲインを、前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて増加させることにより前記電気信号を補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像検出装置において、
前記第2増幅回路は、正相入力側が前記第1増幅回路の出力に接続されるオペアンプと、前記オペアンプの出力と逆相入力側との間に接続される第1抵抗器と、前記逆相入力側と基準電位との間に接続される第2抵抗器と、を備える非反転増幅回路であり、
前記制御手段は、前記第1及び第2抵抗器のうち、少なくとも一つの抵抗器の抵抗値を変化させることで前記第2増幅回路のゲインを変化させる
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項3】
放射線の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子と、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記光電変換素子に前記バイアス電圧を印加する電源と、
前記バイアス線を流れるバイアス電流を、前記各バイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下により検出する電流検出手段と、
信号線を通じて前記光電変換素子から前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される増幅回路と、
前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて低下する前記電気信号を補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記増幅回路の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正する
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記増幅回路により増幅された前記電気信号のAD変換されたデジタル値に対して、前記電圧降下が大きくなるほど、前記デジタル値が大きくなるように補正するデジタル処理手段を備える
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項6】
放射線の照射により電荷を発生させる複数の光電変換素子と、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記光電変換素子に前記バイアス電圧を印加する電源と、
前記バイアス線のうち、少なくとも一部のバイアス線を流れるバイアス電流を、当該少なくとも一部のバイアス線に挿入した抵抗器に生じる電圧降下により検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段が接続された前記光電変換素子から信号線を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第1増幅回路と、
前記電流検出手段が接続されていない前記光電変換素子から信号線を通じて前記電荷による電気信号を読み出す際に、前記放射線の照射時に前記電流検出手段で検出された電流値に基づいて、前記電気信号の読み出し時のゲインが設定される第2増幅回路と、
前記電圧降下による前記光電変換素子の感度の低下に応じて低下する前記第1増幅回路の前記電気信号を補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記第1増幅回路の前記ゲイン設定を変えることにより前記電気信号を補正する
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項8】
請求項6記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、
前記第1増幅回路の前記電気信号のAD変換されたデジタル値を、前記第2増幅回路の前記電気信号の前記AD変換されたデジタル値に基づき補正するデジタル処理手段を備える
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置において、
前記第1増幅回路及び前記増幅回路は、それぞれ、オペアンプと、当該オペアンプに並列に接続された容量値可変手段とを備えるチャージアンプの構成とされる
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置において、
前記制御手段は、前記電流検出手段により検出された前記バイアス線を流れる電流の増加及び減少に基づいて前記放射線の照射の開始及び/又は終了を検出する
ことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置と、
前記電気信号の読み出し時に、前記放射線画像検出装置から出力されてきた前記各光電変換素子から読み出され増幅された各電気信号に基づいて放射線画像を形成する画像処理装置と、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項12】
請求項11記載の放射線画像撮影システムにおいて、
前記放射線画像検出装置と前記画像処理装置とは無線接続により接続される
ことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−129983(P2012−129983A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245085(P2011−245085)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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